西村1ーウエルホープ氏紫斑病の一治瞼⋮例 第六巷 四九〇 80
一臨床實験
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エルホープ馬紫斑病の一治験例
龍 野 病 院西
村
彌
コ 患者 井○信○殿 男 四〇歳 洋服店主 の 初診 昭和十一年四月廿七日 の 主訴 爾側扁桃腺腫脹及出血。歯齪出血 家族歴 蔽父母は何れも老衰にて死亡し,父は購盗血にて五十歳の時死亡、母は六十歳健在、爾親は血族結婚にあらす、 叉血族中に今患者に見るが如き出血性疾患に罹りしものなし。 既往症 幼時より著患を知らす、唯歯牙は小學生時代より悪く義歯多く、爾爾も有し、完全なるもの殆どなし。三十歳の 時結婚し子女二人を基ぐ。少量の日本酒、煙草を嗜む。花柳病は否定す。省今日迄抜歯等の際にも出血の止り難き事なく、 甥血等もなし。 ロ コ 現病の起始埋葬過 昭和十一年四月十二日磯熱、右扁桃腺腫脹疹痛を≠訴とし近所の飾師の診療を受け数日にて全治し十 九日入浴外出もなせり、然るに翌一一十日叉もや扁桃腺腫脹し、再び殿酉療を葺くること\なり,廿一日前醤は﹁ヂフテリー﹂血清 注射を施行し︵﹁ヂフテリー﹂にあらざるも血清注射をなすと速に治癒すとの言葉なりきと︶、廿四日雨側扁桃腺腫脹加りたる 爲め、切開されたり。嚥下痛は経り強からす.患者は臥床せす、其醤師も﹁これだけ腫れて起きてゐられるのが不思議だ﹂と81 の言葉なりきと。廿五日夕刻歯齪部より増血せるに自ら氣付き往診を求め、止血剤の注射を行はれたるも止血せす,廿六日 更に左側扁桃腺を切開されしが膿は堪り排出せざりし様なりきと。而して出血は愈々加り、種々農隙剤注射、硝酸銀に依る 歯齪禽蝕庵奏効せす不安なる一夜を明かし昔七日早朝本院長に往診を乞ひ,午前九時頃入院す。 り り の 入院當時の所見慰留事済共に中等度の男子にして、口腔は凝血と血液を以って充たされ、一見してその重篤なるを思は しむ。爾側扁桃腺は軟口蓋に亙りて著しく腫脹磯赤し、﹁ガーゼタンポン﹂を有する切開創あ喚て、凝血を附着しその下より 不断す⋮出血す、歯齪は上顎門歯の二枚の扱影写及下顎左右の第三大臼歯︵﹁カリエス﹂︶よりの出血弄しく歯齪粘膜は青紫色 を呈す。舌は舌背中央に小出血斑を認め口腔全膿として汚繊の感あり。皮膚、顔面蒼白亜黄疸色にして左上臆に﹁ヂフテリ ー﹂血清注射をされし部分に長径約三糎の長方形の青紫色の皮下盗血斑あり。下肢は留部及言置節の附近に帽針頭大の鮎状 斑血斑の少数を認む。關節腫脹、關節精なし、頸部淋巴腺敷個三指頭大に腫脹、右腋窩淋巴腺も二個腫大せるも疹痛なし。 眼は結膜出血黄疸を認めす瞳孔の封光反鷹正常賑底出血なし、鼻腔憂術なく出血も認めす、胸部攣由なく、腹部は季坦、軟 にして脾肝共に燭知せす。腿温光七度五分、脹搏七二緊張梢汝弱。 血液の細菌培養は陰性 の の り 経過及治療 局所腱置として﹁アドレナリン﹂塗布コオポスタチンL塗布等を行ふも効果なし。直ちに﹁クロナトール﹂二〇㏄翻脹注射、﹁ゲ ラチンし,︹、トロンボゲン﹂の大量注射、及葡萄糖リンゲル氏液、﹁ビタカンフアー﹂、﹁コラミン﹂の注射を云ふと同時に﹁ビタ 、・、ン﹂C矧なる﹁バイエル﹂愈肚製コカンタンしの注射を遷したるも容易に止血の傾向見へす、此の上は輸血に擦る外なきも患 者は鍵に﹁ヂフテリー﹂血清注射を受け居るを三って、﹁アナフィラキシー﹂の墨斑ありと難も徒らに排他傍観すべきにあらす と細心の注意を梯ぴっ百合の血液一〇〇Gqを輸血す。