経営と経済第74巻第1号1994年6月
ヘッジ会計の論理とその意味
今田正
はじめに
FASBは,金融商品の認識と測定問題へのアプローチ方法として, 「基礎 的金融商品アプローチ」 (fundamental financial instruments approach)を
(1) (2)
採用した FASBは6つの基礎的金融商品を識別することによって,より 複雑な金融商品の性質と金融商品間の関係を解明するとしたのであるoそこ
で,基礎的金融商品の会計問題の理解において,これら基礎的金融商品の認 識と測定問題に関して,重要な領域に,これらの金融商品間を関係づけるも
のとしてヘッジ取引とその会計問題がある。
ヘッジ(hedging)とはリスクにさらされた現物ポジションに対してヘッ ジ手段(商品)で反対のポジションをとることであり,そのヘッジ手段が先
L.ll
物,先渡,オプションまたはスワップといったものである。すなわち,ヘッ ジ対象の価値変動(価値下落)による損失を相殺するようなポジションをヘ ッジ手段を取得することによってリスクの回避を計る行為であるとされるの である。
では,ヘッジ会計とはなにか。一般に,ヘッジに関して特定の会計が必要 とされるのは歴史的原価‑取引基準の会計システムに由来するとされるoす なわち,このシステムのもとでは多くの保有資産および負債に関する価格お よび金利の変動効果は事後の取引において実現するまで認識されない。もし, ヘッジ対象資産,負債の損益がヘッジ手段の損益と異なる期間に計上される
とすれば,その会計効果はその相殺勘定が異なる会計期間の損益として報告
157
されることになる。そこに「ヘヅジ会計」なる特殊の会計手続が必要となる とされるのである了このように,
r
ヘ、ソジ会計」とは,ヘ、ソジが行われた日 からヘッジ対象の価値変動とヘヅジ手段の価値変動とが同一期間において相 殺されることを確保するための特殊な取扱いとして定義づけられる。伝統的会計においては,これら将来取引に関する未実現損益はその実現の ときまで財務諸表上認識されない。この伝統的認識基準に対する挑戦が,
r
ヘッジ取ヲ
I J
を損粁とする特殊の会計が「ヘッジ会計」と称せられるものであ る。本稿では,この「ヘッジ取ヲU
と区別される「ヘッジ会計」の会計的意 味はなにか,以下,先物契約およびオプション取引を中心として分析する。(註)
( 1 ) Bu l 1 e n
,H . G .
,Wi 1 k i n s
,R . C . a n d Woods
,C . C . m
,The F u n d a r n e n t a l F i n a n c i a l 1 n ‑ s t r u r n e n t Approach
,J o u r n a l 0 1 A c c o n u t a n
り"N o v e r n b e r 1 9 8 9
,p . 7
1.( 2 ) FASB
は,( a )
無条件受取(支払)契約,( b )
条件付受取(支払)契約,( c )
先渡契約,( d )
オプション契約,( e )
保証およびその他の条件付交換契約, (f)持分証券を上げている(昂id.,
p . 7 3 )
。( 3 ) S t e w a r t
,J . E .
,The Cha l 1 e n g e s o f Hedge A c c o u n t i n g
,J o u r n a l 0 1 A c c o u n t a n
,りN o v e r n b e r 1 9 8 9
,p . 4 8 .
( 4 )
昂id.,p p . 4 8 ‑ 4 9 .
( 5 ) B i e r r n a n
,H .
,J
,.rJ o h n s o n
,L . T . a n d P e t e r s o n
,D . S .
,Hedge A c c o u n t i n g
,An E x ‑ p l o r a t o r y S t u d y o f t h e Unde r 1 y i n g I s s u e s
,FASB
,R e s e a r c h R e p o r t
,1 9 9
1.p . 9 .
