エストニア共和国国際私法の改正について―新旧法
の比較検討―
著者
笠原 俊宏
著者別名
Kasahara Toshihiro
雑誌名
東洋法学
巻
56
号
3
ページ
127-167
発行年
2013-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00004103/
目 次 一 前書き 七 契約外債務 二 改正の経緯 八 婚姻関係 三 総則 九 親子関係 四 人事 一〇 相続 五 物権 一一 後書き 六 契約 (参考資料)エストニア共和国国際私法
一
前書き
一 九 九 一 年 の ソ ビ エ ト 連 邦 崩 壊 に 伴 う エ ス ト ニ ア 共 和 国 の 分 離・ 独 立 後 に お け る 同 共 和 国 国 際 私 法 立 法 で あ る 「民 法 典 の 一 般 原 則 に 関 す る 法 律」 (一 九 九 四 年 六 月 二 八 日 国 会 可 決、 一 九 九 四 年 七 月 一 三 日 エ ス ト ニ ア 共 和 国 大 統 領 裁 決 第 三 八 三 号 公 布、 官 報 一 九 九 四 年 第 一 部 第 五 三 号 第 八 八 九 項、 以 下、 「旧 法」 と す る) に つ い て は、 乏 し い 外 国 資 料 《 研究ノート 》エストニア共和国国際私法の改正について
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新旧法の比較検討
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笠
原
俊
宏
( Estland: Neues IPR ― Law on the general principles of the Civil Code, Praxis des internationalen Privat- und Verfahrens-rechts 1996, S.439ff. ) に 依 拠 さ れ な が ら も、 既 に 紹 介 さ れ て い る と こ ろ で あ る (拙 稿「外 国 国 際 私 法 立 法 に 関 す る 研 究 ノ ー ト( 6 ) ― エ ス ト ニ ア の 国 際 私 法 規 定(一 九 九 四 年) 」 大 阪 国 際 大 学 紀 要 国 際 研 究 論 叢 一 一 巻 四 号 八 七 頁 以 下) 。 そ れ により、同共和国における新たな法体系の整備における特徴として、ソビエト連邦による併合前への懐旧的な回帰 を匂わせつつ、総体的には、当事者利益の保護に向けられた択一的連結の規則、及び、当事者意思の尊重としての 当 事 者 自 治 の 立 場 が 導 入 さ れ て お り、 欧 州 諸 国 の 国 際 私 法 立 法 に 見 ら れ る 趨 勢 に 従 っ て い る こ と が 指 摘 さ れ、 ま た、それとともに、その新しい国際私法立法において徹底した住所地法主義が採用されている点において、同じく バルト海沿岸諸国であるフィンランドやスウェーデン等の北欧型国際私法と共通する点が見られることも、その特 徴として指摘されたところである (拙稿・前掲九〇頁) 。 しかし、その後、二〇〇二年三月二七日、エストニア共和国国際私法における更なる展開として、新しい国際私 法立法「国際私法に関する法令」 (以下、 「新法」とする) が成立して、それが同年七月一日から施行され、その後、 二 〇 〇 四 年 四 月 二 二 日 及 び 二 〇 〇 九 年 一 一 月 一 八 日 の 二 度 の 改 正 を 経 て、 現 在 に 至 っ て い る。 形 式 的 に は、 旧 法 が、 「民 法 典 の 一 般 原 則 に 関 す る 法 律」 の 一 部 (第 五 部「国 際 私 法」 第 一 〇 章 な い し 第 一 五 章) と し て、 一 般 規 定、 人 及 び 法 律 行 為、 家 族 法、 物 権、 相 続 権、 債 務 法 (契 約、 不 法 行 為 及 び 不 当 利 得) に 関 す る 四 四 箇 条 が 置 か れ て い た の に対して、新法は、独立した国際私法典として編成され、より精緻化された六七箇条によって構成されている。 一〇年間も経たずに実行された大改正は、如何なる目的をもってなされたものであるか、そして、それにより、 如何なる変更がもたらされているか。本稿においては、新法と旧法とを比較することにより、それらの点について 解明し、そして、わが国際私法の今後のあり方を探究するための一つの手懸かりとしたい。
二
改正の経緯
エ ス ト ニ ア の 国 際 私 法 立 法 の 歴 史 を 遡 れ ば、 先 ず、 一 八 六 四 年 の バ ル チ ッ ク 私 法 典 (「リ ヴ ォ ニ ア、 エ ス ト ニ ア 及 びクールランド民事立法」 ) 中の諸規定がそれである ( A. Makarov, Quellen des internationalen Privatrechts, 2 Aufl., Bd. I ( Gesetzestexte ), 1953, 16. Estland ( LʼEstonie ), S.1. ) 。 同 法 典 は、 旧 プ ロ シ ア・ ラ ン ト 普 通 法 と 類 似 す る 内 容 を 有 す るものであり、一八六五年に施行された。その後、一九一八年にエストニアが独立した後、エストニア民法典の制 定が着手された。一九四〇年には、前記バルチック私法典、ドイツ民法典、スイス民法典に倣った草案が完成され たが、同年、エストニアがソビエト連邦に併合されたため、その草案は成立することなく、再び独立するまで施行 さ れ て い た 国 際 私 法 規 則 は、 エ ス ト ニ ア・ ソ ビ エ ト 社 会 主 義 共 和 国 民 法 典 (一 九 六 四 年 六 月 一 二 日 採 択、 一 九 六 五 年 一月一日施行) 中のそれで あ っ た ( Karin Sein, The development of private international law in Estonia, Yearbook of pri -vate international law 2008, p.4 59 e t s eq . )。一九九一年の独立後、新しいエストニア民事法の起草が開始されたが、そ の際、指針とされたのは、一九九二年に、エストニア共和国最高会議によって示された「法体系の準備は、ソビエ トによる占領前のエストニアにおいて適用された原則によって導かれなければならない」という命令であり、従っ て、バルチック・ドイツ法の一部を構成していたエストニア法においては、ドイツ法系の特徴が原則となっていた ( Sein, op. cit., p.460. ) 。 か よ う な 情 況 の も と に、 エ ス ト ニ ア 国 際 私 法 の 法 源 と し て、 一 九 九 四 年 に 採 択 さ れ た の が 旧 法 で あ り、 ま た、 そ れ と と も に、 ハ ー グ 国 際 私 法 条 約 や 国 際 物 品 売 買 契 約 に 関 す る 国 連 条 約 (ウ ィ ー ン 売 買 条 約) 等の条約がある (Sein, op. cit., p.460.
)
。
野の改正が推進されるに従い、旧法の現代化の要請も高まり、その結果、国際私法規定が独立した法典として改正 されることが決定され、一九九七年には、法務省の作業班が新しい国際私法の起草を開始した。そして、その際に も、エストニア法の伝統に従い、ドイツ法、オーストリア法、スイス法が手本とされた ( Sein, op. cit., p.460. ) 。作業 班においては、当初、抵触規則の他、国際的裁判管轄規則及び外国裁判承認・執行規則を含むスイス国際私法に倣 うことが考慮されたが、最終的に、新法は、ドイツ法及びオーストリア法に倣っており、国際民事訴訟法問題に関 しては、主として、二〇〇五年のエストニア民事訴訟法典、条約、欧州連合規則によって規律されるに至っている (
Sein, op. cit., p.461.
