計画学的視点による社会 基盤 システムの 史的発展 モデルの構築
一交通 システム,特に鉄道 システムを例 として ‑
E 岳 7 ヨ 尚 之*
目 次
1.本研究の目的 と特徴
2.計画学的視点による史的研究 3.
社会基盤 システムと鉄道 システム
3. 1
社会基盤 システム
3. 2
社会基盤 システムとしての鉄道 システム
4.
鉄道 システムにおける表定速度の変化 とその傾向
4. 1鉄道 システム発展の評価指標 としての表定速度
4. 2
表定速度データベースの構築 とその運用
4. 3表定速度の変化 とそのグラフ化
4. 4
表定速度変化の特徴
4. 5
鉄道 システム技術発展データベースの構築 と運用
4. 6鉄道 システム技術の発展 マ トリクス
5.
鉄道 システムの重層段階発展説
5. 1
表定速度か ら見た鉄道 システムの発展傾向
5. 2鉄道 システム発展のライフサイル
5. 3
鉄道 システムの重層段階発展説
5. 4
重層段階発展モデルによる鉄道 システム発展の時代区分
6.まとめ7.参考文献
1
.はじめに
近年,社会 における価値観の変化傾向は従来に比べ顕著 とな り,多様化,複
〔279〕
280
商 学 討 究 第
45巻 第
2号
雑化がより一層進展 している。 このため,社会環境整備にかかわる事業を取 り 巻 く環境 は,大 きく変化 してきている。その一例 として,例えば,交通計画や 地域計画の事業化に際 して発生す る地域住民 とのコンフリク トなども,従来見
られた ものよりも一層複雑な ものとなってきていることなどが挙げ られる。
この背景には,①最低限度の生活に必要な社会資本が整備 された こと。②生 活水準の向上に伴い, 自然環境,歴史,景観など数量的に把握 しづ らい要素に 対す る関心が高 くなったこと。などが大 きな要因 となっているもの と考え られ
る。
このような状況において, システムとして複雑化,巨大化 した社会基盤 シス テムの整備や事業を担当する工学分野,特に土木工学分野においては,その事 業計画を策定す るに当た り,数量的に把握 しづ らい諸要素を も積極的に取 り込 んだ計画案策定のアプローチが必要 とされている。
現在, これ らの問題を解決す るために様々な数理的アプローチが開発 され, 計画案立案に際 して,それぞれ現状の把握や将来予測,合意形成などに応用 さ れている。 しか しなが ら,環境や歴史
,‑景観など数量化 しづ らい評価項 目を数 理的手法のみで取 り扱 うことの困難 さもまた指摘 されている
。この ことは,社 会基盤 システムを構築する土木技術 とそれを支える科学的理論体系である土木 工学の対象が,極めて社会性 に富むことか ら,土木計画立案に際 し自療科学的 なアプローチと同時に社会科学的あるいは人文科学的アプローチも必要である
ことの現れと考え られる。
ところで,歴史研究の利益の一つは,先人の行動規範や業績などを調査 し, その得失を知 り,そこに内在す る因果連鎖を推量 して,現在の我々が立脚す る 位置 と将来の取 るべき行為q) 手掛か りを得 ることにある。過去における社会基 盤 システムの発展傾向を探究 し,そこか ら見出される発展のメカニズムを把握 し,それより,今後の整備指針を定めることも社会基盤 システムの計画におい て,数理的手法の活用 と同時に重要な ことと考え られ,両者の得失を組み合わ す ことにより,より好 ましい計画案の立案を成 し得 るものと考え られ る。
本研究 は,社会基盤 システムの史的発展を考察す ることにより,社会基盤 シ
,計画学 的視点 による社会基盤 システムの史的発展 モデルの構築
281ステムの計画案立案に際 し,有益な情報を与え うる,計画学的視点に基づいた 史的発展モデルを構築することを目的 としている。本研究では,社会基盤 シス テムを構成す るサブシステムであり, トータルシステムである鉄道 システムを その対象 とした。そ して,その発展をマクロ的観点か ら考察 し,そ こに見 られ る傾向性を発展モデルで表現 した。さらに,モデルを適用す ることによって, 鉄道 システム発展史の時代区分を行い,モデルの妥当性の検証を行 ったもので
ある。
2.
