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時間名詞の特性 に関す る一考察 一格助詞 「に」との共起に注目して一

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(1)

時間名詞の特性 に関す る一考察

一格助詞 「に」との共起に注目して一

丹 保 健 ‑

A StudyoftheCharacteristicsofTi‑ eNouns:Focusingon theCo̲occurrencewith theCaseParticle''ni''

KenichiTAMBO

0.

は じめに

生起 ( 状況)を表す時間名詞が、格助詞 「に」 の接続 を許す場合 と許 さない場合 とがある。その際、

どのような時間名詞が格助詞 「に」の接続 を許 し、 どのような時間名詞がそれを許 さないのかにつ いて は既 にい くつかの考え方が示 されている。 しか し、必ず しも納得で きるもの とは言えない。

本稿では、「 相対時間名詞」 ( 今 日 ・きょう、明 日 ・あす、昨 日 ・きの う)の 「 現場指示性」 に着 目し、

「 今 日 (き ょう

)

」、「明 日 (あす) 」、「 昨 日 (きの う

)

」 な どの 「 相対時間名詞」 においては、 その語嚢特 性 としての 「 現場起点指示性」 ( 仮称) が格助詞 「に」 との共起 を妨 げている可能性 が高 いことを指摘

した。

1. 時 間名 詞 と用例 採 集 資 料 につ いて

1‑1

.時間名詞 について

本稿が扱 う時間名詞 は現代語 を対象 としている。現代語 は明治以降の使用言語 を指す。明治、大正期 の作品 には、 昭和 30 年代以 降のそれ とは異 な る使用例 も見 られ るようであるが、 その ことにつ いては 別の機会 に触 れ ることに したい。 あ くまで も現在使用 されている日本語 における時間名詞 の大 まかな特 性 を見 ることを 目的 としたい。厳密 に言えば、現在使用 されている言語、 昭和 30 年代以 降の言語 を中 心 に考えている

時間名詞 の定義 はいずれ行 うことに し、本稿では次 ( 表 1 ) のような名詞 を とりあえず時間名詞 の代 表的な もの としておきたい。

下記 に示 した時間名詞 は、 (1

)

『 分類語嚢表』 の 「時間

1.16

‑ 」 に分類 されている名詞で、 かつ、

『日本語教育 のための基本語嚢調査』の 「 基礎二千」 に含 まれている名詞、並 びに

(2)時点を表す

「 〜

時 (じ

)

「 〜 日 (にち

)

「 〜月 (げ

っ)

「 〜年 ( ねん) 」である。「 梅雨」 な どにつ いて も考えなければ な らないが本稿では扱わないことにす る

あいだ,間 あき,秩 あさ,朝

表 1.本稿で扱う時間名詞一覧

あさって,( 明後 日) いご,以後 あ した,(明 日) いぜん,以前

あ と,後 いつ,( 何時)

‑ 39‑

(2)

い っしょう,一生 いま,今

うち, 内

お ととい,( 一昨 日) おわ り,終わ り か こ,過去 か よう,火曜 かん,聞 きかい,機会 きかん,期間 きせつ,季節 きの う,《昨 日》

き ょう,《 今 日》

き ょねん,去年 きん,金 きんよう,金 曜 けさ,《 今朝》

げっ よう,月 曜 げん ざい,現在 げんだい,現代 ご,後

ごご,午後 ごぜん,午前 ことし,《 今年》

このあいだ , ×此の間 このごろ , ×此 の×頃 これか ら,

ころ , ×頃 こんげっ,今月 こん しゅう,今週 こん ど,今度 こんぽん,今晩 こんや,今夜 さいきん,最近 さいご,最後 さい しょ,最初 さいち ゅう,最 中 さき,先

さ くねん,昨年

丹 保 健 ‑

さっき,

さらいねん,再来年 じかん,時間 じだい,時代 しゅう,過 しゅうかん,週間 じゅん,脂 じゅん じょ,順序 しょうがつ,正月 しょうわ,昭和 しんねん,新年 す いよう,水曜 せ いねん,青年 ぜん,前 せんげっ,先月 せん しゅう,先週

