信託受益権をめぐる諸問題 (平成16年度 退職記念
号 浅野 裕司 教授 水野 勝 教授)
著者名(日)
浅野 裕司
雑誌名
東洋法学
巻
48
号
2
ページ
35-68
発行年
2005-03-25
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000566/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja信託受益権をめぐる諸間題
浅
野
裕
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はじめに東洋法学
信託受益権を論ずるには、信託の本質について触れる必要もある。受益権については、債権説と物権説が従前 から信託法学者間で議論されてきた。ドイツ法系にあるわが民法の立場から論争されてきたところに間題がある。 信託は、英米法理論を基礎として成り立ち、現代信託法の発展があるのであって、債権か、物権かの議論の実益 はどこにあるのか、という疑間もある。勿論、取消権など派生していく過程での間題は、わが国においては民法 との関連で否定するものではない。そこで信託の本質を通してこれらの間題の若干に触れ、大方の御叱正を仰ぐ ことにしたい。 3536 信託受益権をめぐる諸間題 信託受益権の概要 信託受益権とは何か、その定義はまさに信託の定義の論究になってしまうであろう。 メイトランド︵竃聾冨巳︶は、信託に関する確定的な定義が存在しないことを前提として、﹁ある人が他人のた めに、またはある特定の目的を達成するために、行使すべき義務ある権利を有するときは、そのある人は該権利 をその他人のため、または特定の目的のために信託において保有すると称せられ、そして、そのある人は受託者 と呼ばれる﹂としている。さらに、この定義は、まさに漠然としたものであるが、表現でき得る最良のものであ ︵−︶ る旨を附言している。 ハンベリi︵頃碧ゴ曙︶は﹁信託関係とは、特別の目的遂行のためあるいは他人のために、継続的支配および 管理関係︵8旨一匿巴3鼠巳窪碧αω8薫霞房び一づ︶において財産を保有すべき義務を負った一人あるいは数入の 者に、該財産に関する権利を与えるときに生ずる関係である。そして、受益者は衡平法により普通法上の所有権 と類似せる準所有権︵2霧一震8鼠①鼠蔓﹃蒔辟︶を与えられ、その権利は受託者に対してのみならず善意の員主を ︵2︶ 除き、その財産を取得せるすべての者の権利に優越する﹂としている。 こうした定義は、信託の定義よりもむしろ信託受益権について述べていると考えられる。信託受益権の性質に ついて英米の法学者は、色々な面からその法理論的構成をこれまで試みていることは興昧のあるところである。 メイトランドは、受益権の性質に関し学説上の立場としては債権説を採っているが、信託法理の叙述は信託概
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︵3︶ 念の債権的分野のみを説ぐにとどまるのみではなく、信託における物権的分野にも触れている。 ︵4︶ スコットは、信託受益者の権利の性質につき信託受益権物権説の主張として、最も権威あるものとなっている。 現代アメリカ信託法は、組織法的アプローチに注目をし、組織としての本質で考慮されているのは、受託者の 固有財産からの積極的財産隔離機能とされている。しかし、アプローチは信託の外部関係のみならず内部関係の ︵5︶ 解明にも有効とされる。信託受益権の法的性質は、基本的には債権であるとされつつ、受益権の株主権との類似 ︵6︶ 性を指摘する有力説もある。 ︵7︶ 受益権の性質を理論的立場で解説しようとすることは、衡平法上の性質からみて適当ではないとする説も存在 する。信託受益権の法理論上の性質に関する間題について、既存の法律上の概念に対比してその性質を理論付け ようとすることは、困難であるばかりでなく、それが不当な結果をきたすであろうことも推測される。 ○、↓oo一は、信託受益権の性質について裁判所が最終の結論として一定の概念を示していないことは、どちらか と言えば幸いである。受益権の性質を特定の概念をもって定義することは受益権の効果を不当に切り縮めること になるのである。そして英国衡平法において長い間に発展を遂げた信託の概念を不当に切り縮めることは権利概 ︵8︶ 念の絶対観に対するあわれむべき屈服というべきであろう、と述べていることは、信託関係の本質とりわけ受益 権の性質を最も良く言い表したものと考えられる。 ︵9︶ かつて、メイトランドも論評したように、受益権は時代の推移と共に対物的権利に若干は類似した外観を呈し 始めるが、決して対物的権利に転換したわけではない。 37信託受益権をめぐる諸間題 わが国とは異なり、英米信託法では受益者の完全権と受益者の対人権を両軸とするいわば古典的な信託本質論 ︵−o︶ が、今日でも潜在的に支配しているものと思われる。 英米信託法では、信託財産のコモン・ロi上の所有権は、信託設定と同時に受託者に完全に移転されるだけで、 わが国のように、それが形式的か実質的かの探索は行われず、いわゆるぎぎ島ω冥8R昌ともいわれるように、 信託財産の主体者とか帰属権に対してはあまり関心が示されていない。また、信託の受益者は、大法官の寵児 ︵ω宕津魯ま︶と称されるように、受益権の形成も、長年にわたる大法官すなわち衡平法の努力による歴史的な結 晶にほかならない。したがって、受益権を大陸法的に物権もしくは債権のいずれに分類すべきかの概念的な論争 ︵11︶ 自体が実益のない上に、そもそも英米法には、物権と債権の峻別理論が存在しないのであるからなおさらである。 水島廣雄博士は、大陸法と信託に関する論争について、英国のメイトランド教授とドイッのオットi・ギルケ 教授の例を引き出して説明されておられる。メイトランドは、﹃ギルケは私に向って﹁私は貴方の国の信託を了解 することができない﹂といった。何故であろうか、信託は外国人が法律学の必然とする機構︵ωΦ冨目①︶のうちに、 容易に当てはまらない。法律家は昔から私権を二分︵四&308目賓9悶ユく簿Φ国讐け︶して、ぎおヨ︵対世権︶ と冒冨おo轟日︵対人権︶とする。前者の典型的なものは所有権︵αo邑乱仁βo毒口R谷堂で、後者の典型的な ものは契約上の利益︵些oぽ器律98暮轟o汁︶、すなわち債権︵鋤8葺︶であるとする。しからば、信託受益者 ︵8馨鼠ρ器霞房け︶の権利はそのいずれに属するのか。そのいずれにも属させることは容易ではない。信託は両 者の性質を少しずつ兼ね備えているように見える。外国人は間う﹁我々の法典のいずれの部分にこれを置くべき 38
