嘉手納町財政 と基地対策
嘉手納町財政 と基地対策
桜 井 良 治
は じめに
沖縄の幹線道路 である国道58号線 に沿 って嘉手納町 を通 るたびに誰 しもが 感 じることは、道路 ぎわ まで広大 な米軍基地がおおいかぶ さっていて、市街地 が どこにあるのか判別 しに くい ことである。「基地の中に町がある」という表現 が、 まことに適切 な町である。嘉手納町は、町域の8割以上 を米軍基地が占め る とい う点で、 日本の市町村の中で も、最 も特異な位置 を占めている。利用可 能 な町域があま りに も狭 いために、基地以外 の公共的な土地利用が極 めて困難 な状況 に置かれている。
本論文では、沖縄県にあ り極東最大 の米軍基地 を有す る嘉手納町の リゾー ト 開発 を含 めた基地跡地利用問題 と軍事基地 に影響 された財政の現状 について、
分析 したい。
嘉手納町は沖縄本島の中部 に位置 し、東支那海 に面す る海岸線沿いにある。
那覇 よ り北へ約23キロメー トルの地点 にある人 口14,000人余 りの町である。
沖縄本 島の交通の要衝 に位置 し、戦前 は中頭郡 にお ける教育、文化、経済の中 心地 として発展 した。第2次大戦 にお ける沖縄本島最初 の米軍上陸地点 とな り、
灰 じん と化 した歴史 もある。戦後 は町域の83パーセ ン トが米軍基地 に占め られ ている。今 なお、昼夜 をとわず基地か ら発生す る爆音等、幾多の基地被害 を被 っ ている。。
反面、基地の見返 りとしての社会資本 の整備 は進 んでいる。基地対策予算 に よる下水道整備や様々な公共施設の建設 といった面で、公共施設だけは、他の 市町村 と比べて極 めて充実 している点 は否定で きない。例 えば、公共下水道 の 整備 は、昭和62年には、管渠整備率で99%、 水洗化率では87.2%と、流域市 町村中 トップの整備率 となっている。
(610)"
法経研究 (1996年)
しか し、道路の整備等の都市計画や土地利用の面では、軍事基地の存在が公 共的な土地利用の障害 となるな ど、様々な独 自の問題 をかかえている。 ようや く近年、軍事基地の返還 と跡地利用計画が、 クローズア ップされてきた ところ である。
財政の面では、広大 な基地の存在のために、地方税の多 くを徴収することが できない とい う特異な状況 に置かれている。通常の課税方式では、広大な滑走 路が占有す る土地 に対 して、市町村財政の基幹税 目である固定資産税 をほ とん ど徴収す ることがで きない。 とりわけ、固定資産税 についての基地 に特有の取 扱が、注 目されるところである。
軍事基地が広大な面積 を占める嘉手納町では、固定資産税 を徴収で きない土 地 に対 して、それに代わ る財源補填措置が、国によって実施 されている。国が 所有す る固定資産の うち、米軍や 自衛隊 に使用 されているものについては、嘉 手納町に対 して、「基地交付金」が交付 されている。 しか し、嘉手納町 は、飛行 場が大 きいため、建物 についての固定資産税の算入額が少な く算定 されている
とい う特徴がある。
他方、住民税、電気税、ガス税 の非課税 の影響 も受 ける米軍資産 については、
米軍資産 に係 る税制上の特例措置等 に配慮 して、「調整交付金」が交付 されてい る。
広大 な基地 の存在 によって町の発展が阻害 されていることや近年の基地被害 の大 きさを考慮すると、 これ らの交付金 をもって して も、十分な財源補填措置 が講 じられているといえるか どうかは、大いに疑間である。
軍事基地 の跡地利用の面では、小規模 なが ら、現在米軍が使用 している嘉手 納マ リーナの返還後の跡地利用問題が注 目され るところである。 目下、米軍の 使用す るヨッ トハーバーを核 とす るリゾー ト基地 を目指す跡地利用計画の策定 が進行中である。
第1章 嘉手納基地の現状 と跡地利 用
I.嘉
手納基地 の全体像太平洋地域最大の米軍基地である嘉手納基地の中心 となる嘉手納飛行場 は、
嘉手納町、沖縄市、北谷町にまたがっている。嘉手納空港全体では、面積1,998 haとい う広大 な敷地 を占有 している。嘉手納町には、嘉手納空港の半分弱の
(609)
嘉手納町財政 と基地対策 885 haが 属 している。
嘉手納空港の大 きさは、東京国際空港 (羽田)の第2期計画 (平成5年9月 供用)までの達成面積 894 haの 2倍以上、関西国際空港第1期計画 (平成6年
9月開港)51l haの約4倍の規模 に相当する
2、
第1表
嘉手納飛行場の土地所有区分 市町村名 国有地
(ha)
県有地
(ha)
市町村有地
(ha)
私有地
(ha)
計
ha 地主数
(人
)沖 縄 市
709。 1
746.0嘉手納 町 736.3 885.3
北 谷 町 11.0 347.5 365.9
那 覇 市
計
130.9 1,793.4 1,997.7 6,198資料:沖縄の米軍及び自衛隊基地
(平
成3年)(注
) 『嘉手納町土地利用基本計画』(平
成5年7月)30ページによる嘉手納空港全体の所有主体別 の内訳 を見 ると、私有地が736 ha(83%)、 国有 地が85 ha(9.6%)、 市町村有地が61 ha(7%)、 県有地が4 ha(0.4%)となっ ている。圧倒的に私有地の占める割合が高い。
平成元年の時点では、総地主数 は5,889人 (平成元年3月 31日 現在)、 年間 賃料 は128億 9,600万円にのぼっている。一人 あた りの平均賃料 は、219万円の 計算 になるの。
