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[The Mechanism of Forming Joint Farming in Northeast Thailand]

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(1)

東北 タイにお ける共同耕作 の形成原理

富 真

*

TheMechanism ofForming JointFarming in NortheastThailand

Shin'ichiSHIGETOMI*

ManyresearchersonruralNortheastThailandhavefoundakindofjointfarmingwhichis mostlyformedbyhouseholdsofparentsandchildren.Thisisconsideredasacooperative actionofclosekininordertomaintaintheirproductivity.However,nostudyhasbeen madeofwhy they adoptsuch aform ofcooperation with each other. Theauthor investigatedeverycaseofjointfarminglnaVillagein1989andcategorizedthereasonsfor jointfarming.Aninterview surveyofelderlyvillagerswasalsocarriedouttolearnthe characteristicsofjointfarmingintheolddays.Theauthorhasfoundthatmostcasesof cooperationareformedtocopewitheconomicconditionsbothinsideandoutsideofthe farm households.Asaresult,thereasonsforjointfarmingareaffectedbythechanging economicsituation,especiallythemigrationoftheyounglaborforceandtheshortageof farmland.Theneweconomicconditionshavealsoaffectedthemotivationofcooperation betweenparentsandchildren.Manycasesareformedinwhichparentsutilizetheirland ownershiptoforcetheirchildrentoofferhelpwithlabor.Thecooperationisnow formed asaneconomiccontractbetweenindividualeconomicunitsratherthanasacommunal unityofclosekin.

じ め

タイの農業生産 は, ごく一部 の工芸作物 を除 くと,そのほとん どが家族農業経営体 によって 担われている。 まず経営管理 の意思決定 と基幹労働力の供給 は,家族農業従事者 に依存 してお り,恒常的賃労働者 を使用す る経営体 は,全国平均で 4% はどしかない [Thailand 1989]。ま た土地 に関 して見 ると,本稿 が対象 とす る東北 タイで は農地賃貸借 が ほとん ど展開 してお ら ず,借地面積 は農地 の 2.3% を占めるにす ぎない [ibid.]。 このよ うに統計 による限 り,個 々の 世帯がその所有す る農地 に家族労働力を投入 して農業生産 をお こな う生産体制が,東北 タイで は一般的なよ うに見える。 しか し実際には,複数 の親族世帯 によって土地 と基幹労働力が内給 されている経営体が存在 す る。 これまでの研究 は, この親族世帯間協同が東北 タイ農家の再生産 システムの中で,古 く

*ア ジア経済研究所 ;InstituteofDevelopingEconomies,42IchigayaMotomura-cho,Shinj uku-ku,Tokyo162,Japan

(2)

か ら存在 して きた ことを示唆 してい る [Lefferts1974:210-212;武 邑 1990:236-257]。 上述 の親族世帯間協同 を生 み出す システムを,東北 タイにおいていち早 く兄 いだ したの は, 水野浩一 であ った [水野 1981]。 すなわち水野 の調査村で は,子供 が結婚 し独立 した世帯 を構 えて も,す ぐさま農地相続 を受 けるので はな く,親 との共同耕作 がお こなわれ るか, あるいは 親 か ら無地代 で農地 を委託 され るとい う関係 が続 く。1)こうして親 が農地 の所有権 を分割す る まで は,親 と子 の世帯 が経営 の内給生産要素 を提供 し合 う関係 におかれ る。 この結合関係 は, 多 くの場合親 の死亡 を契機 と して,農地所有権が子供世帯 に相続 され ることで解消 され る [同 上書 :88-101]。水野 は,上述 のよ うな関係 にあ る世帯群が同一 の屋敷地 内 に立地 す ることが多 い ことか ら, これを 「屋敷地共住集団」 と名づ けた。 しか し, あ くまで も世帯 の結合契機 は, 農業生産 の協 同関係 にあるとされ [同上書 :109], また この よ うな集団が家族周期 に応 じて形 成 ・変化 ・消滅 を繰 り返 す もの と理解 された。 この 「屋敷地共住集 団」概念 は, その後,家族論 と して, あ るいは集団内での経済関係 をめ ぐって,新 たな研究 を生 む契機 とな った。前者 において は

,

「屋敷地共住集団」を構成す る人 々 の結合関係 を, ど う理解 す るか とい う点 に議論 の中心 がおかれた。 ひ とつ には,人 々の二者関 係 を重視 し,集 団 で はな く二 者 関係 の累積体 と して家族 を理解 しよ うとい う立場 が あ った。2) この立場 は,親族 の結合契機 を農業生産 に関す る ものに限定せず,生活面 も含 めた多様 な協 同 関係 の中 に求 め る。一方 には, あ くまで農地 や宅地 の共有関係 を結合契機 と して重視す る立場 があ った。3) す なわち土地 の共有意識 が, 世帯 を分 けた人 々を一 つの家族 と して協 同せ しめ る もの と理解 された。 また集団内の経済関係 に関 して は,親族関係が農地 をめ ぐる経済関係 を ど う規定 してい るのか, とい う点 で議論 がな された。4) そ こで は, 地代 の形態 や水準 を指標 に し て,親族世帯間の相互扶助関係が明 らかにされている。 このよ うな見方 の違 いに もかかわ らず, これ までの研究 は 「屋敷地共住集団」 を,家族周期 に対応 して現 れ る親族世帯 の協 同的結合, と見 る点 で一致 している。 ところが, なぜ家族周期 1) 水野 は 「共同耕作」 あるいは 「共同経営」 とい う用語 を, 本稿で用 いるところの経営受委託 を含 む もの として用 いている [水野 1981:121]。 ここではこの二者を区別 して論 じるために, 「共同 耕作」 は親族世帯が共 同で経営す るもの (現地 では 「- ッ トナムカ ン」 と呼ばれ る) に限定 して 用 いる。 2) 例 えば口羽 ・前 田 [1980:204] では,二者関係累積体 [坪内 ・前田 1977:4] としての家族圏か らタイ社会 を分析す る有効性が うたわれ, 武 邑 [1989:259]は 「屋敷地共住集団」 を 「世帯 の経 済生活上 の困窮 にかかわ って現れ る近親間互助 の一形態」 としている。 3) 竹内 [1985:189]は,財産 (特 に土地)共有の観念が合同家族 を再生産 しているとす る。 また北 原 [1985:7]は屋敷地 と耕地 の親子 間での未分割 が複合家族 た る屋敷地共住集団 を維持 してい るとす る。 4) 屋敷地共住集団内での土地所有利用関係 について宮崎 と田坂 の論争があ るが [宮崎 1984;1987; 田坂 1986],家族財産 につ いての共有観念が親子 ・キ ョウダイ間 にあ るために,農地利用 につ い て相互扶助的な関係が成立 している点では一致 している。 205

(3)

のある段階で,共同耕作や経営受委託 とい う特定 の形 を とって親 と子 の世帯が協同 しな くて は な らないのか, について考察が及ぶ ことはほとん どなか った。 武 邑が指摘す るよ うに,水野 自身 は 「屋敷地共住集団」 を 「親が子 の経済的 自立 を援助す る 形 の共同」 として理解 していたよ うである [武 邑

1

9

9

0:

31

6

]

。 このよ うに共同の機能的意味を 理解すれば, それが子供世帯 の世帯分 け直後 の家族周期 に形成 され るとみるのは,当然 のよ う に思われ る。例 えば武 邑は,共同耕作者 の続柄 と家族周期上 の位置 に加 えて,共同の内容か ら も共同耕作 を類型分 け したが, そ こで も子供世帯が世帯分 け して間 もない家族周期 の段階でお こるタイプを

,

「親世帯 か ら別居独立 した子世帯 の経済的 自立 を援助す るため」の もの と理解 し ている [同上書 :

3

3

2

]。5)しか しそ こで示 された事例 を見 ると,共同耕作理 由が明確 に述べ られ ている8ケースの うち,5ケースまでがむ しろ子供 の世帯が労働力の点で親世帯 を援助 してい た [同上書 :

3

1

9

-

3

2

5

]。つま り子供 の世帯分 け後 とい う家族周期 の段階において も,必ず しも親 か ら子-の援助 とい う形 にはな らないことを,武 邑の研究 は示唆 している。 このよ うに東北 タイの農家が 「屋敷地共住集団」 とい う形で協同す る理由は,家族周期 にお ける特色か らのみ説明で きるもので はない。「屋敷地共住集団」が農家 の経営対応 の一つである 以上, そのよ うな対応 を もた らす要因 は経済的な ものに も求 め られねばなるまい。 ここで経済 的な要因 とは,直接的 には個々の農業経営体 の内的条件 (経営経済的条件) と経営体 を とりま く社会経済的条件 である。本稿で は, なぜ東北 タイの人 々が親族世帯間で経営要素 を結合す る 形で協同す るのかを, もっぱ らその経済的要因に注 目して考察す るものである。 そ して経済的 要因 は歴史的に規定 され るか ら