1
.先物契約とヘッジ会計基準ヘッジ会計の展開の検討において,先づあげねばならない会計基準書は,
FASB r
財務会計基準ステイトメント」第52号( S t a t e r n e n to f F i n a n c i a l Ac‑
c o u n t i n g S t a n d a r d s No
・5 2
以下,SFAS という)
[f外貨換算i l )
および、SFAS
第80
号「先物契約の会計了である。
SFAS
第52号自体は主要には外貨建取引に関ヘッジ会計の論理とその意味
1 5 9
する換算損益の認識に向けられたものであるが,同号はヘッジ会計の適用を 先物為替予約にまで拡大し,非ヘッジの損益認識と異なる会計処理を認めた のである。同号は,ヘッジとスペキュレションの概念を導入したが,この概 念は
SFAS第8 0
号において,先物契約に関して,より明確に展開されたの である。一般的には,両基準におけるヘッジ会計の概念は同じであって,ヘ ッジ手段とヘッジ対象との対称的な会計処理の概念(ヘッジ手段とヘッジ対象 の双方の損益を発生時に計上するか,双方のいづれか一方の繰延べ経理を行う)を導 入したのである。)以下,先物契約のヘッジ会計基準を中心に検討しょフ 。
第8
0
号の焦点は先物契約の市場価値の変動をいかに認識するかにある。そ の変動をその発生時の損益として認識するというのが一般的原則である。こ れは値洗法を根拠に,先物契約の市場価値の変動によって生じる損益をその 変動時に認識するとするのである。すなわち,先物契約の市場価値の変動は,当該契約がヘッジ規準に適合しないかぎり,その変動の期間の実現した損益 として認識される
( 5
)この基本的認識基準に対応して,ヘッジ規準に適合する 先物契約の市場価値の変動は,ヘッジ対象の会計に関係づけられ,ヘッジ対 象の価格,金利の変動が認識される時点で認識されるとされるごそうして,この「ヘッジ会計」適用の条件が「ヘッジ規準」にほかならない。
先づ,第8
0
号はヘッジ対象には,企業が保有している資産,負債,および 確定コメットメント,さらに一定の予定取引が含まれるとし,それらが,ヘッジとして適格であるための条件はつぎの二つであるとする。
a .
ヘッジ対象が企業を価格(または金利)リスクにさらしていること。b.
先物契約が,リスク・エスクポージャーを軽減し,かっ,ヘッジとして指定さ れていること。特に後者の
b
について,( 1 )
ヘッジ対象の価格と先物の価格との間に,明確 な経済的関連性があり,( 2 )
両者の間に高い相関関係がほぼ確実( p r o b a b l e )
ならば,ヘッジの要件を与えられる,とした。また,これらヘッジに関する先物契約の市場価値の変動の損益認識方法に ついて,各ヘッジ対象のタイプに従ってつぎのごとく規定した。
( 1 )
ヘッジ対象資産または負債が公正価値で評価される場合まず,企業がヘッジ対象(現物または金融商品)の公正価値の未実現の変動 を当期損益に含めるならば,関連する先物契約の市場価値の変動も,変動発 生期間の損益として認識するものとされる。もし取得予定の資産または発生 するであろう負債が,取得後また発生後に公正価値で評価されるならば,予 定取引をヘッジする先物契約にも先と同じ会計処理を適用するものとする。
また,ある企業では,資産を公正価値で評価する一方,未実現の価値変動を 株主持分の個別の区分に含め,当該資産の売却または処分の時まで認識を繰 延べる。その場合,それら資産についてのヘッジ要件を満す先物契約の市場 価値の変動はまた,それら資産の売却または処分の時まで株主持分の一区分 に計上されることになる。
( 2 )
保有資産,負債および、確定コミットメントが原価及び低価法で評価さ れる場合保有資産または負債のヘッジとしての先物契約の市場価値の変動はヘッジ 対象の帳簿価額の修正として認識される。すなわち,先物契約の価値変動の 認識は,ヘッジ対象が売却等によって損益が認識されるまで,先物契約の損 益をヘッジ対象の簿価の修正として繰延べるのである。
確定コミットメントのヘッジたる先物契約の市場価値の変動は,将来にお いて当該確定コミットメントが履行されるとき,その取引の測定値(取引価 額)に含めるものとされるのである。)
( 3 )
予定取引のヘッジさらに,先物契約は,企業の通常業務で履行が義務づけられていない予定 の取引にも関係し,これら予定取引のヘッジについては,つぎのように規定 される。予定取引の価格,金利をへッジする先物契約の市場価値の変動はヘ ッジ規準を満し,かっ,つぎの両条件を満す場合にのみ,のちに実行が予定
へッジ会計の論理とその意味
されている取引の測定値に含められるものとされる。)
a .
その予定取引の重要な特徴と予定期間を確認しうること。b.