計画学的視点 による史的研究
「 歴史は,現在 と過去 との対話である」イギ リスの政治学者であり,歴史学 者である
E.H.カー
(E.H.Carr)の言葉である1 ) 。人は人 と対話す ること
により自分 自身の存在を知 ることがで きる。 したが って,我 々は,我々の過去 を振 り返 ること,すなわち過去 との対話によって,現在の我 々自身の存在を知 ることができる。その ことは,現在がどのような未来につなが っているかを把 握することにつながる
。未来のことは推量に頼 る他 に方法はない。そのために は, これまでに生起 した諸事象を手掛か りとするより手段はない。 これが,す なわち 「 過去 との対話」である。 この歴史を対象 とす る歴史学について,林健 太郎は,過去の社会の経過を叙述す ることによって,現在の社会が置かれてい る状況を位置付け,さらには将来の予測を可能 とさせ るものが歴史学であり, すなわちその意義 は,生起 し変化す る現象の秩序や法則性を見出す ことにあ
る
2)と説明 している。
さて,社会基盤 システムの構築に深い関 りを持っ土木工学のなかで,土木計 画学は,土木構造物や土木施設など大規模かつ公共性の高いものをシステムと
して機能 させ ることを総合的に研究す る計画工学である
。この土木計画学につ
いて,五十嵐 日出夫は 「 土木計画学 は,土木施設 と社会の関係を研究する学問
である。土木構造物 と人間との関係を探究す る学問である。その社会,その人
間に最 も適す る土木施設,あるいは土木構造物 とはいかなるものであるかを考
282
商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号
え,その築造 と配置の方針を指 し示す学問なのである。 この意味において,土 木計画学 は土木工学 の羅針盤であ り,土木計画者 は操舵手であ るともいえ る
」3)と説明 している。さ らに五十嵐 は,土木計画学における歴史研究の重要 性を指摘 し , 「 土木史の中に過去の土木計画の成 り行 きを調査 し,その成 り行 きの分析によって, これか らの土木計画のあるべ き姿を予測す る。そ して,そ のあるべ き姿に照 らして現在の土木計画を検討 し,評価 して計画の進展 して行 く方向を制御する」 ことが 「 土木計画学における土木史研究の第一の意義であ る」 と述べている
4)。すなわち土木計画学 における歴史研究 は,計画 に哲学 を与えるもといえよう
。五十嵐が述べるように,土木計画学における歴史研究 が土木計画学に哲学を与え,その土木計画学が土木工学の舵を取 るな らば,計 画学的視点に立脚 した史的研究は,過去の遺物をいたず らに崇める回顧趣味的 研究であってはな らず,より積極的に現状を把握 し,将来への予測がなされ う る研究であることの必要性が高 く要求 され ることとなる
。したが って,計画的 視点に立脚 した史的研究には,歴史的な現象の中に何等かの法則性を見出 し, 史的発展モデルを構築す ることが要求 される。
3.
