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多費目需要関数体系による 所得階層別消費分析

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全文

(1)

多費目需要関数体系による 所得階層別消費分析

横 山 佳 充

は じ め に

本稿では,所得階層別における消費行動に差異が生じているかどうかを検証 することを目的とする。本来理論的な背景のもとでは消費行動は代表的家計を 想定し,その行動様式を分析することで行われる。そのもとでは,分析に用い る家計は通常全体の中で平均的な家計などを想定している。しかしながら,ど の国においても所得格差は存在するものであり,一般的に従来は所得格差が小 さいと言われてきた我が国においても,所得格差による不平等は否応なく存在 する

。こうした中,所得分布上,下位に位置する世帯と上位に位置する世帯に おいては,各消費費目に対する行動様式は少なからず異なると考えるのが自然 であろう。所得の程度により消費を増加または減少させる費目また価格の変化 によって同様に異なる反応を示すことは容易に想像できる。そこで,本稿にお いては消費者の行動様式について経済理論的な背景に準拠した上で消費者行動 を仮定したモデルを利用し,所得の格差が消費行動に及ぼす影響や価格変化に よる消費行動への影響について比較検討する。それに伴い各財における価格の 変化が各所得階層に与える影響を分析することにしたい。

本稿における構成は以下の通り, 節において基本的なモデル構成を確認 し,所得階層の分析に可能なようにモデルを若干修正する。 節においてはデ

( )

OECD(

)の見解によると, 年時点(一部 年データ)で比較したジニ

係数の比較では我が国は .

OECD

平均 . を若干上回っており, 国中大き いほうから 番目である。OECDの主張では日本における所得格差は拡大してきてい る。

巻 第 号

(2)

ータに関する考察を行い推定結果を示す。つづいて, 節では 節の結果に基 づいて価格変化が各家計に与える影響をシミュレーションを行い検証する。最 終的に 節にて所得階層に関する分析に関して検証の結果を示す。

モ デ ル

. 基本モデル

本稿の目的は所得の 階層消費データを用いて所得の異なる世帯に関して差 異が存在するかを検証することであるが,この分析を行うために

AIDS

モデル を用いる

。AIDS(Almost Ideal Demand System)は

Deaton and Muellbauer

によって提示されたモデルで,経済理論との整合性,その操作性の観点からよ く利用されるモデルである。近年においては,より複雑な形でのモデル分析自 体は可能ではあるが,必要以上に解釈とともに推定上の取り扱いに関しても問 題を生じることから,AIDSモデルを若干修正したものを用いる

まずここでは,後の分析を行う上で,使用する

AIDS

モデルを設定すること から始めたい。はじめに基本的な

AIDS

モデルを構成するために,費用関数を

PIGLOG

型として,

# $" ! $ ' ! ! %# # $" # $ ! %! '# $" $ $ ! %

とする

ここで,#

$ ! %

,$

$ ! %

部分はそれぞれ

N

財からなる

" "!

価格ベクトル

p

の関数であり,その要素を

&

%

$ % #! ! &! " %

と表す。

# $" # $ ! %

# $" $ $ ! %

は,

( ) 本来,『家計調査』における用語は五分位階級や十分位階級という用語を用いている が,本稿では「階級」を「階層」という表現で統一している。

( ) モデルの発展やより複雑なケースに関しては

Barnett and Serletis(

)参照。モデル の複雑な形状は多数提供されてはいるが,操作性の問題を含め,あまり利用されていな いのが実情である。

( )

PIGLOG(Price independent generalized logarithmic)とは代表的家計の支出水準が価格

と独立に,支出の分布のみに依存する関数となる場合で,なおかつ価格分布の対数を とって表現したものである。本文中登場するような式⑴のような費用関数を導入するこ とで,総和条件を満たす支出体系を取り扱うことができる。

(3)

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および

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で あ る。こ こ で,

"

&

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&

$ & #! ! " ! &! " %

お よ び

$

&'

$ & #" ! &! " ! ' #" ! &! " %

はパラメータである。

推定に必要な式を導出するためには,式⑵と式⑶を式⑴に代入した上で,対 数型の

Shephard

の補題から,

+

&

# % % &$ ! $ ! ! * %

% % &$ (

&

の関係を用いる。これを適応することで,

+

&

#"

&

" #

&

% &$ &

# "!

'#"

"

$

&'

% &$ (

'

と表記することができる

。ただし,+&は式⑺に示している通り支出シェアで ある。ここで

P

は,

% &$ # #"

!

"!

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"

"

&

% &$ (

&

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"

'

!