,

「屋敷地共住集団」とい う協同の形態や形成原理 に も,歴史性 が現われ るであろう。本稿では,東北 タイ農村 の伝統的協同組織である 「屋敷地共住集団」 に ち,現代 の経済的条件が反映 し, その性格 に変化がお きていることを,示 したい。 すでに見 たように 「屋敷地共住集団」 には,共同耕作 と経営受委託 の形 があった。本稿では 前者 の共同耕作 に限定 して分析す る。なお ここで共同耕作 とは

,

「独立 した家計 を営む親族の世 帯が,.耕種部門の経営 について共同の意思決定 をお こない,耕作 の成果 について共同で リスク を負 う経営形態」 と定義す る。6) 以下では, まず筆者の調査村 において,共同耕作が どのよ うな規模で, またどのよ うな形態 で発生 しているのかを概観す る (Ⅰ)。次 に

,1

9

8

9

年時点で存在 した共同耕作 の事例 について, それがいかなる理 由か ら形成 されたのかを検討す る (Ⅱ)。そ こで明 らかにされるのは,農家が 5) このタイプは水野の把握 した形態に一致する [武邑 1990:332]。なお,武邑の調査では, このタ イプが17ケース紹介されているが,そのうち共同耕作をする理由が明瞭でないものが9ケース あった。 6) これに対 して, 経営受委託とは農地の経営権が一方 (もっぱら子供) の世帯に委譲されているも のを指す。 206

(4)

自己を とりま く経済環境への合理 的経営対応 と して共同耕作 とい う手段 を選択 してい るとい う ことで ある。 したが って共 同耕作 の形成原理 には,1989年時点 の農村経済 の状況 が反映 してい る。 それを確認す るために, Ⅱで は同 じ調査村 において, かっての共同耕作 が どのよ うな条件 で形成 されていたのかを検討 す る。 そ して最後 に (Ⅳ),過去30年余 の経済 開発 が,共 同耕作 の形成条件 や協 同参加者 の結合契機 にどのよ うな変化 を もた らしたのか を考 えたい。 Ⅰ

農家の家族サイクルと共同耕作

調査村 の トン村 (BanThon)は,東北 タイの中心 的都市 コ ンケ ン市 か ら,国道 2号線 を約 16 キ ロ北上 し, さ らに東へ 2キ ロはど入 った ところにあ る。7) 行政的 にはコンケ ン県 ムア ン郡 ノ

ン トン区 (TambonNonthon,AmphoeMuang,ChangwatKhonKaen)に属す る行政村であ る。1989年3月時点 の総戸数 は318戸 であ り,かな り人 口の大 きな村 といえよ う。 コ ンケ ン市 か ら20キ ロに満 たない距離 にあ るとはいえ,当時 は市 内での就業機会 は限 られていたか ら,そ こで働 くものは少数であ った。村 の周囲で得 られ る就業機会 は, もっぱ ら農業及 び非農業 の 日 雇 い労働であ る。したが って安定的 な賃労働機会 を求 めて,主 に10-20歳代 の青年 は首都バ ン コクに出稼 ぎす ることが多 く, また男子 の場 合 には30歳代 にな って も国外 を含 めて出稼 ぎす るケースがあ る。 トン村 の農地 は,天水 田 (全耕地 の32.7%),濯概 田(24.8%),畑地 (39.0%), 菜囲地 (2.5%),養魚池 (1.0%)に区分 され る。 港概 は1969年 か ら可能 にな り,現在港瀧 田で は雨期 に稲,乾期 には主 に大豆 が作付 け られ る。 1989年3月 にお こな った全戸調査 によると,総戸数318戸 の うち,自家 の所有す る農地 と労 働力 のみで農業経営 を営 む農家 は,52戸 に過 ぎない。逆 に227戸 は,直系親族 ない しキ ョウダ イ (以下 「近親世帯」 と呼ぶ) の間で何 らかの形 の農地所有利用関係 を結 んでいた。 この うち 共 同耕作 だ けを とりあげ ると,77戸 が これに関わ ってい る。8)っ ま り トン村 で は,世帯 の約7 割 が近親世帯 間で農地利用 の協 同関係 を結 び, また 4分 の 1が共 同耕作 を して い る ことにな る。 このよ うに共同耕作 は, トン村 の農家 の少 なか らぬ農家が採用す る経営形態 であ るといえ よ う。 先述 のよ うに,共同耕作 や経営受委託 は,農地 の権利 が親 か ら子供 に委譲 され る過程で生 じ る。 この過程 は,実際 には地片 ごとになされ るか ら,子供世帯 の経営農地 の中に,共 同耕作地, 経営受託地,所有地 のいずれか二つ以上 が同時 に存在す る場合 があ る。 そ こで,子供 の世帯 が 7) トン村 の状況 につ いて詳 しくは,重富 [1995] を参照 の こと。 8)実際の戸数 は80戸 であ るが, その うち3戸 は親 の屋敷地 に世帯 を構 えた娘 が, 離婚 して食事 もほ とん ど親 の世帯 と一緒 に して い る。 したが って これ は親 の世帯 か ら家計 が分離 して いな い もの と みて,共 同耕作 と しなか った。 207

(5)

表 1 トン村世帯 の直系親族世帯 間農地所有利用関係 の類型 と世帯数 類 型 類型分 けの基準 1) 世帯主 の年 齢 によ る世帯数分布 合 計 共 同耕作 経営受託 所有地 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代以上 Ⅰ

× × 5 10 1 0 0 16 Ⅱ

× 5 7 4 2

0

18 Ⅱ

1 3 2

0 0

6 Ⅳ

×

0 0

2

0

3 5 Ⅴ ×

× 5 19 12 3 2 41 Ⅵ ×

1 15 11 7 7 41 Ⅶ × ×

2 20 33 47 66 168 Ⅷ × × × 2 6 4 5 3 20 注1)

×はその農地所有利用関係 の有無 を示 す。 例 えば類型Iは, 共 同耕作 はあ るが, 親 か ら農地 の委託 も,所有権 も受 けて いな い タイプ。 2)家屋 は分 けたが家計 が同一 と思 われ る3ケー スを除 いた。 農地 の利用権,所有権 を獲得 して い く程度 に準 じて,農地 の所有利用関係 を細分類 し,世帯主 の年齢分布 を見 たのが表1であ る (但 し祖父母 と孫 の間で農地所有利用関係 を もつケースを含 む)0 この裏 によると,親 の農地での共 同耕作 のみをお こな う世帯 に比べ,一部 に委託 を受 け,更 に所有権 を持つ世帯 の方が,世帯主 の年齢分布 が高 い ことがわか る。例 えば共同耕作地 しかな い子供 の世帯 (類型 Ⅰ)16戸 の うち, 15戸 までが30歳代未満であるのに対 し,経営受託地 の みを有 している世帯 (類型 Ⅴ)では,41戸 の うち40歳代以上 が17戸 あ った。更 に所有地 のみ の世帯 (類型Ⅶ)で は,50-60歳代以上が3分 の2を占め る。 また共同耕作地 のある類型 (類 型 Ⅰか らⅣ まで) を他 の類型 と比較す ると,世帯主 の年齢が相対的に若 い。 このよ うに,家族 周期 に したが って次第 に共同耕作か ら経営受託へ,更 に自作へ, とい うこれまでの理解 は, こ の村で も基本的にあて はまる。 しか し同時 に,同 じく30歳代であ りなが ら,共同耕作 のみの世帯 もあれば,農業経営 をすべ て委託 されている もの, あるいは所有権 もすべて有 しているもの もある。 あるいは,共 同耕作 をす る世帯 の中には,世帯主が40歳代以上 にな っているものが14もあ る。 このよ うに してみ ると,単 に家族周期や親 の子 に対す る援助 とい うだけで は説 明で きないケースが,存在 してい るよ うに思 われ る。 そ こで次章 で は,共同耕作が いかなる理 由か ら形成 されたのかを,事例 ご とに検討 したい。 Ⅱ

共同耕作 の形成理 由

前章 の表 1に示 したよ うに, トン村 において直系親族 の所有地 で共 同耕作 をす る世帯 は45 戸 あ った。 その うち複数 の子供世帯 が同 じ農地で共同 している場合 と,親子各 々の世帯 が所有

(6)

地 を提供 しあ ってい る場合 に生 じる重複 を除 き,9)キ ョウダイ間の共 同耕作事例 を加 え ると, トン村 での近親世帯 間 の共 同耕作 は合計36ケー スにな る。共 同耕作 の当事者 によ る説 明 に し たが って,形成理 由を分類 す ると以下 の通 りであ った ([

]

内 はケース数)0 A :親 の世帯 に家族 労 働 力 の不 足 が生 じた [16]。B:子 供 の世 帯 に労 働 力 不 足 が生 じた [3]。

C:

農地相続 が保留状況 にあ り, 分割 で きない [4]。 D :農地 の不足で分割 で きない [1]。E:農地 の購入 に ともない,子供 に も支払 いを共同負担 させ るため [2]。F:収入面 で近 親 の世帯 を扶助す るため [4]。G:世帯分 け した子供世帯 にまだ経営能力がない [5]。H:理 由不 明 [

l

]。紙幅が限 られてい るため,各 ケースにつ いての必要最小限 の情報 は末尾 の付表 に ま とめ,以下 で はそれぞれの類型 の典型的 なケースにつ いて解説 をお こな う。

A.

