• 検索結果がありません。

過疎集落の現状と分析(2) - 奈良県過疎地域集落実態調査に基づいて -

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "過疎集落の現状と分析(2) - 奈良県過疎地域集落実態調査に基づいて -"

Copied!
25
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)過疎集落の現状と分析(Ⅱ). 研究ノート. 過疎集落の現状と分析(Ⅱ) -奈良県過疎地域集落実態調査に基づいて- . 麻 生 憲 一. 1.はじめに 本稿は、 「過疎集落の現状と分析(Ⅰ)-過疎化進展のプロセスと過疎対策」 の続稿である。前稿では、過疎化進展のプロセスに焦点をあて、過疎化が進 展することによって生じる課題や問題点を整理し、それぞれの局面で求めら れる過疎対策について検討した。本稿では、奈良県が実施した「奈良県の過 疎地域における集落実態調査」に基づいて、調査結果を概括し、奈良県の過 疎地域の実態を把握する1)。. 2.過疎地域の現状 (1)過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)の改正 わが国では、昭和30年代以降の高度経済成長の過程で、農山漁村から都市 部に向けて若者を中心とした人口移動が起こり、いわゆる過疎問題が発生し た。こうした人口減少問題に対処するため、昭和45年に「過疎地域対策緊急 措置法」が制定され、以来10年ごとに過疎法は改正され、過疎地域に対する 支援策が講じられてきた。平成22年4月「過疎地域自立促進特別措置法の一 部を改正する法律」が施行され、前過疎法の失効期限の6年間延長や過疎地 域の要件の追加が行われ、これに伴い新たに58団体が過疎要件を満たすこと となった2)。今回の改正の大きな要点としては、平成17年国勢調査の結果に 基づき過疎地域の要件の追加を行い、過疎地域自立促進のための特別措置の 拡充を実施したことである。ここでの特別措置の拡充とは、 「過疎対策事業 債のいわゆるソフト事業への拡充」 「過疎対策事業債の対象施設の追加」「国 地域創造学研究. 71.

(2) 研究ノート. 税(所得税・法人税)に係る減価償却の特例の拡充」 「地方税の課税免除又 は不均一課税に伴う措置の拡充」と4点からなり、地域医療の確保や、住民 に身近な生活交通の確保、集落維持の活性化などを図るためのソフト事業促 進に力を入れている。 (2)過疎地域の現状 平成23年10月時点で、全国1,720市町村の内、775市町村(45.1%)が過疎 地域の要件を満たしている。平成17年の国勢調査では、人口1,124万人(8.8%) が過疎地域に住み、その面積は216,477㎢で全体の57.3%の比率を占めている。 国土交通省が平成18年に行った過疎集落調査によると、過疎地域の集落総 数は62,273に上り、そのうち高齢者率が50%以上を超える集落は7,871(12.6%)、 今後消滅の可能性のある集落は2,643、10年以内に消滅する可能性のある集 落は423に上ると推測している。国土交通省は平成11年に同様の調査を実施 しており、平成11年から7年間で199集落が消滅したと報告されている。 (3)奈良県の過疎地域の現状 平成23年4月1日現在、過疎地域市町村数は15団体に上る。ただし、この 数には「過疎みなし市町村」 、 「過疎のある市町村」も含まれている。全市町 村数39団体のうち38.5%が過疎地域市町村となる。奈良県内の過疎地域の面 積は、2,639㎞2で全体の71.5%で、そこに全体の6.3%に当たる8万9,335人が居 住している。過疎地域の集落数は468集落(平成22年現在)に上り、高齢化 率が50%以上を超える集落は111集落である。図1−1、図1−2でもわか るように、奈良県内では、奈良市を中心とする北部地域と十津川村などを中 心とする南部地域では、過疎化の進行は全く異なる3)。奈良県において過疎 化の問題はまさに南部地域の問題と言っても過言ではない。なお、奈良県は 今回の過疎法の改正により、山添村が新たに過疎地域市町村に追加された。. 72.