社会基盤 システムと鉄道 システム
3. 1
社会基盤 システム
快適な生活の実現を求めて,高度化,複雑化 した現代社会は,様々な施設 ・ 設備によって成立 している
。それ らには,特定の一個人が利用す るもの もあれ ば,不特定多数の利用に供 されるもの もある。一般に,社会基盤施設 とは,不 特定多数の人々や集団が 日常活動の基盤 として広 く供用す る施設を指す言葉で ある
5)0
さて,社会基盤施設には,物資,エネルギー情報などを生産す る生産基盤施
設やそれ らを輸送,伝達す る鉄道,道路,港湾などの輸送 ・通信基盤施設,居
住,衛生,教育,文化施設等の生活基盤施設がある。さらには,治水など社会
を維持す る防災 ・安全基盤施設などがある
。これ らの社会基盤施設 は我 々の 日
計画学的視点による社会基盤システムの史的発展モデルの構築
283常生活を安全 な ものに し, さらに快適な ものに しているのであるが,それぞれ の施設が単独 に存在 し機能 しているものではない。まず,同質の施設間におい て システムが形成 され,さ らに他の施設 と関連 しなが らよ り大 きな システムを 構成 しているのである。 このため,社会基盤同士が形成す るシステムは,社会 の需要 を満たすために, 必然的に巨大な システムとな らざるをえない。さらに, 巨大なシステムその ものは,その存立のために,常時その時点における先端の システム技術を必要 とす る。 ここでいうシステム技術 とは,‑‑ ドウェア技術 のみな らず,: 運用等 に関 るソフ トウェア技術 も含めた トータルな技術である。
そ もそ もシステムとは,構成要素の有機的な結合状態である。 ここでい う有 機的 とは結合体が外界 に対 して,状況 に応 じ,意識的あるいは無意識的に対応 す ることである。社会基盤施設 は, システム的に有機的な関連を持 って形成 さ れているが, このよ うなシステムの発展傾向を知 るためには, ミクロ的な観点 か らシステムを構成す る要素個 々の発展を詳細に観察す ることと同時に,マク
ロ的な観点か らシステム全体の発展を観察す ることも必要である。
3. 2
社会基盤 システムのサブシステムと しての鉄道 システム
1872
( 明治
5)年,新橋 ‑横浜 間の開業をその始 ま りとす る我が国の鉄道 システムの歴史 は,現在百二十余年を数えるに至 った。 この間,鉄道 システム は日本各地 にそのネ ッ トワークを広げて行 き,産業をは じめ文化などを含めた 日本の近代化,発展 に多大な影響を与えてきた。そ して,現在 も人 々の生活 に 欠 くことので きない社会基盤 システムを構成するサブシステムとして, 日々そ の役割を果た していると同時に,将来 において もさ らなる発展が人 々か ら期待 されているサブシステムである。
さて,鉄道 システムは,面的にはネ ッ トワークの形成 によって システム化 さ れてお り,点的には鉄道にかかわる技術,すなわち施設 ・設備,車両等の‑I ドウェア技術 と運用,情報処理,法制度等の ソフ トウェア的な技術が総合的に 組み合わさり,その相互作用 によって発展 して きた トータル システムである。
さらに,鉄道 システムは,社会基盤 システムを形成す るサブシステムであ り,
284
商 学 討 究 第
45巻 第
2号
明治以降 日本の近代的な社会基盤 システムとして,歴史 と規模を誇 り,現在 に 至 るまで機能を持 ちっづけている。そ して,今後21 世紀にかけて我が国の社会 基盤 システムを構成す る重要 なサブシステムの一つ として,その任を果たすた めには,現状を維持す るのみな らず, さらに進んだ高い水準の鉄道整備を行 う 必要がある。
このように,鉄道 システムは社会基盤 システムを構成す るサブシステムの一 つであ り,その歴史性か ら,社会基盤 システムの発展傾向を把握す るのに適す るもの と考え られるが,その発展を考察す るにあた っては,‑‑ ドウェア, ソ フ トウェア両者の相互関係を総合的に考察 し,社会情勢 との関連を踏 まえた分 析が必要 とな る
6) 04.
