ミツ/ヾチ科 学 19(2):68-72 HoneybeeScience(1998)
ブラジル産 プロポ リスーその種類 と分布
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プ ロポ リスの起源
ブラジルは赤道 と南回帰線 の間 (北緯5度か ら南緯33度,西経 35度か ら西経 74度) に位 置す る熱帯 の国で, その面積 は8,500,000km2 にも及ぶ.その広大な国土 は,気候 も土壌 も大 変変化 に富んでお り,そのため各地 に固有の生 態系が存在す る.Sampaio (1950)や Veloso and Goes-Filho(1982)によればブラジルに 見 られ る大植生帯 は次の通 りとなる. アマゾン 熱帯雨林,大西洋岸森林地帯, アラウカ リアス 森林帯 (マツ林), ブラジルサバ ンナ (セラー ド),半乾燥サバ ンナ (カーティ ンガ),パ ンク ナル複合帯 (冠水平原) である図 1. このほか にもマ ングローブ帯や砂丘のような規模 の小 さ な植生帯がある. アマゾン熱帯雨林 は,高温多雨の地帯 に広が り,国土の北方を占め,アマゾナス州,パ ラ州, アクレ州, ロン ドニア州を覆 う,植生 は深 く, 多層構造 となる.最上層 は30-40mに達す る 高木の樹冠部である. アマゾン熱帯雨林 の種多 様僅 は,一般 にも,世界で最 も種の多様度 の高 いひとつ としてよ く知 られている. この地域で は,多種多様 を極 める植物 とハ リナシバチを中 心 とす る多 くのハナバチがいるにも関わ らず, プロポ リスの生産 についてはまった く何 も知 ら れていない. 大西洋岸森林帯 は, リオ ングランデ ドノルチ 州か らリオグランデ ドスル州 までに及ぶ山岳地 帯 または海岸平野 に広が る.その最上層 は,30 図1 ブラジルの主な植生帯∼35mに達 す る森林 の頂部 とな り,全体 に コン パ ク トな外観 とな っている.農地開発 のために 森林 自体 は広範囲 に破壊 されているが, この一 帯 が ブラジルの プ ロポ リス生産 の実 に90%を 支えて いる.居住地 を中心 に森林破壊 が進 んで いるが,一方 で固有 の熱帯植物や, ユーカ リノ キなどの導入植物が大規模 に植栽 されている. ミナスジェ レイス, サ ンパ ウロ,パ ラナ, およ びサ ンタカク リーナ州が この地域 に当 たる. こ れ らの州 は,今 日で は近 代 的 な養蜂 も盛 んだ が,以前か らプロポ リスの加工業者 や輸 出業者 が集 中 して いた. これまで に実際 に確認 されて いるブラジル産 プロポ リスの物性,化学成分, 生理活性 などは, この地域 か ら産 出され る生産 物 につ いての もである. ア ラウカ リアス森林帯 はパ ラナ松 を優 占種 と す るが, それ以 外 の被子 植 物 も豊 富 に分布 す る. また木生 シダ類 や草本類 も多 い. この植生 は温暖で多湿な この地域 に適 してお り,元来, サ ンパ ウロ州 や リオ グラ ンデスル州の一部 や, パ ラナ州やサ ンタカ タ リーナ州 のほぼ全域 を覆 うものであ るが,木材生産 のための伐採でかな りの部分が破壊 され,今 日で は小規模養蜂家が プロポ リスやハチ ミツ生産 を行 っているご く限 られた地域 を除 いて は実質 的には失 われて しま っている. この地域 のプ ロポ リスにつ いて も一 部 その成分 や生理活性 が調 べ られている. ブラジルセ ラー ドは, ブラジル中央部 に広が り, ゴイアス州, マ トグロ ッソ州, マ トグロ ッ ソスル州, ミナスジェライス州 と, サ ンパ ウロ 州 やアマゾ ン地域 の一部 を も含 んでいる. この 地域 はサバ ンナのよ うな植生 で,小潅木 と低木 林 か らなる.