579
株式の相互保有と議決棒株式の相互保有と議決権
岬英米法を中心と.して−−
−−1、7さ −−
平 田 伊 和 男
目 次 第一苛 総 説
一序
二 軍」・型と取締役解任 三 軍二型と Fifth Avenue事件 四 第三型
第二茸 日本法 一・商法第210条 二 親子会社の基準 三 独禁法 四 子会社の議決権 第三茸 イギリス法
Ⅰ 総説と沿革
−・総説 ニ TI℃VO工法理 三1929年会社法 四1947年会社法 五.1948年会社法
苅1948年会社法における相互保看
−・親子会社の定義 二 子会社による株式取得 三 田政上の援助 四 計辞書類その他
Ⅱ ジエソキンス報告讃:
−・親子会社の定義
子会社の議決権 子会社による株式取得 相互保険会社 則政」二の援助
二 三 四 方
580 第36巻 第5号
−・− 36 m
_l ノミ
第四葦
I
Jl
第五章
洩莞浸封こついて アメリカ法 相互保有の禁止
自己株式 株式の相互保有 相互保有株式の議決楯
判例 嘉法
郊外株主の救済
第一章 総 説 一 序
コソツ∴ルソの企業匿おいて,接数の株式会社が相互に卜株式を保有する形態と しては,例え.ば甲会社が乙会社の株式を保有し乙会社も甲会社の株式を保有す
(1)
るというような直接相互保有,いわゆるdross ownership(cross−holding)の 場合と,例えば甲会社ほ丙会社の株式を保有し,丙会社ほ乙会社の株式を保有
し,乙会社が吏紅甲会社の株式を保有するというような,間接相互保有〜 いわ
(2)
ゆるCircular ownershipの場合があるが,何れの場合に.も甲会社の理事者が 他会社の取締役会を支配しているか,或はその協調が得られる場合牢は,乙会 社保有の甲会社株式に議決権の行使を認めるとすれば,理事者による諸種の濫 用のおそれが生じ,そのような理事老は,自らは株主でなく,企業に対する出資 をしていなくとも,株主総会に.おける解任決議を回避し,何時迄も会社支配を
(3)
維持することが可能となる。
tl)Notes,The votingof stock heldin cIOSS OWnerShip,76HarvardLaw Review p 1643〔.hereinafteICited as76Harv L RI〕;BoaId of Trade,Report of the Company Law Committee(note,Chairman R Hon・LordJenkins),Cmnd・1フ49,
1962,§152,p55〔二hereinafteICited asJenkins〕
(2】Jenkins,ibid.;SEC,Report oninvestment trusts andinvestment companies ptIII,Ch7,pp2 738et seql,76Harv LR・,fn小10at p1643
(31Jenkins,ibid.;CfGowe工,Corporate control,the battle for the Berkley,68 HalV即d Law Review pp 1176et seq・・
株式の相互保養と議決樅
581 −− ∂7 叩−
寛一・型と取締役解任
(−)又,株式の相互保有に・は保有株式数により次の三つの形態が考えられ る。第一・ほ,甲会社が乙会社株式の過半数を保有し,乙会社も甲会社株式の過 半数を保有する場合であるが,この場合相互保有株式軋議決権の行使を認めれ ぼ,理事者は双方の会社において過半数を支配するのであるから,その地位を 維持することが可能であり,更に自らの望む者に支配を自由に譲り渡すことも 可能であって,理事者ほ出資を伴わずして株主支配を廃除しうることとなる。
取締役の選任について,他の少数派株主が累積投釆による選任に成功しても,
取締役会を支配することはできない。
(ニ)(1)取締役鱒任期中の解任については,我が国でほ・株主総会の特別決 議に・よることとされている(商法2即条)ので,特に・職務挙行に閲し不正の行私 又は法令定款違反の重大な事実があって少数株主による解任請求権行使が奏効
しない鱒り(商法257条3項),支配継続は一層容易である。
(2)解任要件について,イギリス法においてほ,かつてほ.取締役の解 任について定款に.定めのないときは特別決議をもって定款を変更し解任しうる
旨の規定を設けた後でなければ解任しえないとされていたが,1945年のコー・エ ソ報告書により改正が勧告され,1947年会社法第29条ほ.成定法上 附随定款
(articles)又は会社と取締役との間の合意の如何を問わず,株主総会は通常決 議をもっで取締役を任期満了前に解任することができるものと定め,1948年会
(4)(5)
杜法第184条も同条をそのまま受継いでいる。この改正は,我商法が従来取締役 解任に通常決議を要していたのが,同じ頃(1950年)に・特別決議を要すると改 正されたのと対称的である。
14)Rowland,Index・COmpanion to the Companies Act,1948,p.41;Connelland
Purse,Companies and companylaw,pp146 et s・,303et s.・;中村・経営者支配 の法的研究134巽以下;小町谷・イギリス会社法247貢以下参照。(5)イRし,私会社において二1945年7月18日(コ−エソ報告許川行の日)に終身取締役であ ったものには本条は適用されない(同勢1項但書)。本条による解任のためには,特別通 知(142条,総会28日前迄に議案を掲げた通知をなすことが決議の効力要件とされる)が なされることを要し,解任されるべき取締役にも通知が必要である(18墾免2項)。その 取締役は決議において弁明し,又弁明書を提出することができ(同豹3項),契約上の 払害賠償請求椎ほ妨げられない(同剋6噸)。
582 第36巻 第5増
ー、てJざ −−
(吉)アメリカ故においては,19世紀中共に.は株主総会に取締役の解任樅 が認められていたが,20世紀初期には,株主からの議決権分離の風潮より普通法
(6ノ
上原則として株主には取締役解任権がないとの法理が確立された。したがって,
解任権を認める州制定法,定款又は榊随定款のない場合にほ,普通法の法理に ょり,取締役は任期満了前ほ相当な理由のない限り株主全員−・致をもってして も解任されることがない。しかし,州制定法で株主軋取締役解任権を認めるも のが遂次増加して−いる傾向にあり,それらは各州により,解任の要件とし七総
(7) (8)
会過半数決議を要するものと三分の二の多数決を要するもの,又,理由を必要
(9) (10)
とするものと要しないもの,更に,累硫投票に.よる少数派取締役の多数決に・よ る解任を避けるために,全取締役の−・括解任の場合を除き,個別的解任には,
その決議に際し累積投票により−・人以上の取締役を選任するに.足る数の反対が
(11) (12)
あれば解任しえないとするもの,がある。又,裁判所の取締役解任権を,相当な 理由があるとき会社又は会社のためにする株主,法定数の株主又は検事総長の
(13)(14)
(15)訴により認める州制定法がある。裁判所の解任権はこれを認めない判例もあり
16)Berle and Means,The modern corporation andprivatepropertylPp・139et s.
