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オランダの労使関係と法(陵水七十年記念論文集)

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オランダの労使関係と法

大和 田

鼠太

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) はじめに 労働組合に関する法制度 労働組合の現状 使用者団体の現状 争議行為 団体交渉・労働協約 企業評議会 労働財団・社会経済評議会 (1) はじめに  EC市場統合,それに必然的に伴う労働市場の統合を展望して,欧州議会が 策定しようとした「EC社会憲章」をめぐる一連の経過における,重要な転回 を見逃すことはできない。かっては,「共同体次元での社会政策」が吹聴され,        1) 「欧州労働法典」制定が構想されていたが,1989年3月のEC議会では,「国内 *)本稿執筆の契機は,1992年7月に,オランダ政府(Netherlands organisation for inter・ national cooperation in higher education)の研究者交流事業により,リンブルグ大学を 訪問し,オランダの労使関係の実情を調査する機会を得たことである。調査および資料収 集のために協力いただいた同大学準教授Heerma van Voss氏に謝意を表するとともに, わが国において,従来紹介されていなかったオランダの労使関係法制度の概略を明らかに する本稿によって,今回の派遣事業の責務を果たしたい。 1)例えば,「社会空間に関する社会評議会の結論」(1984年6月22日)では,「社会的同一性 の強化なくしては,国際競争力に直面する経済的同一性を強化することはできない。した がって,社会政策は,経済政策・通貨政策・産業政策と同様の意義から,共同体の次元で 発展されなければならない。」とされていた。

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的な多様性・当事者の自治・加盟国の立法権の尊重」を理由に,「各国の元首・ 政府は,荘重な宣言の中で,社会憲章の内容を確認する」として,「統一労働法        2) 典」の制定という「公約」は放棄されたのであった。その結果,マーストリヒ ト条約でも,「統一労働基準」の作成は,盛り込まれなかったのであったが,欧 州市場統合後の労使関係の枠組み設定における,立法権も含めた諸主体の位置 づけについては流動的であるが,注目されよう。他方,労使当事者の側では, 労使関係の「再構築」の構想が模索され,ECレベルでは,主として産業別団        3) 体の再編成の動きがみられる。  このように,ECレベルの労使関係の動向は,加盟各国の労使関係のあり方 やその制度と密接につながっており,特に,「EC社会憲章」の制定を中心とし た,EC社会政策の確立が,各国の労使関係およびその制度の変動に及ぼす変 化を分析・研究することは,重要な課題となっている。  本稿は,上記のような課題を全体的枠組みとして視野に入れつつ,オランダ の労使関係およびその法制度の調査・研究を目的としている。オランダの労使 関係および労働法の研究は,わが国では,従来ほとんど蓄積がない状況である ために,本格的な研究が切望されているところである。今後,研究者の交流, 文献資料の整備など進めることが期待されるが,本稿は,その基礎的作業とし て,オランダの労使関係と労働法制度の概略を紹介する。オランダの労使関係 法制度は,歴史的な要因にも規定されて,独自的な特徴を呈している問題が少 なくないが,さしあたり,労使団体をめぐる制度と現状,オランダにおける労 使関係の独自的制度である「企業評議会」,「労働財団」と「社会経済評議会」 2)「統一労働法典」制定は,イギリスの強硬な反対姿勢により,断念されたが,その際の 経済社会委員会の見解では,「共同体社会政策は,統合市町の実現にとっては,二次的重要 性しか有しない」と合理化された。1984年の「社会空間に関する社会評議会の結論」との 乖離は大きい。 3)フランスの労働組合中央組織にとっては,ECレベルで必然化せざるを得ないEC労働 運動の展開は,労働組合・労働運動が直面する「危機」への絶好の挽回策として位置づけ られうるものであったが,EC労働運動への対処を志向するフランスの労働組合運動の特 徴的な動向については,大和田敢太「ミッテラン政権と労働改革」(西堀文隆編『ミッテラ ン政権下のフランス』(ミネルヴァ書房,1993)所収)247頁以下参照。

