Title 都市型高齢福祉の課題と展望 : 都市提言(学術シンポジウ ム)
Author(s) 佐々木, 信夫
Citation 聖学院大学総合研究所紀要, No.17, 2000.3 : 237-246
URL http://serve.seigakuin-univ.ac.jp/reps/modules/xoonips/de tail.php?item_id=3454
Rights
聖学院学術情報発信システム : SERVE
SEigakuin Repository for academic archiVE
司 会
岡沢先生︑どうもありがとうございました︒
それでは続きまして︑お手元にお配りしてございます
﹁夢のふくらむまちづくりへの提言¥これは総合研究所
におきまして埼玉都市政策研究会という研究会を設けて おりますが︑その中で埼玉県における都市政策の様々な 課題を研究し︑そしてここに提言をさせていただくとい うものでございます︒
研究代表の聖学院大学総合研究所客員教授の佐々木信
夫先生に政策提言︑都市提言をお願いいたします︒それ
では佐々木先生︑よろしくお願いいたします︒
都 市 提 言
佐々木 信
夫
大変迫力のあるお話を聞いた後に︑突然都市提言とい
うコーナーを設けましたが︑休憩時間だと思って聞いて
いただければいいと思います︒浦和︑
大宮︑与野︑あ
るいは上尾︑伊奈町等︑こういう埼玉中枢都市圏の在り
方について少し提言を申し上げてみたいと思います︒
昨年︑浦和︑大宮︑与野︑あるいは上尾︑伊奈町を入
れた埼玉中枢都市圏の在り方について︑第一次提言とい
う形で大学の研究会として︑﹁二十一世紀への都心づく
りと大都市づくり﹂という提言を申し上げたところであ
ります︒それから一年経ちましたので︑夢がふくらんで
ほしいわけですが︑なかなか夢のふくらむような状況が
ございません︒改めて少し違う角度からご提言を申し上
げます︒何らかのご参考にと思い︑きょうは皆さんにご
紹介がありましたが︑﹃都市提言﹄という冊子をまとめ
させていただいております︒
今年は︑統一地方選挙が行われ︑前半戦は都知事選挙
をはじめ︑府県・政令市レベルの選挙が終わったところ
です︒今度の日曜日になりますと︑市町村レベルの統
地方選挙が行われます︒ご当地の浦和においても市長選
挙及び市議会選挙が行われておりますし︑与野市におい
ても行われているという状況で︑合併の是非ということ
も大きい焦点になっているようにお見受けしておりま
す︒ただ︑私もいろいろな解説の機会がございませんで
した︒ここ三週間ほどは都知事選挙の解説をいろいろな
形でやっておりましたものですから︑この地域の問題の 最近の動きについて解説する機会がございませんでした が︑百万都市を合併によってつくろうということについ て︑状況が大きく変わってきているということをもう少 し認識しなければならないのではないかということをま ず一つ申し上げたいわけであります︒
地 方 分 権 時 代 の ス タ ー ト
今︑日本の国会では地方分権に関する一括法案という
ものを審議しております︒これが可決成立しますと︑可
決成立すると思いますが︑来年の四月から︑大きく言い
ますと明治以来続けてきた百年の集権体制は大きく崩れ
ていくというか︑身近な政府というものが強くなってい
く分権時代がスタートするわけであります︒ある意味で
はそれに合わせるように︑市の制度についても新たな動
きが始まっております︒
ご当地でずっと議論してきたのは︑中身はともかく︑
昭和三十一年から始まった︑ いわゆる政令指定都市制度
というものを使えるような都市の枠組みをつくろうでは
ないかということです︒これは横浜︑名古屋︑京都︑大
阪︑神戸という五大市が使っている制度です︒その後︑
神戸市並みに成長した都市について順次その制度を適用
しておりまして︑現在︑ 一二都市が制令指定都市という
制度を使っております︒札幌︑仙台︑千葉︑川崎︑横浜︑
名古屋︑京都︑大阪︑神戸︑広島︑北九州︑福岡です︒
さらに日本の動きとしては︑ご当地の浦和︑大宮︑与野
の合併もその制令指定都市という制度を活用したいとい
うことです︒さらに静岡︑清水という地域も政令指定都
市を目指して合併協議会ができているという状況であり
ます︒この一般の市制度では大都市の運営はうまくいか
ない︒そこで大都市の運営がうまくいくように︑府県の
役割を併せ持つ市制度というものを作ったのが︑昭和
十一年からの政令指定都市制度であります︒日本の高 度成長がまだ始まる前の状況に作られた制度でござい
ま す
ところが最近︑こうした身近な政府が意志決定権を持 ︒
って行政をやる︑あるいはまちづくりをやる︑先ほどの 話の高齢社会対策をやるという意志決定権の移譲をにら みながら︑少し都市の規模によって制度を変えていこう という動きが出ております︒平成七年︑ 一九九五年の四