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︵12︶ であろうか。物権法︵ω碧冨員9算︶の下にか、または債権法︵○票鳴江o器霞①o拝︶の下にか﹂﹄としている。 一五世紀には、土地に関する信託はあまねく行われるようになったが、英国における普通法裁判所はその有効 性を承認しなかったので、信託受益者は法律的な保護を受けることはできなかった。普通法裁判所は信託の保護 をなさなかったため、信託受益者を救済することはできなかったし、また一方で、当時の衡平法裁判所も、いま だ仁ω①の管轄︵夢Φ8鼠$亘o冒冴9&89霧8︶を開拓するにいたらなかった。すなわち、まΦきq實器一は、 ︵13︶ ボジャード教授のいうように、Φ嵐象8器ぎぎ轟曙&凝魯δPび旨冨処ぎ一畠巴ω欝&蒔であった。したがっ て、80庸9と80識885Φとの間は単に鴨導8ヨ9、ω甜お①ヨΦ導にとどまり、けo諏88仁器が拐①設定の本 旨に従って土地を領有し、これを管理処分するか否かは全く任意であって︵<o一⋮鼠蔓︶、実にその誠実と道義心に かかっていた。 この場合、8曾鼠ρ器拐oの権利は拐①設定の本旨に達背したとしても、いかなる裁判所においてもなんら法 律的に強制することができない︵ぎ叶①旨98筈一①︶、いわば﹁純粋に道義的なもの﹂︵陰おξぎぎ轟曙︶に過ぎ ︵14︶ なかった。 結局、この時代の土地の5①における80欺88岳8はエイムズ教授もいうようにω巴目きまたは↓8昌ぎ− ︵15︶ qRと全く同一であって、いまだ法律的には︵普通法上からも衡平法上からも︶確立せる権利としての形態を収め るまでにはいたらなかった。 英米信託法によれば、受託者はコモン・ロi上の完全権を取得し、その反射的効果として受益者は衡平法上の 39信託受益権をめぐる諸間題 権利を重畳的に併列して有するわけであるが、厳密には、受託者の完全権といえども、それは所有権︵o≦器お巨O︶ と称するよりは、むしろ権原︵蜂芭ないし財産権︵①ω富邑であって、大陸法における所有権の概念とは本質を 異にする。また、受益権も信託財産に対する衡平法上の所有権︵8三富包①o要器お匡唱︶ではなくして、衡平法上 ︵16︶ の権利︵oρ9鼠亘Φ898興一旨R8叶︶であり、所有権という呼称はなるべく避けられる。 これを強いて大陸法的な表現を用いると、受益権は物権的な性質を有する場合もあれば、全くの債権に該当す る場合もあって、一体何を対象として信託が設定されたのかという信託目的および信託財産の種類に応じて受益 権の内容が決定される場合が多く、その性質も絶えず変動して必ずしも一定しないといえる。 40 パ パ パ
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信託財産法主体説は、四宮和夫﹁信託法︵新版︶﹂︵有斐閣、一九八九年︶五八頁以下。受益権の本質論については、 新井誠﹁信託法﹂︵有斐閣、二〇〇二年︶五三頁参照。 R巴u曽⇒α↓益ω叶ω営OoB目段息巴蝉昌αOげ巽一$び一Φ国旨Φ∈ユωΦω︸一嵩国貰ダい国Φ<。=8︵NOO斜︶。 ○ΦoおΦ9↓鼠山導一ρ○お鋤昌一鋸岳o冨器H9Φヨ巴08一こ冨曽詩簿ω“↓ぎ一紹巴ω2昌q帥ユΦω○胤国﹃ヨ900一一緯− ωoo芦↓びΦ2讐瑛oo噛浮①肉色閃9ωo︷OΦωε一〇器↓歪ω計嵩Oo罫ヨ玄”U餌壌即Φ<一Φ矩堕N8︵一〇嵩︶, o団↓o昌唱や一8∼一一〇︶。 ウィンフィールドは、メイトランドが債権説を採るまでに逡巡したことを指摘している︵甲oくぎ89夢Φ冨名 =四昌び畦ざ竃○αΦ旨閏ρ忌蔓︸HO㎝ρや一ミ。 一≦巴二四昌ρ国ρ巳蔓︸一旨O”や食●海原文雄﹁英米信託法概論﹂︵有信堂、一九九八年︶二五八頁以下。水島廣雄﹁信託法史論﹂︵学陽書房、一九八五年︶
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。。 >ヨΦρ↓冨○昌閃ぎ亀O器鉾ピΦo日おω8い畠巴田簿9ざ一㊤ωρサ器伊水島廣雄・前掲書、一三三∼二二四頁。 大阪谷公雄﹁信託法セミナー﹂︵トラスト六〇、一九九〇年︶三九、四五、三九八頁。河合博﹁信託の定義﹂五一 巻一二号、八五頁以下、海原文雄・前掲書、二五九頁。 二 英国衡平法裁判所が認めた受益権の本質
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英国衡平法裁判所は自己が保護した信託受益権8曾鼠∈Φ房oの権利、すなわち受益権を以て物権的︵旨お目︶ なるものとみたか、それとも、債権的︵営需お○轟ヨ︶なるものとみたかという間題がある。 衡平法裁判所は仁ω①の設定︵80陳日①筥︶を以て契約とは解さなかった。したがって、受託者80臣88毒①の 41信託受益権をめぐる諸問題 信義違反はこれを契約違反︵ぼ臼畠98暮轟8とみなかったと判断すべきであろう。 右の断定につき、法学者の見解をただしてみる。 ︵−︶ まず、メイトランド教授は、右の判断を肯定し、その理由として次の諸点をあげる。 信託違反はこれを契約違反︵耳$998耳轟8とみることができたであろうに、衡平法裁判所がそのように 解さなかったのは、おそらく、契約違反は普通法裁判所の所管事項︵曽B簿け臼︷9夢Φ88旨9一”≦︶であった ためであろう。 次に、8昌q帥9という言葉は使用されなかった。すなわち、受託者は..oび凝o日①、、というように約束的、形式 用語︵脇段日巴虞o菖器︶を使わないで、当時はすべて、.島Φ、、なる一語をもってなされ、少し後になって、.8艮置窪8、、 ︵2︶ または、.賃奉け、、なる用語が使用された。 契約として取扱わなかった最大の理由は、もし契約とするときは、委託者︵爵Φ80陳自︵妻ぎδ8ωけ鼠2① 拐Φ︶︶は島①によって債権︵蝉号○器冒8け一9︶を取得することとなるが、債権は譲渡不可能︵冒昌窪筈一①︶で あったから、土地所有権者は所有権をもって、譲渡不能なる債権︵跨①︵ぽ巴一窪筈芭冨話律9帥震o目一8︶と ︵3︶ 交換する意思があるものとは認められなかった。 さらに、当時普通法上、第三者のためにする契約︵切8葺唐冒壁ぎお旨けR岳︶︵8づ霞四98﹃9Φ幕器津9 ︵4︶ 鋤浮一巳も舘蔓︶においては、第三者︵鼠岳拐︶はその権利を取得することができなかった。 以上より、当時⊆ω①関係者の望んだところは、一に受益者をして用益を取得せしめることのみであって、契約 42
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︵5︶ のようなこと億当事者の意図したところではなかった。 しかしながら、ホームズ判事は、島①の管轄権が宗教裁判所より衡平裁判所に移ったと同時に、受益者は物権と してのすべての性質︵巴一9鶏8鼠9甘ωぽお日︶を失い、債権の部類︵浮①S冨讐q9畠88一昌舘二9︶ ︵6︶ に属したとして、反対する。 考えてみると、衡平法裁判所の救済保護の対象は委託者ではなく、受益者である。初期の信託においては、委 託者と受益者とが同一人であったが、後に多く第三者が受益者となったため、島Φの設定を契約とみるときは、当 時いまだ、英法においては、第三者のためにする契約︵窓09日一ω鼠<9窪けR蔑︶︵8昌嘗帥9眺興窪①富器津9 蝉9幽巳℃巽ξ︶の存在を認めなかったために、第三者︵8鼠拐︶である受益者︵U窃け旨簿腎︶は保護の対象の範 囲外におかれることとなる。 また、このような場合、委託者が受益者を兼ねるときであっても、霧Φは保護の対象となることは勿論であるが、 その救済は受益者の資格に対し与えられるものでないことについては多言を要しない。 ︵7︶ したがって、衡平法裁判所は岳Φの設定を目的として、契約することができなかったというべきである。 衡平法裁判所は前述のように、受益者を、債権的なものとみず、物権的なものと解した。こうして受益権をし て物権的なものとするため、﹃衡平法は普通法に従う﹄︵器ρ鼠貫ωω8鼠言肘一罐Φヨ!国ρ鼠姶8まゑω浮①冨ゑ︶な ︵8︶ る原則に基づき、普通法上の土地物権制度をヨ&色として、仁ωoを無体物︵きぽ8壱oお巴荘冒磯ー勉ωo昌9 ︵9︶ ぎヨ簿R巨冒巴嘗①80暁ご且︶とみて、受益者はその上に物権を有するものと解した。 43信託受益権をめぐる諸問題 ︵m︶ なお、メイトランド教授は、このような無体物を承認した例として、古くは、僧職推挙権︵a<o零ω9︶、近くは、 特許権︵冨鼠再同蒔鐸︶、著作権︵8ξ﹃蒔窪︶、いまや、営業権︵ひQo&惹εもこの種類のものとして認められよ ︵1 1︶ うとする途上にある旨を説明している。 前述のように、衡平法裁判所は岳①保護のため、これを無体物となし、受益権者はその上に物権を有するとみ た。