未確定事項 に直面 した監査人の対応
坂 柳 明
1. 未確 定 事 項 問 題 の 全 貌 解 明 に向 け て
監査 論上 の未確 定事項 は, 2つ の タイプに分 け られ る ([図
1
])
。 この こ と を坂柳( 2005 a)
で提 唱 し,坂柳( 2005b)で は,両 タイ プの未確 定事 項 の一
般構 造 を記述 した。 そ して,坂柳( 2006a)で は タイプAの未確 定事 項 に直面
した監査 人の対 応 を整備 し,坂柳( 2006 b)で は タイプB
の未確 定事項 に直面 した監査 人の対応 を整備 した。 この作業 と並行 して,特 に これ まで気づ かれて い なか った タイ プBの未確 定事 項 の事例 を,坂柳 ( 2005 a)
,坂柳( 2005b)
, 坂柳( 2006b)
,坂柳( 2007
C)
,坂柳( 2008a)
,坂柳( 2008b)
にお い て,適宜[図
1]‑2
つの未確定事項未確定事項 (※) タイプA 将来に発生する事象の結果が経営者に見積 もれず, 監査人 も経営者のその判断に同意 している場合のそ の項 El
タイプB は見積 もっているが,その見積 も り額が正 しいか ど将来に発生す る事象の結果 を財務諸表上で経営者
※ :もちろん,将来に発生す る事象の結果が将来 (の財務諸表) に金額的に重要な 影響 を与 えるものを前提 に してお り,当期の財務諸表についての監査人の対応 を決定する上で も,その金額的重要性ゆえに問題になるものを前提 にしている。
また,「項 目」 という用語で,(1):経営者及び監査人が実際に直面する様々な状 況その ものを指す場合 と
,( 2)
:そ うした状況下で,財務諸表監査上問題 になる 特定の項 目を指す場合がある。〔
3
1〕32
商 学 討 究 第59巻 第2 ・3号 紹介 して きた。未確定事項 に直面 した監査人の対応 を整備する一方で,筆者の未確定事項 プ ロジェク トにおいては,文献や制度が評価 されて きた。将来の監査制度 を整備 する上で,どの文献や制度 をどの程度信頼 してよいのかを見極めるためである。
こうした未確定事項の文献 ・制度の評価 に特化 したのは,坂柳
( 2 0 0 6
C)
,坂柳( 2 0 0 7 a )
,坂柳( 2 0 0 7 b )
であった。詳 しくは, この3
つの文献 を参照 して頂 きたいが,評価の対象 となった文献 ・制度は限 られていた。そ こで本稿 は, これまで よ りも網羅的に文献や制度 を評価す る。それによっ て, これ までの未確定事項についての先行研究 と,筆者の未確定事項 プロジェ ク トの違いが明 らかにな り,筆者の議論だけでな く,監査論上の 「未確定事項 問題」が, よ り鮮明に読者 に見 えて くるであろう。
本稿で分析対象 にす る制度は,アメリカの監査基準書 (以下
,「 S AS
」とす る) 第7 9
号,国際監査基準第7 0 1
号,そ してS AS
第2
号の前 に公表 された公開草案( AI CPA ( 1 9 7 3 )
)である。後述す るように,(1):SAS
第7 9
号 については, 経営者の主張 としての見積 もりの合理性 を支持する十分 な証拠資料が監査人に 入手で きない状況では監査範囲の制限がある旨の解釈が成立す るが,そ うした 解釈 は,果た して妥当だろうか。 また,( 2 ):
現行国際監査基準上の未確定事項 関係の規定では, 2
つの タイプの未確定事項が識別 されているだろうか。そ し て最後 に,( 3 ): AI CPA ( 1 9 7 3 )
では,公開草案 を公表 した監査基準執行委員 会 と監査人 との間で,未確定事項に直面 した場合の意見差控 を排除す るか どう かについて対立が見 られたが,その対立 において,「未確定事項」の概念は共 有 されていただろうか。以上3点 に注 目して,本稿では未確定事項関係の制度 を評価す る。 この分析 は, 2節で行われる。
3
節 は,文献評価である。未確定事項 に言及 した文献 は多いので,本稿 では アメリカの単行本 に焦点 を当てる。その際,読者の理解のために,そ して分析 を効率的に進めるために,本稿では,文献 を(丑 :タイプAの未確定事項のみに 言及 している文献,(彰 :タイプBの未確定事項のみに言及 している文献,そ し未確定事項に直面 した監査人の対応
33
て,③ :どち らの未確定事項 に言及 しているのかが不明な文献に分類 し,それ ぞれについて評価 を行 う。先行研究やこれ までの拙稿 と比べて,未確定事項 に ついての文献 を多 く示す ことによって,未確定事項 について何が問題 になって いたかが,読者 により明確 に伝 わるであろう。4
節では,本稿の まとめを行い,残 された課題 を示す。本稿 によって,未確 定事項 に直面 した監査人の対応 を規定す る理論 フレームワークを用いて,様 々 な時代の文献 ・制度 を評価 で きることが示 される。2.
制度の評価2 ‑ 1 SAS第7 9
号の評価まず,最初 に制度の評価 を行 うが,既 に坂柳
( 2 0 05 a, 1 6 3 ‑1 7 2 )では,SAS
第2
号( AI CPA ( 1 9 7 4)
) とSAS第5 8
号( AI CPA ( 1 9 88 )
)が, タイプAの 未確定事項 に言及 していることを指摘 した。そこでは, タイプB
の未確定事項 は想定 されてなかった し,想定 されないで よい理由は示 されていなかった。他方,アメ リカの
SAS第79
号( AI CPA ( 1 99 5 )
) は, タイプAの未確定事 項 に直面 した監査人が監査報告書 に付す 「説明区分」の規定1)を含めた,SAS 第58
号の16
項か ら3 3
項 を削除 した上で( SAS第79
号, 2項 を参照), 4
項 にお いて次の ように記 している ([図2 ])2)
。 このSAS第7 9
号 の4
項 は,新 しいSAS第5 8
号 を作 るために,19 8 8
年 に公表 されたSAS第5 8
号 に新 しい項 (パ ラグラフ) を加 えるための規定である。
まず,問題 になるのは, SAS第7
9
号が タイプAとBの どち らの未確定事項 を想定 しているかであるが,この点は,新 しくSAS第58号 に加 え られた [図2]
の29項 を見 ただけではわか らない。他方, [図
2
]の31項の記述 については ど うだろうか。1)SAS
第5 8
号23 ‑2 6
項及びこれらの規定を紹介 した坂柳( 2 0 0 5 a, 1 6 9 ‑1 7 1 )
を参照。2)
[図2
]の31
項 と同様の記述 は,AICPA ( 1 9 8 5 ) , 7‑ 8
項や,Kigerand
Sc he i ne r( 1 9 9 7, 9 7 ‑ 9 8 )にも見 られる。
34
商 学 討 究 第59巻 第2 ・3号 [E g 1 2]
「新 しい
2 9
項か ら3 2
項が,以下のように( S AS
第5 8
号に一筆者注)加えられる。2 9 .
