目次 はじめに:なぜ自治基本条例を制定するのか 第1章 栃木市における自治基本条例の制定と過程 第2章 栃木市における自治基本条例の運用と検証 第3章 栃木県内における自治基本条例の比較 むすびに:参画・基盤・学習による地方自治の充実
自治体における自治基本条例の制定意義
─合併後の栃木市を事例として─
児 玉 博 昭
はじめに:なぜ自治基本条例を制定するのか (1)研究の背景 地方自治とは、「一国の中における一定地域の住民が、当該地域にかか わる事柄を自主的に決定すること」をいう(村松2010:1)。要は地域の 問題を地域で解決することである。 地域の問題を住民に身近な自治体で解決できるよう、地方分権改革で は、機関委任事務を廃止して条例制定権を拡大し、義務付け・枠付けを見 直して規律密度を緩和するなど、自治体の裁量を大幅に広げた。だがその 一方で、分権改革以降、地方自治の混迷ぶりが相次ぎ話題となり、夕張市 の財政破綻、大阪都構想をめぐる対立、名古屋市の議会解散、鹿児島県阿 久根市長の解職、東京都知事の交代など枚挙にいとまがない。 自己決定は自己責任を伴う。自治体が決定できるということは、結果に ついては国に責任を転嫁できないということである。地域の問題を自治体 でどのように解決していくのか、自治の担い手の役割分担やまちづくりの 仕組みなど、地方自治のルールを自治体ごとに明確にしなければならな い。そこで注目されたのが、まちづくりの基本ルールを定めた、いわゆる 「自治基本条例」という仕掛けである。北海道ニセコ町のまちづくり基本 条例や東京都杉並区の自治基本条例を嚆矢として(1)、全国の自治体が相次 いで制定するようになった(2)。 (2)問題の所在 ここで「いわゆる」としたのは、単に条例の名称が「自治基本条例」と は限らないからではない。金井利之が指摘するように、自治基本条例は 「自治体の憲法」とも称されるが、「自称」にすぎないからである。条例は 法律の範囲内で制定するものであり、条例間に法的効力の優劣はないの (1) ニセコ町のまちづくり基本条例に関しては木佐他(2012)、杉並区の自治基本条例 に関しては田丸(2003)などを参照。 (2) 自治基本条例の制定自治体に対する全国的なアンケート調査として阿部(2013)。
で、そもそも憲法のような最高法規性はない。どの自治体の自治基本条例 も内容が似通っており、事実上の標準は存在するかもしれないが、法制上 の定義はなく、何が本質なのかも実際上明らかではない(金井2010:17-18)。 自治基本条例は本当に必要なのかという疑問もある。自治基本条例を制 定しなくても住民の日常生活に支障はないし、実際に多くの自治体では条 例を制定していない。条例を検討する自治体にも、制定の必要性を理解せ ず、他の自治体が制定しているからという横並び意識で取り組む自治体も あり、自治基本条例は単なる流行にすぎないという印象すら受ける。さら に、自治基本条例は住民投票を制度化するものも多く、議会の否定や外国 人参政権につながることを警戒し、自治基本条例の制定に反対する立場も ある(3)。 (3)本稿の目的と構成 自治基本条例を制定する意義はあるのか、どうすれば意義ある条例を制 定できるのか。自治基本条例の本質が最高規範性にないならば、何が本質 なのか。自治基本条例に関しては、すでに専門誌でもいくつか特集が組ま れ(4)、有識者からもさまざまな提案が示されており(5)、制定関係者による各 地の事例研究もあまた存在する。旧聞に属する話であり、屋上屋を架すこ とにもなりかねないが、筆者も栃木県栃木市の自治基本条例に、制定前の 条例案の作成から制定後の検証と見直しに至るまで長らく携わってきた。 同市の条例を自治基本条例の代表例に取り上げる文献も存在する(村田 2014、2018)。担当職員が異動で入れ替わるなかで、一連の経緯を知る数 (3) 自由民主党「チョット待て!! 自治基本条例 」(政策パンフレット) (4) 例えば、「特集:自治基本条例を検証する」『自治体法務研究』16号、「自治基本条 例は今」『計画行政』36巻2号、「自治基本条例と自治体政策法務(地域社会の法社 会学)」『法社会学』74号など。 (5) 例えば、神原勝は「生ける自治基本条例」のため条例内容に関し総合性など6つの 原則、制定過程に関し現行制度の点検など4つの課題をあげる(神原2009:96-120)
少ない関係者の一人でもある。そこで本稿では、栃木市自治基本条例を事 例に、実際の経験をふまえて自治基本条例の意義を改めて考察してみた い。 本稿では、まず、自治基本条例の制定について、合併前の旧市町を含め 栃木市における自治基本条例の制定の経緯と概要を説明する(第1章)。 次に、自治基本条例の運用について、栃木市自治基本条例に関連する制度 の整備状況や施策の実施状況を検証する(第2章)。さらに、栃木市自治 基本条例を県内他市の自治基本条例の内容と比較する(第3章)。むすび に、各章の検討に基づき、市民参画・共通基盤・相互学習の3点から自治 基本条例の制定意義を提示し、栃木市の今後の取組課題にも言及する。 なお、本稿の一部は、条例制定前の栃木市自治基本条例市民会議、制定 後の栃木市市民会議自治期基本条例部会での検討に基づいている。ただ し、独自に整理し直しているため、事務局が作成した資料や、委員の意見 を集約した提言書とは異なる点があることを予めお断りしておきたい。 第1章 栃木市における自治基本条例の制定と過程 自治基本条例は、どのような内容を定めるものなのか。また、どのよう に検討されるものなのか。自治基本条例に明確な要件や検討手順があるわ けではないが、一例として栃木市自治基本条例の構成内容と制定過程を説 明する。 栃木市は、栃木県南部に位置する人口約16万人の市である。平成22年 3月に栃木市・大平町・藤岡町・都賀町の1市3町が合併して誕生し、さ らに平成23年10月には西方町、平成26年4月には岩舟町が合併した。合 併前の旧大平町と旧栃木市では自治基本条例を制定しており、旧大平町の 条例は県内で最も早く施行され、旧栃木市の条例は県内で最も多くの検討 を重ねて制定された。合併後の現栃木市の自治基本条例でも、県内で最も 多くの市民が検討に参加している。その意味でも、栃木市は自治基本条例
に熱心に取り組んできた自治体の一つといえる。 1.栃木市の自治基本条例の制定過程 旧大平町と旧栃木市、現在の栃木市では次のように自治基本条例が制定 された。 1-1.旧大平町における制定過程 旧大平町は、平成16年7月に自治基本条例を施行しているが、同条例 の制定にあたっては、庁内会議で作成された条例素案を町民懇談会で検討 するという手順をとっている。 同町では、まず、平成14年12月に課長・係長など12名の職員からなる 「自治基本条例検討委員会」を設置し、5回の会合を経て条例素案を作成 した。続けて、平成15年7月に公募・団体代表・議員・有識者など23名 の委員からなる「自治基本条例町民懇談会」を設置し、4回の会合で検討 を重ねた。こうして1年余りの検討を経て、全56条からなる「大平町自 治基本条例」が制定された。同条例には、町長に宣誓を義務づけ(条例 27条)、救済機関の設置を認める(同37条)などの特徴的な規定が見られ る(6)。 1-2.旧栃木市における制定過程 旧栃木市は、平成21年10月に自治基本条例を施行したが、同条例の制 定にあたっては、旧大平町とは対照的に、市民会議で作成された条例素案 を庁内会議で検討するという手順がとられている。 同市では、もともと平成16年3月に「栃木市の将来を考える100人委員 会」が設置され、総合計画や自治基本条例について検討されていたが、平 成18年9月に「自治基本条例を考える市民会議」が設置され、公募、地 (6) 大平町「大平町自治基本条例の解説」を参照。