その予定取引の実行がほぼ確実なこと。1 6 1
なお,ヘッジとされる先物契約が予定取引日まえに差金決済される場合は,
その市場価値の変動累計額は繰延を続行し,その予定取引の測定値に含める とされる。また,予定取引の数量が少なくなることがほぼ確実になった場合 は,それをヘッジする先物の結果のうち,その減少に比例した部分は,その 時点で利得または損失として認識するものとされる。
以上のように,まず,非ヘッジの先物契約と同様に,ヘッジ対象が公正価 値で評価され,その未実現損益が認識される場合は,そのヘッジ手段たる先 物契約の市場価値の変動による損益はヘッジ会計によらず即時に認識すると される(1
5 )
他方,ヘッジ対象が取得原価(および低価法)で評価されている場 合はどうか。保有資産,負債をヘッジする先物の市場価値の変動による損益 は,ヘッジ規準を満せば,ヘッジ対象の資産,負債の繰越額の修正として繰 延べられる。特に,後者の場合の市場価値の変動は,ヘッジ対象の売却や処分等による 損益が認識される時まで簿価の修正として繰延べられるのである。これは,
ヘッジ手段たる先物契約それ自体はその契約締結時において,その契約上の 権利・義務は貸借対照表上に認識されないことによる。そのため,先物契約 の市場価値の変動をヘッジ対象の簿価の修正として認識するとしたのであ る。
また,確定コミットメントをヘッジする先物契約の市場価値の変動の損益 も,ヘッジ規準を満せば,コミットメントの測定値に含めて繰延べるものと した。また,予定取引をヘッジする先物についてはヘッジ規準に加え,追加 的な
2
つの規準を満たす場合には,その市場価値の変動による損益を繰延べ ることを認めたのである。以上が
SFAS
第8 0
号の内容である。ところで,先物契約の市場価値の変動の認識としては,一般に二つがあるとされる。一つは,先物契約の市 場価値の変動による損益を,反対売買によって差額だけを決済する場合,
その決済時に認識する決済基準(c1
o s e do u t )
である。いま一つは,先物 契約の市場価値の変動による損益を,その変動の期間に認識する値洗基準( m a r k ‑ t o ‑ m a r k e t )
である。つまり,SFAS
第8 0
号は,その基本的認識基準 として MTMを採用したのである。未決済の先物契約の市場価値の変動に 基づく損益を実現損益とみなして認識することを基準化したところに特徴が ある。一般に,先物取引については MTMが採用される。もし,ヘッジ対象の 市場価値の未実現の変動が当期損益に含められるすれば,ヘッジ手段の変動 損益もまたその発生時の利益として認識される。一方,ヘッジ対象の損益が 繰延べられるとすれば,ヘッジ手段の損益は当期の利益としと認識されるこ
となく,ヘッジ対象の簿価の修正として繰延べられることになるのである。
(註)
( 1 ) FASB
,S t a t e m e n t 0 1 F i n a n c i a l A c c o u n t i n g S t a n d a r d s N o . 5 2
,F o r e i g n C u r r e n c y T r a n s 1 a t i o n
,December 1 9 8
1.( 2 ) FASB
,S t a t e m e n t 0 1 F i n a n c i a l A c c o u n t i n g S t a n d a r d s N o . 8 0
,A c c o u n t i n g f o r F u t u r e C o n t r a c t s , August 1 9 8 4 .
( 3 ) FASB
,SFAS N o . 5 2
,p a r a
,2 0
,2
1.B i e r m a n
,H . J r .
,J o h n s o n .
L.T . a n d P e t e r s o n D . S .
,φ. c i t .
,p . 1 5 6 .
( 4 ) Bierman
,H . J r .
,J o h n s o n .
L.T . a n d P e t e r s o n
,D . S .
,o p . c i t .
,1 5 7
,S t e w a r t
,]. E.,o p . c i t .
,p . 4 9 .
(5)
SFAS N o . 8 0
,p a r a . 3 . Hauworth
,W. P . I I . a n d Moody
, L.,An A c c o u n t a n
t's O p ‑ t i o n P r i m e r : P u t s and Ca l 1 s D e m y s t i f i e d
,]o u r n a l 0 1 A c c o u n t a n c y , J a n u a r y 1 9 8 7 , p . 9 0 . ( 6 )
昂i d . , p a r a . 3 .