不確実性 と監査範囲の制限 不確実性 を伴 う事項は,将来の 日に解決される ことが期待 されるものであ り,その時点でその結果に関する決定的な証拠資料 が,入手できるようになることが期待 されるであろう。不確実性は,財務会計 基準審議会( FAS B)
の財務会計基準書第5
号の 「偶発事象の会計」によって 扱われている偶発事象,及び立場表明者9 4 ‑ 6
の 「一定の重大なリスク及び不確 実性の開示」によって扱われている見積 もりに関する事項 を含むが,それ らに は限定されない。3
1. もし監査人が,不確実性を伴 う事項の性質,及び財務諸表上のその表示又は 開示についての経営者の主張を支持するための十分な証拠資料 を入手すること がで きなければ,監査人は,監査範囲の制限を理由 として限定意見を表明す る,あるいは意見 を差控 える必要を検討すべ きである。ある不確実性に関係す る十分な証拠資料が存在 している,あるいは存在 していたが,経営者の記録保 持の方針,あるいは経営者によって課 された制限のような理由によって,監査 人が入手できなかったならば,監査範囲の制限を理由とした限定意見又は意見 差控が適切である。」 (傍線筆者)3 1
項 で は, 「不確 実性 を伴 う事項 の性 質,及 び財務 諸表上 のその表示又 は開 示 につ いての経営 者 の主張」 が 問題 になってい るが, 同 じくSAS
第7 9
号,4
項 には,次 の ように記 されてお り ([図
3
]),経営者 に とっては, 「財務諸表 に 与 える将来事象 の影響」 を見積 もる とい う決定 と,それ を見積 もれ ない とい う 決定が問題 になってい るこ とが わか る。そ うす る と,SAS
第7 9
号 の4
項 に よっ て,SAS
第5 8
号 に加 え られ た新 しい3 0
項 ([図3]
) と,3 1
項 ([図2 ] )
の 関 係 か ら見 て,[図2
] に見 られ る 「経営者 の主張」 には,[図3
] で想定 されて い る ような, 「財務諸表 に与 える将来事象 の影響」 につ いて,「経営者 に よって 決定 された見積 も り」 が含 まれ る ことになる。未確定事項に直面 した監査人の対応 [
E g 1 3]
35
「新 しい29項か ら32項が,以下のように加 えられるo
3 0 .不確実性の最終的な結果に関する決定的な証拠資料は,その結果及び関連す
る証拠資料の入手が将来に見込まれるので,監査の時点で存在すると期待する ことはできないoこれ らの状況では,経営者には,財務諸表に与える将来事象 の影響 を見積 もる,あるいは,合理的な見積 もりがで きないと決定 して,要求 される開示を行 う責任があ り,これらは全て,現在の状況についての経営者の 分析 に基づいて,一般に認め られた会計原則 に準拠 して行われるO ‑」 (傍線次 に
,SAS
第7 9
号 に よってSAS
第5 8
号 に加 え られた31
項 に よる と,そ こで 問題 になってい る 「経営者 の主張 を支持 す るための十分 な証拠 資料 を入手す る こ と」 がで きない場 合 には,監査 人 は, 「監査範 囲の制 限 を理 由 と して限定意 見 を表 明す る,あ るいは意見 を差控 える必要 を検討すべ き」 とされてい る。 こ こでの 「監査 範 囲の制 限」 を生 じさせ る原 因 と して, [図2
] で考 え られて い るの は, 「経営者 の記録保 持 の方針 ,あ るい は経営者 に よって課 された制 限」であ る。 この ような,監査 の実施 にあた って監査 人が直面す る監査 人 に とって の異常事 態 に よって, 「経営 者 の財務 諸表 が
GAAP
(あ るいは会計基準) に照 らして正 しいか どうか を判 断す るための証拠 が監査 人 に得 られない」状況 (坂 柳( 2005 a, 1 64)の脚注 4を参 照) が考 え られ る。本稿 を始 め,筆者 の未確 定
事項 プ ロジ ェク ト ([引用 文献] 中の拙稿 を参 照) で は, この状 況 を 「監査範 囲の制 限」 と捉 えてい るので, ここでの 「経営者 の記録保持 の方針 ,あ るい は 経営者 に よって課 された制 限」は,[図2
]中の 「監査範 囲の制 限」だけで な く, 本稿 を含 め た筆者 の未確 定事項 プロジェク トで考 え られてい る 「監査範 囲の制 限」,及 び後 に示 す [図4](1)〜(2)の記述 に見 られ る 「監査 範 囲の制 限」 を生じさせ る原 因 に もなる ことが わか る。
以上 を踏 まえる と, [図
2
] に見 られ る 「経営者 の主張」 と して,「財務諸表 に与 える将来事象 の影響 の見積 も り」 を考 えた場合 , [図2] は,「経営者 の見36
商 学 討 究 第59巻 第2 ・3号積 も りを支持す るための十分 な証拠 資料 を入手す る ことがで きない場合 には, 監査 人 は,監査範 囲の制 限 を理 由 と して限定意見 を表 明す る,あ るいは意見差 控 を出す必要 を検 討すべ き」 旨の主張 (※) を含 んでい るこ とになる。 ここで の 「支持 す る」 が,何 を支持 す るのかが 問題 に なるが,財務 諸表 の
GAAP準
拠性 の監査 を問題 にす る以上, 「支持」 の対象 と して, 「見積 も りの合理性 」 は 当然含 まれ る。そ うす る と,上記 ※の主張 につ いては,十分 な証拠 資料 を入手す る こ とがで きないため に,経営者 の見積 も りの合理性 を監査 人が確 かめ られ ない状 況で は, 監査範 囲の制 限が あ る, との解釈 が成立す る こ とになる
3)
。 こう した基準書 の 解釈 に よる と, タイプB
の未確 定事項 は排 除 され る こ とになる4)
。他 に,経営3)
「監査範囲の制限以外の理由」によって,経営者の見積 もりの合理性 を監査人が 確かめ られない状況 一 端的には, タイプBの未確定事項 ‑ をSAS 第 79