(7)California CivilCode(旧),§310(1);Ma工yland Annotated Code,Art23,
§19;Michigan GeneIalCorporatiorlLaw,§263;Pennsylvania Business Corp′
orationAct,§4:05;SouthDakota Code1939,§§11hO70年;Utah Revised Stat−
utes(1933)§18−2−、26;Revised Statute Washington§3803−31JV
(81Idaho Code Annotated1932,§29−138(4);Nevada GenesalCorporation Law,
§33;North Dakota CompaniesStatutes
(9)Michigan GeneralCorpoIation Law,§26rr3
(10)California CivilCode(旧),§310(1)
皿 California CivilCode(旧),§310;Louisiana GeneralCorporation Law,§34−−
ⅠⅠⅠ(b);Michigan GeneralCorporation Act §13−3;Minnesota Business Cor−
po工ation Act§28;NevadaGeneralCorporation Law,§33;OhioGeneralCoI・
poIation Act,§8623¶56;Pennsylvania Business CorpoIation Act,§405
(12)Ballantine,On CoIpOrations,IeV ed1946,pp435et s・,fn37,40
(1劫 Cali董0miaCivilCode§310(3),PensylYaniaBusinessCorpo工ationAct,§405
−C,15PS・§2852一−404・−C,(取締役紅詐欺若くは不正な行為又は会社に関する権限 若くほ裁愚の尊大な濫用があるとき社外株の10%を看する株主に解任の訴の提起が認め
られる);New York Stock Corporation Law,§60.(検事総良にのみ請求を認めるが,
実際上は公益に閲しない限り検事総長は関与しない)。
(14)Bauantine,OpCit.,pp4=37et s.,fn55at p439;大隅・アメリカ会社法におけ る取締役会・英米会社應胡甥81頁以 ̄F参照。
115)HauandeIVBreeze CoIp‖,Inc.,131NJh Eq585,26A(2d)507,521,aff/d131 NJEq 613,26A(2d)522,28A(2d)298,Ballantine,Op Cit.,p438
株式の相互保宥と議決権
583
ーβ9 一一一−(16)
厳格に解されている。
このように,解任権の観点から見てもその要件ほ,英国では変らないが日米で は選任の場合よりも過重されており,日米における裁判所の解任権は,少数株主 に機会を与えるものであるが公益的性格を有するものというべく,更にその要 件が過重されている。それ故に,取締役ほ,株式過半数の支配により株主支配 を廃除することが可能となる。
三 界二型と Fifth Avenue事件
l (−)次に.,相互保有の第二の形態は,甲会社が乙会社株式の過半数を萌し,
乙が甲株式の少数を保有する場合である。この場合,親会社甲の取締役の支配 しうる自社株式ほ少数であるから,他の甲会社株主との議決権争奪戦(pI■0Ⅹy fi如t)により更迭を避けうるとは限らない。しかし,相当数の株式は選任決 議に加わらないことが多いのであるから,甲の理事者の支配する少数株式が決 議において優位を占めうることが多く,他の株主ほたださえ困難な議決樅争奪 が一層困難となる云
(ニ)事例を挙げれば,l=・.ユーヨーク州に■おける1961年のDal−Tran Serv.
り丁、
Co.対 Fifth Ave.Coach Lines,Inc.事件において,Fifth Ave.Coach Lines,Inc.は,子会社Grey Line Bus Tours,Inc.の発行株式の68%を所 有していたが,Grey社もFifth社の発行株式の23.2%を所有していた。これ
は,第二の形態に属する相互保有である。親会社Fiftbにおいては1961年初 期に $892,000に.のぼる損失をこうむったので,Fiftbの取締役が社長をし
ている法律事務所に対する弁護料8年分 $640,000の支払と,取締役2名に 対する年金 $13,500及び $16,000を $35,100及び $27,000に.増細する 提案に対する非難が集中し,理事者は攻撃された。1961年5月8日に開かれた
(18) Fiftb社の年次総会において,議論は沸騰し,議事日程も利益開示の後で取締
(161前許13参照。なお商法第257条第3項参照。
u7)30Miscl2d236,217N Y S2d193(SupCt・),reV′dl墾App・Div 2d349,220 NY S12d549(1961),76HarvlLRlpl1642u
(181New York Times,May9,1961,p.53,COl6ほこの総会を評して,ダニブルック の苗の如き斗事の場面と法廷の裁判のための本稽古の如き場面との中間的な状態であっ たと記している。
第36巻 第5ぢ 584̲
ーー ▲J(ノ ー
役適任の件古こ入るぺきところ,この順序は逆にされ,それに対し「詐欺だ」の 叫びがあり,「この総会は遵法である」との株主の声の後に・長い拍手が続き,
45日延会の動議が口頭昧試で行われた様子であったが,議長はその否決を宣し て取締役選任の議事を進めた。裁判所は,「証拠に.よれほ,周章狼狽を来した 取締役会にほ,充分な討議を妨げ,株主に必要な情報を与えない臼的のあった
ことが認められる−j と述べている。このような模大な損失と激しい反対に.拘ら ず,理尊者ほ硝遜を得たのである。その勝凶ほ,Fift血理事老がG工eyによる 相互保有株式を利用したことにある。GI・eyの取締役の半数以上はFiftbの取 締役で占められていたが,Fiftbば,理事者が攻撃される迄は,GfJey所有の 28.2%Fifth株式の議決権な行使していなかった。そして,Fifth とGrey
との間紅結ばれていた議決協定により,Gr・ey紅おけるFiftb(68%所有)以 外の32%所有の2株主に対して,Fif tb.は,自社株式中GIey所有の23.2%の
うちの32%の割合で議決権を関与していた。しかし,Fi董tbは,票数が危くな ると,協定を一−・カ的軋破棄し,GIey所有株式に対する支配を国後した。Fif血 の総会会日の8日前に開かれたGI・eyの総会において−,Fiftbの取締役適は,
退任によりGreyの取締役会における多数を占めた。残りの少数の者もFifth 理事者の英人形であったといわれる。この取締役達はGIey所有のFifthの 株式全部に・ついて議決権を行使することができた訳である。