しかし、もとより衡平法裁判所は新しい物権︵器≦賊蒔辟日お日︶を創設することはできない。物権の創設 は議会の権限に属することは勿論である。 こうして、議会において、もし参Φなる物権を創定し、これを普通法上の物権となしたと仮定すれば、土地遺 贈ならびにこれに関連する封建的負担を回避するための諾①は、その存在意義がなくなり、萄Φの制度は根本的に ︵12︶ 消滅することになってしまう。 衡平法裁判所は、普通法における土地物権制度︵碧8$$日一きα︶に範をとり、これに関する法理の類推適 用により、受益者の権限︵夢①ユ讐け9夢Φ8曾三ρ器参Φ︶を取扱ったとみるべきである。 すなわち、大法官は、受益者の権利を当初より土地の上の物権に類似しているものとして処遇し、これに英国 土地法の原則︵跨①霊一89国認房げ冨旨α冨≦︶を適用してきた︵跨亀ぼo轟浮8訂巽唇o昌ε。したがって、 ︵13︶ 受益者は拐oにおける物権︵彗8鼠富冒浮①島Φ︶を有し、これは種々の相続ならびに各種の権利の目的となっ ︵14︶ た。これらはすべて、﹁衡平法は普通法に従う﹂の格言︵夢の筥畏巨零器跨簿89蔓警霊匡融ま毛浮Φ冨譲︶ による。 44
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こうして、拐①は土地と同様、占有権︵冒ω器路9︶、残余財産帰属権︵おヨ巴且R︶、財産復帰権︵お奉邑9︶ ︵15︶ などの目的となり、また、譲渡およびその他の移転を認められることとなった。 このように、衡平法裁判所は、8雪92Φ房oの権利を物権的に取扱い、保護してきたために、︵イ︶もし受託 者が死亡したときは、その相続人に対してもこれを強要し得ることとした。︵ロ︶また、受託者が岳①の設定の本 旨に反し、信託の目的財産を第三者に譲渡したときは、当該第三者が現に諺Φの存在を知ることができたとき、 または知ることができなかったとき︵9目8Φ89巴自8霧嘗琴菖<①︶は、受益者は受託者に対しては勿論、 その第三者に対しても訴権を有するものとした。 なお、この場合、第三者が無償で、5Φの目的財産を譲受けたときは、その第三者が仁ω①の存在を知ることがで ︵15︶ きたかどうかを間わず、その第三者に対して訴権を認め、もって受益権者の保護を図った。 ところで、信託の受益者は大法官の寵児︵80岸畠ま︶としばしば評されるが、受益者が長い歴史を経ながら 格別に優遇されたという事実だけではなく、本評語の背景には、単なる損失保障の間題以外に前出の差止命令お よび特定履行︵89強o冨抹曾日き8︶という衡平法独自の強制手段が存したことを看過できない。すなわち、受 託者による信託違反に際しては受益者は裁判所に差止命令を求めることができ、また、受託者が本来の信託行為 に慨怠ある場合はそれを履行すべきことを命じることができた。いずれも衡平法裁判所の裁量に基づく救済手段 であって、その命令に不服従の場合には裁判所侮辱︵8暮①B讐98畦け︶に間われ受託者は厳しく罰せられた。 本評語は、衡平法は対人的に作用するという原則のあらわれであり、また、大法官が受益権を、それ自体に特有 45信託受益権をめぐる諸問題 な種類︵ω9鴨器冴︶に属する権利として優遇しながら信託法理を形成せしめたというOoぎ以降の伝統を要約 ︵17︶ したものともいえるであろう。 衡平法における基本原則として、﹁衡平法は対人的に働く︵国ρ9蔓8富置需おo鍔目︶﹂の格言にもみられるよ うに、受益権が衡平法の歴史的所産である以上、本原則は受益権に関しても当然に適用されるべきであり、受益 権の本質は、第一義的には受託者に対する対人権︵甘ωぎ需おo轟目︶であることには異存のないところであろう。 例えば、受託者が信託財産を不法に取得したり、自己固有の財産と混合した場合、あるいは、不法な投資を行っ たような場合には、受益者は受託者だけを訴えればよいので、この点のみからみれば受益権が対人権であること ︵18︶ には疑いの余地がない。 英米における今日の有力な学説によれば、受益権の本質は、対人権と対物権の双方の性質を具備するいわば中 間的な、どちらかといえば対物権に重点をおく準対物的権利︵∈霧一誌讐二pお導︶と解するのが支配的といえる。 あるいは、対人権と対物権の混成児︵げ旨﹃置3ま︶または衡平法の作用を受ける人々を介して物を支配する間接 ︵19︶ 支配権ないし随物権と解する説も同趣旨にほかならない。 受益権の本質を、受託者を媒介とする衡平法上の準対人的な救済手段と解するならば、古典的な対人権説ある ︵20︶ いは近代的な対物権説のいずれにも偏しない受益者に特有の︵ω三篶器岳︶権利と解する頃碧ど曼の所説、また は、一般的な衡平法上の権利︵8鼠$亘Φ鐸R8け︶の単なる変形︵︿巽韓一自︶にとどめて解すべきという2①薫含き ︵2 1︶ の提言が、もっとも注目されねばならない。その前提に立てば、仮に対物権説に従うとしても、信託財産自体に 46
対する対世的な対物権︵冒ω一ロお目︶として理解するよりは、信託財産に関する権利を、所有権者たる受託者と いう特定人に対して主張し得る権利、すなわち、物に関しての権利ないし特定物債権︵冒ω毘お目︶という制限 ︵22︶ 的な意義で同説を支持する方が適切のように思われる。
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︵8︶ 竃巴菖睾9国ρ岳受一旨9づ。8●水島・前掲書一八七頁。 冨巴菖鋤ロρ国ρ鼠姶,一旨①,℃づ。o oρω一、 竃巴こ帥昌ρ国ρ岳け零おま。で曽.なお=o一房ゑo辞F︾頃お8蔓9国昌磯房﹃U四峯くo一﹂く。おホ,℃トお● 竃巴什一きρOo一一8冨α評℃Rω﹂。一一。くo一.目ーP。 。““● 竃巴自”旨9国ρ鼠蔓。一〇ま●Pωピ =o巨Φρ浮ユ鴫国轟一一ω﹃国2一900一一①99UΦαq巴−碧R巴3Nも自。 匡葺富民︸鯉且受一旨。ら・。 。ご蜜巴畠且”Oo一一8什①α評需参くo一9H一一。一一も。“。。一くo一・目●一。一一も。ωき旧=o一阜 ω零o辞F>匡凶ω8qo︷国ロ哩一魯U簿揖一〇ホ。くo一●一く。マ“一〇’ この格言は、﹁衡平法は常に普通法の規則を適用する﹂という意味でないことは勿論である。この格言には通常、 二つの意味があるとされている。 ①まず第一は、衡平法は普通法の存在すなわち、ω普通法上の権利の存在ならびに@その救済方法の効力を前提 とするということである。例えば、普通法が一定の権利がAに存在するとするのに対し、衡平法がこれを否定し、そ の権利はBに在りとするのでは混乱を招くが、しかし、Aの普通法上の権利の存在を認め、それを前提としつつ対人 的にAに行為、不行為を命ずることにより、間接的にBの普通法上の地位に影響を与えることにする。これが衡平法 の政策であったといわれる。 ②次に、この格言は衡平法上の権利に関する規則を作るに当り、可及的に、普通法の類推に依拠せよという意味が 47信託受益権をめぐる諸間題 ある。すなわち、普通法のモデルに従うという意味である。 例えば、信託財産や受戻権は衡平法の産物であるが、これ等に関する規則は普通法の規定に従うこととして、財産 法全体の画一性を保持せんとする大法官裁判所の政策である︵例えば、一九二五年以前、英国においては動産と不動 産につき、別々の相続規則が存在していたが、無遺言相続の場合、衡平法上の権利は、それに相当する普通法上の権 利と同じように処理された︶︵以上については、国8FU餌壌9&o墨員。一〇鐸ワ8伊高柳賢三教授﹁英米法の基礎﹂ 二三六頁参照︶。 ︵9︶竃葺冨且”国∈一¢一旨。も●G 。一● ︵10︶ 寺院の住職欠員の際、候補者を僧正︵獣魯8︶に推挙する権利である。