年金理解度と年金教育需要
佐々木 一 郎
■アブストラクト
現在わが国では,若年世代を中心に公的年金未納・未加入が社会問題にな っている。先行調査・研究から,公的年金未納・未加入者は年金理解度が低 い傾向があることが示唆されている。そのため,年金未納・未加入問題を解 決するという観点からも,年金理解度が低い人々は,不足する年金理解度を 補うため,年金教育需要が高いことが望まれる。年金理解度と年金教育需要 の間には,どのような関係があるのであろうか。
本研究では,独自のアンケート調査データに基づき,年金教育需要に影響 する要因を明らかにすることを研究目的とした。分析の結果,年金理解度の 低い人々ほど,むしろ,年金教育需要は低いことが明らかになった。年金理 解度の低い人々が自発的に年金教育を需要することは見込みにくいため,仮 に学校教育現場で年金教育を実施するのであれば,任意ではなく強制実施す ることが必要であると考えられる。
■キーワード
年金教育,年金リテラシー,年金問題
1 はじめに
わが国では,公的年金の仕組みや役割について,人々の理解度は全般的に 低い(厚生労働省 平成20年国民年金被保険者実態調査 結果の概要 参
*平成23年6月18日の日本保険学会関西部会報告による。
/平成24年6月18日原稿受領。
照) 。このような状況を改善し,人々の年金理解度を高めるためには,学 校教育現場等での年金教育の実施が1つの選択肢として重要になってくると 思われる。
年金教育の提供をめぐっては,個人の自由な意思に委ねた場合であっても,
自発的に年金教育を受けたいと思うであろうか。とりわけ,年金理解度の低 い人々については,年金教育を受けたいかどうかについて,どのような意識 をもっているのであろうか。また,公的年金の加入納付状況によって,年金 教育を受けたいと思う意識には,顕著な差異がみられるのであろうか。
本研究では, 年金理解度 公的年金加入納付状況 の2つのファクター に焦点を当て,それぞれのファクターが年金教育需要にどのようなインパク トを及ぼしているのかについて,クロス集計およびロジットモデルに基づき,
分析する。また,その分析結果を踏まえ,年金教育を展開するうえでの課題 について考察する。
より具体的には本研究では,次の3つの点を明らかにすることを研究目的 とする。第1は,年金教育需要の影響要因を総合的に明らかにすることであ る。第2は,年金教育の必要性が特に高いはずの年金理解度が低い人々につ いて,その年金教育需要がどのようになっているかを明らかにすることであ る。第3は,公的年金加入納付状況の違いによって,年金教育需要の点で顕 著な差異がみられるかを明らかにすることである。
2 先行研究
これまでわが国の年金未納問題をめぐる先行研究では,年金未納に影響す る未知のファクターとして,年金不信や低収入,短命予想などのファクター
1) 平成20年国民年金被保険者実態調査結果の概要 (厚生労働省)は,国民年 金制度の周知度について調査している。同調査結果によると, 公的年金の物 価水準維持についての周知度 は,43.4%である。また, 基礎年金における 国庫負担の周知度 は,37.2%である。年金保険料の未納者については,周知 はさらに低い数字になっている。
に多くの焦点が当てられてきた 。
その一方で,未知の年金未納理由を解明し,年金未納問題を解決する上で 重要である可能性が高いにもかかわらず, 年金理解度 や 年金教育 に 焦点を当てた研究は,わが国では殆ど行われてこなかった。
海外の先行研究については,年金教育そのものを研究対象としているもの ではないが,関連するものとして金融教育に焦点を当てた研究として,
Agnew et al.[2008]がある。同研究では,経済実験から,金融リテラシ ー水準と年金選択行動との関係を分析している。まず,金融に関するクイズ から,被験者を,金融リテラシーの高いグループと低いグループに識別して いる。また,被験者は,当初に所定の金額を与えられるものとし,年金を買 うか,自分で選択したポートフォリオに投資するかのいずれかを選択すると いう設問を設定している。そのうえで,金融リテラシーの高低が年金選択と どのような関係にあるのかを分析している。
分析の結果,金融リテラシーが高いグループでは,年金を選択しない傾向 が顕著であった。その考えられる理由として,金融リテラシーの高いグルー プでは,金融商品に精通しているために,年金ではなく他の金融商品で老後 に備える方法を選択すること,また,金融リテラシーが高いために自分自身 の投資能力について自信過剰傾向があることの影響が考えられることを指摘 している。
