●相続税のABC
303
相
続
税
302
遺言による遺産分割
相続開始後、遺産はとりあえず相続人 等の共有財産とされます。共有財産とな った遺産は遺言または相続人間の協議等によって分割され、最終的には相続人・ 包括受遺者に割りふられ、帰属が決まり ます(遺産分割)。
遺言による遺産分割は、被相続人の生 前の意思によって、財産を相続人等に対 してどのように分けるか決定する方法で す。遺言書の作成方式については民法で 厳格に規定され、それに違反する遺言は 原則として効力が認められません。
◆自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言のすべてを遺 言者が文字どおり自筆で書いたもので す。したがってパソコンなどを用いるこ とは認められないと解されています。署 名や遺言文はもちろん、日付も自筆で書 かれなければなりません。遺言書には捺 印する必要がありますが、実印に限らず 認印でもよいと解されています。開封の 際には、家庭裁判所の検認が必要です。
◆公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証人の作成する 公正証書によって遺言を行う方法です。 まず公証人が遺言者の口述に従って遺言 の内容を筆記し、遺言者と2人以上の立 会の証人に読み聞かせ、または閲覧しま す。次に内容に誤りのないことを遺言者 と証人が確認して署名捺印します。最後 に、所定の方式に従って作成されたもの である旨を公証人が付記して署名捺印す ることにより遺言書が完成します。遺言 書は公証人によって保管されます。
遺言者が言語機能障害者である場合に は、口述に代えて、通訳人の通訳(手話 通訳)または自書によって遺言の内容を 公証人に伝えて公正証書遺言を行うこと ができます。遺言者・証人が聴覚機能障 害者である場合には、公証人は通訳人の 通訳(手話通訳)により内容の確認を求 めることが可能です。
◆秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、内容を秘密にして 遺言書を保管することができる方式の遺 言です。署名捺印と遺言書の封入封印は 遺言者自身が行う必要があります。遺言 書は公証人に提出されます。その際、公 証人と2人以上の証人の前で、遺言者は それが自分の遺言書であること、筆記者 の氏名・住所を述べます。そして、提出 を受けた年月日と遺言者の述べたことを 公証人が封書に記載し、遺言者・証人・ 公証人がそれぞれ署名捺印します。開封 の際には、家庭裁判所の検認が必要です。 遺言者が言語機能障害者である場合に は、それが自分の遺言書であることおよ び筆記者の氏名・住所を封書に自書して 示す方法のほか、通訳人の通訳(手話通 訳)によって示して秘密証書遺言を行う ことも可能です。
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遺産分割の方法
予め遺言で遺産の分割を指定する場合には、だれにどれだけの財産を残す かは被相続人の自由です。しかし、遺留分が侵害されたことに基づく減殺請 求が遺留分権利者である相続人からなされると、遺言で指定された財産はそ れだけ減額されます。遺留分とは、法定相続人のうちの兄弟姉妹を除く配偶 者・直系卑属・直系尊属(遺留分権利者)に対して一定限度の財産相続を法 律で保障しようという趣旨から認められた、相続財産のうちの一定割合のこ とです。
遺留分の割合は次の通りに定められています。
たとえば、遺産2億円で相続人が2人の子の場合、遺産を全部一方の子に 与えるという遺言を被相続人がしたとしても、もう一方の子には遺留分とし て5,000万円(=2億円×1/2(遺留分)×1/2(法定相続分))の財産 が保障されることになります。
遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始などを知ったときから1 年以内に行使しなければ、時効によって消滅します。また、相続の開始のと きから10年を経過した場合も同様です(除斥期間)。
遺留分権利者が遺留分を放棄することは自由です。ただし、相続開始前に 放棄するには家庭裁判所の許可が必要です。遺留分を放棄しても相続権がな くなるわけではありませんし、他の相続人の遺留分の額が変動することもあ りません。
遺言と遺留分
協議分割
「遺言による遺産分割」によらない場 合、相続財産の分割は相続人間の協議(話 し合い)で決めることになります。分割 の内容は、相続人間で自由に決めること ができますが、協議分割の場合には相続 人の全員の同意が必要です。相続人間で
協議が調えば、遺産分割協議書を作成し てそれぞれが署名捺印します。協議が調 わない場合には、家庭裁判所に分割を請 求し、調停や審判を受けることになりま す。