#"

"

$

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" $

'&

# % &$ (

&

% &$ (

'

であり,総合物価指数などで置き換えると,式⑸のようにパラメータに関して 線形になり推定しやすくなる。また,xは支出総額であり,)&を第

i

財の購入

( ) 式⑴より,!

$ * ! ! %

x

とおいて

u

について解くと,

* # % &$ & ! "

!

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&"#"

"

&

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&'

% &$ (

&

% &$ (

'

#

!

"

&"#"

(

&#&

が得られる。これを再度,式⑷に入れると,式⑸を得る。

(4)

量であると考えると

% !!

#!"

!

%

#

&

#

および

'

#

! %

#

&

#

% ! %

#

&

#

!

#!!"

%

#

&

# の関係がある。一般に,推定を行う際に,総合価格指数⑹である

P

$ %# " !!

#!"

!

'

#

$ %# %

#

で近似したものを用い,推定を簡略化することが行われる。ただし,本稿では 計算の際に つの所得階層が存在することになり,それらの統一価格指数を用 いるため,あらかじめすべての財で,統一された価格指数を用いている。

本稿においては分析を行う上で総和条件,同次性の条件および対称性の条件 を用いてモデルに制約を入れ,条件を付加したうえで推定を行う。初めにこの モデル体系での総和条件は,

#

!

!"

!

"

#

!" ! !

#!"

!

#

#

!! ! !

#!"

!

$

#$

!!

であり,次に,同次性の条件については

$

!

!"

!

$

#$

!!

と表される。最後に,対称性の条件は,

$

#$

!$

$#

である。

(5)

. 時間の変化および家計の規模

前小節においては,基本的なモデルを考察したが,本小節においては後のデ ータの考察において,分析する問題点に対処すべく,モデルを修正している。

修正点は 点である。第 点目は時間における環境変化である。特に本稿では 戦後のまもない時期から現在までの長期的なデータを含むため,経済的および 社会的環境の変化,趣向の変化を軽視できないことに起因している。

点目に関しては第 点目より問題は深刻である。通常の代表的な家計を分 析対象とする場合と異なり,所得階層別の分析においては,対象とする世帯間 の家計規模が消費に大きく影響していることが考えられる

。 点目に関して問 題の所在を確認するために,Barten( )の特定化に倣って,N 財の消費を 行う代表的家計の世帯人数が

n

人であるとし,n人の消費行動より家計で必要

な財が

$

&

# ' $

の程度の分量が必要であり,これが必要量に影響すると仮定す

る。すると,家計

h

における効用関数および各財の必要量は,

* ! "# # " ! $ ! " ! "# )

!

! ! )

"

! ! &! )

"

! $

%

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&

!

%

" )

&%

$

&

# ' $

と表現できると考えられる。なお,プライムはベクトルの転置を示す。よって,

家計

h

に関する予算制約は,(&

! "$

&

# ' $ (

&と置き換えることで,

" "!

&"!

"

(

&

)

&

"!

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&

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&

! $

&

# ' $"!

&"!

"

(

&

! )

&

!

を満たしており,結果として,効用最大化問題を式⒁の制約下で解いていると いうことになる。そこで,対応する費用関数は,

!

%

# * ! ! ! ! $

&

# ' $$"! # * ! ! ! ! $

と表される。

( ) 各消費を被説明変数にした簡単な

OLS

計算においても同様に,符号として正に影響 し,高い有意性を示した。

(6)

以上の関係を考慮に入れた上で,Shephardの補題を用いると,式⑸の導出と 同様に,

)

$

$!

$

" "

$

# $" &

" # "!

%$!

!

#

$%

# $" (

%

#

を得る。ここで,

(

$#

$#

$

% ' & (

$の関係,さらに式⑼で置き換えたのと同様に,

" #

についても同様に,

# $" " # $!

$$!

!

)

$

# $" (

$

#

で置き換えられるものとし,さらに

#

$

% ' &

が財の種類に応じ,世帯人数

n

よって共有などが生じ,財の消費量が人数に比較して実際のところ何人分に相 当するかを表現するために,

#

$

% ' &$'

$$

とおいて変形すると,

)

$

$!

$

" "

$

# $" &

" "!

%$!

!

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# $" '

となる

。ただし,

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$であるので,

)

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$

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$

&

# $" '

であり,まとめると,

)

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!

#

$%

# $" (

%

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%

$

%

% #

$%

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$

)

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& # $" '

となる。

(7)

&

#

$!