教会建設者または寺領料地などを寄進した 者に、教会がその代償として与えた特権にして、一種の物的財産︵お巴震8R蔓︶である。次の二種がある。 ω毘<o≦ω88冨昌母旨寄進者の候補者の保有地︵荘園︶に附着し、これと共に譲渡される分離不可解の推薦権。 @&<o零ω9冒ひQ3器寄進者の身上︵土地と関係なく︶に附着した推薦権。また、↑り推挙権者が、僧正に推挙する 通常の場合を匿<o≦ω9屈窃窪$江話といい、@僧正と推挙権者が同一人であるときを毘<o白ω88ま賦おとい う。 当初は、僧正への推挙なく贈与で僧職につくことができた贈与的僧職推挙権︵3轟餓奉毘<o窯ω8︶が存在してい たが、一八九八年、すべて、R窃窪欝は奉に変更された︵ω毘①導ぎρい四奢U一&oき蔓一一濾。 。・す鼻匹8F冨≦ U一〇はo屋曙”一〇日’やお︶。 ハ ハ パ パ パ パ 16 15 14 13 12 11 ) ) ) ) ) ) 窯巴二帥昌ρ国ρ巳昌. 客巴二帥βρ国ρ9な● 蜜巴二”p9国ρ鼠蔓・ 蜜包菖”口9国ρ鼠蔓・ 霞巴こ餌β9国ρ鼠蔓。 竃巴菖餌昌9国ρ鼠蔓。 一8①。 一89 一旨9 H旨①● 一旨①. 一旨①● ℃・G 。一・ やG 。N. P。 。N’ Pωω’ Pωω● PωN● なお、入江真太郎博士﹁信託法原論﹂三二頁・三三頁参照。水島・前掲書、一九六頁。 48
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︵17︶ パ ハ1918
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) ) ) 名巳抽↓箒↓霊曾讐αOo霞①80昆一轟冒ω鼻暮δ拐一口浮ΦΩ<臣一蝉妻︵這臼︶海原文雄﹁衡平法と信託﹂信託二 一一二号一一二〇百ハ。 Oo溶は、次のようにいう。﹁ユースは、他人に委託された信託ないし信認︵8課崔窪8︶であって、それは土地か ら産するものではなく、土地に関する財産権︵Φω鼠琶および土地に関連する人に特別の関係︵賓ヨな︶をもって付 随している副次的︵8一一暮R巴︶なものである。したがって、受益者は、対物権ないし物に対しての如何なる権利を も有せず、単に信認および信託上の権利を有するに過ぎない﹂と。海原文雄﹁英米信託法概論﹂二六二頁。 OO悶Φ仁もo昌訟注Φ餓Op︵一①Oo。ンN認ダ缶o匡ω≦o辞賞国一ω8鼠o巴ぎ霞oα8蝕o昌8爵Φい§傷い四郵<○一﹂く︸唱●器。 海原・前掲書、二五九頁。 ω8貫↓箒鍔≦o胤↓霊ωけω︸ω.。9留ω。旧冨誤op︾O。ヨヨg冨名鴫Rいoo厨讐け冨Ω<自霊妻︵一3。 。γ マN。ご妻巳抽↓冨↓控ω什四且Oo貫①聲o&一轟冒ω鼻仁け一9ω営夢ΦΩ邑鍔妻︵一。。㎝︶も。ω押缶巽戸↓富国餌8。︷ ↓歪斡ぢ冒ユω質邑窪8るo 。炉O勾ΦタN8。河合博﹁信託の定義﹂法学協会雑誌五二巻一号一一〇頁以下。なお受 益権の性質については、森泉章編著﹁千ギリス信託法原理の研究﹂学陽書房一九九二年、九七頁以下。木下毅﹁アメ リカ私法﹂︵有斐閣、一九八八年︶二八○頁以下。 寓曽pげq曙曽旨α蜜餌二αω一⑦ざ竃oαΦ毎国ρ岳昌”一〇さΦPつ旨. 乞①矩導きg↓毎ωけω﹄昌儀①負宰旨8 わが国と同様に、英米信託法においても、受益権の本質は、昔から活発に論争され多岐にわたるが、著名な学説名 だけを、これまでに引用した文献を中心に、一応分類して列挙することにしたい。対人権説としては、例えば、 頴慧Pq&R窯戸ζ巴自彗ρ℃Φ鼠計いき覧Φ芦︾B霧ωけ○器などを、これに対して対物権説としては、国Φ①8P ω巴ヨ89>島菖P竃窪房電ざ田拐8P閏巴び8F田oぎ8などを、また、両者の折衷説をとる例として、=きび畦ざ =畦戸譲仁ヌω8貫ωo鴨吋“℃o⋮αなどをあげ得る。海原・前掲書、二六一∼二六二頁。ω8芦ω唇声ぎ冨︵αy マまO旧ωo鴨芦8。oF㈲一〇 。ω一寓貰戸ω唇畦蝉ぎけΦ︵“γ箸b濾Φけω8。鴇国島8PoPoF唇.o 。刈9ωo£2Φ壌ヨ餌P 8bFや昌伊木下・前掲書、二七九、二八○頁。 49信託受益権をめぐる諸問題 詳細な文献としては、 リス信託法原理の研究﹄ 例えば、海原文雄﹃英米信託法の諸問題 ︵学陽書房・一九九二Vなど。 三 米国における信託受益権の問題点 ︵上・下︶﹄︵信山社一九九三︶、森泉章編著﹃イギ 米国信託法リステイトメントは、受益権の本質論を避けているが、第一三〇条で受益権の性質と題して、次の ように述べる。すなわち、﹁第一三一条の場合を除いて、⑥信託財産が人的財産権︵冨お9巴R8R蔓︶であれば、 受益者の権利も人的財産権であり、㈲信託財産権が物的財産権︵お巴R8R蔓︶であれば、受益者の権利が仮に コモン・ロー上の権利とせば人的財産権と認められるほどに権利の存続期間が限定されている場合を除いて、受 益者の権利は物的財産権である﹂と。ちなみに、同第一三一条は衡平法上の転換︵8鼠寅巨①8薯R匹9︶と題し て﹁@もし物的財産権が信託として保有され、信託条項により当該財産権を売却し、その売得金を信託で保有し、 あるいは分配すべき義務が受託者に課せられているならば、受益者の権利は人的財産権である。㈲もし人的財産 権が信託で保有され、信託条項により、その財産権または売得金で物的財産権を購入すべき義務が受託者に課せ られているならば、受益者の権利は、仮にそれがコモン・ロー上の権利とせば人的財産権と認められるほどに権 ︵← 利の存続期間が限定されている場合を除いて、受益者の権利は物的財産権である﹂と続けている。 判例における趨勢によれば、特に最近では、英米ともに対物権説を支持する解釈の方が有力といえる。なかん 50
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ずく、アメリカにおける課税および州籍の相違に関する諸ケースでは、その傾向が強い。ただし、州制定法のな かには、ニュー・ヨーク、ミシガン、カリフォルニアなど諸州のように、対人権説を規定しているところも若干 ︵2︶ は存する。 ︵3︶ 今日、アメリカでは、受益権はエクイティ上の所有権であるとして物権説の優位が確定している。ただし、法 理の発展が、受益権の性格論から始まったのでないこと、個々の具体的物件を通して、受益権にどのような効果 を認めるべきかの判示を集積した結果にすぎないこと、物権か債権かというような議論が一九世紀の末から今世 紀にかけて学者の間で行われたのは、いわば例外的状況にすぎないことを銘記する必要がある。おそらくその一 つの証拠としては、信託法第二次リステイトメントが、二二〇条に﹁受益権の性質﹂と題する条文をおきながら、 そこでは、信託財産が動産か不動産であるかによって受益権の性質も定まるとの、まさにただちに実益︵課税・ ︵4︶ 相続・裁判管轄権などの間題解決︶の伴う内容しか規定しないところに、端的にあらわれている。 受益権は、受益者の一身専属的なものである場合を除いて、原則として譲渡性を有し、また、受益者の債権者 は受益権に対して強制執行することができる。さらに、受益権が譲渡性を有する場合には、受益権の証券化も認 ︵5︶ められる。証券化の適例として、アメリカの不動産投資信託およびビジネス・トラストなどをあげ得る。 アメリカにおいて、受益権の性格づけを行ってきたのは、実際には判例法であり、それをめぐる議論を行って きたのは一部の学者であった。しかしながら、州議会が、法律のなかで、ある種の信託の受益権を債権と性格づ けたり、あるいは信託設定時に委託者が受益権の性格づけを行った場合、それはどのような意義をもつだろうか。 51信託受益権をめぐる諸問題 ︵6︶ これにつき、州議会の制定法の効果については、判例が分かれているとされるのに対し、当事者の定めについ ︵7︶ ては尊重する傾向にあるという。 