区・団体代表、議員、職員など32名の委員が、18回の全体会議、35回の 運営委員会等、市民説明会の開催を経て提言書をとりまとめた。続けて平 成20年7月には「自治基本条例を考える第2次市民会議」が設置され、 同様に公募、地区・団体代表、議員、職員など39名の委員が、17回の全 体会議、19回の策定委員会、市民説明会の開催を経て提言書をとりまと めた。こうして検討に2年以上が費やされ、全37条からなる「栃木市自 治基本条例」が制定された。 筆者は、前身となる100人委員会の運営に一時たずさわった後、研究の ため渡英していたこともあり、旧栃木市自治基本条例の詳しい検討経緯は 知らないが、制定された同条例をみると、市民に在住者のほか在勤・在学 者を含め(同条例第3条)、定住外国人や18歳以上にも住民投票権を与え るなど(同36条)、保守的な北関東では珍しく進歩的な規定が盛り込まれ ている(7)。 1-3.現栃木市における制定過程 合併に伴い旧大平町と旧栃木市の自治基本条例は失効したが、新たに誕 生した栃木市でも、旧大平町長であった鈴木俊美新市長の公約に基づき改 めて自治基本条例の制定を目指すことになる。同条例の制定にあたって は、旧栃木市の例にならい、市民会議で作成された条例素案を庁内会議で 検討するという手順をとっている。 同市では、平成22年10月に「自治基本条例市民会議」を設置し、筆者 も帰国早々、同会議に関わることになった。市民会議は、公募・団体代 表・議員・職員・学識者からなり、当時合併協議中だった西方町を含め旧 1市4町それぞれから代表者が選ばれたため、委員の総勢は70名となっ た。限られた会議時間でも出席者全員が意見を述べられるよう、地域・分 野横断的に6つの班を編成し、班ごとに検討した後に会議全体で総括する (7) 栃木市「栃木市自治基本条例(図解+解説)」を参照。
という方法が採られた。市民会議は、22回の検討会議で議論を重ね、市 内8か所での市民説明会には237名の参加があった。 その後、平成23年12月に総務部長・関係課長など27名の職員で構成さ れる「自治基本条例庁内検討委員会」で検討された後、平成24年1月に パブリックコメントが実施され、市内外から69人318件の意見が寄せられ ている。こうして約1年間の検討を経て、平成24年10月に全45条からな る「栃木市自治基本条例」が施行されることになった。 表1 自治基本条例の制定過程の比較 旧大平町 旧栃木市 現栃木市 平成14年12月 自治基本条例検討委員会 委員12名、会議5回 平成18年9月 自治基本条例を考える 市民会議 委員32名、全体会議18回、 運営委員会等35回、 市民説明会 平成22年10月 自治基本条例市民会議 委員70名、会議22回、 市民説明会8か所 平成15年7月 自治基本条例町民懇談会 委員23名、懇談会4回 平成20年7月 自治基本条例を考える 第2次市民会議 委員39名、全体会議17回、 策定委員会19回、 市民説明会 平成23年12月 庁内検討委員会 委員27名 平成24年1月 パブリックコメント 提出意見318件 平成16年7月 自治基本条例施行 平成21年10月 自治基本条例施行 平成24年10月 自治基本条例施行 (出所)栃木市資料をもとに筆者作成 2.栃木市の自治基本条例の構成内容 栃木市の自治基本条例は、大別すると、①自治の考え方(前文、第1章 ∼第3章)、②自治の担い手(第4章∼第6章)、③自治の進め方(第7章 ∼第10章)からなる(表2)。
表2 栃木市自治基本条例の構成 自治の 考え方 前文 第1章 総則(1条∼3条) 第2章 自治の基本理念(4条) 第3章 自治の基本原則(5条∼9条) 自治の 担い手 第4章 市民(10条∼15条) 第5章 議会(16条・17条) 第6章 執行機関(18条∼20条) 自治の 進め方 第7章 情報の共有(21条∼23条) 第8章 参画と協働(24条∼28条) 第9章 市政運営(29条∼43条) 第10章 条例の見直し等(44条・45条) 2-1.自治の考え方 (1)前文・総則 栃木市自治基本条例の前文では、栃木市の歴史的・地理的な特色にふれ たのち、市民を中心としたまちづくりや市政運営を行う「市民自治」を実 現するために、市の自治の「最高規範」としてこの条例を制定すると宣言 している。 条例の総則では、条例の目的や位置づけを明らかにしている。この条例 は、自治の基本理念や市民の権利・責務などを明らかにし、市政の基本事 項を定めることにより、協働のまちづくりを進め、市民自治の実現を図る ことを目的とする(第1条)。また、この条例は自治の最高規範に位置付 けられ、市は制度の整備や条例等の体系化に努め、市民、議員、市長等・ 市職員は各自の役割に従う(第2条)。ここで市民とは、市内に在住・在 勤・在学する個人と所在する事業者をいい、その他、事業者や市、市長 等、まちづくりと市政、参画と協働についても定義付けている(第3条)。 市民を在住者に限らず在勤・在学者や事業者を含め広く定義するのは、 旧栃木市の自治基本条例に由来する(旧栃木市自治基本条例3条)。これ に対し、旧大平町の自治基本条例は、町民を在住者と狭く定義したうえ
で、在勤・在学者や事業者にもまちづくりへの参加を認める形をとってい た(旧大平町自治基本条例2条・13条)。 (2)自治の基本理念と基本原則 条例は、自治の基本理念に、市民主体のまちづくりと市民の信託に基づ く市政をかかげ(第4条)、自治の基本原則として、人権尊重、自然との 共生、情報共有、市民参画、協働の諸原則をあげている(第5条∼第9 条)。 2-2.自治の担い手 (1)市民 市民に関しては、まず、市民の権利として、安全・安心な生活、行政 サービスの利用、市政情報の把握、まちづくりと市政への参画、意見の表 明、個人情報の開示請求に関する権利を定める(第10条)。また、市民の 責務には、人権の尊重、市民自治の推進、自然環境の保全、持続可能な地 域社会の実現、参画に責任ある発言と行動、市政運営に伴う負担を定めて いる(第11条)。青少年等にも、年齢相応にまちづくりに参画する権利が あり、市民と市は健全な育成環境の整備に努める(第12条)。事業者は、 環境への配慮、地域社会への寄与に努める(第13条)。市民は、地域自治 の推進に努め(第14条)、交流とまちづくりに努める(第15条)とされて いる。 (2)議会 議会に関しては、議会の権限に、市の重要な意思決定、市政運営の監 視・評価、政策の立案等をあげ、議会の責務には、市民の意思の反映、開 かれた議会運営をあげ、全会議の原則公開、公聴会の開催などを定めてい る(第16条)。また、議員に関しては、市民の信託に応え、開かれた議会