) 。
三
総則
先 ず、 新 法 第 一 条 は、 法 令 の 適 用 範 囲 と し て、 「法 律 関 係 が 一 国 よ り 多 く の 法 律 と 関 連 す る 場 合」 と す る。 こ れ に相応する旧法第一二四条第一項は、より具体的に、⑴法律関係の当事者の一方でも外国人である場合、⑵法律関 係に関連する物がエストニア共和国の領域外に所在する場合、⑶法律関係がエストニア共和国の領域外において発 生、 変 更 又 は 終 了 す る 場 合 を 列 記 し て い た。 又、 同 条 第 二 項 は、 国 の 定 義 と し て、 「独 立 の 法 体 系 が 実 施 さ れ て い る 領 域 を い う。 」 と 定 め て い た が、 こ の 規 定 は、 未 承 認 国 家 法 の 適 用 の 正 当 性 の 根 拠 と し て 援 用 す る こ と が で き る と見られる規定であった。 旧法第一二五条が、 「外国法の適用の根拠」として、 「本法、他の何れかのエストニア法、エストニアと外国との 間において締結された合意、エストニアにおいて認められた国際的慣行並びに法律、外国との協定又は慣行に反し な い 法 律 行 為 に よ っ て 規 定 さ れ て い る と き は、 外 国 法 が 法 律 関 係 に 適 用 さ れ る も の と す る。 」 と 定 め て い た 規 定は、新法第二条第一項においては、寧ろ、国際私法の強行性を明らかにする規定となっている。 次 に、 反 致 に 関 す る 旧 法 第 一 二 六 条 第 一 項 が、 「本 法 又 は 他 の 何 れ か の エ ス ト ニ ア 法 が 外 国 法 の 適 用 を 規 定 し、 又、 そ の 外 国 法 が エ ス ト ニ ア 法 の 適 用 を 規 定 す る と き は、 エ ス ト ニ ア 法 が 適 用 さ れ る も の と す る。 」 と す る 規 定 は、 新 法 第 六 条 第 一 項 と 同 様 で あ る。 そ れ に 対 し て、 旧 法 第 一 二 六 条 第 二 項 が、 「本 法 又 は 他 の 何 れ か の エ ス ト ニ ア法が外国法の適用を規定し、又、その外国法が第三国法の適用を規定するときは、エストニア法が適用されるも の と す る。 」 と 定 め て、 転 致 を 禁 止 し て い た こ と は、 新 法 第 六 条 第 二 項 に お い て も 同 様 で あ る が、 そ の 場 合 に、 エ ストニア法に依るべきとした立場は採られていない。しかし、学説上の解釈として、同様に、エストニア法に依る ものとされている (
Sein, op. cit., p.461.
) 。 又、旧法第一二七条が、 「外国法の解釈」として、 「エストニアにおける外国法の解釈にあたっては、当該国にお ける同法の解釈及び適用上の実務から導かれるものとする。 」 (第一項) とし、 「外国法に基づく請求を行なう者は、 同 法 の 条 文 又 は 同 法 の 適 用 に 関 連 す る 他 の 情 報 を 提 供 す る こ と を 求 め ら れ る こ と が で き る。 」 (第 二 項) と し、 「外 国法の解釈に関する情報を得るため、裁判所、仲裁裁判所及び中央政府又は地方政府の組織は、法務省、外務省に 依 頼 す る か、 又 は、 専 門 家 を 利 用 す る こ と が で き る。 」 (第 三 項) と し、 そ し て、 「外 国 法 の 内 容 を 見 出 す こ と が で き な い と き は、 エ ス ト ニ ア 法 が 適 用 さ れ る も の と す る。 」 (第 四 項) と す る 諸 規 定 は、 新 法 第 四 条 に お い て、 ほ ぼ 同 一の内容の規定として受け継がれている。 更に、旧法第一二八条が、 「外国法の適用に関する制限」として、 「外国法がエストニア法、組織の秩序又は善良 な道徳に反するとき、それは適用されてはならず、又、同法から生じる権利及び義務はエストニアにおいて有効と は 見 做 さ れ な い。 そ の 場 合 に お い て は、 エ ス ト ニ ア 法 が 適 用 さ れ る も の と す る。 」 と す る 規 定 の 公 序 概 念 は、 新 法
第 七 条 に お い て、 「エ ス ト ニ ア 法 の 主 要 な 原 則 (公 の 秩 序) 」 と い う よ う に、 表 現 が 変 更 さ れ て い る。 し か し、 エ ス トニア法が補充法とされることについては、変わりはない。 尚、旧法第一二九条は、 「外国との協定の適用可能性」として、 「エストニアと外国との間において締結された協 定が民法典の一般原則に関する法律と異なる規定を含むときは、外国との協定上の規定が適用されるものとする。 」 と規定していたが、それに相当する規定は新法には置かれていない。それに対して、新法第三条は、不統一法国法 の指定に関する規定を新設し、間接指定主義を原則としながら、密接関連性の原則に依拠した直接指定をもって補 充している。また、新法には、法律行為の方式に関する第八条、代理に関する第九条等が追加されている。これら の規定は、旧法上、それぞれ、法律行為、債務法の章に置かれていた規定である。
四
人事
先 ず、 「人」 に つ い て、 旧 法 第 一 三 〇 条 は、 「外 国 人」 の 概 念 と し て、 「本 法 に お い て 使 用 さ れ て い る 意 味 に お け る 外 国 人 と は、 住 所 が エ ス ト ニ ア 外 に あ る 自 然 人、 又 は、 所 在 地 が エ ス ト ニ ア 外 に あ る 法 人 を い う。 」 と 規 定 し て いたが、それに相当する規定は、新法には置かれていない。それに対して、自然人の居所に関して新設された新法 第一〇条は、エストニア法上の属人法決定基準である居所につき、領土法説の立場から、エストニア法上の概念が 基準とされることを規定している。住所主義はエストニア法において一貫して採用されてきた立場である。それは 前出バルチック私法典以来、一九四〇年草案、そして、旧法においても同様であり、部分的に国籍主義が採用され た の は、 ソ ビ エ ト 連 邦 に 併 合 さ れ た 時 期 の み で あ る ( Sein, op. cit., p.462. ) 。 か よ う に し て、 旧 法 第 一 三 一 条 第 一 項 は、 「外国自然人の権利能力及び法律行為能力は、その者の住所地によって確定されるものとする。 」と規定していたが、これは、新法第一二条第一項に受け継がれている。 そ れ に 対 し て、 自 然 人 の 国 籍 は、 新 法 上、 相 続 の 準 拠 法 選 択 (新 法 第 二 五 条) 、 及 び、 婚 姻 の 一 般 的 効 力 の 準 拠 法 決 定 の 補 則 (新 法 第 五 七 条 第 二 項) に お い て 採 用 さ れ て い る が、 そ の 概 念 の 決 定 に つ い て は、 準 拠 法 説 ( lex causae ) の立場に依拠される ( Sein, op. cit., p.463. ) 。重国籍の場合の決定基準は、最密接関連性であり、エストニア国籍の優 先は認められていない (新法第一一条第二項) 。 次 に、 法 人 に つ い て 言 え ば、 旧 法 第 一 三 三 条 が、 「エ ス ト ニ ア に お け る 法 人 の 設 立 は、 エ ス ト ニ ア 法 に よ っ て 決 定される。 」とし、又、旧法第一三四条が、 「外国法人の中心的管理が所在する国の法律が、その法人の権利能力及 び そ の 法 律 行 為 能 力 に 適 用 さ れ る も の と す る。 」 (第 一 項) と し、 又、 「外 国 法 人 の 主 た る 活 動 が そ の 中 心 的 管 理 が 所 在 す る 国 に お い て 行 な わ れ な い と き は、 そ の 主 た る 活 動 が 行 な わ れ る 国 の 法 律 が 適 用 さ れ る も の と す る。 」 (第 二 項) と す る 規 定 は、 新 法 第 一 四 条 に も 受 け 継 が れ て い る。 こ れ ら の 諸 規 定 に つ い て は、 設 立 に 関 す る 設 立 地 法 主 義、管理に関する本拠地法主義、活動に関する行為地法主義という分割主義が採用されていると言うことができる (
Sein, op. cit., p.463.