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         4) に限定して,紹介する。 (2) 労働組合に関する法制度  オランダ憲法が,「結社の自由」を保障しているが,労働組合も,使用者団体 と同様に,この「結社の自由」の範踏のなかで存在を認められている。労働組 合に関する独自の立法規定は,憲法その他の制定法規の中には存しないのであ るが,「労働組合の自由」を承認する多くの国際条約(ヨーロッパ人権条約,ヨ ーロッパ社会憲章,ILO87号条約,国際人権規約など)を批准・署名してい ることによって,これらの諸規定が,裁判所において,直接的な強制力を有す るものと理解されている。  過去には,一部の労働組合組織が公権力によって敵対されるという事実もあ ったが,現在では,労働組合は,全面的な活動の自由を享有しており,設立・ 運営のために何らの形式要件も必要とされていない。唯一の例外が,集団交渉 に参加し,あるいは公法上の機構に関与するためには,民法典が定める「完全 法人格」を保有しなければならないことである。もっとも,民法典は,この「完 全法人格」取得を容易にしており,オランダの労働組合は,その要件を満たす うえで困難はないとされており,実際上も,ほとんどの労働組合が,この民法 上の法人格を取得している。  「結社の自由」としての「労働組合の自由」制度との関連で問題になるのは, 「組織強制」である。原則として,組合員資格は,強制されないのであるが, 4)本稿は,オランダの労使関係法制度の現状分析を主たる目的としているが,その前提と なるべき社会経済的背景の分析は,紙幅上省かざるをえない。また歴史的経緯を顧みるこ とも重要であるが,最低限の事実の指摘にとどめざるをえない。1936年に,ドイツから亡 命してきたジンツハイマーが,ライデン大学でオランダの大学における初代労働法講座教 授に任命された時点からの,オランダにおける「社会法」の歴史的回顧として,以下の文 献がある。  Joseph J. M. van der Ven, Social Law in the Netherlands in Fzfty yea?s of Labour Law and Social Secun’ty, Studies at the occasion of the fiftiest anniversary of the chair in sociaal recht at the Rijksuniversiteit Leiden, Kluwer Law and Taxation Publishers, 1986.

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一定の要件のもとでは,集団協定における組織強制(クローズド・ショップ) が有効とされている。その要件とは,その条項が,当該の産業分野で活動する すべての労働組合に適用されることである。現状では,組織強制条項を持つ集 団協約は,印刷業においてのみ存在する。  労働者は,労働組合への所属を理由に,不利益処分を受けることはないが, この種の問題が,司法上提起されたことはない。特に,解雇については,行政 上の許可制度が設けられているが,労働組合所属を理由とする解雇について, 労働局長が,許可を与えることはない。  組合活動については,多くの協約が,労働者に組合活動への参加を保障する 条項を含んでいる。労働組合は,企業内部で,掲示板を設置し,集会を組織す ることができる。組合活動に関して,かって,立法制定が予定されたことがあ るが,政府は,立法化しようとはしていない。企業内における組合活動に関し ては,後述(7)の企業評議会へ選出された委員を通じて,実質的な機能が果 たされることができる。 (3) 労働組合の現状  労働組合中央組織としては,以下の三組織がある。  〈オランダ労働組合総同盟〉(FNV)(Federatie Nederlandse Vakbewe− ging)  最大の中央組織であるが,!976年に社民系のオランダ労働総同盟(NVV) とカトリック系のオランダカトリック労働組合同盟(NKV)の合併によって 誕生した。組合員数は,90万人。  〈オランダキリスト教労働総:同盟〉(CNV)(Christelijk Nationaal Va− kverbond in Nederland)  プロテスタント系の影響下にある労働組合組織で,組合機数は,30万人。  〈管理職貝連盟〉(MH P)(Vakcentrale voor Middelbaar en Hoger Pe− rsoneel)  1972年に設立された組織であるが,管理職員(「ホワイト・カラー」)を結集

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する。組合員数は,15万人。  その他にも,公務員,鉄道分野など特定の産業分野を組織対象とする労働組 合がいくつか存在する。争議の際には,全国段階での重要な役割を果たすとさ れている。