ただいま,△唯今 ・×只今 たちば,立場

たび,皮

たん じょうび,誕生 日 ち ゅう, 中

つ いたち,《 一 日》 ・×朔 つ いで,△序で

つ き,月 つ ぎ,吹 つね,常

どうじ, 同時 とき,時

ところ,所 ・△処 とし,年 ・△歳 とち ゅう,途 中 どよう,土 曜 なか, 中 ・仲 なつ,塞 にちよう, 日曜 のち,後 ばあい,場合 は じめ,初 め ・始 め

はたち,《 二十》・《 二十歳》

はつか,《 二十 日》

はる,春 ぽん,晩 ひ, 日

ひさ しぶ り,久 し振 り ひづ け, 日付

ひま,暇 ・×隙 ひる,昼 ・△午 ひるま,昼間 ふだん,不断 ・普段 ふゆ,冬

まいあさ,毎朝 まい しゅう,毎週 まいつ き,毎月 まい とし,毎年 まいにち,毎 日 まいねん,毎年 まいぽん,毎晩 まえ,前 み らい,未来 むか し,昔 む こう, 向 こう む ち ゅう,夢 中 む っつ,六つ

もくよう,木曜 やすみ,休 み やま, 山 ゆ うかた,夕方 ゆ うべ,夕べ ・△夕 よなか,夜 中 よる,夜 らいげっ,来月 らい しゅう,来週 らいねん,来年

〜時 (じ)

〜 日 (にち)

〜月 ( つ き)

〜年 ( ねん)

(3)

本稿 は、格助詞 「に」 との共起 を妨 げている 「 相対時間名詞」の特性を明 らか にす ることを主 た る目 的 と して い る。 煩 雑 にな らな い よ う、 上 記 の うち、 相 対 時 間名 詞 の代 表 と して の 「今 日 (き ょ う

)

」、「 明 日 (あす) 」、「昨 日 (きの う

)

」、絶対時間名詞 の代表的な もの としての 「 〜月 (げっ) 」 「 〜 日 (にち

)

「 〜時 (じ

)

」、 そ して、 その中間的な時間名詞 としての 「 春 (はる) 」、「 夏 ( なつ) 」、 「 秋 (あ き

)

」、 「 冬 ( ふゆ) 」、 さ らに、指示性 ( その語 が他 の ものを指 していること) を持つ時間名詞 としての

「 翌 日

「 前 日

「 翌年

「 前年」 を主た る対象 としたい。 ( 荏 ; 「 毎 日

「 毎年」、「当時」、「 近年」や 「 今 日 (こん にち)

「明 日 ( み ょうにち)

「昨 日 (さ くじつ) 」 な どにつ いての本格的は考察 は別 の機会 に 譲 ることに したい。)

なお、次 のような 「時間名詞 +に」 の例 は、格助詞 「に」 が、 ( 主文 の)述語 によって示 されている 現象が起 こって いる時間を示 して いるとは言えない もので あ り、対象 としない。 ( 用例 はすべて

『CD‑

ROM

版 新潮文庫 の

100

冊』 による)

【昨 日に】かわ って、 【昨 日に】 もま して、 【昨 日に】引 きつづ き、 【昨 日に】比べて、

【 今 日に】 いた っている

【 今 日に】か ぎって、 【 今 日に】かけて、 【 今 日に】 な って、

【 今 日に】始 ま った事、 【 今 日に】至 った。 【明 日に】 しよう、

【明 日に】 のば して、 【明 日に】 ひかえた、 【明 日に】差 し支え るわ、

【明 日に】持 ち越すな と、

その他、 「 今 日/明 日+にで も」、 「 今 日/明 日+に も」、 「 今 日/明 日+には」 の ように、 「にで も」

「に も

「には」の形式 も対象 としない。

1‑2.

