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分割前 の共有遺産 の使用 と使用 利益 の返還

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分割前 の共有遺産 の使用 と使用 利益 の返還

最 高 裁2000年4月7日 判 決 を素 材 に

田 中 康 博

1.問 題 設 定 一 共 有 者 間 で の 返 還 請 求 2.最 高 裁2000年4月7日 判 決

3.使 用 権 原 と使 用 利 益 の 返 還

4.不 当 利 得 金 な い し損 害 賠 償 金 の 支 払 請 求 ま と め に 代 え て

1.問 題 設 定 一 共 有 者 間 で の 返還 請 求

1‑1相 続 財 産 の管 理 と共 有 規 定

民 法 は,相 続 開始 直 後 の 相 続 財 産 の一 時 の 保 存 や清 算 に 向 け て の 「 一 時 的 な 管 理 」 につ い て は相 続 編 に規 定 を置 くが,そ れ 以 後 分 割 ま で の 「 浮動 期 間 中 の 管 理 」 に つ い て 相 続 編 は 何 も規 定 し て お らず,

す る規 定 が 適 用(ま た は 類 推 適 用)さ れ る1)。

こ こに は物 権 編 の 「 共 有 」 に 関

共 同相 続 人 間 に お い て は,共 同 相 続 人 の 一 人 が 相 続 財 産 に属 す る不 動 産 を利 用 し て い る,な ん か ず く家 屋 に居 住 して い る,場 合 に,他 の 共 同 相 続 人 か らの

1)千 藤 洋 三 「共 同 相 続 財 産 の 管 理 」 講 座 ・現 代 家 族 法5(1992年)29頁 以 下 。 判 例 (最 判1955年5月31日 民 集9巻6号793頁)の 如 く,遺 産 の 共 同 所 有 を 「共 有 」 と捉 え れ ば 共 有 規 定 の 「適 用 」,ま た こ れ を 「合 有 」 と捉 え れ ば 「類 推 適 用 」 と な る 。 共 有 規 定 を 適 用 す れ ば 管 理 方 法 は 持 分 の 過 半 数 で,合 有 とす れ ば 全 員 一 致 で 管 理 方 法 は 決 定 さ れ る こ と に な る と され て い る 。 本 稿 は 管 理 方 法 そ の も の を考 察 対 象 す る の で は な く,ま た 法 的 性 質 論 如 何 は本 稿 で の 考 察 に 影 響 を与 え な い の で,以 下 判 例 に 従 い 遺 産 共 同 所 有 の 法 的 性 質 を,「共 有 」と し て 考 察 を 進 め て い く。

〔105〕

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106 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

明渡 請 求 が 認 め られ るか とい う 問題 に 関 して共 有 規 定 の 適 用 が 問 題 とな る事 例 が す で に早 くか ら現 れ て い た。 具 体 的 に は 民 法252条 は,共 有 物 の 管 理 に 関 し て,「 共 有 物 ノ管 理 二 関 ス ル事 項 ハ 前 条 ノ 場 合 ヲ除 ク外 各 共 有 者 ノ 持 分 ノ価 格 二従 ヒ其 過 半 数 ヲ以 テ 之 ヲ決 ス 但 保 存 行 為 ハ 各 共 有 者 之 ヲ為 ス コ トヲ得 」 と規 定 す る 故 に,こ の 「 過 半 数 ヲ以 テ之 ヲ 決 ス 」 とい う こ とが 問 題 に され た の で あ る。

1‑2判 例

下 級 審 で は多 数 持 分 権 者 か らの 明 渡 請 求 を 認 め る も の も あ つ た2)が,最 高 裁 は,当 然 に は 明 渡 請 求 は で き な い とす る立 場 を示 し た

① 《 最 判1966年5月19日 民 集20巻5号947頁 》3)。

「 思 うに ,共 同相 続 に基 づ く共 有 者 の 一 人 で あつ て,そ の持 分 の 価 格 が 共 有 物 の 価 格 の 過 半 数 に 満 た な い者(以 下 単 に少 数 持 分 権 者 とい う)は,他 の 共 有 者 の 協 議 を経 な い で 当 然 に共 有 物(本 件 建 物)を 単 独 で 占有 す る 権 限 を有 す る もの で な い こ と は,原 判 決 の説 示 す る とお りで あ る が,他 方,他 の す べ て の 相 続 人 らが そ の 共 有 持 分 を合 計 す る と,そ の 価 格 が 共 有 物 の価 格 の 過 半 数 を こ え るか ら と い つ て(以 下 こ の よ うな 共 有 持 分 権 者 を 多 数 持 分 権 者 とい う),共 有 物 を現 に 占 有 す る前 記 少 数 持 分 権 者 に対 し,当 然 に そ の 明 渡 を 請 求 す る こ とが で き る もの で な い。 け だ し,こ の よ う な場 合,右 の少 数 持 分 権 者 は 自 己 の持 分 に よつ て,共 有 物 を使 用 収 益 す る権 限 を 有 し,こ れ に基 づ い て 共 有 物 を 占 有 す る もの と認 め られ る か らで あ る 。 従 つ て,こ の 場 合,多 数 持 分 権 者 が 少 数 持 分

2)例 え ば 後 掲 ⑨ 判 決

3)① 判 決 以 前 に も同 様 の 事 例 に 関 し て 最 高 裁 の 判 断 が 示 され て い る が,本 稿 で 主 た

る 考 察 の 対 象 とす る 後 掲 最 高 裁2000年 判 決 が,そ の 結 論 を 導 くに あ た り① 判 決 の

み を 引 用 し て い る こ と,及 び 本 稿 の 目 的 が,共 有 物 の 占有 関 係 一 般 に 関 す る 問 題

を検 討 す る こ とで は な い こ とが,ま ず は こ の65年 判 決 を取 上 げ る所 以 で あ る 。 な

お,こ の65年 判 決 とそ れ 以 前 の 判 決 と の 関 係 及 び65年 判 決 後 の 判 決 か ら 導 か れ る

共 有 物 の 占 有 に 関 す る 法 律 関 係 に つ い て は,山 田 誠 一 「共 有 不 動 産 の 占 有 に 関 す

る 法 律 関 係 」 判 タ641号(1987年)34頁 以 下 参 照

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分 割前 の共 有遺 産の 使用 と使 用利 益 の返還

ヱ07

権 者 に対 して 共 有 物 の 明 渡 を求 め る こ とが で き る た め に は,そ の 明 渡 を求 め る 理 由 を主 張 し立 証 しな け れ ば な らな い の で あ る。 」

① の 判 決 理 由 か らは どの よ う な要 件 が 備 わ れ ば,明 渡 請 求 が 認 め られ る の か 判 然 とせ ず,こ の 点 で は 批 判 を受 け て い る もの の,明 渡 請 求 を否 定 した こ と 自 体 は お お よ そ 賛 成 さ れ て い て4),こ の 立 場 は そ の後 も判 例 に お い て維 持 さ れ て い る 。

② 《最 判1982年6月17日 判 時1054号85頁 》 は 多 数 持 分 権 者 と の売 買 に よ り遺 産 で あ る共 有 地 の 一 部(但 し,具 体 的 な土 地 部 分 は特 定 され て い な か っ た)の 引 渡 を う け た者 に 対 す る,当 該 売 買 に 関 与 しな か っ た少 数 持 分 権 者 か らの 返 還 請 求 に つ い て,① を引 用 して 「こ の理 は,多 数 持 分 権 者 か ら共 有 者 の 協 議 を経 な い で 共 有 地 を 占 有 使 用 す る こ とを承 認 さ れ た 第 三 者 と少 数 持 分 権 者 との 関係 に も妥 当 す る と解 され る … … 」 と し,

③ 《最 判1983年5月20日 判 時1277号116頁 》 は 多 数 持 分 権 者 との使 用 貸 借 契 約 に基 づ き共 有 〔 遺 産 〕 建 物 を 占有 使 用 す る者 に 対 す る少 数 持 分 権 者 か らの 明 渡 請 求 に つ い て や は り① を 引 用 して 「この 理 は,共 有 者 の 一 部 の者 か ら共 有 物 を 占 有 使 用 す る こ と を 承 認 さ れ た 第 三 者 とそ の 余 の 共 有 者 と の 関 係 に も妥 当 し,共 有 者 の 一 部 の 者 か ら共 有 者 の協 議 に基 づ か な い で 共 有 物 を 占有 使 用 す る こ と を承 認 され た 第 三 者 は,そ の 者 の 占 有 使 用 を 承 認 しな か つ た 共 有 者 に 対 し て 共 有 物 を排 他 的 に 占有 す る権 原 を主 張 す る こ とは で きな い が,現 に す る 占有

4)星 野 英 一 「 ① 判 例 研 究 」 法 協84巻5号84頁 以 下 は,「 判 旨 は,持 分 の 割 合 の 過 半 数 を 有 す る共 有 者 の 少 数 持 分 権 者 に 対 す る 明 渡 請 求 を 認 め る こ とが で き る た め に は 「そ の 明 渡 を求 め 理 由 」 を 主 張,立 証 せ よ と い う。 しか し,そ れ が 具 体 的 に な ん で あ る か は,全 く述 べ て い な い 。 … … 将 来 に 問 題 を 残 し て い る わ け で あ る 。」