平成3年3月 31日 の時点では、地主数 は6,198人を数 えている。また、年間 賃貸料 は140億 9,700万円にのぼってい る。ひ とりあた り平均賃料 は、227万円 の計算 になる。。
他方、空港 と関連 した もう一つの巨大軍用施設である嘉手納弾薬庫 は、恩納 村、石川市、具志川市、読谷村、嘉手納町、沖縄市 にまたが る面積 2,884 haの 施設である。地主数 は3,030人 (平成元年3月 31日現在
)、
年間賃料 は50億 9,300万円 (昭和63年)にのぼっている。ひ とりあた り、平均168万円の計算になるり。
不在地主 も多 くいるので、 これ らの民間の賃貸料収入がそのまま嘉手納町の (608)あ
法経研究 (1996年
経済 に循環 しているわ けではない。面積の小 さい嘉手納町には産業が乏 しい こ ともあ り、地主が居住 しているとして も、賃貸料収入 を還流 させ ることは容易 ではない。 この資金 をいかにして嘉手納町の経済発展 に生かす ことがで きるか が、今後の重要な課題 となっている。
これ らの地主の基地収入 は、すでに生活費 として組 み込 まれている面が強い。
そのため、基地の返還が無計画 に一方的になされた場合、かえって生活 に支障 をきたす とい う面 も無視で きない。 この ことが、基地返還運動の妨 げになって いる。
Ⅱ.基地の跡地利用の経過 と現状
(1)基
地 の跡地返還の経緯基地の返還 については、昭和51年以降、約276,000平方メー トルの返還およ び共同使用が実現 している。これ らの土地 はすでに、跡地利用計画 に基づいて、
農用地、環境美化センター、運動公園、墓地公園、生活道路、庁舎、町民会館、
中央駐車場用地 として、利用 されているの。現在の立派 に整備 された公共施設の 多 くは、基地の返還跡地 に立地するものである。
嘉手納町では、買上 げられた基地周辺の国有地、基地の一部共用使用および 返還跡地 を生活環境や公共施設の整備、地域産業の振興 に活用するな ど、可能 な限 り、土地の効率的利用 を図っている。
例 えば、嘉手納基地周辺 (嘉手納町)には、基地周辺整備法第5条に基づい て、民家 (土地 を含 む)の移転、買収 によって、国有地 (防衛施設庁所管)が
約8,000平方メー トル散在 している。現在、 この国有地 には、緑地緩衝地帯 と して植栽が施 されている。 その一部 は、地域住民のコ ミュニティーの場、老人 の健康増進の場 として、ゲー トボール場 (東区)と して、利用 されている。
米軍基地の一部共用使用 については、 日米地位協定第2条に、米軍が一時的 に使用 していない時 には日本国民が使用で きることが、明記 されている。嘉手 納町で は、公共用地 の取得難か ら、国の許可 を得て、すでに90,838平方メー ト ルが共同用地 として、中央駐車場、行政センター駐車場(道路 を含 む
)、
久得霊 園 (葬儀場 を含 む)、
久得酪農施設 (洋らん、養豚)などの施設整備 に供 され、町民の生活や産業の振興 に寄与 しているつ。
住民居住地が狭 あいで、土地取得難 にあえぐ嘉手納町 にとって、基地の返還 による用地の確保 は、町政の重要課題である。 これ までに返還 された施設区域
%(60つ
嘉手納町財政 と基地対策 をみると、昭和36年8月 に嘉手納飛行場の一部 (兼久、水釜、嘉手納地域)約 144,000平方メー トルが返還 されている。昭和56年2月 には、陸軍貯油施設(パ イプライン)の 10,086平方メー トルが返還 されている。そして51年11月 には、
嘉手納飛行場及び嘉手納弾薬庫地 区 (久得地域)の 160,040平方メー トルが返 還 されている。前二者 は、米軍施設の移設 に伴 うものである。後者 は、家庭・
事務所か ら排出されるゴ ミの衛生処理施設整備のため、返還要請 に応 えた もの である。
第2表 嘉手納飛行場返還地一覧表
(嘉
手納町内)返還年月 日 所在地
(嘉
手納町
)返還面積 (m2)
面積内訳 (m2)
人 数 筆 数 利用状況
昭和
36.8.9字 兼 久 字 水 釜 字嘉手納
139,891 民有地
139,891住宅地
昭和
51。11.30 字 久 得 105,570 HI●
地 104,528国有地 1,042
農用地、久得霊園 農作物集出荷場 昭和
57.2.28字嘉手納 民有地
588 14 嘉手納町軍用地等地主会館
昭和 51.5。 31 字嘉手納
民有地 14 防衛施設周辺整備協会
沖縄支所
昭和
58。3.31字嘉手納 9,394
町有地 6,400
県有地 2,557
民有地 75
国有地 361
行政セ ンター
役場> 町 署
<
察
町民会館、警
昭和
59。6.5字嘉手納 1,298 町有地
1,152国有地
146那覇地方法務局 嘉手納出張所 昭和
60。9.30字 水 釜
民有地1
昭和
63.3.31字 屋 良 4,418 地 地
哺賄
407
4,011 道路、農地
平成元
.6.30字 屋 良 民有地 1 住宅地
計 261.722
地 地 地 地
賄哺 鮪賄
145,128 112,487 1,549 2.557
(注
)嘉手納町役場『嘉手納町 と基地 (平 成
3年3月
)』118ペ ニジによる
返還後の跡地 は、住宅地、道路、そして環境美化センター、町民の家、農用 地、農作物集出荷場、配水池、久得霊園及び都市計画道路 (久得〜牧原線)と
(606) 27