用例採集資料 につ いて

用例 は、『CD‑

ROM

版 新潮文庫 の

100

冊』 ( 翻訳小説及 び 「 新源氏物語」 は除 く。以下 「 新潮

100」

と略称す る。)

、 『CD‑ROM

版 新潮文庫明治 の文豪』 ( 以下 「 新潮明治」 と略称す る。)

、『CD‑ROM

版 新潮文庫大正 の文豪』 ( 以下 「 新潮大正」 と略称す る。)、 『 毎 日新 聞

'97

データ ファイル集』 ( 以下

「 毎 日97 」 と略称す る。) によっている

「 新潮

100

「 新潮明治

「 新潮大正

「 毎 日

97

」 の他、『 青空文 庫』 も参考 に した。

2.

これ までの研究の成果 と問題点

時間名詞 と格助詞 「に」 との共起 ( 接続) に関す る説明は、大別す ると次 の三つの考え方 にま とめる ことができよう

① 設定 と特定

② 相対的時間 と絶対的時間

③ 近接性

上記 の三つの視点 につ いては、首肯で きる点 も多 いが、格助詞 「に」 との共起 については未だ十分 に 説明 している言えないように思 われ る。 これ らの考え方 の問題点 につ いては、すで に伊藤

(2008)

の指 摘があるので、 ここでは割愛 したい。 ( 伊藤 の指摘 に も若干 の問題 はあるが、煩雑 にな るのでそれ に も 触れない。)

上 に挙 げた三つの視点 の中で最 も分か り易 い ものは、 「 今 を基準 とす る相対性 の有無」であろ う。本 稿 は、「 今 を基準 とす る相対性」を有す る語 が 「に」 と共起 しないことに注 目し、「 今を基準 とす ること」

の内実 に迫 ろうとしようとす るものである

‑ 41‑

(4)

丹 保 健 ‑

3.

時 間名 詞 の意 味 特 性 と用 法

3‑

1.時間名詞の意味特性概観

最初 に、時間名詞 の特性 につ いて概観 してお くことにす る

(a)「時間名詞」 に格助詞 「に」が接続 しない ものの代表 として、「

今 日 」 「明 日 」 「昨 日」 な どがある。

これ らは 「 今 を基準 とす る相対的な時間」 を表 してお り、「 相対時間名詞」 と呼ばれ ることが ある

これ らの名詞 は、時間的な幅 ・広が りを持 ち、「中 (じゅう

)

」や 「のあいだ」 な どと共起す る。 しか し、時点を表す ことはな く、「頃」 とは共起 しない。

(b)「時間名詞」 に格助詞 「に」 が接続す るものの代表的な もの として

、 「 ( 〜 日)〜時 (じ

)

」「( 〜

月)〜 日 (にち

)

「( 〜年)〜月 ( かつ) 」 な どがある。 これ らは、「 絶対時間名詞」 と呼ばれ ること がある。 これ らの時間名詞 は、広が りを持たず、「中 (じゅう/ ち ゅう

)

」や 「のあいだ」 な どとは共 起 しない。 これ らは、時点を表 し 「頃」 とは共起す る 。「 〜時 (じ

)

」 「 〜 日 (にち) 」 「 〜月 ( かつ)」

は、格助詞 「に」 を伴 わないで用 い られ ることもあるが、次 に示す ように、事象全体が どの時点 にお いて起 こったかを示す場合 に用 い られ、動作 ・行為が行われ る時点ではない点で大 き く異 なる。限定 された用法である。参考 として挙 げた⑥⑦ の 「 〜のか +時間名詞 、 」「 〜のは+時間名詞、」 は本稿で は扱 わない用例である。)

① 雁 の寺他.

TXT雪州 は徳全 と本堂 にきて、慈念 の維那 で通夜経 をす ませ ると、す ぐに帰 って

いった。夜、十 【 一時、】徳全が本堂 にきて、下問にいる猪之吉、伝三郎、平吉、作造の前で経 をよんだ。 経が終 ると、慈念 は、

② 二十歳 の.