このような操作が行われたに拘らず,ニーユ.−ヨー・ク州最高裁判所上訴部は,
下一級審判決を破棄して,Fifthの議決協定の一・方的破棄と相互保有に係るGrey 所有株式の議決権を認めている。もっとも・,この点に・関する米国法は,後述の
ように確定してはいない。叉,ニユ.−ヨL−ク州制定法(New York Business
Corporation Law)も,1962年にMBCA(ModelBusinessCorporationAct)
にしたがって改正され,改正法第612条(b)項は子会社所有の親会社株式の議決
し】tl■
縦を認めていないので,改‡仁法の施行された1963年9月1日以降であれぼ,本 判決の結論は興ることになる。
119)76Ha工ⅤL.Rり,p1650
株式の相互保有と議決臓
585
一一.〃∴−
四 第三型
(・−)次に.,相互保有の第三の形態として,甲乙両会社共に相互の株式の少 数を保有する場合がある。この場合に.ほ危険は最も少いように.思われるが,し かし双方の会社が同一・の支配下にある場合に.ほ,仮に山・方の会社において新な 淑締役が勝利を得ても,他方における地位を保証されないから,この新理事者
はたえず敗者復活のおそれ紅直面するととに■.なる。原理車名は,少数株式の支 配を通じて∴優利に.議決権争奪戦に入れるので,新参者は,両会社において同時 匿,困難な議決磯争奪戦を行わなけれほならない訳である。
(ニ)上述のように,株式の相互一保有ほ,いずれの形態においても経営に対す る株主支配の鍔化ないし排除を来すものである。その議決権の行使により,理 事者ほ,究極的な株主支配である解任を避けることができ,更に,子会社の資 金を使用して自社株式を買入れ,他の株主の支配権を弱ぐすることができる。
更に又,子会社に対する投資を単純に帳乳と子会社株式の簿価そ表示する記 帳方法紅よれほ,理事者は,相互保有忙.より,−−・つの利益剰余をもって相互の
lご111
剰余金増加を繰返して,会社の財政状態をいつわって示すことも可能となる。
第二章 日本法
一 商法第210条
我が国においてほ,株式の相互保有に.ついてこ.れを直接に規制する明文の規 定は存しない。会社間に親子関係のある場合に,子会社が親会社株式を取得す
ることほ.,商法第210条の自己株式取得禁止規定の脱法行為として禁止される
(ご1「
と解するのが多数説である。
親子会社の基準
(1)しかし親子会社の間にどの程度の親子関係のある場合に相互保童が禁
」Lされるのかほ明鱒でない。山般的に親子関係,即ち支配従属関係のある場合
(20)Ibid.リPp1644et s、,.
21)二豊崎・自己株式の取得・株式会社法講座2巻606貰,同註五掲載首;大隅・法人格否 認の法理・会社法の諸問題13貢・同誌1参照。
586 第36巻 第5号
ー42−
を広く包含するのが多数説の趣旨と思われるが,両者の間に財産的単一▲性の認
(22)
められる場合に限る見解も有力である。
(2)我商法上親子会社に・つき明確な基準ほ存せず,唯次の二つの関連規定 があるにすぎない。証券取引法の適用を受ける会社については,同法第24粂に 基き大蔵大臣に提出する報告書作成に際し,同法簡193条に基く「財務諸表等の 用語,様式及び作成方法に関する規定(昭和25年証/取委規則lモ巧L)」によるので あるが,同規則第10粂第3項紅10%の株式保有する会社を「関係会社」として 関係会社との関係を財務諸表の特別記載事項として要求している。
(5)又,商法第281粂に掲げる計算書類の記載方法を定めた「株式会社の貸 借対照表及び損益計算書紅関する規則(昭和38年大蔵省令81号)」は,「会社が他 の会社の発行済株式の二分の一せ超える株式を有する場合」に,貸借対照表紅 おけるその株式の区別記載(28条),その会社に対する金銭債権債務の註記(9 条,29条),損益引算書におけるその会社に・対する取引高め註記(40条)を要
(23)
求している。
(4)関係会社の概念ほ広いものであるが,後者の大蔵省令31号の施行後は,
これを上述の意味における親子会社の−・応の基準とする見解も成立する。な お,同規則は貸借対照表上自己株式の区別記載を要求する(12条)が,子会社 所有の親会社株式紅ついては規定がないので,その区別記載の要否は疑わし
(24)
い。
三 独禁法
相互保有が私的独占又は不当な取引制限となるような場合にほ.,持株会社の 設立(独禁法9粂),会社の株式保有(10,11条),役員の兼任(13条)が,独
(2a 大隅・企業合同法の研究235貰以下;鈴木教授ほ法人格を否認しうるような場合のみが
問題となるとされる(汐ユ.リスト161号23真);福岡・自己株式の取得についての立法 論・私法23号134貢ほ具体的に脱法行為の有無を判定するはかないとされる;一人会社 の如き場合は法人格否認の法理より相互保有の禁止もー・般に肯定されてい
社の独立性の限界■私法19号111頁参照)。
(2謝 商事法務研究279号347貢以下;矢沢等・株式会社の貸借対照表及び損益討界苔に関す る規則の研究・商事法務研究295弓353貫,296号391貫参照。
鋤 矢沢等・前班295号357貫参照。
\
587 株式の相互保有と議決権 ・/、 )・−−
占禁止法による禁止叉ほ制限に服することになる。
四 子会社の議決権
(1)子会社が適法紅親会社株式を所萌する場合のその株式の議決灘湛.つい ては,自己株式について−の商法第241条第2項の場合と同じく,これも休止す
\ごご・\
るものと解するのが多数説である。これを休止するものでほないとして,特別 利害関係人による議決権行使の場合に包含して商法第239条第5項より説明し,
「26)
排除される見解もあり,又,解釈上は議決権否定まで押し拡げるのほ行き過ぎ
lJ:、
であるとされる反対説がある。
(2)その保有が違法とされる取得によるものである場合には,取得自体の
(28)
効力も問題であるが,そ¢効力の如何に拘らず,保有株式の議決嘩の行使は,
結論としては認められないことに.なるであろう。
(写)東に,例外としで取得を許容される場合を除いた,一腰的に違法性.の
(25)大森■議決権・株式会社法講座3巻903頁;田中(誠)・会社法23唱。
(26)松田・株式会社法の理論202百以下(自己株式についても議決権ほ休止するのでなく 共益権が不存在であると説く,231貫以下)。
(27)大隅・企業合同法の研究268貢以下。
(28)違法な自己株式の取得の場合についてほ,取得の効力ほ,資本原則を重視してこれを・
絶対無効と解するのが通説・判例である(大森・自己株式の取得・法学論叢29巻6号 939貢,田中(桝)・改訂会社法概論下299乱石井・改訂商法247貢,松田・会社法概論 165貢,松本・日本会社法論184頁,実力・改言]会社法学Ⅱ365貢,伊沢・会社法354頁,
大判大正12年7月5日商事判例集151条3番,大判昭和8年11月11日間6番,大判昭和16 年2月20日民集20巻247頁,大阪地判昭和31年6月29日下民集7巻1708頁判批バンキン グ129号220頁)が,取引安全の見地から有効説もあり(田中(誠)・会社法203貫,曽我 部・自己株式取得に関する日米法の比較的考察・−・橋論叢31巻5号430貴,烏賀陽・株 式会社ノ自己株式ノ取得ノ禁止ニッキテ・商法研究2巻154頁■),又,近年では腰効説を