号が想 定 していると言 うのであれば,タイプBの未確定事項をタイプAの未確定事項 と 共に明示する方が,監査人を始め,基準書の読者の混乱 を招かない点では有益で あろう。SAS 第 7 9
号4
項によって新たにSAS 第 5 8
号に加 えられた30項には,以下のよ うに記 されているが,そこでの 「経営者の主張を支持 している証拠資料が十分で はないという結論 を必ず しも導かない」 との記述か ら,「‑十分ではない という 結論 を導 くこともある」 との主張を読み取 って,[図2
]にあるような監査範囲 の制限がな くても,監査人が 「経営者の主張を支持 している証拠資料が十分では ない」 との結論に至る状況 として,タイプBの未確定事項を考える論者がいるか もしれないが,[図2
]あるいはSAS 第 7 9
号全体か ら判断 して,タイプBの未確 定事項は,SAS第 7 9
号が明示的に想定 した状況ではない。「‑不確実性の結果に関係する情報の存在がないことは,経営者の主張を支持 している証拠資料が十分ではないという結論を必ず しも導かない。む しろ,証拠 資料の十分性 に関する監査人の判断は,入手で きる,あるいは入手で きるはずの 証拠資料に基づいている。‑」 (傍線筆者)
4
)このような本文中の理解に対 して,「[図2
]は, タイプBの未確定事項のことも 含めて 「監査範囲の制限」 と捉えている」 旨の主張がなされるか もしれない。 し か し,なぜ タイプBの未確定事項を監査範囲の制限の中に含めることがで きるの だろうか。 [図2
]に示 されているような監査範囲の制限がな くて も, タイプB
の未確定事項は概念 として成立する。 また,上記のような主張を行 う論者が,タ イプB
の未確定事項が概念 として成立することを認めているのであれば,あえて タイプBの未確定事項を監査範圃の制限に含めずに,タイプBの未確定事項を独 立に捉 えればよい し,認めていないのであれば,それはなぜなのかについて,筆 者及び筆者の議論の賛同者か ら問われるであろう。未確定事項 に直面 した監査人の対応
37
者 の見積 も りの評価 を行 えない状 況 で は,監査 範 囲の制 限が あ る旨 を示 した文 献 に, Andr e wsetal .( 1 988, 582)
とSt r a ws e randSt r a ws e r ( 2001, 1 7 ‑1 7 )
が あ る ([図 4](1)〜(2))0 [図 4](1)の 「評価 」 の対象 と して, 「見積 も りの合 理性 」 は, 当然 問題 に な り得 る。[図
4]
(1):「不確実性
財務諸表 を作成する際に,経営者 は将来事象 についての見積 もりを行 う。例 え ば,経営者は,受取債権の回収可能性,償却性資産の耐用年数及び残存価額,等々 についての見積 もりを行 う。通常,監査人は経営者の見積 もりを評価で きる。 し か しなが ら,い くつかの場合 には,監査人が経営者の見積 もりを評価するための 十分で適格 な証拠が入手で きないか もしれない。 これ らの場合には,監査範囲の 制限があ り,監査人は限定意見か意見差控 を出す ことを検討すべ きである。‑」
( Andr e wse ta
l.( 1 9 8 8,5 82 ) )
(傍線筆者)( 2 日
「改訂 された指針( SAS 第 7 9
号 の こと‑筆者注)の説明は,財務諸表が一 般に認め られた会計原則 に準拠 して表示 されるように,クライアン トが不確実 性 を開示することを要求 されているので,これ らの同 じ項 目を,監査人が彼又 は彼女の報告書で開示す ることは,余計なことである, というものである。不確実性が監査意見に与 えるその他の潜在的な影響 は,以下の ように要約 さ れる。
・もし,不確実性 についての経営者の主張 を支持するための十分 な証拠 を,監査 人が入手することがで きなければ,監査範囲の制限が存在 している。‑
もし,その不確実性が,財務諸表の適正性 についての意見 を形成することが監 査人にで きないほ ど金額が大 きい ものであれば,意見差控が出されるか もしれ
ない。
」( St r a ws e ra ndSt r a ws e r( 2 0 01 ,1 7 ‑1 7 ) )
(傍線筆者)しか し, [図
2
] や [図4]
(1) 〜 ( 2)
か ら導 か れ る よ うな,経営 者 の見積 も り の合 理性 を監査 人が確 かめ られ ない状 況 で は,監査 範 囲 の制 限が あ る 旨の解釈 に は,説得 力 が あ るだ ろ うか。 詳細 は, [引用 文献] 中 の拙 稿 を参 照 して頂 き たいが ,筆 者 が これ まで紹 介 して きた事 例 に は, [図2
] に見 られ た 「経 営 者 の記録保持 の方針 , あ るい は経営 者 に よって課 され た制 限」 の よ うな,監査 範38
商 学 討 究 第59巻 第2 ・3号因の制 限 を もた らす原 因 についての記述 はなか った し,文献上 で もそ うであ っ た。 また,本稿 の
3
節 で示すWhi t t i ngt o na ndPa ny ( 1 9 9 8, 6 8 9 )
(及 び これ と 同内容 の記述 が見 られ る文献) で もそ うであ る。経営者 の見積 も りの合理性 が 確 かめ られ ない状 況で は,監査範 囲の制 限が あ る旨を主張す る論者 は, これ ま で筆者が示 して きた文献 や事例 に記述 されてい る状 況で,全 て監査範 囲の制 限 が あった こ とを論証す る必要が あ るだろ う。また, [図 2] につ いて も, [図 4](1)〜(2)につ いて も,監査範 囲の制 限が な けれ ば
,SAS
第7 9
号4
項 に よって新 た にSAS
第5 8
号 に加 え られた3 0
項 (脚注3
