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章 ビタミンの効用

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(1)

はじめに

有吉 敏彦

風邪や癌の予防あるいは老化の防止にビタミン

C

E

が有効であるとして大 量に摂 られている。確かにビタ ミンを十分に摂ることは生命にとって欠かせな いことであるが, しか し過剰の ビタミンは人体にとっていかなる生理作用を示 すのか十分には知 られていない。肺炎や風邪 とビタ ミン

C

,癌 とビタ ミン

A

, 老化の防止 とビタ ミン

E

などの関係は, ビタ ミンの栄養素としての問題,即ち 栄養学の問題 というよりは,む しろ,病気に効 く薬 としての ビタ ミン,即 ち薬 理効果を期待 しての薬理学の問題 といえる。

ビタ ミンに関する誤 った情報 として世間に伝え られていることは,1) ビタ ミンには特別の活力や活気があ り,普通以上の健康体にす るとか

,2)

自然の ビタ ミンには生命の真髄があり,化学的に合成 した ビタ ミンには効能がないと かであろう

しか し,本当にビタ ミンが不健康を予防 したり,癌の予防や老化の防止に効 果があるのであろうか。そこで ビタミンの種類や性状,生理作用,過不足によ る症状,

1

日に必要な所要量, どのような食品に含まれ るか,健康 という立場 に立 って ビタ ミンの効用を考えてみよう

1 節

ビタミンとは

ビタ ミンとは,「食物中に存在す る動物の栄養に必須の,微量の有機化合物

(2)

であ り,通常,動物 は体の中で合成できず,その欠乏により特有の障害,即ち 欠乏症を惹 き起 こす もの」と定義 されている。 しか しビタ ミンは

2 0

種類以上 も あ り,上に述べた定義がすべてあてはまるわけではない。つまり微量で有効で あるといわれているが,

1

日所要量数

F Lg

単位 (

1 g

の百万分の

1

)か ら

m

g単 位 (

1 g

の千分の

1

),あるいは ビタ ミン

C

のように数十

m

gか ら数

gまで必要

とい う人 もあるので,決 して微量 とはいえない。一方ニ コチ ン酸 (ナイア シ ン)は必須ア ミノ酸 トリプ トフ ァンか ら,体の中で生成 され る し, ビタ ミン

D

。は紫外線にあたると,皮膚で,

7‑

デ ヒ ドロコレステロールか ら生成 され る。 ビタ ミン

C

もヒ ト,サル,モルモ ッ トを除いて,他の動物では体の中で合 成 されている。

2

ビタミンの種類 とその性質

さて今 日ビタ ミンとして知 られているものは

2 0

種類以上にも及んでいるが, すべてが ヒ トに必要 というわけではない。また必要な ビタ ミンであって も,動 植物中に広 く分布 しているため,私達が食品をバランスよ く摂 った場合それで 十分である場合 もある。また腸内細菌で合成 された ものを利用するため, ヒ ト では食事性,即ち栄養の摂取不足で欠乏症を起 こす ビタミンと しては, ビタ ミ

A

, ビタ ミン

B

群の中の

B

l,

B 2

,ニコチ ン酸, ビタ ミン

C

, ビタ ミン

D

6

種類 と考え られている。 もちろん 欠乏症 は栄養の摂取不足 (例えば,偏食 や外食に依存 した り,即席食品や加工食品の多食など)で起 こるばか りではな く,私達の体での ビタ ミンの吸収不良や,あるいは妊娠 しているときや授乳 し ているとき,生長時など体の組織が要求量を増 した場合や,病気の治療や予防 に抗生物質を使用 して有益な腸内細菌を殺 した場合など, ビタ ミン欠乏症が生 ず ることは知 っておかねばならない。その他特殊な条件下では ビタ ミン

B 6

, ン トテ ン酸, ビオチ ン, ビタミンB

12

などは欠乏症を起 こす ことが知 られてい る。

ビタ ミンの名前は現在国際的に統一 され,アルファベ ッ ト名で呼ぶ ことは避 け られるようになっているが,本テキス トでは便宜上,従来使われていた名前 で話を進めていきたい。

‑ 1 4 4‑

(3)

一般にビタ ミンはその溶解性か ら水溶性 ビタ ミンと脂溶性 ビタ ミンに大別 さ れ る。その種類 と性質を簡単に表

1

にまとめてお く。

表 1. ビタ ミンの種類 とその性 質

米国食品医薬品局(FDA)の規定 によ る

栄養上不欠 と認 め られ た ビタ ミン その他 の ビタ ミン (FDA規定以外 )

B

l(チア ミン) 水 溶性 ,酸 に強 く, パ ン トテ ン酸 水 溶性 ,酸 , ア ル カ

アルカ リに弱 い リ,熱 に不安定

B 2

(リ ボ フ ラ ビ 黄 色結 晶性 粉 末, 水 葉酸 水 にや や とけ に くい

ン) 溶 性, 輿 , 酸 に 強いo光 で分解す るく, ア ル カ リ に 弱 光 に不安定

ビオ チ ン 水 溶 性 ,酸, ア ル カリ,熱 ,光 に安定 ニ コチ ン酸 (ナ イア シン) 水 溶性 ,熱 に強 く,アルカ リに弱 い

E 脂 溶 性 , ア ル カ リ,光 に不安定

B 6

水 溶性 ,熟, 酸 に強 光 に対 して不 安 K 脂 溶 性 , ア ル カ リ,

光 に不安定

B 12

暗 赤 色 結 晶, 水 溶性 ,熱 に強 い弱 く分解 す る 光 に L 水溶性 ,熱 に弱 い

P

水溶性 ,熱 に弱 い

C (ア ス コル ビ ン酸 ) 水 溶 性 ,熱 , ア ルカ酸化 され分解 す るリに弱 い 空 気 中 で

コ リン 水溶性

A (レチ ノール) 脂 溶性 ,不 安 定 な化光 ,熱 で分解 す る合 物 で 酸 , 空 気 , パ ラ ア ミノ安 息 香 水溶性

3 節

ビタミンの生理作用並びに欠乏症 と過剰症

1

. ビタ ミン

B

lと脚気

ビタ ミン

B

1(チア ミン)は ビタ ミンと して最初 に発見 され,米糠か ら抽 出,分離 された。現在では化学的に大量合成 されている。

B

tが欠乏す るとよ く知 られているように脚気になる。脚気の自覚症状 としては全身倦怠感,足の だるさ,つかれやす さ,少 し運動すると動博がす る,息が切れる,手足の しび れ感,下肢のむ くみ,食欲不振などが知 られている。一方診察す ると血圧低

(4)