 組織率に関しては,労働者の25%弱が,FNV, CNVおよびMHPに加盟

しており,4%が他の労働組合組織に加盟している。組織率は,産業分野によ ってかなりの差があり(アムステルダムのダイアモンド産業が高組織率の代表 であり,銀行業が低組織率となっている),また,新しい産業分野の労働者,パ ートタイム労働者,若年労働者,女性労働者や外国人労働者は,組織化が遅れ ている。  FNVおよびCNVは,「産業別労働組合運動」という組織原則を明確に定め ており,単一の労働組合が,当該の産業分野のすべての労働者を組織対象とし ている。そのため,同一の中央組織に加盟する労働組合組織間では,競合関係 は生じない(もちろん,異なる中央組織に所属するあるいはどの中央組織にも 属しない労働組合組織間では競合関係は存在する)。FNV, CNVおよびMH Pの間には,一種の「紳士合意」が存在し,公然と論争はしない,適時協議す るなどの協調が図られている。  労働組合組織と政党の関係では,FNVと社会民主党との間, CNVとキリ スト教民主党との間には,重要な親近性が存在するが,労働組合組織は,政党 と公式の協力関係を有していない。 (4) 使用者団体の現状  大部分の産業分野で,使用者組織が存在しており,全国レベルでは,大企業 および全使用者組織が,オランダ企業連盟(VNO)(Verbond van Neder− landse Ondernemingen)に加盟している。この団体は,宗教との関連性を持た ない「中立」の組織であるが,キリスト教義を信条とする使用者団体が,オラ ンダキリスト教経営者連盟(NCW)(Nederlands Christelijk Werkgeversve− rbond)である。他に,農業部門を除く中小企業が加盟するオランダ企業者連盟

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(KNOV)やオランダキリスト教企業者連盟(NCOV)がある。農業部門

には,別個に,三つの使用者団体(KNLC, KNBTB, NCBTB)が併

存しており,共同で労働財団・社会経済評議会に代表を選出している。 (5.) 争議行為  原則として,労働者は,争議権を有するとされているが,争議行為にかんす る制定法上の規定は存在しない。そのため,争議権理論は,ヨーロッパ社会憲 章,民法典,さらに必要に応じて協約に準拠して形成されている。          5)  ヨーロッパ社会憲章(第6条4節)は,争議権を含む労働者の集団行動権を 保障するが,1972年4月13日のアムステルダム高等裁判所判決は,議会による 批准前でも,ヨーロッパ社会憲章の直接的効力を認め,労働者の集団行動の権 利を承認した。  もっとも,政府は,争議法案を議会に提出することを試みており,そこでは, 争議は,原則として許されるが,争議を違法とする一定の要件を定めるという 内容を構想していた。判例も,このような立場に影響されている。  それによれば,争議行為が,合法とされるためには,労使間の交渉が行き詰 まり,以後の交渉が無駄であるという状況が,明確になっており,労働者ある いは労働組合は,適当な時期に,争議行為の開始を事前通告しなければならな い。ここで,「労働者あるいは労働組合」と記述したことからも推測されるが, 争議行為の正当性は,「労働組合」の介在という事実に左右されるものではな く,いわゆる「山猫スト」も許容されている。争議行為が,使用者に深刻な損 害を与えるという事実も,違法とする根拠となりうるのである。結局,争議行 為が正当となるためには,労使間の紛争を解決する他のすべての手段が事前に 試みられた後で,それが,合理的な目的のための合理的な手段となっていなけ ればならないという「正当性基準」によって判断されるのである。  1970年代まで,労働組合組織は,争議権立法の必要性を主張してきたが,現 5)ヨーnッパ杜会憲章は,1961年10月に署名され,1965年2月26日発効した。オランダで は,1978年11月2日の批准によって,1980年5月22日発効した。

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在では,裁判所が,ヨーロッパ社会憲章の諸規定を遵守する姿勢にあるため, 争議権を定i義する立法は不必要であるとの立場をとっている。  前記のように,争議行為は,労働組合組織によって,組織されることもあれ ば,そのような形態をとらないこともある。労働組合組織によって組織されて いる場合に,相手側の使用者は,労働組合に対して,争議行為を組織すること の禁止あるいは争議行為を支持することを継続してはならないという命令を求 めて,訴訟を起こすことができる。  他方,争議行為が行われている期間中には,使用者は,業務の継続のために, 代替労働者を雇用してはならない。  非組織的な行動の場合には,使用者は,争議非参加者にたいしては,賃金を 支払う義務を負うが,組織的な行動の場合には,使用者は,裁判所に,争議非 参加者への賃金支払いについての判断を求めることができるが,一般的には, 争議非参加者に賃金は支払われる。 (6) 団体交渉・労働協約  ① 団体交渉  全国レベルでは,後述の労働財団に参加している労働組合組織の中央組織と 使用者団体の中央組織が,賃金および労働条件の基本的枠組みを交渉するが(二 者交渉),時には,政府代表者も加わる交渉(政労使三者交渉)が行われること もある。  労働組合および使用者団体は,産業別の次元で,そこで関連する社会経済的 事項(採用・職業教育・社会保障など)について討議し,協約を締結するため に,定期的に会合する。企業段階での団体交渉も存在するが,その実質的な機 能・役割は,後述の企業評議会によって遂行されている。  「協調的経済」と評されるこのような「社会的当事者の対話」が,特筆され るべき特徴をなしているが,その背景には,この国の政府が,「単独政権」であ ったことはなく,つねに「連合政権」であったという政治国力関係を抜きにし て存立しなかったために,政治的安定のために,政治面だけでなく,社会的当