を参照) にあ る ように,「証拠 資料 の十分性 に関す る監査 人の判 断」 が,「入 手 で きる,あ るいは入手 で きるはず の証拠 資料 に基づ いて」行 われ,その結果, 経営者 の見積 も りの合理性 を監査 人 は判 断で きるこ とになる, と主張す る論者 が い るか も しれない。 しか し,そ もそ もこの主張 自体が 自明で はない。 問題 に なっている状況 において,特 に監査範 囲の制 限が な くて も,十分 な経験 が ない こ とを理 由 と して,将来 に どの ような事象 が発 生す るのか を評価 す るの に十分 な情報が なければ,経営者 が仮 に1
つの見積 も り数値 を決定 した と して も,監 査 人が複数 の見積 も り数値 に直面す るこ とはあ り得 る。 その ような状 況であれ ば,監査 人が直面す る見積 も り数値 (el) と経営者 の決定 した見積 も り数値 が 一致 していた ら,監査 人 は経営者 の見積 も り数値 を除外事項 にで きない はず で あ る。 また,その場合 には,経営者 の見積 も り数値 と,監査 人が直面 してい る 他 の見積 も り数値 (e2)が一致 してい ないのだか ら,その意味 で は経営者 の見 積 も りが不合理 とい うことになる。 この よ うな,監査 人 に とって経営者 の見積 も りが 「合理 であ る とも言 える し,合理 的で ない とも言 える」場合 こそ,経営 者 の見積 も りの合理性 を監査 人が判 断で きない状況 だ と考 え られ, この状況 と 整合 的 なのが,これ までの未確 定事項 プロジェク トで筆者が示 して きた文献 (及 び本稿 で示 す文献) な り事例 であ る。以上 よ り, [図
2
] や [図4
] か ら導 か れ る よ うな,経営 者 の見積 も りの合 理性 を監査 人が確 かめ られ ない状 況で は,監査 範 囲の制 限が あ る旨の解釈 は, 誤 りであ る こ とが わか る。未確定事項に直面 した監査人の対応
39 2‑ 2
国際監査基準 の評価続 いて,国際監査基準 (以下
,「 I S A
」 とす る)を評価 す る。I S A
第7 01
号 「独 立監査人の監査報告書 の修正」の9
項( I FAC( 2008, 5 82
))
と7
項( I FAC( 2008
,5 82)
) には,それぞれ次の ように記 されてい る ([図5]( 1 ) 〜( 2) )
。[図
5]
(1): 「ゴーイング ・コンサー ン問題,あるいは重大な不確実性 を強調するための 区分を加 えることは,通常,そのような事項に関する監査人の報告責任 を果た すのに十分である。 しか しなが ら,財務諸表に対 して重大である,複合的な不 確実性 を伴 う状況のような極端な場合には,監査人は,事項の強調区分を加え る代わ りに,意見差控 を表明することが適切だと考えるか もしれない。」 (傍線 筆者)
( 2):
「もし,その帰結が,財務諸表に影響 を与えるか もしれない将来の事象に依 存 しているような, (ゴーイング ・コンサーン問題以外の)重大な不確実性が あれば,監査人は,区分を加えることによって,監査報告書を修正することを 検討すべ きである。不確実性は,その結果が,その事業体の直接の統制下には ないが,財務諸表には影響 を与 えるか もしれない ような,将来になされるこ と,あるいは将来の事象 に依存する事項である。」 (傍線筆者)さて, [図
5]
(1)の 「複合 的 な不確 実性 を伴 う状 況」 は, タイプA
の未確 定 事項 であ ろ うか。 それ とも, タイプB
の未確 定事 項 であ ろ うか。 [図5]( 1 )
の 記述か らは判 断で きない。 この ような, どち らの タイプの未確定事項 を想定 し てい るかが判 断で きない記述が あ るこ とは, 日本 の現行監査基準 の 「第四 報 告基準 五 監査 範 囲の制約4
」 の規定5)
と同様 であ り, タイプA
の未確定 事項 とタイプB
の未確定事項が混在 してい る ことが わか る。 タイプA
の未確 定 事項 に直面 した監査 人の対応 につ いて は坂柳( 2006a, 1 55 ‑1 79)
を, そ して タ イプB
の未確 定事項 に直面 した監査人の対応 につ いて は坂柳( 2006b, 1 57 ‑1 75 )
をそれぞれ参照頂 きたいが,[図5]
(1)の 「複合 的 な不確 実性 を伴 う状 況」が,5
)この規定については,坂柳( 2 0 0 6b, 1 67 )
の [図1 6
]を参照頂 きたい。40
商 学 討 究 第5 9
巻 第2・3
号タイプAの未確定事項 を想定 しているな ら,監査人の対応 として 「意見差控」
が選択 される余地 を示 している [図
5]( 1 )
の記述 は誤 りであるが,この 「複合 的な不確実性 を伴 う状況」が タイプB
の未確定事項 を想定 しているな ら, この[図
5
](1)の記述 は正 しいことがわかる。他 方, [図5] (1)も [図5] (2)ち, 「監 査 意 見 に影 響 を与 え な い事 項」
( I FAC ( 2008, 5 81 )
に関す る規定であ るが, [図5
](1)で は,監査 人 に意見 差控 を選択する余地があ り,その意味では 「複合的な不確実性 を伴 う状況」が「監査意見 に影響 を与 え」てはいる。 しか し
,I SA
第701
号7
項 ([図5]( 2) )
の規定では,監査人が意見差控 を選択す る余地 はない。そ うす ると, [図5]
( 2)
に関 しては,監査上の除外事項が一切 な く,「不確実性」の開示の十分性が 確かめ られたことを含めて,無限定適正意見が表明される状況においては,[図 5](2)にあるような 「不確実性」があって も,その 「不確実性」 は,その無限 定適正意見 には影響 を与 えないことになる。ここで, [図
5]( 2)
の 「不確実性」が, タイプB
の未確定事項 に言及 してい ると考 えると,経営者の見積 もりの合理性が確かめ られないことによって,監 査人は無限定適正意見 を表明で きな くなるので,ここでの 「不確実性」 は,無 限定適正意見 とい う 「監査意見 に影響 を与 え」る事項 になって しまう0[図5 ]
(1),つ ま り
,I SA
第701
号9
項ではな く, [図5]( 2)