下,心臓の拡大,アキ レス騰反射低下,ふ くらはぎの圧痛,軽 い知覚麻疹,浮 腫等が観察 され る

B l は糖質 ( 熱源)の代謝 (エネルギーの発生)に関係す る種 々の酵素の補

糖 質

l ア ミノ酸

セリン

アラニン

シスチン システイン

l ブ ドウ糖 i i i i i i i g i

ブ ドウ糖

人ビ

l

hu一レr ・‑・・◆

‑ 6

一リン酸

パ ラギ ン 酸 一

オキ

ロ酢酸

ハ ク 酸

/

セチ ルCoA

/ ‑

/一、 \

TCA

回路

i

\ \ ‑

クエン酸

L

:: :‑

:

:: ー

α ̲ ケ ト

ル ター ル 酸

† ④

ル タ

ミン酸

B

1 、 リポ

、ハ

ン 酸

ン B

2 、パ

ン トテ ン

酸、

ン酸 (

ン B2

B 6

ン B6

チ ン酸

チ ン

ビタ

ン B 2

1

代謝 と ビタミン

‑ 1 46‑

CO2 +H2 0

ジン

ニン

リン

(5)

酵素として,代謝が うまく進むように調節潤滑油の役目を果た している。従 っ て主 と してエネルギーを糖質の代謝に依存 している脳や神経組織,心筋など は,Blの不足によって障害を うけることになる。栄養が改善 された現在では 脚気はほとんど認め られなか ったのであるが,昭和

5 0

年頃から西日本各地で脚 気が再び発生 している。その原因 としては

B

.をほとん ど含んでいない白米を 多食 し, インスタン トラーメンや菓子パ ン,砂糖入りの清涼飲料水を多 く摂 り,肉や魚,卵や野菜などが少な く,偏食傾向にある,激 しい運動をする高校 生に発症 したと考え られている。特に偏食傾向の若年者やアルコールを多飲す

る中壮年層は

B

.欠乏に気をっけなければな らない。

2.

ビタ ミン

B2

ビタ ミン

B 2

(リボフラビン)は多 くの酵素 (フラビン酵素)の構成成分 と して,生体の中の酸化還元反応の極めて重要な働 きを している。従 って

B

. 上に大切な ビタ ミンと思われる。 (

1

参照②,③,⑥)

動物実験では

B 2

の欠乏で生長が停止 し,毛並が乱れ,脱毛が生 じ 眼の角 膜に異常が生 じついには死亡す る。 この

B2

はほとんどの食品に広 く含まれて いるので欠乏症 はないようである。ただ しヒ トで も抗生物質の副作用や,肝炎 等によって

B2

の利用障害があると,二次的に欠乏症が起 こることが知 られて いる。症状は眼,口の周辺,舌,皮膚に現れ,眼では角膜周囲に細い血管が新 生 し, これが しだいに角膜 に侵入 して くる。 また角膜周囲の充血,角膜の混 濁, 目 じりのただれや異物感,弱視,流涙が観察 されている。 口唇の症状で は,発赤やただれ, き裂,口角炎や口内炎,歯 ぐさの出血や腫れなどがあり, 舌の症状 としては,舌が紫紅色となり舌苔がな く,また舌が とリヒリすると言 われている。なお脂漏性皮膚炎と呼ばれる変化が, まぶたや耳たぶ,鼻口,鼻 唇溝などの皮膚に慢性湿疹 として認め られることもある。

3.

ニコチン酸 とペラグラ

ニ コチ ン酸 (ナイアシン)はビタミン

B

群の中の ビタ ミンとして,ニコチ ン 酸ア ミド (ナイアシンア ミド)とともに, ヒ トの抗ペラグラ因子,イヌの黒舌 病治療因子 として発見された。脱水素酵素の補酵素

( NAD

および

NADP)

の構成要素で,表 2に示されるような種々の生体内酸化還元反応に機能 してい

る。(図 1参照(丑,②,④)

(6)

2. MAD (P)を補酵素 とす る脱水素酵素

補 酵 素

アル コール脱 水素酵 素

NAD

エ タノール言=三アセ トアルデ ヒ ド アルデ ヒ ド脱水素酵 素

NAD

アセ トアルデ ヒ ド言=ヱ酢酸

イ ソクエ ン酸脱水素 酵素

NADP

イ ソクエ ン酸

= 2

‑オキ ソグル タル酸

グル コース

‑6

‑ リン酸脱 水

NAD>NADP NADP

グル コース

‑6‑

リン酸石=

±6

‑ホス グル

素酵 素 コ ン酸

グル タ ミン酸脱水素酵素 グル タ ミン酸岩 =

±α‑ NH

ケ トグル タル酸 +

l 1

乳酸脱 水素酵素

NAD>NADP 乳

酸 = ピル ビン酸

ヒ トを含む輔乳動物で ビタ ミンとしては例外的に,ア ミノ酸の トリプ トファ ンか ら体の中で生成 される特異的な ビタ ミンである。 この ビタ ミンが欠乏する と,ペラグラ

( Pe l l a

‑粗

,agra

‑皮膚) という病気,「粗なる皮膚‑荒れ肌

(さめ肌, とり肌

)」

とい う意味である。主 として必須ア ミノ酸の トリプ ト ファン含量の少ない トウモロコシを主食 とする地域の人々に発生 している。

皮膚症状としては, 日光にさらされる手,足,顔,首す じゃ,皮膚のすれや すい肘,ひざなどに左右対称に紅斑を生 じ, しだいに赤褐色に変わ り汚い皮膚 炎となる。一方, 口唇炎や口角炎,舌炎など, ビタ ミン

B2

欠乏症 と類似の症 状 も観察される。更に消化器症状 として,喝気 下痢,喝吐,食欲不振が,棉 神神経症状として,頭痛,不眠,めまい,無気九 健忘症が,また重症になる と幻覚,妄想,痴呆になるとさえ言われている。つまりこの ビタミンの欠乏症 は皮膚,消化器,神経系の三つの特徴的な症状が観察されている。一般にペラ グラは徐々に進行 し,冬には軽快 し夏には憎悪を繰返 し,ついには死に至ると まで言われているが,幸いにして 日本では死亡す る程の垂症例はないとされて いる。 しか しアルコール飲用者で,食事 ことに蛋白質をほとんど摂 らない粗食 者や,極端な偏食者 (肉,魚,卵,牛乳などすべて嫌い)に,典型的なペラグ

ラが観察されている。

一方,ペラグラによる精神分裂症 (痴呆)の治療に,ナイアシンを 1日10g 授与 した り,あるいは高脂血症の治療に大量を投与す ると,顔面が紅潮 した

‑ 148‑

(7)

り, また消化器潰癌のある人は悪化 した り,不整脈や肝毒性の副作用 もあるこ とが最近報告 されている。

4.