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事者間においても,政治的対立を回避するように努められてきたという事情が あるとされる。  このような,「協調」政策の遂行を支える制度が,「労働財団」と「社会経済 評議会」であるが,項を改めて紹介する。  ② 労働協約  労働協約に関する1927年12月24日法(1971年2月18日法,1976年4月8日法 および1981年5月15日法により修正)によれば,協約とは,使用者,使用者の グループあるいは使用者団体と一あるいは複数の労働組合組織によって署名さ れ,専ら労働条件および社会的保護を対象とする取り決めと定義される。労働 組合組織および使用者団体の協約当事者資格については,法律も判例も特に条 件を設けていないが,法人格を有すること,団体の規約によって協約を締結す ることが認められていること,という二つの条件を満たせば,労働組合組織お よび使用者団体は,労働協約を締結することができる。実際上,ほとんどの団 体は,これらの要件を満たしており,当事者適格性の問題自体は,重要ではな い。  協約法の第1条は,特定の人種,政治的あるいは宗教的信条,もしくは特定 の労働組合に所属する労働者を雇用することあるいは雇用しないことを使用者 に強制する条項はすべて無効であると定めている。  協約の期間は,最長5年間であるが,協約の有効期間の定めがない場合には, 1年間とされる。協約の署名組織は,その加盟構成員に対して,協約の条項を 遵守させる義務を負う。特定の企業あるいは産業分野で締結された協約に背馳 する個別労働契約はすべて,無効になる。個別労働契約が,協約によって対象 とされている事項についての条項を含んでいない場合には,協約の内容が,当 事者を拘束する。  協約によって規制されている事業所が譲渡される場合には,賃労働者に対す る旧使有者の権利義務関係は,退職制度および貯蓄制度に関する条項を除いて, 新しい使用者に承継される。協約の署名組織は,他方当事者である署名組織が 協約の条項に違反する場合には,自組織のためにおよび組合員のために,損害

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賠償を請求することができる。  社会問題大臣は,協約の拡張を決定することができる。大臣は,署名当事者 の一方の請求がある場合にのみ,労働財団の意見を徴した後に,拡張命令を発 することができる。その場合には,使用者あるいは労働者が協約署名当事者組 織に加盟していると否とをとわず,当該の産業分野全体にその適用が強制され る。ただし,以下の内容に関わる条項は,拡張命令から除外される。  一紛争の際に,司法救済を不可能にする条項  一労働者あるいは使用者に対する,特定の組織への加盟強制  一一労働組合組織あるいは使用者組織の加盟員と非加盟員の間での権利の不 平等  他方,大臣は,一般利益を理由として,協約の中の一部の条項を,拡張命令 から除外することができる。この場合には,除外された条項は,もはや協約の 一部を構成するものとはみなされることはできない。  大臣は,拒否の理由を開示することを条件に,拡張命令を発することを拒否 することができる。拡張命令は,理由を明示さえすれば,何時にても廃止され ることができる。  大臣は,急激に現れた外部要因によって引き起こされた危機的状況に陥って いると認められる場合には,賃金支出の限界を定める規則を課すことができる。 この措置は,6カ月を越えない期間,1回の更新に限ってとられることができ る。  以上のような大臣の関与については,大臣は,事前に,労働財団と協議し, その決定を書面で,議会に通知しなければならない。一連の措置は,議会に通 知された1週間後に発効する。 (7) 企業評議会  個別企業において,使用者と従業員との間の協議機関・従業員代表機関の役 割を果たしているのが,企業評議会(Ondernemingsraad)である。1950年に企 業評議会に関する最:初の立法が制定され,その後,1971年に,労働者の参加に