参照) 。 この他、旧法第一三五条は、 「エストニアにおける外国法人の承認」として、 「外国法人がエストニア共和国にお いて承認され、又、法律又は契約によって別段に定められていない限り、それはエストニアの法人によって享受さ れ て い る 権 利 能 力 及 び 法 律 行 為 能 力 と 等 し い そ れ ら を 享 受 す る。 」 と 規 定 し な が ら、 相 互 主 義 か ら、 旧 第 一 三 六 条 が、 「政 府 は、 エ ス ト ニ ア 共 和 国 の 市 民、 永 住 者 及 び 法 人 の 権 利 能 力 及 び 法 律 行 為 能 力 に 制 限 を 課 し た 諸 国 の 人 の 権 利 能 力 及 び 法 律 行 為 能 力 に 反 対 制 限 を 課 す こ と が で き る。 」 と 規 定 し て い た が、 新 法 に は、 そ の よ う な 報 復 的 な 規定は置かれていない。
又、 人 格 権 に 関 し て、 旧 法 第 一 三 七 条 が、 「人 格 権 が 侵 害 さ れ た と き は、 被 害 者 の 選 択 に よ り、 請 求 権 の 根 拠 と な る 行 為 が 行 な わ れ た 国 の 法 律、 又 は、 そ の 者 の 永 住 地 国 の 法 律 が 適 用 さ れ る も の と す る。 」 と 定 め、 そ し て、 旧 法 第 一 三 八 条 が、 「人 格 権 を 保 護 す る た め、 裁 判 所 が、 情 況 に よ り、 緊 急 な 措 置 が そ の 権 利 を 保 護 す る た め に 執 ら れ な け れ ば な ら な い こ と を 認 め る と き は、 そ れ は エ ス ト ニ ア 法 を 適 用 す る こ と が で き る。 」 と 定 め て い た 諸 規 定 も、新法には置かれていない。 し か し、 知 的 財 産 権 に つ い て は、 旧 法 第 一 三 九 条 が、 「法 律、 又 は、 エ ス ト ニ ア と 外 国 と の 間 に お い て 締 結 さ れ た 協 定 に よ っ て 別 段 に 定 め ら れ て い な い 限 り、 エ ス ト ニ ア 法 が 知 的 財 産 権 に 適 用 さ れ る も の と す る。 」 と す る 規 定 は、新法第二三条において、物権に関する法律関係として、保護地法主義の立場へと変更されている。
五
物権
先ず、エストニア国際物権法における基本原則は物の所在地法主義である ( Sein, op. cit., p.464. ) 。旧法第一五三条 に お い て、 「物 権 は 物 が 所 在 す る 国 の 法 律 に よ っ て 決 定 さ れ る。 」 (第 一 項) と し、 「物 が 不 動 産 又 は 動 産 の 何 れ で あ る か は、 物 が 所 在 す る 国 の 法 律 に よ っ て 確 定 さ れ る。 」 (第 二 項) と し、 「エ ス ト ニ ア 外 に お い て 輸 送 中 で あ る 動 産 は、 当 事 者 が 別 段 に 合 意 し て い な い 限 り、 動 産 の 目 的 地 の 法 律 に 従 う。 」 (第 三 項) と し、 そ し て、 「国 の 登 録 簿 に 登 録 さ れ た 船 舶 又 は 航 空 機 に つ い て の 物 権 は、 船 舶 又 は 航 空 機 が 登 録 さ れ た 国 の 法 律 に よ っ て 確 定 さ れ る。 」 (第 四 項) と す る 規 定 に 続 い て、 旧 法 第 一 五 四 条 が、 「物 権 の 発 生 及 び 消 滅 は、 物 が 物 権 の 発 生 及 び 消 滅 の た め の 原 因 と な る 行 為 又 は 事 件 の 間 に 所 在 し た 国 の 法 律 に よ っ て 確 定 さ れ る。 」 と 規 定 し、 そ れ に 続 い て、 旧 法 第 一 五 五 条 が、 物 権 の 動 的 抵 触 の 場 合 に お け る「物 権 の 保 護 に 適 用 さ れ る べ き 法 律」 に つ き、 「物 権 に 関 す る 請 求 は、 権 利 者 の 選択 に よ り、 物 が 所 在 す る 国 の 法 律、 又 は、 請 求 が 裁 判 所 に お い て 審 理 さ れ る 国 の 法 律 の 何 れ か に 従 う。 」 (第 一 項) と し、 又、 「輸 送 手 段 に 関 す る 物 権 的 請 求 は、 権 利 者 の 選 択 に よ り、 輸 送 手 段 が 国 の 登 録 簿 に 登 録 さ れ た 国 の 法 律 に よ っ て も 決 定 さ れ る こ と が で き る。 」 (第 二 項) と 規 定 し て い た。 こ れ ら の 諸 規 定 は、 新 法 第 一 八 条、 第 二 〇 条、 第 二 二 条 に 相 当 す る も の で あ る。 但 し、 制 限 的 当 事 者 自 治 は、 新 法 第 二 〇 条 に お い て、 運 送 中 の 物 の 仕 向 地 国 法 (第一項) 、又は、物の本源国法若しくは契約の準拠法 (第二項) に縮減されている (
Sein, op. cit., p.465.
) 。 又、 証 券 に 対 す る 物 権 に つ い て は、 旧 法 第 一 五 六 条 が、 「保 証 証 券 及 び 持 参 人 払 式 証 券 は、 当 事 者 に よ っ て 別 段 に 合 意 さ れ て い な い 限 り、 証 券 が 発 行 さ れ た 国 の 法 律 に 従 う。 」 (第 一 項) と し、 又、 「証 券 の 譲 渡 は、 次 に 掲 げ る 法律に従う。⑴保証証券については、当事者によって別段に合意されていない限り、証券が発行された国の法律、 ⑵ 持 参 人 払 式 証 券 に つ い て は、 証 券 が 所 在 す る 国 の 法 律」 (第 二 項) と 規 定 し て い た。 そ れ に 対 し て、 新 法 は、 物 を 伴 う 証 券 (新 法 第 二 一 条) 及 び 登 録 証 券 (第 二 三 条 の 一) に 特 化 し て、 そ れ ら に 関 す る 詳 細 な 規 定 を 置 い て い る。 後者は、二〇〇二年の欧州連合指令第四七号との調和のために、二〇〇四年の改正によって加えられたものである (
Sein, op. cit., p.464 et seq.
) 。
六
契約
先 ず、 契 約 に 関 す る 基 本 規 定 と し て、 旧 法 第 一 四 一 条 が、 「法 律 行 為 の 内 容 は、 当 事 者 が 適 用 す る こ と を 合 意 し た 国 の 法 律 に よ っ て 決 定 さ れ る。 」 (第 一 項) と し、 「当 事 者 は、 全 部 又 は 一 部 の 法 律 行 為 へ の 特 定 の 国 の 法 律 の 適 用 に つ い て 合 意 す る こ と が で き る。 」 (第 二 項) と し、 「当 事 者 間 の 合 意 が な い と き は、 法 律 行 為 が 開 始 さ れ た 場 所 の 法 律 が 適 用 さ れ る も の と す る。 」 (第 三 項) と し、 「法 律 行 為 の 履 行 の 場 所 は、 法 律 行 為 か ら 生 じ る 債 務 と 最 も 密接な関連を有する国の法律によって確定される。債務は、債務の履行者の住所又は所在地が所在する国の法律と最 も 密 接 な 関 連 を 有 す る も の と 見 做 さ れ る。 」 (第 四 項) と し、 そ し て、 「仲 裁 裁 判 所 に よ っ て 到 達 さ れ た 合 意 は、 当 事者によって別段に合意されていない限り、法律行為の内容に適用される国の法律によって決定される。 」 (第五項) と 規 定 し、 次 い で、 方 式 に つ き、 旧 法 第 一 四 二 条 が、 「法 律 行 為 の 方 式 は、 法 律 行 為 が 開 始 さ れ た 国 の 法 律 に よ っ て 決 定 さ れ る。 」 (第 一 項) と し、 「当 事 者 は、 法 律 行 為 の 方 式 が、 法 律 行 為 が 履 行 さ れ る べ き 国 の 法 律、 当 事 者 の 住所若しくは所在地の法律、又は、法律行為の目的である財産が所在する国の法律によって決定されることを合意 す る こ と が で き る。 」 (第 二 項) と し、 「当 事 者 が 法 律 行 為 の 方 式 に 適 用 さ れ る べ き 法 律 に つ い て 合 意 し て お ら ず、 かつ、法律行為が第一項において言及されている方式に従っていない場合において、法律行為がエストニア法又は 法律行為の内容に適用されるべき法律上の要件に従っているときは、法律行為は方式の違反のみを理由として無効 を 宣 言 さ れ て は な ら な い。 」 (第 三 項) と し、 そ し て、 「目 的 が エ ス ト ニ ア に 所 在 す る 不 動 産、 又 は、 エ ス ト ニ ア に お い て 登 録 さ れ た 船 舶 若 し く は 航 空 機 で あ る 法 律 行 為 の 方 式 は、 エ ス ト ニ ア 法 に よ っ て 決 定 さ れ る。 」 (第 四 項) と 規定していた。新法において、法律行為の方式に関する規定が総則規定として置かれていることは前述したところ である。その内容は、旧法に比して、極めて簡明なものとなっている。 次 に、 各 個 契 約 に 関 し、 先 ず、 旧 法 第 一 五 九 条 が、 売 買 契 約 に つ い て、 「当 事 者 が、 不 動 産 売 買 契 約 に お い て、 何れの国の法律が契約の内容に適用されるべきかを合意しなかったときは、物が所在する国の法律が適用されるも の と す る。 」 (第 一 項) と し、 「当 事 者 が、 動 産 売 買 契 約 に お い て、 何 れ の 国 の 法 律 が 契 約 の 内 容 に 適 用 さ れ る べ き かを合意しなかった場合においては、契約締結の当時における売り主の住所地法、又は、次に掲げるときは、契約 締結の当時における買い主の住所若しくは所在地の法律が適用されるものとする。⑴契約がその国において締結さ