通常 これ らの樹木 は,表皮が厚 く て, よ じれた樹皮 を持っ. これは土壌 の貧栄養 状態,特 に ミネ ラル分 の不足 で特徴的 に現れ る 傾 向である. こうした潅木林 が覆 う地域 は高温 で比較的雨 が多 い. この地域 で採集 され るプロ ポ リスについて はこれまで特 に研究 されて はい ない. 半乾燥性 サバ ンナ (カーテ ィンガ) はブラジ ル東北部 の, マ ラニ ヤオ, ピアウイ, セアラ, リオグランデ ドスル,パ ライバ, ベルナ ンプチ 69 ヨ, セル ジペ, ア ラゴアスおよびバ ヒア州 にま たが って分布す る. カーテ ィンガの植生 は低木 とブ ッシュで乾期 には落葉す る.高温 ・乾燥 に 適応 したサボテ ン類 も当地 の代表的な植物であ る. この地域 の ビナ ウ州の ピコスとい う町の隣 にはブラジルで最大級 の養蜂生産基地 のひとつ がある.地域内の蜂群数 は約30,000,これ ら多 数 の蜂群 はハチ ミツ生産用 とな っている. この 地域 のプロポ リスは他 と性質が異 な り,当地産 のプロポ リスを含んでいる ブラジル産 プロポ リ スはアル コール抽 出 した場合 にあま りよい価格 で取 り引 きされて いない. この種 のプロポ リス の研究 はまだ進 んでお らず, したが ってなぜ価 値 がないといわれ るのか科学的な根拠 はない. パ ンクナル複合帯 はマ トグロッソ州 とナ トグ ロッソ ドスル州 にまたが る. さ らに国外へ広が り,パ ラグアイ, ボ リビア, アルゼ ンチ ンにま で達 し, アルゼ ンチ ンで はチ ャコと呼ばれてい る.これ は冠水平原で,無数 の水路 で寸断 され, 世界 の野生生物 の宝庫 と して紹介 され ることも あ る.雨期 に は川 が氾濫 して両 岸 の地 表 を洗 い, また肥沃化す る. その結果,非常 に豊 かな 植生 が作 り出 されている. この植生 は最標高地 における樹種 と草本種 の多様 な森林 と冠水地 に おけるそれよ りはやや多様度 の低 い ブッシュや 低木林 か らな っている. この地域 のプロポ リス につ いて はほとん ど何 もわか っていない. い く つか実験的得 た ものは大西洋岸森林 とよ く似 た ものであ った. プロポ リスは植物 の疹出物 か らミツバチが作 り上 げる生産物である (図2).巣箱 の中では働 き蜂 によ って隙間を埋 め るのに使われた り,栄 箱 内 の微生 物 を抑 え るため に用 い られて い る (Marcucci,1995).ブ ラ ジルで は植生 の変化 が大 きいので, ブラジル産 プロポ リスは物性, 化学成分,生理活性 ともに大変大 きな変動があ る. 60年代 に ブ ラジルで起 こった ミツバ チの ア フ リカ蜂化 は,一方 で プロポ リス生産を飛躍的 に増産 させ る決定 的な要 因 とな った. その当時 まで飼育 されていたセイ ヨウ ミツバチの亜種間 (例 えばイ タ リア ン種Apismelliferaligustica
図2 コショウボクの樹皮から疹出物を集める アフリカ蜂化 ミツバチ やメ リフェラ種A.melliferamelliferaなど) の雑種であ った.1956年 にブラジルの南東部 (サ ンパ ウロ州 リオクラ一 口) にアフ リカ ミツ バチが導入 され,セイヨウ ミツパテと交雑 を重 ね,今 日アフ リカ蜂化 ミツバチとして知 られ る 集団 となった
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,年間に,このハチは南米,中 栄, そ して90年代初頭 には北米 に達 した. こ の-チの性質や行動 はセイ ヨウ ミツパテのそれ とはさまざまな点で異 な っている (Sheppard et al,1991;Diniz Filho and Malaspina,1995). プロポ リス収集,生産 に関 していえば, アフ リカ蜂化 ミツバチはプロポ リス蓄積性でセイ ヨ ウ ミツパテをはるかに しの ぐ しか しなが らア フ リカ蜂化の初期 には,- チ ミツ生産 の際には プロポ リスが邪魔 になるので,養蜂家 はプロポ リス植物樹脂を集める採集蜂が多 い系統を避 け て女王蜂を生産 していた.