︵近親、友人等に患者と同型の0型なかりし爲なり︶夜に入りて黒色下 痢便一同、出血は絡夜敏ま・ヂ、悪心もあり睡眠すること能はざりき。 四月廿八日 左右上謄伸展側殆んど全髄に亙る皮下出血の忌め著しく腫脹し大腿にも﹁ゲラチン﹂、葡萄糖注射の痕を中心 西村闘ウエルホープ氏紫斑病の一治鹸例 第六巻 四九一
t,2 西村ーー軌判建制iフ、民紫斑病の︸治瞼拠 第六巷 四九二 として大腿の大蒲を詰むる廣汎なろ紫赤色の出血斑を生じ、歯齪出血、扁桃腺切開創よりの出血巻心盛んにして少しも減少の 傾向なく、舌背は馬蝉欣をなし舌根及頬粘膜よりも出血し,口臭甚しく加之午後三時頃腹部殊に上腹部膨面鼓音を呈し屡痛あ りて恰も急性王者張の如くに見へ、便意を催すも俳便なく,尿は今朝より全く血尿にして全量七二〇9尿器底に彩しく凝血 を沈澱す。朝鳶近親友入の血液型を罰すること十三入に及ぶも0型なく、患者の生命頗る危険なりしを以って再び私の血液 五〇㏄をm%葡萄糖五〇鰍と混じて輸血す。午後六時頃大阪より給血者の到着するを待ち直ちに一〇〇颯輸血.前日の如く 「しgロンボゲン﹂,特需萄糖踏リンゲル﹂盲﹁カンタン﹂ ㏄注耐射の他本口同よ一3﹁トロンボゲン﹂内⋮脹山散五GO画聖割夕服用を仕付晶澹⋮す。 四月廿九護 韻血依然たρ。午前七時牛輸血一〇〇σq、午後三時輪血一〇〇㏄、午後閃時牛頃悪寒戦藻の後燈温卦九度八 分臓搏九〇とな診、蒙発疹様の嚢疹肘部を中心として多数機生す。直ちに五%﹁クロールカルチユーム﹂一〇Gu静脹注射を行 ふに敷十分にして稜復す。こは前述の如く﹁ヂフテリi﹂血清注射をされ居るを以って夫に因る血清病なるべく、斯かる彊き 牢記の出現は早晩止血の効巣あるものと期待せしに、果して聞もなく,さしも頑強なる口腔出血殆んど止み、患者は大いに 安堵す。午後七時頃再び下腿にも蓋・擁疹様稜疹多血生ぜるも一過性なむき,敷日來初めて睡眠し得るに至P、食餌も﹁オレ ンヂ﹂二者牛乳二合撮り以後積めてコオレンヂL、﹁ネーブル﹂等を馬取せしめ﹁ビタミン﹂Cの補給を計り、内服には﹁ゲラチ ン﹂、乳、酸コカルチユウムL、﹁オポスタチン﹂等を腱方す。 四月滑日 氣分良好出血せす食慾も出でたり。輸血せす。止血剤のみ注射す。 五月一羅 血液槍査施行 血色素系且里﹁ザーり一﹂ 山ハニ% 赤血球数 急患に往診し槍査不能となる 白血球数 七五八○ 白血球分類 廉基嗜好白慮球 O・四%
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西付腫ウェルホープ氏紫斑病の一治瞼例 ﹁エオヂン﹂嗜好白工皿球 中性嗜好白血球 内 桿状核型 分葉核型 小淋巴細胞 ﹁モノチーテン﹂一四一六