受益権の譲渡に関してであるが、アメリカ合衆国最高裁は、かつて次のように判示したことがある。 ﹁受益権の譲渡は債権の譲渡ではなく、財産に関する権利、権原、地位︵ユ讐け蓉崔ρきα8鼠$冒きα8跨Φ ︵8︶ 蜜8R蔓︶の譲渡である﹂。 信託法リステイトメントも、第一三二条で、受益者は自己の権利を譲渡する権限を有すると簡明に規定するが、 同時に、第一四九−一六二条にもわたる多くの例外を認めている。 信託証書または制定法に別段の定めがある場合を除き、受益者は、受益権を自由に譲渡することができる。譲 渡は生前譲渡でもよいし、遺贈によってもよい。一部分の譲渡も可能であるし、担保として移転することも自由 ︵9︶ である。 受益権の譲渡および差押えをめぐっては、浪費者信託条項という形で譲渡および差押えを抑制するほかに、い くつかの手法で譲渡・差押えを阻むことができる。 第一に、受益権の性格自体によって、譲渡および差押えが困難となる場合がある。その一例が、裁量信託︵&ωRΦ− ︵−o︶ 島○轟蔓賃諾什︶である。例えば、信託法第二次リステイトメント一五五条は次のような趣旨を規定する。すなわ ち、受託者が受益者に行う給付が、信託条項によって、受託者の自由な裁量に基づくとされる場合、受益権の譲 受人や受益者の債権者は、受託者に対し、支払を強制することができない。 52
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第二に、一身専属的信託と呼ばれる信託も、受益権の譲渡が許されない。受益権の性格が当該受益者に密着し た個人性の強いものである場合、受益者は受益権を譲渡することもできず、受益者の債権者もそれを差押さえる ︵11V ことができない。 アメリカにおいても、一九世紀から二〇世紀にかけて、受益権の性格をめぐる論争が行われた。わが国の物権 説・債権説の争いと同様の対人的権利か対物的権利かという争いは、受益権はエクイティ上の所有権であり、信 託財産に関する物権的な権利であるという形で決着した。 実益のある性格論としては、受益権を動産と不動産のいずれと同様に扱うかによって、課税関係や相続、さら に裁判管轄権などの定まる点が重要である。 アメリカ法において特徴的なことは、受益権の内容につき、委託者が自由に定めることができるという点が強 ︵12︶ 調されているところである。受益権の多様性・任意性である。 なお、受益権の消滅時効について一言触れておきたい。英米の時効制度は権利の得喪理論をとらず採証上の訴 訟関係として把握される。消滅時効においては衡平法上の黙認︵㊤898098︶および僻怠︵鼠畠8︶の両法理が 適用され、信託法リステイトメント第一二九条も、受託者側の一定行為を前提として、それぞれを明記している。 本間題に対しては、かつて大阪谷公雄先生による比較法に基づく詳細な論稿があり︵信託復刊二三号︶、信託受益 権の時効期間も二〇年が適切である旨を主張されたが、妥当のように思われる。 53信託受益権をめぐる諸間題 ︵1︶
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) ) ) ︵5︶ハパパ
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ωo鳴詳890一一こ鯵一〇 早川眞一郎監訳﹃米国信託法上の投資ルール﹄︵学陽書房・一九九六︶。 慶応義塾大学信託法研究会訳﹃米国信託法リステイトメント・第2版﹄︵財団法人トラスト六〇・一九九六︶。 大阪谷公雄訳著﹃米国信託法リステイトメント︵信託法の研究別巻︶﹄︵信山社・一九九一︶。 をもつと考えられている。 理法など、アメリカ法の内容を知るにはそれらをまず見ることが便宜であり、信託法リステイトメントも同様の価値 る。判例法の内容をリステイト︵わかりやすく言い換え︶したという意味をもつ。契約法、不法行為法、財産法、代 やすく提示するべく、条文とそのコメントという形で、それぞれの分野を代表する学者や実務家が作成した書物であ リステイトメント︵勾oω冨笛ヨΦ具︶とは、判例によって法が形成されている主要法分野につき、法の内容をわかり る。H阜魯崔拐霞象一99 テイトメントでは、一〇年の期間、土地からあがる収益を受け取る受益権を人的財産権だとする例があげられてい ただし、受益権の存続期問が短く限定されている場合、不動産を信託財産とする場合でも人的財産とされる。リス 即Φωけ簿Φ旨①旨︵ω80昌α︶o騰↓吋gωけω吻一ωO︵一3㊤︶薗。“︸一〇 。押ZΦ毛ヨ鋤P8。9“忍。旨ρ一NP ωΦρρ聖ρり閃o鴨拝霊ロ﹃餌ぎ90トゆG 。凶魯一G 。伊 肉①ω富富旨雪叉ω80且︶9↓歪ωお留G 。。︵這緯︶●コメントも同様である。ただし、これに対応するω8窪帥牢界 魯9ω唇轟ぎ富嵩ン留G 。。において、債権説対物権説の説明がおかれている。 営けΦヨ巴閃o<窪器Ooα①o脇一〇①ρ㈱o o㎝O︵蝉︶︵ω︶恥名一巳一P↓げΦ即Φ巴国ω釘けΦぎ<Φωけヨ窪“器d●℃一拝ピ●閃Φ<. 刈o 。再譲=ひq自98。q“℃。N謡“ω叶巽壁α娼巴日Φぴ閃仁ω一器ωωU帥ヨN昌。巴。Pω㎝ごω費一罐9勺﹃営9巳Φωo︷ω仁ω壁 昌Φωω○お帥巳N暮一gきqO需轟賦oPω.αΦ9マo 。①。 ODθωo鴨昌霊冥餌ぎ冨OV砺ωざ騨一ω甲o 。①。 ρθ︼Wo鴨昌の后蚕ぎけΦ。︶砺ωざ暮一ω9 国鋤マ雪Ooヨ巨裟自RgH暮①旨巴男の<①壼ρ80qの父お零︶︵国轟冨ωρご9この事件では、遺言信託に 54
よって生涯受益権者とされた受益者が、収益受益権の一部を他人に譲渡した後、その部分についても連邦の所得税を 課すべきかが争われた。裁判所は、受益権は、財産に関する物的な権利であり、そのようなものとして譲渡可能であ ると判示し、課税を否定した。 ︵9︶勾①ωけ導Φ日①耳︵ω80注︶9↓歪ω富留目”且OoヨBΦ旨蝉︵一。q。︶■ ︵10︶因oωけ簿①ヨΦ再︵ωΦ8&︶o︷↓歪ω富留緕︵一3。︶’ ︵n︶ω8#俸犀響魯①ぴω唇蚕8冨㎝①︶﹄一①ρ魯器N. ︵12︶ 海原文雄﹁英米信託法概論﹂有信堂一九九八年、二五八頁∼二七六頁。 樋口範雄﹁アメリカ信託法ノート﹂弘文堂一九九九年、一三六頁以下。 中野正俊監修・日本信託銀行信託法研究会﹁アメリカ信託法﹂有信堂一九九三年参照。 四 わが国における信託受益権に対する担保権と質権の設定
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わが国においても、伝統的に信託法の根本的な論点として、受益権の性質をめぐる議論が行われてきた。通説 ︵−︶ としての債権説に対し、非債権説が現れ、その帰趨はいまだ必ずしも明らかでない。 ︵2︶ 現在では、受益権の性格如何という論争は﹁不毛な概念論争の感が強い﹂とか、﹁受益権の内容が﹃物権か債権 ︵3︶ か﹄という議論には実益はない﹂といわれることもある。だが、物権か債権かという議論の立て方はともかくと して、受益権の性格をいかに把握するかが、常に信託法の基本間題の一つであったことは事実である。わが国に おいては、現行信託法の条文の中に受益権の譲渡性にふれる規定すらないという状況にある。一九八五年に四宮 55信託受益権をめぐる諸間題 教授率いる信託法研究会による信託法改正試案が信託法学会で討議され、そこでは三三条の二︵受益権の譲渡性︶ ﹁民法第四六六条から第四六八条までの規定は、受益権の譲渡に準用する﹂、三三条の三︵受益証券︶一項﹁受益 権については、その性質が許さない場合を除き、信託行為の定めるところにより、受託者は、有価証券を発行す ︵4︶ ることができる﹂との規定の新設が提案された。 