また,Brown[2009]は,金融教育が年金選択を促すように作用するか 抑制するように作用するかは,金融教育の内容が 投資手法 と 安全な退 職後所得を得る方法 のいずれに主な焦点を当てるかで,大きく異なってく る可能性を指摘している。
海外の先行研究からは,金融教育が年金行動に及ぼす影響については,条
2) 公的年金制度は多くの諸課題をかかえているが,わが国の高齢者の老後生活 を支えるうえで,重要な役割を果たしている。厚生労働省[2009]によると,
高齢者世帯の平均所得のうち,公的年金・恩給が占める割合は,70.6%に達し ている。
表1 使用データの記述統計量 変 数 名
性別
年齢
学歴
年収
年金理解度
公的年金加入状況
年金教育需要
分 類 標本数 構成比
(%) 男
女
481 464
50.9 49.1 20〜29歳
30〜39歳 40〜49歳 50〜59歳
206 265 230 244
21.8 28.0 24.3 25.8 中学校卒
高校卒
専修・専門学校卒 短大・高専卒 大学卒 大学院卒 わからない 答えたくない
10 227 123 109 407 57 1 11
1.1 24.0 13.0 11.5 43.1 6.0 0.1 1.2 0円
100万円未満 100〜300万円未満 300〜500万円未満 500〜700万円未満 700〜1000万円未満 1000〜1500万円未満 1500〜2000万円未満 2000万円以上 答えたくない
11 22 110 202 210 157 77 19 8 129
1.2 2.3 11.6 21.4 22.2 16.6 8.1 2.0 0.8 13.7 理解している
やや理解している あまり理解していない 理解していない
101 387 374 83
10.7 41.0 39.6 8.8 国民年金 (保険料納付)
国民年金 (保険料免除・猶予) 国民年金 (未納者)
国民年金 (第3号被保険者) 厚生年金 (加入者)
共済年金 (加入者) 公的年金 (未加入者)
244 57 20 139 393 71 21
25.8 6.0 2.1 14.7 41.6 7.5 2.2 受けたいと思う
受けたいとは思わない
672 273
71.1 28.9
件次第で,金融教育が年金加入を促進するように作用し,逆に抑制するよう にも作用するなど,複雑な影響の及ぼしかたをすることを明らかにしている。
さて,未知の年金未納理由の解明および年金未納問題の解決において,な ぜ 年金理解度 や 年金教育 が重要であると考えられるのであろうか。
その1つの根拠は,厚生労働省[2008]と社会保険庁[2004]の調査結果が 参考になる。これらの調査結果から,公的年金未納・未加入者は,公的年金 納付者よりも,年金知識・老後意識が低いことが示されている。これらの調 査結果は,様々な要因を同時に考慮した分析ではないので,その結果の解釈 については慎重に行わなくてはならないものの,年金理解不足が未知の年金 未納理由である可能性があること,そして年金教育が年金未納問題を解決す る上で重要であることを示唆している。
このように,年金理解度や年金教育は,年金未納問題を解明・解決するう えで,重要なキーワードである。それにもかかわらず,わが国の先行研究で は,年金理解度や年金教育に焦点を当てた研究はほぼ皆無の状況である。年 金理解度や年金教育をめぐっては,年金理解不足は年金未納を誘発している のか,年金理解不足が解消されれば年金未納は減少するのか,年金教育を需 要するのはどのような特徴をもつ人々であるのかなど,多くの研究上の空白 域が存在している。
これらの研究上の空白域の1つとして,本研究では,年金理解不足と年金 教育需要の関係に着目し,その関係を明らかにすることを研究目的とする。
3 データ
3‑1 調査の概要
本研究で使用するデータは,Web調査により収集されたデータである。
本アンケート調査は,アンケート調査票を筆者が作成し,Web調査の実施 については外部の調査会社に委託した。調査期間は,2010年8月である。調 査対象は,20〜60代の男女で,回収サンプル数は1200である。日本全体を北 海道から九州・沖縄までの8エリアに分類したうえで,性別・年代・エリア
の3基準にもとづき,総務省 住民基本台帳に基づく人口,人口動態及び世 帯数(平成21年3月31日現在) による人口分布比率を参考にして,本研究 の1200サンプルに比例的に割り当てた。
回収されたサンプルは,すべて,欠損値のないサンプルである。本研究で は,公的年金加入の対象である20〜59歳であること,公的年金受給者ではな いことの条件を満たしたサンプルを分析対象とし,945サンプルを分析に使 用する。
3‑2 標本属性