TXT十七 日午後十 【

一時、】十八 日午前 【 八時、】東大 の要請 によ り八五 〇 〇名 の 機動隊が学 内突入。 ガス銃、放水等 によ り実力排除。

③ 戦艦武蔵.

TXT副長 の加藤大佐 はす ぐに艦橋 に上 り、艦長 に頼 み込んで海上 を探照灯で照射 し

っづ けて もらった。 しか し敵潜水艦 の多 い海面で光を放 ちつづ けることはきわめて危険なので、

午後十 【 一時、】捜索を打 ちきった。加藤 は、駆逐艦上 に救助 された者の うち六名がそのまま息 絶えた ことを知 った。

④ 戦艦武蔵.

TXT長 崎警察署 に集 った六十名 ほ どの特高係 の刑事 た ちは、 ピス トルで武装 し警

察の裏 口か ら出ると、思 い思 いの道 をた どって支那人街 に向 った。午前 【 一時、】かれ らは、一 斉 に中国人 の家 に踏 み込 み、家宅捜査 をす るとともに、成人 に達 した男たちを一人残 らず道路 に 突 出 し、警察 に連行 した。 中国人 たちは、警察 の武道場 に押 しこめ られ、翌 日か ら一人一人呼出

され ると、執劫 な刑事 の訊問を受 けた。

⑤ 金 閣寺.TXT 帰 った老 師は和 尚 と酒を酌 みかわ し、夜 中の零 時半 ごろ、朋輩 の徒弟が和 尚を 寝所 に案内 した。 それか ら老師は開浴 と謂 って風 呂に入 り、二 日の午前 【 一時、】撃栃の声 も納

まって、寺 は静か にな った。雨 はなお音 もな く降 っていた。

参考 :

⑥ 放浪記.TXT 階下でかた くりのね ったのをよばれ る

床へ はい ったのか十 【 一時、】今夜 も 隣のマズルカが流れて来 る。 コウフンして眠れず。

⑦ 孤高の人.TXT それだけは昔 のままだ った。 「 店が終 るのは十 【 一時、】 それか らあ としまつ

を して帰 るのか十二時 ごろ、だか ら‑ 」園子 はあた りを気 にす るように見廻 してか ら、

(5)

(C)格助詞が接続す ることもしないこともある代表的な時間名詞 に 「

春 」 「 夏 」 「 秋 」 「 冬」な どがある

「 相対時間名詞

「 絶対時間名詞」の中間的な時間名詞 とで もいう時間名詞である。 ( 仮 に、「中間時間 名詞」 と名付 けてお く。) これ らの名詞 は、格助詞 「に」 を後援 しない例 もあるが、後援す る例 もか な り見 られ る。

これ らの名詞 は、「中 (じゅう/ ち ゅう

)

」や 「のあいだ」 な どと共起 し、時間的な広 が り ・時副を 表す ことができる時間名詞である。 しか し、 その一方、「頃」 とも共起 し、時点を表す こともで きる

① 鮎太 は一年生の間だけ家か ら通学 したが、二年 にな った 【 春、】父 の台北への転任 と同時 に寄 宿へ入 った。 (あすなろ.

TXT)

② 明治七年 ( 一八七 四年)七歳 【 春、】養父 の女性問題か ら家庭不和が生 じ、養母 とともに一 時生家 に引 き取 られ る。 (こころ.

TXT)

③ 和助 は去年 の 【 春 に】結婚 し、今年 の夏 に女 の双生児がで きたので、家が狭 いのを苦 に してい た。 (さぶ.

TXT)

④ そのため もあって、星 は 「 三十年後」 と題す る未来 を舞台 に した小説めいた ものを書 き、大正 七年 の 【 春 に】 出版 した。 ( 人民 は弱.