運営や政策形成への民意反映などが責務とされている(第17条)。 旧栃木市の自治基本条例では、全会議の公開を定めていたが(旧栃木市 自治基本条例12条4項)、地方自治法では秘密会の開催を認めているので (地方自治法115条1項)、現条例では、原則公開に改められている。 (3)執行機関 執行機関に関しては、市長は市民の信託に応え、指導力の発揮などの責 務を負い、就任時の宣誓が定められている(第18条)。行政委員会等にも、 市長等との協力連携が求められる(第19条)。市職員は市民全体の奉仕者 として職務を遂行、職員間の連携、職務遂行能力の向上、まちづくりへの 参画に努めるものとされている(第20条)。 市長の就任時の宣誓は、旧大平町の自治基本条例に由来する(旧大平町 自治基本条例27条)。 2-3.自治の進め方 (1)情報の共有 情報の共有に関して、市はまちづくりや市政の情報を公表、市民に説明 し、情報提供・会議公開・意見提案の制度の整備に努める(第21条)。情 報の公開に関しては、市は市民の知る権利を保障し、市の保有情報を公開 する(第22条)。個人情報の保護に関しても、市は個人情報の開示請求等 の権利を保障し、市民も個人情報の保護に配慮する(第23条)。 (2)参画と協働 参画と協働に関して、市は市民にまちづくりや市政に参画する機会を保 障しつつ、参加しない市民に不利益がないよう努める(第24条)。また、 市民と市はまちづくり推進のために協働し、市は市民のまちづくり活動を 支援する(第25条)。
住民投票に関しては、市長は市政の重要事項について住民投票を実施で き、選挙権者は6分の1以上の連署で住民投票の実施を請求でき、市長は 速やかに実施する。市は投票結果を尊重する(第26条)。審議会等に関し ては、市は委員の一定数以上を原則公募し、委員の男女・年齢・地域構成 に配慮し、会議を原則公開とする(第27条)。意見募集に関しては、市は 市民生活に影響する条例・計画・施策について、市民に情報を提供して意 見を聴取し、市民の意見を考慮し市の考え方を公表・説明する(第28条)。 住民投票の請求要件である6分の1以上の連署は、旧栃木市の自治基本 条例に由来する。旧栃木市の条例では、選挙権者に限らず定住外国人にも 投票権を認めていたが(旧栃木市自治基本条例36条)、旧大平町の条例で は、住民投票条例で個別に投票資格を定めるとしていた(旧大平町自治基 本条例38-39条)。現栃木市では、住民投票条例を別に定め、日本国民たる 選挙権者のみに投票権を認めている(栃木市住民投票条例14条)。 (3)市政運営 市政運営にあたっては、福祉の増進・民意の反映、公平公正・透明な事 務執行、最少経費・最大効果、地域資源の活用、持続可能な循環型社会、 計画的な行政改革、簡素な行政制度、効率・効果的な財産管理・活用に配 慮する(第29条)。 行政活動に関しては、市は総合計画を策定し、基本構想と基本計画は議 会の議決を経ること、計画の達成目標・進捗状況・評価結果を市民に公表 し、策定に市民の参画を求めることが定められている(第30条)。また、 市長は総合計画に基づき予算を編成し、市民に編成過程を説明し、財政資 料を公表する(第31条)。市は行政評価を実施し、評価結果を計画管理と 予算編成に反映させ、公表することが定められ(第32条)、外部監査の実 施も示されている(第33条)。 行政組織等に関しては、市長等は市民ニーズ、機能・環境変化、組織間
連携に配慮し、内部組織を編成する(第34条)。市は積極的な法務行政に 努め(第35条)、行政手続の適正化を図る(第36条)。市長他は市職員を 適正に配置し、研修を充実させる(第37条)。 関係団体に関しては、市は出資団体等に業務・財務情報の開示を要求 し、支援すること(第38条)、危機管理体制を強化し、市民・関係機関と 協力・連携し、自主防災組織を支援すること(第39条)が定められている。 通報・要望に関しては、市職員は犯罪行為などを速やかに通報し、市は 公益通報を受ける体制を整備し、通報者を保護すること(第40条)、市は 市民の要望・意見・苦情に迅速・誠実に対応すること(第41条)が定め られている。 連携・交流に関しては、市は近隣自治体・県・国と積極的に連携する (第42条)、国際交流を拡大し、市民の国際交流を支援する(第43条)も のとされている。 旧大平町の自治基本条例には、不利益救済機関を設置できると定められ ていたが(旧大平町自治基本条例37条)、実際には設置されていない(8)。現 条例でも、制度化のめどが立たないため規定から除かれている。 2-4.条例の見直し等 条例の運用と見直しに関しては、市民を中心に構成する市民会議を設置 し、条例の施行状況を検証・報告、市民に公表すること(第44条)、市民 参画のもと、定期的に条例を検証・見直すこと(第45条)が定められて いる。 (8) 旧大平町では、いわゆるオンブズマンではなく、人権擁護委員や行政相談員の拡充 を想定していた(「大平町自治基本条例の解説」26頁)。
表3 栃木市の自治基本条例の合併前後の比較 章 条 現栃木市 旧栃木市 旧大平町 総則 目的条例の位置付け 12 12 561 定義 3 3 2 自治の 基本理念 基本原則 基本理念 4 4 人権尊重の原則 5 6 3 自然との共生の原則 6 4 情報共有の原則 7 5① 6 市民参画の原則 8 5② 5 協働の原則 9 5③ 市民 市民の権利 10 7 11, 13-15 市民の責務 11 8 16-19 青少年や子ども 12 9 12 事業者の責務 13 10 地域自治 14 11 20, 21, 53 交流 15 52 議会 議会の権限・責務議員の責務 1617 1213 22, 2324 執行機関 市長行政委員会等 1819 1415 25-27 市職員 20 16 31 情報の共有 情報共有情報公開 2122 2829 7, 98 個人情報保護 23 30 10 参画と協働 参画 24 31 29 協働 25 32 住民投票 26 36 38, 39 審議会等 27 33 34 意見募集 28 35 30 市政運営 市政運営の基本 29 20 28 総合計画 30 19 40-42 財政運営 31 21 43-48 行政評価 32 22 51 外部監査制度 33 23 行政組織 34 17 32 法務行政 35 18 49, 50 行政手続 36 35 職員施策 37 33 出資団体等 38 24 危機管理 39 25 公益通報 40 26 要望等への対応 41 27 36 救済機関 37 広域連携 42 54 国際交流 43 55 条例の見直し等 市民会議条例の見直し 4445 3437 (注)表中の数字は条文 (出所)栃木市自治基本条例市民会議資料を参考に筆者作成
3.市民会議の運営実態 筆者は、栃木市自治基本条例市民会議の委員長を務めたが、会議では司 会に徹し、議論を喚起しながらも、結論の誘導は避けたつもりである。少 なくとも条例案にある市民の拡張的定義は筆者個人の意見とは異なる(児 玉2009:40)。旧栃木市の検討会議で、学識者で住民でもある青木章彦委 員長が何度も委員長試案を提示し、リーダーシップを発揮したのとは対照 的かもしれない(9)。住民でない筆者が会議を取り仕切ることへの引け目も あったが、あくまで市民主体の条例づくりを目指したからである。また、 当時の栃木市は合併直後で旧市町意識が根強く残り、旧栃木市長と旧大平 町長が争った市長選をめぐり軋轢も生じたため、地域間の融和や市民の合 意形成が最重要課題とされた。そうした事情をふまえ、ファシリテーター として市民会議の運営にあたり配慮した点がいくつかある(10)。 (1)議員の積極的関与 1点目は、議員の関与についてである。市民会議では議員にも積極的に 参加してもらい、対等な議論を心がけてもらった。市民会議では議員は発 言を控えるべきと意見がある。これは、市民側には「プロの議員がいれば 素人の市民は委縮して率直に発言できなくなる」という不安があり、議員 側にも「条例素案の作成に議員が関われば後から議会で修正しにくくなる」 といった懸念があるからである。実際、杉並区など議員を関与させずに条 例素案を作成した自治体もある。しかし、議員は議会の代表ではなく個人 として発言するのであり、議会が一議員の意見に拘束されることはない。 市民も議員に遠慮する必要はないし、議員に物怖じするようでは市民自治 の実現など果しえないと考えたのである。また当時は、自治基本条例の検 (9) 旧栃木市の自治基本条例に関しては青木(2009)を参照。 (10) 筆者が新聞取材に応じた記事として「そこが聞きたい:栃木市自治基本条例10月 施行:市民主導の手作り感、合併した新市の共通基盤をつくる」下野新聞2012年6 月12日26面。