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血小板激 算定せざるも血液塗抹標本に容易に見出し得す減少あるも のと推定す。 五月三日 旙桃腺切開部に大さ約示指頭大の上長組織剥離しその部及 歯齪より少量宛出血す。 五月四日 尿は肉眼的に殆んど正常清澄となりしも沈渣には尚少数の 赤血球白血球あり。 五月五日 午前七時頃約十9程の上半あり、鼻中隔よりの出血にして ﹁アドレナリン﹂、過﹁クロールし鐵液塗布にて容易に止血し歯齪出血少量。 五月六日 院腸によりて黒色硬便多旦里あり註ハ後自然⋮便二同黒色泥欣に して潜出血﹁ベンチヂン﹂反鷹彊陽性、寄生壮言を認めす。 血液所見 血色素量 五五% 赤血球数 三四〇萬 白血球数 九・七山ハ○ 鱈巾山ひ谷 阿目九三84 西村Hウエルホーフ氏紫斑病の一治験例 第六巷 四九四 白血球百分率 ﹁エオジン﹂嗜好白血球 ○・四% 中性嗜好白血球 五七・二% 内桿⋮状核型 一一二。六% 分葦小核型 四一二.六% 小淋巴球 一九。二% ﹁モノチーテン﹂ 三・二% 血小板数 検査せるも容易に認めす 出血時間 十三分十五秒 ︵延長す︶ 帥ち白血球増多症あり。 ルンペルレーデ氏現象は翻意注射、輸血の痕等何れも出血し易くして検査する事危瞼なりし故槍せざるも陽性と推定す。 五月七日 歯齪出血丸々多量、吉日激ます、扁桃腺よりの出血なし、口臭梢々輕減す。 五月八日 粗景出血増加の傾向あり。正午輸血一〇〇σαす、輸血後二分爽快を畳えたりしも約三十分後左上肢及下肢に一 過性の蒙麻疹様磯疹を生す、午後八時輸血一〇〇㏄。 五月九日 午前二時頃よゆ上下門歯々齪出血、午前九時輸血一〇〇㏄、午後六時頃止血。 五月十日 菌齪出血中等量、輸血三〇σα。 五月十一日 輸血五〇㏄ 出血昨日の牛量位。 五月十二日 輸血二〇eq 止んど止血。 五月十三日 上顎門歯々平出血中等量、三度私の血液五〇qq喩血、毎日の通りの止血剤注射の外﹁アナプトールゲラチン﹂ OGq注射す。
85 五月十四日 血液検査 血色素量 赤血球数 白血球敬 白血球百分率 ﹁エオジンじ嗜好自幣皿球 中性嗜好白血球 内桿歌核型 分葉核型 小淋巴球 ﹁モノチーテン﹂ 血小板激︵フオニオ氏法︶ 帥ち﹁エオジノブイリー﹂あり。 五月十五日輸血五〇㏄、 五月十ニハロロ 少且里歯齪購山川山皿。 五月+七日 六五% 一一 オ謳ハ伽禺五千 八三三三 三・六% 五四・○% 一丁二% 四二・八% 一八・八% 三・六% 八二九五個 昨日の通り止血剤の他コアナプトールゲラチンL二〇㏄注射。 ﹁カンタンピニqq⋮狂射。 ﹁カンタン﹂一㎝注射。 乱数より少量宛出血、大阪より給血者を呼びたるも給血者少しく貧血歌態ありし故買〇〇㏄のみ輸血す。本 日より貧血治療の目的を以って鶏肝一同一着分︵約四十瓦︶を二同誌至三同食餌の副食物として撮らしむ。 五月十八日 輸血五〇qα。 五月十九日 上下門歯々齪出血戯歌ます、血液門経施行、著明の白血球増多症ありしかば血液塗抹標本を母校病理⋮學敦室 へ逡り佐藤先生に御検査を願びしに次の如き成績にして出血後の白血球増多症なるべしとの事なりき。 西︻村習ウェルホープ氏紫斑病の 一治胎蝋例 第山南巻 四九五
86 f四村Hウエルホープ氏紫斑病の一治臨脇例 第六巻 血色素量 七〇% 赤血球数 三七五萬 白血球数 二〇四八O 白血球分類 ﹁エオジン﹂嗜好自7皿球 一二% 中性嗜好白血球 総和 七〇% 内異型骨臆細胞 一%
桿状核型 九%
分葉核型 六〇%小淋巴球 =%