(3) 過疎集落の現状と分析(Ⅱ). 図1−1.奈良県内の過疎地域市町. 図1−2.奈良県内の人口比率. 3.奈良県過疎地域集落実態調査の概要 (1)調査対象の概要. 表1.市町村別の調査対象集落数. ①調査対象集落 本調査は、奈良県内の14過疎地 域市町村の全438集落のうち207集 落を抽出して調査を実施した。 (平 成21年時点) ②抽出方法 過疎地域市町村のうち、65歳以 上が50%以上を占める集落は全数 抽出、55歳以上が50%以上を占め る集落は52集落を抽出(母集団の 内26.5 %) 、55歳 未 満 が50 % 以 上 の集落は46集落を抽出(母集団の34.6%)した。抽出数は統計的有意性 に基づいている。 地域創造学研究. 73.

(4) 研究ノート. ③調査期間 平成21年7月1日より8月20日まで ④調査方法 質問紙(アンケート調査票)は、集落代表者票と対面調査票の2種類 からなる。 集落代表者票は各自治体を通じて直接に集落代表者に手渡し、 回答をお願いした。対面調査票は、調査員が集落代表者に対面して聞き 取りを行ったものである。 (2)調査対象集落の抽出と区分 奈良県内の過疎地域の集落総数は、平成21年時点で438集落が存在し ている。今回の調査では、そのうち207集落を抽出した。上記の抽出方 法でも示したように、65歳以上が50%以上を占める集落は全数抽出し、 109集落がそれに該当している。今回の調査では、半数以上の集落が高 齢化率の高い(65歳以上が50%以上を占める)集落である。調査の集計 結果に対して、 この点は留意すべきである。五條市と宇陀市については、 旧市町村単位で集計を行っている。. ● ● ● ●● ●. ●. ●. ●. ● ● ● ● ● ● ●● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●● ● ● ●● ● ● ● ● ● ●● ● ● ● ● ●● ●●● ●● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●●● ● ● ● ● ● ● ●● ● ● ● ● ● ●● ●●●● ●●● ● ● ● ●●● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●● ● ● ● ● ● ●●● ● ● ● ● ● ●● ● ●. ● ●. ●. ●●. ● ● ●● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●● ●. ●●. ●. ● ●. ●●. ● ●. ●. ●. ● 55歳以上が50%以上を占める集落 ● ●. ● 65歳以上が50%を占める集落. ● ●. ● ●. ●● ●. ● 55歳未満が50%以上を占める集落. ● ●. ● ● ● ● ●. ●●. ● ● ● ● ●. 図2.抽出過疎市町村. 74.

(5) 過疎集落の現状と分析(Ⅱ). 表2.過疎地域市町村の集落数と調査集落抽出数. (3)高齢化集落の立地の実態 65歳以上が50%以上を占める集落(109集落)の各役場(本庁)まで距 離をみると、4㎞未満が12集落、5~9㎞が23集落、10~14㎞が21集落、 15~19㎞が22集落、20㎞以上が31集落あり、20㎞以上離れた集落が全体の 28%を占める。役場までの距離が20㎞以上離れている集落として、旧大塔 村、十津川村の割合が高くなっている。旧大塔村は10集落全て20㎞以上役 場から離れている。全国調査においても、高齢化率の高い集落ほど役場か ら離れたところにあるといわれている。. 地域創造学研究. 75.

(6) 研究ノート. 表3.65歳以上が50%以上を占める集落の役場(本庁)までの距離別集落区分. (4)調査対象集落の世帯状況 集落住民の主な職業としては、自営業(農業・林業)が最も多く136人、 無職が106人でそれに続いている。 「後継者のいる世帯数」では、65歳以上 が50%以上を占める集落は697世帯で最も少なく、世帯総数に占める比率 は26.5%である。逆に「後継者のいない世帯数」では、65歳以上が50%以 上を占める集落は1,545世帯で最も多く、世帯総数に占める比率は58.7%で ある。なお、ここでの世帯総数とは、調査対象集落の年齢構成区分ごとの 世帯の総数である。 表4.集落年齢構成別の後継者有無の世帯数. 注1:世帯総数は平成18年度の住民基本台帳より抽出したものである。. 76.