鉄道 システムにおける表定速度の変化とその傾向
4. 1
鉄道 システム発展の評価指標 としての表定速度
鉄道 システムは,その誕生時か ら列車速度の向上 と輸送力の増強がなされて きた。そのため,鉄道 システムを構成す る個 々の要素 は,いかに して速 く,大 量に,安全に輸送す るのかを命題 として発展 して きた。 このため,列車速度や 輸送力が一国や一企業 における鉄道技術の発展指標 として用 いられてきた。
ところで,交通機関にもっとも重要 な要件 は 「 速度」 といわれる。速度の向 上 は旅行時間の短縮を もた らし,他の交通機関に対 して競争力を高めることが でき, さらには車両や乗務員の回転率が高まり,効率良い運用を可能 とす る。
この ことは輸送力の増大にも関係す ることである。 したが って,本研究で は列 車速度を鉄道 システムの発展指標 とした。
通常,列車速度を表すには,最高速度,表推定速度,平均速度 の三種類の速
度が用い られている。最高速度 は,線区 ・区間の線路の強度, ( 軌条重量,秩
木本数,道床厚) と車両の走行性能 によって決定 され,列車種別 ( 急行,貨物
等)によって細か く規程 されている速度である。また,表定速度 は,線区 ・区
間における列車の運転距離を,途中の停車駅 における停車時分を含めた所要時
計画学的視点 による社会基盤 システムの史的発展 モデルの構築
285問で割 った平均速度である。 このため,表定速度 は線区 ・区間の線路の強度, 線形, 車両の走行性能, 列車の運用形態等 によ って総合的に現れ る速度であ る。
さ らに,平均速度 は,線区 ・区間における列車の運転距離を,停車時分を除い た所要時間で割 った速度である。
現在,鉄道 システムの発展を速度向上 によって議論す るには,その指標 とし て最高速度 を用 いる場合 と表定速度 を用い る場合 との二通 りがある。 この う ち,最高速度 は条件の良い一部区間のみで得 られ るもので,列車の運用などソ フ トウェアを考慮 した速度 とは言 い難い。一方,表定速度 は起点か ら終点 まで の距離を,その間を走行す るのに費や した時間で除算す ることか ら,途中の徐 行や列車待避など速度低下の原因 となっている諸要因を考慮 した速度 となる。
したが って,表定速度 は対象 とした区間の鉄道 システムの水準を評価す るのに 有効 な指標 といえ る。 これより,本研究では鉄道 システム発展の指標 として表 定速度を採用 した
7)。4. 2
表定速度データベースの構築 とその運用 ( 1 ) 本研究における対象線区
本研究では,北海道の主要幹線
5区間 と本州の主要幹線
2区間を表定速度変 化の調査対象区間 とした。すなわち,札幌 と北海道の主要都市を連絡す る,( ∋ 札幌 一函館間,( 診札幌一旭川間,③札幌 一釧路間,( 彰札幌‑北見間,( 9札幌一 稚 内間の
5区間および, 本州の都市間連絡 として( 釘上野 一青森問, ⑦東京 一( 新 棉) 一大阪 ( 神戸)間である。 これ ら
7区間は,それぞれ開通時か ら重要な幹 線区間 として位置付 け られた区間であ り,その時代の先端技術 と区間の重要度 に応 じた技術が積極的に投入 され,鉄道 システムが形成 された もの と考え られ る。 この ことか ら,以上の 7区間を表定速度変化の調査対象区間 とした。図 ‑
1は本研究が対象 とした北海道内
5線区の路線変遷図である。
( 2) 表定速度の対象年代
本研究で は,北海道の各区間における表定速度変化の調査対象年代を,北海
道 内の鉄道路線 の国有化が完了 した1
907( 明治
40)年か ら,国有鉄道が分割286
商 学 討 究 第 4 5 巻 第 2 号
図
‑1本研究 における対象線区 ( 北海道内)
・民営化 され,北海道旅客鉄道株式会社が発足 し
4年が経過 した,
1990( 辛 成