( 7 ) I b i d .
,p a r a . 4 . ( 8 ) I b i d . , p a r a . 4 . ( 9 )
昂i d .
,p a r a . 5 . (
1
0)昂i d .
,p a r a . 6 .
(1l)(1~ 昂id. ,
p a r a . 6 .
ヘッジ会計の論理とその意味
1 6 3
(1~ 昂id..
p a r a . 9 . (
1
4)昂id..p a r a . 1 0 .
同
この基準は年金プラン,投資会社およびブローカー・ディーラーのヘッジ取引にも 適用され,大部分の資産の公正価値の変動をその発生時に認識するのである (Ibid..p a r a . 3 6 ' ) 0
(1~ 昂id..
p a r a .
41.制
FASB
は,その理由として.r
すべてではないが,多くの先物契約は,買建者に,ー 定量の商品または金融商品を特定の日に取得する権利を与えるとともにそれら商品 に対する対価を支払う義務を負わせる。売建者は商品を引渡す義務を負う一方,対 価を受取る権利を有する。しかしながら,これらの権利が行使され,義務が確定的 になるのは,企業が取引の最終日まで当該先物契約を保有する場合に限られ,この ような状況は,まれにしか生じない。さらに,先物契約の下での現物の受渡に係わ る個々の権利・義務はその他の大部分の完全未履行契約にみられる権利・義務と類 似しており,それらは,通常,財務諸表上認識されない」という(昂id..p a r a . 3 5 . )
。1I.オプションとヘッジ会計
( 1 )
非へY
ジとヘッジオプションオプションは
2
者の聞の契約の一種である。この契約では,当事者の一方 が他の当事者に特定の資産を予め決められた価格で,一定期間内に購入する 権利を与え,自らは売却の義務を負う(コール・オプション)。また当事者の 一人に特定資産を売却する権利を与える契約もある(プット・オプション)。この契約の対価がオプション料にほかならず
(1)
会計上はそれらが資産,負債 として認識されるのである。買い手たる投資家は,直接に対象物C u n d e r l ‑ i n g i n s t r u m e n t )
ではなく,オプションの購入によって高いレパレッジを有し,権利行使の他,転売や買戻しによって,いつでも 手仕舞う"ことも可 能となる。
投機目的のオプションを考えよう。それはオプションの売買等による利益 の獲得を目的とする。たとえば,購入したオプションを支払オプション料よ
り高い時価で転売して利益を得る。また権利行使によって, (例えばプット・
オプションにあっては)時価で取得したオプション対象を,時価より高い行使 価格で売却することにより利益を得る。また, (コール・オプションにあっては) 時価より低い行使価格で取得したオプション対象を時価で転売することによ
って利益を得ることになる。かくて,非ヘッジのオプションもまた時価によ って評価されるべきとされる。
また,オプションは保有ポジションやコミットメントのヘッジとして用い られ,ヘッジ会計が適用されるとされる。ヘッジ目的のオプションは,オプ ションの購入によって, (プット・オプションにあっては)保有ヘッジ対象の価 格の下落に対して, (コール・オプションにあっては)価格の上昇に対して行使 価格をもってヘッジする。また,この買建オプション
( p u r c h a s e do p t i o n )
では,オプションの行使日にオプションの損益が確定し,実現する;
ところで,オプション料は二つの部分からなるとされる。ヘッジたる買建 オプションの時間的価値は保険料に相当するものと考えられ,オプションの 行使期間にわたる損失のリスクを回避するための購入者のコストを表わして いるとみなされる。かくて,時間的価値は予め分離し,オプション期間中に わたり償却し,費用として認識するとされる。他方,本源的価値については ヘッジ対象と同ーの評価基準を適用するヘッジ会計処理が行われることにな る。
また,ヘッジ目的の売建オプション
( w r i t t e no p t i o n )
にあっては,オプ ションはオプション対象の購入や売却において,オプション料を限度にオプ ション対象の有利,不利な価格変動からのリスクを回避することを目的とす る。ヘッジ会計要件を満たす売建オプションにあっては時間的価値と本源的 価値とは分離されるべきではないとされ,ヘッジ会計はオプションの総額に ついて適用されることになる。以下,オプションを含むヘッジ会計基準を整 理しよう。( 2 )