$

%

$

& $

#$

! #

#

)

$

'

とおいている。

世帯人数による影響を考慮した上で,さらに時間的な趣向の変化などの影響 を受ける可能性があることを考慮し,モデルに時間的な趣向の変化を加え,さ らに誤差項を含んだモデルは,

)

#

$"

"#

" "

##

' " #

#

% &$ '

" "!

$$"

!

$

#$

% &$ &

$

" &

#

% &$ % " (

#

と表現でき,この式を用いて分析を行う。ここで誤差項

N

個をベクトル表示 したものを

u

と表現すると,!

%! & ! ! Σ '

であり,同時点で各誤差項は相関 を持つ可能性があるが,異時点間における相関はないものと考える。ここで,

0

! # "

のゼロベクトル,Σ

! # !

の分散共分散行列である。なお,総和

条件をモデルが満たしているとすることから,

#

!

$"

!

"

"#

$" ! !

#$"

!

"

##

$! ! !

#$"

!

#

#

$! ! !

#$"

!

$

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$! ! !

#$"

!

&

#

$!

となる必要があり,同様に

!

(

$& " ! " ! )! " '

とすると,誤差項間に

!

(

! $!

いう線形関係があるために,Σは退化してしまい直接全ての方程式を同時に推 定することが可能でない。この問題の対処方法として,任意の 本の方程式を 除外して推定を行い,除外した式の推定値等は関係式から逆算することで求め ることができる

これらの設定をもとに,各種弾力性についてまとめておくと,支出弾力性(

η

( ) 推定に関しては総和条件は自動的に満たされるが,同次性の条件,および同次性かつ 対称性の制約を付加し推定を行う。関数の関係および推定の方法に関しては

Barten

)参照。

(8)

&

!

$ ' $ %# $

!

' $ %# ( $! " "

!

%

!

であり,Marshallの価格弾力性(

ε

)は

$

!"

$ ' $ %# $

!

' $ %# #

"

$!#

!"

" %

!"

%

!

! "

!

%

"

%

!

となる。ただし,#!"

Kronecker delta

である。同様に

Hicks

の価格弾力性($

#

$

!

#

"

$$

!"

" %

"

&

!

の関係を用いて求めることが出来る。時間的な変化は,式 のように単純に時 間変数を導入しているため,!"!が第

i

財の年あたりの

%

!の増加を示す。

. データ

初めに本稿全体で使用するデータの表記について確認しておく。使用する変 数については表 に示している。

記号名 変数名 記号名 変数名 記号名 変数名

F

食料

PF

食料価格

WF

( ) 食料シェア

H

住居

PH

住居価格

WH

( ) 住居シェア

U

光熱・水道

PU

光熱・水道価格

WU

( ) 光熱・水道シェア

C

被服及び履物

PC

被服及び履物価格

WC

( ) 被服及び履物シェア

O

雑費目

PO

雑費目価格

WO

( ) 雑費目シェア

PG

総合価格指数

NUM

( ) 世帯人数 変数表

注)括弧内の数字は対応する所得階層を示す。

(9)

次に使用するデータについて若干の考察を加えておく。使用するデータは所 得 分位階層別データであり,二人以上の世帯のうち勤労者世帯である。現在 は財の区分は通常 大費目に関して記録したものもあるが, 大費目による

『家計調査』の表は 年以降のものである。また 大費目で分析を行った 場合,推定面で自由度が減少すること,そしてデータの継続性の観点からも 大費目でのモデル分析を行うことにした。費目は食料(

F

),住居(

H

),光熱・

水道(U),被服及び履物(C)と雑費目(O)に分類されている

本稿での分析は戦後少し経過した 年から最近の 年までの 年に わたる長期の年次データを対象としており,この間の貨幣価値,生活面での趣 向や財に関する需給面の環境など,市場環境に関わらず,生活や社会面での変 化は極めて大きい

。この間の消費構成の変化を確認する意味でも,所得の第 階層にあたる期間内での財のシェア変化を示したものが図 である。図におい

W

で始まる変数名はそれぞれ第 所得階層における食料(F),住居(H),

光熱・水道(U),被服及び履物(C)と雑費目(O)に関するシェアを示して いる。同期間には一見すると,食料構成比の減少,雑費目の構成比の増加とと もに,住居,光熱・水道そして被服及び履物の微増または微減が確認できる。

に例示される各財の時系列的な構成割合の変化は,基本的にどの所得階 層においても同様に観察される。この傾向は戦後から高度成長期において顕著 であり,価格の変化を考慮に入れない状態でも観察することが可能である。

( )『家計調査』の表においては雑費目ではなくその他と表記されているが,混乱を招か ないため表記を雑費目に統一している。これは価格に関する表記も同様で,後述してい る『消費者物価指数年報』に関しても雑費を雑費目の価格ということで取り扱っている。