2)年 まで とした。また,本州の上野 一青森 問について は,同区間が全通 し た
1891( 明治
24)年か ら東北新幹線 が開業 した
1982( 昭和
57)年 まで と し, 東京 ( 新橋) ‑大 阪 ( 神戸)間 に関 して も同様 に,全通 の
1889( 明治
22)年 か ら東海道新幹線が開業 した
1964( 昭和
39)年 まで と した。なお,本州 の
2区間において調査範囲を新幹線開業 まで としたのは,新幹線 システムが在来線 システム と大 き く異な り,同一の観点か ら議論をす ると混乱を来 し,分析で き ないと判断 した ことによる
。(3)
表定速度データベースの構築
表定速度 を算 出 し,その変化傾 向を知 るためには,対象 とした区間における 最速列車の運転距離や運行時分を時系列的に知 る必要が ある。そ こで,本研究 で は表定速度 を算 出す るために表定速度 データベースを構築 した
8)0本研究 において構築 した表定速度データベースは,( 9時刻改正年月 日,②調
計画学的視点 による社会基盤 システムの史的発展モデルの構築
287査対象区間, ③列車の上下, ④列車番号, ⑤発時刻,⑥着時刻,⑦運転時分 ( 所要 時間) ,⑧運転距離,⑨表定速度,⑲備考の
10項 目か ら構成されるものである。
データの入力に際 しては,調査対象 とした区間それぞれに対 して,対象 とし た時代間における列車の運転経路の変更や運転時分の大 きな変更が見 られた時 刻改正時を調査のサ ンプ リング時 とし,原則 として調査対象 とした区間を直通 する列車全てについて各項 目を調査 した。但 し,該当する時刻改正時の資料が 入手で きなか った場合,改正後でなるべ く近い時期の資料で代用 した。
また,データベースの各項 目であるが,改正年月 日は,第二次世界大戦前 に 関 しては,繊道院年報,繊道省年報などを参照 し,戦後に関 しては, 日本国有 鉄道百年史および交通公社版時刻表などを参照 した。さらに, 上下, 列車番号, 発時刻,着時刻,運転距離については各社か ら刊行 された時刻表や旅行案内書 などにより調査 した。そ して,運転時分 ( 所要時間) ,表定速度の
2項 目につ いては,それぞれデ‑クーベース内に関数を設定 し,発時刻,着時刻,運転距 離の入力によって自動的に計算 されるように した。さらに,対象 とした各線区 毎の各時刻改正時における最高表定速度の算出には,データベースの並べ替え 機能および抽出機能を用いた。
4. 3
表定速度変化のグラフ化とその特徴
表定速度を算出 し,その変化傾向を知 るためには,対象 とした区間における 最速列車の運転距離や運転時分を時系列的に知 る必要がある。そのため,本研 究では表定速度 を算 出す る目的で表定速度データベースを構築 したが, さ ら
に,表定速度変化の全体的な傾向を把握す るために,横軸 に時間 ( 年)を取
り,縦軸 に表定速度を取 ったグラフに表定速度をプロッ トす ることを調査対象
7区間に対 して行 った。図
‑2は札幌一函館問,図
‑3は札幌‑釧路間,図 ‑
4は東京 ( 新橋)一大阪 ( 神戸)問における表定速度の変化をプロッ トした も
のである。なお,札幌一旭川間は札幌一函館問,札幌一北見問および札幌一稚
内間は札幌‑釧路間に,上野 一青森間は東京 ( 新橋) ‑大阪 ( 神戸)問の表定
速度の変化 とはぼ類似 した変化傾向を示 した。
288
(u
J∈
巳paadspo!+ !
DOds商
学討
究第 45 巻
第 2号
図
‑2札幌 ‑函館間における表定速度の変化
SpecifiedSpeed(SapporoIHakodate)1890 1910 1930 1950 1970 1990
Year
図 ‑
3札幌 一釧路間における表定速度の変化
SpecifiedSpeed(Sapporo‑Kushiro)0nU0864
(uJLuMPaadspa
こ .