討と並行して、議会基本条例の準備が議会内で進められていたため、市民 会議では、議員に進捗状況の報告を求め、自治基本条例と整合性を図るよ う要望した。 (2)横断的な班編成 2点目は、作業部会の編成についてである。概して市民会議は、幅広い 民意の反映や利益の代表が重視されるため、大人数になりやすい。特に合 併直後の市民会議は、旧市町からそれぞれ委員が選ばれており、初対面同 士の大所帯となるため、気心の知れた小人数で議論するというようにはい かない。全体で議論しようとすれば、発言の機会が限られてしまうため、 市民会議では、小人数の班に分けて出席者全員が毎回発言できるようにし た。ただし、班ごとに別々のテーマを割りふると、議論が断片化し全体を 把握できなくなるおそれがある。また、同じ地域の住民や同じ分野の団体 でまとまっても、交流の輪は広がらない。そこで、班の編成にあたって は、地域や分野が重ならないように委員を割りふるとともに、どの班も全 ての項目を一通り検討するようにした。また、会議では声の大きく話の長 い委員に発言が偏りがちだが、市民会議では、発言する際は要点を簡潔に 述べること、質問する時は資料の該当箇所を示すこと、自分とは異なる意 見にも耳を傾けることなどを確認し合い、「演説」から「傾聴」「対話」へ と促した。 (3)委員主体の検討 3点目は、検討方法についてである。自治体の会議では、事務局の職員 が資料を作成し、会議の委員は用意された資料について意見を述べるとい うのが一般的である。この市民会議では、もちろん委員の要求に応じて事 務局が必要な情報を提供することはあったが、原則として事務局ではなく 委員に検討のたたき台を用意してもらった。委員には旧大平町と旧栃木市
の条例を参考に、両条例の条文を項目ごとに対比させたワークシートに自 分の意見を事前に記入してもらう。会議当日はワークシートをもとに委員 どうしで発表し合い、事務局にはあくまで書記に徹してもらった。 (4)夜間・隔週の開催 4点目は、市民会議を夜間に隔週で開催したことである。会議の開催に あたっては、なるべく委員の要望を反映した。会社員も出席できるよう夜 間帯に設定し、体力的な負担に配慮して2時間以内に制限した。資料の整 理・作成に要する時間を加味して隔週で開催することとし、会議のない週 には前回の議事録と次回のワークシートが送付され、各委員には前回の内 容を確認しながら次回の準備をしてもらった。なお、開催場所について は、各地域での持ち回り開催も提案されたが、中心部での開催が結局は好 都合ということで、市民会議の開催は本庁で固定化され、代わりに市民説 明会を各地区で開催することになった。 (5)説明会の主催 5点目は、市民説明会を市民会議で主催したことである。中間報告をと りまとめた後、市内各地区で市民向けの説明会を開催することになった が、説明会の司会や説明は、市の職員に頼らず、市民会議の委員が務める ことにした。開催にあたっては、念のため想定問答集を作成したが、誠実 な対応に努めるかぎり、個人の見解を述べても、回答を控えてもかまわな いことにした。また、身近なテーマではないだけに、参加人数の低調が心 配されたが、説明側の人数を上回ればよいと割り切ることにした。だが実 際には、委員が手分けをして参加を呼びかけたこともあり、多くの市民が 説明会に訪れている。
4.小括:市民参画による自治意識の高揚 栃木市の自治基本条例の制定過程で何より重視されたのは、市民の主体 的な参画である。説明会に多数の市民が参加し、パブリックコメントにも 多数の意見が提出されており、所期の目的は達成されたと理解している。 礒崎初仁は、「自治基本条例が、首長・議会や住民の『自治』への意識 を高めるとともに、実際にこれに基づいて住民参加や協働が進むとすれ ば、重要な意味をもつ」との考えを示している(礒崎他2014:111)。 一般に、日本国憲法が保障する「地方自治の本旨」には、①地方公共団 体の自律を意味する「団体自治」と、②住民の自己統治を意味する「住民 自治」が含まれると解される(憲法92条)。地方分権改革を通じて前者の 「団体自治」は強化されてきたが、後者の「住民自治」の拡充はなお課題 として残されている。行政主導の公助から、住民主体の互助や共助へと、 地域社会のあり方をいかに変えるか。自治基本条例は、その制定を通じて 市民の自治意識を高め、市民参加や協働を促すという点では、制定の仕方 によっては、住民自治の拡充に資する有意義な取組みの一つといえる。 第2章 栃木市における自治基本条例の運用と検証 自治基本条例は、制定後どのように運用されているのか。栃木市では、 自治基本条例に基づき市民会議が設置され、条例の施行状況を検証し改善 事項を検討している。栃木市の自治基本条例を逐条解説しつつ(11)、関連す る制度の整備状況や施策の実施状況を検証する。 1.自治の考え方 1-1.前文・総則 (1)前文 栃木市自治基本条例の前文では、市民を中心としたまちづくりや市政運 (11) 栃木市「栃木市自治基本条例逐条解説書(改訂版)」参照。
営を実現するために、市の自治の最高規範として本条例を制定することを 宣言している。 本条例では、「住民自治」的観点から、市民を中心としたまちづくりや 市政運営を「市民自治」と捉えている。この前文は、本文とは異なり「で す・ます調」で書かれている。多少の違和感はあるが、こうした立法例は ある。また前文では、「県名発祥の地」や「太平山」「渡良瀬遊水地」など 栃木市の歴史的・地理的な特色にふれており、起草に関わった一般市民の こだわりもうかがえる。 栃木市では、平成27年11月に市の「木」「花」「鳥」「歌」を定めている が、前文に盛り込むかどうかはともかく、これらの告示を条例に位置づけ ることも検討されてよいだろう。 (2)総則 条例の第1章では、総則として条例の目的や位置づけを明らかにしてい る。本条例は、自治の基本理念や市民の権利・責務などを明らかにし、市政 の基本事項を定めることにより、協働のまちづくりを進め、市民自治の実現 を図ることを目的とする(第1条)。また、本条例は自治の最高規範に位置 付けられ、市は制度の整備や条例等の体系化に努め、市民、議員、市長等・ 市職員は各自の役割に従う(第2条)。ここで市民とは、市内に在住・通勤・ 通学する個人と所在する事業者をいい、住民よりも対象が広い。事業者は営 利・非営利、法人・団体を問わない。また、市とは議会と執行機関を含む基 礎的自治体を指し、市長等には行政委員会も含まれる。さらに、まちづくり と市政、参画と協働についても定義付けている(第3条)。 「市民」は多義的な概念であり、納税者・有権者・利用者など文脈に よって自ずと捉え方も変わる。地域の清掃や防犯活動、祭りなどのまちづ くりには企業や若者を含む幅広い協働が想定される一方、選挙や住民投票 を通じた市政運営への参画は有権者に限られる。地方自治法上の「住民」