と判 決 の 問 題 点 を 指 摘 し つ つ も,「 過 半 数 の 持 分 を 有 す る 共 同 相 続 人 だ け の 意 思 で そ の 使 用 収 益 を 奪 う こ と は 妥 当 で な く,全 員 の 協 議 を経 て 全 員 一 致 で 決 め る こ とが 望 ま し い と思 わ れ る 。」 とす る 。 ま た,金 山 正 信 「① 判 決 批 評 」 判 評459号89 頁 以 下 も,こ の 点 に 関 し て は 同 旨。 つ ま り 「多 数 持 分 権 者 の 横 暴 を 否 定 す る の が 最 高 裁 判 決 の 真 意 」 とい う こ と に な ろ うか(右 近 健 男 「 民 法898条 ・899条(遺 産 共 有)」 広 中 俊 雄=星 野 英 一 編 ・民 法 典 の 百 年IV(1998年)246頁 注6:同 「判 例

レ ビ ュ ー」 判 タ940号93頁 も参 照

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108 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

が これ を承 認 した 共 有 者 の 持 分 に 基 づ く もの と認 め られ る限 度 で共 有 物 を 占 有 使 用 す る権 原 を有 す る の で,第 三 者 の 占有 使 用 を承 認 し なか つ た共 有 者 は右 第 三 者 に対 して 当 然 に は 共 有 物 の 明 渡 しを請 求 す る こ とは で きな い と解 す る の が 相 当 で あ る。」 と判 示 す る。

また,④ 《 最 判1977年3月31日 金 法843号26頁 》 は,準 共 有(土 地 賃 借 権) の 場 合 に つ い て,① を 引 用 す る こ と な く,「 土 地 賃 借 権 の 準 共 有 者 の 一 人 で あ る 甲 は,賃 借 土 地 を使 用 占有 して い る他 の準 共 有 者 乙又 は 転 借 人 丙 に対 い 当 然 に は 右 土 地 の 明 渡 を求 め る こ とは 許 され な い 」 と判 示 す る。

こ こか ら二 つ の 問 題 が 生 じる。 一 つ は,① 判 決 に つ い て す で に指 摘 さ れ て い る と こ ろで あ る が,現 在 の 占有 使 用 状 態 を変 更 す る た め に は どの よ う な手 続 が 必 要 か,よ り詳 し く云 え ば,持 分 の 過 半 数 で足 りる か,全 員 一 致 が 必 要 か,と い う問 題 で あ り5),も う一 つ は,土 地 明 渡 請 求 が 認 め ら れ な い 場 合 に 占有 使 用 す る 者 に対 す る不 当 利 得 返 還 請 求 ・損 害 賠 償 請 求 が 認 め られ る か で あ る。

後 者 の 問 題 に 関 して,最 高 裁 は2000年4月7日 判 決 に お い て こ れ を肯 定 す る 判 断 を示 した 。 後 に見 る よ う に予 想 され た結 論 で あ っ た と はい え る 。 周 知 の よ う に判 例 は遺 産 共 有 と単 純 共 有 とは 法 的 性 質 を異 に しな い との 立 場 を採 る(註

1参 照)が,遺 産 につ い て は,遺 産 分 割 手 続 とい う訴 訟 に よ らな い 別 個 の手 続 が 用 意 さ れ て い る こ と6),分 割 に あ た っ て の 基 準 が 法 律 に よ り設 け られ て い る (民 法906条)こ と7)そ して,し ば しば 相 続 開 始 前 の 占有 使 用 状 態 が 相 続 開 始 後 もそ の ま ま継 続 し,し か も 遺 産 分 割 に は 時 間 の 制 限 が な い た め も あ つ て そ の よ うな 状 態 が 長 期 に亘 っ て し ま う,な ど単 純 共 有 の 場 合 と必 ず し も同

5)山 田 誠 一 「前 掲 論 文(註3)」 参 照

6)最 判1970年11月7日 民 集29巻10号1525頁 参 照

7)も っ と も,共 有 物 の 分 割 に つ い て は 最 大 判1988年4月24日 民 集41巻3号408頁 以 来 の 一 連 の 判 決 に よ っ て 価 格 賠 償 ・一 括 分 割 ・一 部 分 割 な ど も民 法258条2項 の 現 物 分 割 に該 当 す る こ と も認 め られ て い る。 特 に 一 括 分 割 に つ い て は,「 個 々 の 財 産 毎 に 『 共 有 』 関 係 を 解 消 し て い くの で は な く て,906条 の 分 割 基 準 に 基 づ き 総 合 的 に再 配 分 す る こ と と して い る 」(高木 多 喜 男 ・遺 産 分 割 の 法 理(有 斐 閣,1992 年)42頁)遺 産 分 割 と の 同 質 性 は 指 摘 で き る か も しれ な い 。 しか し,遺 産 分 割 で

は906条 に よ り,一 切 の 事 情 が 考 慮 さ れ る の で,や は り両 者 全 く同 一 と は言 え な い 。

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分 割前 の共 有遺 産 の使用 と使 用利 益 の返還 109 一 視 で きな い 事 情 もあ る よ うに 思 わ れ る8) 。

そ こ で 以 下,こ の 最 高 裁 判 決 を紹 介 し(2),過 去 の 下 級 審 裁 判 例 ・類 似 の 事 件 で の 最 高 裁 の 判 決 ・学 説 と の 関係 で 問題 点 を検 討 す る こ と に した い(3)(4)。

2.最 高 裁2000年4月7日 判 決

(裁 判 集 民198号1頁,判 時1713号50頁,判 タ1034号98頁,金 判1104号12頁)

で は,こ こで,最 判2000年4月7日(以 下 「2000年判 決 」 とい う)を 紹 介 し て お き た い 。 なお,本 件 は む しろ 次 の判 決 理 由 〔 ③ 〕の 説 示 が特 に取 上 げ らけ れ て い る が本 稿 で は この 部 分 の研 究 は筆 者 の 能 力 を超 え る もの で あ り,先 行 研 究 をあ げ る に 留 め,検 討 を省 略 す る9)。

【 事 実 】

亡Aの 配 偶 者Xは,本 件 土 地 はAの 所 有 で あ っ た もの で こ れ を相 続 に よ り取 得 した と し,現 在 こ の 土 地 上 に建 物 を所 有 す るY1・Y2に 対 して 建 物 収 去 土 地 明 渡 及 び 地 代 相 当 額 の 金 員 の 支 払 を,建 物 に居 住 す るY3(Y2の 子)に 対

して 建 物 退 去 を各 々 請 求 した。

Xの 主 張 に 依 れ ば,Aが 本 件 土 地 を所 有 す る に至 っ た の は,

①Xの 亡 夫 で あ るAが 昭 和32(1957)年1月25日 及 び 同33(1958)年3月 18日 に 国 有 林 の 払 下 げ を 受 け て 本 件 各 土 地 を取 得 し,同59(1984)年12月

4日 にAが 死 亡 した こ とに よ りXが これ を相 続 に よ り取 得 した,あ るい は,

②Aの 父 で あ る 亡Bが 前 記 各 日 に本 件 各 土 地 の 払 下 げ を 受 け 直 ち に こ れ ら

8)例 え ば,こ れ まで も星 野 英 一 「 ① 判 例 研 究(註4)」688頁 は ① 判 決 に つ い て 「少 な く と も 客 観 的 に は,共 同 相 続 財 産 に 関 す る 判 決 と して の 意 味 を持 つ に 止 ま る と 解 す べ き で あ ろ う 」 と し(同 旨,山 田 誠 一 「前 掲 論 文(註3)」40頁),石 田 喜 久 夫 「 ② 判 例 解 説 」 判 タ505号38頁 は ② 判 決 に つ い て 「 本 件 土 地 が,い ま だ 遺 産 分 割 の 済 ん で い な い 共 有 相 続 財 産 に 属 す る こ と … … に 一 応 留 意 す べ き で あ ろ う。」

と して,単 純 共 有 と遺 産 共 有 の 区 別 を説 い て い た 。

9)岡 庭 幹 司 ・重 要 判 例 解 説(ジ ュ リ1202号)113頁,笠 井 正 俊 ・リマ ー ク ス23号124

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110 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

をAに 贈 与 し,Aの 死 亡 に よ りXが こ れ ら を相 続 取 得 し た とい う も の で あ っ た。

こ れ に対 して,Yら は次 の よ う に 主 張 して,本 件 土 地 がXの(単 独)所 有 で あ る こ と を争 っ た

Y1は,Bの 配 偶 者C(A・Y1・Y2の 母)が 払 下 げ を う け た 〔 あ る い は時 効 取 得 した,そ の後 贈 与 を うけ た 〕 と,

Y2はBま た はCが 払 下 げ を うけ た 〔 そ の 後 両 名 の死 亡 に よ り3分 の1の 持 分 を取 得 した 〕 と。

一 審 はXのYら に 対 す る ,建 物 収 去 土 地 明 渡 は 認 容,金 員 の 支 払 請 求 は 棄 却 。 Yら 控 訴 す る と と も にXも 金 員 支 払 請 求 の 棄 却 に 対 して控 訴 。

原 審 は,次 の よ うな 理 由 か らXの 請 求 を全 部 棄 却

・払 下 げ を受 け た の はBで あ るが ,Bか らAへ の 贈 与 は認 め られ な い iBが 昭 和29〔1954〕 年 な い し30〔1955〕 年 に 本 件 建 物 一 及 び本 件 建 物 二