一.モノチーデンL︵病的﹁モノチーテン﹂一%︶ 七% 血小板激 四八七五〇 ︵五日前より著明に増加せり︶ 斯くて五月廿六日迄少量の出血持潔し五月廿七日には雨下肢に多数の紫斑現はる。 五月廿八日 脾臓﹁レントゲン﹂照射、二粍の亜鉛板濾過、2[3紅斑量。 五月三十日 患家の都合上退院す。然れども筒安静臥床せしむる必要上爾後往診治療す。爾 カルチユウムL注射を毎日交互に行ひ、﹁トロンボゲン﹂内服を持長ず。 六月二日 歯齪出血少量,以後出血なし。 六月七日 第二同脾臓﹁レントゲン﹂照射。 六月十三日 止血剤注射屡止。 六月十四日 第三同﹁レントゲン﹂脾臓照射、側面より2一3紅斑旦里。 四九六 ﹁トロンボゲン﹂、﹁クロール87 六月十六日 上皿山孜論慨査 血色素量 赤血球数 白血球数 白血球百分率 盤基嗜好性白血球 ﹁、エオジン﹂曜口好貞口・皿球 巾性嗜好白血球 内桿歌核型 分葉核型 小淋巴細胞 ﹁モノチーテン﹂ 血小板数 出血時聞 八○% 五四〇萬 八四四〇 一〇一一六〇〇 二分四五秒 0・四八% 三七・四四% 四九・七六% .一 O・二八% 一二 Z・四八% 五三・二八% 二・四% 帥血小板著明に増加し出血時闇短縮せるを見る。 六月二十二日 第四同脾臓﹁レントゲン﹂照射側後面より行ふ。 按 以上臨床繧過及血液中の血小板減少、出血時間の延長等に依り本症はウエルホーフ氏紫斑病の急性型と診断し得べく,初 ぬ扁桃腺周團膿瘍檬症朕を呈し、剰へ切開され居るを以って一躍出血性敗斑症,急性白血病等を考慮せしも、白血球激、脹 西村1ーウエルホープ氏紫斑病の一治瞼例 第六巷 四九七
8S 西村1ーウェルホープ氏紫斑病の一治瞼例 第六巻 四九八 搏,血液の細菌培養陰性なる鮎及血液形熊獣的検査に依り之を除外し得たの。 抑々ウエルホーフ氏紫斑病は一名血小板減少性紫斑病とも稿せらるΣ如く、他の出血性素質と異り血液に特殊の攣化即ち 血小板の著しき減少を來す疾患にして、左程稀有のものにあらざれども,皮膚、粘膜の高度の出血、或ひは出血を繰返す内 途に再生不能性貧血に陥る等の爲め屡々豫後不良なることあり、而して治療法として止血剤慮用の外、輸血、脾臓X線照 射、止むを得ざる時は脾臓別出術、脾臓血管結紮法等唱導せらる。 輸血は血小板補給、血清の血液凝固促進作用及骨髄刺戟等の諸作用により止血の効を奏するものにして、大量を一時に輸 血するよりも少量宛頻同に行ふを可とすと言はる。本例に於ても反復輸血に依り大出血は止みたれども前記の如く歯齪出血 を繰返す傾向ありしかぱ脾臓X線照射を行へり。 身重X線照射の治癒応急は血液の凝固性を促進し﹁ブイプリン,増加、脾臓に於ける血小板破壊作用阻止さると稽せらる。 本例に於ても第二同照射・後出血は全く止みたり。 爾近時本症に蜘してビタミン﹂Cの慮外盛に提唱さる。﹁ビタ、・、ン﹂Cは骨髄に好影響を與へ血小板産生を促し、血漿の﹁ア ルブミン﹂を増量し血液凝周を促進し、血管壁を緻密ならしむるものなりと。私も本腰に﹁カンタン﹂を注射せしも時恰も﹁ビ タミン﹂C豊富の果實に患まれし初夏なりし故中止し、﹁オレンヂ﹂、﹁ネーブル﹂等を褥らしめ.ビタ、・、ンしCの補給を計れり。 以上稔索不充分なれども蕪に報告し、先輩諸賢の御示教を仰がんとす。 絡りに院長高畑博士の御指導を感謝す。