ビタ ミン

C

と壊血病

長旅の航海に出た人々の死の病 として恐れ られた壊血病に,新鮮な果実や緑 黄色野菜が有効であることは,数百年 も前か ら知 られていた事実であ ったが, ビタ ミン

C

(アスコル ビン酸)が結晶 として取 り出されたのは

,1 928

年 ウシの 副腎か らである。 しか し現在まで

C

の生理作用については, ビタ ミン

B

群の補 酵素 としての重要な役割 と違 って,まだ十分に解明 されているとはいえない。

しか し結合組織 とくにコラーゲ ンの生成 と維持についての機能 は比較的よ く研 究 されている。動物体内全蛋白質の約3

0%を占めるコラーゲ ンの生成 とその維

持が, C欠乏のため障害を うけ,毛細血管か ら出血 しやす くなり,あちこちの 皮下で出血が生 じ,同時に全身倦怠,脱力,食欲不振等が起 こり,やがて歯 ぐ

き,筋肉,骨膜,粘膜に も出血が起 こり,その部分が脹れ痛み,更に血尿,血 便を見ることになり,感染症に対する抵抗力 も弱まってついには死に至る。

一方, Cはチロジンの代謝にも関与 し, メラニ ン色素の生成に影響があると されている。更に生体の還元反応に関与 しているので,還元的環境をつ くって 酵素や生体膜の安定化に寄与 していると考え られている。なお抗酸化刺,つ ま

り酸化防止剤 と して食品に利用 されている。なお癌や老化 との関係は後章で述 べ る。

5.

ビタ ミン

A

と夜盲症

ビタ ミン

A

(レチノール)の重要な作用の 1つは,視覚における作用で,噛 乳動物の網膜の感光上皮細胞中の梓体 (光を感ずる)成分 〔視紅, ロ ドプシン

‑オプシン+レチナール (ビタ ミン

A

アルデ ヒ ド

) 〕

の構成要素であ り,他の 1つの生理作用 は,動物の成長や組織上皮細胞の形成に関与 していることであ る。 ビタ ミン

Aとロ ドプシンの関係については図 2

を参照 してほ しい。

まず光が当たるとロ ドプシン中の

1 1‑

シスーレチナールが,全 トランスーレチ ナールに変化 し,同時にオプシンが離脱 し, この際の光の吸収が視細胞の興奮 を惹起 し, ものが見えると言われている。全 トランスーレチナールはアルコー ル脱水素酵素 (補酵素は

NAD

で,先のニ コチ ン酸が構成成分)によって, 大部分が ビタ ミン

A

に還元 され血液中の ビタ ミン

A

と交換す る。一部は レチ

(8)

ナ‑ルイソメラーゼ (酵素)によって,ll‑シスーレチナールに変わ り,オプシ ンと結合 して ロ ドプシンを再生す る。従 って血液中のAの不足は視紅成分の補 給を途絶えさせ,薄暮に眼が見えに くくな り (夜盲症),やがて眼球が乾燥 し 始め,角膜の軟化が起 こり遂には角膜が穿孔 し失明す ることになる。

成長や組織の正常保持作用 も知 られているので,

A

の欠乏は上皮細胞の萎縮 を招 き,皮膚粘膜がカサカサ して乾燥 し, さめ肌, とり肌 (皮膚角化症)のよ うにな り,同時に感染症 に対 して も抵抗力が弱まる。なお癌 との関係について は後章で述べ る。

ところで前に述べた ビタ ミン

B 1, B 2

,ニコチ ン酸, ビタ ミン

C

は水溶性の ビタ ミンなので,大過剰に摂 って もす ぐ尿中に排滑 されるか ら,過剰症は観察 されないが,

A

は脂溶性の ビタ ミンのため過剰に摂 ると体内に蓄積 して過剰症 を起 こす。症状 としては,食欲不振,体重減少,脳圧冗進のため激 しい頭痛や 吐気,肝臓 ・肺臓の肥大,子供の成長の遅れ,抜毛, リューマチの様な四肢の 疹病性腫脹,月経不順などが観察 されている。

llシスーレチナール

視神経刺戟

全 トランスーレチナール レチナールイソメラーゼ

アルコール 脱水素酵素

l l

̲シス‑ビタミン

A

アルコール 脱水素酵素 ビタミン

A=

血液

2

ビタミン

A

とロ ドプ シン

6.

ビタ ミンDとくる病 ・骨軟化症

ビタ ミンD (カルシフェロール)は抗 くる病因子 と して古 くか ら知 られてい るが,天然にはむ しろ, プロビタミン

D

として存在 している。先に も述べたが

‑ 150 ‑

(9)

紫外線照射 によ って皮膚組織の

7‑

デ ヒ ドロコレステロール (プロビタ ミン

D。 )

か らビタ ミン

D

に変わり酵母や椎茸の中のエルゴステロール (プロビタ ミン

D2 )

もビタミン

D2

に変わる。プロは 「前」の意味で ビタ ミンの母体ある いは前駆体である。 ビタ ミン

A

のプロビタ ミンはカロチ ンという色素である が,後章の食品に含まれるビタ ミンのところで説明する。

さて ビタ ミン

D

は小腸か ら,カルシウムおよび リン酸の吸収を促進 させ,一 方では副甲状腺ホルモ ンと協力 して骨に働 き,血清中のカルシウムとリンの値 を高める。 ビタ ミン

D

その ものは生理作用がな く,肝臓で代謝 (水酸化) さ れ, この ものが更に腎臓で水酸化 されて活性型に変わり,小腸や骨に移行 し血 清カルシウム濃度を調節する作用を発揮する。従 って肝臓や腎臓が悪い場合に は二次的に

D

の欠乏症状を認める場合がある。

D

の欠乏症状は,骨にカルシウ ムが沈着することを妨げるために,骨の発育 ・石灰化が障害 され,特に骨の成 長の盛んな乳幼児,小児においてはくる病が生 じる。つまりくる病は,石灰化 が阻害されて骨の軟化が起 こり,骨格の異常即ち脚の骨は0脚,Ⅹ脚にな り, 脊椎は湾曲 し,頭蓋骨の変形 も観察される。歩行や運動 は遅れ,歩行不能 とな ることもあり, また歯の発育 も遅れ歯質 も良 くない。骨の成長のとまった成人 での

D

欠乏は,血中の無機 リンが減少 し,骨か らカルシウムが抜け出すため骨 が軟化 し変形す ることになる。骨盤部,脊椎,肋骨などにも病変が生 じ骨折 し やす くなり,所謂,骨軟化症 という病気になる。腎臓の悪い人で,人工透析を

している人は

D

の活性化が悪いため,骨軟化症を起 こす ことがある。 この場合 予防のために当然活性型の

D

の投与を考えなければならない。

D

もまた脂溶性の ビタ ミンであるので過剰症が知 られている。動物に

D

を大 量投与すると,腎臓や動脈に異常な石灰化が生 じ,極端な場合は死に至る。 ヒ

トでは食欲不振,吐気 便秘,皮膚乾燥,口渇,多飲,多尿,あるいは血管, 腎臓の組織の石灰化,骨の複雑骨折等の症状が報告 されている。

7.その他の ビタミン

(1) ビタ ミンB

t i

ネズ ミの抗ペラグラ因子 として見出された もので, ピリドキシン, ピリ ドキ サール, ピリ ドキサ ミンの

3

種がある。水溶性の ビタ ミンで光 に対 して不安 定,特にアルカ リ性では速やかに分解される。

(10)