法経研究 (1996年)
して、利用 されている。そのほか、昭和58年3月 には、嘉手納飛行場 の一部約 17,000平方メー トルが、行政センター用地 (町役場、町民会館、警察署等)と
して、返還 されている8)。
(2)基
地返還 に伴 う問題点米軍基地 の返還 には、地元の要請 に基づ く返還 と、米軍の都合 による一方的 返還の二通 りがある。国は、いずれにおいて も、返還 日30日前 に契約解除の通 知 をすればよい ことになっている。前者 は、地元の土地利用上必要不可欠な も ので、跡地不U用計画 に基づ くものである。後者 は、一方的な返還である。 その ため、返還後 は、長期 にわたって土地が遊体化 し、所有者 に多大 な経済的損失 を与 えることになる。 このような返還 は、地方公共団体 に とって も、跡地利用 計画が立てに くく、財政面 にもかな りの影響 を及ぼしている。
嘉手納町では、返還 された土地の大半が町有地で、跡地利用計画が策定 され、
かつ私有地 も生活道路 (パイプライン)などとして利用 されていたため、遊体 化することもな く、跡地禾U用がスムースに行われて きた。 しか し、用地取得 な ど所有者の合意形成 に多額の経費 を要 し、町財政 を圧迫する結果 になっている。
したがって、基地返還 に際 して、国は十分な予告期間 と事業実施 に必要な立 入 り調査 をはじめ、跡地利用計画の策定 と有効利用 までの適切 な補償措置 を講 じ、土地所有者の経済的損失 を防止するとともに、地方公共団体等の実施す る 跡地利用事業 に対 して財政的に支援する特別制度の実施が望 まれている●。
平成7年5月 に成立 した「軍転法 (沖縄駐留軍用地返還特別措置法
)」
によっ て、3年間の地代補償が約束 され、今後 それが拡充 され る方向にある。しか し、3年後の地代収入の途が途絶 えることが、多 くの高齢化 した民間地主 に とって、
基地返還 にちゅうち ょす る結果 をもた らしていることもまた、事実である。
(3)嘉
手納マ リーナの返還構想①嘉手納マ リーナの建設計画
現在の軍用地返還要請の目玉は、米軍嘉手納マ リーナの返還事業である。嘉 手納町では、米軍のカデナマ リーナの返還を予想 した リゾー ト開発構想を作成 している。地主の合意形成を図 りながら、21世紀を展望 した軍事基地の跡地利 用計画を策定中である。同時に、嘉手納町マ リーナ地域の返還要請を継続 して 行っているところである
10。
" (605)
︵0︶ 一卜﹄C︶
第1図
嘉手納マ リーナ跡地利用予想図
(注
)嘉手納町『嘉手納町ウォーターフロント開発基本構想』5ページによる。法経研究
計画範囲は、比謝川河 口周辺及 び嘉手納バイパ ス接続用地の一部、兼久海浜 公園及び準工業地域、嘉手納マ リーナ周辺の軍用地等 に展開する海域 に面 した 区域 を対象 とするものである。
嘉手納マ リーナ周辺 には、嘉手納町 を象徴す る甘薯発祥 の地 の碑や琉球王朝 時代の野国総監の墓がある。その他、平成4年12月 には、大規模商業施設「ネー ブルカデナ」がオープンしている。比謝川河 口周辺 は、釣 り場 として賑わい、
海岸線 は、ダイ ビング、 ウインドサーフィン、魚釣 りな ど、人気のスポッ トと して広 く利用 されている
11ヽ
嘉手納マ リーナ水域 の軍用地の現状回復 を前提 として、理すによ り陸地 を確 保 し、地主の利益 になる開発 を行 うことが、 目指 されている。そして、水際の 有効活用 を図 るため、公共用地の整備 と併せて、民活導入 を推進す る開発が計 画 されているbまた、南北の開発地 区を結ぶコ ミュニティー道路 は、沿線の商 業施設 の整備 を促進す るとともに、特色 ある地域の まちづ くりを目指す もの と 位置づ けられている。
計画の基本方針は、以下のようになっている。①新たにオープンした「ネー ブルカデナ」と相乗効果をあげる複合型商業ゾーンを形成する。②地元住民等 一般ユーザーやビジターを対象とした公共マリーナを整備する。③地元住民や リゾー ト客のための公共ビーチを整備する。④米軍のための代替マリーナ、ビー チを整備する。⑤既存施設 との有機的な連携を図り、ウォーターフロントとし ての環境を整備する。⑥河口域の整備 と併せて、マリンレジャー施設の導入を 図る。⑦拠点開発ゾーンを結ぶ街路の環境整備を図る。
②施設の概要
嘉手納バイパス・橋梁部分と国道 58号線にはさまれ、海に展開する複合施設 ゾーンが計画されている。水上マーケット、マリーナ、人ロビーチを中心とし たウオーターフロントエリアとンス トラン・ショッピング街、リゾー トホテル、
商業施設などを配置し、既存の兼久海浜公園、新たにオープンした「ネーブル カデナ」とが結合したシーサイドプラザ0ゾーンを形成するというものである。
比謝川河回域には、地域の特性を生かし、マリーナ、船置場、釣 り広場等を 整備し、宿泊施設としてホテル・ コンドミニアムの導入を図るといった内容に
なっている。
嘉手納マ リーナの代替施設 として、マ リーナ、人 ロビーチ、 クラブハ ウス等 を整備 し、隣接するシーサイ ドプラザ・ ゾーンとの連絡道 を設 け、相互 の利便
"(603)
嘉手納町財政 と基地対策 性 を図 る計画である。 また、嘉手納バイパスの建設 によ り、海側 に面 した用地