それによれば、受益権は民法上の指名債権譲渡と同様にして譲渡可能であり、譲渡禁止と定めても善意み第三 者に対抗できないとされる。わが国において、善意の第三者に一般債権者は含まれるので、受益権の譲渡禁止は、 債権者の差押えを阻む効力をもたない。さらに、改正試案は、受益権の有価証券化を明文で認め、それに伴って ︵5︶ 解決しておくべき諸論点を三三条の三から三三条の六まで規定した。だが、実際には、信託法は改正されず、現 在にいたっている。 現在のわが国の不動産流動化の実務においては、案件ごとに様々なスキームが用いられているが、その中で比 較的多く用いられるのが、オリジネーターが不動産を信託銀行に信託︵不動産管理処分信託︶し、信託設定の結 果発生する受益権を特別目的会社︵SPC︶などに売却するというものである。SPCは、受益権購入のための 資金を金融機関など︵レンダー︶より調達することがあるが、その場合、レンダーはSPCの有する受益権に対 して質権を設定することが頻繁に行われる。 受益権は、一般に譲渡性を有しており、不動産流動化スキームにおいてはこの受益権の譲渡性を前提に取引が 行われている。受益権は、受益の内容に応じた経済的価値を有する財産権であり、交換価値の把握を目的とする 56
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担保権の対象となり得るものである。 受益権には、元本交付・収益配当請求権︵いわゆる受益債権︶やその他にも受益者による受託者に対する監督 権など様々な権能が含まれている。受益権に質権を設定した場合、その効果として質権の実行前においても受益 者がこれらの権能を行使することは制限され得る。個別の権能に対して質権設定の効果がどのように及ぶのかと いうことを考察するには、株式質との比較が有効であるが、最終的には個別の権能ごとに当該権能に係る信託法 の規定、権利行使による受益権の経済的価値の変動の可能性、当事者の利害状況など多角的な観点から検討・判 定すべきであり、受益債権や信託財産に係る管理方法変更請求権など、いくつかの権能について具体的な考察を する必要がある。 間題は、受益権に対する質権の設定に関し、民法の権利質の規定が適用されるべきか、また、質権設定に係る 対抗要件の具備に関し、受益権と債権の類似性を理由に、実務対応と同様、債権譲渡・質入に係る対抗要件を具 備すべきかということがある。 受益権に対する質権の設定に関し、質権者を始めとする当事者がどのような意図を持っているのかということ を実務に則して考えてみると、その結果として受益権に対する﹁質権の設定﹂とは﹁停止条件付受益権譲渡﹂も しくは﹁受益権の譲渡予約﹂に近いものとして解すべきであり、受益権に設定された﹁質権の実行﹂とは﹁受益 権譲渡﹂もしくは﹁流質﹂と同様に解することも必要であろう。 受益権に質権が設定された状態で信託が終了した場合、信託財産に不動産が含まれていると、質権者は信託財 57信託受益権をめぐる諸問題 産として交付される不動産の上に質権を取得することとなる。しかし、当該不動産が賃借人などの入居する収益 用不動産である場合には、﹁引渡︵占有移転︶﹂との関係で、当然に質権が成立するのか疑間がないわけではない。 実際上は、質権者を抵当権者とする抵当権を設定することで対応することが多いが、民法の原則と異なる取扱 いを行う以上、当事者間の合意を質権設定契約書などにおいて明確に規定しておく必要がある。 質権の実行と信託の終了については、受益権に設定された質権の実行が必ずしも﹁信託目的の不達成﹂に該当 せず、信託は当然には終了しないとの見方もできる。 最近は、実務上、研究されているものに各種ローンと信託受益権の関連間題がある。 実際上の例としてクレジット・リンク・ローンのストラクチャi上、SPCが安全資産を保有し、取引関係者 のために安全資産に対して質権が設定される。安全資産としては国債を利用するのが一般的であるが、社債など 振替法の施行に伴い、国債証券に質権を設定するのではなく、振替国債を信託財産とする信託受益権に質権を設 定する方式をとるようになってきた。 クレジット・リンク・ローン︵以下﹁C﹂L﹂という︶とは、クレジット・デリバティブの一種であるクレジッ ト・デフォルト・スワップ︵以下﹁CDS﹂という︶が内包されたSPC宛てのローンで、元本償還や利息支払 が、主に参照組織、すなわち、信用リスク売員の対象となっている企業などにおける信用事由の発生の有無に依 存したローンである。同様にCDSが内包された仕組みで、SPCの資金調達手段がローンでなく社債であるも のは、一般にクレジット・リンク・ノート︵以下﹁C﹂N﹂という︶と呼ばれている。また、わが国では、単独 58
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または合同運用指定金銭信託などの信託受益権によって資金調達を行う﹁クレジット・リンク受益権﹂も少なか らず組成・販売されている。 平成一五年一月六日から﹁社債等の振替に関する法律﹂︵以下﹁社債等振替法﹂という︶が施行され、同年一月 二七日をもって、日本銀行が社債等振替法に基づく振替機関として国債振替決済制度︵以下﹁新振決制度﹂とい う︶の運営を開始したことに伴い、今後発行される国債はすべてぺーパーレス化されることとなった。社債等振 替法八八条によれば、財務大臣が指定した国債は﹁振替国債﹂と定義され、振替国債についての権利の帰属は、 振替口座簿の記載または記録により定まるものとされており、振替国債については国債証券を発行することがで きない︵社債等振替法八九条一項︶。そして、振替国債とする旨の財務大臣の指定は告示により行うこととされて おり︵振替国債を取り扱う振替機関への同意等に関する省令二条︶、実際に国債発行のつど、財務省告示が出され ている。このため、今後国債証券の存在を前提とした質権設定は、早晩不可能になるものと考えられる。 一方、新振決制度のもとでは、振替国債への質権設定は、質権者がその顧客口座における質権欄に当該質入れ にかかる金額の増額の記載または記録を受けることにより行われる︵社債等振替法九九条︶。ところが、新振決制 度では順位の異なる複数の質権者の存在が想定されていない。 そこで、信託業務を兼営している銀行では、国債そのものではなく、国債を信託によって形式転換した上で、 信託受益権に対して第一順位および第二順位の質権の設定を受けることにより、従前と同等の担保ストラク チャーを実現することができるのではないかと考えている。 59信託受益権をめぐる諸間題 具体的には、兼営銀行と借入人SPCとの間で有価証券信託契約を締結した上で、借入人SPCの顧客口座か ら三井住友銀行の自己口座宛てに振替国債の譲渡にかかる金額の増額の記載または記録をなし︵社債等振替法九 八条︶、かつ、信託財産であることを第三者に対抗するために、その旨および金額を振替口座簿に記載または記録 する︵社債等振替法一〇〇条、九一条三項五号︶。その結果、借入人SPCは振替国債を信託財産とする信託受益 権を取得するが、この信託受益権に対して、プロテクション・バイヤーたる兼営銀行のためにCDSおよびアセッ ト・スワップにかかる債権を被担保債権とする第一順位の質権を、貸出人のためにローン債権を被担保債権とす る第二順位の質権を、それぞれ設定するのである。そして、権利質は質権設定の合意と証書の交付により効力を ︵6︶ 生じ︵民法三六三条︶、確定日付ある証書による第三債務者の通知・承諾が第三者対抗要件となるから︵民法三六 四条一項、四六七条二項︶、信託受託者たる三井住友銀行が質入れを承諾しつつ、第一順位質権者たる兼営銀行が、 第二順位質権者たる投資家のためにも信託契約証書を代理占有するという方式を採ることができる。この方式に よって、国債証券が存在しなくとも、しかも、他の口座振替機関へ手数料を支払うことなく、国債証券の存在を ︵7︶ 前提とする従前の担保ストラクチャーと同等の効果を実現することができるのである。 60 ︵1︶ ︵2︶ 新井誠﹃財産管理制度と民法・信託法﹄ 閣・新版一九八九︶。 木下毅﹃英米私法﹄二八○頁︵有斐閣・ 四二頁以下︵有斐閣・一九九〇︶、四宮和夫﹃信託法﹄五八頁以下︵有斐 一九八八︶。
