2. 学 生 相 談 の基礎 知 識
保健管理セ ンター所長 佐 々木 大 輔
1. 日本 の学 生相 談 の歩み アメ リカのSPSが紹介 される
1951年 に,アメ リカのSPS (StudentpersonnelseⅣices)やカ ウンセ リングを 日本 の大学 に紹介す る ため,ミネ ソタ大学や ブ リガムヤ ング大学か ら専門家5名 が来 日し,厚生補導委員会 を開催 しています。
spsは学生助青 と訳 されていま した。SPSの項 目には入学許可,オ リエ ンテー シ ョン,宿舎 と給食,カ ウンセ リング,学生活動,経済支援 (奨学資金),保健指導,就職斡旋 があ ります。 この うちのカ ウンセ リングに学生相談が含 まれていま した。
日本 の学生相談 の費 明期
このアメ リカか ら紹介 され た1953年 には東大 に学生相談所が開設 され ま して,1987年 には 日本学生相 談学会が創設 され ています。その後他 にも学生相談 関連 の全国的な会合 が多 く行 われ るよ うにな りま し た (表1)0
表1 主 な学生相談関連の全国的会合 1)全 国学生相談研 究会議
2)全 国大学 メンタル‑ル ス研究会 3)日本学生相談学会
4)全 国大学保健 管理研 究集 会 5)メンタル‑ル ス研究協議会 6)学生相談イ ンテ‑カーセ ミナー
7)全 国学生指導研 究集会 (前 :全国厚生補導研 究集 会) 8)地 区学生指導研修会
9)厚 生補導研 究協議会 (学生指導担 当職員研修) 10)厚生補導事務研 修会 (学生指導担 当職員研修) 11)日本 心理 臨床学会大会 自主 シンポジ ウム 12)関西学生相談研 究会(ESCA)
注 :1),2)は学生支援合 同フォー ラム として運営 され てい る。
2.学生相談 とは
学生相談の定義 :学生の人間形成 を担 う機能
学生相談の定義 は,平成19年 に 日本学生支援機構 か らでま した 「大学にお ける学生相談体制 の充実に つ いて」の報告書 1)の 中にあ ります。『学生が 「ニー ズを感 じた時点」で 「個別相 談」 を中心 とす る丁 寧 な コ ミュニケー シ ョンを通 じて, 「全人的 に」育 ててい く機能 を有す るもの』 と定義 され ています。
「全人的に」育ててい く機能 を有す るもの とい うところが強調 されています。平成12年 に出 され た 「廉 中 レポー ト」では学生相談の機能 を 『学生の人間形成 を促す もの として捉 え直 し,大学教育 の一環 とし て位 置づ ける必要 が ある』 と記載 してあ り,学生 中心の学生相談が行 われ るよ うにな りま した。 「なん で も相談窓 口」 も虞 中 レポー トで提案 しま した。
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学生相談 の発展 :部屋 の中で待 って いる学生相談か ら外へ発信す る学生相談へ
また,従来 は 自主来談, 自己相談待 ちの学生相談であ りま した。つ ま りカ ウンセ ラーが相談室の中に 閉 じこもって待つ とい うのが基本 スタンスで したが, 自主来談か ら脱皮 してい こ うとい うことで,近年 は 「ア ウ トリーチ」 も重要視 されてお ります。ア ウ トリーチはまだ,訳語 ができていないのですが,学 生支援組織 か ら学生 に働 きか ける予防発 達的支援で あ り, 「出前相談」 とか 「出張相談」 と訳 してい る 方 もお ります。情報 の発信 としてのパ ンフ レッ ト,ニ ューズ レター,出張講話 な ども含 まれ ます。 この 会 もア▲ゥ トリーチの一環 である と言 える と思います。心理教育 ・ワー クシ ョップ,大学生活 に必要なス キル を身 に付 け させ ること, ソー シャル スキル トレーニ ング,問題 の早期発 見,健康増進 プ ログラム等 もア ウ トリーチ と言 えます。
多岐にわたる学生相談 の形式 ・内容
現在,学生相談 の分類 は 「個人相談」 として学生生活相談,進路適性相談 ,心理教育相談 (学業 ・修 学 ・性格 ・対人 関係 な ど),心身健康相談 ,危機介入 , 「グループ相談」 として短期集 中型 (ェ ンカ ウ ンター ・グループな ど),定期継続型 (定期 的に行 うグループ活動な ど) とされています。
学生支援の3階層 モデル
「大学 にお ける学生相談体制の充実 について」の中では学生支援組織 を3階層モデル で提示 してお り ます (図)。第1層 は, 日常的支援者 ,た とえば修学指導,学生指導,研 究室運営,窓 口業務 な どであ ります。第2層 は制度化 された学生支援,つ ま りクラス担任 ,アカデ ミックア ドバイザー,チュー トリ アル システム等です。第3層 は専門的学生支援です。保健管理セ ンターは第3層部分の担 当です。
図 学生支援の3階層モデル (文献1か ら)
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3.学 生相 談 の現 状
学生相談機 関設置率 とカウンセ ラー数