親 の世帯 に家族労働力 の不足が発生 して いるケー ス 親 の世帯 で労働力 の不足がお きるよ うな事態 を引 き起 こした原因 の主 な もの は,次 の三つで あ る。 一つ は子供 の労働力が農外 に (そ して しば しば村外 に)流 出す る傾 向が強 ま った こと。 二 つ は,結婚 ・同居 した子供夫婦 が,他 のキ ョウダイの結婚 ・同居 を待 たず に世帯分 け して し ま う傾 向が出て きた こと。 そ して三つ 目は, 同居 して いる子供 (特 に労働力 と して期待 され る 青年男子) に, 農業労働 に対 す る忌避感 が起 きてい ること, であ る。 まず主 に第 1の理 由か ら共同耕作 が形成 された典型例 と して,A-1 (付表中の ケース番号) が あげ られ る。 世帯番号 No.10には10人 の子供 があ り, その うち 7人 が娘 であ った。 ところ が第 1女 と第 2女 は結婚前 にバ ンコクへ出て,家庭 もバ ンコクに持 った。第3女 は村 で結婚 し, 1年 の同居後,村内 に世帯分 け した(No.119/1)。第4女 は他村 の夫方 の父母 と同居 し,第5女 はこれ もまたバ ンコク-出た きりであ る。第

6

女 は結婚後 同居せず コンケ ン市 に住 む。第

7

女 は トン村 に居住 す るが,夫方 の両親 と同居 した。男子 の うち2人 は トン村 内に住 んで いるが, いずれ も妻方 の親 と同居 した。こうしてNo.10の場合,7人 の娘 の うち4人 までが都市部 に流 出 したため,世帯 内に娘 とその夫 の労働力 を継続的 に確保 で きなか った。 そ こで村 内 に世帯分 け した娘 と耕作 を共同でお こな ってい る。 ただ し, この娘 の夫 も政府機関 に雇 われてお り,農 業労働力 に不足 があ るため, トン村 に住 む息子 の世帯 1戸が共同耕作 に加 わ っている。 第2の理 由の典型例 は,次 のA-2であろ う。No.132には3人 の娘 が いたが,長女 は20歳 で 結婚す ると1年 で世帯分 け して しま った。 そのため親 の世帯 には親 と未婚 の娘 2人が残 るのみ とな り,労働 力不足 とな ったのであ る。 もちろん,親 は屋敷地 を与 えない ことで,子供 の性急 な世帯分 けをある程度抑 え ることがで きるが, この例 の場合,娘夫婦 は夫 の親 の屋敷地 内 に自 分 たちの住居 を建 てて しま った。 9) これは付表のA-13のケースである。 209

(7)

次章 で詳 しくみ るよ うに,かつて調査村で は,親 と同居す る子供夫婦 は,別 の子供が結婚 ・ 同居す るまで同居 を続 けるべ きである,とい う規範意識 があ った

。A-2

のよ うなケースは, こ の規範が崩 れて きてい ることを示 している。 第

3

の理 由か ら労働力不足が起 きた例 と して は, 次の

A-3

のケースがあげ られ る。

No.

1

1

6

5

5

ライ (

1

ライは

0

.

1

6

ha

)

の農地 を所有す る大規模農家であるが,

9

人 の子供 の うち長女 が結婚 して世帯分 け した時点では,長男,次男が農業労働 をお こな っていたため,長女 は世帯 分 けと同時 に農地 の分与 を受 け,共同耕作 をお こな う必要 はなか った。 ところが,長男が他 出 し,次 に次男が結婚 して村内 に家を構 え ると,残 った6人 の未婚 の子供 たち (うち

1

5

歳以上 の 男子3人) の中に農業 に意欲 のある者がな く,親 の世帯 は労働力不足 に陥 ったのであ った。 そ こで次男 の世帯 には農地 を分 けず,共同耕作 をお こな っている。 複数 の要因が重 な って,親 の世帯での労働力不足 を もた らしているケースもある。例えば事 例

A-4

の場合,

No.

1

6

0

には9人 の子供が いたが, その うち第

1

女 は結婚後

3-4

年間親 と同 居 し,第2女 の結婚 を機会 に世帯分 け した。第2女 も第3女 の結婚 を機 に,第3女 も第4女

(

No.

2

6

4

)

の結婚で世帯分 け している。 これ ら

3

人 の娘 は, いずれ も世帯分 けと同時に親 か ら 農地 の分与 を受 け,共同耕作 を経験 していない。 ところが第4女 が結婚後4年間親 と同居 して か ら自分 の世帯 をつ くった ときには,第5女 はバ ンコクで働 いて いた

。1

9

8

9

年 の調査時点 で は,

No.

1

6

0

の世帯 にはまだ

2

人 の息子がいたが, その うち

1

人 は近在 の工場 に勤務 していた し,農業労働力 としてたよれ るのは

3

0

歳 の息子 のみであ った (しか し息子 は婚 出す ることを予 想 しな くて はな らない。実際2人 の息子 はま もな く結婚 ・他 出 した)。そのため親 は第 4女 には 農地 を分与せず,共同耕作 を開始 したのである。つ まり, この親 の世帯 では,子供 の労働力が 農外 に流出 し,かっ同居 していた子供が妹 の同居 を待 たず に世帯分 けす る, とい う状況が発生 したために労働力不足がお こり,共同耕作 とい う対応 を とらざるを得 なか ったのである。 また事 例

A-5

No.

8

6

には

4

人 の子供 が いたが,長女 が同居

1

年 で村 内 に世帯分 け した 時,未婚 の第2子 (娘) はバ ンコクへ行 き,第3子 (息子)がその後婚出 した。後 に残 ってい る末息子 は農業 に興味を示 さず,村内の精米所で働 いている。 こうして この世帯 では,結婚 し た娘 の早 い世帯分 け,次 の娘 の村外流 出,更 に同居す る息子 の農業労働忌避 とい う要因が重 な り,労働力不足 に陥 った。 そ こで世帯分 け した長女 の世帯 と,共同耕作 をお こな っている。 このよ うに,A型 の共 同耕作 は,労働力不足 に直面 した親世帯 が,村内に世帯分 け した子供 か ら労働力 を引 き出す手段 と して用 い られている。 そのよ うな意識が明瞭 に語 られた事例 とし て,次 の

A-6

を見 よ う。

No.

2

5

には

9

人 の子供 が いたが,存命 中の

6

人 の うち

3

人 は他 出,

2

人 は村 内 に世帯 を持 ち,残 り1人 は結婚 したばか りで親 と同居 している。また死亡 した子供 の息子 (13歳)が同居 している

。6

6

歳 の父親 (目が不 自由なため農作業 はで きない) は,まだ子供 に分与 していない

21

0

(8)

27ライの天水 田を,在村 の子供2世帯 と共同で耕作 してい るが, もしこの農地 を分与 して しま うと,子供 たちが 自分 の面倒 を見 な くな ると恐 れて いた。 この共 同耕作 は, もし先 に結婚 した 子供 の 1人 が父親 と同居 を続 けて いればお きなか ったであろ う。父親 は子供 の扶養行為 を引 き 出す ための誘因 と して,最後 の未分与耕地 を利用 してい る (付表 の事例 A-12で も同様 の判断 が働 いて いるよ うに思 われ る)。 これ ら以外 に も, た またま同居 していた娘 の夫 が死亡 あ るいは離婚 した とい う事情 か ら労働 力不足 が発生 した例 も見 られ る (A の 13か ら 16)。 しか し, 親 の世帯 での労働力不足 の原因 は,社会経済 的条件 の変化 によ って もた らされ た農家労働力 の農外,村外 への流 出や,若 い世 代 の意識変化 (早期世帯分 け志 向や農業労働忌避) とい った ところに求 め られ る場合 の方が, 圧倒的 に多 いのであ る (A の 1か ら 12)0

B.

子供 の世帯での労働力不足 一方,子供 の世帯 の労働 力不足 は どの よ うな原因 によ って引 き起 こされて い るので あろ う か。 これ は3ケース しか存在 しなか ったが, うち 2ケース (B-1,B-2) は夫 が コ ンケ ン市 や 他 の県 で働 いてお り, もう 1ケース (B-3) は子供 の世帯 が雑貨店 を経営 して いて,農業労働 力 に不足 が生 じた とい うもので あ った。 ここで も農外就業 が労働力不足発生 の基本要 因 とな っ てい る。

C

.