アンケート回答者の基本属性については,表1の使用データの記述統計量 にまとめている。性別については,男性が50.9%,女性が49.1%である。年 齢の平均値は,40.1歳である。回答者の年収は,500〜700万円未満が最も多 く,22.2%であり,次に,300〜500万円未満が多く,21.4%となっている。
4 年金教育需要に影響する要因の分析
4‑1 クロス集計に基づく分析
以下では, 年金理解度 公的年金加入納付状況 の2つのファクターが,
年金教育需要とどのような関係があるのかについて,クロス集計にもとづき 考察する。
図1 年金理解度と年金教育需要
(出所) 筆者によるアンケート調査データに基づき作成。
4‑1‑1 年金理解度と年金教育需要
年金制度の理解度が低い人は,不足する年金理解を補うために,年金教育 を受けたいと思うであろうか。それとも,年金理解は不足しているにもかか わらず,年金教育を受けたいとは思わず,年金理解度は低水準のままとなる のであろうか。
図1を参照されたい。図1は,年金理解度と年金教育需要との関係をまと めている。アンケートでは, 年金制度のしくみをある程度理解しています か とたずねている。選択肢としては, そう思う ややそう思う あま りそう思わない そう思わない の4つを設定した。本研究では, そう思 う ややそう思う あまりそう思わない と回答した場合を, 年金理解 度は高い とし, そう思わない と回答した場合を, 年金理解度は低い と定義する。
また,年金教育需要については,本アンケート調査では, 年金教育を受 けたいと思いますか とたずね, そう思う または ややそう思う と回 答した場合, 年金教育を受けたいと思う (= 年金教育需要がある ) と定 義する。 そう思わない または あまりそう思わない と回答した場合,
年金教育を受けたいとは思わない (= 年金教育需要はない ) と定義する。
図2 公的年金加入納付状況と年金教育需要
(出所) 筆者によるアンケート調査データに基づき作成。
クロス集計の結果,年金教育を受けたいと思う割合は,年金理解度が高い 場合は73.0%,年金理解度が低い場合は51.8%となっている。年金理解度が 低い人々については,本来であれば不足する年金理解を高めるために,年金 教育の必要性は高いにもかかわらず,年金教育を受けたいという割合はむし ろ低くなっている。
4‑1‑2 公的年金加入納付状況と年金教育需要
公的年金の種類には,国民年金,厚生年金,共済年金の3つがある。
まず,国民年金加入者については,国民年金保険料納付者,国民年金保険 料免除・猶予者,国民年金未納者,国民年金第3号被保険者に細かく分類し,
年金教育需要との関係をクロス的にみてみよう。図2に示されるように,年 金教育を受けたいと思う割合は,国民年金保険料納付者は68.4%,国民年金 保険料免除・猶予者は61.4%,国民年金未納者は45.0%,国民年金第3号被 保険者は79.9%である。国民年金加入者のなかで比較すると,年金教育を受 けたいと思う割合は,国民年金第3号被保険者が最も多く,保険料納付者,
保険料免除・猶予者と続き,未納者は最も少ない割合となっている。
次に,厚生年金加入者については,年金教育を受けたいと思う割合は,
74.8%である。さらに,共済年金加入者については,年金教育を受けたいと 思う割合は,70.4%である。
公的年金未加入者については,年金教育を受けたいと思う割合は,28.6%
であり,全体のなかで最も低い割合となっている。
4‑1‑3 基本属性・社会階層と年金教育需要との関係
本人の基本属性としては,性別と年齢の2つに着目した。まず,性別に着 目すると,年金教育を受けたいと思う割合は,男性は65.9%であるのに対し て,女性は76.5%である。次に,年齢に着目すると,年金教育を受けたいと 思う割合は,20〜29歳,30〜39歳,40〜49歳,50〜59歳のそれぞれについて,
73.3%,73.6%,67.4%,70.1%となっている。
男性よりも女性のほうが年金教育を受けたいと思う割合は高く,また,20 代・30代の若年世代のほうが中高年世代よりも年金教育を受けたいと思う割
合は高いことが示されている。
社会階層については,学歴および年収に注目した。学歴については,年金 教育を受けたいと思う割合は,大学・大学院卒は71.8%,中学校卒,高校卒,
専修・専門学校卒,短大・高専卒,わからない,答えたくないは,70.5%で ある。年収については,年金教育を受けたいと思う割合は,500万円以上は 72.6%,500万円未満・答えたくないは69.6%である。学歴,年収の違いは,
年金教育を受けたいという割合の差は,3%以内になっている。
4‑2 モデル
クロス集計にもとづく分析から,第1に年金理解度については,年金理解 度が低い人々のほうが,年金理解度が高い人々よりも,年金教育を受けたい と思う割合は低いことが示された。第2に,公的年金加入納付状況について は,公的年金未納未加入の人々のほうが,公的年金加入・納付者等よりも,