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関する諸立法が整備された際に,現行の企業評議会法が,制定され,その後数 次の改訂により,企業評議会の権限の拡大が図られている。  ①適用範囲・委員  使用者が企業評議会の設置義務を負うのは,100名以上の従業員が雇用されて いる企業,あるいは通常の勤務時間の三分の一の時間を越えて労働している従 業員が35名以上いる企業である。グループ企業の場合には,共同(中央)企業 評議会が設置されることもできる。企業内の一部の事業所を対象とした別個の 評議会の設置も可能である。社会経済評議会は,例外的事情が認められる場合 に,最長5年間の期間に限って,企業評議会を設置する義務を,使用者に対し て免除することができる。       1  企業評議会は,従業員の中から直接選出される代表から構成される。定員は, 以下のとおりである。 従業員数 50名未満       50名将上100名未満      100名以上200名未満      200名以上400名未満      400名以上600名未満      600名以上1000名未満      1000名以上2000名未満 2000名以上には, なる)。 委員数3名    5名    7名    9名    11名    13名    15名 1000名臣に2名の委員が加算される(委員数25名が上限と  企業評議会委員の選挙は,秘密投票でなされる。候補者名簿は,従業員の中 に組合員をもつ労働組合組織あるいは,非組合貝35名によって,提出されるこ とができる。  選挙権は,少なくとも6カ月以前から雇用されている従業員が有し,被選挙 権は,少なくとも1年以前から雇用されている従業員が有する。任期は,3年 で,更新可能である。  企業評議会あるいは後述の委員会の委貝は,解雇保護の身分保障を有する。

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旧委員の解雇については,任務終了後2年間禁止されるが,裁判所の判決があ れば,解雇可能である。その際には,使用者は,裁判所にたいして,解雇理由 が,企業評議会での活動と関係ないことを挙証しなければならない。  ② 組織・運営  企業評議会は,特定の問題を扱う委員会を設置し,この委員会には,委員数 の半数以下であれば,企業評議会の委員ではない従業員も参加することができ る。  使用者は,企業評議会およびこの委員会にたいして,その任務の遂行にあた って必要な手段を提供する義務を有する。企業評議会およびこの委員会の委員 は,勤務時間中かつ:賃金を保障されて,会合し,必要な人物と協議することが できる。同様に勤務時間中かつ賃金を保障されて,その活動の遂行に必要な教 育を受ける権利を有しており,その時間数は,年間で,60時間あるいは5日間 を下回らないものとされる。  使用者と企業評議会は,一方の要求に基づき,年間に少なくとも6回,会合 しなければならない。会議は,使用者側と企業評議会議長とが,交互に主宰す るが,企業評議会の運営費用は,使用者の負担である。企業評議会が,外部の 専門家に調査を委嘱した場合や企業評議会が訴訟当事者となった争訴事件の訴 訟費用も,使用者の負担であり,使用者と企業評議会との間で訴訟が起きた場 合には,企業評議会は,訴訟費用を求められることはない。  ③ 権限  使用者が,企業評議会と協議する義務を負うのは,以下の事項である。

一企業内における権限の移譲

一票の企業の設立,買収あるいは売却 一一シの企業との(財政面を含む)恒常的関係の確立あるいは終了 一一驪ニ活動あるいはその重要な部分の停止 一一驪ニ活動の重要な縮小あるいは拡張,企業活動の顕著な変更 一一驪ニ組織あるいは企業の権限分配における顕著な変更   移転

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  常用あるいは臨時の従業員の集団的な採用

一重要な投資

 以上の事項の決定に関して,企業評議会は,その見解が決定に実質的な影響 を与えうるほどに充分に協議されなければならない。使用者の決定が,企業評 議会の見解と合致しない場合には,使用者は,その理由を説明し,企業評議会 に通知した後1カ月間を経るまで,その決定の実施を中断しなければならない。  企業評議会は,以下の場合には,アムステルダム高等裁判所商事部に提訴す ることができる。 一一g用者が,その見解に従わない場合 一一驪ニ評議会が,別の見解を持つにいたった可能性のある事実や状況を知ら されていなかった場合  裁判所は,審理の結果,使用者に,その決定の(全面的あるいは部分的な) 撤回を命ずることができるのであり,また,使用者の決定の実施の開始を禁止 することもできる。この裁判所の決定に関しては,上告することができる。  他方,以下の事項に関しては,企業評議会の事前の同意が必要である。 一一゙職制度・利益参加 一一J働時間・有給休暇 一賃金制度・職務評価制度 一一注N・安全・福利厚生制度 一採用・解雇・昇進に関する基準