修正して,フランス法の如く相対無効の考え訪を採り入れる見解(豊崎・前掲617,618 頁,なお服部・会社法提要169頁),アメリカー・部州法の如く取消し得ぺき行為と解する 見解(上田・株式会社における自己株式の取得・法学18巻4弓541頁)もあり,更紅再 売却により取得行為の噸症が治癒されるとする見解(豊崎・前掲617貢,矢沢・自己株 式の保有について−・ジュリスト161号27頁,上田・前掲542貫)が生じている。子会社に
よる取得の場合も,それが違法とされる場合にほ,通説は,自己株式の場合と同様に解 することになるのであろう。しかし,この場合にほ取引安全を顧慮すべき理由がより強 いので,この場合に無効.混を修正する見解があり,子会社による取得ほ譲淑人が悪意で ない限り有効であるとされる(大隅・仝…冒会社法論上292貫,鴻・自己株式禁止違反の 効力・商邪法務研究41弓202琵,なお会社の計界による名義人取得について同様の見解,
矢沢・前掲26畏,同じく善意の譲渡人に無効を対抗しえないとするもの,三戸岡・白木 屋事件をめぐる法律問題・ジュリスト57弓15貢)。
第36巻 第5号 588
ー一一l・/J −・
認められていない相互保有株式把ついては,その議決権の行使は−・般的にほ認 められるものであろう。
我が国における株式の相互保有についての法は以上のような現状であるの で,次に,これらの点に関する英米法の状態について述べる。
第三葦 イギリス法
Ⅰ 総説及び沿革 一 総論
イギリス法においては,株式の相互保有紅関する法は,コー、エン委員会の勧
告により1947年会社法(The Companies Act,1947,19&11Geo.6,C.47)
が親子会社に㌧関する規定を置き改正を行うまでは,未確定であった。
ニ TIevoI・法理
自己株式の買入については,1887年のTrevor対Whitworth事件(12App.
Cas・409)により,普通法i,有限責任の会社の(InreBoroughComme土Cial and Building Society,2Ch.242(1893))自己株式買入れは,基本定款に・授権
された適法な目的の範囲外であるので能力外の行為(Ultra Vires)であり;
法定の手続(The Companies Act,1867,80&31Vict.c.1串l)が履放され
(29)($0)
ていない資本減少であるので無効であるとの法が確定された。
三1929年会社法
(1)財政上の援助
1929年会社法(The Companies4ct,1929,19&20Geo・5,C・23)は,
(3り
TIeVO工・法理の脱法行為を防止するためのグリーン委員会の勧告に.より,会社
C29)Buckley,On the Companies Act,13ed.,1957,pP,134,135;Ha王sbury′s Laws of
England,3ed.,VOl16.,1954,p170;Farrar,Companylaw,4ed 1955,pl135;I J.Levy,Purchase by an Englich company ofits own shares,79University of
PennsylvaniaLawReview,pp小52ets・;Tr?VOr事件判決文ほ,BerleandWarren,
Business organisation−COrpOrations19・18,Pp.676et s.
(3瑚 自己株式に関するイギリス法の形成経過については,拙稿・イギリス故における自己 株式法理の形成・海上保安大学校昭和37年度研究報告第1部213頁以下を参照。
81)IhJh Levy,Oph Cit.,p59;C董Jenkins,pし62
株式の相互保有と議決磯 一一.ノニラl−−
589
が〔ト己株式の員入れにつき朗政上の授助な与えることを原則として適法として ほならないとして違反行為に罰金を科する規定を置いた(同法45条)。
(2)相互保有
それ故に,本条の直接の目的とする所では.なかったが,株式の相互保有も,
−・方の会社の財政上の授助による買入に基く限りに・おいては,本条にカバ−さ れる結果となるので,相互保有のための財政授助行為は原則として適法とされ ないことになった。
四1947年会社法
(1)財政上の援助
コーユニン勧告に.よる1947年法ほ,同条を受けついだが(73条),新たに頂 入」のはかに「引受」の語を追加し,会社が従属会社である場合にほ「自己の 株式」のはかに「その持株会杜の株式」の語を加えたので,会社が自己の又は その持株会社の株式の買入叉ほ引受けについて−財政上の援助を与えることが原 則として−不適法となっ.た。
(2)親子会社
そして,同法ほ,持株会社(holding company),従属会社(subsidiary company)の定義規定を置き(18条),更に,罪80条を新設して:,従属会社ガ;
持株会社の社員となることを原則として禁止し,持株会社の株式の従属会社叉 ほその名義人に対する割当,譲渡はすべて無効であると定めた。
五1948年会社法
1948年会社法(The CompaniesAct,1948,11&12geo・C・38)は,1947 年法のこれらの規定を,そのままに条数の変更のみで受継いでいる。(1947年
法の73条,18条,80条はそれぞれ1948年法54条,154条,27条に受継がれた0
し‥;こ1
ただ154条については若干の改正点がある。)
(3辺 第154条は,(1げ会社の子会社を加えたこと,(2)発行済株式資本又は議決権濫代え,
術平株式資本の定義を置き,その過半数所有を要件としたこと,(3)支配と支配のための 株式所有の定義をより輝格に・したこ・と,の3点で改正がなされている9Rowla叫OP Gitn,P38
590 第36巻 第5号
■・■・・−・J(;一−
Ⅱ1948年会社法に.おける相互保有
したがって−,1948年会社法の下では,株式の相互保有ほ次のようになる。
− 親子会社の定義
先づ両会社ほ,同法154条の定義に該当する場合には親子会社であるとされ て,27条,54条の禁止規定の適用を・うけること.になる。
即ち,甲会社が,乙会社の社員であり月乙の「取締役会の構成を支配」して−いる
(33)
場合,又は乙の「衝平株式資本」(equity share capital)の名目額の半数以上を 所有している場合,或は乙が甲の従属会社である場合,においては,乙は甲の 従属会社である(154条(1J項)。ここで,「取締会の構成を支配」するとほ,甲会社 が,他の者の同意,協力なくして行使しうる力の行使によって−,取締役の全部 若しくは半数以⊥を選任し又は解任しうる場合にのみ限られる(154条(2)項)。
そして,甲がそのような力を成る人のために行使しなければその人が選任さ れない場合(同項(a)),或る人の選任が甲の取締役としての選任に必然的に伴う 場合(同項(b)),甲自身又ほ甲の従属会社が取締役の地位を占める場合(同項(c))