つまり, アフ リカ蜂 化 ミツバチは養蜂家 によ ってプロポ リス生産量 が少 な くなるように選抜 されていたのである. 過去10年間で市場価格が高騰 し,逆転現象が 見 られた.すなわち養蜂家が さらなる生産をあ て こんで植物樹脂をよ く集 める ミツバチか ら女 王蜂を生産す るようにな ったのである. 採 集 ブラジルの養蜂家 は 4種類 の方 法で プ ロポ リスを生産 している. (》巣枠 や巣箱 の壁面 か らへ らで掻 き取 る方 紘. この方法では,木屑が入 った り,巣箱 に塗 った塗料 が混入 した りす るお それがあ る (図 3). この場合,不純物 の混入で原料価格 は下が る. ②巣箱 の蓋 と巣箱 の間 に 4つの木片 を巣箱 の四隅において隙間を作 る方法. ミツパテはで きた隙間をプロポ リスでふ さごうとす る.そ こ で木片を置 いてか ら20-30日後 にこのプロポ リスを集 める. この方法な らば木屑の混入やそ の他 の不純物の混入 は防げる. ③細かい目のナイロン網 を蓋の内側に置 く方 法. ミツバチはこの網 目をプロポ リスでふ さご うとす る.20-30日後,この網 を取 り出 し,堅 くして後で取 りやすいよ うに冷凍庫 に入れて冷 やす. この方法 は不要な木屑 の混入を防 ぎ, ま た小 さな粒状の生産物を得 ることができる. ④特製の巣箱を用いる方法. この巣箱 は最近 ある養蜂家 によって特 にプロポ リス生産のため に考案 された ものである.巣箱 の側面が細 い木 片を順 に重ねて差 し込むよ うにで きていて, ミ ツパテがプロポ リスを詰 める部分が常 に空 いて いるものである. この方法では,混入物のない 大 きな板状のプロポ リスを得 られる. 貯 蔵 収穫後 のプロポ リスは食品保存用の紙 に くる んで冷凍庫で貯蔵 されている.
加 工
加工方法 は企業 によってそれぞれ独 自の技術 を持 っているためさまざまな ものがある. ブラ 図 3 金属製のへらでプロポリスをかきとるジノウで最 もよ く行 われて い るの は7:3(ェ ク ノール量 :原料 プ ロポ リス重 ) の比率 で作 られ る抽 出液で あ る.抽 出期 間 は,企業 によ って ま ち まちで,数週間か ら数 か月 であ る. 成 分 サ ンパ ウロ州立大学 (UNESP)リオ クラ 一 口校 の生物科学研究所社会 性昆虫研究 セ ンタ ーの実験室 で はプ ロポ リスはふ たっの 目的で分 析 されて い る. ひ とつ は, その成分,物性,化 学性, お よび生理活性 で あ り, もう一 つ は国 内 外 の市場 をね らう生産物 の品質管理 に関す る も のであ る.物性 や官能試験 で は,匂 い,芳香, 粘 性,粒状性が中 心 に調 べ られ る.化学 的 な性 質 と して は水分,灰分, ろ う分,可溶固形分, 酸 化性, フラボノイ ド, フ ラボノール, フラボ ン量 な どで あ る.製 品 の品 質 に影 響 が あ るの は ,最 近 や酵母 な どの微生物 によ る汚染 や,重 金属,合成抗生 物質 の添加 によ る混入 な どであ る. フラボノイ ド類 の量 も同様 に重要 な位 置付 けにあ る. これ らの物質群 はプ ロポ リスに最 も 多 く含 まれ,他 の有機酸 と もど も生理活性 を示 す もので あ る (Debuyser,1983;Dirnov et a1.,1992;Ban kovaetalリ1992;Changand Cheng,1996). これ らの研究 は,植物 の多様度 が高 くい く種 類 かの タイプが あ る熱帯地 域 か ら得 られ るプロ ポ リスが どのよ うな もので あ るかを知 るのには 不可欠 で極 めて重要 な意 味 を持 ってい る. 