一教育訓練

  苦情処理に関する措置   若年労働者に関する措置  これらの事項に関して,使用者が,企業評議会の事前同意を得ることができ ない場合には,使用者は,管轄裁判所にその許可を求めることができる。その 許可は,裁判所が,以下の二つの要件を認定した場合にのみ認められる。 一一驪ニ評議会がその同意を拒否するについて,充分な理由を有していない。 一対象となる措置が,経済的,社会的あるいは組織運営上の緊急の理由によ

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って必要である。  企業評議会の事前の同意を得ることなく,また裁判所の許可を得ることなく 決定された措置は,効力を有しないのである。  その他,企業評議会は,労働条件や安全衛生に関する立法の遵守を監視する。 また,企業内における,男女間のあらゆる差別を防止するように努め,その平 等待遇を監視しなければならない。障害者の採用を促進しなければならない。  なお,資本金や株式などの一定の基準を越える企業(NV・BV)において は,監査役会の権限の拡張によって,労働者の共同決定の特別制度が定められ ている。 (8) 労働財団・社会経済評議会  産業別の労働条件を含む社会・経済的政策の決定機構および労使協議機関と して,オランダにおける特徴をなすものが,労働財団(Stichting van de Ar−  6) beid)と社会経済評議会(Sociaal−Economische Raad)である。  ① 沿革  労働財団は,第2次大戦末期,解放後の1945年5月17日に,労使団体によっ て設立された,私法上の組織である。占領中に,秘密裡に設立の準備が進めら れたが,その目的は,戦後,労使が,共同して,オランダの経済的再建のため に協力するという理念に基づくものであり,そのため,設立後間もなく,労働 財団は,政府によって,公的な経済社会的な諮問団体として認知された。社会 経済評議会の設立までは,立法作業について,政府から諮問を受ける機能を果 たしてきたが,社会経済評議会設立後は,協議機関として存立している。 6)一部の邦文文献では,「レイバーファンデーション」と表記されている。言うまでもな く,オランダ語「Stichting van de Arbeid」の英語表記「Labour Foundation」である。 同組織発行の英文による紹介冊子もあり,英語表記自体は間違いではないが,他の言語に よる文献では,この英語表記は用いられていないという事実は,「Labour Foundation]な る表現は,単なる翻訳語にすぎないことを物語っている。したがって,オランダに固有の 組織の表記法としては,「レイバーファンデーション」は適切ではない。本稿では,直訳で ある「労働財団」と表記する。

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184 彦根論叢 第283・284号  他方,社会経済評議会は,1950年の産業組織法によって,設置されたもので, 公法上の機構である。

 ②構成

 労働財団は,労使対等の原則から運営され,その理事会は,労働組合中央組 織の10名の代表と使用者団体の10名の代表とから構成される。その内訳は以下 のとおりであるが,理事会は,2名の共同議長を持ち,労使から1名ずつ選出 されている。  <労働者側>

 FNV  7名

 CNV  2名

 MHP  1名

 く使用者側>

 VNO  4名

 NCW  2名

 KNOV 2名

 NCOV 1名

 KNLC・KNBTB・NCBTB 1名

 社会経済評議会は,45議席のうち,労使がそれぞれ,15議席を有し,直接の 当事者でない「専門家」(学者・高級官僚など)が,15議席を占めている。「専 門家」は,主要政党間のバランスを考慮して,国王によって任命されるが,政 府にたいしては公的な責任を負うものではなく,「公共の利益」を擁護する役割 を果たすべきものとされる。労使の委員は,各団体によって選出されるが,そ の内訳は以下のとおりである。  <労働者側>