( ) この点は簡単なエンゲル係数に基づく分析でも,確認される。第 所得階層のみに 限ってみても, 年代初頭のエンゲル係数 %程度から, 年頃は から 程度に減少している。この点のみでも,分析期間中我が国の社会厚生が急激に改善した ことが類推できる。なお,ここでのエンゲル係数は,食料費を総支出で割った商を用い ている。

(10)

1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 20

10 30

0 60 50 70

40 100 90

(%)

80

F H U C O

この戦後まもなくから現在までの期間においては,価格もしくは物価の動き に関しても数字的に大きな変化があった。この間において長期的な『家計調査』

の費目区分に対応する指数として,『消費者物価指数年報』にある戦前を基準

(昭和 年〜 年平均= .)とした昭和 年からの消費者物価指数(東京都 区部)を 大費目別(総合,食料,住居,光熱,被服,雑費)に相当するもの を価格データとして使用する

。本稿の分析では,この区分を『家計調査』の費 目分類を同一のものとして取り扱う。価格の変化を示したものと年間の価格増 減率を示したものを図 に示している。期間内においては 財のいずれもが価 格上昇しており,特に高度成長期から 年代の 度の石油危機のあたりに おいて,価格上昇が顕著であるが,住居(

PH

)と光熱(

PU

)に関しては他の 財に比較し期間内において,価格上昇率が小さかったことが指摘できる。同様 に 度の石油危機の時期において,財の急激な価格変化が生じており,当時の 不安定な価格動向の一端を見ることができる。

( ) ただし,総合及び住居に関する指数は持ち家の帰属家賃を除いたものである。

各財の占めるシェア(所得第 階層)

(11)

2,500 2,000 1,500 1,000 500 0

1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010(年)

PF PH PU PW PO

0.5

(%)

0.4 0.3 0.2 0.1

−0.1

−0.2 0

1955 1955

1955 1960 1960 1960 1965 1965 1965 1970 1970 1970 1975 1975 1975 1980 1980 1980 1985 1985 1985 1990 1990 1990 1995 1995 1995 2000 2000 2000 2005 2005 2005 2010 2010 2010(年)

PF PH PU PW PO

単純な支出シェアから見た費目構成変化の一方で,世帯の構成人数は当然消 費量に影響を与える一因であると考えられる。本稿における分析期間において は社会的な変化もあり,核家族化に代表されるように世帯におけるの構成人数 の縮小が指摘される。『家計調査』による所得 分位階層別データによる世帯 人数の推移を示したものが,図 である。各所得階層の構成人数の時間的経緯

物価指数の変化

⒜ 消費者物価指数の推移

(東京都区部,昭和 年〜 年平均= .)

⒝ 消費者物価指数の年変化率推移

(12)

1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 3

3.5

(年)

4.5 5

4

(人) 6 5.5

num (1) num (2) num (3) num (4) num (5)

NUM

で示している。変数名の後の括弧内の数字はどの所得階層に属するか を示している。図 から判断できるとおり,時間的な経過とともに世帯人数は 減少している。加えて,各所得階層においては世帯人数が異なっており,基本 的に所得階層が高い,またほぼ同義であるが,消費額が多いことが,世帯人数 が消費行動と関係があることは容易に想像でき,分析期間のような長期を考察 する際に,この影響を無視することはできないと考えられる。

以上の考察を踏まえて,分析期間内での所得世帯の消費支出額と消費割合に ついての基本統計量を表 に示す。費目における記号分類は食料(F),住居

(H),光熱・水道(U),被服及び履物(C)と雑費目(O)と同じであり,表 内の変数名の後の括弧における数字は所属している所得階層を表している。該 当する数字は各所得世帯の名目の費目に対する消費支出額の基本統計量であ り,括弧内は同様の消費割合に関する基本統計量である。同様に使用するデー タのうち,価格にあたるものおよび世帯人数に関する基本統計量を表 に示 す。

P

で始まる変数は対応する各財の価格を表し,PGは総合価格指数を示す。

NUM

で始まる括弧づきの数字は前述したように,各所得階層における世帯人 数に関する基本統計量である。

世帯人数の推移

(13)

. 推定結果

前小節までの用意のもと,各階層別の消費行動を示した式を推定し,各所得 階層別の特徴を分析する。表 の別表にはパラメータの推定結果を示してい る。計算結果は時間,支出額,価格及び世帯の規模による影響部分に分かれる が,初めに各世帯の所属階層に関わらず,全体的な傾向として計算結果の解釈 を行っておく。

変 数 名

F

( )

H

( )

