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石積壁の耐震補強対策「ピンナップ®工法」

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Academic year: 2021

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大林組技術研究所報 No.76 2012

1 ◇技術紹介 Technical Report

石積壁の耐震補強対策

「ピンナップ

®

工法」

Quakeproof Reinforcement Methods

for Ashlar Masonry Walls: “Pin-Up

®

山田 祐樹

Yuki Yamada

山本 彰

Akira Yamamoto

はじめに

石積壁は古くから法面防護工として用いられており, 鉄道沿線などにも多くみられる。Fig.1 は石積壁の標準的 な断面を示している。石積壁は,その背面構造の違いか ら空積および練積の大きく 2 種類に分類される。空積は 間知石と裏グリ石のみで構成されており,練積は背面に 胴込めコンクリート,裏込めコンクリートおよび裏グリ 石を有している。このような構造を有する石積壁の設計 方法は確立されておらず,経験に基づく標準断面によっ て仕様が決められており,安定性評価については未解明 な部分が多いのが現状である。特に切土のり面の前面に 構築されている石積壁については,地震に対して地山は 十分に健全であっても石積壁自体が崩壊することが懸念 され,地震時における安定性の評価方法や,耐震補強・ 補修技術の整備が求められている。 このような石積壁の耐震補強対策としてピンナップ工 法があり,同工法の設計・施工マニュアル1)は公益財団 法人鉄道総合技術研究所より発刊されている。なお,本 工法の特許は公益財団法人鉄道総合技術研究所と大林組 が共同出願している。ここでは,本工法の概要ならびに 施工事例について紹介する。

2. 「ピンナップ工法」の概要

2.1 工法の概要 本工法は既存の石積壁を対象とした補強工法であり, 軽量・コンパクトな施工機械を用いた比較的簡易な施工 方法により石積壁の耐震性の向上を図ることを目的とし ている。Fig.2 に無対策時の石積壁の変状状況を,Fig.3 にピンナップ工法の概略図を示す。 ピンナップ工法の開発2)は,1/3 スケールの模型石積壁を 用いた振動台実験により行われている。実験では,高さ や石積壁の構造,基礎の構造などをパラメータとして, 地震による石積壁の変形メカニズムを把握するとともに, 効果的な補強方法ついて検討を行った。地震時の石積壁 の不安定化は,壁体の前面への変位と裏グリ石の沈下を 繰り返すことにより生じる。石積壁の変形が徐々に累積 するとともに,次第に間知石が個々に分離して挙動する ようになり,最終的に崩壊に至る。ピンナップ工法は, この不安定化メカニズムに対し,間知石と裏グリ石を一 体化した固化体を裏グリ石層内に複数個所造成すること により,地震時における石積壁の崩壊の主な要因と考え られる,石積壁の前面への変位および裏グリ石のゆるみ を防止し,石積壁の耐震性向上を図る。

2.2 工法の特徴

ピンナップ工法では,Fig.4 に示すように間知石の交点に 補強を行うことが最大の特徴となる。排水性が良好な裏 グリ石層の改良に適した注入管ならびに固化材を用い Fig. 1 石積壁の標準断面 Typical Cross Section

Fig. 2 無対策時の変状 Fig. 3 ピンナップ工法 Deformation of Outline of Pin-Up Masonry Wall Method

Fig. 4 ピンナップ工法の施工概要 Outline of Pin-Up Method

固化体 間知石 補強材 空積 練積 補強材 背面地山 固定体 間知石

(2)

大林組技術研究所報 No.76 2012 2 て,裏グリ石層内に注入を行い,隣接する 4 個の間知石 とその背後の裏グリ石を,部分的に固化させる。その後, 必要に応じて,背面地山へ補強材の打設を行い,補強効 果を高める。なお,補強材を打設する際には,裏グリ石 を既に固化しているため,削孔が容易となる。本工法の 主な特徴を以下に示す。 1) 施工機械が軽量,コンパクトである。 2) 大規模な足場を必要としない。 3) 裏グリ石の部分固化で済むため,経済性に優れる。 4) 裏グリ石の排水性を阻害しない。 2.3 施工方法 ピンナップ工法の施工手順をFig.5および以下に示す。 ① アンカーおよび削孔ドリルの設置 ② 間知石部分の先行削孔 ③ 注入管(Photo1)の打設 ④ 裏グリ石の部分固化 ⑤ 注入管の撤去 養生(24h) ⑥ 補強材用削孔(Photo2) ⑦ 補強材定着材の注入 ⑧ 補強材の挿入 ⑨ 頭部処理(Photo4)

3.

施工事例

ピンナップ工法の施工事例をPhoto3,4に示す3),4) 該当現場では,石積壁の前面への傾斜ならびに石積壁 背面地盤の地表面の陥没等の変状が生じており,これら の変状の原因は地震によるものであると推定された。 また,石積壁前面の敷地に余裕がなく,斜面中腹にお ける施工となるため大規模な施工機械や足場を設けるこ とが困難である等の理由から,ピンナップ工法が採用さ れている。

4. まとめ

既存石積壁の耐震補強対策としてピンナップ工法を 紹介した。石積壁は土木構造物として古くから施工され ており,耐震性を求められる重要構造物に近接する場所 に用いられていることも多い。特に敷地に制約がある狭 隘な施工条件下では,小型の施工機械により耐震補強が 可能なピンナップ工法の活用が期待できる。 参考文献 1) 鉄道総合技術研究所:石積壁の耐震補強工設計・施 工マニュアル-ピンナップ工法施工マニュアル-, (2008) 2) 太田直之,他:間知石を用いた石積壁を対象とした 耐震補強工の開発,土木学会論文集F,Vol.63,(2007) 3) 太田直之,他:石積壁の地震時安定性評価と対策, 日本鉄道施設協会誌,2009-5,(2009) 4) 宮田義典,他:切土のり面に施工された石積壁の変 状と対策事例,日本鉄道施設協会誌,2009-5,(2009) Photo 1 注入管 Photo 2 削孔状況 Grouting Pipe Construction Situation

Photo 3 施工現場全景 Photo 4 補強材頭部の状況 Construction Site View of Nailing

Fig. 5 施工手順 Construction Procedure ① ドリル設置 ② 先行削孔 ③ 注入管打設 ④ 部分固化 ⑤ 注入管撤去 ⑥ 補強材用削孔 ⑦ 定着材注入 ⑧ 補強材設置 コアドリル 注入ホース 注入用 アダプタ 固化体 注入管 打撃 打込用 アダプタ 引抜き 引抜き ジャッキ 注入ホース 補強材

Fig. 2  無対策時の変状    Fig. 3  ピンナップ工法        Deformation of             Outline of Pin-Up        Masonry Wall                   Method
Fig. 5  施工手順  Construction Procedure ① ドリル設置 ②  先行削孔 ③ 注入管打設 ④  部分固化 ⑤ 注入管撤去 ⑥  補強材用削孔 ⑦ 定着材注入 ⑧ 補強材設置 コアドリル注入ホース注入用アダプタ固化体注入管打撃打込用アダプタ引抜き引抜きジャッキ注入ホース補強材

参照

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