れたとき、又は、⑵契約が、物がその国において引き渡されるべきことを約定するとき」 (第二項) とし、そして、 「競 売、 競 争 的 入 札 又 は 株 式 取 引 所 に お い て 締 結 さ れ た 契 約 が、 何 れ の 国 の 法 律 が 適 用 さ れ る べ き か を 確 定 し な い ときは、競売又は競争的入札が開催された国の法律、又は、株式取引所が所在する国の法律が適用されるものとす る。 」 (第 三 項) と 規 定 し て い た。 又、 旧 法 第 一 六 〇 条 が、 消 費 者 と 販 売 者 と の 間 の 契 約 に つ い て、 「当 事 者 が、 消 費者と販売者との間の契約において、何れの国の法律が契約の内容及び方式に適用されるべきかを合意しなかった と き は、 エ ス ト ニ ア 法 が 適 用 さ れ る も の と す る。 」 (第 一 項) と し、 又、 「消 費 者 及 び 販 売 者 が 適 用 さ れ る べ き 法 律 について合意したときは、これは消費者の権利のためにエストニアの消費者保護法によって定められたその者の権 利に影響を及ぼさないものとする。 」 (第二項) と規定していた。 更 に、 旧 法 第 一 六 一 条 が、 「代 理 の 委 任、 並 び に、 代 理 本 人 と そ の 者 の 代 理 人 の 相 互 の 権 利 及 び 義 務 は、 代 理 本 人 又 は そ の 者 の 代 理 人 と 第 三 者 が 適 用 す る こ と を 合 意 し た 国 の 法 律 に 従 う。 」 (第 一 項) と し、 「当 事 者 間 に お け る 合意がない場合において、代理人又は第三者の住所又は所在地が、代理人が委任から生じる行為を遂行する国に在 る と き は、 同 国 の 法 律 が 適 用 さ れ る も の と す る。 」 (第 二 項) と し、 「代 理 委 任 権 の 書 式 及 び そ の 有 効 期 間 は、 代 理 委 任 権 が 創 設 さ れ た 国 の 法 律 に よ っ て 決 定 さ れ る。 」 (第 三 項) と し、 そ し て、 「代 理 委 任 権 の 書 式 が そ れ が 発 行 さ れた国の法律に従っていない場合において、それがエストニア法に従っているときは、代理委任権は有効とする。 」 (第四項) と規定していた。代理については、新法が総則として規定していることはすでに述べたところである。 そして、 「各個の類型の契約に適用されるべき法律」について、旧法第一六二条が、 「当事者が何れの国の法律を 適用するかを合意しなかったときは、一定の契約の内容は、貸し主、賃貸人、許可者、寄託物保有者、取次商人、 運 送 業 者、 荷 送 人、 保 険 業 者 又 は 贈 与 者 の 住 所 又 は 所 在 地 の 法 律 に 従 う。 」 (第 一 項) と し、 「第 一 項 に お い て 言 及
されていない契約は、その履行が契約について主要である者の住所又は所在地の法律によって決定される。債務の 履 行 は、 そ れ が 特 定 の 類 型 の 契 約 に 特 徴 的 で あ る と き、 主 要 と す る。 」 (第 二 項) と し、 そ し て、 「第 一 項 及 び 第 二 項において言及されている契約の当事者が法人であるときは、法人の所在地の国の法律が第一三四条第二項によっ て定められている場合において適用される。 」 (第三項) と規定していた。 それに対して、新法は一九八〇年のローマ条約に倣って旧法を改正しているが、二〇〇四年五月一日、エストニ アが欧州連合に加盟した結果、二〇〇六年四月一九日、エストニアは同条約を批准している。従って、それによっ て規律される法律関係に関する新法上の規定は適用されないこととなる。比較国際私法立法上、新法に特異と見ら れ る 新 法 第 四 〇 条 な い し 第 四 七 条 の 諸 規 定 も、 「欧 州 保 険 契 約 法」 に 適 合 す る こ と を 目 し た も の で あ っ た が、 二〇〇九年一二月一七日以後、ローマⅠ規則がローマ条約に代わって施行されることに伴い、ローマⅠ規則第七条 に取って代わられることとなる (
Sein, op. cit., p.466 et seq.
) 。
七
契約外債務
先 ず、 基 本 規 定 と し て、 旧 法 第 一 六 四 条 が、 不 法 行 為 に つ い て、 「不 法 行 為 に 因 る 損 害 の 賠 償 に つ い て の 請 求 権 は、 請 求 権 を 発 生 さ せ る 行 為 又 は 事 件 が 生 じ た 国 の 法 律 に 従 う。 」 (第 一 項) と し、 「行 為 又 は 事 件 が 損 害 の 賠 償 に ついての請求権の根拠であるか否かの事実は、行為が実行されたか、又は、事件が発生した国の法律によって確定 さ れ る。 」 (第 二 項) と し、 そ し て、 「損 害 の 賠 償 に つ い て の 請 求 権 を 発 生 さ せ た 行 為 又 は 事 件 が 何 れ か の 国 に お い て生じながら、被った損害が他の国において生じたときは、被害者の要求により、損害が惹起された国の法律が適 用 さ れ る こ と が で き る。 」 (第 三 項) と 規 定 し、 又、 旧 法 第 一 六 五 条 が、 「損 害 に つ い て の 請 求 権 へ の エ ス ト ニ ア 法の 適 用」 と し て、 「外 国 に お い て 被 っ た 損 害 の 賠 償 に つ い て の 請 求 権 は、 加 害 者 及 び 被 害 者 の 住 所 又 は 所 在 地 が エ ス ト ニ ア に あ る と き は、 被 害 者 の 要 求 に よ り、 エ ス ト ニ ア 法 に よ っ て 決 定 さ れ る こ と が で き る。 」 (第 一 項) と し、 「エ ス ト ニ ア の 裁 判 所 又 は 仲 裁 裁 判 所 が 損 害 に つ い て の 賠 償 に 外 国 の 法 律 を 適 用 す る と き は、 損 害 の 範 囲 は エ ス ト ニアにおいて確立された実務に従って決定される。 」 (第二項) と規定していた。 そ し て、 特 殊 な 不 法 行 為 に つ い て、 旧 法 第 一 六 六 条 が、 「商 品 又 は サ ー ビ ス の 購 入 時 に 消 費 者 に よ っ て 被 ら れ た 損害の賠償についての請求権は、消費者の要求により、次に掲げる法律によって決定される。⑴消費者の住所地国 の法律、又は、⑵製造業者又はサービス提供者の住所又は所在地の国の法律、又は、⑶第一三四条第二項において 言及されている場合において、製造業者又はサービス提供者が法人であるときは、その法人の国の法律、又は、⑷ 消費者が商品を取得したか、又は、サービスを提供された国の法律」と規定していた。 新法においては、契約外債務について、一九九九年のドイツ民法施行法第三八条ないし第四二条に倣った規則を 導入している。しかし、それらの諸規定も、二〇〇九年一月一一日に、いわゆるローマⅡ規則が欧州連合において 施行されることにより、その大部分は重要性を失うこととなる。但し、同規則の射程範囲に入らない領域、すなわ ち、欧州連合に加盟していない諸国との間における関係、及び、施行前の契約外関係については、新法の存在意義 は失われない (
Sein, op. cit., p.467 et seq
) 。
八
婚姻関係
先ず、 「婚姻の締結に適用されるべき法律」として、旧法第一四三条は、 「婚姻の締結のための要件は、婚姻を開 始 す る 両 当 事 者 の そ れ ぞ れ の 住 所 地 の 法 律 に よ っ て 決 定 さ れ る。 」 (第 一 項) と し、 「婚 姻 の 締 結 の 方 式 は、 婚 姻 が締 結 さ れ る 国 の 法 律 に 従 う。 」 (第 二 項) と し、 そ し て、 「外 国 に お い て 締 結 さ れ た 婚 姻、 又 は、 エ ス ト ニ ア に 所 在 する外国の領事館において締結された婚姻は、それが第一項及び第二項において言及されている要件、又は、婚姻 を 開 始 す る 者 の 市 民 権 の 法 律 上 の 要 件 に 従 っ て い る と き は、 エ ス ト ニ ア に お い て 有 効 と 見 做 さ れ る。 」 (第 三 項) と 規定していた。新法がこれらの諸規定と異なる点は、婚姻の実質的要件について、将来の夫婦の居所地法が適用さ れる点である (新法第五六条第一項) 。 次 に、 婚 姻 の 効 力 と し て、 旧 法 第 一 四 六 条 は、 「夫 婦 の 身 分 的 権 利 及 び 財 産 的 権 利 は、 夫 婦 の 共 通 住 所 地 法 に 従 う。 」 (第 一 項) と し、 「夫 婦 が 異 な る 国 に 居 住 し て い な が ら も、 共 通 の 市 民 権 を 共 に す る と き は、 そ れ ら の 者 の 身 分 的 権 利 及 び 財 産 的 権 利 は 市 民 権 の 法 律 に 従 う。 」 (第 二 項) と し、 「夫 婦 が 異 な る 国 に 居 住 し て お り、 か つ、 そ れ ら の 者 が 異 な る 市 民 権 を 保 有 す る と き は、 そ れ ら の 者 の 身 分 的 権 利 及 び 財 産 的 権 利 は、 最 後 の 共 通 住 所 地 法 に 従 う。 夫 婦 が 共 通 住 所 を 有 し な か っ た と き は、 婚 姻 が 締 結 さ れ た 国 の 法 律 が 適 用 さ れ る も の と す る。 」 (第 三 項) と し、 そ し て、 「不 動 産 に 関 す る 夫 婦 の 財 産 的 権 利 は、 不 動 産 が 所 在 す る 国 の 法 律 に 従 う。 」 (第 四 項) と 規 定 し て い た。それに対して、新法第五七条第四項において改正が加えられている点は、夫婦に共通住所も、共通国籍もない ときは、最密接関係法によって補充される点である (
Sein, op. cit., p.469 et seq.