には,本条広おける意味で,甲ほ取締役を選任しうるものとみなされる(同項)。
そして,会社は他の会社が従属会社である場合に限り,その持株会社とみな される(154条(4)項)。
なお,本条には署千の例外が定やられており,信託による甲会社のための受 託者による所有株式ないし行使しうる支配力は,上記の定義において除外され る(154条(3)項(a))。但し,単なる信託の場合を除いて,甲の名義人,又は甲の 他の従属会社,若くはその会社の名義人,による所有乙株式等は含まれるもの
として扱われる(同項(bり,叉,乙の社償,又は社債発行担偶のた、めの信託証書,
の条項により所有する株式等は無視される(同項(c))。甲会社又は甲の従属会社 の正∴常の事業が金銭の貸付を含む場合のiE常の事業過程における取引のため紅 限り,担保として上述の株式を所有し又ほ支配力を行使しうることとなった場
(33)衝平株式資本とは,発行済株式のうちで,利益配当及び資本の分配につき特定徽以上 の請求権を有しないものを,発行済株式から控除したものをいうと定義されている(154 条(5)堺)。
株式の相互保有と議決権
爛− 47 −【
591
合も除外される(同項(d))。
ニ 子会社紅よる株式取得
上記にしたがい従属会社とされる会社は,次の通りに相互保有が禁止され る。
会社はすべて持株会社の社員となることができず,叉,持株会社株式の従属
(34)
会社又はその名義人に対する割当又は譲渡は無効とされる(27条(1)項)。但し,
持株会社が単なる代理人又は受託者に・すぎない場合にほ本条ほ適用されない○
この例外が認められる場合ほ,受益者が第三者であることを要し,そして,会
● 社が金銭の貸付を含む事業の正常の過程における取引のための担保として利益 を有することを要する。(27条(云)項)。
本法施行の際(1948年7月1日),持株会社の社員であったものが,引続き 社員であることは妨げられない。但し,従属会社ほ持株会社における議決権を 有しない(27条(3)項)。
したがって,従属会社ほ何人の名義をもっでするを問わず持株会杜の株式の 買入又ほ引受ができず,これに違反する取得は無効であり,例外的に保有が許 容される2つの場合のうち算(3)項の場合には保有株式の議決権は認められな
(35)
い。
三 財政上の援助
更に,従属会社は,持株会杜の株式の買入叉ほ引受について財政上の援助を
(3¢)
与えることも不適法とされ(54条(1)項),違反した場合にほ,会社と役員ほ罰 錮 第27条(41項により,従属会社の名義人にも本条が適用される。
脚 違反した場合も罰則の制裁はない。但b,次項参照0
(36)第54条(1)「本条の定めるところにしたがい,会社が,直接又は間接に,且貸付,保証,
担保供与,その他の方法檻より,何人によるを問わず,為されたる又ほ為さるぺき,会 社の,若くは会社が従属会社であれぼその持株会社の,株式の買入又は引受のために・若
くほ当該買入又は引受に関連して・,財政上の援助を与えることを適法としては.ならな い。
但し,本条は次の行為を禁止するものと解してはならない。
(a)金銭の貸付が会社の正瀾の事業の部分である場合の正常の事業過程における金銭の 措困 −。
(b)会社において給与を受けて帝腑されたる,又は役掛こある,いかなる取締役をも合
592 第36巻 筍5弓
ー→ 4β 一−、
r37)
(38)金を課せられる(54条(2)項)。しかし,違反の援助行為の効力は,疑があるが
\こ19■
無効ではなく(Victor Battery Co対CuIry s Ltd.事件),遵法な援助に
(40)
よる株式の買入も有効である(Spink,Ltd.対Spink事件)。この原則紅対し て,金銭の貸付を業とする会社の貸何と自社従業員の持株に・、ついての掟助の場
(41)
合の例外が認められている。(54条(1)項但書)。
t
この規定は,相互保有が,−・一方の会社の財政上の援助に.よるその会社の株式 の取得に塞く場合であれは,その援助行為をも不適法としていることに注意さ れる。
四 言F算書類その他 ¢
(1)次に討算畜類についても,持株会社は連結勘定,即ち鑓層会社との総 括貸借対照表及び総括損益計算書を作成し株主総会に提出しなければな・らなル、
とされている(150条)。
(2)なお相互保有の場合において,子会社における親会社以外の少数株主 ほ,相互保有株式軋ついて有すべき割合に応じた議決権を奪われること.紅なる
(27条(3)項)のであるが,′この点に閲し,同法は,親会社に,持株数が子会社 の90%に達したときほ少数株主の株式の強制指値譲受の申込(take−OVer bid)
ができることを認めている(209条)。
(5)叉,少数株主は,圧制を受けている場合には裁判所に対し申立匿より めた会社の使用人により,若くほその利益のために.,保項さるべき株式の,受託者に.よ
る買入又は引受であって,会社又ほ持株会社の,全額払込済株式の買入れ又は引受のた め紅,当面相当の期間紅恒る何らかの計画庭したがった金銭の供与。
(C)取締役を除き,蕃意に会社に雇傭されている老に,受益的所有の方法により保有す べき,会社又はその持株会社の全額払込済株式の買入又は引受を得さしめる目的をも
って,会社がその者に対して行う黛付J
脚 第54粂(2け会社が本条紅違反して行為するときほ,会社並びに聯思のある会社各役員 は100ポンドを超ない罰金に処せられる。_巨
(38)cf.Palmer,Company Precedents,1948,p‖479;Farr・ar,Op」Cit.,p 130;AB Levy,Private corporation and their control,ⅠⅠ,1951,P621。
(3劫 Ch242・1AllE・R・519,(1942),同条違反の援助行為としての担保供与は無効とならない。
(姻 Ch544,1AllE、R599,(1936),違反の効果としては刑事音任のみで,無効とする 規定がないことを理由とする。
(41)前詳36。
593 株式の相互保有と議決権
ー49 −
帯封0条による命令を申請することができる。裁判所紅ほ,株主が圧制を受け ており,月解散を正当とする事実が存するけれども解散が不公正である,と認 めるときは,裁判所の適当と認める命令をなす広範な裁壷権が認められてい る。株式の買取,定款の変更をも命ずることができる。
皿 ジエンキンス報告書
汐エンキン∵ス委員会(CcmpaI】y Law Committee)は,相互保有に.v3いて も検討しているが,これらの点について次のように会社法の改正を勧告してい
(42)
る。
− 親子会社の定義
第154条の定義ほ(1)項(a)(ii)の「衡平株式資本の半数以上を所有する場合」を 削除し,社員であることと支配紅のみよるべきものとする(Jenkins,§156(a))。
l
現在の定義紅よれば,一会杜が二.会社の子会社となる場合があり,叉,他会社 の衡平株式資本の半数以上を所有してほいるが取締役会の構成を支配していな い場合が生ずる(§149)。計算上も,支配されていない会社との連結計静香が 作成されると甚だまぎらわしくなる(§151)。
