第16 回日本褥瘡学会近畿地方会学術集会 -学会開催報告-第16回日本褥瘡学会近畿地方会学術集会
宮嶋 正子
(学術集会長・武庫川女子大学看護学部教授)
第16回日本褥瘡学会近畿地方会学術集会開催報告
開 催 日:2019 年 3 月 10 日(日)
開催場所:武庫川女子大学中央キャンパス 公江記念講堂
学術集会テーマ
地域包括ケア時代の
褥瘡予防管理ネットワークの構築
シンポジウム「未来を拓く地域包括ケアイノベーションシンポジウム」 座長:中村 義徳(天理よろづ病院 在宅世話どりセンター) 藤本由美子(和歌山県立医科大学 保健看護学部) シンポジスト:林 功(林 医院 阪神在宅医療研究会) 正壽佐和子(森之宮病院 看護部外来科) 前田佳代子(武庫川女子大学 生活環境学部) 祇園 玲子(高須地域包括支援センター) 長岡 浩(パラマウントベッド株式会社) 共催特別講演「二分脊椎患者の褥瘡を識る」 寺師 浩人(神戸大学大学院医学研究科) ハンズオンセミナー 細川 朱美(スミス・アンド・ネフュー株式会社) 杉元 雅晴(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部) 青山 史絵(ユニ・チャーム株式会社) 田中 良和(ユニ・チャーム株式会社) ランチョンセミナー 大浦 紀彦(杏林大学医学部 形成外科) 渡邊 光子(関西労災病院 リソースナースセンター) 田中マキ子(山口県立大学 看護栄養学部) 桒水流健二(三菱神戸病院 形成外科) 一 般 演 題 12 題 企業展示 30 社 市民公開講座「自分らしく最期まで生ききるために考えよう!介護」 遥 洋子(遥 洋子ネットワーク) — 3 —武庫川女子大学看護学ジャーナル Vol.05(2020) でいるところで、ICT の情報をリアルタイムに 共有する仕組みを作り始めている。皮膚排泄ケ ア認定看護師として入院時から退院期の準備を 「つなぐ」支援、在宅への継続ケア(創処置、リ ハビリテーション、栄養管理、服薬管理、スキ ンケア、本人と家族を含めた支援)をするため の「合わせる」支援、そして自宅退院の計画段 階では退院調整カンファレンスを開催し、「整え る」支援を行なっている。家に帰る希望のある 方に対しては、ADL・セルフケア能力・介護力 評価を行い、退院後は病棟看護師による訪問指 導を計画する。ケアマネージャーや訪問看護ス テーションに褥瘡ケアサマリーを送り、情報共 有をしている。在宅で過ごす環境のなかで新た な褥瘡が発生することがあり、外来通院で発見 することがある。セラピストとともに同行訪問 の計画をたて「備える」支援を行なっている。
管理栄養士の立場から
-地域包括ケア時代の褥瘡予防管理ネットワー クの構築における管理栄養士の役割- 2025 年に向け、医療・介護機能の編成が立案 され、施設から地域へ、医療から介護へとシフ トし、病気と共に生きる時代へ支える医療へと 変わってきた。在宅生活では栄養と食事が重要 な援助で、食べられないことがひいては褥瘡に つながる。75 歳以上では低栄養状態が増加して いる。通所介護や通所リハ利用者の約4 割が低 栄養または低栄養リスクありの実態である。地 域で最期まで生活するには栄養というのが地域 包括ケアの鍵になるといえる。医療保険では在 宅訪問栄養食事指導、介護保険では居宅療養管 理指導が使用できるが、件数はなかなか増加し ていない。在宅訪問管理栄養士の366 事例レポー トをみると、要支援、介護度1、介護度 2、介 護度3 では糖尿病の訪問栄養指導が多かったが、 介護度4 では低栄養、そして介護度 5 で摂食嚥 下障害にともなう褥瘡が増加している。在宅訪 問栄養指導が必要な人を早期発見するためには、 栄養ケア・ステーションが必要になってくる。 栄養の問題は全身そして生活行動や生活環境ま で包括的にみることにつながっている。「いろは にすめし」とは、「い」は移動、「ろ」は風呂に はいれるか、「は」は排泄、「に」は認知機能、「す」 は睡眠、「めし」は食事であり、すべてをきちん と見ることが重要である。栄養ケア・ステーショ ンは医療型の他、介護型、スーパーマーケット 型、コンビニ型といろいろな形で地域へのアウ トリーチを行なっている。地域包括支援の立場から