は、住所のみを要件とし、国籍などを要件としていないため、法人や外国 人も含まれるが、選挙権などの付与は「日本国民たる」住民に限られる (地方自治法11条等)。本条例も同様の構造をもつものといえる。本条例 では、ひとまず広義に理解し、場面に応じて個別具体的に判断されること になる。市民の定義は条例によっても異なり、例えば「栃木市安全安心ま ちづくり条例」などでは、市民を「市内に居住し、通勤し、通学し、若し くは滞在する者又は市内を通過する者」と定義し、滞在者や通過者までを 含める。各条例における市民の定義を確認する必要がある。 1-2.自治の基本理念と基本原則 条例の第2章では、自治の基本理念に市民主体のまちづくりと市民の信 託に基づく市政をかかげ(第4条)、第3章では、自治の基本原則として 人権尊重、自然との共生、情報共有、市民参画、協働の諸原則をあげてい る(第5条∼第9条)。 (1)人権尊重の原則 人権尊重の原則(第5条)に関しては、合併前の旧市町でも「人権教育・ 啓発推進法」に基づき行動計画が策定されていたが、本条例に基づき、平 成26年3月に「栃木市人権施策推進プラン」が策定されている。また、 男女共同参画に関しては、旧市町では「男女共同参画社会基本法」に基づ き行動計画が策定されていたが、自治基本条例の制定と前後して平成23 年3月に「栃木市男女共同参画推進条例」が制定され、平成25年3月に「栃 木市男女共同参画基本計画(とちぎ市男女共同参画プラン)」が策定され た。平成27年11月には「栃木市男女共同参画都市宣言」も出されている。 さらに、いじめ防止に関しても、「いじめ防止対策推進法」の制定を受け、 平成28年3月に「栃木市いじめ防止対策推進条例」が制定されている。
(2)自然との共生の原則 自然との共生の原則(第6条)に関しては、自治基本条例に先立ち、平 成23年3月に「栃木市環境基本条例」が制定され、平成24年3月には「栃 木市環境都市宣言」がなされた。平成25年3月には総合計画と連動して「栃 木市環境基本計画」が策定されている。また、環境美化に関しては、合併 前の旧市町でも環境美化条例が制定されていたが、本条例の制定後、平成 25年3月に「栃木市をきれいで住みよいまちにする条例」が制定されて いる。 なお、栃木市では、男女共同参画都市宣言や環境都市宣言のほかにも、 平成24年3月に「栃木市非核平和都市宣言」がなされている。上記の都 市宣言にならえば、非核平和に関しても本条例の自治原則に位置づける余 地がある。 (3)情報共有、市民参画、協働の原則 情報共有の原則(第7条)に関しては、市民と市の情報共有がまちづく りの前提になるとの考えに基づき、本条例の第21条から第23条で情報共 有、情報公開、個人情報保護について具体的な定めがある。また、市民参 画の原則(第8条)に関しては、市政への市民参画が必要不可欠との考え に基づき、本条例の第24条で参画について定め、第26条から第28条で住 民投票、審議会等、意見募集を規定している。さらに、協働の原則(第9 条)に関しては、まちづくりは市民と市が協働して推進するとの考えに基 づき、本条例の第25条で協働等について定めている。 2.自治の担い手 条例の第4章では市民の権利と責務(第10条・第11条)、第5章では議 会や議員の責務(第16条・第17条)、第6章では市長・行政委員会等・市 職員の責務(第18条∼第20条)について定めている。
2-1.市民 (1)市民の権利 市民に関しては、市民の権利として、①安全・安心な生活、②行政サー ビスの利用、③市政情報の把握、④まちづくりと市政への参画、⑤意見の 表明、⑥個人情報の開示等に関する権利が掲げられている(第10条)。 同条各号に定める権利のうち、①安全・安心な生活に関しては、憲法が 保障する幸福追求権(憲法13条)、②行政サービスの利用に関しては、地 方自治法が定める住民の権利(自治法10条2項)を受けたものと解される。 ただし、地方自治法では住民は行政サービスを等しく受ける権利を有する と定めるが、本条例上の市民には住民以外も含まれるため、住民とその他 の市民が必ずしも等しく権利を有するわけではない。その他、③市政情報 の把握と⑥個人情報の開示等に関しては、本条例の情報共有の原則(第7 条)に、④まちづくりと市政への参画と⑤意見の表明に関しては、本条例 の市政参画の原則(第8条)や協働の原則(第9条)に基づいていると解 される。 栃木市では、安全・安心な生活に関しては、平成24年3月に市民の消 費生活の安定・向上を図る「栃木市消費生活条例」、平成25年3月には被 災者の生活再建を支援する「栃木市被災者住宅復旧支援条例」を制定して いる。 (2)市民の責務 一方、市民の責務に関しては、①人権の尊重、②市民自治の推進、③然 環境の保全、④持続可能な地域社会の実現、⑤参画での責任ある言動、⑥ 市政運営に伴う負担があげられている(第11条)。 ここでの責務とは、いわば道徳的指針であって、法的義務を課すもので はない。同条各号に定める責務のうち、①人権の尊重に関しては本条例の 人権尊重の原則(第5条)に、②市民自治の推進に関しては自治の基本理
念(第4条)に、③自然環境の保全に関しては自然との共生の原則(第6 条)に、⑤参画での責任ある言動に関しては市民参画及び協働の原則(第 8条・第9条)に、それぞれ基づくものと解される。 ④持続可能な地域社会の実現に関しては、環境面に限らず財政面も含め た広義の持続可能性と解されている。その他、⑥市政運営に伴う負担に関 しては、地方自治法が定める住民の義務(自治法10条2項)を受けたも のと解されるが、ここでの負担には、地方税に限らず分担金・使用料等の 負担も含まれ、さらには金銭に限らず労力などの負担も含まれると解され ている。 安全・安心な生活に関しては、市民の権利規定はあるが責務規定はな い。しかし、例えば「栃木市安全安心まちづくり条例」、「栃木市暴走族の 根絶に関する条例」、「栃木市暴力団排除条例」などには市民の責務が定め られている。安全・安心なまちづくりへの参画として、②市民自治の推進 や⑤参画での責任ある言動に含めて理解することもできるが、関連する条 例が多いことも考えれば、市民の責務として明記することも検討すべきで ある。 もっとも、市政運営に参画する権利を一部の住民に限定しながら、まち づくりの責務を住民以外にも広く負わせることについては、「参加・協働 の努力義務を伴った 準住民 を含む市民の拡張的統合は、地方公共団体に よる地域住民社会の組織編成への干渉になるおそれを孕んでいる」との指 摘にも留意する必要がある(飯島2014:205)。 その他、市民に関しては、市政功労者等を表彰する「栃木市表彰条例」、 名誉市民を顕彰する「栃木市名誉市民条例」がある。市民の功績を顕彰す るこれらの制度を条例に関連づけることも検討されてよい。 (3)青少年等 市民のうち、次代を担う子ども・若者に関しては、育成・支援の観点か