を建 築 し て こ れ ら を取 得 した 上,

ii同42〔1967〕 年4月 こ ろ 〔 死 亡 の 直 前 〕にcに こ れ ら を贈 与 し,同53〔1978〕

年4月10日 にCか らY2に 本 件 建 物 一 が 同Y1に 本 件 建 物 二 が 各 贈 与 され た こ と を併 せ て 認 定 。

Xは,払 下 げ に よ るAの 所 有 権 取 得 を 否 定 した 原 審 の 事 実 認 定 に手 続 違 背 が あ る こ とを 主 張 して 上 告

〈 相 続 関係 図 〉

X B

A YlY2

1 Y3

C

B1967(昭42)年5月22日 死 亡

C1992(平4)年5月24日 死 亡

A:1984(昭59)年12月4日 死 亡

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分割 前 の共有 遺産 の使 用 と使 用 利益 の返 還 111

〈 原 審 認 定 事 実 の 時 系 列 〉

67/4贈 与78/4贈 与 建 物 所 有 者Y1とY2

1992年 訴 の 提 起

土 地 所 有 者C,A,Y1,Y2C,X,Y1,Y2X,Y1,Y2

67/5相 続(B死 亡)84/12相 続(A死 亡)92/5相 続(C死 亡)

t

【 判 旨 】 一 部 破 棄 差 戻,一 部 棄 却

「〔 ① 〕 以 上 の 事 実 に よ れ ば ,特 段 の事 情 の な い 限 り,Bの 死 亡 に伴 い,法 定 相 続 人 の 一 人 で あ るAが 本 件 各 土 地 の 九 分 の 二 の 持 分 を相 続 に よ り取 得 した は ず の もの で あ る 。 そ うす る と,XがAの 右 持 分 を相 続 に よ り取 得 した とい う の で あ れ ば,Xは,同 様 にB及 びCの 死 亡 に伴 い 本 件 各 土 地 の 持 分 を相 続 に よ り取 得 した 共 有 者 で あ るY1及 びY2に 対 して本 件 各 土 地 の 地 上 建 物 の収 去 及 び 本 件 各 土 地 の 明 渡 しを 当然 に は請 求 す る こ とが で きず(最 高 裁 昭 和38年(オ)第 1021号 同41年5月19日 第 一 小 法 廷 判 決 ・民 集20巻5号947頁 参 照),Y1に 本 件 各 土 地 の登 記 済 権 利 証 の引 渡 し を請 求 す る こ とやY2の 所 有 す る本 件 建 物 一 に 居 住 して い る 同Y3に 対 して 退 去 を請 求 す る こ と もで きな い もの とい うべ き で あ る。

〔 ② 〕 しか し,Y1及 びY2が 共 有 物 で あ る本 件 各 土 地 の 各 一 部 を単 独 で 占 有 す る こ とが で きる 権 原 に つ き特 段 の 主 張,立 証 の ない 本 件 にお い て は,Xは, 右 占有 に よ りXの 持 分 に応 じた 使 用 が 妨 げ られ て い る と して,右 両 名 に対 して, 持 分 割 応 じて 占有 部 分 に係 る 地 代 相 当 額 の 不 当利 得 金 な い し損 害 賠 償 金 の 支 払

を請 求 す る こ とは で き る もの と解 す べ きで あ る。

〔 ③ 〕 そ して,Xは 右 のBの 死 亡 に よ るそ の持 分 の 相 続 取 得 の 主 張 を して い

な い が,原 審 と して は,前 記 各 事 実 を 当 事 者 の主 張 に基 づ い て 確 定 した 以 上 は

適 切 に釈 明 権 を行 使 す る な ど した 上 で これ らを しん しゃ く し,Xの 請 求 の 一 部

を認 容 す べ き る か ど うか に つ い て審 理 判 断 す べ き もの で あ る(最 高 裁 平 成7年

(オ)第1562号同9年7月17日 第 一 小 法 廷 判 決 ・裁 判 集 民 事183号1031頁 参 照)。」

(8)

ヱヱ2

商 学 討 究 第52巻 第2・3号

3.使 用 権 原 と使 用 利 益 の返 還

3‑1利 得 返 還 の前 提

2000年 判 決 は,1で 述 べ た 共 有 者 間 で の 返 還 請 求 に 関す る 理 論 か ら出 発 し(半 旨 〔 ① 〕),判 旨 〔 ② 〕 はYら 占有 部 分 に係 る 地 代 相 当 額 の 不 当利 得 金 な い し損 害 賠 償 金 の 支 払 の 請 求 を認 め て い る 。 こ こで はYら に は 「 各 土 地 の 各 一 部 を 単 独 で 占有 す る こ とが で き る権 原 に つ き,特 段 の 主 張 ・立 証 の な い」 こ とが 前 提 に され て い る 。 まず は この 点 につ い て 簡 単 に確 認 して お きた い 。

3‑2使 用 権 原 との 関 係

「 遺 産 にぞ くす る建 物 を 共 同 相 続 開 始 前 か ら独 立 し て 占有 して い た者 は 」「た と え ば 被 相 続 人 との 使 用 借 権 等 に も とつ い て 占 有 して い た と き は,相 続 開 始 後 も,遺 産 分 割 に よ っ て そ の 建 物 所 有 者 が 確 定 す る まで は,そ の 権 原 を 失 わ な い か ぎ り,従 来 の 占有 を 継 続 す る こ とが で きる 」10)の は 当 然 で あ り この よ う な 明 示 の合 意 が あ っ た 場 合 は特 段 の 問題 を生 じな い 。 と こ ろ で,既 に述 べ た よ う に遺 産 共 有 に あつ て は しば しば 相 続 開 始 前 の 使 用 状 態 が 相 続 開 始 後 もそ の ま ま 継 続 す る こ とが あ る。 こ の よ う な状 態 を 法 的 に如 何 に評 価 す る か は そ れ 自体 重 要 な 問題 で あ る が,判 例 は 一 定 の 要 件 の 下 で 黙 示 の 合 意(あ る い は使 用 権 原 が 推 認 さ れ る場 合)を 認 め る。

3‑1‑2黙 示 の 合 意

次 の⑤ 事 件 は 占有 使 用 して い ない 相 続 人 が 相 続 開 始 後 も相 続 財 産 で あ る建 物 に居 住 して い る相 続 人 に対 して 不 法 行 為 また は不 当利 得 に基 づ き賃 料 相 当 額 の 損 害 金 の 支 払 を求 め た 事 例 に 関 して,こ れ を認 め た 原 審(⑤i東 京 高 判1993年

7月14日)の 判 断 を 「 使 用 貸 借 の 合 意 を推 認 」 す る こ と に よ り斥 け た もの で あ る

⑤i《 東 京 高 判1993年7月14日 》:「xら はY1及 びY2に 対 し,同 人 か ら

10)金 山正 信 「① 判 決 批 評 」(註4)90頁

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分割 前 の共有 遺 産の使 用 と使用 利益 の 返還

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が本 件 不 動 産 を独 占 的 に 使 用 して い る と して不 法 行 為 また は不 当利 得 に基 づ き 賃 料 相 当損 害 金 の 請 求 を す る とこ ろ,右Y両 名 は,原 判 決 添 付 売 得 金 配 分 表 記 載 の 各 共 有 持 分 権 と い う権 原 に基 づ き本 件 不 動 産 を 占有,使 用 して い るの で あ る か ら,右Y両 名 に対 す る 不 法 行 為 に 基 づ く損 害 賠 償 請 求 は理 由 が な い と い う べ きで あ る。 しか し,共 有 持 分 権 者 とい え ど も,共 有 物 の 占有,使 用 につ き,

自 己 の 共 有 持 分 に相 当す る 範 囲 を越 え る部 分 につ い て は,占 有,使 用 して い な い他 の 共 有 持 分 権 者 の損 失 の も とに 法 律 上 の 原 因 な く利 得 して い る とみ られ る か ら,格 別 の合 意 が な い 限 り,占 有,使 用 して い な い他 の 共 有 者 に 対 し て,相 応 の不 当 利 得 返 還 義 務 を負 担 し,そ の 金 額 は 共 有 物 の 賃 料 相 当損 害 金 に依 拠 し

て算 出 され るべ き も の で あ る。 」(な お,一 審 東 京 地 判1992年12月24日 判 時1474 号106頁 も同 旨認 め る 。)

