大学生における認知的な感情制御方略が抑うつに及ぼす影響 -中国と日本の国際比較-

全文

(1)

− 21 − 大学生における認知的な感情制御方略が抑うつに及ぼす影響 一中国と日本の国際比較一 人 間 教 育 専 攻 人 間 形 成 コ ー ス CAO XU(曹 旭 ) 問題と目的 近年,抑うつの問題が注目を浴びている。内 田・山崎(2008)は,大学生は他の年齢層と比較 して抑うつになる危険率が高いことを指摘して いる。及川・坂本(2007)は先行研究を概観し, 近年,抑うつの予防に対する関心がますます高 指導教員 内 田 香 奈 子 により,抑うつに及ぼす影響がどのように異な るのカ検手

f

する。二つ目は中固と日本で同様の 指標を用いた場合,結果は同様のものとなるの か,あるいは下位因子によって異なるのか,詳 細に検言村る。 まっている(Harrington

&

Clark, 1998)ことや, 方 法 抑うつによる悪影響が生じる前に,早期に介入 対象者 を行うことの重要性(Lewinsohn

&

Clarke, 1999)を指摘している。本研究では抑うつなどの ネガティブ感情をコントロールする術を獲得す る方向での予防的アプローチを目指し,感

f

前日 御に注目した。 我々は日々の生活の中で自らの感情を適切に 制御することが求められている(Gross,1998)。 そんな中,近年,感情制御における認、知的側面 を考慮した形で、の測定が各国で としてオランダ語版が開発され,続いてフラン ス語版,中国語版,日本語版も開発されている。 しかし,先行研究においては,独立変数側であ る認知的感↑青制御方略については同様の査定道 具を使用しているものの,従属変数側の健康指 標については異なるツールを使用していた。感 情とし、う変動性の高いものを扱い,かっ国際比 較を行う場合,測定方法などより多くの条件を 同ーのものにした状況で比較を行い,検証を行 《日本

i

i

4

年制大学2校の学部生 180(男性 51, 女性129)名。 《中国

i

i

4

年制大学の学部生292 (男性 111,女 性181)名。 使用尺度 認知的劇育制御:日本では榊原(2015)による認 知 的 樹 制 御 尺 度(CERQ)の邦訳版を用し叱。肯 定的再.~~ヰ面,大局的視点,反絹,受容, 自責, 肯定的再焦点化,他者非難,破局的思考,計画 への再焦点化の9下位尺度から構成される。 中国ではZhuet al. (2008)による認知的感情 制御尺度(CERQ)の中国語版 (CERQ-C)を用し、た。 日本語版と同様の9下位尺度から構成される。 抑うつ:日本では,島他(1985)によるうつ病自 己評価尺度(CES-D)の邦訳版を用いた。 中国では,劉(1999)によるうつ病自己言刊面尺 度(CES-D)の中国語翻訳版を用いた。 う必要があった。 結 果 そこで,本研究の目的として以下の2点を設 各因子における国による差や性差を検討する 定する。一つ目は認知的樹青制御の方略の違い ため,抑うっと認知的尉青制御の各変数につし、

(2)

− 22 − て,国籍(中国, 日本)

x

性(男性,女性)の 2要因分散分析を行った。その結果,肯定的再 評価において差が見られ,中国の方が日本より 得点が高かった。つまり,中国の大学生は日本 の大学生より,ある物事に対して,ポジティブ な方法に向いて,問題を考える傾向の向、こと が樹則できる。同様に,大局的視点については, 女性において中国の方が日本より高い得点が得 られた。つまり,女性において中国の大学生は 日本の大学生より広く物事を見る傾向が高いこ とが示された。 次に,重回帰分析の結果を概観したい。日本 では,自責は抑うつへ有意な正の影響,肯定的 再言軒面は抑うつへ有意な負の影響が臨忍され, 榊原

(

2

0

1

5

)

における結果と同様のものとなったO また,破局的思考は抑うつへ正の有意な傾向が 橋忍され,先行研究においても有意な値が磁忍 されていることから,ほぼ同様の結果となった。 ただし,榊原では因果検証における抑うつの測 定には

B

e

c

k

の抑うつ尺度を用いており,本研究 の指標とは異なることを併記したい。また,サ ンフ。ルをネガティブ感情の強弱によって群分け 比較を行っているが,両群ともに3変数ともに 同様の結果カヰ皆忍されている。なお,榊原

(

2

0

1

5

)

では両群とも肯定的再言刊面,反甥, 自責,破局 的思考,計画への再焦点化において有意な正ま たは負の影響が確認されたものの,本研究では 確認されなかった。 次に,中国では,反稿と破局的思考は抑うつ へ有意な正の影響,肯定的再焦点化は抑うつへ 有意な負の影響が確認された点は Zhu et al.

(

2

0

0

8

)

と同様の結果で、あった。一方,先行研 究において自責と受容では抑うつへ正の影響が 確認されているが,本研究で、は確認されなかっ た。また,大局的視点,他者非難,計画への再 焦点化そして肯定的再言刊面について本研究では 抑うつへ正または負の影響が嬬忍されているが, 先行研究では離忍されなかった。 考 察 本研究の結果より, 日本と中国との間でいく つかの類似点や相違点が前生した。よって,こ の点を強調した教育的アフoローチを行う必要が ある。たとえば,先にも述べたように,肯定的 再言刊面において,中国の方が日本よりその使用 傾向の高さが隔忍された。このことから,例え ば日本において開発されている大学生用の抑う つ予防の教育プログラムの中で,肯定的再評価 に関するフ。ログラムをより強調した形での新た なプログラムを作成し,実施を行うなどのアプ ローチ方法が考えられる。また,破局的思考の 高さが抑うつを導く可能性が得られたことから, そのような思考へ至る前に,感情コントローノレ を行う方途などを身につけるための教育フ。ログ ラムなどの開発が望まれるだろう。 以上の結果を受け,たとえば,肯定的再評価 において,中国の方が日本よりその使用傾向の 高さが臨忍されるなど,認知的感↑青制御方略に おける 2国間の違いが明らかとなったO 大学生 における認知的感情制御方略について,国際比 較としづ形で、検証を行った本研究が,両国の研 究や教育に欠ける点を補完し合い,結果として 大学生の精神的健康を促進することにつながる ことを厚長う。

Updating...

参照

Updating...

関連した話題 :