(7) 過疎集落の現状と分析(Ⅱ). 4.奈良県過疎地域集落実態調査の集計結果 (1)住民の主要な移動手段 集落住民の主要な移動手段は、専ら自家用車である。特に通勤での利用度 が高い。病院・診療所への移動には、コミュニティバスの利用が考えられる。 通学では、スクールバスの利用、徒歩によるものが考えられる。通学の「そ の他」の項目では、小中学生がいないと回答するものもあった。 ①日常の買い物 日常の買い物は、65歳以上が50%以上を占める集落では、 「公共交通」、 「近 隣者に同乗」の回答が他の年齢階層に比べて高い。. 図3−1.日常の買い物. ②病院・診療所 病 院・診療所への移動として、 「自家用車」が74%、 「公共交通」が 15%、 「近隣者に同乗」が4%と続く。65歳以上が50%以上を占める集落 では、公共交通利用が2割弱を占める。下市町は100%「自家用車」を利 用する。. 図3−2.病院・診療所. 地域創造学研究. 77.

(8) 研究ノート. ③金融機関(銀行・郵便局等) 金融機関への利用では、80%が「自家用車」 、8%が「その他」、7%が「公 共交通」と続く。65歳以上が50%以上を占める集落では、 「公共交通」 の利用比率が10%である。. 図3−3.金融機関(銀行・郵便局等). ④役場 「自家用車」利用が83%を占め、「公共交通」が 役場への主要な移動は、 8%と続く。65歳以上が50%以上を占める集落では、12%が「公共交通」 を利用する。. 図3−4.役場. ⑤通勤 通勤では、88%が「自家用車」を利用している。65歳以上が50%以上の 集落の「その他」には、無職の回答者が含まれる。. 78.

(9) 過疎集落の現状と分析(Ⅱ). 図3−5.通勤. ⑥通学 通学の移動では、34%がスクールバスなどの「公共交通」を利用する。徒歩 (その他)も34%と多い。65歳以上が50%を占める集落の「その他」には、 「子 どもがいない」などの回答が含まれている。. 図3−6.通学. (2)外出介護の必要な世帯数. 表5.集落年齢構成別の外出介護等必要世帯数. 外出時に世帯員以外の介護者が必要 な世帯の有無では、 48.8%の集落が「あ る」 と回答している。世帯数としては、 全体で361戸、65歳以上が50%を占め る集落では180戸に上る。 (3)10年後の生活で不安に感じること 集落内の十年後の生活を考えたとき、最も不安に感じることは、 「交通手 段の確保」で65.7%を占め、 「後継者不足」41.1%、 「田畑、山林の維持」 37.2%、「病院や診療所などの医療機関」32.9%と続く。また、「集落の消滅」 地域創造学研究. 79.

(10) 研究ノート. を上げる集落も28.5%と比較的に多い。 「子どもの学校への通学」 「保育所な どの子育て環境」の回答比率が低い。これは少子化のため子どものいない世 帯が増えているためである。年齢構成別では、高齢化率が高い集落ほど、 「交 通手段の確保」に不安を感じるとの回答が増加する。65歳以上が50%以上を 占める集落では、71.6%が「交通手段の確保」に不安を感じている。 表6.集落年齢構成別の10年後の住民生活不安. (4)集落内で行う共同作業と困難になってきた共同作業の実態 集落内で行う共同作業としては、 「集会所・お宮などの管理」92.8%、 「市 町村道・農道・林道の管理」85.5%、 「集落内の役員や行事役」85.0%で高い 回答率を示している。 「集落内でのゴミ拾い・美化活動」「集落内での葬儀の 実施」なども7割以上の集落で、共同で実施されている。高齢化率が高まる に従い、「用水路の管理」 「集会所・お宮などの管理」 「公園・路側帯などの 植栽・草取り等」の共同作業は実施され難い傾向にある。 困難になってきた共同作業としては、 「市町村道・農道・林道の管理」 57.0 %、「 集 会 所・ お 宮 な ど の 管 理 」47.3 %、 「集落内の役員や行事役」 46.4%、「集落内での葬儀の実施」45.9%と続く。これらの項目は高齢化率の 高い集落ほど、顕著である。 80.