農地 の分割相続が保留状況 にある 上述 の A お よび Bの タイプの共同耕作 は,主 に家族労働力 の面 での変化 か らもた らされた ものであ った。 しか し, トン村 を とりま く環境変化 は,土地 の面 で も共 同耕作 の新 たな形成要 因 を持 ち込 む ことにな った。 すなわち,共 同耕作 をお こな う農家世帯 の中に,農地 の希少化が 契機 とな って共 同耕作 をお こな ってい る事例 が見 られた。 その一 つ の現 れが,農地分与 とそれ に続 くであろ う相続 をめ ぐる近親間の利害対立 ゆえに,分割 を保留 し共同耕作 をお こな ってい るとい うものであ る。 その典型例 と して事例

C-

1を と りあげる。 No.52のSimとSaa夫婦 には10人 の子供 があ るが,農地 は娘 (6人) にのみ相続 す るつ も りでい る。この うち トン村在住 の長女 にはすで に農地 を分与 してあ り,残 り21ライの天水 田が 1989年 3月時点 で は, トン村 に住 む娘 2人 の世帯 (No.75,234)と共同で耕作 されていた。残 り3人 の うち1人 は結婚 して親 と同居 中。 もう1人 は トン村 内に住 むが何故 か この共同耕作 に 加 わ っていない。残 りの1人 はバ ンコクに出た き りで,音信不通 で あ った。 もしこの農地 を, まだ農地 を分与 されて いない娘 に均等 に分 けることになれば,現在共同耕作 に参加 してい る娘 世帯 の取 り分 は当然減 ることにな る。例 えば この共 同耕作 において恐 らく最 も多 くの労働力 を 投入 してい るNo.75は, 現在収穫 の4割弱 を得 てい るが, それが4分割 され ると25%に取 り 211

(9)

分が減 って しま う。 しか も親 は,バ ンコクに出た娘 に も分与 をあたえな くて ほな らない と考 え ていた (おそ らく戻 って きて相続 を主張 した場合 の トラブルを回避 す るためであろ う)。そ うな ると5分割 され ることもあ りうる。 そのため農地 の分与 をめ ぐってキ ョウダイ間で思惑 の違 い が生 じていた。 それを感 じていた老夫婦 は,農地分与方法 の決定 を引 き延 ば し,共 同耕作 のま まにおいたのだ った。 しか し夫婦 は筆者 の調査後 ま もな く, つ いに決断 を下 した。10)それはこ の土地 を

5

分割 し,

No.

7

5

に はバ ンコクへ行 って い る娘 の分 も耕作 させ るとい うもので あ っ た。 こうして

No.

7

5

は以前 とはぼ同量 の取 り分 を確保で きたのである。 農地 を分割 した ことで

No.

5

2

の共 同耕作 は終了 したので あ るが, この共 同耕作 が続 け られ て いたの は労働力 の問題 とい うよ りも,希少 資源 とな った農地 の分与上 の困難 が原 因で あ っ た。 このよ うな問題 があ るときに,農地 を共 同耕作 の下 において,特定 の子供 に占有意識 が生 じないよ うにす るとい うことは,次 の事例

(

C-2

) に も兄 いだせ る。

No.

1

3

7

Si

iは同居 していた長女 と

2

4

ライの天水 田を耕作 していたのだが, この長女が死 亡 し孫娘 にあたる

Na

ngma

i

夫婦 が耕作 を続 けていた。 しか しこの

Na

ngma

i

夫婦 も死亡 して,

Si

iと同居す るのは8歳 のひ孫 と目の不 自由な第

4

Kong

のみであ った。 したが って

2

4

ライ の耕作 に必要 な家族労働力が不足 しているわ けであ るが, この土地 を管理す るために

Si

iは ト

ン村在住 の子供世帯

(

No.

71

/1,1

3

9

,1

9

6

)

Kong

の娘世帯

(

No.

31

4

)

4

世帯 に共 同耕作 を させ て い る

。Si

iに よれ ば

2

4

ライ はひ孫 と

Kong

, そ して南 タイ に居 住 して い る第

5

Kha

mmi

3

人 に分 け与 え られ るべ き ものであ る。つ ま り耕作者 と相続予定者 が全 く一致 し ていない

。Si

iはこの

2

4

ライの分割 につ いて もめ ごとが起 きるのをおそれて,共同耕作 とい う 形 で農地 を管理 しているとい う。 同様 の状況 は残 りの

2

ケースに も兄 いだす ことがで きる

。No.

91

の場合 (事例

C-3)

は,棉 続 の対象外 と思 われていた息子 が突然帰郷 して農地相続 を要求 したために,農地 の分割方法を め ぐって合意がで きず, とりあえず共 同耕作 に しているのである。11)また

No.

7

7

のケース (事 例

C-4

)では,農地 の所有者であ る親 が分与方法 を決定 して いないため,その農地 を経営 して いる子供 は

(

No.

7

7

に同居),すで に世帯分 け した孫

(

No.

3

2

7

)

へ分与す るわ けに もいかず,こ の2世帯 での共同耕作 をお こな っている。 一度農地 を分与 して しま うと, た とえ所有権 を与 えていな くて も,耕作者 か ら農地 を再 び取 り上 げて配分 し直す ことには抵抗 が ともな う。 そ こで,分配方法 のはっきりしない農地 につい

1

0

)

農地の共同所有者になっている

S

a

a

が重い病気になったので

,S

a

a

の生前に分割 しようと考えた のであろう。 農地分割のための測量時には,病気を押 して田まで出てきた

S

a

a

が,杖をついて畦 に立ち,分割を見守った。その後間もなく

,S

a

a

はこの世を去った。 ll) この息子は健康上の理由から農業労働ができず,土地を受け取 ってもそれを生産的に利用すると は思えない。にもかかわらず,所有権は確保 しようとしている。

21

2

(10)

て は, とりあえず共 同耕作 に してお く, とい う判断がな されてい るよ うだ。地価が上昇 し,農 地 を所有 す ること自体 が価値 を もつ よ うにな った現在 で は,親 がそれを どのよ うに分割す るか が,子供 たちの経済的基盤 を決定す る。 それだ け農地分与 をめ ぐる利害対立 か ら,分与 の保留 に ともな う共 同耕作 が起 こりやす い条件 がで きて きてい るといえよ う。

D.

農地 の不足のため分割方法 を決定で きな い 農地 の絶対面積 が小 さいので分 け られない, とい うことを共同耕作 の理 由にあげたの は1例 のみであ った。 この世帯 は 5ライの漕概 田 と 6ライの畑地 しか持 たず, 3人 の娘 に対 す る分与 方法 を決 めていない。長女 は結婚 して世帯分 け したので, この長女世帯 との共同耕作 にな って い る。 親 の世帯 には次女 とその夫が同居 しているか ら,労働力不足 は考 えに くい。 また,分与 の上 で何 らかの利害対立 があ るのか も不明であ る。 E.農地 の購入 にともな う支払 い義務 の共 同負担 このケースで は,最近農地 を追加的 に購入 したが, その支払 いが済 んでお らず,将来 その農 地 の一部 を相続 す るであろ う子供 の世帯 と共同耕作 して,余剰 を支払 いに充 てて いる。親 は, もし子供 に分与 して しま うと子供 の世帯 が支払 いに協力す るか どうか分 か らない と判断 し,共 同耕作 をお こな ってい る。 この類型 にあて はまる二つ のケースで は, それぞれ もとの所有水 田 面積 が 4ライ, 5ライ と少 な く,D の事例 と同様 の問題 を抱 えていたため,追加購入 に至 った のであろ う。

F.

