Title
水系におけるダム系列と流域高度分布に着目した土砂流送
過程の解明( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
大橋, 慶介
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第307号
Issue Date
2007-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/21447
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 大 橋 慶 介(愛知県) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 専 攻 学位論文題目 学位論文審査委貝 博 士(工学) 甲第 307 号 平成19 年 3 月 25 日 生産開発システム工学専攻 水系におけるダム系列と流域高度分布に着目した土砂流送過程の解明 (Sedimenttransportationprocessfocused on a series ofdams and
basinaltitudedistributioninriversystem) 鴫 小 授 教 郎志郎 裕孝一 田 田 川 藤安 玉 授授授 教 教教助 ) ) 査査 主 副 ( ( 智
論文内容の要旨
今日,河川流域に展開する水系全体の総合的な整備に関する課題の一つとして,「流域,沿岸域 を視野に入れた総合的な土砂管理」が挙げられ,従来のように,土砂の流出・流送過程において発 生するさまざまな問題に個別的に対応するので霹まなく,流域の源頭部から海域までを一貫した土砂 の運動領域である『流砂系』として捉え,流砂系全体のバランスを考慮して計画・施策を立ててい くことの重要性が提起されている.その総合的な土砂管理にとって,水系における流出・流送土砂 量は最も基本的な物理量であり,それらの精度のよい実態把握と予測評価は社会的に要請された水 工学上の非常に重要な課題である.一方,現在の地質構造や地形は,現在までにその周辺の均表構成物質に作用してきた営
力を総合的に反映していると捉え,流域の地形が一定の状態をかなりの期間維持してある 種のバランスを保っていると考えると,恒常的な地殻変動に対して一定の地形を維持する 過程の副産物ともいえる土砂の生産・流出量と現在の地形との間には明確な関連があると 考えられる.このような観点から,本研究では,流域規模と平面形状およびその起伏を総 合的かつ端的に表すのは流域の高度分布であると考え,ある高度以上の面積を示す面積高 度曲線(Hypsometriccurve)が流域における様々な因子を包含した総合的指標として地形 特性表現の有効な方法になりうると考えている.そこで,最初に,それによって全国の一 級河川水系の流域特性が明確に分類できることを示してその有効性を確かめ,ついで,木 曽川本川流域を対象にその特性とダム貯水池の堆砂量との関係が明らかにし,生産・流出 土砂量に直結するダム貯水池の堆砂量評価指針を示すとともに,流域の高度分布に,気象 特性である降雨分布を考慮した土砂流出ポテンシャルを定義し,このポテンシャルが,従 来から広く認められてはいるが,理由が末文明であった,巨視的な全国土砂流出特性をよ性を示し,ついで, 全国の一級河川水系流域について数値地図と GISを用いて面積高度曲 線を求め,そこから各種の統計パラメータと流域形状などとを比較し,それぞれの流域の 特徴を考察している.その結果,日本の地質構造区である東北日本と西南日本とについて, 前者では,流域面積が大きい扇状地河川が多く,後者では湖沼が少なく,平地の勾配が大 きく,河川規模が小さいといった特性を客観的・定量的に確認している.また,正規化し た面積高度曲線とそのヒストグラムの分布形状から,山地の相対高度分布と扇状地・沖積 低地の有無に基づいて地域的特性が抽出可能であることを示している. 第3章では,木曽川上流域の連続したダム系列における貯水池の堆砂測量資料を基に, 各貯水池での年堆砂量と水文統計量との相関を調べ,両者に多少なりとも相関があるのは, 木曽川本川の下流に位置する丸山ダム貯水池と笠置ダムの堆砂量と総流入量・年最大洪水 流量との間のみであって,系列的に立地するダム貯水池の堆砂現象は年変動が非常に大き く,上流ダムの堆砂状況の影響を強く受ける状況,とくに,建設直後わ大きな貯水池を持 っダムは下流へ土砂を流出させない状況を明らかにし,丸山ダム貯水池の堆砂状況に着目 してそれぞれのダムにおける捕捉率の評価を行っている.また,\流域の土砂流送現象は年 変動が大きく,単純な水文統計量による堆砂量予測は困難であるが,ある程度の期間では 堆砂傾向が累積堆砂量から確実に読み取られるので,流域規模における土砂流送現象につ いては,適切な時間スケールを用いると統計量として有効であることを示している・ 第4章では,土砂生産量を見積もることを加できる示唆する地形量について,面積高度 曲線中心に調べ,水の作用の効果を考慮するために,降水量で重み付けした土砂流出ポテ ンシャルの考えを導入した.すなわち,降水の年間総位置エネルギーを土砂流出ポテンシ ャルと定義して,それとダム集水域ごとの堆砂量との比較し,堆砂量を決定するダム捕捉