(11) 過疎集落の現状と分析(Ⅱ). 表7−1.集落年齢構成別の集落内で毎年行う共同作業(複数回答). 表7−2.集落年齢構成別の困難になってきた共同作業(複数回答). (5)農道・用水路、林道・共有林の維持管理の実態 維持管理の回数としては、年1回が36.9%、年2回36.5%で、ほぼ拮抗して いる。維持管理の状況としては、 「適切に管理できている」集落と「十分な 管理ができていない」集落が44.9%で同数であり、残りの10%が「十分な管 理ができていない」と回答している。今後の対応としては、 「少人数でも時 間をかけて行う」が55.1%で最も高く、次に「一部維持管理をあきらめて、 できる範囲で行う」が52.7%で続く。 「方策を出し合い、改良していく」も 41.1%と高い比率を示している。 「維持管理をあきらめる」と回答した比率 は9.7%で低い。「ボランティアに来てほしい」が15%を占めている。集落年 齢構成別にみると、65歳以上が50%以上を占める集落では、維持管理が「な し」と回答した集落が14%にも上り、維持管理の状況について「人手、費用 が不足し、十分な管理ができていない」と回答した集落が半数の50%を占め る。今後の対策として、 「一部管理をあきらめて、できる範囲で行う」が 57.8%で最も多い。 表8.集落年齢構成別の維持管理回数・維持管理状況. 地域創造学研究. 81.

(12) 研究ノート. (6)農地・山地の荒廃の実態 荒廃による問題点として、 「動物による被害が発生している」を挙げる集 落が圧倒的に多く、96.6%に上り、県内全域的な問題となっている。また、 「不 在地主の土地管理ができない」と回答する集落も51.2%で過半数を超え、不 在地主の土地管理について多くの集落で問題化しており、高齢化率の高い集 落ほど、 不在地主の土地管理を問題化する傾向にある。市町村別でみると、 「動 物による被害が発生している」と全集落が回答したところは、17市町村中(旧 市町村別) 、14市町村に上る。 表9.集落年齢構成別の農地・山林の荒廃による問題点. (7)集落の伝統行事、伝統芸能と消滅しそうな伝統行事、伝統芸能の実態 集落内で行われている伝統行事としては、 「春祭り・秋祭り」が82.1%で 最も多く、 「法要・供養」 (63.8%) 、 「講・寄り合い」(41.5%)が続く。後継 者不足で消滅しそうな伝統行事として、 「盆踊り」 (45.4%)が最も多く、 「春 祭り・秋祭り」が25.6%で続く。高齢化率が高い集落ほど、「春祭り・秋祭り」 「盆踊り」実施の回答率が低く、今後消滅しそうであるとの回答率が最も高 い(33.9%) 。 表10−1.集落年齢構成別の集落内で現在行っている伝統行事、伝統芸能. 82.

(13) 過疎集落の現状と分析(Ⅱ). 表10−2.集落年齢構成別の集落内で消滅しそうな伝統行事、伝統芸能. (8)集落内のリーダーの有無について 集落内に地域づくりの担い手となるリーダーが「いる」と回答した集落は 68.1%、 「いない」と回答した集落が24.6%である。 「その他」の回答としては、 地区の自治会長がリーダーと回答した者が含まれる。55歳未満が50%以上を 占める集落では、78.3%の集落にリーダーが存在する。 表11.集落年齢構成別のリーダーの有無. (9)都市部との交流事業の取り組み状況 交流事業に「取り組んでいる」という集落は17.9%、 「取り組んでいない」 集落は79.7%である。高齢化率の高い集落ほど、交流事業に取り組んでいる 比率が高い。 表12.集落年齢構成別の都市部との交流事業の実施(%). 地域創造学研究. 83.