子会社の議決権
受託者としての親会社株式の所有は例外として適法とされるので(27条(2)
項),この株式の議決権が取締役の支配牲持に濫用されることを防止するため に,受託者として保有する株式の議決権を認めないことにする(§§154,156
(b))。第27条(3)項の除外例の場合には,議決権を認めないと明文で定めている。
三 子会社による株式取得
算27条の目的とする所は,第一・紅親会社の取締役が子会社保有株式の議決権
を利用して地位の継続を計るのを防止するものであり,第二に,親会社の資本
が子会社による株式買入により間接的減少を来すことを防止する役割を果して いる(§151)。この第一・の点についてほ,現行法に批判が多い。例えば,甲,
乙,丙三会社が相互に各26%をこ当る株式を保有する場合には,ニつの会社の取
舶)Cmnd1749,Cited asJenkins
594 第36巻 第5号
−50−
締役会が共通であるか又は協調すれば,取締役ほ過半数を支配し解任されるこ とがない。又,三会社がcircular ownershipの形でp・会社の40%の株式をそ れぞれ間接的相互保有する場合にも,各社の取締役が一骨すれば,株主紅よる解 任を免れうることになり,このようにして取締役ほ無限に在職しうる(§152)。
このようなやり方を防止するために考えられる−・案ほ,第27条を拡張して,会 社が他の会社における議決権の20%以上を支配する場合にその議決権の行使を 禁止することである。しかし,この種の相互保有は関係全株主に便宜であり全 部禁止するのは望ましくない。又,定義も困難であって−,ニ会社が同時に相互
の株式の20%を取得した場合に何れの議決権を禁止するのか不明確であり,改 正法施行の時にも同じ問題が生ずるこ.とになる。同様に,20%を支配する会社に は議決権を認め,その後でその会社の90%の株式を他方が取得した場合に,そ の議決権を認めないのは不合理である。このような点から己むを得ず第一・の弊 害防止案は採らないこと把する。別の面より,
と(§147)で,弊害は警告されることになる。又,株主は第210条による裁判 所の適当な命令の申請権で救済を受けることができるので,同条を強化し明確 化する(§§199−212)(§153)。第二の弊害ほ防止すべきことが明かであるの で,子会社ほ親会社の社員となり得ない原則は存続すべきであるが,この原則 を綬和すべき点があるので,欝27条に例外を追加する。
第一・に,子会社紅なる以前に嚢会社の社員であった子会社は引続き社風であ ることができるものとする。但し,議決権ほ.行使できない。第二に,親会社ほ 準備金の資本組入れにより子会社に全額払込済株式の割当ができることとす
る。しかし,親会社の優利発行新株については,これを引受けてはならない点 ほ緩和しないが,子会社に代って親会社がその新株引受権を譲渡できること粧 する(§§155,156(c)(i)(ii)(iii))。
四 相互保険会社
なお,相互保険会社匿おいてほ,親会社が定款に,社員に限り保険契約者と なると定めている場合にほ,子会社は第27条の禁止のため再保険ができないこ とになるので,相互保険会社につき例外を認める(§§155,156(C)(ivノ)。
株式の相互保有と議決権
595 −5J−
恵 財政上の援助
次に,第54条の財政上の援助についてほ,第(1)項本文は・−・般的禁止を廃し新 規定をもって次の2条件を充さない財政上の援助を不適法とする(§§170−
179,187(d)(i)−(iv)),即ち,第一・に少数株主保護のため紅,当会社の特別決 議による承認(§178)と,第二に債権者保護のために,取締役の作成した支
払可能宣言鱒登録(§179)を要することとし,その違反の行為については,
VictoI・事件の法に反する場合があるが,会社において取消し得るものとする
(§§181,187(d)(viii)),なお援助行為の意味が不明確であるので(「その他」
と規定している),適法になされる債務の弁済,配当ほこれに含まず,会社支 配後12月内におけるその支配株主ないし支配株主の支配する他の会社からの財
産買入れほ援助とみなすことにして明確粧する(§§180,187(d)(vi)(vii)),同 項但書は存続するが(§§185,186),(b)号,(c)号の除外規定は従属会社の 従業員のためにも拡張する(§§183,184,187(e),Cf169),そして第(2項の罰 金ほ少数株主を害しないように会社紅は課さないことにする(§§181,187
(d)(Ⅴ),Cf.179−181,187(d)(iii‖,等の点について改正が勧告されてい る。
六 報告書肥ついて
ジーエソキンス委員会報告書のうち,相互保有の問題に関連する部分ほ上記の 諸点であるが,相互保有紅おける理事者の圧制の弊害については,上述のよう に子会社の定義を取締役会支配の事実の基準にのみよることとする点と,子会 社による株式取得の禁止規定の現行以上の拡張が困難であるので,株式保有開 示の制度の新設と,少数株主に司法上の救済申請権を与える制度の強化容易化 によるとする点,が注目される。前者について−ほ,支配の定義に関する現行規 定の強化についても検討されることが望ましかったと思われるが;この定義に よる子会社であれば,後者についても可成りの実効性が認められると考えたの ではないかと思われる。又,第57条の罰則を会社には課さないとする点も,理 事者圧制防止のたやの制度を考慮するに際して少数株主を害しない注意の払わ れたことが認められ,議決権排除等の問題を考えるに当っても同じ注意の必要
第36巻 第5号 596 ー52−
が感じられる。
第四章 アメリカ法
Ⅰ 相互保有の禁止 一 自己株式
(1)アメ.リカ法においては,自己株式の取得は,従来より会社の能力とな
(43ノ るかが問題とされ,判例ほするどく対立しているが,かつてはイギク.ス法と同
じく定款又は制定法による授権なき限り会社ほそ・の能力を有しない≒されてい た。こ の立場は激しく批判され,現在の多数判例(maioIityIule)はいあゆる No Preiudice Rule,すなわち,制定法による禁止が存在せず,誠実に行われ,
月つ会社債権者の利益と他の株主の利益を侵害しなければ,自己株式の取得が
(44)
認められるとする法理を採っており,従前の少数判例(minoI・ityIule)の行わ
′45)(4り
れる2州においても共に1953年め立法で制定法によりその取得を原則的に認め
(4り
る紅至っている。近年各州においてこの点に
(48) (49)
−・定の制限の下に自己株式の取得を認めていろの■で,現在の米国の大多数の州
(50)
においてほ.英国法と異り自己蹄式の取得ほ・−・定の制限の下紅認められ,適法把 舶)Fletcher,Cyclopaedia o董thelaw of private coIpOIations,VOl ⅤIA,reVn ed〃,
1950,§2845,p359,§2847,ppl361et s..