) 。 又、 「離 婚 に 適 用 さ れ る べ き 法 律」 と し て、 旧 法 第 一 四 四 条 は、 「離 婚 は 夫 婦 の 共 通 住 所 地 法 に 従 う。 」 (第 一 項) と し、 「夫 婦 が 異 な る 国 に 居 住 し て い る と き は、 最 後 の 共 通 住 所 地 法 が 適 用 さ れ る も の と す る。 但 し、 夫 婦 双 方 の 住所地法によって許容されるときにのみ、離婚は可能とする。夫婦が共通住所を有しなかったときは、婚姻を解消 さ せ る 機 関 が 所 在 す る 国 の 法 律 が 適 用 さ れ る も の と す る。 」 (第 二 項) と し、 そ し て、 「外 国 に お い て 行 な わ れ た 離 婚は、それが、離婚が行なわれた国の法律に従っているときは、エストニアにおいて有効と見做される。 」 (第三項)
と 規 定 し て い た。 新 法 に お い て 新 し く 導 入 さ れ た の は、 婚 姻 の 一 般 的 効 果 と 同 一 の 規 律 に 依 る と す る 規 則 (新 法 第 六 〇 条 第 一 項) で あ り、 又、 離 婚 保 護 の た め に エ ス ト ニ ア 法 に 依 る べ き 場 合 を 定 め て い る 規 則 (同 条 第 二 項) で あ る ( Sein, op. cit., p.470. ) 。 尚、 旧 法 第 一 四 五 条 は、 婚 姻 の 無 効 に つ き、 婚 姻 の 締 結 の 準 拠 法 に 従 う こ と を 規 定 し て い た が、新法第六〇条第三項においても同様である。
九
親子関係
先ず、 「親子関係の確定に適用されるべき法律」として、旧法第一四八条は、 「親子関係の確定にあたっては、子 の 利 益 を 考 慮 し て、 子 の 出 生 の 当 時 に お け る 一 方 の 親 の 住 所 地 法 又 は 市 民 権 の 法 律 か ら 導 か れ る。 」 と 規 定 し、 又、 「親子間の関係に適用されるべき法律」として、旧法第一四七条は、 「親子の相互の権利及び義務は、それらの 者 の 共 通 住 所 地 法 に 従 う。 」 (第 一 項) と し、 「親 子 が 異 な る 国 に 居 住 し て い る と き は、 子 の 市 民 権 の 法 律 が 適 用 さ れ る も の と す る。 」 (第 二 項) と し、 そ し て、 「婚 姻 外 か ら 出 生 し た 子 の 権 利 は、 子 の 出 生 の 当 時 に お け る 子 の 母 の 住 所 地 法 に 従 う。 」 (第 三 項) と 規 定 し て い た。 そ れ に 対 し て、 新 法 に お い て は、 そ の い ず れ の 法 律 関 係 に つ い て も、 子 の 居 所 地 法 を 基 準 と し て い る (新 法 第 六 二 条 第 一 項、 第 六 五 条) 。 し か し、 後 者 の 法 律 関 係 に つ い て は、 二〇〇三年に、エストニアが、一九九六年一〇月一九日の「親責任及び子の保護措置についての管轄権、準拠法、 承認、執行及び協力に関するハーグ条約」に加盟したことから、その限りにおいて、右第六五条は機能していない (Sein, op. cit., p.470 et seq.
) 。 「扶養義務に適用されるべき法律」についても、旧法第一五〇条は、 「別居した配偶者を扶助すべき義務は、離婚 に 適 用 さ れ る べ き 法 律 に 従 う。 」 (第 一 項) と し、 「親 及 び 子 並 び に 他 の 家 族 構 成 員 を 扶 助 す べ き 義 務 は、 請 求 し た
者 の 選 択 に よ り、 そ の 者 の 住 所 地 法、 又 は、 請 求 が 提 起 さ れ た 者 の 住 所 地 法 に 従 う。 」 と 規 定 し て い た が、 新 法 第 六一条は、明文により、一九七三年一〇月二日の「扶養義務の準拠法に関するハーグ条約」によって規律されるべ きことを規定している。 又、 養 子 縁 組 に つ い て、 旧 法 第 一 四 九 条 は、 「養 子 縁 組 は 養 親 の 住 所 地 法 又 は 養 親 双 方 の 共 通 住 所 地 法 に 従 う。 養親が異なる国に居住しているか、又は、異なる国の市民である夫及び妻であるときは、養子縁組は夫及び妻の双 方 の 住 所 地 法、 又 は、 夫 及 び 妻 の 双 方 の 市 民 権 の 法 律 に 従 わ な け れ ば な ら な い。 」 (第 一 項) と し、 「養 子 縁 組 の 可 能 性、 及 び、 養 子 縁 組 に つ い て の 子 と そ の 法 定 代 理 人 の 同 意 は、 養 子 と そ の 法 定 代 理 人 の 住 所 地 法 に 従 う。 」 (第 二 項) と 規 定 し て い た。 こ れ ら の 諸 規 定 に 相 応 す る 新 法 第 六 三 条 第 一 項 及 び 第 二 項 に お い て は、 婚 姻 の 一 般 的 効 力 に 準ずる規律、及び、徹底した子の法の適用へと変更されている。前者が、夫婦共同養子縁組の場合における統一的 な規律を目するものであることは、推察するに難くない。 尚、旧法第一五一条は、 「監督及び保護は、監督及び保護が与えられる国の法律に従う。 」と規定していたが、そ れは、後見及び保佐に関する新法第六六条に相当するであろう。
一〇
相続
先ず、旧法第一五七条は、 「相続に適用されるべき法律」として、 「エストニアに所在する不動産の相続はエスト ニ ア 法 に 従 う。 」 (第 一 項) と し、 「外 国 に 所 在 す る 不 動 産 の 相 続 は、 物 が 所 在 す る 国 の 法 律 に 従 う。 」 (第 二 項) と し、 「動 産 の 相 続 は、 遺 言 者 の 最 後 の 住 所 地 法 に 従 う。 」 (第 三 項) と し、 そ し て、 「人 は、 遺 言 に よ り、 そ の 者 の 動 産 の 相 続 が、 動 産 が 所 在 す る 国 の 法 律、 又 は、 そ の 者 の 市 民 権 の 法 律 に 従 う こ と を 確 定 す る こ と が で き る。 」 (第 四項) と 規 定 し て、 相 続 分 割 主 義 及 び 制 限 的 当 事 者 自 治 の 立 場 を 採 用 し て い た。 そ れ に 対 し て、 新 法 は、 相 続 分 割 主 義 か ら 相 続 統 一 主 義 へ と 変 更 し (新 法 第 二 四 条) 、 又、 被 相 続 人 の 本 国 法 の 適 用、 若 し く は、 相 続 契 約 の 締 結 を 認 め て (新法第二五条) 、大幅な改正を加えている ( Sein, op. cit., p.465 et seq. ) 。相続統一主義が採用されることにより、 不動産相続についての準拠法の実効性を巡る問題が生ずる場合が考えられるが、新法の規則はその点をも踏まえた ものであると見られる。 次に、旧法第一五八条は、 「遺言に適用されるべき法律」として、 「人の遺言を作成、変更又は撤回する能力は、 遺 言 を 作 成、 変 更 又 は 撤 回 す る 当 時 に お け る 遺 言 者 の 住 所 地 法 に よ っ て 確 定 さ れ る。 」 (第 一 項) と し、 「遺 言 の 方 式 及 び 意 味 は、 人 が 遺 言 を 作 成、 変 更 又 は 撤 回 し た 国 の 法 律 に よ っ て 確 定 さ れ る。 」 (第 二 項) と し、 「外 国 に お い て作成された遺言の方式が、それが作成された国の法律に従っていない場合において、それがエストニア法に従っ て い る と き は、 そ の 方 式 は エ ス ト ニ ア に お い て 有 効 と す る。 」 (第 三 項) と し、 「エ ス ト ニ ア に 所 在 す る 不 動 産 を 遺 贈 す る た め に は、 遺 言 並 び に そ の 修 正 及 び 撤 回 の 方 式 は エ ス ト ニ ア 法 に 従 わ な け れ ば な ら な い。 」 (第 四 項) と し、 そ し て、 「遺 言 に よ る 遺 贈 は、 第 一 項 な い し 第 四 項 の 規 定 に 従 う。 」 (第 五 項) と 規 定 し て い た。 そ れ に 対 し て、 新 法は、より端的に、一九六一年の「遺言の方式の準拠法に関するハーグ条約」の適用につき、相続契約の方式をも 含めて規定している (新法第二七条) 。 以上における改正の他、新法における相続ないし遺言に関して注目されるのは、相続契約及び共同遺言について の規定が置かれていることであろう。特に、後者については、諸国の法制は異なっているが、新法においては、夫 婦間におけるそれを前提として、遺言者による準拠法の選択が認められており、一層の遺言保護の立場が表明され ている (新法二九条参照) 。