①直系尊属のみが相続人である場合、相続財産の1/3 ②①以外の場合、相続財産の1/2
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相
続
税
遺産分割における預貯金の扱い
預貯金は遺産分割の対象となりますか。
2016年12月の最高裁の決定 により、預貯金は遺産分割 の対象となることとされました。 従来、預貯金は、相続人全員が遺 産分割の対象とすると合意しない限 り、遺産分割の対象とされず、各相 続人が相続分に応じて権利を承継す るとされていました。例えば、相続 人が子供二人(AとB)で相続財産 が3,000万円の預貯金のみであるケ ースでは、預貯金は遺産分割の対象 とされず、AとBはそのまま1,500万 円ずつ預貯金を得ることになりま す。このケースで、仮に被相続人が Aに1,000万円の生前贈与をしてい た場合、Aは2,500万円相当の財産 (預貯金と現金)、Bは1,500万円の 預貯金を得ることになり、不公平が 生じます。このような不公平が生じ ないように、生計の資本として生前 贈与などがされた場合(特別受益)、
遺産分割において生前贈与された財 産を相続財産に加算して相続分が計 算されます。しかし、先ほどのケー スでは、預貯金は遺産分割の対象と されないため、このような是正措置 も行われないことになります。 このような問題を踏まえ、最高裁 は2016年12月に、普通預金・通常貯 金・定期貯金は遺産分割の対象に含 まれるとの判断を示しました(さら に2017年4月には、定期預金も遺産 分割の対象に含まれるとの判断を示 しました)。先ほどのケースでは、 3,000万円の預貯金が遺産分割の対 象となり、生前贈与された1,000万 円が相続財産に加算されるため、相 続財産は4,000万円相当となります。 その結果、Bが2,000万円相当の預 貯金を相続し、Aが2,000万円相当 の財産(生前贈与の1,000万円と相 続分の1,000万円相当の預貯金)を
相続することになります。
預貯金が遺産分割の対象とされる 結果、公平な扱いが図られる一方、 預貯金のみが相続財産である場合に も特別受益の問題が避けられず、相 続人間でもめるケースが増えること が予想されます。なお、前ページの Check Point! 記載の事情により、
従来、銀行は、原則として相続人全 員の同意がない限り預貯金の払い戻 しに応じておらず、この点について は変更は生じないと考えられます。 もっとも、本稿執筆時点(2017年 5月)で、相続制度を含め民法の改 正が検討されており、今後の動向を 注視する必要があります。
通常の形式で相続を行った場合、被相続人の権利だけでなく、義務も相続 しなければなりません(単純承認)。そこで、被相続人の財産よりも、借金 などの債務の方が明らかに多い場合、相続権を放棄することができます。相 続放棄は、自分が相続人となる相続開始があったことを知ったときから3ヵ 月以内に家庭裁判所に申し出て手続きをする必要があります。
しかし、相続した財産と債務のどちらが大きいか分からない場合には、相 続放棄をすると、結果として財産のほうが債務よりも大きかったとしても、 その差額分も放棄してしまうことになります。そのような場合は、限定承認 という制度を利用するのが良いでしょう。この制度は、相続によって得た財 産の限度でのみ被相続人の債務を負担するという留保付で相続を行うもので す。差額分の財産が生じた場合には取得できますし、相続財産を超えて債務 を負うことはありません。
ただし、限定承認は、相続人が複数いる場合には、相続人全員でなければ 行うことができません。
限定承認を行うには、自分が相続人となる相続開始があったことを知った ときから3ヵ月以内に家庭裁判所に申し出て財産目録を提出しなければなり ません。限定承認を行った相続人は、限定承認を行った後5日以内に一切の 債権者に対して一定期間内(ただし2ヵ月以上)に債権の申出をするよう公 告・催告し、期間の終了後、原則として、申し出た債権者各々の債権額の割 合に応じ相続財産の限度で債務を返済します。
限定承認を行うと、被相続人にみなし譲渡所得が発生し、相続人が申告す ることになります(準確定申告)。
なお、相続放棄・限定承認の申出をする前に相続財産を処分してしまう と、単純承認を行ったものとみなされてしまう(法定単純承認)ので、 注意が必要です。
遺産が分割されると、次は不動産や有価証券などの財産の名義変更の手続 きに入ります。遺産をいつまでも被相続人の名義のままにしておくと、証券 会社に預けている証券類や銀行の預金など財産の種類によっては相続人が自 由に処分できないものもでてきます。これは、証券会社や銀行の立場として は、相続が開始したことや誰がどの財産を取得したかなどが判明しなければ、 依然として被相続人を財産の所有者と考えるか、相続人全員を権利者と取り 扱わざるをえないためです。