収入面 での近親 の扶助 何 らかの事情 で所得 に不足 を きた した近親世帯 の扶助 を,共同耕作形成 の理 由 と してあげた ケースがあ った。 そのすべてが,数年続 きの早魅が きっか け とな っていた。す なわち,すで に 子供 に分与 していた天水 田が早魅 のため収穫不能 にな ったため,親 やキ ョウダイが経営 してい る別 の農地 (例 えば濯瀧 田)で共同耕作 させ ることによ り,収穫 の一部 を とらせ るのであ る。 例 えば

F-2

で は,すで に天水 田の分与 を受 けていた娘世帯 (

2

世帯)が早魅 のため十分 な収穫 を得 られなか ったため, 親 が他 の娘 に分 ける予定 の港概 田を共 同耕作 に供 している。12) また こ の姉妹 の天水 田は隣 り合 わせ にあ るが,早魅 のため土地 の低 い部分 しか水 がない状況 にな って いた。 そ こで水 のあ る部分 を使 って姉妹 は共同耕作 をお こない,収穫 を分 けあ ってい る。 ただ しこの天水 田の共同耕作 は,雨 の十分 に降 った 1989年作 で はお こなわれ なか った。 12) ただし, この世帯の場合, 同居 している娘の夫がっい最近まで中東に出稼 ぎにいっていたり,忠 子がバンコクで働いているため,労働力不足という事情 もある。 213

(11)

G.世帯分 け した子供世帯 にまだ経営能力が ない この類型 は子供夫婦 が,世帯分 け後間 もないために,農地分与 が まだ行 われていない とい う ものであ る。子供 の世帯 に経営能力がない ことを共 同耕作 の理 由にあげた親 もあ った。 この タ イプこそ, これ までの研究で指摘 されて きた ものであろ うが, いずれ もまもな く分割す ると し てお り,極 めて短期的,一時的な性格 を持 っているよ うであ る。 以上 に掲 げた トン村世帯 の共 同耕作 は, いずれ も近親世帯 の農業経営体 と しての再生産 に何 らかの経済的困難が発生 したために形成 されている。 そのよ うな経営経済上 の問題 を もた らし た要因 の中 には, トン村 を とりま く社会経済 的条件 の変化 によるものがかな りあ った。 例 えば A の 1か ら 12のケースや Bのケースは,子供 の労働力が農外 に流 出 していた り, 同 居 に関す る規範意識 が変質 した ことな どによ って形成 された ものであ る。 このよ うな農外就業 機会 は,工業化 の進展 によ って,とりわ けこの 20年 はどの間 に拡大 したのだ った。 しか もそれ はバ ンコクに集 中 し,主 に未婚 の

1

0-

20歳代 の労働力 を大量 に吸収 した [重富 1995]。その結 果, トン村 において も,基幹的農業労働力 の供給体制 に乱 れが生 じる世帯 が多 く現れた。 あ るいはC,D,Eのケースで は, 土地 の希少性 が高 まった ことか ら共 同耕作 が形成 されてい る。土地 の希少化 は,人 口増大 の他 に,市場 向 け農業生産 が拡大 した結果 もた らされた もので ある。す なわち トン村 で は 1960年代後半以降 に,ケナ フやキ ャッサバ とい った商品作物 が急速 に普及 し, それが村周辺 の末開墾地 を はば消失 させた [同上書 :183-185]。 このよ うに経済開発 に ともな う社会経済 的条件 の変化 が,共同耕作 の形成条件 に影響 を与 え ている事例 は,合計 22ケースにのぼ る。その一方 で,

A

の 13か ら 16までのケースや

,F,

G

な どのよ うに,経済開発 による環境変化 と直接関係 な く引 き起 こされた共同耕作 もあ るが, その 数 は 13ケースに とどま っている。 トン村 を とりま く新 たな経済 的条件 は,近親世帯 を共同耕作 に結 び付 ける条件 に も影響 を及 ぼ している。例えばA-6のケースで は,親 は もし農地 の経営権 を子供 に分 け与 え ると,子供 か らの扶助 を得 られない とす ら感 じている。 これ はやや極端 な例 と して ち,A や Eのケースに共 通す るのは,親子 の精神 的紐帯 に依拠 す るのみで は,子供 か らの協力 は十分 引 き出せない とい う意識 である。 個別経済 の私経済性 を親族世帯全体 の再生産 に優先 させ る状況が,現れて きて いることの反映であろう。 一方,子供 の世帯 にとって は,農地 の開墾 による取得可能性 が消失 し,地価 が上昇 して購入 も容易で はな くな った状況があ る。 また農外就業機会 も, トン村 に世帯 をかまえ る以上,低賃 金 で不安定 な もので しかない。バ ンコクの就業機会 も,長期的 に安定 した雇用 を保障す るもの でない ことが多 い。1989年時点 での トン村 で は,子供 の世帯 に とって農地 の確保 は,経済 的再 生産 を確保す る上 で未 だ不可欠 の条件 であ った。子供 と して は, で きるな らば独立 の経営権 を 214

(12)

得 たい と思 っているが,親 が分与 して くれない以上,親 との共 同耕作 に参加 せ ざるをえない。 こう して,親 は農地 とい う物的要素 を挺子 と して,子供 を共同耕作 とい う協 同組織 に結 び付 け ねばな らない し, またそれが可能 とな ったので ある。

Ⅲ 過去 にお ける共 同耕作 の発生状況 と形成理 由

前章 で は共同耕作 の多 くが,現在 の トン村 を とりま く社会経済的条件 に規定 されて発生 して い ることを見 た。その社会経済的条件 とは,過去 30年間 の経済開発 の過程 で形成 されて きた も ので あ る。 とす れば, かっ ての共 同耕作 はその形成理 由 において,現在 とは異 な った特色 を 持 っていたので はなか ろ うか。 しか し, 当時 の記録 は存在 しないので,村人か らの聞 き取 りに よ って,農地 の権利委譲 が どのよ うにな されていたかを検討す る。 その際, な るべ く古 い時代 の状況 を知 るために,1989年時点で 60歳以上 の人 を対象 に して,聞 き取 り調査 をお こな った。 1989年 の トン村 の全戸調査 で把握 した 60歳以上 の村人 126人 の うち, わずかで も聞 き取 り がで きたの は 62人であ る。事例 の数 を増やす ため,調査 で は回答者 のキ ョウダイ も含 めて共 同 耕作 の有無 を聞 いた。 したが って,直接 の回答者 は 60歳以上 で も,そのキ ョウダイの中にはよ り若 い人 もいるので,得 られた情報 は,必ず しも 30年前 の ものばか りとはいえない。62人 の回 答者 の うちキ ョウダイ関係 にあ る回答者 の重複 を除 くと,有効 な回答 の得 られたキ ョウダイは 50組 で, キ ョウダイの人数 は 241人。 その うち世帯分 けを したの は 229人 (女性 は 97人) で あ った。 さて世帯分 けを した子供 の うち,娘 に限 ってみ ると,97人 中 9人 しか共同耕作 を経験 してい なか った。逆 に,世帯分 け と同時 に農地分与 を受 けた とい う者 は 49人確認 で きた。13)この よ う に量的 にみ ると,世帯分 けに際 して少 な くとも農地 の利用権 を分 け与 え る場合 の方が一般 的で あ って,共同耕作 とい う形態 を とるの はむ しろ少 ない ことがわか る。 で は共同耕作 をお こな った世帯 は, どのよ うな事情 か らそのよ うな経営対応 を とったのであ ろ うか。共同耕作 をお こな った とい うキ ョウダイのいた全事例 (女子9例,男子2例) につ い て,その理 由を整理す ると次 の

3

点 にな る。一 つ は同居 して いた子供夫婦 が世帯 を分 ける時 に, 別 の子供夫婦 が新 たに同居せず,親 の世帯 で労働力不足が生 じた とい うもの (3ケース)。第 2 は,親 と同居 した子供 ない しその配偶者 が農業 に従事 しなか った り,死亡す るな どのため親 の 世帯 に労働力不足 が生 じた とい うもの

(7

ケース)。第

3

は子供 の世帯 で労働力不足 が生 じた も の (1ケース) であ る。 まず第 1の理 由であ るが,すでに結婚 ・同居 してい る子供 と,次 に結婚 して同居す るはず の 13) 残 りは,農地の分与が無かった者 ;12人,不明 ;27人であった。 215

(13)

子供 との年齢 が離 れて いた り,次 の子供 の結婚 ・同居 が何 らかの理 由で遅 か ったために形成 さ れた事例 が これ にあた る。

例 えば,No.76のThongsai(61歳, 以下年齢 は1989年調査時 の もの) の場合, す ぐ下 の キ ョウダイたちは3人続 けて男 で あ り,Thongsaiが7年 間同居 のす え世帯分 け した時点 で, 妹 のKham (49歳)はまだ結婚 して いなか った。そのため耕作 は親 との共 同を続 けた。その後 Khamが結婚 し親 と同居 したが,Khamの配偶者 は港親局 で雇 われて いて,あま り農業 に従事 しなか った。 したが って親 の世帯 で は労働力不足 が続 き, その間Thongsaiは難 との共 同耕作 を続 けた。そ してKhamの夫 が港親局 をやめた時点 で, この共 同耕作 は解消 されて い る。他 の 2ケースで も,世帯分 け した子供 の年齢 と次 に結婚 し同居 す ると期待 され た子供 の年齢差 が, 7歳,12歳 と大 きか った。 かって この村 で は,親 と同居 して い る子供夫婦 は,代 わ りに結婚 ・同居 す るキ ョウダイが現 れ るまで, 同居 を続 けることが規範 とされて いた。実際,聞 き取 った中で も,妹 との年齢差 が 大 きか った り,妹 の結婚 が遅 か ったため に10年以上 の長期 にわ た り結婚後 の同居 を続 けた娘 が12人 いた。 これ らの ケースの場合,次 に親 と同居 した妹 との年齢差 は,最大22歳,最小 で 7歳であ った。 またす ぐ下 の妹 との間 に弟 が 2人以上 あ った例 が 7ケースあ った。 したが って このよ うな規範意識 は,共同耕作 の発生 を抑制す る要素 と して働 いたで あろ う。 それで も何 ら かの事情 か ら同居 を続 け られなか ったのが,上記 の3ケースで あろ う。 第2の理 由に該 当す る事例 は,結婚 ・同居 した娘 の夫 が農業 にあ ま り従事 しなか った り,死 亡 な どで労 働 力 にな らなか った とい う もので あ る。例 え ばNo.160のKong (63歳) は,妹