年金教育を受けたいと思う割合は低いことが示された。
さて,年金教育需要については様々な要因が影響を及ぼしていることが考 えられる。そこで,様々な要因を同時に考慮したうえで, 年金理解度
公的年金加入納付状況 の2つのファクターが年金教育需要にどのような 影響を及ぼしているのかを明らかにするため,以下ではロジット分析を行う。
分析で用いたロジット・モデルは,以下のとおりである。
y = β + ∑ β・X + u y=1 y >0 の場合 y=0 y ≦0 の場合
ただし,yは年金教育需要(年金教育を受けたいと思う1,思わないは0 のダミー変数),uは誤差項,X 〜X は説明変数,βは定数項,β〜βは 説明変数X 〜X の係数である。
説明変数として用いたのは,性別X(男は1,女は0のダミー変数),世 代20代X (20代は1,それ以外は0のダミー変数),世代30代X (30代は 1,それ以外は0のダミー変数),世代40代X (40代は1,それ以外は0の ダミー変数),学歴X (大学・大学院卒は1,中学校卒または高校卒または
専修・専門学校卒または短大・高専卒またはわからないまたは答えたくない は0のダミー変数),年収X (500万円以上は1,500万円未満・答えたくな いは0のダミー変数),年金理解度X (年金理解度は低いは1,年金理解度 は高い・やや高い・やや低いは0のダミー変数),公的年金加入納付状況X (国民年金未納または公的年金未加入は1,国民年金保険料納付または国民 年金保険料免除・猶予または国民年金第3号被保険者または厚生年金加入ま たは共済年金加入は0のダミー変数),厚生年金・共済年金X (厚生年金ま たは共済年金に加入しているは1,国民年金保険料納付または国民年金保険 料免除・猶予または国民年金第3号被保険者または国民年金未納は0のダミ ー変数)である。
表2 年金教育需要に関するロジット推定結果
説 明 変 数
(注) , , は,それぞれ1%,5%,10%水準で有意である。
被説明変数:年金 教育需要
(年金教育を受け たいと思う:1,
思わない:0)
係 数 標準
誤差 限界効果
性別 世代 (20代) 世代 (30代) 世代 (40代) 学歴 (本人) 年収 年金理解度
公的年金加入納付状況 定数項
サンプル数 945
Pseudo R
0.0478 対数尤度 −540.92132男 20〜29歳 30〜39歳 40〜49歳 大学・大学院卒 年収500万円以上 低い
未納未加入
−0.55704 0.36433 0.31131
−0.04816 0.05511 0.06959
−0.99038
−1.44578 1.16030
0.15615 0.22453 0.20595 0.20409 0.15947 0.15619 0.24711 0.34650 0.19100
−0.11178 0.07002 0.06082
−0.00976 0.01111 0.01403
−0.22697
−0.34042
4‑3 仮 説
先に示した本研究のモデルでは,係数の符号が正であれば年金教育需要を 増大させるように影響し,係数の符号が負であれば年金教育需要を減少させ るように影響するものと解釈することができる。
年金理解度 については,係数の符号は,正の可能性が考えられる。年 金理解度が低い場合,年金教育によって年金理解度の不足を補いたいと考え ることが予想されるからである。
公的年金加入納付状況 については,係数の符号は,正の可能性が考え られる。公的年金未納未加入の人々ほど,少ない年金知識不足を補うために,
年金教育の必要度は高いことが予想されるからである。
4‑4 推定結果1 ―年金理解度の影響―
表2のロジット推定結果によると, 年金理解度 は,年金教育需要に対 して1%水準で有意に負の効果をもつ。年金理解度が低い人々は,そうでな い人々よりも,年金教育需要が低いことが示された。クロス集計表に基づく 分析だけではなく,様々な要因を同時にコントロールしたロジット分析にお いても,年金理解度が低い人々のほうが,年金教育需要は低いことが明らか になった。
年金理解度が低い場合,年金理解不足を補うために,年金教育需要は高く なることが事前には予想されたが,逆の結果となった。
4‑5 推定結果2 ―公的年金未納・未加入の影響―
厚生労働省 平成20年国民年金被保険者実態調査 結果の概要 から,公 的年金未納・未加入者は,年金知識が少ないことが示唆されている。そのた め,公的年金未納・未加入者は,不足する年金知識を補うため,年金教育需 要が高いことが望まれる。果たして,公的年金未納・未加入者は,公的年金 納付・加入者と比べて,年金教育需要はどのようになっているのであろうか。