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︵3︶ ︵4︶ ︵5︶ ︵6V ︵7︶ 新井・前掲注︵3︶四九頁。ただし、新井教授は、受益権を物権と把握するか債権と考えるかによって、日本法の もとで実際的な効果が異なる場面として、少なくとも受益権の消滅時効と受益権譲渡の対抗要件の二つの問題があ げられると指摘し、その限りで債権説に立つか否かを明示する実益があるとする。同五〇頁。 ﹁信託法改正試案︵第四試案︶﹂信託法研究一〇号二天頁︵一九八六︶。前田庸﹁受益権﹂信託法研究一〇号五八 頁︵一九八六︶。 三三条の三で、受益証券と題して、一項は、﹁受益権については、その性質が許さない場合を除き、信託行為の定 めるところにより、受託者は、有価証券︵以下、この有価証券を受益証券という︶を発行することができる﹂と規定 し、二項は、﹁受益証券は、記号、番号、信託行為の定め及び次の各号に掲げる事項を記載し、受託者がこれに書名 または記名押印しなければならない﹂として、以下一−八号にわたる記載事項を列挙している。 大阪谷公雄﹁信託受益権の有価証券化﹂信協会報一二巻六号四頁以下、同﹁信託受益権の譲渡および善意取得につ いて︵復刊信託︶一二号四頁以下、前田庸﹁受益権の有価証券化﹂私法四七号四一頁以下、同﹁受益権﹂信託法研究 一〇号五八頁以下、天野佳洋﹁セキュリタイゼーションと信託﹂信託法研究一三号八五頁以下。 受益権の法的性質については種々議論があるが、債権譲渡の方法に準じて対抗要件を具備すればよいと考えられ ており︵能見善久﹁現代信託法講義︵7︶﹂信託二〇八号五七頁︵二〇〇一︶参照︶、実務的にもそのように執り行っ ている︵三菱信託銀行法令研究会編著﹃信託の法務と実務︹三訂版︺﹄一一八頁︵二〇〇〇︶参照︶。 全般的な参考文献として次のものがある。 ≧一雪印○<Φ蔓﹂W邑Φ菖マN。。ω 9Φ鼻OΦユ茜薯ΦωU臥一鼻一〇冨︵N。。ω︶旧U田︾\HωU>”勾Φ89ωの900日巨ωω一9薫。村匹轟U。霊ヨ①耳8 0︾U。 。︵N。。ω︶旧国け魯国餌旨ひQ﹃99Φ島甲&8けω98巨肉Φ℃o旨山一け9国差巨器ω霞眺Φ90団N。。ω9Φ昏Uo鼠く− 讐一<ΦUの訟巳試oβ︵NOOω︶。 水野裕二隔河合祐子﹃詳説信用リスク商品ークレジット・デリバティブと証券化の実務﹄︵二〇〇二︶。徳勝礼子 ﹁クレジットデリバティブ・ランゲージ改訂版/日本企業の信用事由適用の検討﹂ドイツ証券会社O一〇σ巴竃貰ぎけ 61信託受益権をめぐる諸間題 勾Φω8吋9二〇〇二年九月二七日号。デービッドアトキンソンほか﹁銀行ーシンジケートローンは堅調﹂Oo一量轡 ω碧冴90ぴ巴国ρ9蔓勾8Φ費畠二〇〇三年四月一〇日号。 藤瀬裕司・下山豊・藤田伸一︵三井住友銀行ストラクチャードファイナンス営業部︶﹁国内完結型のクレジット・ ローン﹂金融法務事情・二〇〇三年六月二五日号、三四頁以下。 五 信託受益権の流通 62 信託方式の資産流動化においては、信託が企業などが将来的にキャッシュフローの見込める資産を他の主体 ︵ω需9巴評趨08く魯こΦ︶に譲渡し、その主体が当該資産を裏付けとして証券などを発行し、資金調達を行う ︵−︶ ものであり、SPVの役割を果たすことになる。これは、企業などが保有する資産を信託銀行に信託し、その信 託受益権を投資家へ譲渡することでファイナンスを行う。ただし、信託方式の弱点は、受益権の流通性に欠ける ことだとされている。受益権は指名債権として民法に定める指名債権譲渡の方法によらなければならないからで ある。一方、SPCを使えば、社債を発行することができ、社債は有価証券であり流通性がある。 長期または大型案件については、投資家にとっての流通性確保が重要になるので、信託方式が避けられる傾向 があるとされる。そこで、信託方式においても受益権を有価証券化し、流通性を高めたいという要望がでてくる。 問題となるのは民法・商法上の有価証券概念、すなわち、権利の移転・行使には証券の保持が必要という意味で あり、証券取引法上の有価証券概念ではない。現行法のもとにおいて、受益権を有価証券化することができない
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かという点については、学説が一致しているわけではない。現在発行されている有価証券すべてに根拠法がある ︵2︶ わけでもなく、受益権については信託行為で定めるだけで有価証券化はできるという説もある。しかし、法律ま ︵3︶ たは商慣習上の根拠を必要とする方が多数説であり、立法による明確化が期待された。 そこで、平成一二年に制定された資産流動化法においては、同法が定める要件を満たす特定目的信託︵99芭 評∈08↓霊魯ω勺↓︶については有価証券化できるとした。すなわち、特定目的信託の受益権は譲渡することが でき、その譲渡は受益証券をもってしなければならないこととし、その記載事項を法定し、占有者を適法の所持 人と推定する旨の規定を整備した︵資産流動化法一七二条、一七三条︶。受益証券は総体的に株式会社の株券と類 似の制度として設計されているが、受益証券として無記名証券のほか記名証券も認めている点が異なっている。 ︵4︶ 無記名証券では証券取引法上、適格機関投資家向けの私募ができないことに配慮したものとされている。 合同運用指定金銭信託は、多数の投資家の資産を有価証券などに合同運用するものであり、受託者である信託 銀行が運用裁量を有する仕組みである。この信託の受益権は、私法上これを有価証券化することを認める明文の 規定がなく、実際にも有価証券化されていない。これに対して、投資信託の受益権は私法上、有価証券化され︵法 二条一二項、法四九条の5参照︶、証券取引法上の有価証券にもなる︵証券取引法二条一項七号・七号の2︶。平 成一二年の改正により運用指図を行う委託業者が存在しない、すなわち、受託者が運用を行うタイプの投資信託 が初めて投資信託法上誕生した。これは一個の信託約款に基づいて、受託者が複数の委託者との間に締結する信 託契約により受け入れた金銭を、合同して、委託者の指図に基づかず主として特定資産に対する投資として運用 63信託受益権をめぐる諸問題 することを目的とするもので、委託者非指図型投資信託の制度と呼称されている︵法二条二項参照︶。この投資信 託契約は、一つの信託会社などを受託者とするのでなければ、これを締結してはならず、また元本の補填や利益 の補足は認められない︵法四九条の2︶。また、業務分野調整の見地から、受託者は、委託者非指図型投資信託の 信託財産を主として︵五〇パーセント超の意味︶有価証券に対する投資として運用することを目的とする委託者 非指図投資信託契約を締結してはならない︵法四九条の3︶。 不動産信託受益権の流通については、不動産ファイナンスの分野では重要となっている。主として不動産や不 ︵5︶ 動産受益権を運用資産とする投資法人による投資形態であるリートによる物件取得が多くなっている。プライ ︵6︶ べート・ファンドは、リートの私募形態と把握することもできるが、その法的権利形態は匿名組合出資であり証 券取引法の適用はないが、集団投資スキームの統一的な把握を志向する考え方からは、形式的な権利形態よりも 投資家の得られる経済的価値の実体において何かが問題であり、リートもプライベート・ファンドも投資家の得 られる収益の本質は変わらない。今後の課題として有価証券の範疇に入らない不動産受益権の分割方式がある。 不動産流動化、証券化の促進という観点から、信託の財産権転換機能が効を奏している。過剰規制を避けるとい う観点からも、不動産信託受益権については信託銀行が介在しているので、当然規制が存在しているものと考え ︵7︶ られていた。不動産信託受益権の設定においては、信託契約の締結時に信託銀行も関与するという意味でスクリー ニングされ、一旦成立した不動産信託契約上の受益権の流通についても、受託者の承諾を要するという特約が付 されているので、倫理的規制があった。しかし、信託業の開放とあいまって、信託銀行が当然に関与するという 64