⑤ 《最 判1996年12月17日 民 集50巻10号2778頁 》

「共 同 相 続 人 の 一 人 が 相 続 開 始 前 か ら被 相 続 人 の 許 諾 を得 て遺 産 で あ る建 物 にお い て 被 相 続 人 と 同居 して き た と きは,特 段 の 事 情 の な い 限 り,被 相 続 人 と 右 同居 の 相 続 人 との 間 に お い て,被 相 続 人 が 死 亡 し相 続 が 開 始 した後 も,遺 産 分 割 に よ り右 建 物 の 所 有 関 係 が 最 終 的 に確 定 す る ま で の 間 は,引 き続 き右 同居 の 相 続 人 に こ れ を無 償 で使 用 させ る 旨 の 合 意 が あ っ た もの と推 認 され るの で あ っ て,被 相 続 人 が 死 亡 した 場 合 は,こ の 時 か ら少 な く と も遺 産 分 割 終 了 まで の 問 は,被 相 続 人 の 地 位 を承 継 した 他 の相 続 人 等 が 貸 主 とな り,右 同居 の 相 続 人 を借 主 とす る右 建 物 の 使 用 貸 借 契 約 関係 が 存 続 す る こ とに な る もの とい うべ き で あ る 。 け だ し,建 物 が 右 同 居 の 相 続 人 の 居 住 の 場 で あ り,同 人 の居 住 が 被 相 続 人 の 許 諾 に基 づ くも の で あ っ た こ とか らす る と,遺 産 分 割 ま で は 同居 の 相 続 人 に建 物 全 部 の使 用 権 原 を 与 えて 相 続 開 始 前 と同 一 の 態 様 に お け る無 償 に よ る 使 用 を 認 め る こ とが,被 相 続 人 及 び 同居 の 相 続 人 の 通 常 の 意 思 に合 致 す る と い

え る か らで あ る。」

黙 示 の 合 意 の 推 認 につ い て 同居 以 上 の 要 件 を求 め るが ど う か は 検 討 を要 す

る とこ ろ で あ ろ うが,同 居 して い な い場 合 につ い て は,⑤ 判 決 の射 程 は 及 ば な

(10)

114 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

い も の と解 さ れ るべ きで あ る か ら11),つ ね に使 用 権 原 が 推 認 され る わ け で は な い 。2000年 判 決 は結 局 そ の よ う な単 独 で 占 有 で きる権 原 を認 め て い な い が, こ の 点 につ い て は後 に 詳 し く検 討 す る(4‑5)こ と に して,こ こで は,使 用 権 原 に は 明示 的 合 意 が あ っ た場 合 は も ち ろ ん,黙 示 の合 意 が 推 認 され る こ と も 有 り得 るの で あ り,こ の よ う な合 意 が あ る か ぎ りは不 当 利 得 金 ・損 害 賠 償 金 の 支 払 の 問 題 は生 じな い とい う こ と を確 認 して お きた い 。

4.不 当利 得 金 ない し損 害賠 償 金 の支 払 請 求

⑤ 判 決 の 原 審 は,上 に 見 た よ う に不 当利 得 金 の 支 払 を認 め た が,不 法 行 為 に 基 づ く損 害 賠 償 請 求 は こ れ を否 定 して い た。 しか し,⑤i判 決 以 前 の 下 級 審 裁 判 例 で 不 当 利 得 金 な い し損 害 賠 償 金 の 支 払 が 求 め られ た事 例 は多 くは な い。

4‑1下 級 審 裁 判 例

⑤i判 決 以 前 で は不 当利 得 金 の 返 還 請 求 を肯 定 した の は⑥ 《 東 京 地 判1973(昭 48)年7月11日 判 時738号80頁 》 に と ど ま る よ う で あ る。

⑥ は 相 続 人(?)の 一 人 か ら持 分 権 の 譲 受 け た 者 に対 す る他 の相 続 人 か らの 明 渡 請 求 と金 員 請 求 が 問 題 な った 事 案 で,明 渡 請 求 は棄 却,金 員 請 求 につ い て は,「 被 告 は本 件 係 争 部 分 の 占有 使 用 を 開 始 した 当 初 か ら,原 告 が 本 件 建 物 に つ い て 四 分 の 一 の 共 有 持 分 権 を有 して い る こ と を知 りな が ら単 独 で右 係 争 都 分 全 部 の 占有 使 用 を 継 続 し て きた 。 こ とが 認 め られ る 。 そ して 被 告 が 本 件 係 争

くマ マ ラ

部 分 を 単独 で 占有 使 用 て い る の は,原 告 に対 す る関 係 で は,法 律 上 の 原 因 な し

11)岡 本 詔 治 「 ⑤ 判 決 批 評 」 リマ ー ク ス16号87頁 は 「仮 に一 部 相 続 人 が 被 相 続 人 の 死

後,遺 産 建 物 に つ き独 占 的 に 占 有 利 用 を 開 始 した とす れ ば,黙 示 的 に も使 用 貸 借

を推 認 す る の は 困 難 で あ る か ら,本 判 決 の 構 成 は,占 有 相 続 人 が 被 相 続 人 と 同 居

して い た 場 合 に 成 り立 つ も の と考 え て 大 過 な い で あ ろ う」 とす る 。 但 し,岡 本 教

授 は 「同 居 中 に使 用 貸 借 関 係 が 成 立 して い て,被 相 続 人 死 亡 後 は そ の解 約 の 当 否

を判 断 す る とい う,と い う構成 の ほ う が 素 直 な 解 釈 で あ る 」 と さ れ て い る(同 批

評88頁)。

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分 割前 の共 有遺 産 の使用 と使 用利 益 の返還 115 に 同人 の持 分 権 を 利 用 す る こ と に よ っ て利 得 を え,反 面 原 告 に そ の 持 分(四 分 の 一)に 応 じ た損 失 を与 え て い る こ とに な る か ら,原 告 は被 告 に対 し同 人 が 右 に よ りえ て い る利 得 の 四 分 の 一 の 返 還 を 求 め う る もの と い うべ きで あ る。 … … そ して右 利 得 は,本 件 係 争 部 分 の 明 渡 請 求 の 認 め られ な い本 件 にお い て は,本 件 建 物 に つ き共 有 者 間 にお い て 共 有 物 分 割,共 有 持 分 の 譲 渡 等 共 有 関 係 に 変 更

を 生 じな い か ぎ り維 続 して 発 生 す る もの とい うべ く,原 告 が 右 の趣 旨 に お い て も不 当利 得 金 の 支 払 を求 め て い る こ とは 訴 旨 に照 ら し明 らか で あ る。 」 と して い た 。 また,⑤i以 降 で は,⑦ 《最 判1998年2月26日 民 集52巻1号255頁 》 の 一 審⑦i《 福 岡 地 大 牟 田 支 判1992年12月25日 》 が ,内 縁 配 偶 者 間 の で の共 有 に つ い て,後 掲 ⑪ ⑫ 判 決 を引 用 して 一 方 の 配 偶 者 死 亡 後 の 生 存 配偶 者 に よ る 単独

の 占 有 使 用 に つ い てL般 に共 有 者 の 一 人 が 共 有 不 動 産 を排 他 的独 占的 に 占 有 使 用 す る場 合,右 共 有 者 は,他 の 共 有 者 の損 失 に お い て 当 該 不 動 産 の 適 正 賃 料 額 の 自己 の持 分 を超 え る 部 分 相 当 額 の 利 益 を不 当 に得 て い る と解 す る の が相 当 で あ る 」と して不 当 利 得 の 成 立 を肯 定 し控 訴 審⑦ii《 福 岡 高 判1994年6月30日 》 で も この 判 断 は 維 持 さ れ て い た。

しか し,更 に 傍 論 に まで 目 を む け る と不 法 行 為 ・不 当 利 得 に つ い て こ れ を 肯 定 す る 旨述 べ た もの が い くつ か 見 られ る;

⑧ 《大 阪 高 判1960年12月26日 》 は 共 有 持 分 二 分 の一 の 共 有 者 が残 り二 分 の 一 の 持 分 を有 し単 独 で 土 地 を 占有 す る 共 有 者 に対 し て土 地 の 明 渡 請 求 を棄 却 した も の で あ るが 「 排 他 的 使 用 の た め に こ う む る損 害 の 賠 償 を請 求 し うる に と ど ま り,そ の 排 他 的使 用 の故 を 以 っ て,土 地 の 明 渡 を請 求 し うべ き法 律 上 の 根 拠 は な い」と判 示 し,そ の 上 告 審 で あ る最 判1964年2月29日 民 集18巻2号329頁 は 「原 判 決 は,… … 土 地 の 明 渡 を 請 求 す る こ と は で き ない 旨判 示 して い る の で あ り, 右 判 示 は,共 有 権 の 性 質 に 照 し,正 当 で あ る」 と して い た 。

⑨ 《 神 戸 地 判1962年7月25日 下 民13巻7号1563頁 》 は遺 産 を構 成 す る特 定 財

産 を譲 受 け た持 分 価 格 の過 半 数 を有 す る 第 三 者 か ら遺 産 分 割 前 の 共 有 物 分 割 請

求 を 否 定 す る と と も に,こ の 第 三 者 の み で252条 に よ り当該 財 産 を収 益 す る者

を決 し う る が そ の 際249条 に 基 づ く各 共 有 者 の 使 用 収 益 権 は 「… … そ の使 用 収

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116 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

益 が で きな い と きは共 有 物 の現 実 の 使 用 者 に対 して そ の 共 有 持 分 に応 じた価 格 に よ る代 償 金 を請 求 し う る権 利 で あ る と解 す る ほ か な い 」 と述 べ て い た(本 件 は上 告 さ れ た が,上 告 審 で は以 上 の 点 は争 点 に な っ て い ない,大 阪 高 判1963年