TXT)

(d)以上 の三つの範噂 に入 らない時間名詞 もある。「

翌 日 」 「 前 日 」 「 翌年 」 「 前年」がそれである。

これ らは、指示性 を持つ点で、「 今 日

「明 日

「昨 日」 と類似性 を持つが、現場性でない点で異 な る。格助詞 「に」 と共起す る点 において も、「 今 日

「明 日

「昨 日」 と異 な る。 これ らの時間名詞 を 間接指示時間名詞 と仮称 してお く

① そ うして、‑を消 した 【 翌 日に】、私が帰 って くるのであ った。 ( 忍ぶ川.

TXT)

② その返事 は 【 翌 日に】 はいった。 ( 点 と線.

TXT)

この他、「 毎 日

「 毎週

「 毎月」、「 今」、「当 日」、「当時」、「 近 日」等 もあるが、「明 日 ( み ょうにち、

あ した )

「 今 日 (こんにち )

「昨 日 (さ くじ つ) 」等 な ども含 め、別 の機会 を期 したい。

3‑2. 「 相対時間名詞 」( 「昨 日 」 「 今 日 」 「明 日 」 ) の特性 と用法

すで に示 したように、格助詞 「に」 と共起 しない 「 今 日 (き ょう )

「 明 日 ( あす )

「昨 日 (きの う ) 」

な どの 「 相対時間名詞」 が、「 今 を基準 とす る相対的時間」 を表す ことは既 に指摘 されている。 それで は、「 今 を基準 とす る相対時間を表す こと」 と格助詞 「に」 との共起 を許 さないこととの間 にどのよう な関連があるのだろうか。

「 今 を基準 とす る相対的時間を表す こと」 を 「明 日」 を例 に して説明すれば、 「 今」 を基準 に して と は、「 発話時」である 「 今」 を基準 としてであ り、その 「 発話時」である 「 今 ( 今 日

)

」 に接 して時間的 後方 に位置す る 「 一 日」 を 「 直接指 している」 と考え られ る。 ここで重要 なのは、時間的な方向を 「 直 接指 していること」、 そ して、指 されている内容が、「 一 日」 という 「 広が り」 と 「 範囲」 を持つ ことで

ある

「 相対 時間名詞」 が時間的な方 向を 「 直接指 して いること」 は、指示語研究 において言 われて いる

「 現場指示」 の 「 現場」 に通 じるものであると考え ことがで きるのではなか ろうか。 もちろん、指示 内 容 は 「これ 」 「それ 」 「あれ 」 「どれ」 な どの指示語 とは違 い、相対時間名詞 自身が持 っている時間的な

‑ 43‑

(6)

丹 保 健 ‑

広 が り ( 「 今 日」 や 「明 日」 な どでは 「 一 日」、「 今月 」 「 来月」 では 「 年 」 ) とい う範囲を持つ ことにな る。「 翌 日」や 「 翌年」 に も指示性が見 られ るが、 これ らは 「 今」 とい う基準 を持 たない。つま り、「 現 場性」 を持 たない。

このような特徴 は、「 今 日 (きよう) 」 「明 日 ( あす) 」 「昨 日 (きの う

)

」 に特徴的 と思 われ る、「この」 、

「その」、「あの」 、「どの」 といった指示語 が前接 しないことへの説明 ともな り得 よう。 ( 少 な くとも 「 新 潮

100

冊 」 「 毎 日97 」 において、現象が起 こっている時間を表す相対時間名詞 に 「この」、「その」、「あ の」、 「どの」が前接す る例 は一例 も見つか らなか った。) それは

「「 相対時間名詞」 は、すで に 「 現場 指示」 とい う 「 直接的指示性」 を持 ってお り、 それ以上 の指示 を受 け付 けないか らだ」 と説明す ること がで きよう。次の (1 ) は、「 青空文庫」 の用例であるが、 (1 ) の読 みは 「あ した」である

(1 ) 自分 は 【その明 日】 ( あ した)病院へ行 って三沢の顔を見 るや否や、「もう退院は勧めない」 と断 っ た。 (

tomodachi.txt)