一一
後書き
実務上、エストニア国際私法は、二〇〇八年当時、未だ、エストニア最高裁判所において適用されていない。そ の理由として指摘されているのは、エストニアの法律家にとって、恐らく、国際私法は余り馴染みのない存在であ るからである。事実、幾つかの離婚事件において、エストニア国際私法により、本来、外国法が準拠法とされるべ き 場 合 に、 エ ス ト ニ ア 最 高 裁 判 所 は エ ス ト ニ ア 法 を 適 用 し て い る。 但 し、 国 際 民 事 訴 訟 法 に つ い て は、 よ り 頻 繁 に、そして、的確に適用されている。例えば、ブルュッセルⅠ条約及びブルュッセルⅡ条約改訂規則が適用された 件数は、外国法が適用された件数よりも勝っている (Sein, op. cit., p.472.
) 。 欧州連合に加盟したエストニアにとって、国内国際私法立法の重要性が減少していることが指摘されている。そ の 理 由 の 一 つ と し て、 実 質 法 の 統 一 が あ り、 い ま 一 つ と し て、 欧 州 連 合 域 内 に お け る 国 際 私 法 の 統 一 が あ る ( Sein, op. cit., p.472. ) 。その格好な例として挙げられるのが、ローマⅠ条約及びローマⅡ条約、そして、ハーグ国際私法条 約であり、それらは、エストニア国際私法に取って代わろうとしている。しかし、それにも拘わらず、欧州連合以 外の諸国との関係におけるエストニアの対外的交渉の絶えざる隆盛が、エストニア抵触法をも同時に必要としてい ると指摘されている (
Sein, op. cit., p.472.
)
。これは、欧州連合加盟諸国に同様に見られる趨勢と言えるでろう。
次に掲げるのは、二〇〇四年及び二〇〇九年の改正を踏まえた二〇〇二年のエストニア共和国国際私法に関する
(参考資料)エストニア共和国国際私法
国際私法に関する法令
(二〇〇二年三月二七日成立、二〇〇二年七月一日施行) 二〇〇四年 四月二二日改正 二〇〇九年一一月一八日改正 第一部 総則 第一条 法令の適用範囲 本法令は、法律関係が一国より多くの法律と関連する場合に適用される。 第二条 外国法の適用 ⑴ 何れかの法令、国際的合意又は法律行為に従い、外国法が適用されるべきとき、裁判所は、かような法律の適用が要求 されているか否かに拘わらず、当該法律を適用するものとする。 ⑵ 外国法は、該当する国家における支配法の解釈及び適用の実践に従って適用されるものとする。 第三条 国内法が不統一体系によって構成された国家 本法令の規定が、国内法不統一体系によって構成される国家の法律を指示するとき、かような国家の法律によって定めら れた法秩序が適用されるものとする。かような国家の法律に相当する規定がないとき、法律関係の状況と最も密接に関係し ている法秩序が適用される。 第四条 外国法の確認 ⑴ 適用されるべき外国法の内容は、手続を行なっている裁判所によって確認されるものとする。かような目的のため、手 続を行なっている裁判所は、当事者の援助を要求する権利を有する。⑵ 当事者は、外国法の内容の確認のため、裁判所へ文書を提出する権利を有する。裁判所は、当事者によって提出された 文書に従って行為することを求められない。 ⑶ 裁判所は、エストニア共和国の法務省又は外務省からの援助を要求する権利、及び、専門家を利用する権利を有する。 ⑷ 外国法の内容が、あらゆる努力に拘わらず、合理的な期間内に確認されることができないときは、エストニア法が適用 される。 第五条 外国法の適用における行政機関の権利 裁判所に関する本法令の諸規定は、行政機関へも適用される。 第六条 反致 ⑴ 本法令が外国法の適用(送致)を定めるときは、該当する国家の国際私法規則が適用される。かような規則がエストニ ア法の適用(反致)を定めるときは、エストニア実質法規則が適用される。 ⑵ 外国法が第三国法の適用を定めるとき、かような送致は考慮されないものとする。 ⑶ 第二三条の一又は本法令第六部第一章第一節の諸規定が外国法の適用を定めるときは、かような国家の実質法規則が適 用される。 (官報第一部二〇〇四年第三七項第二五五号改正、二〇〇四年五月一日施行) 第七条 公の秩序 外国法は、その適用の結果がエストニア法の主要な原則(公の秩序)と明らかに衝突することとなるとき、適用されない ものとする。かような場合には、エストニア法が適用される。 第八条 法律行為の形式的要件 法律行為は、それが法律行為を支配する法律、又は、法律行為が行なわれている国家の法律上の形式的要件を遵守してい るとき、方式上、有効とする。
第九条 代理 ⑴ 代理人によって行なわれた法律行為の前提条件であって、本人について、第三者に関する権利又は義務をもたらす結果 となるものは、代理人が行為を行なった国家の法律によって支配されるものとする。 ⑵ 本条第一項に特定された法律は、代理権を有しない代理人と第三者との間の関係へも適用される。 ⑶ 不動産物権の処分についての委任は、不動産が所在する国家の法律上の形式的要件に従って認められるものとする。 第二部 自然人 第一〇条 自然人の居所 エストニア法が自然人の居所の決定へ適用される。 第一一条 自然人の市民権 ⑴ 自然人の市民権は、決定されるべきである市民権が帰属する国家の法律に従って決定されるものとする。 ⑵ 自然人が幾つかの国家の市民権を有するとき、本法令によって別段に規定されていない限り、その者が最も密接に関係 している国家の市民権が適用される。 ⑶ 本法令が無国籍者、市民権が確認されることができない者、又は、避難民へ適用されるべきであるとき、その者の居所 がその市民権に代わって考慮されるものとする。 第一二条 自然人の消極的及び積極的法律能力 ⑴ 自然人の居所がある国家の法律は、その消極的及び積極的法律能力へ適用される。 ⑵ 居所の変更は、既に取得された積極的法律能力を制限しないものとする。 ⑶ 人がその居所のある国家の法律へ従って法律行為を行なったが、その者が積極的法律能力を有しないか、又は、その積 極的法律能力が制限されていたとき、かような者は、その者が、その者が法律行為を行なった国家の法律に従えば積極的