2月1日 下 民14巻2号153頁)。

⑩ 《大 阪 地 判1966年2月28日 判 時446号50頁 》 は 直 接 に は 共 有 物 の 分 割 請 求 とそ れ に対 す る 被 告 か らの 共 有 に 関 す る債 権 が 問 題 に な った もの で あ るが 「 過 半 数 の 持 分 を 有 す る被 告 は 一 人 で 本 件 建 物 の使 用 収 益 をす る こ とが で き る(民 法252条)け れ ど も,原 告 も本 件 建 物 に つ い て 持 分 に 応 じた 使 用 収 益 を す る こ とが で きる(同249条)の で あ っ て こ の 使 用 収 益 権 は 過 半 数 に達 し な い 場 合 に 画 に か い た餅 とな るの で は な く,一 人 で 使 用 収 益 して い る被 告 か ら持 分 に応 じ た 使 用 収 益 に見 合 う補 償 を受 け られ る こ とに な る … …」 と した 。

⑪ 《 東 京 高 判1983年1月31日 判 時1071号62頁 》 は分 割 前 の 遺 産 で あ る土 地 上 に相 続 人 の 一 人 が建 築 した建 物 につ い て 他 の相 続 人 が 収 去 を請 求 した 事 例 で 請 求 は 棄 却 した が,「 一 部 の共 有 者 が 共 有 物 を ほ しい ま ま に 単 独 で 使 用,収 益 し て い る と きで も,他 の 共 有 者 は 当然 に は 共 有 物 の 全 部 の 引 渡 を求 め た り,又 は 右 独 占 的使 用 収 益 行 為 の 差 止 め を請 求 す る こ と はで きな い もの と解 す る の が相 当 で あ り,こ の場 合,共 有 物 の 使 用,収 益 に つ い て の協 議 が 成 立 す るか,又 は 共 有 物 の分 割 が 行 わ れ る ま で は,使 用,収 益 権 を奪 わ れ た他 の 共 有 者 は,不 法 行 為 又 は不 当 利 得 を 理 由 とす る金 銭 賠 償 に よつ て 救 済 を 求 め る ほか は ない もの

と考 え られ る。」 と判 示 した 。

こ れ に対 して,⑫ 《 東 京 高 判1970年3月30日 高 民 集23巻2号135頁,家 月23 巻1号65頁,東 高 民21巻3号43頁,判 時595号 号58頁,判 タ248号133頁 》 は相 続 財 産 に 対 す る相 続 分 の 「 浮動 性 ・潜 在 性 」 及 び 分 割 の効 果 の 遡 及 効 を根 拠 に

「 共 同相 続 人 中 の 一 人 が 相 続 開 始 前 よ り引 き続 き相 続 財 産 に 属 す る建 物 の 全 部

を使 用 収 益 し て い る と して も,そ れ に よつ て直 ち に相 続 開 始 時 よ り遺 産 分 割 時

まで の 間使 用 収 益 し ない 相 続 人 の右 建 物 に対 して もつ 相 続 分(共 有 持 分 権)を

故 な く侵 害 し不 法 行 為 を構 成 す る もの と解 す る こ と は で き」 な い と して い た。

(13)

分割 前 の共 有遺 産 の使用 と使 用利 益 の返還 117

4‑2学 説

学 説 にお い て も,明 渡 請 求 が 認 め られ な い 結 果 共 有 者 〔 相 続 人 〕 の一 人 が 共 有 物 〔 相 続 財 産 〕 を事 実 上 占有 使 用 す る場 合 に不 法 行 為 に基 づ く損 害 賠 償 また は不 当 利 得 返 還 請 求 を 肯 定 す る の が 多 数 で あ っ た12)。

しか し,遺 産 共 有 に つ い て は不 当 利 得 返 還 請 求 は肯 定 す るが 不 法 行 為 に基 づ く損 害 賠 償 は 明確 に こ れ を否 定 す る もの が あ っ た13)と こ ろ 近 時 は む し ろ不 当 利 得 成 立 ・不 法 行 為 不 成 立 説 が 有 力 で あ っ た と評 価 され る

中 川 淳 博 士 は この 問 題 に つ い て,「 今 日 の 学 説 は 」 不 法 行 為 不 成 立 説 で あ る と した 上 で,⑤iの 不 法 行 為 の 成 否 に 関す る 判 断 を 「 至 極 当 然 の こ と で あ る 」 と評 価 され14),北 野 俊 光 判 事 は 「 使 用 者 は,た とえ 少 数 持 分 で あ る と して も,

12)こ の こ と を 明 示 的 に 述 べ た も の と し て 以 下 の も の が あ る 末 弘 嚴 太 郎 ・物 権 法 上 (1921年)421頁;石 田 文 次 郎 ・物 権 法 論(1933年 版)487頁;谷 田 貝 三 郎 「共 同 相 続 に お け る 遺 産 の 管 理 」 同 志 社 法 学15号(1952年)36頁(石 田 文 次 郎 ・前 掲 書

を 引 用 す る が,不 当 利 得 の み に 言 及);川 村 泰 啓 「共 有 」 民 法 演 習II(1958年) 126頁;甲 斐 道 太 郎 「共 同 相 続 財 産 」 民 法 演 習V(1959年)175頁;奈 良 次 郎 「① 判 決 調 査 官 解 説 」 曹 時18巻7号1136頁;富 越 和 厚 「 ③ 判 決 解 説 」 ジ ュ リ918号79 頁;鎌 田 薫 「③ 判 決 批 評 」 ジ ュ リ935号65頁;原 田純 孝 「③ 判 決 評 釈 」 判 タ682号 64頁;上 谷 均 「 ③ 判 決 紹 介 」 民 商100巻2号309頁;安 永 正 昭=道 垣 内 弘 人 ・民 法 解 釈 ゼ ミナ ー ル(1995年)78頁;ま た 上 述 ⑪ 判 決 判 時 無 署 名 解 説 は 「こ の 点 も通 常 の 共 有 物 理 論 に よ れ ば 当 然 に是 認 さ れ よ う が … … 」 とす る:千 藤 洋 三 「共 同 相 続 人 間 の 遺 産 管 理 と管 理 費 用 」 判 タ688(1989年)号294頁,「 前 掲 論 文(註1)」

38頁 は次 に述 べ る 不 法 行 為 不 成 立 説 に は批 判 的 か 。 な お,鈴 木 緑 彌 ・物 権 法 講 義 (4訂 版,1994年)30頁 は 「共 有 者 間 で の 協 議iで使 用 が 排 除 さ れ た 共 有 者 に は 「金 銭 に よ る 補 償 が 与 え られ ね ば な らな い 」」 とす る 。

13)岡 垣 学 「 相 続 家 屋 に お け る 居 住 の 保 護 とそ の 評 価 」 ジ ュ リ346号(1966年)84頁 は 不 当 利 得 に つ い て だ け 述 べ て い た;⑫ 判 決 に つ い て 中 川 良 延 「 ⑫ 判 決 批 評 」 判 評140号134頁 以 下 は,「判 決 の 結 論 は 妥 当 と思 う が,そ の 理 論 構 成 に は疑 問 が あ る 」

と して 「相 続 分 の 性 格 よ り現 実 の 占 有 使 用 に着 目 し,共 同 相 続 人 の 一 人 も し く は 一 部 が 被 相 続 人 の 生 前 か ら引 き続 き遺 産 の 一 部 も し く は 全 部 を 占 有 使 用 して い て も,こ れ が 共 同 相 続 財 産 つ 管 理(利 用)行 為 と し て 適 法 な る が 故 に,他 の 相 続 人 に 対 す る不 法 行 為 と は な ら な い,と 解 した い 。」 と して い た(不 当 利 得 に つ い て は 述 べ て い な い)。 岡 垣 学 「 遺 産 の 管 理 」 島 津 一 郎 他 編 ・相 続 法 の 基 礎(実 用 編) (1977年)114頁 以 下 は 不 法 行 為 不 成 立 を 明 示 す る 。 猪 瀬 慎 一 郎 「 共 同 相 続 財 産 の 管 理 」 現 代 家 族 法 大 系5(1979年)10頁 以 下 も不 法 行 為 不 成 立 に つ い て は 中 川

(良)説 と 同 旨 を 説 く。

14)中 川 淳 「⑤ 判 決 批 評 」 判 評463号195頁

(14)

1ヱ8

商 学 討 究 第52巻 第2・3号

持 分 権 に 応 じて共 有 物 全 部 の 占有 が で き る の で不 法 行 為 は成 立 しな い と解 さ れ て い る」 と して,不 法 行 為 不 成 立 説 が 通 説 な い し有 力 説 で あ る よ う に説 明 し て い る15)。

現 に 占 有 使 用 して い る者 も共 有 者 の 一 人 で あ る こ と,2000年 判 決 の事 案 も そ うで あ る が,し ば しば 相 続 開 始 の 前 後 で 占有 状 態 に変 更 が な く しか も占 有 使 用 され て い る 不 動 産 が 相 続 財 産 が あ る か ど うか 自体 が 争 わ れ,裁 判 所 の判 断 を ま っ て は じめ て 確 定 され る こ と を考 慮 す れ ば,自 己 の 共 有 持 分 を超 え る使 用 収 益 が 直 ち に不 法 行 為 に な る と は解 しが た い16)。 そ れ ゆ え,こ こ で は原 則 と し て 不 法 行 為 は 成 立 しな い と解 す る 立 場 が よ り妥 当 で あ ろ う。

4‑3遺 産 分 割 手 続 との 関 係

周 知 の よ う に遺 産 分 割 につ い て は,特 別 の 遺 産 分 割 審 判 とい う手 続 が 用 意 さ れ て い る。 通 常 の 共 有 で あ れ ば,手 続 を 問 題 とす る 必 要 は な い 。 使 用 利 益 の 返 還 を認 め る と して も遺 産 共 有 に あ って は か か る審 判 手 続 と の 関係 も無 視 で き な