U

( )

C

( )

O

( ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 最 大 値 , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 最 小 値 , ( . ) ( . ) ( . ) ( . ) , ( . ) 標準偏差 , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 変 数 名

F

( )

H

( )

U

( )

C

( )

O

( ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 最 大 値 , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 最 小 値 , ( . ) ( . ) ( . ) , ( . ) , ( . ) 標準偏差 , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 変 数 名

F

( )

H

( )

U

( )

C

( )

O

( ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 最 大 値 , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 最 小 値 , ( . ) ( . ) ( . ) , ( . ) , ( . ) 標準偏差 , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 変 数 名

F

( )

H

( )

U

( )

C

( )

O

( ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 最 大 値 , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 最 小 値 , ( . ) ( . ) ( . ) , ( . ) , ( . ) 標準偏差 , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 変 数 名

F

( )

H

( )

U

( )

C

( )

O

( ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 最 大 値 , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 最 小 値 , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) 標準偏差 , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . ) , ( . )

所得世帯の消費支出額と消費割合 (単位:円(%))

注 )食料(F),住居(H),光熱・水道(U),被服及び履物(C),雑費目(O)を表す。

注 )括弧内は全体に占める割合に関しての統計量を示す。

(14)

時間的な変化に関しては強く有意の傾向を示しており,食料と被服及び履物 は年間 .〜 .%の減少傾向,一方で .%の微増を示すのが光熱・水道であ る。比較的奢侈品的な傾向を見せる雑費目の項目は年間 .〜 .%もの増加 を見せるが,最上位階層に見られるように時間的には有意性を示さない部分も ある。住居に関しては時間的な傾向が各階層で異なっており,最下層が .%

程の減少,中間層が .%程の減少であり,一方で最上位階層では .%の増 加と所得階層によって変化が見られた。

世帯の人数効果については表 に

ζ

の部分で推定値と

t

値が与えられてお り,全体で半数以上のものが, と有意に異なるという結果を示している。こ こでは,式⒇でも置き換えられているとおり,直接

ζ

自身の値に意味があるわ けではなく,本来未知の

θ

の値の推定値に興味があるといえる。そこで,式

⒇を用いて

θ

の値を求める。求めた結果を,表 に示す。

表 の結果から判断すると,少なくともどの所得階層に関しても,財に関す る効率性という点では目立った違いがなく,世帯人数の違いによって財ごとの 効率性が異なることが考えられる。ただし,この点,光熱・水道などは異なっ た動きを見せている。特に,表 の結果から判断する限り,食料や雑費目は世

変数名

PF PH PU PC PO PG

, . , . , . , .

最 大 値 , . , . , . , .

最 小 値

標準偏差

変数名

NUM

( )

NUM

( )

NUM

( )

NUM

( )

NUM

( )

最 大 値

最 小 値

標準偏差

価格と世帯人数の統計量 (東京都,昭和 年〜 年平均= )

(単位:人)

(15)

帯人数が増えることでの効率性が高いと考えられる

。一方,住居や被服及び履 物に関する財は世帯人数が増加することが効率的ではないと考えられる。光 熱・水道は先ほども述べたとおり,所得階層により異なる傾向を示すが,概し て,低所得層に関しては世帯人数の増加が非効率的に機能する一方で,高所得 者層に関しては逆に効率的に機能すると解釈される。

次に,推定結果より派生する全体の弾力性効果について考察する。表 には 支出弾力性と

Marshall

の価格弾力性の結果を示している。Hicksの弾力性の計 算結果は表 に示している。支出弾力性に関しては,基本的にどの階層におい てもどの財に関しても正の効果が確認できる。特に食料に関する支出弾力性は 正であり より小さく,加えて多くの場合他の財よりも弾力性の値は低く,必 需品的性質を確認できる。一方,雑費目に属する財に関しては弾力性で を超 えており,奢侈財の性質を保有していることが分かる。また住居に関する支出 弾力性の結果は所属階層別により多少不安定で,第 , 階層という比較的低 所得階層においては より小さい正の値を示し,必需品であるが他の階層にお いては住居は負の弾力性を示す場合もあるが,ただし統計的には有意な値は示 さない。

価格弾力性に関しては若干解釈が複雑である。初めに

Hicks

価格弾力性から 判断すると,基本的に自己価格弾力性は,経済主体としては負でならないとな

( ) ここで,式⒅より,第

i

財の人数相当分を示しているので,一人当たり,"!!!!である。

これを

n

で微分すると,

" !

!

! ! # "

!!!"であり,!!が より大で非効率, より小で効率 的と判断できる。

F H U C O

第 階層 − . − .