Wanの結婚 で親 の世帯 か ら世帯分 け した。ところがWanの夫 は 「や くざ者」(nakleng)で あ り,農業 に従事 しなか った。 そのためKongは,Wanの下 の妹 Wanthongが結婚 し親 と同居 す るよ うにな るまで,共 同耕 作 を続 けた。Wanthongの方 は2年 同居 したが, そ の妹Sam・ rongの結婚 で世帯分 け し, ただちに親 か ら経営農地 を与 え られてい る。 この他 に,や は り娘 の夫 が 「や くざ者」であ った り,マ リフ ァナ中毒 で あ った とい う理 由で, 親 の世帯 に労働 力不足 が起 きた例 が2ケースあ った。 また娘 の夫 が公務員で あ ったため基幹的 農業労働 力 とな らなか った例 が1ケースあ った。残 りの3ケースは, いずれ も同居 中の娘 の夫 が いな くな った り,死亡 した とい うものであ る。例 えばNo.23のキ ョウダイで は,長女 のSim が10年以上親 と同居 した後,妹 のKhiaoの結婚 と同時 に世帯分 け。10ライ以上 の農地 を与 え られ,親 とは別 々の経営 をお こな っていた。 ところがKhiaoは子供 を1人生 んだ後死亡 し,そ の夫 は家 か ら出て しま った。 そ こでSimは親 の世帯 と共 同耕作 を始 めたので あ る。数年後, Khiaoの下 のJoi(64歳) が結婚 す るとSimは共 同耕作 をやめて い る。 以上 の2類型 (10ケー ス) はいず れ も親 の世帯 で家族労働 力 の不足 が発生 した もので あ る が,残 りの1ケースは子供世帯 での労働 力不足 が原因 とな って い る。No.125のHaem (62歳) 216

(14)

が結婚 した とき,姉 の

La

a

は世帯分 け し,農地 も親 か ら受 け取 って独立 の経営 をお こな ってい た。ところが,

La

a

が病気 にな りその世帯 は労働力不足 とな った。そ こで

Ha

e

m

夫婦が同居す る親 の世帯 は

,La

a

との共同耕作 をお こな った。その後

La

a

が死亡す ると,その夫 は再婚 して 他村 に移住 したので,共同耕作 を解消 した。 このよ うに, トン村 において 30年 ほど前 に発生 していた共同耕作 のいずれ もが,親 または子 供 の世帯での労働力不足が原因であ った。 この ことか ら, ただちにかつての共同耕作 は,前章 の

A

あ るいは

B

タイプのみであ った と結論 す るのは早計 であろ う。早魅 な どの事態 によって 緊急避難的 に短期間の共同耕作 があ って も, このよ うな短期的な ものは記憶 されていない可能 性があるか らだ。 しか し少 な くともかな りの長期 にわた り,人 々の記憶 に留 まるよ うな共同耕 作 は, おおよそ世帯内の労働力供給周期 に何 らかの乱 れが生 じた ことを主因 と して形成 された とみて よか ろう。 このような労働力供給 の乱れのほとん どは,世帯分 けす る子供夫婦 に代 わ って,新 たな若年 労働力 が供給 されな い ことによ って発生 してい る。 しか し農外就業機会 が限 られて いた時代 に,親 の世帯 に新 たに加 わ る労働力が農外 に流 出 した り, あるいは 「や くざ者」で農業労働を 忌避 す る とい った ことは,例外的 なで きごとと見 た方 が よか ろ う。 また当時 は,代 わ りに結 婚 ・同居す るキ ョウダイが現れ るまでは,親 との同居 を続 けるべ きとす る規範があ った。一方, 子供 の世帯 で労働力不足が起 きた例 は,聞 き取 りで は1例 のみであ ったが, これ は世帯分 け し た娘 の病気 とい う非常事態 に対応 した ものであ った。 このよ うに, 現在 の

6

0

歳以上 の村人の キ ョウダイ達が経験 した共同耕作 は,個 々の世帯の家族構成や労働力 の質, あるいは子 の早世 などのアクシデ ン トとい った個別的事情 によるものであ った。世帯分 け した娘 の大半が,共同 耕作 を経験 せず,即農地 の利用権 を与 え られていたのは, む しろ当然 といえよ う。 かつての共同耕作が,現在 のそれ と同様 に子供世帯 か ら親世帯への労働力供給 を主 た る目的 としているとして も, 当時 の農家が有 した環境 は,現在 とは大 き く異 な っていた。 トン村 の場 令,先 占

(

c

ha

pc

hong)

の余地 は

1

9

5

0

年代 まで残 ってお り

,6

0

歳以上の村民 か らの聞 き取 り で は

,7

0

歳以上, あ るいは

6

0

歳代後半 の村民 の中に,林地 の先 占を経験 した人 がいる

。6

0

歳 代以下 の世代 の多 くは,もはや先 占可能地 を持 たなか ったが,当時 の地価 は粗換算で見 た場合, 現在 よりもかな り安か ったので,購入 によ って調達す ることも容易であ った。例 えば

1

9

8

9

年時

6

0

歳 の

Pha

e

ng

(女

,No

.

8

1)は,結婚後

3

年間親 と同居 したが,世帯分 けす るとま もな く親 が 農地 を売却 して しまったため, 自分 で農地 を調達 しな くて はな らなか った。 そ こで 1,200バー ツで, 水田 (一部 はまだ林地で あった)

1

7

ライを購入 した。 当時 の籾.価格 は

1

キロ当た り

0

.

7

バ ー ツ程度 で あ ったか ら,

1

ライの土地価格 と籾

1

0

0

キ ロの価額 が ほぼ等 しか った ことにな る。ところが

1

9

8

9

年時の水 田価格 は

1

ライ当た り天水 田で も

3

万バ ーツほどであ り,籾 の時価 キロ 3.4バーツで換算す ると, 約

8

,

8

0

0

キロの籾 に相当 した。 このよ うに, 現在 と比較 した と

21

7

(15)

き,土地へのアクセスははるかに容易であ った。 また更 に古 い時代 には,土地 に余裕 のある地 域へ の移住 によ って, トン村 内での土地不足か ら逃 れ ることも可能であ った と思 われ る。14) このよ うな土地条件 の もとで は,親が子供世帯 の労働力 を引 き出すために,親 の所有地への アクセスを強制力 に使 う条件 に乏 しい。 その ことは逆 に, 当時の共同耕作が親子間の精神的紐 帯 に多 く依拠 して協同組織 を形成 していた ことを想像 させ る

。1

9

6

0

年代 の屋敷地共住集団を調 査 した水野 が,調査村 の社会組織 を成 り立 たせ る原理 を

,

「個人的な繋が りに内在す る情緒的な 連帯 を基礎 と して協力 と援助 を交換」[水野

1

9

81:

2

0

9

]す るもの と結論づ けたが, トン村 にお いて も同様 の状況 があ った と思われ る。

り に

本稿では,東北 や北 タイにおいて存在が指摘 されて きた近親世帯間の共同耕作 について, そ れが どのよ うな理 由か ら形成 され るのかを,検討 して きた。 そ こで明 らかにな った ことは,共 同耕作が家族周期 の中で慣行的に発生す るので はな く, む しろ個 々の農家 の持っ経済的条件へ の合理的対応 と して形成 され るとい うことである。 それゆえに,共同耕作 とい う形 の協 同を必 要 とす る世帯 もあれば,経営受委託 の形 を初 めか らとる もの もあ った。で はなぜ,家族周期 の 特定 の段階 (子供 の世帯分 け直後) に,共同耕作 とい う形 の協同が高 い頻度 で見 られ るのだろ うか。 東北 タイの家族周期 においては,結婚 ・同居 している子供夫婦 の世帯分 けの際 に,親 の世帯 か ら労働力供給主体 の放 出がお こる。 とりわ け青年男子労働力 は他 の世帯員 や雇用で代替 しに くい労働力であるか ら,世帯分 けに際 して代 わ りとなる家族労働力が供給 されない場合,親 の 経営 は生産力を急激 に減 じることにな る。 したが って,子供 の世帯分 け時 に共同耕作が形成 さ れやす いのは, む しろ親 の世帯 の事情 なのである。15) しか し本稿でみたよ うに,現在