格助詞 「に」が接続 しないことも、現場 ( 直接)指示が 「 広 が りのある時間」 という時間を指示 して お り、格助詞 「に」の接続 よって も 「時点」 として限定 し直す ことができないと考え ることができよう

「 春 」 「 夏」 な どは、本来広 が りのある時間を指す ものの、格助詞 「に」 と接続す ることによって時点を 表す ことがで きる。 それは、そのような縛 り ( 現場指示性)がないか らであると考え られ よう

指示詞 +相対時間名詞 の形式 は見 られ るが、 それは下記 のように状況時間を表す例ではない。 ( 指示 詞 +相対時間名詞 の形式 を持つ例 は、「 新潮

100

」では次 の①② の

2

例 のみ、「 毎 日97 」では次の③④⑤ の

3

例が見 られた。)

① さればこそ、 いまは古わ らじに もひ としい将軍家 をかつ ぎまわ り、 【その明 日】 の価値を田舎大 名 どもに説 いてまわ っているのではないか。 ( 国盗物語.

TXT)

② 「【その今 日】 の時勢が、 あの人 たちにはいけないのだよ。 ( 路傍の石.

TXT)

氏が祖父 の思想 と行動 を語 る

。 (ma主9706.txt)

か けて いた関西 のボラ ンテ ィアグルー プ 「 毎 日国際 ボラ ンテ ィア ・ネ ッ トワー ク

(MIVN)

」 ( 釈 谷義 明会長、 11 人) の運動が実 を結 び、来年

1

1日、 クメール語 の原文 と日本語訳 を併記 した

カラフルな絵本 「ウサギ とタニ シ」が刊行 され る

。 (mai9712.txt)

3‑3.

「 絶対的時間名詞」の特性 と用法

時点を表す時間名詞である 「 〜月」 、「 〜 日」 、「 〜時」 は、 「に」 を後援す るのか一般的で ある。 しか し、既 に指摘 したように、「に」 を後援 しない例 も見 られ る

これ らは、 これまでの研究の指摘か ら言えば、時の 「 設定」である。 しか し、 よ り広 く考えれば、 こ れ らは 「 取 り立て」 と言 うことになろう 。 「 絶対名詞 +に」 は取 り立ての対象 とな りに くいためにこの ような 「に」 を共起 しない形式 を取 ることにな るのだろう。時点を表す時間名詞が格助詞 を伴わない例 は、既 に指摘 したように限定 された ものである

( 荏 :取 り立て易 い時間名詞 と取 り立て に くい時間名詞 の別 につ いては、 ここでは、「 対象 として共有

化で きる概念であるか否か」 によるとしてお く。)

(7)

3‑4.

「中間時間名詞」の特性 と用法

「 春 」 「 夏 」 「 秋 」 「 冬」の用例を見 ると、「に」が共起 ( 後援)す る例 もしない例 も見 られ る。 しか し、

「 新潮 1 0 0 」 を見 る限 りにおいてではあるが、両者 の出現率 には大 きな相違が見 られ、 「に」が接続す る 例 は少 ない。 これ らの時間名詞が基本 的 には、広 が りのあ る時間を表すか らで あろ う。 また、格助詞

「に」 が接続す る場合、何 らかの修飾限定があるか、季節一般 を表すか、又 は文脈 によ って限定 されて いることが条件 となろう

① 相手 は、十年前の約定を忘れてはいなか った・ ‑‑去年 の 【 春 に、】 その男か ら念押 しの手紙が大 原へ来て、大原か ら兄 の屋敷へ送 りまわされてきた」 ( 剣客商売.

TXT)

② 彼 は半年 ほど前 の一九七三年 【 春 に、】六年 間勤務 した コロラ ド大学 を解雇 された。 ( 若 き数学.

TXT)

③ 【 春、】新薬 とともに淡紫色 の花 をつ け、秋 にな ると楕 円形 の実が熟 し、縦 にさけ強 い甘味を も つ 。 ( 雪国

.TXT)

④ 昭和二年 ( 一九二七年)十八歳 【 春、】肋膜炎 にかか り一年 間休学。 ( 李陵他.