第 階層 − . − .

第 階層 − . − .

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θの計算値

(16)

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支出弾力性と Marshall 価格弾力性の計算結果

注 )i= , ,…, および

γ

部分の数字表記は順に F,H,U,C,O に対応する財を示す。

注 )括弧内の数字は t 値を示し,係数の後の *,**,*** はそれぞれ %, %, %有意を示す。

(17)

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Hicks 価格弾力性

注 )i= , ,…, および

γ

部分の数字表記は順に

F,H,U,C,O

に対応する財を示す。

注 )括弧内の数字は

t

値を示し,係数の後の

*,**,***

はそれぞれ %, %, %有意を示す。

(18)

らないはずであるが,一部正でかつ有意を示すものが見られる。初めに食料に 関しては第 と 階層の自己価格弾力性が負で有意を満たしていないが,その 他の所得階層は食料に関して自己価格弾力性が負で有意を満たしており,理論 的に整合的な形となっている。また,光熱・水道や被服及び履物に関してはす べての階層において負で有意を満たしている。一方で,住居や雑費目に関して は階層間により異なる結果や理論的には矛盾する結果が導かれた。これらの財 に関しては所得の低い階層において価格弾力性は負を示し,場合によってはか つ有意であることもあるが,所得階層が上がるにつれ正または場合によっては 有意という結果が出ている。また自己価格弾力性以外の弾力性に関しては,全 所得階層の結果を通して明確に代替または補完というものは全体の 割程度で あるが,有意を示すものの中では正を示すものすなわち,代替性を示すものの 方が,補完性を示すものよりも多い。

Marshall

の価格弾力性に関して,これは所得(支出)効果と価格効果を合わ

せたものであるが,自己価格弾力性に関しては基本的に所得(支出)効果が強 く出ていることもあり,ほとんどの場合負で,有意な結果を示す。しかしなが ら,住居のように高所得世帯については価格弾力性の結果が正を示すものもあ る。特に住居に関する反応の仕方は特徴的で,所得階層が上になるにしたがい 理論的な財の消費行動とはかけ離れている。『家計調査』では住居の支出は賃 貸等の支払いは含んでいるが,持ち家の帰属部分は含んでいないことから,高 所得階層における住居費への負担が比較的少なく影響したと考えられ,結果と して通常の消費行動と異なったのではないかと考察できる。また加えて,住宅 への支出は本来消費活動ではなく,投資活動と捉える方が整合的である可能性 があることも指摘しておく

他の自己価格弾力性は基本的に負かつ有意であり,それらの中では食料の価 格弾力性はいずれの階層においても他財と比較して に近い。言い換えれば価 格変化により購入量の変化が小さい。一方で,被服及び履物はどの所得階層に

( ) 契約などが主体のため価格が反応しない可能性もある。

(19)

おいても比較的価格に弾力的な反応が見られる。反応の大きさは絶対値で若干 を切る程度であり,どの所得階層も同程度であり反応としては安定している。

雑費目に関しては特徴的であり,所得階層の最も低い世帯に関しては自己価 格弾力性の絶対値の値が を超える値を示しており,中間所得階層にあたる世 帯に関しては絶対値で . 程度,最上位の所得階層に関しては絶対値で . 程 度と価格変動に関して各所得階層の反応が合理的な形で出ている。特に雑費目 は食料に比較して緊急的に必要とされる財でないため,低所得者層が食料を価 格にかかわらず一定量を調達し,雑費目を減少させる一方,比較的裕福な世帯 においては,そうした回避行動を行わないで良い実態が確認される。Marshall の非対角要素である自己価格弾力性の部分に関しては,所得(支出)効果の影

響もあり

Hicks

の価格弾力性の場合には代替的性質を示す財の効果が減殺され

るまたは値が正に転じる,言い換えれば

Marshall

の価格弾力性の意味では補 完的な性質に変わったと言える。ただ,やはり自己価格弾力性の値と比較して,

明確な代替関係または補完関係を示すものの割合は大きくない。特定の財が他 の財に与える影響としては,第 所得階層における住居の価格変化が各財に与 える影響,第 階層における光熱・水道の価格変化が各財に与える影響が見ら れる。また,他の財から特定の財へ与える影響としては,所得階層によって違 いはあるが,食品および雑費目が他の財からの価格の変化の影響を受けるとい うことが多いということが確認される。Marshallの価格弾力性では食品と雑費 目は,負かつ有意であることから