,つ ま り,I SA
第701
号7
項 を理解す る上では,そこでの 「不確実性」が タイプBの未確定事項 を想定 し ている, と考 えることはで きないことがわかる。逆 に, この 「不確実性」が タ イプAの未確定事項 を想定 していると考 えると,除外事項がない状況で, さら にタイプAの未確定事項 に直面 して も,監査人は無限定適正意見 を表明す るこ とになる (坂柳( 2 006a. 1 55 ‑1 79))ので,この 「
不確実性」 を 「監査意見に影 響 を与 えない事項」 と捉 えることは,制度上の規定 においてだけでな く,理論 的に考 えて も正 しいことがわかる6)
。他方, [図5](2)は,「不確実性」がある6
)詳 しくは,実際に参照頂 きたいが,ISA 第 7
01号8
項の 「監査報告書上の重大な 不確実性のための事項の強調区分の例示」は,タイプAの未確定事項を示 したも の,と理解することになる。未確定事項 に直面 した監査人の対応
41
場 合 に, 「区分」 を監査 報 告 書 に加 え る こ とを監査 人 に求 め て い るが , タイ プ Aの未確 定事項 に直面 した監査 人 の対応 と して, こ う した 「区分」 を加 え る こ とを論 理 的 に導 くこ とはで きないの で,理 論 的 には,[図5](2)に示 され て い る監査 人の対1芯につ いての規 定 には問題 が あ る。2‑ 3 AI CPA ( 1 973)の評価
坂柳
( 2005 a,1 63 ‑1 69 )
で は,1 97 4
年 に公表 され たSAS
第2
号( AI CPA( 1 97 4))
が タイ プA
の未確 定 事 項 に言 及 して い る こ とを示 した。 他 方,SAS
第2
号 が 公 表 され る前 の 「公 開草 案 提 案 され た監 査 基 準 書 :監 査 報 告 書」 ( AI CPA
( 1 973
))
で は,監 査 人 の対 応 と して,未確 定事 項 に直 面 した監 査 人 に よる意 見差控 を認 め るか どうか につ い て,議論 が あ った こ とが わか る ([図6
])0[図
6]
4 2
商 学 討 究 第59巻 第2 ・3号この公 開草 案 で は, 「意見差控 の使用 は,監査 人 の監査 の範 囲の制 限 を伴 う 状況 に限 られ る」 こ とが示 されてお り,公 開草案の45項 では次 の ように記 され て い る ([図 7])。他 方, この公 開草 案 の 「未確 定事 項」 は,監査 上 の除外 事 項 には言及 してい ない公 開草案 の21項 ([図
8]
) にあ る ような 「タイプAの未
確 定事項」 なので,その場合 の監査 人の対応 が意見差控 にな らない 旨を規定 し た この公 開草案 は,理論 的 には正 しか った こ とが わか る。[Eg17]
「財務諸表又は財務諸表に要求される開示に影響 を与える可能性のあるい くつ かの事項の結果が合理的に見積 もれないことがあるが,そのような事項が本基準
公 開草案 で想 定 したのが タイプAの未確 定事項 であれ ば,監査人の対応 と し て意見差控 が導 けないの は,筆者及 び筆者 の議論 を支持 す る論者 に とっては 自 然 な ことであ るが, [図
6
] に見 られ る ような 「何 人かの監査 人」 は, 「監査 範 囲の制約が あ る場合」 の 「意見差控」 との関係 で, 「不確 実性 が あ る場合 の意 見差控 の使用 を排 除す るの は,非論理的であ る」 としてい る。公 開草案が想定未確定事項に直面 した監査人の対応
43
しているのはタイプAの未確定事項であ り, タイプAの未確定事項 を想定す る 限 り, この「何人かの監査人」の主張 は成立 しないのだが, ここでの 「何人かの 監査人」が, タイプB
の未確定事項 を想定 していた とした らどうだろうか。[図
6
]の,監査人が 「存在す る,あるいは存在すると期待 されるであろう 証拠 を検証することを妨げ られる」場合 は,本稿 を含めた筆者の未確定事項 プ ロジェク トの 「監査範囲の制限」 によって想定 されている状況である。 この よ うな監査範囲の制限がある場合で も, タイプB
の未確定事項 に直面 している場 合で も,監査人は,経営者の主張の適否 (一般 に認め られた会計原則 (あるい は会計基準)に準拠 しているか どうか)を確かめ られないのであるか ら,[図6]
の 「何人かの監査人」が タイプ
B
の未確定事項 を想定 していた とした ら,監査 範囲の制限がある場合 の意見差控 を規定 している一方で,「不確実性がある場 合 の意見差控の使用 を排 除す る」のは,確かに 「非論理的である」。その限 り では, [図6
]の 「何 人かの監査人」の主張は,正 しいことになる。[図
6
]の 「委員会」 は,「不確実性 か ら生 じている意見差控」 と 「監査の 範囲の制約か ら生 じている意見差控」 を区別 した上で,意見差控 を監査範囲の 制限によるものに限定 した。 タイプA
の未確定事項 を想定 している限 り, この 限定は正 しいのだが, ここでの 「委員会」 は, タイプBの未確定事項は明示的 に想定で きなかったのだろうか。想定で きない理由が何かあったのだろうか。タイプ
A
の未確定事項 と同時に, タイプB
の未確定事項が想定 され, さらに両 タイプの未確定事項の内容が共有 されていれば,意見差控の排除が 「非論理的」である旨の 「何人かの監査人」の主張 も,なされなかった可能性がある。
他方,AI
CPA ( 1 9 7 3 )
には,未確定事項 に直面 した場合の意見差控 について, 次の ようにも記 されている ([図9]
)0まず, [図 9]の 「存在す る,あるいは存在す るはずの証拠の検証 を監査人 が妨げ られている場合」であるが, これは,本稿 を含めた筆者の未確定事項 プ ロジェク トの 「監査範囲の制限」で想定 されている状況である。監査範囲の制 限によって,経営者の主張の適否 を監査人が判断で きない事態が生 じるが,[図 9]の 「彼 ら」 は,「存在す ると期待す ることがで きない証拠の検証 を監査人