(14) 研究ノート. (10)都市部からの新規定住者の受け入れ実態 新規定住者の受け入れについては、全体の61.5%の集落で受け入れ意向を 示しており、26.8%の集落で「受け入れたくない」としている。55歳未満が 50%以上を占める集落では、 「受け入れたくない」と回答する比率が3割を超 えている。新規定住者受け入れの条件としては、「地域にとけ込む人、地域 のしきたりを守る人」が117(56.5%)で最も多く、 「定年退職者よりも若い人」 が67(32.4%)で続く。また、 「受け入れたくない」理由として、 「人柄が分 からない」(16.9%) 、 「共有財産の問題があるから」 (15.0%)が上位に来て いる。高齢化率の高い集落ほど、 「定年退職者よりも若い人」を望む傾向に ある。 表13−1.集落年齢別の新規定住者受け入れ意向(%). 表13−2.集落年齢別の新規定住者受け入れ条件. 表13−3.集落年齢別の新規定住者受け入れ拒否理由. 84.

(15) 過疎集落の現状と分析(Ⅱ). (11)集落内の空き家の実態 集落内に空き家のある集落は、全体で82%と高い比率を占めている。高齢 化率が高まるほど、空き家の回答率も増える。空き家の活用としては、40% の集落が「必要である」と回答し、残りの60%が「必要でない」と回答して いる。. 図4−1.集落別年齢構成別の空き家の有無. 図4−2.集落年齢構成別の空き家活用の必要性(%). (12)集落内の魅力的なところ 集落内で魅力的なところとして、 「自然に恵まれている」が84.5%で最も 多く、「空気や水がおいしい」83.6%、 「のんびりできる」69.6%、「人情があ る」65.2%と続く。 「地域に活力がある」6.8%、 「交通の便がよい」2.9%で 低位にある。高齢化率の高い集落ほど、 「のんびりできる」「気候がおやかで すごしやすい」を集落内の魅力的なところと感じる傾向にある。中山間地域 の集落では、 「自然に恵まれている」 「空気や水がおいしい」を魅力的と回答 する比率が高い。 地域創造学研究. 85.

(16) 研究ノート. 表14.集落年齢構成別の集落内の魅力的なところ. (13)集落の10年後の見通しについて 10年後の集落の見通しとして、 「集落は存続している」(49.8%)が、「集 落の維持は困難だと思っている」 (40.6%)を上回っている。65歳以上が 50%以上の集落では、67.0%までが集落の維持は困難だと考えている。 表15.集落年齢構成別の10年度の集落の見通し. (14)集落内の独自の取り組みについて 調査対象集落のうち、独自の取り組みを「実施したことがない」集落は 75.4%で、「実施したことがある」集落は22.7%である。高齢化率が高い集落 ほど「実施したことがない」と回答している。 86.

(17) 過疎集落の現状と分析(Ⅱ). 表16.集落年齢構成別の集落独自の取り組みの有無. (15)公的年金やアドバイザー派遣、 「集落支援員」等の活用の実態 補助金や外部アドバイザーを「受け入れたことがない」集落は、全体で 71.0%を占め、「受け入れたことがあり効果が大きい」と回答した集落は 15.0%、「受け入れたことはあるが、効果がない」と回答した集落は7.2%で ある。55歳未満が50%以上を占める集落では、公的補助金を受け入れて効果 があったと回答した比率が28.3%で他の年齢階層に比べて高い。集落支援員 や地域おこし協力隊を「ぜひ活用したい」が24.3%、 「活用したいが、問題 や障害がある」17.5%、 「活用しない」が3.4%で、最も多かったのが「わか らない」で54.9%である。高齢化率が50%を超える集落では、 「活用したいが、 問題や障害がある」との回答が2割を超えている。 表17−1.集落年齢構成別の公的補助金等の受け入れの有無. 地域創造学研究. 87.

(18) 研究ノート. 表17−2.集落年齢構成別の「集落支援員」等の制度活用の意向. (16)集落維持に関して行政に望む対策について 集落維持のために行政に望む対策として、 「高齢者福祉への支援」が 74.4%で最も高く、次に「若者の雇用の場の創出」が67.1%、「地場産業の振 興策」が62.3%、「生活維持のための対策」が61.8%と続く。高齢化率が50% を超える集落では、 「高齢者福祉への支援」を79.8%の集落が望んでいる。 高齢化率が50%を下回る集落では、 「若者の雇用の場の創出」についての回 答率が高い。 表18.集落年齢構成別の集落維持のための行政に望む対策. 88.