いo

そ もそ も遺 産 分 割 に つ い て そ の 基 準 時 を い つ に お くか 相 続 開 始 時 か 遺 産 分 割 時 時,遺 産 分 割 時 を基 準 に した場 合,相 続 開 始 後 分 割 時 まで に生 じた 遺 産 収 益 と遺 産 そ の もの と の 関係 を如 何 に捉 え る か に つ い て審 判 例 も分 か れ る と こ ろ で あ る17)。 しか し な が ら,遺 産 か らの 果 実 及 び 収 益 の 遺 産 分 割 対 象 性

15)北 野 俊 光 「遺 産 分 割 一 遺 産 の 管 理 」 判 タ996号(1999年)122頁 。 ま た 田 中 壮 太=

阿 部 喜 代 子=橋 本 昇 二=長 秀 之 「遺 産 分 割 事 件 の 処 理 を め ぐ る 諸 問 題 」 司 法 研 究 報 告 書45輯1号(1994年)339頁 以 下 は⑤ 判 決 が 依 拠 し た もの と さ れ て い る が(参 照 野 山 宏 「⑤ 判 決 解 説 」 ジ ュ リ1111号198頁),使 用 貸 借 が 成 立 し な い 場 合 に つ い て 不 当 利 得 に基 づ く使 用 利 益 の 返 還 に つ い て の み 肯 定 す る 。 な お,柚 木 馨=高 木 多 喜 男 ・判 例 物 権 法 総 論(補 訂 版,1972年)524頁 は ⑩ を 引 用 し て 不 当 利 得 の み に 言 及 す る:但 し 高 木 説 に つ い て は4‑3参 照

16)不 法 行 為 の 成 立 に 関 す る こ の よ う な判 断 に つ い て は 長 崎 地 佐 世 保 支 判1983年5月 25日 判 タ503号123頁 参 照 。 な お ⑫ は 「分 割 の 遡 及 効 」 も根 拠 と す る が こ の 点 に つ い て は 後 述4‑4。

17)高 木 多喜 男 ・前 掲 書(註7)特 に58頁 以 下,岩 木 宰 「遺 産 分 割一 遺 産 分 割 の 対 象 第

一 預 貯 金 及 び現 金 第二 遺 産 か らの 果 実 及 び 収 益 」 判 タ996号(1999年)112頁 以 下

(15)

分割 前 の共有 遺 産の使 用 と使用 利益 の返 還

ヱ19

につ い て は 「相 続 人 全 員 が 遺 産 収 益 を遺 産 分 割 の 対 象 に 含 め る こ とに 合 意 した 場合 に限 リ,遺 産分割 審判の対象 とす る合 意説が実務 上最 も支持 されて いる見

解 と 考 え ら れ,現 在 に お い て は,こ の 取 扱 い が 定 着 し つ つ あ る と い え よ う 。」

と さ れ て い る18)。

こ れ に対 して 学 説 に お い て は先 の⑤i判 決 につ い て 「 民 事 訴 訟 で,不 当利 得 の 法 理 で 問 題 を解 決 す る の は妥 当 で な い 」 との 主 張 もあ っ た19)。

2000年 判 決 は,通 常 訴 訟 で の 使 用 利 益 の 返 還 を認 め て い る 故 に,審 判 手 続 と の 関係 も問 わ れ る こ とに な る。

4‑4従 前 の 理 論 との 関 係

以 上 の 下 級 審 裁 判 例 ・学 説 か ら,遺 産 共 有 ・通 常 の共 有 を問 わず 使 用 利 益 の 独 占 は認 め ら れ な い が,遺 産 共 有 に つ い て は

遺 産 分 割 手 続=審 判=の なか で,一 括 して 行 な う か,民 事 訴 訟 で 行 な い うる と解 す る か 。

ii民 事 訴 訟 で行 な い うる して,不 当 利 得 だ け に よ る の か,不 法 行 為 の 成 立 も肯 定す るか

とい う違 い が あ っ た こ と を確 認 で きる 。

18)岩 木 宰 「前 掲 論 文(註17)」116頁

!9)高 木 多 喜 男 「 ⑤ 判 決 解 説 」 ジ ュ リ1113号87頁;高 木 多 喜 男 教 授 は そ の 根 拠 を 「 遺 産 で あ る 建 物 の 居 住 利 益 は,遺 産 か ら 派 生 す る利 益 で あ り,遺 産 の 中 に 包 摂 さ れ る 性 格 の も の で あ る か ら,遺 産 分 割 手 続 き 内 で,配 分 さ れ るべ き で あ る 」 こ と に 求 め られ て い る;な お,具 体 的 に は 「 遺 産 分 割 に 際 して,分 割 に よ る取 得 価 値 か ら差 し 引 く と か,せ い ぜ い,管 理 費 と 相 殺 す る 」(高 木 「同 解 説 」87頁 。 管 理 費 との 相 殺 に つ い て は,既 に 日野 原 昌 「遺 産 の 管 理 費 ・収 益 」 判 タ156号(1964年) 62頁 以 下 〔 ⇒ 後,小 山 昇 編 ・遺 産 分 割 の研 究 〕 で 主 張 さ れ て い た 。 高 木 教 授 は,

しか し,「 問 題 は,そ れ ぞ れ の 額 を 確 定 す る こ と な く,い わ ば ど ん ぶ り勘 定 的 に 相 殺,清 算 す る 場 合 に 生 じ」 「遺 産 収 益 の 算 定 を 避 け,ど ん ぶ り勘 定 的 処 理 を す る こ と は好 ま し くな い」(高 木 多 喜 男 ・前 掲 書(註7)75頁 以 下)と され て い る 。 また 岡 垣 学 「遺 産 の 管 理 」(註13)118頁 は不 法 行 為 原 則 不 成 立 説 に よ りつ つ,相 続 財 産 の 使 用 を妨 げ られ て い る 共 同 相 続 人 と し て は,占 有 使 用 して い る 相 続 人 「に 対 し不 法 占 有 に よ る 損 害 賠 償 請 求 な ど を す る よ り も,遺 産 分 割 の 請 求 を し て,そ

の段 階 で 問 題 を 最 終 的 に 解 決 す る 方 策 を と る べ き で あ る。」 と主 張 して い た 。

(16)

120 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

2000年 判 決 は,使 用 利 益 の 吐 き 出 し を 「 訴 訟 手 続 」 で 求 め得 る こ とを 当 然 の 前 提 と して,「 不 当 利 得 金 な い し損 害 賠 償 金 」 の 支 払 を 認 め た 初 め て の 最 高 裁 判 決 で あ る 。 しか し,上 のi,iiの 論 点 との 関係 で は い ま だ 明確 な らざ る もの を含 む

まず 手 続 の 問題 に関 して2000年 判 決 は,訴 訟 手 続 に よ る使 用 利 益 の 返 還 を 認 め た が,こ の こ とは まず 第 一 に使 用 利 益 の 返 還 は遺 産 分 割 審 判 の 中 で つ ね に 行 な わ れ な け れ ば な ら な い とす る 見 解 を斥 け た こ と を 意 味 す る20)。 しか し,仮 に 遺 産 分 割 審 判 まで に 利 得 の 返 還 が 実 現 し て い な い 場 合 に,更 に審 判 と は別 に 通 常 訴 訟 に よ りそ の 返 還 を求 め な け れ ば な ら な い, 換 言 す れ ば,遺 産 分 割 手 続 に よ っ て は使 用 利 益 の 返 還 は認 め られ な い もの と解 す る こ と も妥 当 で は な い で あ ろ う21)。2000年 判 決 の 事 例 で は 当事 者,

20)こ の こ と は,詳 し く云 え ば,分 割 時 基 準 説 に よ りつ つ,収 益 も分 割 の 対 象 と し な け れ ば な ら な い と い す る 見 解(例 え ば,大 阪 高 決1965年4月22日 家 月17巻10号102 頁,判 時418号42頁,判 タ190号217頁)も 採 ら な い こ と を 意 味 す る と と も に 相 続 時 基 準 説 を 斥 け る こ と も意 味 す る 。 相 続 時 基 準 説 は,そ の根 拠 の 一 つ を 「遺 産 分 割 の 遡 及 効 」(909条)に 求 め て い る。 しか し,学 説 で は か か る 遡 及 効 に つ い て 全 く意 味 が な い と し た り,精 々 登 記 手 続 等 の 形 式 の 上 に 止 ま る(例 え ば,鈴 木 緑 彌 ・ 相 続 法 講 義(改 訂 版,1996年)242頁,谷 口知 平 〒久 貴 忠 彦 ・新 版 注 釈 民 法(27) 394頁 〔 川 井 健 〕(1989年),高 木 多 喜 男 ・前 掲 書(註7)43頁 以 下,74頁 以 下) な ど)。 も し 「遡 及 効 」 を 文 字 どお り認 め れ ば,遺 産 分 割 の 済 ん で い な い2000年 判 決 の よ う な事 例 で は 「不 当 利 得 の 不 当 利 得 」 が 発 生 す る こ とが あ り得 る が,判 決 が 殊 更 に 法 律 関 係 を 錯 綜 させ る よ う な 解 決 を採 っ た と解 す る の は 妥 当 で は な