44
商 学 討 究 第59巻 第2 ・3号 [E g 1 9]
が妨 げ られてい る場合」 も, 「有用 な意見 を形成 す る監査 人の能力 に与 える影 響 は同 じであ る」 と信 じてい るこ とが わか る。
ここでの 「影響」 としては, [図 9]で問題 にされているような,「意見差控 を監査人 に出 させ るこ とになる ような影響」 が考 え られ る。 そ うす る と, ここ での 「彼 ら」 は, [図 9] に見 られ る 「不確 実性」 が あ る場合 には,監査範 囲 の制 限が あ る場合 と同様 に,監査 人 には,意見差控 を出す余地があ る, と考 え てい るこ とになる。監査範 囲の制 限が あ る場合 の ように,経営者 の主張 の適否 を監査 人が確 かめ られ ない状況 としては, タイプBの未確 定事項が考 え られ る が, [図
9
] の 「不確 実性 が あ る場 合 の意見差控 を維持 す る こ とに賛成 す る監 査 人」 が想 定 していた, 「不確 実性 が極 度 の場 合」 とは, タイプAの未確 定事 項 であ ろ うか。それ とも,タイプB
の未確 定事項 であ ろ うか。この点が,[図9]
か らは不 明 なのであ る。
[図
9
] 中 の 「彼 ら」 (意 見 差 控 を維 持 す る こ とに賛 成 す る監 査 人) が,AI CPA ( 1 9 7 3 )
と同 じくタイプA
の未確 定事項 を想 定 した上 で,[図9
] に見 られ る主張 を行 っていた と した ら,筆者及 び筆者 の議論 の賛 同者 は, 「彼 ら」未確定事項に直面 した監査人の対応
45
の言 うことを理解 で きないが,「彼 ら」が タイプB
の未確定事項 を想定 してい た とした ら,監査人の対応 として意見差控が考 えられる旨を主張する 「彼 ら」の主張 は正 しい。AI
CPA ( 1 9 7 3 )
は, タイプAの未確定事項 を想定す る と同 時 に,「彼 ら」が想定 していたか もしれない タイプB
の未確定事項 を想定す る ことはで きなかったのだろうか。以上か らわかるように,SAS第
2
号が公表 される前のAI CPA ( 1 9 7 3 )に対
しては,AICPA ( 1 97 3 )を公表 した監査基準執行委員会 と監査人の間で,「
未 確定事項」概念が共有 されていたのか,とい う問題 を提起で きる。AICPA( 1 9 7 3 )
はタイプAの未確定事項 を想定 していたのだが,特 に想定 しないで よい理由が ないのであれば,議論が紛糾 しない ように, タイプAとBの未確定事項 を区別 して,それぞれに直面 した監査人の対応 を整備する必要があったであろう7)
。3.
文献 の評価3‑1
タイプA
の未確定事項の文献3
節では,タイプAの未確定事項の文献 を紹介する。既 に,坂柳( 2 0 05 a, 1 7 6 )
では, タイプAの未確定事項の文献 としてAr ensa ndLoebbc ke ( 1 97 6, 65 7 )
とAr ensandLoebbcke ( 1 9 8 8, 37 )
を挙 げているが, 3節では,他 の文献 を 挙 げる。まず, タイプAの未確定事項 について言及 している文献は,以下の通 りであ る。 なお
, 3‑1
の文献 において,「合理的な見積 もりがで きない項 目」 を指 しているところは,「未確定事項」 と訳 し,単 に 「将来に起 こる事象 の結果が 決定 されていない状態」 を指 しているところは,「不確実性」 と訳 している。7)AI CPA ( 1 9 7 3 )公表後,未確 定事項 に直面 した場合 の意見差控 につ いて
は,SAS 第 2
号で排除されずに,その25
項の脚注8
で維持された。この内容に ついては,坂柳( 2 0 0 6 a, 1 4 7 )の [
図10
]を参照頂 きたいが,監査人の対応 とし て用意する必要があるのは,理論的には,「タイプBの未確定事項に直面 した場 合の意見差控」であ り,SAS 第 2
号25
項の脚注8
に見 られるような 「タイプA の未確定事項に直面 した場合の意見差控」ではない。46
商 学 討 究 第59巻 第2 ・3号・willingham andCarmichael
( 1 9 7 5,3 8 5)
「未確定事項
財務諸表 を作成する際に,経営者 は将来事象の結果 を見積 もらなければな ら ない。例 えば,見積 もりは,償却性資産の耐用年数,受取債権の回収可能性, 棚卸資産項 目の実現可能額,そ して製品保証の債務の金額について行 われる。
その会社の歴史的な経験 を含めた様 々なタイプの証拠,及び将来事象の影響 を 見積 もる際のその証拠の関連性 を考慮す ることによって,監査人は通常,経営 者の見積 もりの適切 さについて満足することがで きる。 もし,監査人が経営者 の見積 もりに同意で きなければ,彼 は,一般に認め られた会計原則か らの乗雛 を理由として,限定意見 ない しは不適正意見 を表明すべ きである。
しか しなが ら,財務諸表あるいは関連する開示 に影響 を与 えるか もしれない い くつかの事項の結果は,合理的な見積 もりがで きない。その ような未確定事 項がある時には,財務諸表 を修正すべ きか どうか,そ して, もし修正すべ きな
らい くらで修正すべ きかを決定す ることがで きない。
‑
」 (傍線筆者)・Hermansoneta
l .( 1 97 6,44 7)
「不確実性 には,訴訟の結果,あるいは法人税の調整の結果の ような例が含 まれる。重要な不確実性がある時に,監査人は意見 を限定するか,意見 を差控 えるか を検討すべ きである。非常に重要 な不確実性 は,意見差控 につ なが るか もしれない。 よ り重要でない不確実性 は,限定意見 を生 じさせ るであろ う。」
この Hermansoneta
l .( 1 9 7 6, 4 4
7)は,SAS第2号の22項8)
を参照 している。既 に述べ た ように,SAS第