(19) 過疎集落の現状と分析(Ⅱ). 5.過疎化進展のプロセス (1)フェーズ区分 過疎化進展のプロセスでは、前稿で述べたように、過疎化の状況を4つの フェーズに区分して把握した。 「フェーズⅠ」は、住民の転出などにより人 口の急激な減少(社会減少)が集落内で顕著になってくる段階である。この 段階では、多くの若者が転出し、集落内の高齢化が一段と進んでいく時期で ある。「フェーズⅡ」では、住民の転出による人口の社会減少よりも高齢者 の死亡数の増加による自然減少が問題化される段階である。この段階では、 集落内の住民の多くが高齢者であり、集落内での自治会活動や草刈り、清掃 活動などの共同作業を維持することが非常に困難な状況である。 「フェーズ Ⅲ」の段階では、集落機能の急激かつ全面的な脆弱化が急速に発生する。こ の段階は「限界集落」化と呼ばれる状況であり、高齢者率が50%を超え、集 落機能を維持することがかなり困難な状況である。 「フェーズⅣ」では、さ らに人口は減少し、集落内には高齢者が数名程度となり、集落機能は完全に 消滅する。ただし、 住民はただちに消滅することはなく、少数の高齢者が「終 の住処」として集落内に住み続ける場合や、先祖から受け継いだ土地や墓を 守るために一時的に集落内に滞在する場合がこの段階である。. 図5.過疎化進展のプロセス. 地域創造学研究. 89.

(20) 研究ノート. (2)フェーズ区分の基準化 前稿では、過疎化の進展を4つのフェーズに分け、フェーズごとに「集落 過疎化点」 「集落限界点」 「集落機能消滅点」 「無住化点」の基準点を設けた。 しかし、それぞれの基準値が数値上明確でなかった。本稿では、基準値を以 下のように設定する。まず、基準値を「人口比率」と「高齢化率」の2要因 によって把握する。 「人口比率」とは、現集落人口を最盛期人口で除したも ので、 「高齢化率」とは、現集落人口に占める65歳以上人口の比率である。 「人口比率」と「高齢化率(%) 」によって、4つのフェーズを以下のよう に基準化する。 「フェーズⅠ」 : (人口比率>0.5) 」 : (0.3<人口比率≦ 0.5、高齢化率<0.5) 「フェーズⅡ(初期) 」 : (0.3<人口比率≦ 0.5、高齢化率≧0.5) 「フェーズⅡ(後期) 」 : (0.1<人口比率≦ 0.3、高齢化率<0.5) 「フェーズⅢ(初期) 」 : (0.1<人口比率≦ 0.3、高齢化率≧0.5) 「フェーズⅢ(後期) : (人口比率≦ 0.1) 「フェーズⅣ」 「フェーズⅠ」は、人口比率が0.5を上回る段階である。集落人口の社会減少 が顕著になってくるが、まだ最盛期人口の過半数割れとなっていない状況で ある。 「フェーズⅡ」 と 「フェーズⅢ」 はそれぞれ前期と後期に分ける。 「フェー ズⅡ」では、人口比率が最盛期人口の過半数割れとなるが、3割以上は維持 できている状況であり、高齢化率が0.5を上回る場合を前期、下回る場合を 後期とする。 「フェーズⅢ」では、人口比率が最盛期人口の3割を切り、かろ うじて1割以上を維持できている状況で、高齢化率が0.5を上回る場合を前期、 下回る場合を後期とする。 「フェーズⅣ」は、人口比率が最盛期人口の1割を 切った段階にあり、 「集落機能」を維持することが困難な状況である。 (3)奈良県内の過疎化進展の状況 ①人口比率と高齢化率  過疎地域市町村別にみると、最盛期から人口が半減したところは、旧西 90.