を夕 日の広場 として位置づけ、植栽、園路等の修景整備 を図る内容 になってい る。 シーサイ ドプラザ・ ゾー ンとリバーサイ ド・ ゾー ンを南北 に結ぶ地区の主 要動線 として、既存のコ ミュニティー道路 を再開発す ることになっている。商 店街の整備・充実 と併せて、景観、植栽等の周辺環境整備 を行 うためである
1幼
。リゾー ト開発 と併せて、地域全体 を整備 しようとする計画 になっている。最 近の沖縄本島 における小規模 な公共 ビーチの開発 に多 くみ られるように、地元 民のい こいの場 としては、十分 な規模である。 しか し、 ワンセ ッ ト型の全国一 律の開発 になってお り、本土の リゾー ト客 を呼び寄せ るには、地域の特色が十 分 に発揮 されていない感がある。いずれにして も、今後の返還が またれるとこ
ろである。
第2章 沖縄県財政 と嘉手納町の基地収入
I。
沖縄県財政 と基地収入沖縄県の経済 は、従来基地収入 とそれに付随 した高率補助金 に代表 され る財 政移転 によって成 り立 って きた。沖縄県の平成2年度一般会計歳入 をみると、
決算総額4,800億円の うち、 自主財源 は1,100億円(22.9%)、 その うち県税 は 700億円 (14.5%)を占めているにす ぎない。依存財源77.1%のうち、地方交 付税が34.9%、 国庫支出金が
30。
9%を占めている10。
復帰以降の県民総支出をみると、財政支出の割合が、全国に比較 してはるか に高い。各々、全国の三倍近 い数値 を示 している。財政支出の中で、 とりわけ 大 きな役割 を果た したのが公共投資である。昭和61年度 の沖縄県の行政投資 は、全国水準 を 100と した場合 148と な り、都道府県中第5位となっている
14、
基地収入 は、軍用地地主 に対する国か ら支出され る巨額 な地代 (軍用地料
)
と基地雇用者の所得 に分 けられ る。1988年の県外受取総額1兆5,833億円の う ち、軍関係受取 は1,352億円(8.5%)を 占めている。軍人・軍属の消費支出522 億 円、軍雇用者所得385億円、軍用地料443億円を合計 した ものである。近年 では、観光収入2,643億円 (16.7%)の方が軍関係受取 をはるかに上回ってい る。 しか しこれ らの金額 も、国庫か らの財政への経常移転5,857億円 (37%) には遠 く及 ばない数値 となっている
10。
財政移転 によって沖縄県の経済が支 え られていると言って も過言ではない。(602)"
法経研究 (1996年
琉球大学の仲地博教授 によれば、基地関連財源 は、市町村有地の貸付 による 財産運用収入他8種類 にのぼる。基地関連財源の歳入総額 に占める割合が36%
にもお よぶ恩納村 を筆頭 として、基地依存型の代表的な市町村が多い。基地関 連財源の うち、助成交付金(国有の固定資産 について
)、
調整交付金 (米軍所有 の固定資産 について)、 財産運用収入が、経常一般財源 と位置づ けられている。これは、基本的に歳入構造の弾力性 をもた らす部分である。財産運用収入 は、
実質的 には基地 と運命 を共 にする依存財源であ りなが ら、財政分析上 自主財源 として扱われ、 自主財源比率 を高める作用 を持つ という矛盾があることがご指 摘 されている。「基地関連財源 に頼 るあまり、自主財源 を増加 させ る努力 を怠 る と、長期的にみた場合悔 いを残す ことにな りかねない」 との批判が示 されてい る16)。
民間の収入 も含めた軍用地地代 については、駒沢大学の石井啓雄教授の詳細 な研究がある
1つ
。復帰後 の軍用地料 は、都市開発 によって周辺が宅地化 した地域 については、「宅地見込み地」として評価 されてきた。公示地価のア ップ率 を基 準 に引 き上 げられて きた。復帰直前29。
3億円(1万8,987筋)であった軍用地 料は、復帰によって 143.4億 円 (1万8,810%)に増額されている。1980年 に は321.7億 円(1万 7,278筋)、
1988年 には443.8億 円(1万 7,006%)に まで 増額 されている10。
県内総生産の2.7%に相当する額である。基地の存続を前提とすれば、地価高騰を背景 として、今後 も増額が見込 まれる。
ただし、東西の冷戦時代の終焉を背景 として、軍事基地そのものが縮小傾向 にある。軍事基地の返還は、都市的地域 も含めて、徐々に進められつつある。
昭和63年度の在沖米軍基地は45施設・2万5,027%で、県土面積の11.1%、
沖縄本島の
19。
7%を占めている。所有主体別 にみると、国有地7%、 公有地 17%、 私有地76%となっている。復帰時の87施設・2万8,661筋 に比べると、42施設 03,634筋 減少 している。
基地の跡地利用が大 きな課題 となりつつある。昭和36年から63年までに返 還された軍用地面積は1万161%で、その利用状況は、公共事業用地が 3,974筋 (39%)、 保全地及び森林 3,382節 (33%)、 企業・ 個人利用 1,712筋 (17%)、
自衛隊477筋
(5%)な
どとなっている10。
前述の仲地博教授は、二次振計の目玉 といわれる最近の基地返還の動向につ いて論 じている。復帰直前は、返還された用地の遊体化、軍用地地主の生活の 問題 としてクローズアップされたが、今 日では沖縄の土地問題の解決に期待が
"
01)
嘉手納町財政 と基地対策 かけられてお り、道路や下水道の整備、住宅地や公共用地の取得のための活用 が課題 になっているとしている
'°
)。