2
号で想定 されている未確定事項 は, タイプAの 未確定事項である。よって,Hermansonetal .( 1 9 7 6, 447 )の 「
不確実性」は,タイプ
A
の未確定事項のことを指 していると考 えられる。8)SAS第2号の22項については,坂柳 (2005a
, 1 6 4 )を参照。
未確定事項に直面 した監査人の対応
47
・Mei gsetal .( 1 9 7 7 ,6 92)
「クライアン トの事業 に影響 を与 えている大 きな未確定事項 もし, クライ アン トの財務諸表 に影響 を与 えている重要な事項の結果についての重大 な不確 実性が存在するな ら,監査人は,十分で適格 な証拠資料 を集めることがで きず, そ れ ゆ え,未 だ決 定 され て い ない不 確 実性 の結 果 の 「影 響 を受 け て い る
( S ubj e c tt o)
」意見 を通常出さなければならない。「未確定事項」とい う用語は, 単 にその結果 を見積 もることが難 しい事項 は含 まない。監査基準書第2
号でア メ リカ公認会計士協会 によって強調 されているように,‑その結果が合理的に見積 もれない とい うことがなければ,その事項 は‑莱 確定事項 とは考 えられない。
‥● 」
・TayI orandG] ez en ( 1 9 7 9,7 0 2‑ 7 0 3)
「‑監査人は,内国歳入庁が最近 クライア ン トの法人税 申告書 を調査 し,追 加 的な法人税が
2 0 0, 0 00
ドル不足 していることを主張 した。 クライア ン トの経 営者 は,主張 された不足額に異議 を主張するつ もりであると述べてお り,その 事項の適切 な脚注開示 は進んで行 うが,現時点では,主張 された不足額のため の負債 は記録 した くない( unwi l l i ngt or ec or d)
, と述べ ている。監査人は, 財務諸表 との関係で,2 0 0, 0 0 0
ドルが重要だ と考 えている。内国歳入庁の担 当 者の報告書 と不足額に対す る経営者の異議 を調べ直 した後に,監査人は,内国 歳入庁が正 しい と結論づけ,主張 された不足額が支持 されるであろう, と結論 づ ける。 ・=この場合 には
, 「 s ub j e c tt o
」の形の限定は,不適切であろう。法人税 につい ての追加的な負債が存在 していると結論づ けるための,そ して, この負債の記 録がなければ,財務諸表が一般 に認め られた会計原則 に準拠 して適正 に表示 さ れていない と結論づけるための十分 な情報が入手 されているのである。それゆ え, 「 e xc e ptf or
」の形の限定が要求 されるであろう。‑上記の例 において,内国歳入庁の担当者の報告書 と不足税額に対す る経営者
48
商 学 討 究 第59巻 第2 ・3号の異議 を調べ直 して も,その事項 の最終 的 な結果 につ いての不確 実性 が残 って い る ことを想定 しな さい。 この場合 には,監査人 は,合理 的 な見積 も りが で き ない未確 定事項 に直面 してい る。彼 には,財務 諸表が一般 に認 め られた会計原 別 に準 拠 して 適 正 に 表 示 さ れ て い る か ど うか が 不 確 か で あ る。 従 っ て,
「 s ubj e c tt
o」 の形 の意見が適切 であろ う。
」 (傍線筆者)・Kel landZi egl er( 1 9 80,62 2)
「未確 定事項
「未確 定事項」 とい う用語 は,財務諸表 の公表前 のあ らゆる財務諸表項 目又 は開示 につ いての,合 理的 な見積 も りがで きない結果 に当て は まる。未確 定事 項 と会計上 の見積 も りにつ いて は,後者が,財務諸表 を作成す る際 に, クライ ア ン トに よる合理 的 な決定が可 能である とい う点で,未確 定事項 は,会計上 の 見積 も りとは異 なる。未確 定事項 は,財務諸表 に与 える影響 が個別的 に把握 で き,かつ理解 で きる単一の事象 か ら,その財務諸表 に与 える潜在 的影響が複雑 で,かつ評価 す るのが困難 な複合 的 な事象 に まで及ぶ。
‑
」 (傍線筆者)この
Ke l landZi egl er ( 1 9 8 0, 6 2 2 )
には,その脚 注9
で,SAS第2
号22
項 を 参照 してい る旨の記述 が あ る。・Ri cchi u t e ( 1 98 2,48 0)
「未確 定事項
経営者 は,一般 に,い くつかの財務諸表項 目を決定す る際 に,将来の取 引や 事象 の見積 も りを取 り入 れ る。 これ らの見積 も りの 中には,償却性 資産の耐用 年数,受取債権 の回収可 能性 ,そ して製 品保証 に関わる負債 があ る。独 立監査 人 は,経営者 の見積 も りの合 理性 を しば しば確 かめ るこ とがで きるが, い くつ かの取引や事象 の潜在 的 な結果 は,合理 的 に見積 もるこ とがで きない。 その よ うな未確 定事 項 が存在 してい る時 には,監査 人 は, 限定 が付 された
「 s ubj ec t
t
o」の形 の意見 か意見差控 を出すか どうか を検討すべ きであ る。‑
」(傍線筆者)未確定事項に直面 した監査人の対応
49
・Th omasan dHenke ( 1 9 8 6 ,6 5 ‑ 6 6 )
「重要 な未確 定事項 に関係 してい る報告
‑ しか しなが ら, これ らの項 目は,通常見積 も りが可能であ り,様 々な タイ プの監査証拠 に よって支持 され る ことがで きる。 しか しなが ら, 1つ以上 の事 象 が生 じる,あ るいは生 じない時 に,その結果が将来 に依存 す るために,監査 報 告書 の 日付 時点 で 「合 理 的 に見積 もる こ とが で きないか も しれ ない」 よ う な,その他 の未確 定事項が あ る。意見の限定が必要 になるの は, これ らの タイ プの未確 定事項 であ る。 その よ うな未確定事項 の例 には,以下 の ものが含 まれ る。