表2のロジット推定結果によると,公的年金未納・未加入者であることは,
年金教育需要に対して1%水準で有意に負の効果をもつ。公的年金未納・未 加入者は,年金教育需要が低いことが示された。限界効果の値が−0.34042
であることから,公的年金未納・未加入者であることは,そうでない場合と 比べて,年金教育を需要する割合は34.0ポイント小さくなる。
4‑6 推定結果3 ―厚生年金・共済年金加入の影響―
厚生年金・共済年金加入者であることは,国民年金加入者と比較して,年 金教育需要はどのようになるかを考察する。表3の推定結果によると,厚生 年金・共済年金加入者であることは,年金教育需要に対して5%水準で有意 に正の効果をもつ。限界効果の値が0.07769であることから,厚生年金・共 済年金加入者のケースでは,国民年金加入者の場合と比べて,年金教育を需 要する割合は7.8ポイント大きくなる。
0.07769
−0.21054 0.00481 0.01048
−0.02579 0.05128 0.05880
−0.13323
0.19089 0.16370 0.25237 0.15887 0.16104 0.20625 0.20924 0.22568 0.16494
1.06269 0.39343
−0.93296 0.02434 0.05304
−0.12854 0.26673 0.31050
−0.67762
加入している 低い
年収500万円以上 大学・大学院卒 40〜49歳 30〜39歳 20〜29歳 男
サンプル数 924
Pseudo R
0.0332 対数尤度 −529.04037 定数項厚生年金・共済年金 年金理解度
年収 学歴 (本人) 世代 (40代) 世代 (30代) 世代 (20代) 性別
標準 限界効果 係 数 誤差
被説明変数:年金 教育需要
(年金教育を受け たいと思う:1,
思わない:0)
(注) , , は,それぞれ1%,5%,10%水準で有意である。
説 明 変 数
表3 年金教育需要に関するロジット推定結果2
4‑7 個人属性・社会階層 (本人の学歴・年収・金融資産残高) の影響 個人属性として, 性別 は,年金教育需要に対して1%水準で有意に負 の効果をもつ。男性は女性よりも年金教育需要が低い。世代については,
世代 (20代) , 世代 (30代) , 世代 (40代) は,いずれも,年金教育需 要に対して有意な効果をもたない。 学歴 (本人) , 年収 はいずれも,年 金教育需要に対して有意な効果をもたない。
4‑8 年金教育に関するインプリケーション
現在,わが国では,学校教育等において体系的な年金教育を学ぶ機会は殆 どない。厚生労働省[2008]より,公的年金未納・未加入者は年金知識が少 ないことから,公的年金未納・未加入者は,不足する年金知識を補うため,
年金教育需要が高いことが望まれる。
だが,年金理解度が低い人のほうが年金教育を受けたいという割合は顕著 に低いという分析結果が示された。この分析結果を踏まえると,仮に年金教 育が任意で実施された場合,年金理解度が低い人々が自発的に年金教育を受 けようとすることは期待できない。そのため,年金教育を実施するならば,
学校教育等の現場で,任意ではなく皆実施により年金教育を展開することが 重要であると考えられる。
5 今後の研究課題
5‑1 年金教育の定義をめぐる議論
本研究では,アンケート調査における年金教育の定義について,主に公的 年金制度のしくみや役割などについて学習するものであると定義した。アン ケート回答者に対してこの定義をどのように提示するかによって,アンケー トの回答結果が異なったものとなり,分析結果も異なってくることも考えら れる。また,年金教育の内容や範囲をどう定義づけるか自体,有効かつ効率 的な年金教育を展開するうえで,1つの重要な研究テーマになると考えられ る。年金教育の定義に関する考察を行うことについては,今後の第1の研究 課題である。
5‑2 年金教育のチャネル選択
人々の年金知識や年金意識を高める手段としては,学校等での年金教育の ほか,郵送による年金通知や,パンフレットの配布,テレビコマーシャルな ど,様々な手段が存在している。
本研究では,年金教育のチャネルとして,人々はどのような手段を求めて いるのか,また,どのような手段を用いることで,有効かつ効率的な年金知 識の提供が可能になるのかについてはあまり分析していない。年金教育のチ ャネル選択に関する問題を分析することは,今後の第2の研究課題である。
(筆者は同志社大学准教授)
参考 献
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