(21) 過疎集落の現状と分析(Ⅱ). 吉野村、旧大塔村、御杖村、吉野町、下市町、黒滝村、天川村、野迫川村、 十津川村、下北山村、上北山村、川上村、東吉野村の13市町村である(旧 市町村含む) (表19) 。このうち、70%以上減少したところは、旧大塔村、 下市町、黒滝村、野迫川村、川上村、東吉野村の6市町村である(旧市町 村含む) 。 表19.調査対象集落の市町村別人口比率. 次に、調査対象集落204(集落合併、集落移転の3集落を除外)についてみ ると、集落人口が最盛期に比べて半減した集落は141集落、そのうち70%以 上減少した集落は88集落に上る。現時点で人口が5人未満の集落は3集落で、 最小人数は3人である。高齢化率についてみると、調査対象集落全体の平均 は49.4%に上り、高齢化率が50%以上を占める市町村は8、集落数では109集 落となり、そのうち高齢化率が100%の集落が3集落である。 なお、最盛期人口は集落代表者票のデータを用いており、現在の人口は平 成21年の住民基本台帳から抽出したものである。 地域創造学研究. 91.

(22) 研究ノート. ②調査対象集落のフェーズ確定 各フェーズの範囲から調査対象集落207を区分すると以下の図6のようにな る。ただし、集落合併、集落移転の3集落を除外して、204集落について区分 を行った。集落単位で「人口比率」と「高齢化率」について、散布図を表記 したものが図6である。人口比率が1を上回る集落は6集落に留まっている。 「人口比率」と「高齢化率」との相関係数は−0.65で高い負の相関関係を示す。. 図6.奈良県過疎集落の人口比率と高齢化率の散布図. 調査対象集落をフェーズごとに集計すると以下のようになる。 「フェーズ Ⅰ」が63集落、 「フェーズⅡ」が53集落で、そのうち前期が23集落、後期が 30集落である。「フェーズⅢ」は72集落で、前期が11集落、後期が31集落に 上る。 「フェーズⅣ」は16集落で、これに「フェーズⅢ」を加えた88集落は、 高齢化率が0.5を超え、人口比率は最盛期人口の3割を下回る。これは一般に 「限界集落」と呼ばれる状況であり、奈良県内の過疎地域集落438(平成21年 時点)のうち約2割を占めている。 「フェーズⅣ」の16集落は、「限界集落」 から「消滅集落」へと移行する段階にあると考えられる。奈良県内の過疎化 の進展は、より深刻な状況を迎えようとしている。 92.

(23) 過疎集落の現状と分析(Ⅱ). 「フェーズⅠ」・・・・・・・・・・・63集落 「フェーズⅡ(前期) 」・・・・23集落 「フェーズⅡ(後期) 」・・・・30集落 「フェーズⅢ(前期) 」・・・・11集落 「フェーズⅢ(後期) 」・・・・61集落 「フェーズⅣ」・・・・・・・・・・・16集落 合 計 204集落 フェーズⅣ フェーズⅠ. 高齢化率. フェーズⅡ (後期). フェーズⅢ (後期). フェーズⅡ (前期). フェーズⅢ (前期). 人口比率. 図7.フェーズ区分の基準化による集落数. 6.おわりに 本稿は、平成21年に実施した「奈良県の過疎地域における集落実態調査」 に基づいて、調査対象集落207の過疎化の現状を集落年齢構成別に明らかに した。また、過疎化進展のプロセスのフェーズ区分を奈良県内の過疎地域集 落に適用し、「人口比率」と「高齢化率」の下で基準値を設定することで、 過疎の進行状況を把握した。奈良県内の過疎地域の集落の多くは、 「フェー ズⅡ」から「フェーズⅢ」の段階へ差し掛かっている。 「フェーズⅣ」の16 集落のうち1集落を除いて、全ての集落の高齢化率が0.5を超えており、すで に「限界集落」から「消滅集落」へと移行する段階にあるといえよう。これ らの数値から判断する限り、奈良県内の過疎化は急速に進行しており、特に 南部地域の現状はより厳しいものとなりつつある。その意味で、前稿でも触 れたように、それぞれの地域の特有な状況を考慮した過疎対策が今後求めら れる。 地域創造学研究. 93.