く,遺 産 分 割 の 遡 及 効 の 意 味 に つ い て は,通 説 に 従 っ た も の と 解 す る の が 妥 当 で あ ろ う。 こ の よ う な 解 す る こ と は909条 に つ い て 「分 割 の 効 果 を擬i制す る も の で あ っ て,分 割 の 対 象 を… 擬 制 す る もの で は な い 」(大 阪 家 審1965年11月4日 家 月18 巻4号104頁)と 解 す る こ と を 意 味 し,従 っ て 相 続 開 始 時 基 準 説 を 斥 け る こ と を 意 味 す る 。

21)右 近 健 男 「前 掲 論 文(註4)」245頁,同 「 前 掲 判 例 レ ビ ュ ー(註4)」93頁 は ⑤

判 決 の 帰 結 か ら 「一 定 の 要 件 は あ る もの の,基 本 的 に は 家 屋 居 住 ・利 用 を め ぐ る

争 い は 遺 産 分 割 手 続 で 解 決 す べ きで あ っ て,そ れ ま で は 被 相 続 人 死 亡 直 前 の 状 態

に 凍 結 し て お く と い う趣 旨,換 言 す れ ば そ の 間 は 相 続 人 間 で は 管 理 行 為 は 問 題 と

な ら な い こ と を 明 らか に した 判 決 と解 す な こ とが で き る 。」と評 価 して い た 。ま た,

岡 本 詔 治 「 ⑤ 判 決 解 説(註11)」86頁 も 「単 な る 遺 産 の 使 用 収 益(居 住 利 益)に

つ い て も」 「遺 産 か ら の 収 益 」 と 「基 本 的 に 同 様 に 考 え るべ き で あ ろ う」 と し た

上 で,「 本 判 決 〔 ⑤ 判 決 〕 も,遺 産 共 有 の 段 階 で の 使 用 収 益 は遺 産 分 割 の 対 象 と

な る,と の 前 提 で 立 論 して い る と考 え て,大 過 な い 。」 と論 じ て い た 。

(17)

分割 前 の共有 遺 産の使 用 と使 用利 益の 返還 121 なか ん ず く原 告Xは,本 件 不 動 産 が 遺 産 に属 す る こ と 自体 を 否 定 して,通 常 訴 訟 を提 起 した の で あ り,こ の よ うな 場 合 に敢 え て 訴 え を却 下 す る必 要 も な い と思 わ れ る。

i1次 に不 法 行 為 の成 否 につ い て:既 に見 た よ う に 下級 審 裁 判 例 ・学 説 に は

「 不 法 行 為 不 成 立 」 を説 く も の が あ っ た 。2000年 判 決 は,「 不 当 利 得 金 な い し損 害 賠 償 金 」 の 支 払 を認 め た が こ こに 言 う 「 損 害 賠 償 金 」 と は ど の よ う に位 置 づ け るべ きで あ ろ う か 。 損 害 賠 償 金 が 問 題 な るの は一 つ に は不 法 行 為 の 成 立 が 認 め られ た 場 合 で あ るが,2000年 判 決 で は と くにYら につ い て 不 法 行 為 の 成 立 につ い て 言 及 して い な い 。 ま た,悪 意 の 「 受 益 者 の 責 任 が 不 法 行 為 責 任 た る の 実 質 を 与 え ら れ て い る 」22)こ とか ら,こ こ で の 損 害 賠 償 金 は不 当 利 得 に 基 づ くそ れ と考 え るべ き で あ ろ う。 先 に述 べ た よ う

に 不 法 行 為 は 原 則 と して 成 立 しな い が,事 案 に よ っ て は 不 法 行 為 が 成 立 す る場 合 が あ る こ と は否 定 で きず(例 え ば,占 有 使 用 して い る相 続 人 が,相 続 財 産 で あ る こ と を知 っ た う え で,虚 偽 の相 続 放 棄 の 申 述 を な した よ う な 場 合),こ の よ う な 場 合 に つ い て は不 法 行 為 に よ る 損 害 賠 償 が 認 め られ る

こ と も ち ろ ん で あ ろ う。

4‑5使 用 利 益 の 認 定 に関 す る問 題

2000年 判 決 が 「 不 当 利 得 金 な い し損 害 賠 償 金 」 の 返 還 を認 め た こ と 自体 は こ れ ま で の 下 級 審 裁 判 例 ・学 説 に 沿 う もの で あ り,妥 当 で あ ろ う。 しか し,何 時 か ら の使 用 利 益 の返 還 が 認 め られ る か,ま た,そ の 額 を如 何 に 認 定 す る か につ い て は 問 題 が 残 る。

4‑5‑1返 還 され るべ き金 員 の額

2000年 判 決 は,支 払 わ れ るべ き 「 不 当 利 得 金 な い し損 害 賠 償 金 」につ い て 「 地

22)広 中 俊 雄 ・債 権 各 論 講 義(4版,1977年)393頁 。 ま た,Yら が 善 意 占有 者 で あ

れ ば189条 と の 関 係 も 問 題 と な り う る が,こ の 問 題 に 関 して は 油 納 健 一 「不 当 利

得 と 善 意 占有 者 の 果 実 収 取 権 」 龍 谷 法 学32巻4号(2000年)118頁 以 下 参 照

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122 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

代 相 当 額 」 を基 準 と した 。 ⑩ 判 決 で は,被 相 続 人 が 生 前 に 建 物 の一 部 を賃 貸 し て い て,こ の賃 料 を基 準 に 不 当 利 得 金 額 を算 定 して い た。 また ⑤ 原 審 は 年12万 円 な い し36万 円 が 被 告 か ら被 相 続 人 に対 して 「 実 際 に 支 払 わ れ て い た と して も, そ れ は 右 〔 被 告 〕 両 名 と 〔 被 相 続 人 〕 とが 家 族 と して 同居 生 活 して い た 等 の 事 実 に よる 生 活 費 な い しは 固 定 資 産 税 の 一 部 とみ る の が 相 当 で あ り,そ う した前 提 が 失 わ れ た 同 人 の 死 後 に お い て は,右 〔 被 告 〕 両 名 が 他 の 共 有 者 に対 して 支 払 うべ き不 当 利 得 額 を算 出 す る に あ た り,右 金 額 は 算 出 の根 拠 と して 考 慮 さ れ る に値 す る もの で は ない とい うべ きで あ る。 」 と して,「 積 算 法 及 び賃 貸 事 例 比 較 法 の 二 方 式 を適 用 し て求 め た 各 試 算 賃 料 を相 互 に 関 連 付 け て 適 正 賃 料 を算 出

した 」 一 審… の 算 出過 程 に は不 適 切 な点 は 認 め られ な い と して い た 。 ⑥i⑦iii も 「 地 代 相 当額 」 を不 当利 得 と認 め た 。 しか し,こ の よ う な判 断 に つ い て は 「 遺 産 建 物 に お い て 無 償 で 被 相 続 人 と同 居 して きた 相 続 人 が 相 続 開始 と 同時 に 多 額 (本 件 〔 ⑤ 〕 で は 月額24万 円)の 不 当利 得 支 払 義 務 を負 う の は,落 ち着 きの 悪 さ を否 定 で きな い 」 と した 上 で,解 決 の 「 二 つ の ア プ ロー チ 」 を 指 摘 もの が あ る24)。そ れ に依 れ ば,一 つ は⑤ 判 決 の よ う に使 用 貸 借 の 成 立 を推 認 す る もの で, も う一 つ は 「 非 占有 者 の損 失 額 又 は 占有 者 の 利 得 額 を 賃 料 相 場 よ り大 幅 に低 額 に 認 定 す る こ とで あ る。」

2000年 判 決 で は 確 か に 「 被 相 続 人 」 と同居 して い た相 続 人 の 建 物 使 用 が 問 題 で は な く,上 述 の 批 判 が そ の ま ま 妥 当 す る か は 問 題 が あ ろ うが,返 還 金 な い し 賠 償 金 の 算 定 を 具 体 的 に どの よ うに 行 な うか は なお 残 され た 問 題 で あ ろ う か 。

4‑5‑2返 還 債 務 の 発 生 時期 一 使 用 借 権 の黙 示 的 設 定 とそ の 帰 趨 先 に もみ た よ う に(3‑1)仮 に 相 続 人 の一 人 が 相 続 開 始 後 に遺 産 を単 独 で 占 有使 用 して い て もそ れ が 権 原 に基 づ く場 合 は,そ の権 原 が 消 滅 しな い 限 りそ の ま ま 占有 使 用 す る こ とに は 何 らの 問 題 もな い 。2000年 判 決 は,こ の よ う な使 用 権 原 につ い てYら か らの 主 張 ・立 証 が な か っ た と して い る(判 旨 〔 ② 〕)。し か な が ら,2000年 判 決 の事 例 で は,当 初B所 有 で あ っ た建 物 がCに 贈 与 さ れ た

24)野 山 宏 「⑤ 判 決 解 説(註15)」198頁

(19)

分 割前 の共 有遣 産 の使用 と使 用利 益 の返還 123 時 点 で 建 物 所 有 者 と敷 地 所 有 者 に 分 離 が 生 じた故 に,敷 地 利 用 権 如 何 の 問 題 が 生 じ よ う。