仲地論文 によれば、基地 の跡地利用 は、現行法の下で特別の財源が得 られな い こと、地主の合意形成 に時間がかかること、必要度が高い土地ではない場合 が多い等の理 由によって、
̀立
ち遅れている。氏 は、跡地不U用の原則 として、土 地基本法 にもとづ く「公共性 の原則」等 を掲 げている21、
宮本憲一教授 は、米軍が良好 な土地 を専有 し、社会的消費手段への公共投資 が本土の30〜40%に とどまった ことが、あ らゆる都市問題 を引 き起 こした とし ている22)。
自立 した経済基盤が確立 し、産業の受 け皿がなければ、基地の返還 は軍用地 料 (官民
)及
び財政収入面での収入減 をもた らすばか りか跡地利用 に悩 まされ 続 けることになる。基地 の返還 を沖縄県経済 に とってプラス要因にす るための 努力が必要 とされている。無計画 に建物が林立 しかつ喧騒 な都市部では、広大 な基地が、今後の公共利 用が可能 な残 された稀少 な「緑地空間」 になっているとい う一面 も否定で きな い。 `
沖縄県が置かれていた歴史的経緯や平均所得の低 さ等の事情 を考慮すると、
軍事基地 の返還が直ちに財政移転の急減 をもた らす ことはないか もしれない。
しか し、で きるだけ早急 に、基地収入 と財政移転への依存か ら脱却 しうる自立 した経済基盤 を確立す ることが、課題 となっている。
沖縄大学 の高良有政教授 は、「基地経済 を脱却 してか ら自立経済 を築 くのでは な く、む しろ沖縄で自立経済 を強化す ることによって こそ、基地経済か らの脱 却が可能 になる
20」
と指摘 している。Ⅱ.嘉手納町財政分析
(1)嘉
手納町財政の概観一―歴史 と実態一一戦後27年間の米軍の統治下では、基地の存在す る市町村 に対 して、基地交付 金等の特別 な財源手当がなかった。そのため、基地 をかかえる自治体 は厳 しい 財政運営 を余儀 な くされてきた。一般 に、沖縄県の市町村 は、社会資本の整備 等で大 きな立 ち遅れがあった。
しか し、沖縄の本土復帰後、沖縄振興開発特別措置法や基地周辺整備法等 に 基づいて、都市基盤や生活環境等の整備が急 ピッチで進 め られ、本土 との格差
(600)"
法経研究 (1996年)
も縮 まってきた。
嘉手納町で も、基地周辺整備法 に基づ く障害防止事業(3条
)、
民生安定整備 事業(8条)、 特定防衛施設調整交付金(9条)に よる基地対策事業が進 められ、生活環境が整備 されてきた。
昭和48年か ら平成元年度 までに実施 された基地対策事業 は、事業費総額137 億円で、その うち66.4%に相当す る91億円が公庫補助金 となっている。
そのほか、固定資産税 に代わる財源 として、国有提供施設等所在市町村助成 交付金 (基地交付金)と施設等所在市町村調整交付金 (調整交付金)がある。
昭和47年度か ら平成元年度 にかけて、94億円が交付 されている。これを基地対 策事業 の補助金 とあわせ ると、185億円にのぼっている。
嘉手納町の平成元年度一般会計 における国庫支出金の うち、基地関連歳入が 11億 15,364千円にのぼ り、歳入全体の23.4%を占めている。 この額 は、町税 の18.1%を上回っている。 しか し、補助率や補助対象範囲 とい う点で、必ず し も十分ではな く、これにともなう町費の負担額 もかな りにのぼっている。また、
町域の83%を占める広大 な基地 の存在 によって、都市基盤の整備、産業の振興 等 を妨 げ られ、徴税等の減収の要因 ともなっている。
(2)嘉
手納町の財政構造分析嘉手納町の財政状況の推移 をみると、財政構造の弾力性 を判断す るための経 常収支比率 (70〜80%が通常)については、昭和58年度
75。
3%、 昭和62年度 72.8%と安定的に推移 している。財政力指数 (1.00に 近 い方が よい)は昭和58 年度 のO.38か ら62年度 の0.425へ とわ ず か なが ら上 昇 して い る (県平 均 0.414)。公債費比率 をみると、昭和58年度 には19.5%と高い数値 を示 している が、起債の繰上償還 を行 ったため、昭和62年度 には16.5%と 3ポイ ン トも下 がっている。昭和58年度か ら62年度 にか けて、 自主財源 と依存財源 を対比 してみると、
平均で34.3対
65。
7と 国庫支出金 に頼 っている状態である。今後の高齢化、情 報化、国際化 に備 えて、 自主財源の確保や国県支出金の特定財源の確保 を図ることが必要 とされている。
今後の施策 の方向 としては、
(1)自
主財源である町税 の収納率の向上 と課税客 体 の補足 を徹底 するとともに、国・ 県支出金等の高率補助 を選択 し、特定財源 の積極的活用により財源 を確保する。(2)国
有提供施設等所在交付金、助成交付 ン (599)嘉手納町財政 と基地対策 金等の増額要請 を行 う等の課題があげられている
2の
。沖縄県総務部地方課『市町村決算状況調 (平成2年度
)』
には、嘉手納町財政 の概要が示 されている。歳入合計54億円の うち、一般財源22.7億円が42.1%を占めている。しか し、地方交付税12億円が歳入合計 の23.0%を占めてお り、
地方税9億円は16.7%を占めているに過 ぎない。また、地方交付税の多 くが基 地対策関係費で占められてお り、本来の一般財源 と呼べ るものは少ない。市町 村税の内訳 をみると、市町村民税所得割4億円が44.7%を占め、固定資産税3 億 円がそれ についで33.8%を占めている。