6

0

歳以上 の村人やそのキ ョウダイが 自己の世帯 を形成 した 頃には,青年労働力が農外 に流出す る機会 は今 と比べて少 な く, また別 の同居子が現れ るまで 14) トン村について,人々の移住の歴史を量的に把握するデータを筆者は有 していないが, トン村と 同じコンケン県内の ドンデーン村 [武邑 1990:208-257], ドンボン村 [Lefferts1974:113-198] の事例が参考になる。 15) 「はじめに」で述べたように, これまでの研究では,子供世帯の経済的自立の援助が, この家族周 期段階で共同耕作がおきる理由とされてきた。 確かに, 世帯分け後間もなくの子供世帯は, 労働 力が増加せず, 消費者のみ増加するから,鈴木栄太郎の言 う 「家族-人当たり生産力」 が低い段 階にあたる [鈴木 1968:283-286]。逆に親の世帯は,青年男子労働力の供給が続いて確保できれ ば,「家族一人当たり生産力」の高い段階を続けることができる。 したがって家族周期の中で生産 力の高い親世帯が,生産力の低い子供世帯を援助する, と理解されても不思議ではない。 しかし, 本稿で示 したように,実際には子供の多 くは,労働力供給を極端に低下させるような非常事態が 生 じない限り,自己の労働力で経営管理をおこなってきていた。

21

8

(16)

同居 を続 けるとい う規範 が比較的良 く守 られていたか ら,親 の世帯 での労働力供給 の断絶が実 際 にお きる機会 は, はるかに少 なか った と見 るべ きであろ う。 このよ うな社会経済的条件 は,過去

3

0

年余 りの経済発展 の過程 で,大 き く変容 した。まず工 業化 の進展 で農外就業機会が増加 した。特 に青年層 には, バ ンコクな ど都市部での就業機会 が 大 き く開かれてい る。 その結果,農家 の中には青年男子農業労働力 を継続的に確保で きない も のが現 れた。 一方, トン村で は人 口増加 によ り,すでに土地 の希少性が高 ま ってお り,更 に経済成長 の影 響 が地方へ も波及 した ことで,土地 の資産的価値 は近年 とみに上昇 している。農外就業機会 は 増加 した とい って も,農業所得 な しで安定 的,長期 的 に農家経済 を再生産 で きる状況 にはな か ったか ら,農地 の生産的利用 に対 す る需要 は高 い。 このよ うな状況変化 によ って,土地 の分 割 をめ ぐって対立が起 きるケースす ら現れた。 このよ うに,経済成長 に ともな って,農家 の労働力や土地 とい った生産要素 に対 して も,市 場経済 が浸透 して きたのだが,本稿 で示 したよ うに, それ は共同耕作 とい う近親間の協同を破 壊す るどころか, む しろ形成 を促進す る条件 を作 り出 している。 また,形 の上で は同 じ共同耕作 であ って も,そ こに参加す る近親 の意識 には変化 が見 られ る。 個別世帯 が何 らかの経営経済的問題 に直面 した ときに,共同耕作 とい う形 を とって協 同組織 を 作 るのは,近親世帯 の経済的再生産 を全体 として確保すべ きとい う規範 が,存在 しているか ら であろ う。 このよ うな規範 は現在 において も観察す ることがで きる。実際,早魅 に見舞 われた 近親世帯 を援助 す るために共同耕作 を形成 したケースのよ うに,個別世帯 と して経済 的損失 と な るに もかかわ らず共同耕作 をお こな うものが存在 していた。 しか し,新 たな社会経済的条件 の もとで は,共同耕作 の多 くが,個別世帯 と しての私経済的 利益増大 を直接的動機 として形成 されている。 すなわち親 の世帯 は,個別世帯 と しての労働力 確保,子供 の世帯 は土地 -のアクセスの確保, とい う私経済的 目標 のために共同耕作 とい う対 応 を とっていた。 その結果,協 同組織 を形成す るためには,近親間の精神的紐帯 にのみ依拠す ることがで きず,土地 (ない し土地用益)とい う物的誘因 を用 いなければな らな くな っている。 以上 のよ うに, トン村 における経済環境 の変化 は, む しろ共同耕作 の形成条件 を作 り出す方 向で作用 していたが,一方 で人 々を結 びっ けてい る要素 には,利 己的な側面 が強 ま って きてい る。 それ は村人 の意識 のなかにあ る親族間協 同の意欲 が崩 れてい く変化 であ る。 現在 の トン村 における共同耕作 は, このよ うな二つの相反す る作用 を もた らす諸条件 の もとで,成立 してい るのであ る。16) 16) この ことは,条件変化 によ って は現在 あ る共同耕作 も別 の形 の協 同 に転化 した り,協 同です らな くなる可能性 があ ることを意味す る。 例 えばアナ ンは, 北 タイ, チ ェンマイ盆地 の調査村 におい て, 農地 の希少化が進 むにつれて, まず親族間での共同耕作 がお こり, 次 に親族間の刈分小作- / 219

(17)

引 用 文 献

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Thailand,NationalStatistical Office1989.1988InterlCenSalSurveyofAgriculture.Bangkok. 坪内良博 ;前田成文.1977.『核家族再考』弘文堂. \ と変化 していった と述べている [Anan 1984:601;3,127,200]。 東北 タイで も集約的な農地利 用が求 め られ る条件 がで きれば,共 同耕作 とは違 った親子間 の協同的な利益分配形態が生 まれ る か もしれない。 また中部 タイで共同耕作 は一般的で はないと言われ るが [北原 1985:8], これま での農村調査 の中には, 共同耕作 の存在 を示唆す るものがある。 例えばBangkhuad村では, か って農地 が豊かにあ った時代 には,子供夫婦 は親 と同居 しつつ 自分 の農地 を開墾 したが,先 占可 能地がな くなると, 親 と同居 し共同作業す る時期が長 くな った。 そ して親 の家が小 さい場合 には, 親 の屋敷地 に小 さな家を建てて, 共同作業 したとい う [Kaufman 1977:29]。 この ことは, 土 地 ・人 口比率の変化 の中で,中部 タイにおいて も共 同耕作が発生 し,後 に消滅 した可能性 を示唆 す るのではなかろ うか。 220

(18)

付表 トン村 の共同耕作事例 に関す る基礎 データ (1989年3月時点 の共同耕作事例) 表の見方 :1段 目 :親 ない し共同耕作地 を所有 している世帯のデー タ. 2段 目 :子供 ない し共同耕作地 を所有 していない世帯のデー タ。 3段 目 :共同耕作 をす る理由 (記述な きものは本文参照)。 記号の意味 : [続 き 柄]1)H:親世帯 の夫,W :Hの妻,S:息子,SW :息子 の妻,D:娘,DH:娘の夫,GS:蘇 (男子), GD:蘇 (女子),GDH:GDの夫,GSW :GSの妻,GGS:曾孫 (男子),GGD:曾孫 (女子), WY:Wのキ ョウダイ,WYH:WYの夫,WYS:WYの息子,WM :Wの母,SWM :SWの 母 (続 き柄 は, 1段 目の世帯の夫婦 を基準 として示 した) 2) アルファベ ットの右上 の数字 は年齢。括弧 に入 っている場合 は,農外就業者を表す。 [経営面積]1)R:天水 田,K :港親日の表作, D:港概田の裏作, U:柵地。 2)アルファベ ットの次の数字 は,経営面積 (ライ)0 3)末尾 の *は,その土地 が共同耕作 されていることを示す。 [そ の 他] ``?"はデータ不明。 事例番号 世帯番号 家族構成員 の続 き柄 と年齢,就業状況 部門別経営面積 (菜園,養魚池 を除 く) A-1 11109/1 H6DH47W 62D47GS21GD138GD11GD4 R6R6

,K3K 3',D3*,D3

.