TXT)

3‑5.

文脈 ( 間接)指示時間名詞の特性 と用法

先 に、「 翌 日 」 「 前 日」や 「 翌年 」 「 前年」 には、「 今 日 」 「明 日 」 「昨 日」 の現場 ( 直接)指示性 に対 し て、文脈 ( 間接)指示性があるとしたが、誤解 を生 じやすい命名である。誤解を招かないために も、そ の意味す るところを説明 しておきたい。

「 今 日 」 「 明 日 」 「 昨 日」の現場 ( 直接)指示性 とは、指示 されているものが、現在をつま り今 ( 今 日 ・ 現在 ・現場) とい う発話時を基準 に して、 「 発話時の 日」であ り、 「 発話時の直後 の 日」であ り、 「 発話 時の直前の 日」であることによる。発話時があ っては じめて指す内容が決定 され るのである。指 してい る時間である 「 今 日 」 「 明 日 」 「昨 日」 は発話時 ・現場 によっているのである。発話時 ・今 ・現場か らそ れを指示 していることか ら現場性 とい うことばを用 いたのである。

一方 の文脈 ( 間接)指示性 とは、指示 されているものが、今 ( 今 日 ・現在 ・現場) とい う基準ではな く、広 い意味の文脈 によって決定 され る 「ある特定の 日」や 「ある特定の年」を基準 としているため文 脈性指示 と名付 けたのである。

これ らに共通す る指示性 は、 それ らの語 自身が指す時間 ・時点は一定ではな く、 ある条件 において決 定 され ることと、 ある範囲 ( 「日 」 「 年」等) と方 向 ( 時間的方 向 ・位置) を示す ことである

文脈指示性時間名詞 は、格助詞 「に」 と共起す ることもあれば、 しないこともある。 そ して、現場指 示時間名詞 と大 き く異 な るのは、指示詞 と共起す ることで ある 。 「あの」や 「その」 が基準 とな る時間 を指すか らである 。 「あの」 や 「その」が 「 翌 日」 その ものを指 しているわけではないことに注意 した い。

「その春」や 「その

3

時 に」 な どにおいては、指示詞 は、「 春」や

3

時」 を指示 しうるのである

① 黒 い雨

.TXT

「 【あの翌 日】、二 ・二六事件が勃発 してね。

② 国盗物語

.TXT

【その翌 日】、すで に うわ さに も聞 こえ、光秀 な ども耳 に して いたが、光秀 ら十 八人の織 田家 の幕将 に対 して も、 それぞれ任官の沙汰があ り、位が さず けられた。

45

(8)

丹 保 健 ‑

4.

時 間名 詞 の特 性 と格 助 詞 「に」 共 起

4‑ 1.時間名詞の特性

これまで見て きたように、 「 今 日」等 の時間名詞 と 「 春」等 の時間名詞 とでは、大 きな相違が見 られ る。 そ こで、「 今 日」等の時間名詞 を 「 現場起点指示時間名詞」 と名付 け、「 春」等 の時間名詞を 「 一般 ( 非指示)時間名詞」 と名付 けることに したい。指示性 を持つ時間名詞 には、「 翌 日」な どがあるが、 こ れ らは現場起点でない ことか ら、 「 今 日」等 の時間名詞 を 「 現場起点指示時間名詞」 と呼ぶの に対 し、

「 翌 日」な どの時間名詞 は、「 文脈起点指示時間名詞」 と呼ぶ ことに したい。 そ して、指示 されている時 間が、幅のある 「 今 日

「明 日

「昨 日」 な どは、「 現場起点指示時副時間名詞」 と仮称 しておきたい。

(1 )現場起点指示時副時間名詞 ( 今 日、明 日、昨 日)

(2)文脈起点指示時副時間名詞 (

翌 日、来月、来年)

(3)一般 (

時点)時間名詞 ( 〜時、〜 日、〜年)

(4)一般 (中間)時間名詞 (

春、夏、秋、冬)

4‑2. 時間名詞の特性 と分類

これまでの述べて きた意味特性 に注 目して時間名詞 を分類 しておきたい。

2.