ア ミノ酸の重要な代謝反応のほとんどすべての酵素の補酵素 として機能 して いる。従 って蛋白質の代謝に関与することになる。(

1

‑(卦,④を参照)

欠乏症はネズ ミのペラグラ皮膚炎,舌炎が知 られているが, ヒトでは腸内細 菌が

B 6

を合成することもあって,確実な欠乏症は観察 されていない。 しか し

B6

と桔抗す る作用を持つ薬 (例えば抗結核薬のイソニ コチ ン酸 ヒ ドラジ ド) を連用すると,神経炎やけいれん等の副作用が起 こり,また有用な腸内細菌を 殺 して しまうような抗生物質を服用すると,食欲不振,吐気,口唇炎や口内 衣,舌炎などが生ず る場合がある。 これは一種の

B6

欠乏症 と して理解 されて いる。その他,脂漏性皮膚炎やペラグラ様皮膚炎,神経炎 も観察されることが あると言われている。

最近,

B6

を神経衰弱や自閉症,筋肉疲労などの治療に大量投与す ると,辛 足や口の周辺が無感覚にな った り,歩行困難にな った りす るなどの症状が現 れ,末梢神経系に有害であるとの報告がある。従 って,特定の ビタ ミンの大量 服用は,B群全体の ビタ ミンの不均衡を招 く危険性があるのか もしれない。

( 2 )

パ ントテン酸

パ ン トテン酸はひなの抗ペラグラ因子,酵母,乳酸菌の成長因子 として見つ けられた ものである。水溶性で酸,アルカ リ,熱に不安定である。糖質代謝, 脂肪酸代謝時の重要な補酵素

CoA

の構成成分であるが, ヒ トにおいては固有 の欠乏症は観察されていない。 しか し動物においては種によって異なってはい るが,パ ン トテン酸欠乏は幼若動物で起 こりやす く,成長停止,体重減少が共 通 して見 られ,ひなのペラグラ,ラ ットの毛髪色素欠乏症,マウスの神経系障 害 (興奮性で狂暴になる)が特徴的である。代謝 とビタ ミンの関係 は図

1

(臥 (卦を参照 してほしい。

(3) ビタ ミンB

12

1 9 4 8

年, ウシの肝臓か ら悪性貧血に有効な赤色の結晶が分離 された。分子の 中に金属のコバル ト原子を含むために赤い色であ り, コバラ ミンと呼ばれてい る。水溶性で

pH4 . 5 ‑5 . 0

では安定であるが,アルカ リ性では分解 されやす

く,光にも鋭敏に反応 して不活性化される。

赤血球の発達や骨髄,神経細胞の機能に必要であると言われている。従 って 欠乏により悪性貧血を生 じる。 B

12

は腸内細菌によって も合成され吸収されて

152‑

(11)

利用 されているが,消化管か らの吸収には胃粘膜で生産 されるムコ蛋白質 ( 因子)が必要 と言われているので,胃粘膜の障害のあるヒ ト,胃切除者は吸収 の阻害が起 こる。また吸収部位の小腸 に病変があれば吸収は阻害 され ることに なる。

(4) 葉酸

ヒ ト,サル,ひなの抗貧血因子の 1つ として,またある種の乳酸菌の成長因 子 として,肝臓や酵母か ら取 られた もので,始めは ビタ ミン

M ( monke y)

, ビタ ミン

Bc( c hi c k)あるいは肝 L cas ei

因子 とも言われていた。 しか しほ うれん草の葉か ら有効成分が抽出されたのに因んで葉酸 と名付けられた。

檀黄色の結晶で水にやや溶けに くく熱には安定であるが光に不安定である。

核酸やア ミノ酸の代謝系における補酵素 と して重要な役割を果た している

従 って葉酸が欠乏す ると,核酸代謝の異常で赤血球の正常な生成に障害が起 こ り,巨大赤芽球性貧血 (大赤血球性貧血)を生 じる。 しか し葉酸は腸内細菌に よ り合成 され るので,一般に欠乏 は起 こりに くいとされている。

(5) ビオチ ン (ビタ ミンH)

酵母の発育因子と して卵黄か ら,また抗皮膚炎因子 (抗卵白障害因子) とし て肝臓か ら見出された。水溶性で熱,光,酸,アルカ リに安定な どク ミンであ る。

体の中では ビオチ ンを含む酵素 として,二酸化炭素

( C O 芝)

を固定転移 させ 糖質や脂肪の代謝に関係 している。(例えば ピル ビン酸をオキザ ロ酢酸へ,図 1‑⑤参照)。 ところが卵白中の塩基性蛋白質ア ビジンと特異的に結合 しこの 生理作用はな くなる

腸内細菌によって合成 され利用 されるので,一般に欠乏 症 は生 じないとされているが,生卵白の大量の摂取や,腸内細菌を抗生物質で 殺 した場合などは欠乏症が生 じることになる。ネズ ミでは皮膚炎,脱毛,成長 停止,異常姿勢などが知 られ, ヒ トで も摂取カロリーの

3 0%

を乾燥卵白と して 与えると (考え られないことであるが)

,1 0

週後 に憂 うつ,幻覚,疲労感,鱗 屑状皮膚炎が生 じたという

しか し卵黄中にはビオチンが多 く含まれているの で,生の全卵を摂 ったときはビオチンの欠乏にはな らない。

(6) ビタミンE (トコフェロール)

1 9 2 2

年,ラッ トの生殖に関係す るビタ ミンとして発見 された。無色〜淡黄色

(12)

の粘桐な油状物で,油にはとけ水にはとけない。酸性では熱に安定であるがア ルカ リ性では簡単に分解 され また紫外線に対 して も不安定である。強い抗酸 化作用があるので,食品添加物の酸化防止剤に指定 されている。私達の体の中 の生体膜に対 して も同様の機能を果た していると類推 されているので,過酸化 脂質生成を防止するとして現在大いに利用 されている。なお癌や老化との関係

は後章で述べ る。

ネズ ミでは

E

の欠乏で雄の場合は精細胞が萎縮 し精子の産生が衰え,雌は受 胎はす るが胎仔は正常に発育せず死亡 して吸収される。ウサギやモルモ ットで

E

欠乏で筋の萎縮が起 こる。腸内細菌で合成され利用されるので, ヒ トにお いては確かな欠乏症は観察されていない。 しか し未熟児や乳幼児では赤血球の 溶血が見 られ,また黄疫にかか りやすいと言われている。