嘉手納町「平成2年度決算状況」 によれば、平成2年度の財政力指数 (昭和 63〜平成 2年度)は 0.44%、 実 質 収 支比 率 は7.8%、 経 常 一 般 財 源 比 率 は 147.1%である。また、公債費負担比率 は8.6%、 公債費比率 は15.8%、 起債制 限比率 は
15。
1%となっている25p。嘉手納町「基地関係収入決算額の状況 (平成3年度決算見込み額
)」
には、平 成3年度 に受 けた交付金等の状況が示 されている20。
特定財源 を用 いる防衛施 設周辺環境 の整備 としては、障害防止工事の助成(3条関係)3,679万円(嘉手 納小学校防音事業等)、 民生安定施設の助成 (8条関係)1億
6,078万円(町道 79号線改良舗装工事等)、
特定防衛施設周辺整備調整交付金 (9条関係)2億7,455万円(行政セ ンター道路用地取得事業等)、 計4億7,213億円の助成 を受 けている。
基地収入の根幹 をなす一般財源である国有提供施設周辺整備調整交付金 (基 地交付金)が1億8,863万円、施設等所在市町村調整交付金 (調整交付金)が
4億9,469万円に達 している。
以上の基地関係交付金 に、財産運用収入 (基地関係のみ)2億1,312万円、
施設 区域取得事務依託金等90万円を合計す ると、総計で13億 6,948万円にの ぼっている27)。
嘉手納町「平成4年度決算状況」 によれば、平成4年度の財政力指数 (平成 2〜 4年度)は 0.382に 下がっている。実質収支比率 も5。9%に下がっている。
経常一般財源比率 も142.0%へとやや減少 している。公債費比率 は15.4%へと 低下 している。起債制限比率 も14.8%へと低下 している
20。
平成4年度 の歳入合計63億1,566万円 に占める一般財源 は、26億 6,405万 円 (42.2%)に過 ぎない。その一般財源のかな り多 くの部分 を、基地関係収入 が占めている。その内訳 は、
(1)国
有施設助成交付金(基地交付金)、(2)米
軍施設 (598)35法経研究
に対する調整交付金、
(3)町
有地 における基地関係の財産運用収入である。自主財源の代表である地方税収入9億3,637万円は、歳入全体 の14.8%に過 ぎない。 その うち、町民税 (個人分)が4億1,233万円 (44.0%)と過半 を占 めている。 これは、軍用地地主の個人所得の貢献部分が大 きい。町民税 (法人 分)は、7,614万円に過 ぎない。 これは、町域がせ ま く、経済活動が振 るわない ことを反映 した数字である。町財政 における自主財源の部分 も、かな り多 くを 基地収入 に頼 っていることを示 している。
固定資産税 は、3億3,968万円 (36.3%)が徴収 されている。 これには、軍 用地の うちの私有地 に対す るものが、多 くの割合 を占めている。
嘉手納町「基地関係収入決算額の状況 (平成5年度決算見込み額
)」
には、平 成5年度 に受 けた交付金等の状況が示 されている。特定財源 を用いる防衛施設周辺環境 の整備 に対 しては、、障害防止工事の助成 (3条関係)3,823万円(嘉手納 中学校講堂防音事業)が大 きい割合 を占めてい る。総事業費4,024万円の うち、約95%が防衛補助金で まかなわれている。特 定防衛施設周辺整備調整交付金 (9条関係)は、2億8,718億円を占めている。
その内訳 は、町道55号線改良舗装工事 (用地購入)3,280万円 (事業費の金額 補助)等である。基地関係の補助金 は、補助率が高いのが特徴である。
基地収入の根幹 をなす一般財源 として、
(1)国
有提供施設周辺整備調整交付金 (基地交付金)が 2億460万円、(2)施
設等所在市町村調整交付金 (調整交付金)
が5億1,668万円に達 している。
(3)町
有地 にお ける基地関係 の財産運用収入が 2億6,800万円を占めている。 この三者の合計で、9億8,928万円 と、一般財 源の37%に達 している29。
財産運用収入 (基地関係)の状況 (平成5年5月 26日)には、嘉手納飛行場 と弾薬庫 の面積 と賃貸料 が示 されてい る。嘉手納飛行場 は、面積22万2,719
m2、
算定賃貸料 (年額)1億1,440万円 となっている。 また、嘉手納弾薬庫の 面積 は86万4,850m2、 算定賃貸料 (年額)は、1億2,560億円 となっている。基地関係賃貸料が、総計2億4,000万円にものぼってい ることが、示 されてい る30)。
Ⅲ.基地財政の仕組 み
(1)基
地収入の全体像仲地博「軍事基地 と自治体財政」 には、沖縄県内市町村の基地収入の分析が
%697)
嘉手納町財政 と基地対策 な され てい る。 それ によれ ば、基地関連財源 は「防衛施 設周辺 の生活環境 の整 備 等 に関す る法律」 (基地周辺整備法)に 従 って、以下 の8種類 に分類 され てい
る31)。
①障害防止工事 の助成一一― 自衛隊や米軍 の行為 による障害 を防止す るた めに必要な工事費用の全部又 は一部 を国が補助。補助率 は10分の10が 原則である。河川改修、ダム関係、学校防音、排水路工事等について、
実施 されている。
②民生安定施設の助成一一三基地 の設置・ 運用 により、周辺住民の生活や 事業活動が阻害 され る場合、市町村がその障害の緩和 のため、生活環境 施設や事業経営の安定 に寄与す る施設の整備 を行 うとき、国がその費用 の一部 を補助するものである。学習等供用施設、養豚施設、漁業用施設、