時間名詞分類表 (1 )一般時間名詞 ( 〜時、春)

時間名詞 ( a ) 一般時点時間名詞 ( 〜時、〜 日、〜年)

(b)一般時副時間名詞 (

春、夏、秋、冬)

(2)指示時間名詞

( a ) 現場指示時副時間名詞 ( 今 日、明 日、昨 日)荏

(b)文脈指示時副時間名詞 (

翌 日、前 日)

3.時間名詞の語曇特性 (

○主要特性)

時 点 時 副 現場指示 文脈指示 語 例

一般時点時間名詞

× × ×

〜時

一般点副時間名詞

× ×

現場指示時幅時間名詞

× ×

文脈指示時幅時間名詞

× ×

翌日

5.

おわ りに

本稿 は、「 相対時間名詞」が格助詞の 「に」 と接続 しないことを説明す ることを 目指 した ものである

残 された課題 も多 い。「当 日

「 近年

「 毎 日

「 毎年」 の位置付 け、「昨 日 (きの う ) 」 と 「昨 日 (さ く じつ ) 」、 「 今 日 (き ょう ) 」 と 「 今 日 (こんいち ) 」、 「明 日 (あす ) 」 と 「明 日 ( み ょうにち ) 」 の微妙 な 相違等がそれである

この他、「 春

「 夏

「 秋

「 冬」のような類似 した時間名詞の個 々の振 る舞 いの相違や、「 午前

「 午後」

とい った時間名詞 の相違 には一切触れ ることがで きなか った。別の機会 に譲 りたい。

(9)

【付 記】

本稿 は受講生 ( 大学院生) との楽 しい対話 に触発 された ものである。 当初、受講生 の発表 について も触 れ る予定 であ ったが、相対時間名詞 の特性 に対す る筆者 の考 え方 を示す ことにとどまった。別の機会 に譲 りたい。

【参 考 文献 一 覧】

① 岡田雅彦

(199

1 )「 時間名詞の一側面 「 二」を とるばあい ととらないばあいにつ いて」( 『横浜国大国語研究

』9)

② 寺村秀夫

(1993)

「 時間的限定 の意味 と文法的機能」 ( 『 寺村秀夫論文集

Ⅰ』)

③ 寺村秀夫

(199

1

)

『日本語 の シンククス と意味 Ⅲ 』

④ 増 岡隆志

(1995)

「 時の特定、時の設定」 ( 『 複文 の研究

』)

⑤ 中村 ち ど り

(1995)

「日本語 の時間的指示表現 における近接性 と格助詞」 ( 『 言語処理学会第 1回年次大会発表 論文集

』)

⑥ 中村 ちど り

(1997)

「時の状況譜 の 「に」 の生起要 因」 ( 『 東北大学留学生 セ ンター』第

3

号)

⑦ 森 田良行

(1989)

『 基礎 日本語』

⑧ 伊藤創

(2008)

「時間名詞の性質 と 「に」 の生起」 ( 『日本語文法学会第

9

回大会発表予稿集

』)

【用例 採集 資 料】 ( 作品名 は省略する)

『CD‑ROM

版 新潮文庫の

100

冊』 ( 新潮社

1995)

② 『 毎 日新 聞

'97

データ ファイル集』 ( 毎 日新 聞社

1998)

『CD‑ROM

版 新潮文庫明治の文豪』 ( 新潮社

1997)

『CD‑ROM

版 新潮文庫大正 の文豪』 ( 新潮社

1997)

⑤ 「 青空文庫

」 (2005

9

19

日までの もの)

*用例採集 にあた って は、筆者作成 のプログラム (

「Perl

」 による) を用 いた。

47

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