,U l5 256 S37sw37GS15GS7 R6',R5,K3',D3' A-2 132 H50W53w M86D19Dl6 R21

'

,K lO',U l4',D lO' 261 DH33D23GDl R21

KlO',U l4',D lO' A-3 116 H52W 50S25D23S21sl9D17 K 36

,D30 252 S29sw28GS8GS7 K 36

,D6 A-4 160 H64W 6ls30(S24)D23 K l3

'

,U 24

D l3' 264 DH31D30GS?GS? K l3',U 24',D l3' A-5 86 H68W 59(D24) S20 R 10',K 4,K l

l'

,D ll' 266 DH34D34S3 R 10+,K l

1㌔

D ll' A-6 22425 H6DH46S2lD36sw 28GSl3GS17GS135 R27R27

,K 5,U 1,K 3,U40 25/1 S34sw 33GS9GD1 R27',U 12 A-7 155 H68W 56(D30) (S25) (S22)GS9GS3 R l5',K 10',U45',D lO' 265/1 DH28D25GS9GD7 R l5

'

,U45' 250 DH37D35GDllGS8 R l5',K 10',U 6,D lO' 未婚 の息子 はそれぞれ海外,バ ンコクに出稼 きo娘 の うち,2人 は夫の親 と同居o そのた め親 の世帯 に若年男子労働力 な しo またNo.250の世帯 は商業 に従事 す るため労働力不 足o そ こで3年前 に世帯分 け したNo.265′1も加 えて共同耕作 をお こな う○ A-8 43972/1 H6DH30W 64D21(8GD7GS5D26) (D17) K 1K 188書,D 18* +,D 18' 末娘 はバ ンコクへ出稼 ぎ, その上の娘 はコンケ ン市で教師をす るo そのためNo.439の世 帯分 けで親 の世帯 に労働力不足がお きたo A-9 140 W 76(S28)GD19 K 10

,D10* 219 DH47D45GS21GD19(GD15) RlO,K 10㌔ D lO' No.219は親 が死 ぬまで同居す るもの と期待 されていたが,小店舗 を経営す るため通 り沿 いに家 を建 てて世帯 を分 けて しま ったoNo.140の息子 は近在 の工場勤務 のため農業 せ ずoNo.219は娘 を親 と同居 させ, 身の周 りの世話 をさせている○ この孫娘 は調査後 まも な く結婚 したが, その夫 も工場勤務のため農業労働力 として期待で きないo A-10 23148/1 H5DH34W 55D34D20GSl6D2lGS8GD63D22D18 K6K 6

.

',D6',D6' 221

(19)

事例番号 世帯番号 家族構成員 の続 き柄 と年齢,就業状況 部門別経営面積 (菜園,養魚池 を除 く)

A-ll 他村55′6

?

S38sw 34GS13GDllGS7

?

R31',K2

親 の家の子 どもはみな他 出 して しまい,労働力不足o

A-12 115121 HS387s4W7w 380GS15GS13GS11GD3 KlK10O+

'

,D,DllO'O+,K4,U25

子供が親 と同居 したが らないo

A-13 110612 H7DH69W71D67D50GD24D431GS18(GD15) R39R39'

,U2,Ul7O

親 と同居 していた娘 の夫死亡で,親 の家 に労働力不足がおきたoそ こで農地 の相続 を済 ま せたNo.161との共同耕作 を開始 したo天水 田39ライ中,15ライはNo.161の所有地o

A-14 131215 HS274s0Ww 2

6

5D33GD2GDl8GD14GS8GS2 KlKl88

',D4Dl4,Rl6 親 と同居 していた娘の夫死亡のため,親の世帯 に労働力不足発生o A-15 150 H55W56D28D26S22sl5 R26

K3',D3' 243 DH38GD12 R26',K3

'

,D3' 次女, 三女とも

に結婚後数年で離婚

02

2

歳の息子は農業をあまりや

ないo

そのため親

の世帯で労働力不足がおきたoNo.243の娘 は死亡 したが, その夫が親の家 と共同耕作 を 続 けるo A-16 28166 DHH65W634D0DH233 9D24S18GDl R1Rl22

+,U5,K2

,

U5 親 と同居 している娘が子供 の養育 のため労働力 とな らなか ったo B-1 17454/2 H5(DH22W47)D29DH28GS53S22D20sl8sl5GS3 RlRl

l'

l'

,K4,Rl5

'

,K4,D4

'

'

,D4' 世帯分 け した娘 の夫 はコンケ ン市 で勤務o そのため娘 の世帯 で男子農業労働力が不足 して いるo B-2 215353 DH3H51W43D28DH35GS5GS30D27(S19)GD3 R1Rl77'',K2,K200'',D6,D14,U1,U19'9' No.253の夫 はごく最近 まで他県 に出稼 ぎに出ていたため, この世帯 が労働力不足 であ っ たo B-3 33′2 WDH573DH32D44GD22D30GS7GS20 R9R9'',,U3U3 長女の世帯 は小売店 を営むため農業労働力が不足 している○

C

-

1 7525 H6DH45W64D44D21(2DH2GD19)(8(GS1S25)GS67)GS14 R21R21

'

',Ul,K35,U3 234 DH45D34(sl5)slO R21+,Kl2,U3

C

-

2 111937369 W9S4S43sw47sw44D60S52swM76(0GGD8GD24)GS26(GD2GS122)GS178GD15 R2R2R24■44

事,K7,K5,U5 314 GDH33GD27GGD3GGS2 R24

*

,K4 71/1 D53GS28GSW32(GS22)GGS10GGD4 R24+,K5

C

-

3 9191/1 W7S46s8S5w 45D36DH24 9D22S19 R40R40.+ 305 GS27GSW24GGD6GGS2 R40

8

,D2 C-4 77 H52W50wM80D20D14D12 Rl4',K2,U4 222

(20)

事例番号 世帯番号 家族構成員 の続 き柄 と年齢,就業状況 部門別経営面構 (菜園,養魚池 を除 く) D-1 143/1 H62W59D22DH25D22 R6,K5',D5

8

76/3 DH29D24GS9GS3 K5

'

,D5' E-1 7183/3/2 DH3H49W40D25D25GS9GS54D20D17 K9K9

'

'

,Dl,D3..55,U3 昨年,5ライの港概 田を親 が購入○ その支払 いを済 ませ るため共同耕作o E-2 219625 H5DH30W40D29DH25GD58D21D17 KlKll'

l'

,Dl,Dll'l',K8 親 が3年前 に 6ライの水 田を購入○ その支払 いを済 ませ るため共同耕作o ど-1 104/1 H37W33sl6D12 R6,K26',Dll 267 (WYH33) wY30wYs3 R6,K26',D2

No.267には天水 田 しかな く, 早魅 の被害が大 きいo そのため姉 (No.104/1) が所有地 を妹 との共同耕作 にす ることで,妹の家計補助 に しているo なお,妹 の夫 は海外 出稼 ぎの ため労働力の点で も不足 あ りo F-2 32514 DH4H69W62D32DH28GD19D22GD76D22GSl K 1R98',Kl

'

,Dl82,U2D3,U54 73/1 DH37D36(GD17)GS16GS14 R9㌔Kl8',D3,U3 F-3 36054 W5DH35S27D35D22GS9GS7GSl2(sl7) RlR57

,R5',U16 一度,農地 の分与 を したが,早魅で作付可能面積が減少 したため,共同耕作 に している○ F-4 42208 H7DH37W72D34D40GS8GS7GD30DH32(GS15)GS10GS5 R40R40*暮,U7 6年前 に分与 したが,早魅で作付可能面積が少 な くな り,共同耕作 を始 めたo G-1 32213 W6DH23(8D2D26GD5GD25)D25DH?GD13 K6K68

'

,D6',D6' 昨年世帯分 け したばか りo ま もな く土地 を分 ける予定o G-2 401162 HDH2

6

4W57D27D24GS37DH26S21D18sl6GD14 R31R31+',Ul,R4O 昨年世帯分 け したばか りo ま もな く土地 を分 ける予定o G-3 411484 H5DH24W58D21S25GS27DH26D25S17 R2R24'4書,K6',K6書,D3,U1,D3,U100*' 昨年末 に世帯分 け したばか りo ま もな く土地 を分 ける予定o G-4 776/26 H6DH30W66D31S25GD14D220S17 K1K16■6

,D3,U6 娘 は最近再婚 して世帯分 け したばか り○ ま もな く土地 を分 ける予定○ G-5 29575 DH2H5lw49D7wM25GS6GS4100S23D23D17GSO K1Kl6'6',K6,U9,K3,Dl6,+Dl6' 昨年世帯分 け したばか り○親 によれば 「まだ若 いので共同耕作 に している」○ H-1 14424 H6DH46W60D33S39GS10sw34GDl0(1D31)GS5 K8書K8*,D8,U14 出所)筆者調査。 注)世帯番号300番以上 は,筆者が付 した もの。 223

表 1 トン村世帯 の直系親族世帯 間農地所有利用関係 の類型 と世帯数 類 型 類型分 けの基準 1 ) 世帯主 の年 齢 によ る世帯数分布 合 計 共 同耕作 経営受託 所有地 2 0 歳代 3 0 歳代 4 0 歳代 5 0 歳代 60 歳代以上 Ⅰ ○ × × 5 1 0 1 0 0 1 6 Ⅱ ○ ○ × 5 7 4 2 0 1 8 Ⅱ 〇 〇 〇 1 3 2 0 0 6 Ⅳ ○ × ○ 0 0 2 0 3 5 Ⅴ × ○ × 5 1 9 1 2 3 2 41 Ⅵ × ○ ○ 1 1 5 1 1

参照

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