Dads●● ●
●● ● ● ●●ヽ ●●
● ● ●
1890 1910 1930 1950 1970 1990
Year
計画学的視点 による社会基盤 システムの史的発展モデルの構築
289図
‑4東京( 新橋卜 大阪( 神戸) 間における表定速度の変化
specifiedSpeed(TokyO‑Osaka)(u
JuJ
uPaOdsp
O!]!Dads1890 1910 1930 1950 1970 1990
Year
4. 4
調査対象線区における表定速度変化の特徴
一表定速度の変化を時系列的にグラフにプロッ トした結果,以下の特徴 と共通 の傾 向が把握 された。
1
)表定速度 は調査対象 とした
7区間全てにおいて,単調 に増加 してお らず, 著 しく向上す る時 と余 り変化 しない時 とが交互 に現れ,段 階的に変化 してい
る
。2)1920
年代か ら
1930年代 にか けて,東京 一大阪間,上野 ‑青森 間,札 幌館 間,札幌 一旭川間において表定速度の大 きな向上が見 られ る。一方,北海道内 の地方幹線
3区間の表定速度 は開業時の低 い水準
(30km/h〜40km/h)のま まで推移 した。
3)
対象 とした
7区間すべてにおいて,第二次世界大戦の混乱 によると思われ る表定速度の落ち込みが
1945( 昭和
20)年前後 に見 られ る
。4)
対象 と した
7区間すべてにおいて,
1950年代か ら
1960年代後半 にか けて
290
商 学 討 究 第45巻 第 2 号
表定速度が大 きく向上 し,その後
,1970年代 に向かいその向上が小 さ くな っ ている
。1970年代以降,表定速度が若干落 ち込む傾向を示 していることが見
られ,
1980年代後半より再び向上を始めている。
4. 5
鉄道 システム技術発展データベースシステムの構築
近年,歴史学など人文科学分野の研究において も,情報処理手法を用いた研 究が盛ん とな って きている。その中で も特 に積極的に取 り組 まれているもの に,データベースシステムの活用が挙げ られる. 特 に, 土木史研究においては, リレーショナルデータベ‑スシステムの活用が積極的に行われてお り,文献情 報検索 システムや土木史年表の作成,地図型データベースシステムの構築な
ど,研究を支援する情報 システムの充実が図 られている
9)。
しか しなが ら,歴史研究における分析,考察のために必要な諸データの形 は 文書,画像,数値,音声など様 々な形態を呈 している。 このため,それ らの諸 データには統一 されたフォーマ ッ トと呼べるものがな く,まさしく不定形な構 造 となっている。さらに,それ らのデータは,形態は異なっているが相互に関 連 しっっ事象を説明す るデータである。 このため,収集 されたデータ同士が有 機的に リンクされていなければ,歴史的な事象の分析,考察を行 う資料 として 十分活用 されず,そこか ら新 しい知見を得 ることも不可能 となる。
本研究では,表定速度の変化傾向の要因を把握す るために,鉄道 システム技 術発展 デ‑タベースの構築 した。そ して,そのデータベ ース構造 に
Hyper Text構造
10) ll)を採用することを試みた。実際においては,
Macintoshコン
ピュータ上で
HyperCard2.1Jを用い,データベースシステムを構築 し,運 用 した。
4. 6
表定速度の変化要因と鉄道 システム技術発展マ トリクスの作成
鉄道 システムの速度向上の要因 としては様 々な要因が あるが,その主要因
は,①施設,設備瑞の改良,( 診車両の改良,③運用の変更,法制度の改訂など
の三要因にまとめることができ,表定速度の向上 はそれぞれの要因が相互に影
計画学的視点 による社会基盤 システムの史的発展 モデルの構築
291響 し生 じるもの と考え られ る。そ こで鉄道 システム技術発展の傾向をよ り詳細 に考察す るために,表定速度 向上の主要因それぞれの変遷を文献 によ り調査 し,上述の
HyperTextの構造のデータベースに記録 した
Oなお,調査対象 と した文献 は,鎖道 院および繊道省の各年年報,各年統計, 日本国有鉄道百年 史,鉄道技術発達史 などである。
主要因の うち,施設,設備の改良 に関 しては,複線化, レールの垂量化,曲 線および勾配の改良の変遷を調査 した。また,車両の改良に関 しては,対象 と した線区において主力 として使用 された機関車 ・気動車の変遷 とブ レーキ装置 の変遷を調査 した。 さらに,列車運用の変更や鉄道 システムの整備 に対 して具 体的な指標を与えた もの と思われ る, 鉄道建設, 構造および運転 に関す る規則, 規程などの変遷について も調査を行 った。