月からは︑人口が三十万から五十万程度の市について︑
中核市という行政制度が誕生しております︒
もうすでに日本列島の中では一二市が指定をされまし
た︒府県の役割を併せ持ついわゆる中規模の都市制度と
言っていいと思いますが︑近くでありますと新潟市や宇
都宮市というほぼ五十万規模の市から指定をされてきて
おります︒これも指定の要件がありまして︑人口が三十
万以上であり︑面積が一
00
平方キロメートル以上であ
り︑同時に昼間人口と夜間人口の比率が︑ つまりそこに
住んでおられる方々の数よりも︑よそから働きに︑ある
いは学びにきていただける数の方が多くなければならな
い︒つまり夜間人口より昼間人口が多くなければならな
いという︑中夜間人口の比率が一・ O 以上であるという
要件が課せられております︒したがって埼玉県は三十万
以上の都市というのは六つあるはずでございますが︑
ずれもこの要件に該当しないということで︑今は中核市
し=
というのは今は使っていない状況です︒川越市では︑
わゆる昼夜間人口比率を外すという政府の動きに沿っ
て︑新たにこの中核市という制度を使おうという準備が
始まっております︒東京では八王子市がこうした中核市
という制度を使おうとしております︒
ともかく︑平成七年から政令指定都市に加えまして︑
中規模の都市に適用される中核市という都市制度がスタ
ートしました︒さらに現在︑国会で審議が始まっており
ますが︑来年度をにらみまして︑来年の四月からになる
のでしょうが︑人口二十万以上の規模の都市について︑
権限特例市という府県の役割を合わせ持つ市制度がスタ
ートする準備が進んでおります︒
そうしますと︑日本列島の北から約七十くらいの市が
適用されるだろうと読まれております︒ちなみに日本の
中で二十万人以上の人口規模を持つ都市というのは一 O
二しかありません︒それがすべて政令指定都市︑中核市︑
特例市というものでほぼすべてカバーされるということ
でありまして︑日本の国民の約六五%の暮らしがこうし
た都市制度の下で始まるということです︒さらに︑まだ
し=
町村の数が自治体の中では圧倒的に多いわけで︑三︑二
二二市町村の中で市は六七 O 市だけでありまして︑
そ れ
以外が町村であります︒
︑五五四の町村があります︒ a ‑
今までは五万人以上の都市について市にするというのが
市の昇格要件でしたが︑これを四万人に下げております︒
昨年の臨時国会でこうした可決をしております︒
大きく変わる都市制度
こういうふうに︑あくまでも権限を強くするという流
れの中で︑都市制度は大きく変わってきております︒特
別に百万の人口を要件を満たすという︑ある意味では相
当無理をした合併というものの意味が︑実は失われてき
ている状況であります︒これを一体どう見るかというこ
とを考えなければならない問題になってきております︒
さらに来年の四月から政府の関東のプロック機関など
十八機関と言っており︑今︑千代田区大手町に多くある
機関ですが︑これが工事が六割方進んでいる埼玉新都心
と言われるところに移転をします︒ いわゆる一都三県だ
けでなく︑もう少し静岡︑山梨︑あるいは栃木等をカバ
ーする政府のブロック機関が移転をしてくるわけであり
ます︒それに合わせるように埼玉新都心というものの工
事をやっております︒これが三市にまたがって存在する
ということを問題にしてきたわけですが︑政府としては
﹂うした浦和︑大宮地区に業務核都市をつくるというこ
とでした︒実は今年の三月の第五次首都圏基本計画を見
ますと︑新たに埼玉県においても︑川越︑春日部︑越谷
の三地区をさらに業務核都市として加えるという政府の
方針が発表されております︒浦和︑大宮だけが業務核都
市として育成をしなければならないという状況でもなく
なってきているわけです︒
全国的に合併の動きはございますし︑県が合併のガイ
ドラインをつくるという状況になってきております︒合
併は先ほどの介護保険の運用一つを考えましでも︑小さ
な町村でできるという仕組みには実はなっておりませ
ん︒人口が二十万規模を求めるというふうに言われてお
ります︒実は昨晩︑私は青森県の八戸におりました︒八 戸は二十五万都市といって︑単独で介護保険をやるそう ですが︑その周辺の自治体はできない︑ いかに対応すべ
きかということで合併の議論が始まっておりました︒
実はこの提言として申し上げたいのは︑大きく状況が
変わっている中での合併の進め方についてであります︒
﹂の文字に書いたものをゆっくり読んでいただける機会
がございましたらお読みいただきたいと思います︒
は︑皆さんの冊子の九ページを開けていただきますとあ
ります︒すでに今度の市長選挙が合併を議論する最後の
