─ 311 ─
( )
1
東医大誌 76(4): 311
-312, 2018
巻 頭 言
これからの日本の医療のリーダーを育てる
ロズウェルパーク癌センター 乳腺外科主任教授
高 部 和 明 Kazuaki TAKABE
これからの日本の医療のリーダーを育てるヒントとして、米国のシステムを紹介します。
米国の医学部入学には、一般的に四年制大学在学中に医学部進学課程の単位取得と合わせて
MCAT
試験 で優秀な成績を取る必要があります。即ち、周囲の友人達が大学生活をエンジョイしている間にも自分だけ は物凄く大変な教科と格闘した上で受験勉強までしなければなりません。従って米国の医学部学生でモチ ベーションの低い人は見たことがありませんし、実際物凄くよく勉強します。医学部卒業後には専門科の卒後研修(レジデンシー)を受けますが、外科など人気の診療科では通常数人 の枠に三桁から四桁の応募があります。例えば僕がレジデンシーをした施設では母校から採用するのは百人 を越える学年中、毎年トップ成績のたった一人という厳しさでした。だからこそ外科レジデンシーまで勝ち 残った連中には強烈な自負があります。忘れられないのはあるチーフレジデント(5年生)が言った言葉です。
「我々はこの病院で最も優秀なレジデントだから、最もハードに働けるんだ。」
米国の
5
年間の外科レジデンシーの中で最も強調されるのが、三年生でのフォロワー(追随者)からリー ダー(指導者)への脱皮です。二年生までは患者さんの治療方針を指導医に 「伺う」 フォロワーだったのが、三年生からは 「私はこう治療します」 とリーダーシップを発揮しろと教育されます。そして
5
年生では外科 診療チームのリーダーとして外来医長、病棟医長の役割を担います。指導医の仕事は5
年生の方針を承認、まずくなった時のリカバリーショットを打つことくらいです。生存競争はレジデンシー中も続き、僕の学年 では六人枠中卒業までに三人が成績不良などの理由で解雇されました。レジデンシー修了後専門医試験に合 格してはじめて外科医になるので、彼らは生涯そうなる道は閉ざされました。
このように米国で外科医になる生存競争はすさまじいのですが、一方でそれを勝ち抜けば尊敬も報酬も得 られます。よってアメリカンドリームを目指して最も優秀な学生が我もと競って外科レジデンシーのような 厳しい道を目指すのです。日本では多くの研修施設で希望すればポジションが得られ、余程のことがなけれ ば解雇もされず、それなりの年功序列が期待できると聞きます。これからの日本の医療のリーダーを育てる ためには、それなりの競争原理と共に成功した暁の 「夢」 が必要なのかもしれません。
東 京 医 科 大 学 雑 誌
─
312
─ 第76
巻 第4
号( )
2
略 歴1966
年 兵庫県生まれ1992
年 新潟大学医学部1995
年 新潟大学病院外科研修1999
年 横浜市立大学院 医学博士課程2001
年 米国ソーク研究所 ポスドク研究員2006
年 カリフォルニア大学サンディエゴ校 一般外科レジデンシー2008
年 バージニア州立大学医学部 腫瘍外科フェローシップ2013
年 バージニア州立大学医学部 腫瘍外科並びに生化学アシスタントプロフェッサー2016
年 バージニア州立大学医学部 腫瘍外科並びに生化学アソシエートプロフェッサー2016
年より ロズウェルパーク癌センター乳腺外科主任教授、ニューヨーク州立大学バッファロー校医学部腫瘍外科教授兼任
2017
年より 東京医科大学 客員教授専門・研究分野
乳腺外科、腫瘍外科、分子生物学、スフィンゴ脂質シグナリング、イムノジェノミックス
公職・団体歴
米国臨床腫瘍学会(
American Society of Clinical Oncology
)Membership Committee Chair
(2018
)、Journal of Surgical Research Associate Editor
(2016-)、American Surgical Association Member受賞等