法律能力を有していたとき、その無能力を援用しないものとする。かような規定は、他方当事者がその者の積極的法律能 力の欠如を知っていたか、又は、知るべきであったとき、適用されない。 ⑷ 本条第三項の諸規定は、家族法若しくは相続法から生起している法律行為、又は、他の国家に所在する不動産に関する 法律行為へ適用されない。 第一三条 死亡宣告 ⑴ 死亡宣告の原因及び効果は、行方不明者の最後に知られた居所がある国家の法律によって支配される。 ⑵ 本条第一項に指定された法律が外国法であるとき、行方不明者は、利害関係人がその点について正当な利益を有すると き、エストニア法に従って死亡を宣告されることもできる。 第三部 法人 第一四条 法人の支配法 ⑴ 法人は、法人の創設の基礎が帰属する国家の法律によって支配されるものとする。 ⑵ 法人がエストニアにおいて実際に運営されているか、又は、法人の主たる活動がエストニアにおいて遂行されていると き、法人はエストニア法によって支配されるものとする。 第一五条 支配法の範囲 法人を支配している法律に基づき、特に、次に掲げる事項が決定されるものとする。 一 法人の法的性質 二 法人の創設及び終了 三 法人の消極的法律能力 四 法人の名称又は商標
五 法人の組織 六 法人の内部関係 七 法人の負債責任 八 法人の法定代理人 第一六条 代表権の制限 法人は、法人の組織の代表権に関する制限、又は、法人の消極的法律能力に関する制限が、法律行為の他方当事者の居所 若しくは事業地の法律上知られていないとき、かような制限を援用しないものとする。かような規定は、他方当事者が制限 を知っているとき、適用されない。 第一七条 他の人的団体及び資産の共同出資 ⑴ 本部の諸規定は、他の組織された人的団体及び資産の共同出資へも適用される。 ⑵ 組織化する構造を有しない契約上の団体は、契約に関する本法令の諸規定によって支配されるものとする。 第四部 物 第一八条 物権の支配法 ⑴ 物権の成立及び消滅は、物が、物権の成立又は消滅の当時所在していた国家の法律に従って決定されるものとする。 ⑵ 物権は、物が所在する国家の法律上の主要な原則と衝突して行使されることがないものとする。 ⑶ 動産がエストニアへ運ばれ、かつ、物権の成立又は消滅が外国において完成されているとき、外国において発生した事 実は、エストニアにおいて発生したものと見做されるものとする。 ⑷ 不動産に基因する加害的生活妨害から派生する請求権は、本法令第五〇条によって支配されるものとする。 第一九条 法定相続問題における物の所在国の法の適用
物 権 が、 特 に 家 族 法 若 し く は 相 続 法 を 基 礎 と し て、 一 般 相 続 に よ っ て 成 立 又 は 消 滅 す る と き、 物 が 所 在 す る 国 家 の 法 律 が、物が所在する国家の法律が一般相続の場合へも適用されることを定めない限り、かつ、その限りにおいて、法定相続を 支配する法が、一般に、かような物権へ全体として適用される。 第二〇条 移動中の物 ⑴ 法 律 行 為 に 基 づ い て 移 動 中 の 物 の 物 権 の 成 立 及 び 消 滅 は 、 物 の 仕 向 地 が あ る 国 家 の 法 律 に よ っ て 支 配 さ れ る も の と す る 。 ⑵ 当事者は、物の本源国の法律、又は、法律行為を支配している法律を適用することを合意することもできる。 ⑶ 支配法に関する合意は、物に関する第三当事者の権利に影響を与えないものとする。 第二一条 物を伴う証券 ⑴ 物を伴う証券は、証券に規定された法律によって支配されるものとする。物を伴う証券が支配する法律を指定しないと き、 証 券 は、 証 券 の 発 行 者 の 事 業 地 が 所 在 し て い る 国 家 の 法 律 に よ っ て 支 配 さ れ る も の と す る。 移 動 中 の 物 を 伴 う 証 券 は、物の仕向地がある国家の法律によって支配されるものとする。 ⑵ 物を伴う証券を支配する法律は、物の取得につき、証券の引渡しが物の引渡しと同一であるかを決定する。物の取得に つき、物を伴う証券の引渡しが物の引渡しと同一であるとき、証券を支配する法律は物へも適用される。 ⑶ 何れかの者が、物を伴う証券を支配する法律に基づき、物権の有効性を援用し、かつ、他の者が、物を伴う証券が発行 されていなかったならば適用されることとなる法律に基づき、かようになしたとき、証券が発行されていなかったならば 適用されることとなる法律が適用される。 第二二条 輸送手段 ⑴ 航空機、船舶及び鉄道車両は、その本源がある国家の法律によって支配されるものとする。本源がある国家とは、次に 掲げる国家とする。 一 航空機の場合には、国籍がある国家
二 船舶の場合には、登録地がある国家、それがないときは、母港がある国家 三 鉄道車両の場合には、鉄道車両を使用する許可を下した国家 ⑵ 輸送手段によって惹起された損害の賠償についての請求権、又は、輸送手段に関してなされた出費の補償についての請 求権を保証する法律から派生する担保権及び留置権は、保証された請求権を支配する法律によって支配される。異なる国 家の法律に基づいて成立した担保権の場合には、より先に成立した担保権が優先するものとする。 第二三条 知的財産権 知的財産権、並びに、その創作、内容、消滅及び保護は、財産権の保護が与えられる領域が帰属する国家の法律によって 支配されるものとする。 第二三条の一 登録証券 ⑴ 株式、債券、及び、登録簿への登録の形式の下に表示された他の権利(被登録有価証券)は、それぞれの登録簿が保存 されている国家の法律によって支配されるものとする。 ⑵ 何れかの者(保管者)が、登録簿中の他の者のため、かつ、その者の計算においてか、又は、本条第一項に指定された 登録簿(それぞれの登録簿)以外の口座に被登録有価証券を保有するとき、それぞれの登録簿へなされた登録によって表 示された権利(保管者によって保有された有価証券)は、保管者によって保有された有価証券に関し、それぞれの登録簿 が保存されている国家の法律によって支配されるものとする。 ⑶ 被登録有価証券、及び、保管者によって保有された有価証券を支配する法律に基づき、特に次に掲げる事項が確認され るものとする。 一 有価証券の法的性質 二 有価証券に対する物権の内容、成立及び消滅 三 有価証券から派生する権利のための担保の処分の効果
四 有価証券から派生する行使権の要件 五 売却権の成立及び行使を含め、有価証券を担保物件として使用すること 六 有価証券に負わせる権利の順位 七 保管者によって保有された有価証券に対する保管者の権利及び義務 (官報第一部二〇〇四年第三七項第二五五号改正、二〇〇四年五月一日施行) 第五部 相続権 第二四条 相続の支配法 相続は、遺贈者の最後の居所がある国家の法律によって支配されるものとする。 第二五条 法選択 人は、その遺言において、その市民権がある国家の法律がその遺産へ適用されることを表意するか、又は、相続契約を締 結することができる。かような表意は、その者がその死亡当時に該当する国家の市民でなくなっているとき、無効なものと する。 第二六条 支配法の範囲 相続を支配する法律は、特に次に掲げる事項を決定するものとする。 一 遺言処分の種類及び効果 二 相続能力及び相続無資格 三 相続の範囲 四 相続人及び相続人間の関係 五 遺贈者の負債に対する責任
第二七条 遺言の方式の支配法 ⑴ 一 九 六 一 年 の 遺 言 処 分 の 方 式 に 関 す る 法 律 の 抵 触 に 関 す る ハ ー グ 条 約(官 報 第 二 部 一 九 九 八 年 第 一 六 / 一 七 項 第 二 八 号)が、遺言の方式へ適用される。 ⑵ 本条第一項に指示された条約は、相続契約の方式へも適用される。 第二八条 遺言作成の能力 ⑴ 人は、その者が、遺言の作成、修正又は撤回の当時、その居所がある国家の法律に従って該当する能力を有するとき、 その遺言を作成、修正又は撤回することができる。かような国家の法律に従えば、その者が遺言を作成する能力を有しな いとき、その者は、その者が、その者が遺言を作成、修正又は撤回する当時、市民である国家の法律に従えばその資格を 与えられるとき、その遺言を作成、修正又は撤回することができる。 ⑵ 居所又は市民権の変更は、既に取得された遺言をする能力を制限しないものとする。 ⑶ 本条の諸規定は、それぞれ、人の相続契約を締結、修正又は終了する能力へ適用される。 第二九条 相続契約及び相互遺言 ⑴ 相続契約は、契約締結当時における遺贈者の居所がある国家の法律、又は、本法令第二五条に指示された場合において は、その者の市民権がある国家の法律によって支配されるものとする。支配法は、相続契約の許容性、有効性、内容及び 拘束力、並びに、相続法の下における契約の効果を決定する。 ⑵ 相互的遺言をする際には、遺言は、遺言者双方の居所がある国家の法律、又は、夫婦の一方の居所がある国家の法律で あって、遺言者によって共同して選択されたものに従ってなされるものとする。 第六部 債務法