選挙であるというふうに見られておりますので少し遅い
かもしれませんが︑静岡︑清水といういわゆる五十万都
市と二十五万都市が合併しようとしておりまして︑法定
合併協議会ができております︒実は私も三月に講演にま
いりましたが︑
まず合併の進め方が全面公開でありま
す︒理論としては全面的に公開しています︒
同時に合
併をすべきかどうかの議論を︑合併協議会でやるという
スタンスになっております︒合併をすべきかどうかの
市民の判断というのは︑恐らく具体的にどういう大都市
がそこにできるのかということに最大の関心があるわけ
つ
で す
静岡︑清水のやり方というものは︑まずグランドデザ ︒
インを合併協議会で議論しようということです︒やはり
五十万と二十五万に分かれているよりも︑七十五万都市
の一つにまとめた方がいい都市ができるという合意に達
したら︑そこで様々な合併に伴う会社の合併と同じであ
ります︒第二期として︑ つまり一年半くらいかけて皆さ
んが合併をすべきだという合意に達するなら︑この合併
の具体的な事務のすりあわせ作業に入っていきます︒都
市の名前をどうすべきか︑市役所の場所をどうすべきか
等々︑ご当地でもやっておりますが︑千項目を超えるす
りあわせ作業というものがあります︒しかし残念ながら︑
﹂うした過程をこの地域は経ていないわけです︒合併協
議は原則非公開であります︒われわれは︑今何をやって
いるのか知るすべもないわけです︒同時に︑ どんな大
都市が生まれるかということについても語っていないわ
けで︑合併の判断材料を実は市民の方々が持たないわけ
で す
その中で三市であろうが︑ 四市一町であろうが︑どう ︒ は︑たとえば高齢社会はどういうイメージで︑ どございません︒百万あるいは百二十万の市民にとって 合いません︒それに間に合わせる意味というのもほとん なりません︒すでに来年四月の新都心の町聞きには聞に たいわけです︒グランドデザインの議論からしなければ りますが︑やり直していただきたいという提言を実はし 岡︑清水の第二期の合併のすりあわせ作業から入ってお ら市民で公開の討論をする場がないわけで︑私はこの静 いう大都市が生まれるかということについて︑残念なが
ど ﹀
つ い
﹀ つ
政策をうっていくために合併が必要であるのかというお
話が語られなければならないでしょう︒あるいは現在の
ような大渋滞の道路事情というものが改善されるのだろ
うか︑あるいは過密の住宅事情というのは良くなってい
くのだろうか︑あるいはにぎわいの空間というのは生ま
れくるのだろうか︑あるいは地下鉄等が引かれて大変快
適な都市の移動手段というものができていくのだろう
か︑という一つひとつについて魅力を感ずるという姿が
現れてこないといけません︒だいたいこの四十五万︑五
十万の都市というのは単独で生きていけるわけでありま
して︑それを︑ある意味では古い時代に始まった百万制
令指定都市でなければいけないのだという議論は︑あま
り時代状況としては合わない状況になってきているわけ
で す
︒ 魅
力 の あ る 都 市 を つ く る もう一つは︑都市づくりについては一二ページです
が︑議論としてこの都市の魅力をつくる条件というもの
があります︒ゴシックで書きましたが︑都市の魅力の
っとして︑舞台をどうつくっていくのかということがあ
ります︒これは有形無形の都市インフラの整備で︑地下
鉄も道路もそうです︒あるいは公共施設もそうですが︑
﹂ う
い う
施 設
の 整
備 ︒
さらに観客づくり︒交流人口をど
ういうふうにして増やしていくのか︒たとえば︑大型の
非常に魅力のある︑たとえばホテルというものが立地す
る の か ど う か ︒ いわゆるただ寝泊まりするホテルという
のは︑数はできていっても︑
そこが交流の拠点にはな
りません︒たとえば埼玉でこの種の催し物をやろうとし
ますと︑会場がありません︒きょうの日を︑この場を選
んだのも︑この会場しか空いていなかったというのがま
ず出発点でありました︒ ソニツクシティーも考えました
し いろいろなところも考えましたが︑埼玉のこの百
万︑あるいは百二十万の地域に︑なかなかこういう催し
物をする空間というものがありません︒やはり大きなホ
テルを造らないと︑人々の交流の場というものは生まれ
てこないように思います︒
さらに演劇づくりと言っておりますが︑地下街のにぎ
わい︑地下鉄など非日常的な空間というものが構想され
なくてはなりません︒ある意味では博多の天神のような
イメージがあった方が︑若者には特にいいようです︒さ
らに集客づくり︒さらに選択づくりという意味では︑職
業の選択の幅というものを広げるような都市づくりが行
われないといけません︒ みなが東京へ働きに行って︑東
京で選択をするようですと︑こういうところはいわゆる