㈱ もっとも,このNo Prejudice R11leほ債権者に対する関係でほ頗格に適用されたが 他の株主の利益の保護は突際上充分にほ行われなかった。Notes,Yale LawJournal VOl,95,p1177
(45)Fletcher,OpCit.,VOl.,VIA,§2847,pp362,etS.;Ba11antine,OpCit.,pp604
ets.
(姻 New HampshiI,Utah
(47)cf.Fletcher,ibidい,fh・42at p362
㈹ 制限を大別すれば,(a)資本に欠損を生じなけれは認めるもの,(bl剰余金(定義に差異 ほある)からのみ認めるもの,(C)会社債務を支払うに足る資産あるときにのみ認めるも の,(d)取得を限定し特別の使途を定めた詳細な規定によるもののみ認めるもの,に分類 しうる。Yale LawJournal,VOl′59,(1950),p1182
個)各州法の分類については,Yale LawJournal,ibid・のSupplement に・おけるリス r・,Flechter,Op.Cit・.,VOlh VIA,fnh54at pp394p371,及び島本・自己株式の買 入・同志社法学28号16頁以下,を参照。
(5切 なお岩干の自己株式禁止州,制定法判例ともになき州も年々減少して−いる。Cf・BeI1e
and WarIen.Op.Cit…,(1948),p692;Yale LawJournal,ibid(1950);島本・前 掲(1955)25頁。
597 株式の相互保有と議決権 ー∂β −−−
(51)
取得された株式ほ社外株(outstaIldingstock)に対して金庫株(treasurystock)
\二、ご\ と称される。
(2)適法とされない場合の自己株式の取得の効力についてほ,取得が絶対 無効で追認するも有効となし得ないとする若干の判例州と,取得の時における 会社債権者及び不正取得軋つき善意で取得の後に会社債権者となった老(sub−
Sequent Creditors)に対する関係では取消し得るとするその他の判例州とが
(53)
ある。取消ほ遡反効を香しないが,取消権者は,取得の結果自己の権利を侵害
(こ−い
された会社債侮省及び株主紅限られ,侵害されない株主ほ含まれない。唯,取
(∂5)
得の後紅債権者となった者(subsequen已cr・.〕dib工・S)についてほ争がある。会
(叫購7)
社,その破産管財人にも取消を認める判列もあるが,売却株主ほ含れない。 害 意をもって,即ち会社が支払不能に陥ることを知りながら会社にその株式を
有償議渡する行為は無効であり,倫理観念又ほ.公序に反する買戻約款は当然醸
(58)
効(void abinitio)である。
株式の相互保有
(l)株式の相互保有について−も,米国でほ英国法と異り,一・般的な禁止は 存しない。唯,投資会社軋ついて−は,1940年のSECによる投資信託及び投資
(59)
会社に関する調査報告の結果,同年,相互保有を禁止する立法が行われ,投資
(51)Fletcher,Op,Citり,VOlhXI,§5088,p47,Supplement(1945)n小54at pp.8et s;
但し,税法上は金庫株も社外株として扱われる。
(52)Ibid.,pp.44et s.,fn 37at pl44・
(53)Fletcher,Op,Cit小,VOl,VIA,S2859,p410;Ah BLevy,OPCit巾,ⅠⅠ,p.623;こ の点に閲し,曽我部・自己株式取得に関する日米法の比較法的考察‥−・橋論叢31巻5号
430貢は,米国においてほ違法な取得も有効であるとされるが疑問である。
(54)Fletcher,ibidり §2861,p.418
65)Ballantine,OpCit・,p624ほその操護を主張し,判例もその方向紅進みつつあると 述べる。
(56)Ibid.,p,623;ABLevy,OpCit.ⅠIp623
6Ⅵ なお,理事者支配澄得の目的で自己株式を会社が買入れた場合紅は,他の株主は買入 を取消すことができる。egAndersonvlAlbertJ MlAndersonMfg Co.,325Mass 343,90NE2d5生1(1950),76HaIV L R pい16生6
(58)FletcheI,Op..Cit.,ⅤIA.p378
(59)Securitiesand Exchange Co皿mission,Report onInvestment Trusts andIn・
VeStment Companies,19壬0
598 第36巻 第5号
5J 一一
(60J
会社法(InvestCompanyAct of1940)により,投資会社の相互保有は違法 とされることになった。但し,その場合に,子会社の保有する親会社株式が親 会社の議決権のある株式の3%を超えない場合は相互保有が許容される。
(2)投資会社を除き,相互保有ほ禁止されない。イギリス法の禁止常つい て,同じような禁止立法を行えほ,既に取得している相互保有株式の−・拾売却
(61)
を強制されると,会社は相当の損失をこうむることになり,叉,場合によって は自己株式を子会社名義で買入れる方が市場を混乱させず会社の資本勘定の変
(62)
動もないことがあるので望ましいと述べられている。会計上の問題について は,ニーユ.−ヨーク証券取引所上場会社ほ,計浄書類が⊥般に認められた会計原 則によっていること紅つき取引所及びSECの証明を要し,非上場会社も融資 を受ける場合に.その証明を求めることが多いので,相互保有によって利益の虚
(63) 構表示が行われる危険はそれ程多くない。議決権のみ問題として残るが,以下
に述べる。
止 相互保有株式の議決権 ● 一 判例
(−−)金膵株
(1)金辟株は権利の主体と客体とが同一・に帰するので,議決権を有せず,
利益配当請求権,残余財産分配請求権その他一・切の権利を有しない。唯,会社
(64) (65)
がその処分権を有するのみである。これほ,授権未発行株式と変らない。
(2)−\入会社である子会社が親会社株式を保有する場合であっても,ただ