(7) ビタミンK

血液凝固 ビタ ミン

( Koagul at i onv i t ami n)

という意味で ビタ ミン

K

と名 付けられた。淡黄色の脂溶性物質で光やアルカ リに対 して不安定で簡単に分解

される。

この ビタミンKは体の中では肝臓で,生理的に不活性な前駆体か ら活性のプ ロ トロンビンを生成する段階に作用 していると考え られている。血液凝固の機 構は複雑であるが,簡単に書桝 ゴ図3のようになる。

前 駆 体

ンビン

ビタミン

K ー

(血祭中存在)

フィブ リノーゲ ン

複雑 な多 くの因子 ‑ カルシウムイオ ン トロンボキナーゼ トロン ビン

三 溝 Ii (可溶性 :血祭中存在)

3 ビタミンKと血液凝固

酵素‑蛋白質分解酵素)

フィブ リン (不溶性)

腸内細菌によって合成 されるので,通常 ヒ トでは欠乏症は起 こりに くいが, 血液中プロ トロンビン量の少ない新生児や,抗生物質を使用 した患者では,

K

の欠乏により血液凝固時間の延長が起 こり出血傾向が観察される。また胆汁分

‑ 1 5 4‑

(13)

泌が減少す ると血中プロ トロンビン量が減少す ると言われている。 これはKが 脂溶性 ビタ ミンのため,吸収 されるときに胆汁が必要なためで,胆汁不足によ

K欠乏にな ったと考え られている。

一方, ビタ ミン

K

は過剰では溶血性貧血 (赤血球の破壊で起 こる)や黄症を 生 じさせ ると言われている。

(8) その他の水溶性 ビタ ミン

a‑

コリン :動物の脂肪肝予防因子 として

1 9 3 0

年に発見。アルカ リ性物質で リン脂質 レシチ ンの成分である。生体内で はメチオニ ン,セ リンか ら生成 さ れ 神経伝達物質アセチルコリンの母体である。ネズ ミでは欠乏すると肝機能 が低下 し脂肪肝になる。 レシチ ンの成分のため ヒ トでは欠乏す ることはな く, 含量の多い食品は卵黄,肝臓,大豆である。

b‑

パラア ミノ安息香酸 :細菌の成長促進因子 と して

1 9 4 0

年 に発見。 シロネ ズ ミではこの ビタ ミンが欠乏す ると,毛の色が灰色に変わるので抗灰髪因子

( Ant i ‑ g r a yhai rf a c t o r )

とい

う 。

葉酸の‑構成成分で もあ り,海藻中に含 まれている。

C‑

イノシ トール :

1 9 2 8

年,脂肪代謝 に関与す るビタ ミンと して見つけ られ た。イノシ トール リン脂質の構成成分で,欠乏症 はマウスの脱毛,成長停止, 脂肪肝が知 られている。酵母,米糠に多 く含まれている。

d‑

リポ酸 :ビタ ミンB1と共同 して ピル ビン酸の代謝 に関与 して いる。 ( 1‑①参照)。微生物の増殖促進作用がある。動植物界 に広 く分布 しているの で リポ酸の欠乏症を起 こさせ る動物実験 は未だ成功 して いないと言われてい

る。

e‑

ビタ ミン

L:

乳汁分泌

( l ac t at i on)

に関与す るところか らビタ ミン

L

名付けられた。肝臓か ら得 られた ものをL.(ア ン トラニール酸),酵母か ら得 られた ものが

L 2

(アデニルチオメチルペ ン トース)で,両者が共同 して催乳 作用を示す。動物で は欠乏 によ って授乳不能 にな る。酵母 に多 く含 まれてい

る。

f

‑ビタ ミン

P:

ビタ ミン

C

と共同 して毛細血管の保護即ち,毛細血管が脆 くな り血 液 が 血 管 外 に渉 出す こ とを 防 ぐ作 用 をす る こ とか ら,疹透 性

( pe r me a bi l i t y)

を支配す る意味で ビタ ミン

P

と名付 け られた。

P

の作用 を

(14)

もつ ものは植物のフラボノイ ド (ルチ ン‑そばに多い,ヘスペ リジン‑柑橘類 の皮)があるが, レモ ンの汁か らも淡黄色色素 (チ トリン)が分離 されてい る。 Pは

C

の含まれているところに一緒に存在 し,高血圧患者の出血防止や血 圧低下 に利用 されている。

g‑

ビタ ミン

U :1 9 5 0

年,潰癌予防因子と して発見された。熱に弱 く

1 0 0

℃で 効力はな くなる。キャベツの葉, レタス,卵,牛乳に存在 している。

(9) 必須脂肪酸 (ビタ ミン

F)

ラッ トに リノール酸, リノレン酸を完全に除いた食餌を与えると,鱗状尾, 脱毛,不妊症,成長抑制などが起 こることが知 られている。アラキ ドン酸を含 むこれ らの高度不飽和脂肪酸は, ヒ トを含めて動物体内で合成 されないか ら食 物か ら摂 らねばな らない。そのため必須脂肪酸 と呼ばれている。かつて ビタ ミ

F ( r a t t ya c i d

‑脂肪酸) と呼んだが,必須ア ミノ酸を ビタ ミンとしないよ うに, また

1

日所要量が約

3‑ 6 g

という大量なことか ら, ビタ ミンに入れな いこともある。植物油など食品中に豊富に含 まれているので, ヒトでは通常欠 乏症 は起 こらない。ただ し不飽和脂肪酸のため非常に酸化されやす く,摂取す

るときは量に見合 った ビタ ミン

E

の摂取を必要 とする。

アラキ ドン酸など炭素数

2 0

個の高度不飽和脂肪酸か ら,重要な生体成分プロ スタグランジン (子宮筋の収縮,末梢神経の拡張,腸管の平滑筋の収縮作用な どを示す)が生成 されることがわか り種々の研究が進め られている。

4 節

ビタミンの所在 と

1

日所要量

ビタ ミンの欠乏状態は食品か らの栄養摂取が不十分な場合だけでな く,吸収 の阻害や,体での要求量が増 した時 (例えば発熱,重労働,激 しい運動などエ ネルギーが要求されるとき)に認め られる。特に腸内細菌は ビタ ミンの補給に 大 きく貢献 しているので腸内細菌の生育を抑制す るような抗生物質の服用時に は, ビタミンの欠乏症が惹 き起 こされるか もしれないことを頭にいれてお く必 要がある。

さて この章では特に重要な ビタ ミンがどのような食品に多 く含まれ,また

1

日にどの位必要か簡単に説明 しよう

‑ 1 5 6 ‑

(15)

1. ビタ ミン

B1

抗神経炎作用,脚気に有効な

B

.が は じめ米糠か ら抽 出されたように,糠 は 含量が多い。その他植物界では穀物の膝芽,豆類,いも,緑葉采,酵母等に多 く含まれ,動物界では肝臓,卵黄に多い.肉は一般に少ないが豚肉は例外的に 多 く含んでいる。