 FNV  11名

 CNV  3名

 MHP  1名

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<使用者側>

VNO  6名

NCW  3名

KNOV 3名

NCOV 1名

KNLC・KNBTB・NCBTB 2名

 労働財団と社会経済評議会は,ハーグの同じ建物の中に位置している。後述 のように,労働財団と社会経済評議会とは,その目的や機能において共通する ところもあり,重要な役職貝の多くは,双方の機構の任務を兼務している。  ③ 運営  労働財団は,労使の委貝だけで構成され,前述のように労使の共同議長で運 営され,委員は,非公開で協議することができる。  社会経済評議会は,三者構成であり,その総会は,公開されている。  財政面では,社会経済評議会は,政府から独立した存在として,産業界から の拠出金によって運営され,事務局が設置されている。労働財団は,労使団体 の負担はあるものの,独自の財政手段をほとんど保有しておらず,施設面以外 でも,社会経済評議会に依存している。  ④ 目的・活動  社会経済評議会は,産業組織法によって,公法上の機構として認定されたこ とから,社会経済政策の策定における公的な関与が制度化されている。以下の ような活動を,目的としている。

一政府の諮問

一産業組織法などの立法の実施の監督・協カ ー一o済活動を刺激し,経済発展を促進すること  このように,社会経済評議会は,公的な機構としての位置づけを与えられて いる。そのため,法案作成に先立って,必ず諮問されなければならない役割を 与えられている。  他方,労働財団は,一部の法律の中では,政府との協議機構として位置づけ

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られているものの,公的地位を享有しておらず,民間の協議機関としての役割 を担わされている。  このような違いはあるとしても,両者の目的・活動の間の基本的な区別は, 確定困難であるとされている。それは,専ら歴史的沿革に規定されているから である。前述のように,労働財団が設立された1945年当時,社会経済評議会は 未だ存在していなかったために,労働財団は,政府によって,大戦後の賃金政 策に関する特別の当事者としての扱いを受けた。政府の賃金抑制政策が実施さ れていく過程で,労働財団が協議機能を果たし,賃金引き上げ率や職種間の賃 金格差を決定した。1950年に社会経済評議会が設置されても,労働財団は,こ の役割を奪われることはなかった。もっとも,1963年以降,賃金政策は,規制 緩和の方向に向い,労働財団の介在は,弱まっていった。そこでは,社会経済 評議会が,賃金政策の大枠を決定することを受けて,労使団体が交渉を重ね, 労働財団がその交渉結果を承認するという制度となっている。  労使団体は,常時協議することができる場というこの労働財団の機能を評価 し,その運営が図られている。特に,労働条件に関する職際的協約の締結の際 には,労働財団は,労使の協議を進める上で,重要な役割を果たしている。ま た,労働財団は,政府が,労使団体と協議する必要がある際に,特に大臣の次 元で,政労使協議を必要とする場合に,有益な機関となっている。そのため, 社会経済評議会は,実効的な労働条件の協議に関しては,労働財団に主導性を 委ねることになっている。  以上のような労働財団や社会経済評議会以外にも,社会保障機構,労働安全 衛生機構,雇用問題に関する機構において,労使団体の協議が制度化されてい るが,とくに雇用問題における当事者の参加に関する最近の傾向としては,政 労使の三者構成の方向が特徴的である。        〈関 連 文 献〉 * A. Jacobs, La Re’glementation des conditions de travail azax Pays−Bczs, Etude effectuee  a la demande de la Commission Europeenne, Katholieke Universiteit Brabant.

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* * * *** *** Cornelis de Groot, Netherlands Labor and Co−Determination Law in an EEC Pempective, T.M.C. Asser lnstituut, 1990. Manin Brink and Jaap Kronenberg, The Netherlands in intemational Handbook on Contracts of EmPloyments, Kluwer Law and Taxation Publishers, Updated to 1 Apri1 1991. Guide pratique du droit social hollandais, Semaine sociale Lanzy, NO 595 du 13 avri1 1992. 加藤新平 各国労働協約の比較法的研究一オランダ 労働問題第30号(1960.11) 吉田実 オランダ労使協力の諸施設 日本労働協会雑誌第23号(1961.2) M・G・レーベンバッハ オランダにおける団体交渉と政府賃金統制 海外労働経済月報 第9巻1号(1959.1) W・アルベタオランダの団体交渉の動向 ILO時報第23巻2号(1971.7) W・コックオランダ労働運動の現状世界の労働第29巻3号(1979.3) オランダの賃金制度に関する法律 海外労働経済月報第9巻1号(1959.1)

参照

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