率について,貯水池内の土砂粒子の動きと粒度分布の関連を調べ,考察を加えている・
その結果,貯水池が平衡状態に達する以前の年堆砂量を初期堆砂量とし,さらに流水の 位置エネルギーを土砂流出ポテンシャルと定義して両者の関係を調べて,それらの間に線 形比例の関係を見出し,この比例関係は流域毎に異なる傾向を示している理由について, 捕捉率との関係を検討して,今後の課題を示している. 第5章では,全国一級河川水系の土砂流出ポテンシャルを面積高度曲線から求め,実測の堆砂実績とポテンシャルの比畷を行い,土砂流出ポテンシャルを土砂流出予測に結びつ
ける提案を行った.すなわち,全国一級河川水系の面積高度曲線を用いて土砂流出ポテン シャルを求め,実測のダム堆砂からもとめられた平均年比流砂量と比較して.お互いの位 置関係はかなりよく対応していることを明らかにし,傾きが異なっている集団について, 降雨と流域高度の関係からその理由を示した. 第6章では,結論として,以上の結果がまとめられ,今後展開すべき点として,実用的 な貯水池堆砂予測手法の確立や,河川一流域の社会基盤の整備計画や維持管理に,明らか にした全国の河川流域特性を活かしていくことなどが述べられている。論文審査結果の要旨
流域における正確な土砂流出量を求め,それを支配する諸因子を見出して両者の関係を明ら かにすることは,河川工学上の古くからのテーマであり,その現象の複雑さ故に,現在もなお 取り組まれている課題である.その解明は集水域一氾濫域一海岸域における良好な水辺環境の 形成・維持のためにも欠かせないものとして,近年ますます注目されている.学位請求論文は, この課題について,流域スケールの地形量から導いたシンプルな考え方に基づくものではある が,実際の処理には多大の努力が必要とされるパラメータ,すなわち,面積高度曲線とその特 性量,によって土砂流出特性が分類可能であることを示すとともに,多数のダムが建造されて きている木曽川本川流域のダム堆砂に着目して,上記の地形量と土砂流出量との具体的関係を 明らかにし,それらによって,全国1級河川水系における土砂流出のポテンシャルを示し,広 く知られているがその理由が未分明であった土砂生産特性を明確に説明している. 初めに,全国1級河川水系のそれぞれの流域について,国土交通省の国土数値情報「単位流 域界」と国土地理院の50mメッシュ標高データを用いて高度分布を取得し,地形図,地勢図, ダム位置図などともにGISで比較検討することによって,土砂流出特性の観点から面積高度 曲線による流域の分類を行っている. つぎに,流域における土砂流送量の定量的な評価を行うために,土砂流出量のチェックポイ ントとなるダムの堆砂について,古くから多数の発電用ダムが建造されてきている木曽川の本 川流域の堆砂資料に着目し,まず,水文統計量と堆砂の経年変化との相関を調べて,両者の間 にはほとんど相関が見出せず,堆砂の傾向を説明できないことを指摘している.そこで,築造 初期期間における堆砂量から平均年流域土砂流出量を見積もることとして,この初期期間につ いて,ダム建設年次から貯水池が最初に負の年堆砂量を示すまで,つまり,貯水池がある堆砂 平衡状態に達したと見なされるまでの期間を採用して,これを初期堆砂量と呼び,その特性を 明らかにしている.これは,対象ダムのほとんどが発電専用のため洪水制御容量を持たないこ と,`ぉよび,多量の流送土砂があることによって,土砂捕捉率がある時点から急速に低下して いるとの特徴に基づいたものである. さらに,わが国における土砂流出の支配形態である流水による侵食・流送が降水の位置エネ ルギーに起因していることから,対象流域における降水の位置エネルギーを土砂流出ポテンシ ャルと定義し,その最も単純な近似値である面積高度曲線の積分値と流域平均降雨との積につ いて,上述の初期堆砂量との関係を調べ,両者に明確な正の相関関係があることを見出してい る.しかしながら,西隣にある飛騨川流域では,両者が同程度の正の相関を持つものの,回帰 直線の傾きが極めて大きいことから,、ダム地点の流域特性,ダム構造や貯水池規模に応じて, 両者の関係には大きな相違が生じることも指摘している.これに関して,木曽川本川流域にあ るダム貯水池の捕捉率の推移を推算して,それを最も支配する堤体構造因子と考えられるダム 越流高との関係を検討して,両者の間に明確な相関があることを示している.様に,流域面積の増加に応じて減少するとともに,対応河川の相対的な位置関係がよく一致す ることを示して,既往の研究結果が土砂流出ポテンシャルの観点から説明できることを明らか にしている. 学位論文審査委員会では,論文および発表論文(原著2編,参考資料2編)を慎重に検 討した結果,提出された論文は工学的に価値の高い完成された内容を有しているものと認 め,合格と判定した。