ところで,ハマグ リ,アサ リ, シジミ,などの二枚貝,淡水魚,わ らび,ぜ んまい等には ビタ ミン

B

.分解酵素 (チア ミナーゼ ・アノイ リナ‑ゼ)が存在 しているが, この酵素は加熱す ると不活性化す るので, これ らの食品を生で食 べない限 り,まず安心 と考え られる。なお ヒ トの腸内細菌か らもこの分解酵素 を産生する菌が見出されている。

一方ニ ンニ ク,ニ ラ, ネギの香の成分 ア リシン

( al l i c i ne )

はB.と結 合 し て化学的に安定なア リチア ミン

( a l l i t hi ami ne )

とな り, この ものは水 にと けに くく吸収率 もよ くなる。 この ことを利用す るため

B

lの誘導体 は化学的に 合成 され,吸収 されやす いように してあ り, これを活性 ビタ ミン

B

.と称 して いる。

Blの所要量 は消費熱量

1 , 0 0 0

カロ リーに対 し

0 . 3

mg位 とされているが,組織 が飽和 され る量 は

1 , 0 0 0

カロリー当 り平均

0 . 3 3 m g

と言われているので,安全量 を考慮 して

0 . 4 m g

とす ると,成人男子2

, 5 0 0

カロリー当 り

1 . 0 m g

となる。 もちろ んエルネギー消費が高 まっている発熱時や重労働時,それに妊婦や授乳婦 は

B.の必要量が少々高 くなる。

B

lは水溶性のため大量摂取 して も蓄積貯蔵 されることはな く,過剰分 は尿 中に排推 され る。一般に吸収は量的に1

0 m

gまでは投与量に応 じて腸管か らの吸 収量が増加す るが

,1 0 m

gを越えるとそれ以上摂取 して も吸収 されないと言われ ている。従 って必要量 は食品か ら毎 日摂 るように心がけ,一方, B.の調理加 工中の損失 は約

3 0 %

と言われているので,その分 は余分に摂 る必要があろう

2.

ビタ ミンB2

成長促進作用や抗 口角炎,抗 口唇炎等,皮膚炎に有効な

B2

は, ほとん どの 食品に含まれているので,一般 に需要は満たされていると考え られている。特 に植物では緑葉菜,穀類の腫芽,酵母 に,動物では肝臓,肉,卵,チーズなど に豊富に含まれている。

(16)

1

日の所要量 は成人男子で通常

1 , 0 0 0

カロ リー当 り

0 . 5 5 m g

で,

1

日およそ

1 . 3 m

gと言われている。女子で は

1 .1 m g

程度の摂取が必要であろう。 また繊維質の 摂取によ って腸内細菌の

B

2合成能力が増加す るので,その分だけ必要量 は少 な くてすむ。

B

2の調理加工中の損失は約

2 5 %

と言われている。

3.

ニコチン酸

抗ペラグラ作用のニ コチン酸は酵母に特に多 く含まれているが,その他 小 麦肱芽,豆類,獣肉,魚肉,肝臓など動植物組織中に広 く分布 している。

所要量 は成人男子

1 , 0 0 0

カロリー当り

6 . 6 m g

1

日の必要量

1 7 m g

程度 となる。

もちろん必須ア ミノ酸 トリプ トファンか ら生成されるが,その

6 0 m g

がニコチ ン

1m g

に相当す ると言われている。ニコチ ン酸の調理中の損失 は約

1 0 %

程度 と 言われている。

4.

ビタ ミンC

抗壊血病作用のあるビタ ミン

C

は新鮮な野菜,果実に多 く,野菜は白色部よ り緑色部 に多 く含まれている。果実では柑橘類,イチゴ,柿に多い。緑茶に も 比較的多 く含 まれているが,紅茶やウ‑ロン茶には

C

は含まれていない。

C

は食品の保存や調理加工中の損失が大 きく,条件に もよるが

,4 0 ‑7 0 %

普通

5 0 %

程度の損失 と考えた方がよい。従 って出来 る限 り新鮮な食品を摂 るこ とが望ま しい。 またニ シジン,キ ュウリ,カボチャなどにはビタ ミン

C

破壊酵 莱 (アスコル ビン酸酸化酵素)が存在す るので,組織が破壊 されると

C

を酸化 して しまう

しか し一度煮 ると酵素は不活性化 される。 もみ じおろ し (大根 と 人参の生)が不都合な理由はこの酵素のためである。 もちろん繊維を摂 るため であればかまわない。

C

1

日所要量は体重

1k g

当 りほぼ

1m

gとされている。従 って男子

6 0 m g

,女

5 0 m

gが必要である。小児は体格の割に代謝が激 しいので

3

割増,妊婦 も代謝 元進 と体重増加を見込んで

5

割増,授乳婦は

1 5 割

増が必要 とされている。母乳 中にはビタ ミン

C

は飽和状態にあると考え られているが,牛乳中には

C

はほと んど含まれていないので,人工栄養児はこの点注意すべ きであろう。

5.

ビタ ミン

A

抗眼疾,上皮粘膜保護作用のあるビタ ミン

A

その ものは,動物性食品にのみ 存在 している。即ち肝油,バ ター,卵黄である。肉は一般に少ないが ウナギの

‑ 1 5 8 ‑

(17)

みは例外で肉に含まれている。一方植物性食品には体の中で ビタ ミン

A

に変わ る物質プロビタ ミン (ビタ ミンの母体又は前駆体)がある。 ビタ ミン

A

のプロ ビタ ミンはニ ンジンやカボチャ,ほうれん草等に含まれ ている色素 カロチ ン で,その他緑葉菜, しそ,(浅草)の り等にも多 く含まれている。

本来の

A

の他 にプロビタ ミン

A

もあ り,同一重量で も

A

の効果が異なるの で,生理効果を もとに して,国際単位 Ⅰ

.U.( I nt e r nat i onalUni t )

が定め ら れている。 ビタ ミン

A

0 . 3〟g

1

.U.

,

β

‑カロチ ンは

0 . 6〃g

,その他 のプロビタ ミン

A

1 . 2〟g

を 1Ⅰ

.U.

と している。但 しカロチ ンの吸収率 は 食品の種類や調理方法で異なり,一般に油脂類 と一緒に摂 ると吸収はよ くなる が, 日本では

A

の給源 となる植物性食品のカロチ ンの平均吸収率を

3 0 %

として いる。

さて ビタ ミン

A

1

日所要量 は成人男子で2

, 0 0 0

.U.

,女子

1 , 8 0 0

.U.

であ るが,カロチ ンで摂 る場合は一応その

3

倍の Ⅰ

.U.