2000年 判 決 の 事 実 認 定 に よ れ ば,当 初B所 有 に あ っ たB所 有 地 上 の 建 物 はB の 死 亡 直 前 の1967年4月 にCに 贈 与 さ れ て い た。Bの 建 物 所 有 を通 じて のC所 有 土 地 の使 用 を前 提 に す る も の で あ るか ら,こ の 時 点 で はC・B間 で 土 地 の 使 用 貸 借 契 約 が 黙 示 的 に成 立 した と見 る の は既 に指 摘 され て い る よ う に最 も素 直 な 解 釈 で あ ろ う25)。 問 題 な の は この 使 用 貸 借 契 約 が そ の 後 ど う な っ た の か で あ る 。2000年 判 決 は使 用 貸 借 の存 続 を全 く問 題 な して い ない が,こ の 点 も検 討 を 要 す る。

2000年 判 決 は,そ の 理 由 か ら 明 らか な よ う に(「Y1及 びY2が 共 有 物 で あ る本 件 各 土 地 の 各 一 部 を 単独 で 占 有 す る こ とが で きる権 原 につ き特 段 の 主 張, 立 証 の な い本 件 にお い て は 」),仮 に 当 初CB問 で 使 用 貸 借 契 約 が 黙 示 的 に締 結

さ れ た と して も,そ の後 これ は消 滅 して い る こ と は 当 然 と して い る。 しか し, そ れ 以 外 の 可 能性 は な い の か,ま た,消 滅 した と して何 時 消 滅 した の か は 明 ら か で は ない 。

こ の 問 題 に 関 して,1978年4月 の 建 物 贈 与 時 に消 滅 した とみ る もの が あ る 。 小 野 秀 誠 教 授 は 「 使 用 貸 借 は,当 事 者 の 人 的 な 関 係 を基 礎 とす る もの で あ り, 借 主 が 任 意 に処 分 で きる もの で は な い 。 土 地 の 所 有 者 もY1,Y2の み で あ れ ・

ば(た が い に)使 用 貸 借 を す る 当事 者 の 意 思 の 推 定 も可 能 で あ る が,建 物 を所 有 して い な いA(X)が 包 含 され て い る の で,困 難 だ ろ う。」 と して,理 論 的 に は1978年4月 の 建 物 贈 与 時 に 消 滅 した と見 る26)。 ま た 判 例 時 報 無 署 名 解 説 氏 も1978年4月 の 建 物 贈 与 時 に消 滅 した と見 る が,そ の根 拠 は 「Cの 使 用 借 権 のY1,Y2へ の 移 転 は土 地所 有 者 に 対 抗 で きな い 」 こ とに 求 め られ て い る。

そ うで あ れ ば,1978年4月 以 降 に つ い て のYら の 使 用 利 益 の 返 還 が 問 題 とな るが,小 野 教 授 は,「 不 当利 得 返 還 義 務 の 発 生 す る 時 期 に つ い て は,検 討 の 余

25)判 時1713号2000年 判 決 無 署 名 解 説,小 野 秀 誠 「2000年 判 決 批 評 」 判 評504号179頁

26)小 野 秀 誠 「2000年 判 決 批 評(註25)」179頁

(20)

124 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

地 が あ る」 と して,そ の 始 期 は 「 昭 和53〔1978=建 物 贈 与 時=使 用 貸 借 の終 了 時 〕 年 まで 遡 りう る か は 事 案 の判 断 に よ る もの で あ り,必 ず し も断 言 した が い が,請 求 の時 期 との 関係 か ら見 て,当 事 者 の 意 思 上,Cの 生 前 に は 不 当利 得 の 関係 を否 定 す る こ とが 穏 当 な よ う な思 わ れ る。」 と され る27)。 筆 者 も まず 使 用 利 益 の 返 還 に 関 して は,1978年 ま で 遡 る の は 妥 当 で は な い と考 え る 。

確 か に使 用 貸 借 に あ っ て は借 主 は 権 利 を任 意 に処 分 で き る もの で は ない 。 し か し,当 事 者,こ こ で は まずBとCの 意 思 を勘 案 し,更 に ⑤ ⑦ 判 決 を も参 考 にす れ ば,む しろBの 意 思 は,Cが 建 物 に 居 住 す る 限 りで,建 物 の 所 有 者 如 何 に拘 わ らず,土 地 の 無 償 使 用 を認 め る も の で あ っ た(Cは 死 亡 す る まで 本 件 建 物 に居 住 して よ うで あ る。)と 構 成 す る ほ うが 適 切 で は な い か と思 わ れ る28)。

そ れ で はC死 亡 後 は ど うか;本 件 で はY1は 既 に 建 物 二 に居 住 して お らず (1990年 ま で 居 住),ま たY2は 建 物 贈 与 時 に はす で にA・Bと 別 居 して お り (1957年 か ら),Y3が 僅 か に1991年 か ら建 物 一 に居 住 して い る に 過 ぎ な い よ う で あ る29)。 か か る 事 情 の も と で はYら に そ も そ も無 償 利 用 が あ っ た と は言 えず,使 用 貸 借 契 約 を認 め る必 要 も ない 。 ま た,上 の よ う な 当事 者 意 思 を前 提 にす れ ば,C死 亡 に よ り 「す で に使 用 収 益 を な す に足 るべ き期 間 を経 過 した」

と解 す る こ と も可 能 で あ ろ う30)こ の よ うに 解 す れ ば よ り明 快 な構 成 に な る の で は な い だ ろ う か 。

27)小 野 秀 誠 「2000年 判 決 批 評(註25)」180頁

28)Bは 死 亡 直 前 に建 物 だ け をCに 贈 与 した こ とが 認 定 さ れ て い るが,こ れ はBと す れ ば,建 物 をCに 贈 与 して お け ば,相 続 が 起 こ っ て もCの 生 活 の 場 だ け は 最 低 で も確 保 で き る と 考 え て の こ と で は な い だ ろ う か 。 土 地 と建 物 が 別 個 の 不 動 産 で 他 人 所 有 土 地 上 に建 物 を 所 有 す る た め に は 土 地 利 用 権 が 不 可 欠 で あ る と い う こ と を 前 提 につ ね に 行 動 す べ き だ と い う の は 些 か 酷 で は な い だ ろ う か 。

29)小 野 秀 誠 「2000年 判 決 批 評(註25)」 に よ る

30)東 京 高 判1995年10月27日 判 時1570号70頁,判 タ910号167頁 は 建 物 所 有 者 の 配 偶 者

が 土 地 所 有 者 の 妹 で あ る 関 係 か ら土 地 使 用 貸 借 の 成 立 を 認 め 借 主 死 亡 に よ る 使 用

貸 借 契 約 の 終 了 は 認 め な か っ た が 原 告=被 告 の 兄=土 地 土 地 所 有 者 の 土 地 使 用 の

必 要 性 ・土 地 明 渡 の代 償 と して の 金 員 の 支 払 の 提 示 ・借 主 自 身 の 死 亡 な どの 諸 般

の事 情 を 考 慮 して 「な る 程 使 用 貸 借 の 目 的 で あ る本 件 建 物 は なお 現 存 し,現 に 家

族 の 一 人 で あ る 被 告 は 引 き続 き居 住 して い る と は い う もの の,す で に 使 用 収 益 を

な す に足 るべ き期 間 は 経 過 した もの と解 す る こ と が で き る」 と判 示 して い る 。Y

(21)

分割 前 の共 有遺 産の 使用 と使 用利益 の 返還 125

ま とめ に か えて

以 上 本 稿 で は,共 有 者 間 で の 明 渡 請 求 に 関 す る確 定 した 最 高 裁 判 決 を 出発 点 と して そ こ か ら生 じる 問 題 の一 つ で あ る 「 使 用 利 益 の 返 還 」 を,近 時 の最 高 裁 判 決 を手 掛 か りに して 考 察 した 。 使 用 利 益 の 返 還 とい う問 題 自体 は 本 稿 で の 考 察 か ら明 らか な よ う に 理 論 上 は 当 然 認 め られ る もの で あ り,然 程 問 題 が あ る わ け で は な い と評 価 す る こ とが 許 され よ う。 しか しな が ら,こ の よ う な使 用 利 益 の返 還 が 問 題 と さ れ る殆 どの 事 例 が 相 続 財 産 の 共 有 に 由 来 す る もの で あ り,そ れ ゆ え,と く に,共 有 発 生=相 続 の 開始=と と もに生 じ る 占有 使 用 状 態 が 従 前 の状 態 と の連 続 の 中 で 生 じる こ との 評 価 如 何 及 び共 有 の 解 消 に は 「 遺 産 分 割 手 続 」 が 用 意 され い る とい う手 続 法 との 関係 な ど なお 論 じ尽 くせ な い 問 題 が 数 多 残 っ て い る こ とが 明 らか に さ れ た の で は な い か と思 わ れ る。 詳 しい 検 討 は,今 後 の研 究 に譲 る こ とに した い 。(2001年9月30日 脱 稿)

らの本 件建 物 の必 要性 は相 当 に低 い ようで もあ り,借 主 と 目され るC自 身が死 亡

した こ とを考 え る と既 に土 地使用 貸借 の 目的 は達 成 された とも評 価 で き ようか。

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to adopt a general policy which aims to give the cultural and natural heritage a function in the life of the community and to integrate the protection of that

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