ものでもなくなるので、明確な法規制が必要と考えられる。 ︵1︶福井修﹁資産流動化信託における法的問題﹂︵信託、一二七号、四六頁︶。 ︵2︶ 四宮和夫﹁信託法︵新版︶﹂︵有斐閣、一九八九年︶三二二頁以下、前田庸﹁手形法・小切手法﹂︵一九九九年︶一 四頁以下。 ︵3︶ 江頭憲治郎・他﹁わが国会社法制の課題﹂︵商事法務一四四五号︶三三頁以下。 ︵4︶ 神田秀樹﹁金融関連法の改正と商事信託﹂︵信託二〇三号︶二五頁。 ︵5︶ 田村幸太郎・石橋博﹁不動産ファイナンスの新潮流−不動産投資市場の課題と期待ー﹂︵信託一二七号︶二〇 頁以下。 ︵6︶ 浅野裕司﹁現代信託法における不動産投資信託﹂︵東洋法学四五巻一号、二〇〇一年︶。 ︵7︶ 田村幸太郎・石橋博、前掲、三〇頁以下。
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おわりに 信託業法の改正は、平成一六年第一五九回国会では審議が事実上見送られたが同年一二月の臨時国会で成立し、 特許などの知的財産の流動化が実現できることになった。特許などの知的財産権を対象とした信託が解禁されれ ば、証券会社によって企業が保有する特許を専門を買取って投資家に転売する投資ファンドを創設する方針を明 らかにしている。ベンチャー企業の開発資金の調達を支援するほか、大手企業が利用できないまま抱え込んでい 65信託受益権をめぐる諸間題 る休眠特許の買取も検討されていた。企業から特許を員取った場合、信託受益権の形で投資家に販売︵証券化︶ する。 特許権を信託方式で証券化できれば、特許を保有する企業にとっては、事業化を待たずに新規の研究資金を調 達できるメリットがあり、投資家も事業化が成功すれば大きな利益が期待できる。 しかし、信託業法案にミスがあった。信託業に参入したい企業に首相が免許を与える際、拒否できる条件を明 記した根拠条文などが間違っていた。同法案は平成一六年度の通常国会に提出され継続法案となったが、所管す る金融庁は、通常国会中にはミスに気づかなかった。ミスがあったのは、信託業免許の拒否理由を定めた信託業 法案の﹁第五条第二項八号ト﹂と信託業法成立で特定債権事業規制法が廃止されることに伴って証券取引法の関 連条文を改めるとした﹁付則第一九条﹂のそれぞれ一部である。法案の第五条第二項八号トでは、信託業の免許 を申請した企業の役員が五年以内に解任命令を受けた場合に免許の交付を拒否できるとしているが、解任命令の 根拠条文を﹁第一〇二条第二項﹂とすべきところ存在しない﹁第一〇一条第二項﹂と誤っている。付則一九条で は、特債法廃止に伴う証取法の改正部分が﹁第二八条の四第一項第七号﹂とすべきを、﹁第一項﹂の部分が記載さ れていない。いかに信託法と信託業法が研究されていないかの証明となっている。 さて、受益権の本質について史的展開をみてみると、受益権の本質が仮に対人権であったとしても、財産とし ての受益権自体については一般人に対する関係で対世権が成立することは考えられる。しかし、受益権がその目 的である信託財産についての対世権であるとの結論はこのことからは導くことは困難である。また、受益権が信 66
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託財産についての権利であることが論証されたとしても、対人権は特定物についての債権を内容とすることは妨 げられず、したがって、このことからも直ちに受益権が財産についての対世権であるという結論にはならないと 思う。債権説をとる者は、信託財産追及権の法則を、受益権が対人権であることの例外的な法則としてみている と考えられる。 受益権の物権性を捉えるには信託財産に対する受益権の追及効に求めることが適当と思う。この点につき、わ が国のように、どちらかというと債権説の立法を採る法制においては、信託法三一条における取消権主義により 追及効主義は採用していない。受益者の権利は、たとえ有償善意の取得者には対抗し得ないにしても、それ以外 のすべての人々に対し、信託財産に追及して対抗し得るのであり、したがって、完全なる対世権とはなし得ない にせよ、それが対世権の性質を有することは否定できないであろう。結局、受益権の性質は、その法律効果から 推考しても、対世権・対人権のいずれとも断定することは困難である。対人権と対世権との両範疇の中間に介在 するものとみなすのが当を得ていると考える。 この原稿の作成をはじめこれまで御指導を賜った水島博士は勿論のこと、現代信託法研究会の諸先生方の鴻大 なる学恩に対し衷心より感謝の念を捧げたい。浅学菲才の身を顧みず敢えて信託法の研究に手を染めることがで きたのは、水島廣雄博士のおかげである。 水島博士は、信託法の最高の権威でおられることは勿論のこと、法制審議会民法部会委員として、わが国の﹁企 業担保法﹂の生みの親として立法に御貢献された。その御業績を忘れてはならない。その御研究である﹁浮動担 67信託受益権をめぐる諸間題 保の研究﹂は毎日学術賞により日本学術会議の高い評価があったことが証明されている。個人の研究が法律に なったのもわが国で初めてである。また、大学教授として各大学の卒業生の就職に御助力下さり、その就職でき た学生の総数は莫大で記録は、今後とも更新されることはないであろう。多くの学究者も育成され、東洋大学法 学部の創設もされた。 財界においても企業拡大に努力され、株式会社﹁そごう﹂を最大店舗の百貨店にされ、社長から会長になられ たが、旧興銀の頭取や政党の国会議員の謀略により乗取られた。銀行から代表取締役が書類の形式上、少額な個 人保証をすることは当時、企業拡張、出店に際して商慣習として一般に行われていた。それが証拠に個人資産調 査は銀行によって一切行われていない。それを後日、持ち出し百数十億円を支払えと強要した。このような超高 額は異常であり、銀行の﹁権利濫用﹂である。個人財産もすべて差押え訴訟漬けにして、経営されていた企業は 乗取られた。その策略の裏には、西武百貨店の経営破綻、西武グループの経営悪化状態があった。裁判所もそれ を見抜けなかったところに間題がある。銀行の社会的責任を厳しく間う必要があり﹁企業乗取り﹂と﹁公序良俗 違反﹂を社会正義に照らし処断すべきである。 小生は、二六歳で大学の教壇に立ち七〇歳になった。小さな原稿も数多く書くことができたことも幸いであり 感謝している。﹁東洋法学﹂の本稿をもってすべて論文は終了する。支援してくれた学友、家族に感謝するととも に、恩師の先生方に敬意を表したい。神仏のご加護に深謝し闘病生活を続けることにする。 68