ら特別な定めがある。青少年や子どもには年齢相応にまちづくりに参画す る権利があり、市民と市は健全な育成環境の整備に努めるとされている (第12条)。 青少年に関しては、一般に概ね30歳未満を指すが、青少年健全育成条 例では6歳以上18歳未満と定義する例があり、対象年齢は一義的でない。 このため本条例では、「青少年や子ども」として20歳未満の男女を対象と 定義している。もっとも、法令上の接続詞には「や」ではなく「及び」を 用いるべきだろう。近年、国では、「子ども・若者育成支援推進法」の制 定を機に「青少年」を「子ども・若者」と言い換えている。また、公職選 挙法改正による選挙権年齢の引下げを受け、成人年齢を18歳に引き下げ る民法改正も行われた。こうした国の立法動向に合わせて用語や対象年齢 を見直す必要がある。 子どもに関しては、子ども・子育て支援法及び児童福祉法に基づき、平 成25年6月に「栃木市子ども・子育て会議条例」が制定され、子ども・ 子育て会議が設置されている。 栃木市では、蔵の街づくりに取り組む高校生サークル「とちぎ高校生蔵 部」の活動を支援している。これらの組織や事業を政策的に体系づけるこ とも必要となるだろう。 (4)事業者 事業者に関しても同様に特別の定めがあり、事業者は環境への配慮、地 域社会への寄与に努めるものとされている(第13条)。 平成29年6月に制定された「栃木市中小企業・小規模企業の振興に関 する条例」では、中小企業者は事業活動を通じた地域振興、自然環境・生 活環境への配慮に努めるものと定められている(同条例5条)。
(5)地域自治、交流 市民は、市内ではまちづくりに取り組み地域自治の推進に努め(第14 条)、市外とも積極的に交流しまちづくりに活かすよう努める(第15条) ことが求められている。 ここでの地域は、近隣から小・中学校区へと多層的な広がりをもつもの と解される。 市は、地域自治の推進に関して支援を行うとされている。地域自治に関 しては、合併時に旧栃木市を除く旧5町の区域に地域自治区が時限的に設 置されたが、平成26年12月に「栃木市地域づくり推進条例」が制定され、 これに代わる新たな地域自治制度として、旧栃木市を含む市内8区域に地 域会議とまちづくり実働組織、地域まちづくりセンター、地域予算提案制 度などが用意されている。地域予算は、各地域会議の提案に基づき休憩施 設や案内看板の設置、交通安全教室の開催などに使われている(12)。 一方、地域間の交流に関しては、地域自治の推進と異なり、市に責務は ないが、栃木市では、平成30年3月に「栃木市移住体験施設条例」を制 定し、地方創生のため市外からの移住を促している。 2-2.議会 (1)議会 議会に関しては、議会の権限として市の重要な意思決定、市政運営の監 視・評価、政策の立案等をあげており、また議会の責務として市民の意思 の反映、開かれた議会運営をあげ、全会議の原則公開、公聴会の開催など を定めている(第16条)。 公開の対象となる会議には、本会議や委員会のほか、議員全員協議会な ども含まれる。その他、議会に関する事項は、平成23年3月に制定され た「栃木市議会基本条例」に議会・議長・議員の使命などが定められてお (12) 栃木市『広報とちぎ』平成29年3月17日3面
り、同条例に基づき、市民を対象とする議会報告会が毎年市内各地で開催 されている。 (2)議員 議員に関しては、市民の信託に応え、開かれた議会運営や政策形成への 民意反映などが責務とされている(第17条)。 議員の責務に関しては、前述の「栃木市議会基本条例」のほか、平成 25年12月に「栃木市議会政治倫理条例」が制定されている。同条例では、 議員が遵守すべき政治倫理基準が具体的に定められ、違反した場合には、 市民の審査請求に基づき、市議会に政治倫理審査会が設置されることにな る。 2-3.執行機関 (1)市長、行政委員会等 執行機関に関しては、市長は、市民の信託に応え、指導力の発揮などの 責務を負い、就任時の宣誓が定められている(第18条)。 就任時の宣誓に関しては、平成26年5月に「市長の就任の宣誓に関す る要領」に則り、市長による宣誓が行われている。平成27年12月には「栃 木市長等政治倫理規範」が定められている。その他、市長は、国会議員資 産公開法に基づく「政治倫理の確立のための栃木市長の資産等の公開に関 する条例」により資産を公開しなければならない。 また、行政委員会等には、市長等との協力連携が求められている(第 19条)。 例えば市長と教育委員会の連携に関しては、地方教育行政法改正によ り、市長と教育委員会で構成される「栃木市総合教育会議」が開催され、 平成27年6月に「栃木市教育大綱」が策定された。市長と農業委員会の 連携に関しては、農業委員会法改正により、平成28年7月から市長が農
業委員を任命する新制度に移行した。いずれも国の制度改正を受けたもの だが、市と教育委員会による「歌麿まつり」への共催、農業者と農業委員 の意見交換会など、市政運営の面でも連携強化が図られている。 (2)市職員 市職員は、市民全体の奉仕者として職務を遂行、職員間の連携、職務遂 行能力の向上、まちづくりへの参画に努めるものとされている(第20条)。 職務の遂行に関しては、地方公務員法に基づく「栃木市職員の服務の宣 誓に関する条例」により市職員は服務の宣誓を行うことになっている。ま た、職員間の連携やまちづくりへの参画に関しても、例えば巴波川一斉清 掃への参加など、積極的な取組みが見られる。 3.自治の進め方 条例の第7章では情報の共有(第21条∼第23条)、第8章では参画と協 働(第24条∼第28条)、第9章では市政運営(第29条∼第43条)について 定めている。 3-1.情報の共有 (1)情報共有 市はまちづくりや市政の情報を公表、市民に説明し、情報提供・会議公 開・意見反映の制度の整備に努める(第21条)。 情報の提供に関しては、地方自治法に基づく「栃木市公告式条例」によ り条例等が公布され、また、「栃木市広報紙発行規則」に基づき広報紙が 発行されているが、他にもホームページやSNS、テレビ・ラジオ番組、 定例記者会見やプレスリリース、市政年報など多様な手段・媒体が活用さ れている。会議の公開に関しては、平成25年4月に「栃木市審議会等の 設置及び運営に関するガイドライン」が作成されている。意見の反映に関
しては、後述するパブリックコメント制度のほか、まちづくり懇談会ふれ あいトーク、市長へのアイデア直通便、市政メール箱や投書箱など複数の 機会・経路が用意されている。 (2)情報公開 市は市民の知る権利を保障し、市の保有情報を公開する(第22条)。 情報の公開に関しては、「栃木市情報公開条例」に詳細な規定があるほ か、例えば人事行政の運営状況に関しては、地方公務員法に基づく「栃木 市人事行政の運営等の状況の公表に関する条例」により、また財政状況に 関しては、地方自治法に基づく「栃木市財政状況の公表に関する条例」に より、それぞれ資料が公表されている。 (3)個人情報保護 市は個人情報の開示請求等の権利を保障し、個人情報の保護を図り、市 民も個人情報の保護に配慮する(第23条)。 個人情報の保護に関しては、「栃木市個人情報保護条例」に詳細な規定 があり、前述の情報公開制度と併せて「栃木市情報公開・個人情報保護審 査会」が設置されている。 3-2.参画と協働 (1)参画 市は市民にまちづくりや市政に参画する機会を保障しつつ、参加しない 市民に不利益がないよう努める(第24条)。 参画する機会を保障する一方で、参画しない自由にもあえて言及するの は、まちづくりや市政への参画はあくまで自発的なものであり、強制され るものではないことを確認するためと解される。例えば前述の地域自治制 度では、地域会議の委員は指名ではなく団体推薦や公募などによって選出