なお,調査対象年 は,原則 として表定速度の変化 グラフにおいて表定速度の 変化が著 しい時期 とその前後の時期 としたが,資料が入手出来ない時にはその 前後の資料 によった。そ して, これ らの調査結果をデータベースに記録 し運用 す ることによって鉄道 システム技術発展 マ トリクス( 義 ‑
1‑ 2)を作成 した。
表の各項 目であるが, レール重量の変遷 については
,60kg,50kg,37kg,30 kg,30kg以下の
5種類に分 け,対象区間の軌道延長に占めるそれぞれの割合を 概算 した
。30kgレール は
1920年代 までの幹線用標準 レールであ り
,37kgレー ル は
1929( 昭和
4)年 に改正 された建設規程 において, 甲線,乙線 に採用す べ きレール として規定 された ものであった。また
50kgNレールは, 日本国有鉄 道構造規程 ( 莱)において
1級線
2級線 の標準 レール と して規定 された もので ある
12)。60kgレール は,近年
1級線,
2級線 における使用基準 として導入 さ れている。 また,曲線半径の変遷 は
,800m以上,
600m以上
800m未満
,400 m以上
600m未満,
400未満の
4段階 に分 け, それぞれが対象区間の曲線延長 に占める割合を概算 した。各段階は線路基本構造基準規程 における
1級線,
2級線,
3級線の各規程
13)で分 けた。 さ らに,勾配の変遷 は
1000分の
20 以上,
1000
分の
15以上
1000分の
20未満,
1000分の
10以上
1000分 の
15未満
,1000の
10未満の
4段 階に分 け,それぞれが対象区間の勾配延長 に 占める割合 を概算 し
292
商 学 討 究 第
45巻 第
2号
た。 これ らの段階分 けは線路基本構造基準規程 における
1級線,
2級線,
3級 線 の各規定
14)を もとに した。なお, レール重量 の変遷,曲線 の変遷,勾配 の 変遷の各調査 に用いた資料 は,年代 によ り統計の叙 り方 に差異があ ったため, 対象 とした区間のみの統計 とはな らない場合 もあ ったが,本研究で は変遷の傾 向を把握す ることを第一 とし,対象 とした区間外を含んだ場合,それを含めた ままで概算 した。
また,車両の うち蒸気機関車 については,各記録および年史等か ら対象 とし た線区,年代を代表す ると思われ る車両,または優等列車 に使われた とされて いる車両を取 り上 げた。蒸気機関車牽 引列車 は区間によって機関車が異な るも のであるが, ここで は対象 と した線区に対 して車両面 の投資が積極的に行われ たか ど うかの判断 とす るために,新 しく導入 された機関車を取 り上 げた。 しか し,よ り深 い考察のためには区間による機関車の違 い も重要 となるであろ う
。また,車両の性能向上 の指標 として蒸気機関車 については缶圧力 とシリンダの 直径および行程
15)を,気動車 につ いては機関出力を選定 した。
なお,札幌 一釧路問については,第二次世界大戦以前 において表定速度が大 きく変化 した時期 はないが,その間の鉄道 システム技術の変遷を確認 してお く 必要があるもの と考え, この間においては,札幌 一函館間 と同 じ区切 りで調査
を行 った。
( 1) 札幌 一函館間の表定速度 の変化 と鉄道 システム技術の発展
①
1907( 明治
40)年か ら
1919( 大正
8)年
札幌 一函館間の路線の うち小樽 一函館間は当初私鉄 として建設 され,また 日 露戦争 における軍事輸送のため速成が図 られた。 このため国有化後 「 線路諸般
ノ施設不備 ノ鮎砂 ナカラス然ルニ同線路ハ本道幹線鉄道の咽喉ニ シテ ・・之 レ
カ根本的大改良二着手
」16)す ることとな った。 この とき取組 まれた改良工事 は
停車場構内の拡張
(11ヶ所) ,停車場の増設 (
3ヶ所) ,勾配 の緩和,曲線改良
のため一部区間の路線変更,橋梁の強度増強などである。 また, この区間は山
岳地帯 を横断す ることか ら急勾配,級 曲線が続 き
,「 之 ヲ除去 シテ線路 ノ大改
良 ヲ行‑ ン トスルモ多大 ノ費用 ヲ要 シ施工困難
」17)であることよ り,当時 とし
293
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計 画 学 的 視 点 に よ る 社 会 基 盤 シ ス テ ム の 史 的 発 展 モ デ ル の 構 築
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