(60)54Stat」822(19生0),15USlC§§80aN20(C).(d)・
机)もっとも,英国でもそのような場合ほ例外を認めている(1948英会社法2L7条(3ニ項)。
(62)76Ha工ⅤりL・Ru,p1645・
個Ibid・et S…
64)Ba11antine,OpCit、,P615;Stevens,Handbookonthelawof pIivate corpo・
rations,2ed.1949,p 528,
65)Ba11antine,ibidl・,処分権も授権未発行株式についても認められることである。この 点につき,松田・前掲234頁を参照。Ballantineほ.それ放に,金辟味を授権未発行株式
として扱えば,不必要な問題点が明確になると主張する(ibid・)。デラウエア一州法はそ の定めを置く しDev.aware GeneralCorporation Law §27;Berle and Warren,Op・
Cit・,p‖669)。
株式の相互保有と議決権
599
− β5 −−
それだけの事実では(ipso董acto),それほ.いずれの会社の金庫株ともなるも
(66)
のではない。
しかし,それは金庫株に等しいものであるので,その議決権を認めないのが
(67)
−・般的判例である。このような株式は投資を表わしておらず,会社制度は株主 の投資保護にあるのであるから,議決権は認められないとする。裁判所は,擬 制により脱法行為を硫極的把.防止んており,例えば,会社の受託者として−その
(68) (69ノ
株式を保有する株主,自己株式を賢取りした栗権着たる会社,会社が金庫株を
(70)
質入れした場合における質権者は,議決権を有しない。
相互保有株式を,これらと同じ凝制により,金庫株で卒るとして,議決権を 排除す考方法をとる判例がいくつかある。次にその代表的なものを挙げる。
し:い (5)(イ)0′connor対InternationalSilverCo.事件。これは,100%所
有される子会社の保有する親会社株式につき,親会社.における他の株主からそ の議決権行使の禁止を請求した事件であるが,ニ:ユ.−ジャージー衡平裁判所 はこれを認め,子会社の議決権の行使を禁止した。その理由として,ニュー・・ジ
ャージ−州法(N.JいRev.Sねtリ §14:10−8(1937))が,会社が自己株式に
ついて「直接又は.間接に」議決権を行使することを禁じているので,相互保有
株式の場合はこの「間接紅.」に当るものであるからと考えている。ところが,
上訴裁判所は,別の理由に・より原判決を認めて−,自己株式なりやの判断には触 れていない。即ち,子会社保有の親会社株式について−,その株主が親会社であ
るとすれば,州法により自己株式の議決はないことになる。これを,子会社が 株主であるとすれば,子会社の取締役会がその議決権を行使すること紅なるの である。しかし,州法によれば取締役会構成員は株主たることを要する(N.J.
66)Fletcher,Op,Cit・,VOl,ⅩISupplement,p7;Ballantine,OprCit.,p.403;Stevens,
Op,Citりp85
断)Ibid;76HaIⅤLRい,p・1646
68)Ex paIte Holms,6Cow1426(N‖YSuplCtl・1826)
69)BIeWSter VHartley,37Cal15(1869)
(70)Thomas v InternationalSilverCo・,72Nr T・Eqh224,73Atl833(Ch1907)
Ul)68N.Ju Eq.67,59Atl‖321(Chh19)!).他7)理由により認容,6S N.JLEq 680,
62Atll408(Ct.Err&App19J5).
600 節36幾 筋5号
ーー こ三d・−−
Laws c.185,§12(1869))所,子会社の株主ほ親会社一\人のみであり,これは 取締役になり得ない。従って子会社ほ.有効な取締役会を欠くので議決権の行使 はできないことになり,何れに.しても結論ほ変らない,と以上のように述べて いる。本判決は故意に相互保有株式が金庫株であるかの問題を避けたもののよ うであり,この点は未確定となった。
(口)Italo Petroleum Corp.of America対Produce工S OilCoIp.
\ニニ\
Of America事件。金庫株であるとする方法によったリーディング・ケースで ある。デラウエア一億平裁判所は,0′ConムeI事件の場合と.はば同じ州法の下 にあって,99%所有する子会社の行政した親会社の株式の議決を取消した。
本件でほ,取締役の濫用ほ一層明白であり,親会社に率いて相互保有株式を金 庫株として記帳しており,取締役の意図はその議決権匿よる選任に・あったこと が明らか紅されている。
本判決は,相互保有株式が金庫株であるという命題を代表するようになり,
(73)
75%を所有される子会社の関係する最近の事件紅おいて引用されている。
(ニ)法人格否認
(1)相互保有株式を金庫株であるというためにほ.,子傘社.の法人格を否認 する必要がある。独立の法人格を認めるならば金轡株に議決権を認めるのと同
じ結果になるという理由で,判例にほこの法人格否認の考え方紅さして困難を 感じていないものもある。
(74)
(2)Robotham対PrudentialIns.Co ofAmerica事件は,相互保有の 最初の事件であるが,子会社紅過半数株式を取得させる株式交換の申込が禁止
されている。独立法人格の抗弁に対して.L,裁判所は,独立法人格の擬制が必雲 である場合もあるこ.とを認めたが,濫用と不正の防止のためにこれをしりぞけ た。
Ⅳ2)20DelCh 283,174atll276(Ch 1934)
(73)Cc>ntinental−Midwest Corp vHotelSherman,Inc…,13IilいAppr2d18S,195−
96,141NE 2dl〕0,40墾(1957ト
㈹ 6墾N.†El673,53Atl・842(Ch1903)