され、まちづくり実働組織はあくまで任意の組織となっている。 (2)協働 市民と市はまちづくり推進のために協働し、市は市民のまちづくり活動 を支援する(第25条)。 例えば市民活動の支援に関しては、施設面では活動拠点となる「とちぎ 市民活動推進センター」が設置され、財政面では「市民協働まちづくりファ ンド」を原資として「とちぎ夢ファーレ」による資金助成、人材面では「協 働のまちづくりパートナー派遣事業」による人的支援が行われている。 (3)住民投票 市長は市政の重要事項について住民投票を実施でき、選挙権者は6分の 1以上の連署で住民投票の実施を請求でき、市長は速やかに実施する。市 は投票結果を尊重する(第26条)。 ただし、投票結果は法的拘束力をもつものではない。住民投票に関して は、事案ごとに住民投票条例を制定するのではなく、住民投票制度を常設 することになり、平成27年6月に「栃木市住民投票条例」が制定された。 同条例は、住民投票の対象事項や請求資格者などについて詳細を定め、投 票資格者は選挙権者としている(栃木市住民投票条例第14条)。 (4)審議会等 審議会等に関しては、市は委員等の一定数以上を原則公募し、委員の男 女・年齢・地域構成に配慮し、会議を原則公開とする(第27条)。 ここでの審議会等は、審査会・委員会などの名称を問わず、法定に限ら ず任意設置の場合も含まれる。審議会の目的・性格・規模はまちまちであ り、例えば市民会議のように多数の一般市民によって構成され、民意を市 政に反映させるため審議を行うものもあれば、建築審査会のように少数の
学識経験者によって構成され、専門的見地から例外的許可への同意や審査 請求に対する裁決を行うものもある。そのため、委員の公募に関しては、 公募人数を明記せず、例外的に非公募とする場合もあるが、前述の審議会 等ガイドラインでは、公募委員は原則2人以上としている。委員の男女比 率に関して、平成28年8月に策定された「栃木市審議会等委員への女性 登用推進要綱」では、女性35%を目標としており、男女共同参画推進条 例では、男女共同参画審議会の委員について男女それぞれ4割以上となる ようさらに厳格に定めている。 (5)意見募集 市は市民生活に影響する条例・計画・施策について、市民に情報を提供 して意見を聴取し、市民の意見を考慮し市の考え方を公表・説明する(第 28条)。 意見の募集に関しては、平成27年6月に「栃木市パブリックコメント 手続条例」が制定されている。同条例では、パブリックコメント手続の対 象事項や意見提出の方法などを詳細に定めている。 3-3.市政運営 (1)市政運営 市政運営にあたり、市は福祉の増進・民意の反映、公平公正・透明な事 務執行、最少経費・最大効果、地域資源の活用、持続可能な循環型社会、 計画的な行政改革、簡素な行政制度、財産の管理・活用に配慮する(第 29条)。 同条各号に関連する取組みとしては、例えば①福祉の増進に関しては狭 義に解すれば「栃木市共生社会実現のための障がい差別解消推進条例」(平 成31年4月)等、②公平公正・透明な事務執行に関しては「栃木市行政手 続条例」、④地域資源の活用に関しては「栃木市観光基本計画」(平成26年
3月)、⑤持続可能な循環型社会に関しては「栃木市環境基本計画」(平成 25年3月)、③最少経費・最大効果と⑥計画的な行政改革に関しては「栃 木市行政改革大綱・財政自立計画」(平成24年11月)、⑦簡素な行政制度 に関しては総合支所の組織再編(平成28年4月)、⑧財産の管理・活用に 関しては「栃木市橋梁長寿命化修繕計画」(平成25年4月)などがあげら れる。 (2)総合計画 行政活動に関しては、市は総合計画を策定し、基本構想と基本計画には 議会の議決を経ること、計画の達成目標・進捗状況・評価結果を市民に公 表し、策定に市民の参画を求めることが定められている(第30条)。 地方自治法改正により総合計画策定の義務付けはなくなったが、本条例 に基づき総合計画の策定と議決を義務付けている。総合計画に関しては、 平成25年3月に「栃木市総合計画」が策定され、岩舟町と合併を受けて 平成27年3月に同計画が一部改訂されている。 (3)財政運営 市長は総合計画に基づき予算を編成し、市民に予算の編成過程を説明 し、財政資料を公表する(第31条)。 予算編成に関しては、当初予算の編成方針、予算要求と査定状況、施政 方針と主要事務事業をホームページで公表している。財政資料に関して は、前述の「栃木市財政状況の公表に関する条例」により財政状況を公表 している。 財政運営に関しては、通則から会計、税・税外収入、契約、財産まで各 種の手続条例があり(13)、例えば平成24年9月には債権管理の適正化を図る (13) 例えば「栃木市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条 例」、「栃木市税条例」、「栃木市長期継続契約を締結することができる契約を定める 条例」、「栃木市公の施設の指定管理者の指定手続等に関する条例」、「栃木市財政調 整基金条例」など。
「栃木市債権管理条例」が制定されているが、専門的かつ技術的な制度の ため一般市民には理解しがたい。また、財政支援に関しても、法人等には 助成・奨励金・融資・減税などの優遇措置(14)、個人には医療費助成・介護 手当・祝金支給・奨学金貸付など助成制度があり(15)、例えば平成29年9月 には給付型奨学金を設ける「栃木市篤志奨学金給付条例」が制定されてい る。医療費助成だけでも子ども向けから妊産婦、ひとり親家庭、重症心身 障がい者向けがあり、福祉の増進を理由に財政支出は膨らみがちである。 財政民主主義の観点からは、これら自治体財務・財政制度を自治基本条例 の中に位置づけることも重要と考える。 (4)行政評価・外部監査 市は行政評価を実施し、評価結果を計画管理と予算編成に反映させ、公 表することが定められ(第32条)、外部監査の実施も示されている(第33 条)。 行政評価に関しては、平成28年4月より「栃木市行政評価システム実 施要領」に基づき従来の事務事業評価に政策評価と施策評価を加え、基本 施策評価表と単位施策評価表を公表することになった。また、外部監査に 関しては、平成25年3月に「栃木市個別外部監査契約に基づく監査に関 する条例」を制定している。 (5)行政組織等 行政組織等に関しては、市長等は市民ニーズ、機能・環境変化、組織間 (14) 例えば「栃木市社会福祉法人等の助成に関する条例」、「栃木市企業立地促進条 例」、「栃木市中小企業者に対する融資に関する条例」、「栃木市重要伝統的建造物群 保存地区における栃木市税条例及び栃木市都市計画税条例の特例を定める条例」な ど。 (15) 例えば「栃木市災害見舞金条例」、「栃木市こども医療費助成に関する条例」、「栃 木市遺児手当支給条例」、「栃木市赤ちゃん誕生祝金条例」、「栃木市在宅寝たきり老 人等介護手当支給条例」、「栃木市奨学金貸付条例」など。
連携に配慮し、内部組織を編成する(第34条)。 一般に、行政組織に関しては複雑性や硬直性、縦割り行政の弊害などが 指摘されるため、簡明性や柔軟性、連携強化を促すものである。 行政組織に関しては、「栃木市部設置条例」、「栃木市役所総合支所設置 条例」、「栃木市役所支所及び出張所設置条例」などに基づき組織が設置さ れているが、組織機構は必要に応じて見直されている。例えば平成28年 4月には福祉ニーズに対応し保健福祉部を分割し、こども未来部が新設さ れている。 (6)法務行政 市は積極的な法令の解釈運用、条例等の制定改廃に努める(第35条)。 分権型社会では国の通知に従う画一的な行政運営から脱却し、地域の課 題解決のため高度な政策法務が自治体に求められる。 栃木市では、平成23年11月に県内で初めて弁護士を特定任期付職員と して採用しており、争訟法務に関しては、土地開発公社の工場跡地取得問 題をめぐる訴訟で、宇都宮地裁では公社の損害賠償請求が棄却されたもの の、東京高裁で逆転勝訴し最高裁で判決が確定した。また、政策法務に関 しては、例えば平成25年3月に制定された「栃木市をきれいで住みよい まちにする条例」は、立入調査や罰則、行政代執行などを盛り込み実効性 の高い条例となっている。また、平成26年12月に制定された「栃木市地 域づくり推進条例」では、地方自治法や合併特例法上の地域自治区とは異 なる独自の地域自治制度が構築されている。 (7)行政手続 市は行政手続に関して公正の確保、透明性の向上、手続の迅速化を図る (第36条)。 行政手続に関しては、行政手続法及び「栃木市行政手続条例」に基づき、