-地域包括支援センターでの活動から見えた地 域住民の褥瘡の実態と支援- 演者が所属する地域包括支援センターの管轄 地域の高齢化率は30.1%で、要支援者のケアプ ラン作成を月平均355 件行なっている。本シン ポジウムのために職員にインタビューしたとこ ろ、褥瘡を見たことがないという人もおり、褥 瘡は寝たきりとか動けない人にできるという認 識であった。また社会福祉系の職員は医療専門 用語が難しく、カンファレンスに参加しても内 容を十分に理解できないことから、医療機関と の連携に苦手意識をもっていた。実際の褥瘡発 見の一つは、近隣住民からの相談を受けて家庭 訪問し、おむつ交換したところ、骨突出部に発 赤と表皮剥離を発見した事例がある。次に要支 援1 で、独居であることから偏食(菓子パンや お菓子、うどんなど)を長年続けていたが、外 出できていた方である。しかし、熱中症をきっ かけに臥床時間が長くなり、褥瘡発生が懸念さ れたので、なんとか臀部の確認を行なったとこ ろ、仙骨部に発赤と表皮剥離を発見した。外出 できていた方も何らかのきっかけでADL が低下 し、褥瘡ができたケースである。 ある程度動けていて食生活に問題がなかった 方でも本人からの相談があって褥瘡を発見した ケースでは、受診した主治医が創部をよく見ず に外用薬を処方され、悪化した。皮膚科医往診、 訪問看護の導入、WOC ナースによる評価を行 なってもらい、在宅でデブリードマンを実施し た。以上のような事例から、褥瘡予防や早期発 見のために、医療は褥瘡に関する最新情報を地 域へ発信すること、地域住民やボランティア・ 民生委員の助け合いにて互いに見守りをするこ と、医療・福祉・介護の連携を行なうこと、地 域包括ケアシステムに褥瘡予防の視点をとりい れることが大切であると考える。技術開発研究者の立場から
-超高齢社会を支える環境づくりのためのセン サとAI への期待- 演者の所属企業が開発した眠りスキャンは、日本褥瘡学会近畿地方会
近畿地方会は、現在36 名の世話人が本会の運 営に尽力しており、近畿地方(大阪府、京都府、 滋賀県、奈良県、兵庫県、和歌山県)における 褥瘡や創傷管理に関する教育、研究、専門的知 識の増進・普及を図り、合わせて褥瘡の予防及 び医療の向上と充実に貢献することを目的とし ています。本会は年1 回開催され、医師・看護 師・薬剤師・栄養士・PT などの医療職やリハビ リテーション職、工学研究者や関連企業が協働 する多彩な職種が集まる学会です。また、褥瘡 の予防や治療は病院内に限らず、地域へ在宅へ と展開されてきており、褥瘡認定士(学会認定) の育成が必要とされることから、教育セミナー も開催しています。地域包括ケアシステムの進 展にともない、近畿地方会の役割拡大と社会へ の貢献はますます期待されています。未来を拓く地域包括ケアイノベーション
シンポジウム
学術集会のテーマは「地域包括ケア時代の褥 瘡予防管理ネットワークの構築」としました。 地域包括ケアシステムという用語が公表されて から既に15 年を経過していますが、医療と介護 が必要な人が急増する2025 年が目前の今、医 療と介護の連携を強め、「地域包括ケアネット ワーク」作りが喫緊の時代になっています。そ こで、地域包括ケアネットワークの現状をみつ め、課題を明らかにするため、地域開業医や病 院の看護師、管理栄養士、地域包括支援センター、 技術開発研究者5 名のシンポジストに集まって いただき、それぞれの立場から現状の問題と解 決提案をいただきました。実際例のご説明から は、まさに未来を拓く方向が示され、有意義な シンポジウムとなりました。ご発言を抜粋して 掲載させていただきます。開業医の立場から
-地域包括ケアにおける開業医の役割- 2000 年に介護保険が導入されて以降の家族構 成は著しく変化している。高齢者世帯は配偶者 のいない子どもとの同居、夫婦だけの老々介護、 単独家庭が増えており、これまでの介護システ ムや医療システムの中で、要介護5 で全ての介 護サービスが受けられる方ですら、褥瘡を防ぐ ということは非常に難しい現状がある。また在 宅の現場では、歯科医と褥瘡治療医による同時 訪問診療が可能になったが、月1 回の訪問診療 が限度で、どちらかにのみ管理料が算定される ため、確認しながら診療していかないといけな い。確認不足で両方が算定していると返還義務 を負わされる。地域包括ケアシステムを持続可 能にするためには、ICT や IoT の技術を使う医 療・介護サービス提供体制の効率化が必要であ り、これらの推進のためには算定要件や助成金 の問題を解決していかねばならない。病院看護師の立場から
-地域包括ケアシステムの中で病院の皮膚・排 泄ケア認定看護師が果たす役割と課題- 勤務する病院には地域包括ケア病棟があり、 法人グループである訪問看護ステーションや介 護老人保健施設等が診療エリアになっている。 地域包括ケア推進のために病院全体で取り組ん 第16 回日本褥瘡学会近畿地方会学術集会 — 5 — — 4 —武庫川女子大学看護学ジャーナル Vol.05(2020) 第16 回日本褥瘡学会近畿地方会学術集会