第一章 債務法総則及び契約 第一節 総則及び契約 第三〇条 適用範囲 本節の諸規定は、法人の団体の定款、又は、法人の義務についての法律から派生する法人の組織、株主若しくは構成員の 個人的責任へ適用されない。 第三一条 エストニア法における一般適用規定 本節の諸規定は、契約を支配する法律に拘わらず適用されるエストニア法上の諸規定の適用を妨げないものとする。 第三二条 支配法の選択 ⑴ 契約は、当事者によって合意された国家の法律によって支配されるものとする。 ⑵ 当事者は、契約が全体又は部分の仕方で分割できるとき、契約の全体又はその一部を支配する法律を選択することがで きる。 ⑶ 当事者が、外国裁判管轄の選択によって伴われるにせよ、又は、伴われないにせよ、契約を支配すべき外国法を選択し たという事実は、選択の当時、契約に関連する全ての要素が一国のみと関連する場合には、契約によって退けられること ができない国家の法律上の規則(強行規定)の適用を妨げないものとする。 ⑷ 契約締結後になされた準拠法に関する如何なる変更も、本法令第三七条の下における契約の形式的有効性を損なわず、 第三当事者の権利にも影響を与えないものとする。 ⑸ 本法令第三六条及び第三七条の諸規定は、法選択に関する合意の実質的及び形式的有効性へ適用される。 第三三条 法選択の不存在における準拠法 ⑴ 契約を支配する法律が本法令第三二条に従って選択されなかったとき、契約は、契約が最も密接に関係している国家の
律によって支配されるものとする。契約が区分可能であり、かつ、契約の一部が独立して他の国家とより密接な関連性を 有するとき、かような部分は、当該他の国家の法律によって支配されることができる。 ⑵ 契約は、契約の成立の当時、契約の特徴的債務を履行すべきである当事者の居所又は管理組織の本拠が所在している国 家と最も密接に関係しているものと推定される。契約が、契約の特徴的債務を履行すべきである当事者の経済的又は職業 的活動の過程において成立しているとき、契約は、かような当事者の主たる事業地が所在している国家と最も密接に関係 しているものと推定される。契約期間の下に、契約の特徴的債務が主たる事業地以外の事業地において履行されるべきで あるとき、契約は、当該他の事業地が所在する国家と最も密接に関係しているものと推定される。 ⑶ 契約の特徴的債務が決定されることができないとき、本条第二項は適用されない。 ⑷ 契約の目的が不動産における物権、又は、不動産を使用する権利であるとき、契約は、不動産が所在している国家と最 も密接に関係しているものと推定される。 ⑸ 運送契約の場合には、契約は、出発地若しくは仕向地、又は、貨物運送契約の場合においては、荷主の主たる事業地、 又は、荷積地若しくは荷揚地が同一国家に所在しているとき、運送人の主たる事業地が契約締結の当時所在している国家 と最も密接に関係しているものと推定される。貨物運送契約に関する諸規定は、主たる目的が貨物運送である全ての契約 へ適用される。 ⑹ 本条第二項ないし第五項は、全体の状況から、契約が別の国家とより密接に関係していることが明らかとなるとき、適 用されない。 第三四条 消費者契約 ⑴ 消費者契約の場合において、法選択は、次に掲げるとき、消費者から、その居所がある国家の強行規定によって消費者 へ与えられた保護を奪う結果を有しないものとする。 一 消費者の居所がある国家において、契約の締結が消費者へ向けられた特定の提供によるか、又は、広告によって先行
されており、かつ、消費者がかような国家において契約の締結に必要な全ての行為を実行しているとき 二 他方当事者又はその代理人が消費者の居所がある国家において消費者の注文を受けているとき 三 契 約 が 商 品 売 買 に つ い て で あ り、 か つ、 消 費 者 の 旅 行 が、 消 費 者 に 契 約 を 締 結 す る こ と を 勧 誘 す る た め、 販 売 者 に よって準備されたとした場合には、消費者がその居所がある国家から他の国家へ旅行して、かつ、そこにおいてその注 文を出しているとき ⑵ 準拠法が本法令第三二条に従って選択されていないときは、消費者の居所がある国家の法律が、本条第一項に指示され た状況の下に締結された消費者契約へ適用される。 ⑶ 本条第一項及び第二項は、運送契約、及び、サービスが専ら消費者の居所がある国家以外の国家においてその者へ供給 さ れ る べ き で あ る 場 合 に お け る サ ー ビ ス 供 給 契 約 へ 適 用 さ れ な い。 本 条 第 一 項 及 び 第 二 項 は セ ッ ト 旅 行 契 約 へ 適 用 さ れ る。 ⑷ 消費者の居所がある国家の法律は、本条第一項に指示された状況の下に締結された消費者契約の方式へ適用される。 第三五条 雇用契約 ⑴ 雇用契約の場合において、法選択は、本条第二項に従い、法選択がないときに適用されることとなる国家の法律上の強 行規定によって被用者へ与えられた保護を被用者から奪う結果を有しないものとする。 ⑵ 法選択がないとき、雇用契約は、次に掲げる国家の法律によって支配されるものとする。 一 被用者が一時的に他の国家において雇用されるときであっても、被用者が平常的に契約の履行としてその作業を遂行 する国家 二 被用者が何れか一つの国家において平常的にその作業を遂行しないときは、被用者が従事させられていた事業地が所 在している国家 ⑶ 本条第二項の諸規定は、全体の況から、雇用契約が他の国家とより密接に関係していることが明らかとなるとき、適用
されない。かような場合には、当該他の国家の法律が適用される。 第三六条 契約の実体的有効性 ⑴ 契約、又は、契約の何れかの規定の有効性は、契約又は規定が有効であったならば適用されることとなる国家の法律に 基づいて決定されるものとする。 ⑵ 諸状況から、当事者の一方の行為の結果へ本条第一項に指示された法律を適用することが公平でないこととなることが 明らかであるとき、当該当事者は、その者が契約を締結しなかったことを確証するため、その居所がある国家の法律を援 用することができる。 第三七条 契約の形式的有効性 ⑴ 異なる国家にある者によって締結された契約は、それが、かような国家の一つの法律上の形式的要件、又は、契約を支 配する法律上の形式的要件に適合して締結されているとき、方式上有効なものとする。 ⑵ 契約が代理人を通じて締結されているときは、代理人が行為する国家が、本条第一項の適用のために適切な国家である ものとする。 ⑶ 不動産に対する物権、又は、不動産を使用する権利が目的である契約は、不動産が所在している国家の法律上の形式的 要件に適合して締結されているとき、方式上有効なものとする。 第三八条 請求権の譲渡 ⑴ 請求権の譲渡の場合において、譲渡人と被譲渡人との間の関係は、譲渡人と被譲渡人との間の契約を支配する国家の法 律によって支配されるものとする。 ⑵ 譲渡されるべき請求権を支配する法律は、請求権の譲渡可能性、被譲渡人と債務者との間の関係、被譲渡人が債務者へ 債 務 の 履 行 を 要 求 す る こ と が で き る 前 提 条 件、 及 び、 債 務 者 の 債 務 が 履 行 さ れ た か の 何 れ か の 問 題 を 決 定 す る も の と す る。