許認可等の審査基準及び標準処理期間、不利益処分基準を公表している。 また、平成27年4月には行政手続法改正に伴い行政指導の方式、指導中 止等や処分等の求めについて同条例の一部が改正されている。平成27年 12月には行政不服審査法改正に伴い「栃木市行政不服審査会条例」が制 定されている。また同月、行政手続きのオンライン化を定める「栃木市行 政手続等における情報通信の技術の利用に関する条例」が制定されている。 (8)職員施策 市長その他の任命権者は、人材育成のため市職員を適正に配置し、研修 を充実させる(第37条)。ここに任命権者とは、市長のほか行政委員会、 消防長、公営企業管理者、議長を指す。 職員の処遇に関しては、地方公務員法に基づく各種条例により職員の定 年・再任用、分限・懲戒の手続等が定められている。「栃木市職員定数条 例」に基づき定員管理が行われており、平成27年3月には「栃木市定員 適正化計画」が策定されている。職員の配置に関しては、定期的に人事異 動が行われるが、効率的運営と人材育成の両観点から適正な配置を求める ものである。 人材の育成に関しては、平成26年3月に「栃木市人材育成基本方針」が 策定され、「栃木市職員研修計画」に基づき、体系的な研修が実施されて いる。職員の自己研鑽に関しては、地方公務員法に基づく「栃木市職員の 修学部分休業に関する条例」と「栃木市職員の自己啓発等休業に関する条 例」により修学や自己啓発の機会が提供されている。 (9)関係団体 関係団体に関しては、市は出資団体等に対して業務・財務情報の開示を 要求し、支援することが定められている(第38条)。 出資団体等に関しては、地方自治法に基づき「財政援助団体等監査」が
実施されており、行政改革大綱・財政自立計画に基づき外郭団体の経営改 善にも取り組んでいた。 (10)危機管理 市は危機管理体制を強化し、市民・関係機関と協力・連携し、自主防災 組織を支援することが定められている(第39条)。 火災等に関しては、消防組織法に基づき、「栃木市消防団設置条例」に より消防団を設置している。災害や水害に対しては、災害対策基本法等に 基づき、「栃木市防災会議条例」「栃木市災害対策本部条例」により防災会 議や災害対策本部が設置され、「栃木市地域防災計画」や「栃木市水防計 画」が策定されている。また、武力攻撃事態に対しては、国民保護法に基 づき、「栃木市国民保護協議会条例」「栃木市国民保護対策本部及び緊急対 処事態対策本部条例」により国民保護協議会や国民保護対策本部等が設置 され、「栃木市国民保護計画」が策定されている。これらの危機管理対策 を総合的に推進するため、平成25年5月に「栃木市危機管理対策会議」が 設置されている。市民・関係機関との協力・連携に関しては、消防本部や 消防団、自治会などが参加する「総合防災訓練」や「地域防災訓練」が毎 年実施されており、平成28年3月には「栃木市地域支え合い活動推進条 例」が制定されている。同条例では、要支援者に係る情報の取扱いを定め ている。その他、自主防災組織に対しては、市は「栃木市自主防災組織補 助制度」により、自治会等による自主防災組織の設立や活動に対し補助金 を交付している。 (11)通報・要望 公益通報に関しては、市職員は犯罪行為や法令違反行為を速やかに通報 し、市は公益通報を受ける体制を整備し、通報者を保護することが定めら れている(第40条)。
公益通報とは、事業者に関する法令違反行為を労働者が不正の目的なし に事業者内部、権限のある行政機関、事業者外部のいずれかに通報するこ とをいう。公益通報者保護法では通報した労働者が不利益な取扱いを受け ないよう保護しており、本条例では市職員に公益通報を義務付けている。 この公益通報者保護制度では、市は、事業者として内部の職員等から、行 政機関として外部の労働者等から、それぞれ通報を受け付けることにな る。 公益通報に関しては、平成28年6月に「栃木市公益通報に関する事務 処理要綱」が本条例に則して改訂され、平成31年3月には「栃木市コン プライアンス推進条例」が制定されている。 また、市は市民の要望・意見・苦情に迅速・誠実に対応することが定め られている(第41条)。 要望等への対応に関しては、例えば「まちづくり懇談会ふれあいトーク」 で出された質問・要望に対する回答と経過・対応状況を報告しており、 「市政メール箱」などに寄せられた主な意見に対する回答をホームページ で公表している。職員研修では、「接遇研修」や「広聴広報力向上講座」・「ク レーム対応力講座」などへの受講を通じて対応力の向上が図られている。 (12)連携・交流 連携・交流に関しては、市は近隣自治体・県・国と積極的に連携する (第42条)、国際交流を拡大し、市民の国際交流を支援する(第43条)も のとされている。 自治体間の連携に関しては、例えば災害時の対応として、栃木県内の市 町村とは「災害時における市町村相互応援に関する協定」、小山市や佐野 市など近隣自治体とは「消防相互応援協定書」などを締結している。平成 24年11月には北海道滝川市との間に「大規模災害時における友好親善都 市間の相互応援協定書」が締結されている。
国際交流に関しては、中国金華市や米国エバンズビル市との交流を行っ ており、「栃木市国際交流協会」を通じて在住外国人支援事業を実施して いる。 4.条例の見直し等 条例の運用と見直しに関しては、市民を中心に構成する市民会議を設置 し、条例の施行状況を検証・報告、市民に公表すること(第44条)、市民 参画のもと、定期的に条例を検証・見直すこと(第45条)が定められて いる。 平成25年6月に制定された「栃木市市民会議条例」に基づき、「栃木市 市民会議」が設置された。同会議には自治基本条例部会と総合計画部会が 設置されており、自治基本条例部会での検討を経て、住民投票条例やパブ リックコメント手続条例の素案が審議されたほか、平成28年12月には「栃 木市自治基本条例の見直しに関する提言書」がとりまとめられた。同部会 では、公益通報に関する事務処理要綱の不整合を指摘したほか、成人年齢 の引下げに合わせ青少年等の再定義を提言している(16)。もっとも、市民会 議の検討は、制度の未整備や制度間の齟齬など条例の運用上の不備を検証 するにとどまった。今後は条例自体の改正を念頭に置いた検討が必要とな るだろう。 表4 栃木市自治基本条例の関連制度 第1条 目的 − 第2条 条例の位置付け − 第3条 定義 − 第4条 自治の基本理念 − 第5条 人権尊重の原則 ※人権施策推進プラン ※いじめ防止対策推進条例 ・男女共同参画推進条例 ※男女共同参画基本計画 ※男女共同参画都市宣言 (16) 栃木市市民会議「栃木市自治基本条例の見直しに関する提言」平成28年12月20日