庁舎、公民館、図書館、公園等多岐 にわたっている。基地容認政策 とし ての性格が強 く、「基地があれば不U益がある」とい う状況 をつ くり出そう
とす る制度であると批判 されている。
近年の沖縄県における市町村の財政力 に不釣 り合 いなほどの一点豪華主 義 とも思 えるような社会資本の著 しい充実 は、 この制度 によるところが かな り大 きい もの と思われ る。
③特定防衛施設周辺整備交付金一―一面積 の広大 な防衛施設や航空機 の音 響 に起因する障害の著 しい飛行場等、その施設の運用が周辺地域の生活 環境や開発 に著 しい影響 を及ぼ している防衛施設の周辺の地域 に対する 環境整備のための国の交付金である。沖縄では18市町村が特定防衛施設 関連市町村 として指定 されている。 この交付金 は、
(1)交
通施設及び通信 施設、(2)ス
ポーツまたはンクリエーション施設、(3)環
境衛生施設、教育 文化施設、(4)医
療施設等の整備 に当て られることになっている。交付額 は、特定基地の面積、当該市町村基地 に占める特定基地の割合・ 人 口、特定基地の運用の態様等 を基礎 として算出され る。基地交付金 な どのよ うな財源補給的な ものではな く、公共施設の整備のための特定財源であ る。「実際 は、道路 の舗装工事や排水路工事等 に使われ、事実上一般財源 化 している」 と指摘 されている
3a。
財産運用収入―一―市町村有地 を貸 し付 け、その対価 として賃貸料収入 を受 け取 る場合である。基地 として国に貸 し付 けられ る場合 も同様であ る。沖縄 の軍用地の3分の1は市町村有地であ り、その賃貸料 は自治体 (596) θ7
法経研究 (1996年)
財政 に大 きな影響 を与 えている。
④施設区域取得等事務委託金一一―基地関係業務は多岐にわた り本来の行 政外の出費を生 じる場合があるので、それを償 うためのものである。防 衛庁予算の (項)提供施設運営関連費から支出される。
⑤財産運用収入一一一市町村有地を貸 し付け、その対価 として賃貸料を受 け取 る場合に得 られる。沖縄の軍用地のうち3分の 1は 市町村有地であ り、その賃貸料は、自治体財政に大 きな影響 を与 えている。
⑥助成交付金 (基地交付金)一一一―国が、基地 として使用している国有の 固定資産 (土地・建物)が所在する市町村に対 して交付するもである(国
有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律1項
)。
これは、国有の 固定資産で米軍や自衛隊が使用するものに対 して、市町村が課税できな いことに配慮 して交付されるものである。それにとどまらず、「駐留軍等 がいることによる特別の財政需要、住民感情等を勘案」して、政策的な 配慮から交付されるものである。交付額は、総額の 100分 の 75を 固定資産税の価額に従ってあん分 し、
100分 の 25を 「特に必要があると認める市町村 に対 して自治大臣が配 分」(施行令3条 2項)するものである。
交付金の交付額は、沖縄県内市町村計で対象資産の0.8%である。固定 資産税相当額1.4%よ りかなり低 く算定されているという指摘 もなされ ている。
「固定資産税の代替的なものであれば、基準財政収入額に算入される のが筋であるが、算入されていないことに留意する必要がある。これは、
後に述べる調整交付金でも同様である」 と分析 されている
30。
⑦調整交付金一一一米軍所有の固定資産に対する固定資産税に代わるもの として交付されるものであ (施設等所在市町村調整交付金交付要綱3条 参照
)。
調整交付金の交付額は、自治大臣が、総額3分の 2を 米軍資産の価格 を基礎 として配分 し、3分の 1を 「市町村が受ける税財政上の影響その 他施設等所在市町村の財政の状況を考慮 して」配分 している(要綱4条
)。
調整交付金は、佐藤首相の特命で復帰直前の 1970年 に新設されたもので ある。全国の米軍基地 (専用施設)の 75%は沖縄に集中しているため、
調整交付金の総額の70%が沖縄県内市町村に交付されている。
(595)
嘉手納町財政 と基地対策
③特別交付税一一―地方交付税 の普通交付税 に算入 されない特別の財政需 要 に対 して、財源不足額 を交付す るものである。特別交付税の算定事項 の中に、「防衛施設周辺の整備事業 に要する経費があること」とある。 そ の算定方法 は、基地周辺整備法 による障害防止工事 と民生安定施設の整 備事業 に要する経費の うち、当該市町村が負担すべ き額の半分 となって いる (特別交付税 に関す る省令2条、3条
)。
仲地博教授 は、以上の小括 として、「基地関連財源の うち、一一一代替 的性格 をもつ もの としては、助成交付金、調整交付金があ り、補償的性 格 を もつ もの として障害防止工事の助成、特定防衛施設周辺整備調整交 付金、施設区域取得等事務委託金があ り、政策的性質 をもつ もの として、
民生安定施設助成、特別地方交付税がある」 と分析 している
34、
(2)基
地周辺環境整備事業一一補償的性格 をもつ特定財源一―昭和41年7月 に制定 された「防衛施設周辺の整備等 に関する法律」及びそれ を強化 した昭和49年6月の「防衛施設周辺の生活環境 の整備等 に関する法律」
に基づいて、基地周辺住民の生活環境の安定 と福祉の向上のための対策が講 じ られている35)。
同法 は、主 に次の内容か ら成 り立 っている。
1.障