ヘッジ会計の定義ヘッジ会計の論理とその意味 1 6 5
ヘッジは,ヘッジ対象
( h e d g e di t e m )
から生じる損益がヘッジ手段(hed‑
g i n g i n s t r u m e n t )
から発生する損益によって,全部または一部が相殺され ると期待して行われる。しかし,ヘッジの構成要素( h e d g ecomponents)
であるヘッジ対象とヘッジ手段の評価方法と損益の認識方法の違いにより,一般に認められた会計原則のもとでの財務諸表で認識されるヘッジ構成要素 の損益が期間的に対応しないミスマ、ソチ
( m i s m a t c h i n g )
が生じる(7)このよ うな場合,ヘッジ対象とヘッジ手段に係わる損益を同一期間に認識するため の会計手法が必要となる。かくして,ヘッジ会計は,ヘッジ設定時からヘッジ対象およびヘッジ手段 の価値の変動を一つの期間に均衡させるための会計処理であると定義されよ う。通常,ヘッジ会計は実現ないし未実現のヘッジ対象の利益(又は損失) またはヘッジ手段の損失(文は利益)の認識を繰延べる実務と考えられる。
他方,もし,ヘッジ対象とヘッジ手段が値洗法で処理され,その変動が当期 損益に計上される場合は,ヘッジ手段の利益(又は損失)またヘッジ対象の 損失(文は利益)をその発生の期間に認識すること, ともいえる
( 8 )
つまり,ヘッジ会計は,ヘッジ対象の利益(又は損失)とヘッジ手段の損失(又は利益) の双方が当期に計上されるか,繰延べられるにせよ,その均衡を計る会計と なる。
(3) ヘッジ会計の方法
以上から,保有ポジションの測定に関して主要に二つの方法がある。いづ れの方法でも,ヘッジ要素の損益が同時に認識されることになり,ヘッジ要 素の一方の損失が他方の要素の利益によって相殺されることになる。
① 繰 延 ア プ ロ ー チ
( d e f e r r a la p p r o a c h )
繰延アプローチは,ヘッジ手段とヘッジ対象の双方の損益を後の期間まで 繰延べるのである。この方法には, (1)ヘッジ手段の損益をその発生時に認識 しないで,ヘッジ対象の認識解除の時点まで繰延べる。
( 2 )
ヘッジ対象の損益 をその発生時に認識しないで,ヘッジ手段の損益の認識の時点まで繰延べる,というこつの方法がある。
特に,オプション等の金融商品は時価で評価されることが前提とされてい る。したがって,アメリカにおける実務では,従来, (1)の繰延会計によった。
通常, MTMで評価されるヘッジ手段の損益を,通常,歴史的原価によるヘ ッジ対象の認識解除時点まで繰延べる会計処理が行われてきた。もちろん,
ヘッジ対象の利益(損失)が認識されるとすれば,ヘッジ手段の損失(利益) によって均衡されることになる。
② 時価アプローチ
( m a r k ‑ t o ‑ m a r k e ta p p r o a c h )
時価アプローチは,ヘッジ手段とヘッジ対象との双方の損益を時価の変動 に応じて,それらが発生したとき認識する方法である。この方法には,
( 1 )
ヘ ッジ手段の損益が時価評価によりその変動時に認識されるのに対応させるた め,ヘッジ対象(通常,歴史的原価による)の損益認識を時価に転換して認識 する。逆に,( 2 )
ヘヅジ対象が時価により評価される場合は,ヘッジ手段も時 価により損益を認識することになる。結局,この方法では,ヘッジ要素の双 方が時価で評価されることになる(11)① 混成アプローチ
( h y b r i da p p r o a c h )
繰延アプローチおよび時価アプローチに加えるに,測定属性ではなく,ヘ ッジ構成要素のどちらか一つに焦点を置く第3のアプローチも用いられる。
例えば,ヘッジ対象に焦点がおかれ,ヘッジ対象が時価によっているとすれ ば,ヘッジ手段も時価により,ヘッジ対象が歴史的原価によって処理されて いるとすれば,ヘッジ手段も歴史的原価によって処理される。他方,ヘッジ 手段に焦点がおかれる場合には,ヘッジ手段の評価に合わせてヘッジ対象の 評価を行う。この方法では,あるヘッジについては繰延法が,他のヘッジに ついては時価法が適用されることとなる。
( 4 )
ヘッジ会計の論拠以上のように,ヘッジ会計においては,その構成要素の測定は原価主義か らの離脱も当然に前提とされている。これらについて,
H.