Marshall

の価格弾力性の意味では補完の関 係にあると言える。

価格変化に関する影響について

本節においては計算によって得られた結果をもとに,各価格変化が消費量や 支出シェアに与える影響について考察する。具体的にはある財の %の価格上 昇が生じた場合,それぞれの所得階層において各財の消費量や支出シェアがど う変化するかを分析する。なお,消費量への影響に関しては基本的に表 で与

えた

Marshall

の価格弾力性から影響部分を簡単に取り出すことができる。ま

(20)

第 1 階級 第 1 階級

第 1 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 5 階級 第 5 階級 第 5 階級

−0.35

−0.25

−0.05 0.00

−0.15

−0.40

−0.30

−0.20 0.15

(%)

0.10

−0.10 0.05

F H U C O

第 1 階級 第 1 階級

第 1 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 5 階級 第 5 階級 第 5 階級

−0.15

−0.05 0.15 0.20

0.05

−0.20

−0.10 0.00 0.25 (%)

0.10

F H U C O

た,消費シェアの変化に関しては式 による計算により導出したものである が,その際に各所得階層の平均の値を使用している。すなわち,各所得階層に おける平均消費額と平均世帯人数を用いており,時間変数に関しては期間の中

食料(F)価格の %価格上昇が与える影響

⒜ F の変化による各財消費量への影響

⒝ F の変化による各財シェアの増減

(21)

間の値を利用し,各財が %変化した時のシミュレーションを行っている。そ の結果得られたのが,図 から図 である。結果をもとにして,以下各財の変 化の影響を検討する。

初めに食料に関しては図 にも示しているとおり,自己価格弾力性が− . から− . 程度となっており,基本的にはこの食料に関する価格の影響は,低 所得層がより価格に非弾力的に対応せざるを得ない点が指摘される。低所得者 層は食料価格の上昇を受け入れざるを得ない状況にあることが想定され,実際 に食料価格上昇により購入量は減少するが,購入金額自体は増大し,全体の支 出に占める割合は .%から .%ほど増大する。その影響は低所得者層の方 が深刻であり,それに比較すると高所得者層は低所得者層よりは影響は軽微で ある。食料支出の実質的な増加のために,代替的に奢侈財的性格の雑費目の購 入減少に影響し,結果的に雑費目の支出シェアの減少を招く。その程度は低所 得層で− . %,高所得者層で− . %程度であり,低所得者の方が雑費目の 支出シェアをより大きく減らす結果になる。それ以外の財に関しては基本的に 影響は大きくないと言える。

次に住居に関する価格変化の影響については図 に示している。この財に関 しては価格弾力性に関する計算結果の議論でも示したとおり,Marshallの意味 での自己価格弾力性も多くの階層では負になっていない。第 所得階層のみが 負の自己価格弾力性を示すが,他の所得階層は高所得になるに従い,購入量を 増やし支出シェアも増加させる。価格の上昇とともに購入活動を活発化される という方向性は,本来の消費財の性質から考慮すれば幾分奇異な印象を与える が,住居購入を資産形成の一部として考慮すれば高所得者層の方が価格上昇に 大きく反応すること自体は納得できる。この住居の増減によって反応するのは 基本的に雑費目であって,住居の財の増減に伴い,逆方向に反応する。ただし,

前述したように住居の反応は通常の消費財では捉えきれない反応であり,デー タの問題か財の性格の問題かも含め今後検証する必要がある。

光熱・水道の価格変化の影響については図 のとおりである。どの所得層で も自己価格弾力性が− . 程度である。全体的に自己価格以外の弾力性につい

(22)

第 1 階級 第 1 階級

第 1 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 5 階級 第 5 階級 第 5 階級

−5

−3 1 2

−1

−6

−4

−2 5 (%)

4

0 3

F H U C O

第 1 階級 第 1 階級

第 1 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 5 階級 第 5 階級 第 5 階級

−0.30 0.00 0.10

−0.10

−0.40

−0.20 0.40 (%)

0.30 0.20

F H U C O

てもどの所得階層でも変化はほとんどない。唯一第 所得階層の雑費目のみが 若干の異なった反応を示しているようであるが,全体的にはもともとの光熱・

水道支出シェア自体大きくはなく,光熱・水道の変化は光熱・水道以外の財の 量や支出シェアに大きく影響を与えない。

住居(H)価格の %価格上昇が与える影響

⒜ H の変化による各財消費量への影響

⒝ H の変化による各財シェアの増減

(23)

第 1 階級 第 1 階級

第 1 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 5 階級 第 5 階級 第 5 階級

−0.6

−0.2 0.0

−0.8

−0.4 0.4 (%)