害防止工事の助成 (第3条)2.飛
行場等周辺の生活環境 の整備 (第4条〜第7条)
(1)第 1種区域 に所在する住宅 についての防音工事の助成
(2)第 2種区域 内の移転等の希望者 に対 し、移転の補償、土地の買上 げ (3)第 3種区域内に所在する土地 について、緑地帯、緩衝帯 として整備
3.民
生安定施設の助成 (第8条)
4.特
定防衛施設周辺整備調整交付金 (第9条)
5.損
失補填 (第 13条〜第18条)
6。
その他 (第 10条、第11条等)
① 障害防止工事の助成 (第3条
)
障害防止工事の助成 とは、地方公共団体が基地の障害 を防止するための工事 を行 う場合、工事 を行 う費用 を原則的に国が全額補助する制度である。昭和47 年の嘉手納中学校防音工事 を皮切 りにして、以後、嘉手納小学校の改築防音工
(590 ″
法経研究 (1996年 事等が行われている
30。
② 住宅防音工事の助成 (第4条)
住宅防音工事は、基地周辺の住居対策 として、昭和49年基地周辺整備法の制 定の際に、新たに採 り入れられた周辺対策である。第1種区域で住宅防音のた めに必要な工事 を国の仕様によって行った場合、国から100%(最高限度額)の 費用助成を受けられる制度である。嘉手納町では、昭和50年から住宅防音工事 が開始されている。現在では3,516戸 (平成元年度末)が整備 され、進
1//1率
は 91%となっている。③ 民生安定施設の助成 (第8条)
民生安定施設の助成は、防衛施設による周辺住民の生活又は事業活動の阻害 に対する対策である。地方公共団体が障害の緩和に資する生活環境施設又は事 業経営の安定に寄与する施設の整備を行 う場合、国が地方公共団体 にその費用 の一部 を補助する制度である。
嘉手納町では、公共施設のほとんどが この助成を受け、役場庁舎、町民会館、
学習等供用施設(公民館、児童館)、 農民研修センター、商工業研修施設、消防 車、環境美化センター、総合福祉センター、及び公園、町道の整備が行われて いる37)。
④ 特定防衛施設周辺整備調整交付金 (第9条)
特定防衛施設周辺整備調整交付金は、ジェット機が離発着する飛行場、砲撃 や射爆撃が行なわれる演習場などが周辺地域の環境や開発に及ぼす影響 に配慮 した制度である。 このような事情 にある市町村が生活環境の整備の一環 として 行 う公共用施設の整備 (交通施設、教育文化施設、社会福祉施設など)に充て
る費用に対 して国が交付する交付金である。
第3表
9条
交付金(周
辺整備特定財源)一覧表(単
位 :千 円)昭和59年以前 昭和60年 昭和61年 昭和62年 昭和63年 平成元年 合 計 2,015,120 271,164 269,421 271,013 277,551 277,800 3,382,069
(注
)嘉手納町役場『嘉手納町 と基地(平
成3年3月)』 109ページによるイθ (593)
嘉手納町財政 と基地対策 なお この交付金 は、自治省が固定資産税 に代わる財源補填措置 として交付 し、
一般財源 として使用で きる「基地交付金」、「調整交付金」 とは性格が異なって いる。特定の公共施設の整備 のために使用 され ることになっている。すなわち、
使途 を特定 した交付金である。
しか し、比較的広範囲に適用 され る特徴 を持 ち、公共施設の整備拡充 に大い に役立 っている。 この交付金の額 は、防衛施設の面積、運用の態様、関連市町 村 の人 口等 を基礎 として、算定・ 交付 されている。
嘉手納町で公的施設 を中心 とした社会資本が立派 に整備 されている理由の一 つ は、 これ らの交付金 によるところが大 きい。嘉手納町 を訪れて気がつ くこと は、町役場や町民会館等の町営施設が、立派 に整備 されていることである。基 地 を除いた街の規模 が小 さい こともあ り、土地 を多 く使わない一点豪華主義の 施設の充実が中心的課題 にな らざるをえない面 もある。 もちろん、施設の拡充 によって基地の被害が相殺 され るとは考 えられない。
(3)基
地交付金 と調整交付金一一税収 の代替的性格 をもつ一般財源一一 嘉手納基地 (飛行場 、弾薬庫地区、陸軍貯油施設)は、北 は森林地帯の丘陵 地か ら南 は平坦地の大部分 を専有 し、地域振興上 きわめて重要な位置 を占めて いる。都市計画・まちづ くりを推進す るうえで も障害 となっているだけでな く、固定資産税等の町税 の歳入 に とっての制約 な ど、財政面 にもかな りの影響 を及 ぼ している。
第4表
交付金額一覧表
(単
位 :千 円)交付金名 59年 度以前 昭和60年 61年 624「 634「 平成元年 合 計 国有提供施設等所在
市町村助成交付金 (基 地交付金
)1,502,871 205,480 184,932 184,932 184,932 188,631 2,451,778
施設等所在市町村 調整交付金
(調 整交付金
)4,617,652 464,127 466,127 466,127 469,577 494,195 6,977,805
計 6,120,523 669,607 651,059 651,059 654,509 682,826 9,429,583 (注
)嘉手納町役場『嘉手納町 と基地 (平 成
3年3月
)』126ペ ージによる
国で は、 この ような損失 を補 うた め、昭和32年か ら「 国有提供施設等所在市 町村助成交付金 に関す る法律 」 を施行 してい る。米軍提供施設 内 にあ る国有 の (592) イ