が目標になっている。 しか し少な くとも所要量の半分は本物の ビタ ミン

A

で摂 ることが望ましいとされて いる。

A

は脂溶性 ビタ ミンにため過剰摂取すると蓄積 され,過剰症が生ず ることは 既 に前に説明 してある。一方みかん カボチャ等のカロチ ンの過食で皮膚や粘 膜が黄色 くなる現象 (柑皮症)があるが,危険はない。

ビタ ミン

A

およびカロチ ンの調理中の損失は平均

2 0%

程度で, ビタ ミン

E

C

は酸化に弱いこの

A

の保護効果がある。

6.

ビタ ミン

D

くる病を予防するビタ ミン

D

は魚類の肝臓や肝油,また卵黄に少 し含まれ, プロビタ ミン

D

2として椎茸,酵母に, プロビタ ミン

D

:1として動物の皮膚細胞 に存在す る。

1

日の所要量は幼児で

4 0 0 Ⅰ .U.

で ビタ ミン

D

1 0F Lg

に相当す る。 くる病 の治療 は

3 0 0 Ⅰ .U.

でで きるが,青少年や成人は

1 0 0

.U.

で十分であ るとされ ている。 しか し妊婦や授乳婦はカルシウム代謝が元進 しているので

,4 0 0

.U.

必要であるとされている。

D

A

と同様過剰症があることは前に説明 した。

D

の吸収には胆汁酸塩が必須であるとされている。従 って胆汁分泌の少ない人や 閉塞性黄垣で胆汁の腸内排他が妨げ られ ると

D

の吸収は阻害 され ることにな

(18)

る。

D は貯蔵,加工,調理 に対 して比較的安定で損失 はない と考え られて いる。

7. その他の ビタ ミン

その他 の ビタ ミンの 1 日の所要量 と食品中分布を一括 して表 3 に示 した。

3. その他のビタミンの 1 日所要量と食品中の分布

類 1 日所要量 分 布

ン ビタミン

B

6 1 . 6 ‑2 . 0 m g 酵母,穀頬,豆類,魚肉, 獣肉,肝臓 通常の食物で足りるo パントテン酸 1 0‑1 5 m g 広 く分布する○酵母,肝, 卵黄,膝芽,根菜に多いo ′′

タミン

B

.2 3〟g 動物の内臓,赤身肉,負 類o ′′

葉 酸 0 .1 ‑0 .2 m g 肝,腎,キノコ,酵母,緑 葉に豊富に分布する○

ビオチン 0.1 5 ‑0. 3 m g 黄,肉類,豆類,醇母o ほとんどすべての食品,卵 ′′

タ ど

ビタミン

E

( 2 0‑3 0

mg)

植物油,卵,全粒穀物,肝 日本では決まっていな

臓o いo

ビタミン

K 不 明

緑黄野菜,大豆油,根菜o

5 節 癌や老化 と ビタ ミン

ビタ ミンの 1 日所要量 は前章で学んだよ うに,栄養上の 目的か らは最高でせ いぜ い ビタ ミン C の 5 0 ‑6 0 m g であ り,特別の場合を除 いて は通常の食生活で所 要量 を十 分 に満 た し健康保 持 に十分で あ ると考 え られて い る。 しか し最近 に な って ビタ ミンが老化や風邪や肝 炎等の予防や治療 に有効であ ると して大量 に 使われて いる。 いず れ に しろ所要量 の 5 0 倍 ,1 0 0 倍の大量 を用 いなければ効か ない とすれば,栄養素 と してで はな く医薬品 と して使用 して いると考 えなけれ ばな らない。 ビタ ミン C が欠乏すれば壊血病 にな るが, Cを与えれば治癒 し, 他の薬 を与えて も決 して よ くな らない。 しか し風邪 に C が効 くとい って も, ア ス ピリンも効 く。風邪 は ビールスが起 こす病気で, ビールスを殺す薬 は現在の

‑ 1 6 0‑

(19)

ところないか ら,結局,体の抵抗力を強めて自分 自身の治癒力で治 したと考え るべ きであろう

1. ビタ ミン

C

さて, ビタ ミン

C

の話に帰 りますが, ノーベル賞

( 1 9 5 4

年化学賞

,1 9 6 2

年平 和賞)を もらったポー リング博士 (物理化学者で医者ではない)が, ビタ ミン

C

は風邪 ウイルスの核酸を破壊す るか ら風邪の予防や治療 に有効であるとし て, Cの大量の服用をすすめ,また自分で実践 した ことか ら, 日本で も大 きな 反響が起 こり,臨床的に もため している病院がある。その後

C

の抗 ビールス作 用を利用 して,肝炎 ウイルス (B型肝炎)の発生を予防す ると報告 された。即 ち輸血後 に

1

2g

以上投与 した患者では,肝炎の発生率 は

0 . 2%,授与 しな

か った群では

7, %

の発生率を示 したというわけである。

一方体の中で ビールスの増殖を抑え るインターフェロンの産生を

C

が促進す る効果を有す るという報告,発癌物質のニ トロソア ミン (野菜などに含まれ る 硝酸塩か ら生ず る亜硝酸 と肉や魚 に含まれる二級ア ミンが胃の中で反応 して生 ず る化学物質)の生成を

C

が妨げる効果を もつという報告,実際に癌患者に

1

5g

以上服用 させ ると寿命を延長 させ る効果があるという報告 もある。

また ビタ ミン

C

の本来の生理作用 と考え られるコラーゲ ンの生成やその維持 を正常に保つ ことか ら,毛細血管の血管壁の脆弱化を防 ぎ, この ことが動脈硬 化に有効ではないか と予想 されることコレステロールの低下作用や, Cの抗酸 化作用で,過酸化脂質の生成を抑制 し,老化や動脈硬化の防止に役立っのでは ないかとも期待 されている。

しか し一方ではこのような大量の

C

投与で逆に有害になるとの報告 もある。

即ちビタ ミン

C

は尿酸値を高めるので,痛風の患者では腎臓結石 (尿酸結石) のおそれがあること,大量の ビタ ミン

C

は溶血を起 こしやすいこと,健康な成 人に

2

週間にわたって

1

0 . 5 ‑ 1 . 5

gを与え,その後正常の摂取量に戻す と, 血清及び血球中のCの値がかえ って正常の ヒ ト以下であったことなども報告 さ れている。また ビタ ミンB

12

の吸収を阻害す るとも言われている。

ビタ ミン

C

1

日所要量は個人差が大 きいとも考え られるが,またどの程度

C

を摂れば,病気の予防や治療 に役立っかという問題については,未だ十分 に研究 されているとは言えない。

(20)

2.