図 は ブ ラジル各地 か ら得 られた プ ロポ リスのそれぞ れ の タイプを示 して い る. これ らは各 プロポ リ ス試料 が それぞれ異 な って いて, あ る地域 のあ る巣箱 の ミツバ チの働 き蜂 は, それぞれ異 な る 植物樹脂 を集 めて い るのだ とい うことを示 して い る. したが って, まず, ブ ラジルの プ ロポ リ ス は成 分 的 に は雑 多 な もの で あ る と考 え られ る. 図5は各 種 の プ ロポ リスの アル コー ル抽 出 液 を色別 に並 べ た ものを示 して い る. これ らの 抽 出液 は70%のエ タノールで抽 出後, 波過 し, 脱 ろ う した もので あ る.各 サ ンプル問 の色 の違 い も極 めて明瞭 に見 て とれ る. 隣 り合 う地 域 の 図4 ブラジル各地の見かけの異なるプロポリス (×25で撮影) サ ンプルで も色 が ちが うこと もあれば (例 えば 図5中 のRG :リオ グ ラ ンデ ドス ル州 の2試 料 ),離 れ た2地 域 のサ ンプルが似 た色 を示 す こと もあ る (凶 5で はMG:ミナス ジェライス 州 とPR :パ ラナ州,AM :ア マ ゾ ナ ス州 と RG :リオ グラ ンデ ドスル州,あ るいはBA :′ヾ イア州 とRG :リオ グラ ンデ ドスル州, 州 の位 置 につ いて は図1を参照). 今 日まで, 自然 に 得 られた プ ロポ リスの物性 に関係 したデー タが アル コール抽 出液 の色 にせ よ,生三哩活性 にせ よ なか った. したが って, これ らの特質 を プ ロポ リスの品質分類 に用 いるは っきりした理 由がな か ったのであ る.
72 図5 タイプの異 な るプロポ リスのアルコール抽 出液 (円内は州名 の略 :図 1参照) ブラジルの植生 の多様 さを考 えれば, この研 究 はまだ途上 であ り, ブ ラジル産 プロポ リスの 物性 ・化学性 に基づ く完全 な基準作 りまでには さ らに長 い道 が待 ってい るだろ う. (著者の住所 は下記参照) (翻訳 中村 純) 引用文献 Bankova,V.,Christov,R..SLoev,G"andPopov, S.1992.∫.Chromatogr.607:150-153. Chang,P.C andG.Wong.1996,BeeWorld77
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MALASPINA,OsMAR.and MAR10 SERGIO PALMA. TheBrazilian propolis:typesand distribution HoneybeeScience(1998)19 (2):68-72.Depart -mentofBiology,CEIS/CEVAP,InstituteofBi o-cienclaSOrRioClaro,SaoPaulo,UNESP,P.0 199,13506-900,Brazll.
ThecomposltionofpropollSISdeeplydepe nd-ingontheplantsourcesothattherearemany typesofpropolisevenonlyinBrazilbecauseof the diversity ofplantin thecountry.In this articlethetypeofpropolisfrom differentvege -tation zonesaredescribed.Adding Africaniza -LionofhoneybeeinBrazilandmethodsofpr o-poliscollectionarealsodiscussedasthepossi -bleparameterswhichaffectonthetypeofpr o-polis,Thosefactorsmakedifficulttoestablisha standardofpropolisproducedin thiscountry.