・その影響 が, クライア ン トに よって もクライア ン トの弁護士 に よって も見 積 もれ ない,係争 中の訴訟や,提起 され る恐 れのあ る訴訟 の結果
・払 い戻 し,あ るいは不足 につ いて起 こ り得 る請求 に関係 している,未決定 の税務調査 の帰結
・繰延原価 の潜在 的 な回収可 能性
・財源の有無が わか らない役員及 び取締役 に対す る受取債権 の ような,あ る 種 の受取債権 の実現 の見込み
・その会社 が, ゴー イ ング ・コ ンサー ンとして存続す るこ とがで きないか も しれ ない可能性」9)(傍線筆者)
9
)本稿 を含めたこれまでの筆者の未確定事項プロジェク トにおける 「見積 もる」は,「将来に発生する事象の結果の概算値 を財務諸表に反映 させる」 という意味であ る。 このような 「見積 もる」は,「「その会社が,ゴーイング ・コンサー ンとして 存続することができないか もしれない可能性
」( Th o ma sa ndHe n ke( 1 9 8 6, 6 6 ) )
の見積 もりがで きない」に見 られる 「見積 もる」 とは,意味が異なってお り,級 述す る 「「ある会社 のゴーイ ング ・コンサー ンとしての存続能力
」( Ta yl o ra nd Gl e z e n ( 1 9 8 8, 7 6 3 )
)の見積 もりがで きない」 と言 う場合の 「見積 もる」 とも, 意味が異なっている。というのは,これ らの文献の 「見積 もる」は,「ある会社が通常の事業過程に おいて資産を実現 し,負債 を決済することを継続 して行えるか どうかを評価する こと」 を含意 していると考えられるか らである。従って,本稿が文献を評価する 場合で も,ゴーイング ・コンサー ンに関するこれ らの文献の記述の ような,「見 積 もり」の意味が異なっている箇所については,本稿は分析対象 にで きない。
50
商 学 討 究 第59巻 第2 ・3号・Andrewsetal.(1988,582)
「しか しなが ら, さらに他の場合 には,その不確実性 の結果に関す る十分 な 証拠資料が監査の時点で存在 しないので,財務諸表 に影響 を与 えるか もしれな い将来事象の結果 について,合理的な見積 もりが反映 (subjectto)で きない か もしれない。 これ らの未確定事項 については,財務諸表が修正 されるべ きか どうか,あるいは修正 されるべ きとした場合のその修正の金額 を決定すること がで きない。 これ らの場合 には,監査人は無限定の監査報告書 を出すか もしれ ないが,彼又 は彼女は,監査報告書上の意見区分の後 に続 く説明区分 を加 える か どうかを決定 しなければな らない。説明区分が監査報告書 に加 えられるか ど うかは,潜在的な損失の見込み と重要性 に依存する
。
」 (傍線筆者)・TayIorandG)ezen (1988,763)
「未確定事項
ここで使 われているような,「未確定事項」 とい う用語 は,い くつかの将来 の事象又 は発生,あるいは適切 な会計上の決定 を求めるクライア ン トの経営者 以外の主体の決定 に依存 し,合理的な見積 もりがで きない事項のことを指す。
例 としては,内国歳入庁の調査,規制 を行 う委員会の手続,そ して訴訟の結果 があ り, これ らは,資産価値の回収可能性の見積 もり,非継続事業についての 損失,そ して,ある会社の ゴーイ ング ・コンサー ンとしての存続能力 と同様で ある
。
」 (傍線筆者)・Hermansonetal.(1989,658)
「未確定事項
い くつかの場合 には,監査人は,ある事象がその事業体の財政状態,経営成 績,及びキ ャッシュ ・フローに与 える影響 を合理的に見積 もれない状況に遭遇 互旦 か もしれない。 これ らの状況は,「未確定事項」 と呼 ばれる。未確定事項 の例 には,その事業体の財務諸表に与 える訴訟あるいは法人税の評価額の潜在 的な影響が含 まれる。‑これ らの状況で監査人が直面 している
1
つの問題 は,未確定事項に直面 した監査人の対応
51
財務諸表が一般に認め られた会計原則 に準拠 して表示 されることを可能にす る のに必要な修正の金額が,即座 には決定で きないか もしれない, とい うことで ある。監査人の主たる関心 は, 1つ以上の未確定事項か ら生 じている潜在的な 損失の影響が,その事業体の財務諸表 に適切 に開示 されていることである。
」(傍 線筆者)・Meigsetal.(1989,65ト652)
「不確実性
もし,クライア ン トの財務諸表に影響 を与 えている重要 な偶発事象の結果 に ついて,重要な不確実性が存在 しているなら,監査人はその不確実性の存在 を 示すために,彼 らの監査報告書 に説明区分 を加 えるべ きである。‑監査人が, その偶発事象の重要性 と不利 な結果の見込みに基づいて,彼 らの無限定適正意 見 に説明区分 を加 えることを検討すべ きなのは,その偶発事象の 「合理的な見 積 もりが可能」ではない時である。重要 な損失の発生可能性 は高いが,経営者 が損失 を見積 もることがで きない時には,監査人は,彼 らの無限定適正意見の 報告書 に説明区分 を加 えるべ きである。損失がある程度見込 まれる時には,監 査人は,説明区分の必要 を 「検討すべ きである」。
‑
」 (傍線筆者)・Thomasetal.(1991,921‑922)
「重要な未確定事項 に関係 している報告
‑ しか しなが ら,これ らの項 目は見積 もりが可能なので,それ らは,様 々な タイプの 「存在 している監査証拠」によって支持 されることがで きる。他方で, 監査 を行 う日現在,「証拠が存在 しない」未確定事項 もある。これ らの事項は, 監査報告書の 日付現在,「合理的に見積 もることがで きないか もしれない」事 琴である。 なぜ な ら,その結果が,何かの事象の将来の発生 に依存 しているか らである。十分な証拠が入手可能になる将来に,解決す ることが期待 される事 項 は,「未確定事項」と呼ばれる。その ような事項 によって,報告書の 「修正」
が要求 される。