ビタ ミン

E

ビタ ミン

E

は強い抗酸化作用を もつので,生体膜を構成する不飽和脂肪酸の 過酸化を抑制 し,膜の安定化に役だっていると考え られている。一般に過酸化 脂質が血管障害,腫癌,老化に関係があると信 じられている。例えば ビタ ミン

E

の欠乏動物では,大動脈や頚動脈に動脈硬化の所見があり,

E

を授与 した動 物ではこのような動脈硬化の発生が抑制されたという報告,アラキ ドン酸の過 酸化物プロスタグランディ ンG

2 及 び H2

か ら作 られ る トロンボキサ ン

A2

が, 血管を収縮 し血小板を凝集 させて血栓の形成を促進 させ,心筋梗塞や脳梗塞発 生 と密接に関連す ること, また不飽和脂肪酸の多い脂肪を与えると乳房腫癖の 発生率が増加 し,

E

を授与するとその腫癌の発生率を低下 させ ること,無毛マ ウスに紫外線を照射す ると高率に偏平上皮癌が発生す るが,抗酸化剤の投与に よってその発生が抑え られることなどの報告が数多 くある。 これ らの実験は,

生体の中の抗酸化剤の不足が過酸化脂質の増加を招 き, この過酸化脂質がい ろいろ老化と関係のある病気 (成人病あるいは老年病 ?)の促進因子 として働 き, この時

E

はこの過酸化を抑制 して予防効果を発揮す るのだ」とす る解釈に 手助けす るか もしれない。

一方 ビタ ミン

E

の大量投与は, ビタ ミン

K

の代謝を阻害するため,血液の凝 固時間を長引かせ,出血の素因を作 ることも報告 されている。

ヒ トに対す るビタ ミン

E

大量授与の影響 (好影響,悪影響に関わ らず)につ いては,なお未知の点が多いと考え られている。

3.

ビタ ミン

A

β‑

カロチン

ビタ ミン

A

の生理作用の うち,粘膜上皮組織 と粘液分泌能の正常保持の作用 があることは既に学んだが,

A

の欠乏により粘膜組織が異常を来す と,細菌に 感染 しやす くなり皮膚の角化 も始 まる。

A

欠乏の動物では,気管上皮の核酸に結合する化学発癌物質の能力は,正常 動物に比較す ると

4

倍 も大 きいことが報告 されている。また‑ムスターの頚部 に入れ られた発癌物質の発癌作用は,

A

を摂 ることによって防御 されたとの報 告 もある。

ヒ トにおいては,

A

の摂取量 と肺癌の発現率の間に逆の関係があるとノルウ ェーで疫学的に確かめ られている。緑黄色野菜中のβ‑カロチ ンは ビタ ミン

A

‑ 1 6 2‑

(21)

のプロビタ ミンであるが, β‑カロチ ンの摂取量 と肺癌の発現 との間に逆の関 係がある。即 ち

β

‑カロチ ンは抗癌作用物質であ り,抗腫癌効果を持っと報告 されている。 また β‑カロチ ンの比較的多い食事は,長 い間煙草を喫 っている ヒ トの肺癌の危険 もまた減少 させるか もしれないと報告 されている。

癌が発生す る機構 は現在のところ,細胞の染色体の中で眠 っている発癌遺伝

( DNA)

杏,イニ シェーク‑

( i ni t i at or

,起爆者)で眼を覚 まさせ, プロ モーター

( promot or

,促進者)で発達 させて癌化 させ る二段階が考え られて いる。従 って イニ シェーク‑となるあ る化学物質が,遺伝子

DNA

を傷つけ て眼を覚まさせて も,プロモーターが促進 させない限 り癌化は起 こらず修復 さ れて しまうことになる。 ビタ ミン

A

β

‑カロチ ンは, このプロモーターの作 用を抑制する作用があると言われている。なお

A

は糖 タンパ クや糖質 コルチコ イ ドの合成に関与 しているので,免疫機能を賦活化 した り,ス トレスに対す る 抵抗力をます ともいわれている。

しか し, ビタ ミン

A

は脂溶性 ビタ ミンなので,過剰を摂 ると蓄積 して害にも なることを もう一度思い出 してほ しい。

おわ りに

高血圧,心臓病,糖尿病,貧血,胆石,痛風,肝炎,肥満 といった成人病や 病気が増加 している事実は,食生活が理想的とは言えないか らであろ うか。特 に子供達の食生活はバランスの良 い食生活が必要である。①体の活動に必要な エネルギー源である糖質,脂質,②体の発育,筋肉組織の消耗を補充するタン パ ク質,③糖質,脂質,タンパ ク質を うま く代謝 し,円滑に調節する ビタ ミン と ミネラル,などを量,質 ともにバランスよ く摂取することが重要である。現 在の子供達の食生活は動物性脂肪の過剰 (ハ ンバーグ,ハム, ソーセージ, ピ

ザ, スパ ゲ ッテ ィ,焼 そば,ギ ョウザ,唐揚 げ, その他)であ り,糖質過剰 (間食としての インスタン トラーメン,スナ ック菓子, ジュース,その他)で あ り,緑黄色野菜の不足になっているか もしれない。

昭和60

年 1

1月,厚生省 は ビタ ミンCや ビタ ミンEの とり過 ぎに警告を発 し た。即 ち,厚生省は, 「ビタ ミン

C

について世界各国でい くつ もの試験調査が

表 2. MAD (P) を補酵素 とす る脱水素酵素 酵 素 補 酵 素 反 応 アル コール脱 水素酵 素 NAD エ タノール言=三アセ トアルデ ヒ ド アルデ ヒ ド脱水素酵 素 NAD アセ トアルデ ヒ ド言=ヱ酢酸 イ ソクエ ン酸脱水素 酵素 NADP イ ソクエ ン酸 = 2 ‑オキ ソグル タル酸 グル コース ‑6 ‑ リン酸脱 水 NAD>NADPNADP グル コース ‑6‑ リン酸石= ±6 ‑ホス グル素酵 素コ ン酸 グル タ ミン酸脱水素酵素 グル タ ミン酸 岩

参照

関連したドキュメント

2. ビタミンCと料理方法について   3. みやざきビタミンピーマンについて 4.

注)ビタミンAの前駆体であるβ-カロテンについては、ビタミンA源の栄 養機能食品として認めるが、その場合の上限値は 7,200μg、下限値は 1,620μg とする。

小魚の各種いわし稚魚加工品のビタミンB 12 含量を測定した結果、乾燥・半乾燥品のビタ ミンB

全国調査 のまとめ • ほとんどすべての施設における新生児は、ビタミンK投与を 受けていた • 93.3%の施設では、ビタミンKの3回投与を実施していた

緒 言 ビタミン E

溶出を抑制している。一般的な成人男性においては、 1日 75mg 程度必要であると えられている(

サンブライド (サニーレタス) 葉の縮みが細かいサニーレタス。 葉数は多く肉厚で柔らかい食感。 ・ビタミンC

ことを明らかにした。葉酸とB6はともにHCY代謝において重要な役割を有するビタ