(24) 研究ノート. 注. 1)本調査は、特定非営利活動法人地域創造政策研究センターの委託事業である。 2)過疎地域の要件は次の1ないし2のいずれかに該当する地域である。 1 (1)かつ(2)に該当する地域 (1) 人口要件:以下のいずれかに該当すること ① 昭和35年~平成7年の45年間の人口減少率が30%以上 ② 昭 和35年~平成7年の45年間の人口減少率が25%以上、高齢者率(65 歳以上)が24%以上 ③ 昭和35年~平成7年の45年間の人口減少率が25%以上、若年者率(15歳 以上30歳未満)が15%以下 ④ 昭和45年~平成7年の人口減少率が19%以上 *ただし、①②③の場合、昭和45年~平成7年の25年間で10%以上人口増加 している団体は除く。 (2) 財政力要件:平成8~10年度の3カ年平均の財政力指数が0.42以下かつ、 公営競技収益が13億円以下であること。 2 (1)かつ(2)に該当する地域 (1)人口要件:以下のいずれかに該当すること ① 昭和35年~平成17年の45年間の人口減少率が33%以上 ② 昭 和35年~平成17年の45年間の人口減少率が28%以上、高齢者率(65 歳以上)が29%以上 ③ 昭 和35年~平成17年の45年間の人口減少率が28%以上、若年者率(15 歳以上30歳未満)が14%以下 ④ 昭和55年~平成17年の人口減少率が17%以上 *ただし、①②③の場合、昭和55年~平成17年の25年間で10%以上人口増 加している団体は除く。 (2)財政力要件:平成18~20年度の3カ年平均の財政力指数が0.56以下かつ、 公営競技収益が20億円以下であること。 3)図1―1は、全国過疎地域自立促進連盟のホームページより引用。. 参考・引用文献. 麻生憲一(2010)、『奈良県の過疎地帯における集落実態調査報告書』、特定非営 利活動法人地域創造政策研究センター。 麻生憲一(2011)、「過疎集落の現状と分析(Ⅰ)-過疎化進展のプロセスと過 疎対策」、奈良県立大学研究季報 第21巻第3号、pp.147-156. 麻生憲一(2011)、「過疎化進展のプロセスと過疎対策」、愛知大学経営総合科学 研究所『日本の空港と国際観光』、36、pp.79−88. 今井幸彦編(1969)、『日本の過疎地帯』、岩波新書。 小田切徳美(2009)、『農山村再生-「限界集落」問題を超えて』 、岩波書店。. 94.

(25) 過疎集落の現状と分析(Ⅱ) 河北新報社編集局編(1986)、『新過疎時代』、ぎょうせい。 関西学院大学文学部昭和46年度基礎演習ⅡS(1973)、『近畿の過疎 村びとの生 活と意見から』、論文集。 曽根英二(2010)、『限界集落 吾が村なれば』、日本経済新聞出版社。 額賀信(2001) 、 『「過疎列島」の孤独 人口が減っても地域は甦るか』、時事通 信社。 額賀信(2005)、『需要縮小の危機 人口減少社会の経済学』 、NTT出版。 、無明舎出版。 毎日新聞秋田支局(1988)、『過疎 人口減少県・秋田からの報告』 山本努(1996)、『現代過疎問題の研究』、恒星社厚生閣。. 地域創造学研究. 95.

(26)

参照

関連したドキュメント

Q3-3 父母と一緒に生活していますが、祖母と養子縁組をしています(祖父は既に死 亡) 。しかし、祖母は認知症のため意思の疎通が困難な状況です。

② 現地業務期間中は安全管理に十分留意してください。現地の治安状況に ついては、

ポイ イン ント ト⑩ ⑩ 基 基準 準不 不適 適合 合土 土壌 壌の の維 維持 持管 管理

右の実方説では︑相互拘束と共同認識がカルテルの実態上の問題として区別されているのであるが︑相互拘束によ

地震 L1 について、状態 A+α と状態 E の評価結果を比較すると、全 CDF は状態 A+α の 1.2×10 -5 /炉年から状態 E では 8.2×10 -6 /炉年まで低下し

地震 L1 について、状態 A+α と状態 E の評価結果を比較すると、全 CDF は状態 A+α の 1.2×10 -5 /炉年から状態 E では 8.2×10 -6 /炉年まで低下し

従いまして、本来は当社が責任を持って担うべき業務ではあり

(目標) 1 安全対策をはじめ周到な準備をした上で、燃料デブリを安全に回収し、これを十分に管理さ れた安定保管の状態に持ち込む。 2