大都市にはならないわけです︒こういう装置をどういう
ふうに埋め込むかというのがまさにグランドデザインの
理論であります︒何か浦和がワシントンになり︑大宮が ニューヨークになるという話が最近聞こえてきました
が︑そんなものになるとはとても思えないわけで︑それ
は国際的に申し上げますとワシントンとニューヨークに
失礼な話です︒
きょうは辛口のお話を申し上げようと思って立ってい
るわけではございません︒現実に学問の世界から見ます
と︑今おやりになっている政治・行政の動きというの
は︑時代に合わないのではないか︒もっと言いますと︑
主権者である百万市民というものの存在を視野の外にお
いた議論があまりにも進みすぎると思いますので︑あえ
て申し上げているわけです︒
それからもう一つ︑先ほど中核市と政令指定都市制度
のお話をしましたが︑ 一五ページに比較の表がありま
す︒これをご覧になってもぱっとは分からないかもしれ
ませんが︑すでに時代は百万都市よりも三十万から五十
万都市を強くしようという動きに変わってきておりま
す︒逆に申し上げますと︑ たとえば三三 O 万の横浜市な
どは大きすぎまして︑ つまり三三 O 万人の市民の住むと ﹂ろに市役所は一つしかない︒しかもそれを十八の行政 区に分けているわけですが︑行政区は市民の参加の場で はなく出張所であります︒ いかにその住民票︑戸籍表を
取るのに便利だろうと言われましでも︑たとえば十五万
から二十万の単位のまちづくりの議論はまったくできな
い わ
け で
す ︒
そこで横浜で起きている議論は︑東京の
十三区のような特別区にしろというもので︑十五万から
二十万単位で区議会があり︑区長が公選であることが望
ましいという議論が始まっているわけです︒そういう意
味でこの中核市というのも魅力的な制度です︒
一眼レフの都市か︑二眼レブの都市か
もう一つの論点として︑この地域について一眼レフの
都市でいくのか︑二眼レブの都市でいくのかという点で
す︒どういうことを言っているのかと言いますと︑都心
を二つつくる都市でいくのか︑ 一つの都心でいくのかと
いう話です︒昨年の提言で都心という議論はしました︒
たとえば埼玉新都心という地域が︑ それは三市でも四市
一町でも結構ですが︑ 一つの都心だというイメージでお
っしゃるなら︑やはり都心の機能と中枢性を持ったこう
いう機能というものを都心に集めるという作業がいるわ
け で
す ︒
分かりゃすく申し上げますと︑合併後︑新しく造る市
役所というものが︑政治・行政機能を持つシンボル的な
存在ですから︑これをあえてシティ 1 ホ l
ル と
呼 ぶ
な ら
︑
やはり新都心地域にシティ 1 ホ 1 ルを造るということを
構想しなければならない︒実はその静岡︑清水を見ます
と︑両市の境のところに高等学校の広大な空き地があり
まして︑合併するならそこが新しい市役所になる︒合併
しないという結論なら新しい違う施設を建てるというこ
とで︑保留地を用意しております︒これくらいのことで
やりませんと︑それを選択するのは市民ですから︑ お話
としては既存の市役所を使うという議論だけをされてお
りますが︑それはあまり魅力ある話にはならないだろう
と 思
い ま
す ︒
二眼レブでいくとしますと︑ つまり百万都市で合併し ますと︑浦和も大宮も名前を消していかざるを得ないだ ろうと思います︒大宮という名前を百万都市で使うとい う市長候補者もおられました︒まだ選挙中ですから︑ られますが︑ それもなかなか難しいだろうと思います︒
あるいは全体を浦和という名前でくくるのも多分難しい
でしょう︒第三の名前を考えなければならないだろうと
思います︒二眼レフでいきますと︑われわれの一つの考
え方としては中核市という制度を使うべきです︒その場
合に︑たとえば浦和︑与野が合併しても︑恐らく与野の
市民は浦和ということについてそう大きい抵抗がなく多
分合併をしていただいて浦和といけるのではないか︒も
う一つ︑大宮︑上尾︑伊奈町が合併されて︑上尾は分か
りませんが︑多分大宮という名前を使っていただけるの
ではないか︒そうしますと︑二つの六十万から八十万規
模の中核都市が競うという形の方が︑ つまり二つの眼鏡
のある︑しかもジョイントの部分は新都心に政府のブロ
ツ ク 機 関 が 来 て ︑ アリーナができるだけですから︑それ
を持って合併するという意味はほとんどありません︒と
いうのは行政上いろいろな仕組みがありまずから現実に
お
人は住みませんから︑二つの眼鏡のいわゆる六十万から
八十万都市が競っていくという形の方が︑あるいは都市
としては成長する形なのかもしれません︒
提言らしい提言にはなりませんが︑こんなことを考え
なければならない︑ つまり選択肢は決して一つではない
という状況にきているわけです︒同時に︑早く始まった
/