0.2

F H U C O

第 1 階級 第 1 階級

第 1 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 5 階級 第 5 階級 第 5 階級

−0.02 0.00 0.01

−0.03

−0.01 0.03 (%)

0.02

F H U C O

一方,被服及び履物の価格変化の影響について見られる影響は図 のとおり となる。自己価格弾力性に関しては光熱・水道に比較して大きい− 程度を示 しており,どの所得層でもあまり変わらないようであるが,被服及び履物以外 の非自己の財に関する反応は所得階層によって変わっている。一番特徴的なも

光熱・水道(U)価格の %価格上昇が与える影響

⒜ U の変化による各財消費量への影響

⒝ U の変化による各財シェアの増減

(24)

第 1 階級 第 1 階級

第 1 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 5 階級 第 5 階級 第 5 階級

−1.0

−0.2 0.2

−0.6 1.0 (%)

0.6

−1.2

−0.4 0.0

−0.8 0.8

0.4

F H U C O

第 1 階級 第 1 階級

第 1 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 5 階級 第 5 階級 第 5 階級 0.02

0.04

−0.02

(%)

0.06

−0.06 0.00

−0.04 0.08

F H U C O

のとしては雑費目の反応であり,雑費目が被服及び履物と

Hicks

的に代替的で あることから,被服及び履物の価格上昇は雑費目の購入に寄与するようであり,

所得の低い層ほど代替が大きいことが読み取れる。ただし,この影響も光熱・

水道の影響分析と同様,支出シェアがもともとが大きくないこともあり,全体 被服及び履物(C)価格の %価格上昇が与える影響

⒜ C の変化による各財消費量への影響

⒝ C の変化による各財シェアの増減

(25)

第 1 階級 第 1 階級

第 1 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 5 階級 第 5 階級 第 5 階級

−0.6

−0.4

−0.2

−1.0

(%)

0.2 0.0

−1.4

−0.8

−1.2 0.4

F H U C O

第 1 階級 第 1 階級

第 1 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 2 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 3 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 4 階級 第 5 階級 第 5 階級 第 5 階級 0.00

0.05 0.10

−0.10

(%)

0.20 0.15

−0.20

−0.05

−0.15 0.25

F H U C O

的に与える影響としては軽微にとどまる。

最後に,雑費目の価格変化については図 のとおりである。この財は食料同 様もともとの支出シェアが大きいこともあり,価格変化による影響も大きい。

自己価格弾力性の変化はすべての所得階層に関して負の影響を与えているが,

雑費目(O)価格の %価格上昇が与える影響

⒜ O の変化による各財消費量への影響

⒝ O の変化による各財シェアの増減

(26)

特に,低所得層の影響は大きい。第 所得階層が− . 程度と大きく反応する のに対し,富裕層である第 所得階層が− . 程度と所得が上昇するにつれて その反応は小さくなる。また,Hicksの弾力性では大きく差異は示さないもの の,所得効果が大きく,価格上昇によって生じた所得減少分が雑費目以外の財 に波及している。特に低所得階層では食料への,高所得階層では住居への負の 影響があると推察される。支出シェアの面では,価格上昇があった雑費目の シェア自体が減少することは当然として,低所得階層が− . %程度,高所得 階層が− . %程度の支出シェアの変化と低所得階層の方が変化が大きい。そ の一方で,反動的に起こる食品への支出シェアの変化の影響も第 所得階層の

. %程度の増,また第 所得階層の . %の増加と,低い所得階層の食料 支出割合をより増加させることが分かる。なお,食料および雑費目以外の財に 関しては影響は軽微にとどまり,全体的に雑費目によるそれらの財への影響は ないものと考えられる。

お わ り に

本稿では経済理論的な消費者の行動を想定し,所得階層の違いにより,行動 に変化が確認できるかという点を中心に分析を行った。比較的長期の時系列デ ータであったことより,経済学的な側面以外に社会的な習慣の変化などが影響 している部分も少なからずあることは否定できない。

分析した財の中では住居に当たる財が消費財の傾向を示さない部分が多々見 られる。この性質は,年次データでの分析ばかりではなく,もう少し短い期間 の四半期データによる分析にでも同様な傾向を示す。今後,消費を分析する上 では,住居に関する取扱いはより慎重に行う必要がある。

財別の反応について,特に食料に関しては我々が通常期待している通りの結 果が導かれた。食料は必需品であるばかりでなく,基本的には所得の低い層ほ どその価格影響力が大きく,価格変化による自分自身の購入量や購入額に影響 があることに加えて,代替財となりうる雑費目にも影響を与える。特にその食 料価格の上昇に関する影響は非不可避的に食料購入量の減少と,一方で全体の

参照

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