学生相談 に関す る各種 の統計が大島 ら2)に よって報告 され ていますので紹介 します。学生相談機 関設 置率です が,平成8年 高等専門学校 は3校 しかなかったのですが,現在 はほぼ全校 に設置 され ています。
現在 ,国公 私 立大学全体の設置率 は約53%で あ りますO学生相談 に必要 なカ ウンセ ラー数 です が1万人 に3.3人 くらい とされ ています。 日本の国立大学では在籍 学生1万人あた り2.8人 とやや少 ない状況であ りますO 弘前大学 の学生数 は学部 と大学院 を合 わせ ます と6,756人 (H.20.9.1)で,カ ウンセ ラー数 は2.2人です ので1万人あた りでは3.3人であ ります。
年間来談音数 ・相談 内容 ・来談時期 による特徴
年 間平均来談者 数 は,国立大学 は学生相 談組織 が充実 してい るのでのべ781人 とかな りの人数 に上っ てい ます。 国立大学 の相談内容別割合 は勉学 ・進 路が31%,心理 ・適応 が46.8%,その他 が22.2%となっ ています。公 立短期大学ではJL、理 ・適応 が74.8%と非常に高率です。
来談時期 と相談 の特徴 は鶴 田3)が分類 してお ります (表 2)。対談時期 に応 じて特徴があ るこ とを念 頭 においての対応 は有用であ ります。
表 2 来談時期 と相談の特徴 (文献 3)か ら)
入学期 :比較的健康 な学生の入学 に ともな う短期 間の相談。入学以前か らかか えて きた未解決 な問題 の相談
中間期 :学生生活の情報 を求めて来談。比較的安定 した学生生活 のなかでの未解決 な課題‑の 取組
卒業期 :卒業前の現実的課題‑の取組。卒業を前 に した内面の見つ め直 し
大学院学生期 :大学院入学後の適応 ,将来の問題‑の取組。研究,対人関係 な どの困難 な現実 的問題
大学院修 了期 :研究,進路 な どの修 了期 の現実的問題‑ の取組。修 了を前 に した内面の見つ め 直 し
4.大学 の メ ンタルヘ ルス に関す る問題 点 と今 後 の課 題
大学のメンタル‑ルスに関す る問題点には次の よ うな ことがある と思います。①高等教育で一般教養 としてのメンタル‑ル ス教育はあま り行われ ていない。また,指導者 の養成 も系統的 に行われていない。
②学生が企業 に就職 してか らメンタル‑ル ス を学ぶのは遅す ぎる。③大学 の学生 ・教職員 のメンタル‑
ル ス対策 は重要であるが,その方針や具体策 の検討 は少 ない。④ハ ラスメン ト,宗教対策 ,キ ャ リアカ ウンセ リング, コ ミュニケーシ ョン能力の向上な どの大切 さが叫ばれてい るがメンタル‑ル ス面か らの アプ ローチは少 ない。⑤独法化 によ り,数値 目標 の設定,業務評価 ,外部資金 の導入 な どが迫 られ,敬 職員 のス トレスの増加 が懸念 され る。⑥障害 を持つ学生‑の対応 が 目立つ。⑦課外活動 ・地域 にお ける 活動が活発 でない。⑧以上の項 目において,相互 間の連携 があま りよくない。
以上の問題 点 を踏まえ,人 を大切 にす る,ハ ラスメン トのない,相談 しやす い, キャンパス にす るに は,学生相談 の位置づ けを見直 し,学生の人間形成 を促す もの として大学教育の一環 に位 置づ けること が挙 げ られ ます。不登校や休学 を, 自分 をみつ め,つ く りかえる時 ととらえなお し,見守 る,育てなお す な ど,肯定的で前 向きに とらえます。次 に,人的資源 の充実ですが,全教職員 が学生の相談 に応 じる
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ことが基本で あることを再認識 し,専門家の配置,ベテ ラン教職員 の活用,カウンセ ラーやア ドバイザ ーの質の向上,地域や医療機 関等 との連携体制の整備 な どをお こな うことを提案 します。学生 ・教職員 ほかキャンパスにかかわ るすべての人が特に今後向上 させ るのは,①心身の健康 に関す る知識や理解, 健康の保持 ・増進,②疾病の予防,③対人関係 スキル, コミュニケーシ ョン能力の向上,④人権 につい ての知識 を深 め,理解 し,対応 を図 ること,⑤異文化‑の理解,国際交流能力,⑥待 ちの学生相談か ら の脱皮,ア ウ トリーチの充実な どを挙げたい と思います。
参考文献
1)独立行政法人 日本学生支援機構 学生生活部学生生活計画課編 :大学 にお ける学生相談体 制の充実方策 につい て.2007; httD〟www.1‑asso.go.1'D
2)大 島啓利 ,青木健次,駒 米勝利 ,也 :2006年度学生相 談機 関に関す る調査報告 .学生相談研 究 2007;27:238‑
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3)鶴 田和美編 :学生のための心理相談 大学カ ウンセ ラーか らのメ ッセー ジ.2001:p2‑53培風館 ,東京
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