ビアマン等はそへッジ会計の論理とその意味
1 6 7
の『調査報告書
I J (FASB R e s ω r c h R e p o r t
,Hedge A c c o u n t i n g )
においてい う。こんにちの会計は取引に基づく歴史的原価システムとされているが,そ れは混合の測定属性システムであり,財務諸表上に認識される諸要素は種々 の異なった属性によって測定され,一つの複合の測定属性システム( a m i x ‑ e d ‑ a t t r i b u t e s y s t e m )
であると。例えば,現在のモデルは,低価法の適用は いうまでもなく,ある資産については歴史的原価で,また他の場合は現在原 価,取替価値,現在退出価値,正味実現可能価値,また将来キャッシュ・フローの現在価値をもって測定されている,というのである。
そこで,ヘッジに関していえば,もし,保有ポジションの二つのヘッジ構 成要素が継続して現在市場価値で測定されるとすれば,ヘッジ会計の必要性 の多くはなくなる。また,ヘッジ対象とヘッジ手段との相互関連性の存在も 必要としない。一方,ヘッジ対象とヘッジ手段の双方が純粋の歴史的原価(据 置法)で継続的に測定されるとすれば,ヘッジ手段の期聞がヘッジ対象のそ れより短いか,長い場合(その時点で損益の繰延の問題が生じるニとになる)で なし、かぎり,ヘッジ会計の必要はない。金融資産および負債は保有期間を通 じてその当初価値で測定され,市場価値の変動は事後の取引において資産が 認識されるか負債が決済されるまでは認識されないことになる。
しかし,前述のごとく,現在の会計システムは純粋の市場価値あるいは純 粋の歴史的原価というより多元的測定属性を用いている。ここにヘッジ会計 がより重要となる。ヘッジ会計の出現はこの多元的測定属性の使用によって
もたらされたというのである。
すなわち,ヘッジ対象の損益がある期間に認識され,一方,均衡すべきヘ ッジ手段の損益が他の期間に認識される。完全なヘッジをもって相殺の効果 がでるとしても,財務諸表は異った効果をもたらす。たとえば,
w
調査報告 書』は先物契約の場合について,つぎのような例を上げる(5)
例えば,ある実体が投資目的で同定金利のモーゲージ証券を取得した。これらモー ゲージ証券を保有することで,当実体は以後,金利が上昇するリスクを負うことに
なる。もし金利が上昇するとすれば,モーゲージ証券の価値は高金利を反映して減 少する。そのリスク回避のため,売建先物契約によるヘッジ取引からの利益によっ てモーゲージの損失を相殺する。もし,ヘッジ会計が認められないとすれば,実体 の財務諸表はヘッジの経済的実態を反映していない。すなわち,現行の一般に認め られた会計原則の下で,先物契約は MTM法で処理され(損益はその発生時に認識さ れる),一方,モーゲージの投資は原価で処理される(損益はそ実現の時まで繰延べられ る)ことになる。したがって,もし,金利がヘッジ期間を通じて一定である場合に のみ,実体の財務諸表はヘッジの経済的実態を反映することになる。
かくて,このようなヘッジに関する測定問題の解決方法が,先に掲げた繰 延ヘッジ会計と時価ヘッジ会計という,二つの会計方法であるというのであ
‑ァ
匂。
( 5 )
オプション料の分解オプション料の評価についての問題にオプション要素の分解の如何があ る。オプションをその総額で計上する一括法に対して,分解法はオプション 価格を本源的価値(i
n t r i n s i cv a l u e )
と時間的価値( t i m ev a l u e )
とに分解する処理法をさす。
プットおよびコール・オプションについて,オプションが
i n ‑ t h e ‑ m o n e y
である場合の,その額が本源的価値である。コール・オプションの場合につ いていえば,オプション対象の市場価値が行使価格を上回る場合,オプショ ンはi n‑the‑momey
であり,このi n ‑ t h e
・‑money
の額が本源的価値である。またプット・オプションについてはその逆となる。
at‑the‑money
およびo u t ‑ o f ‑ t h e ‑ m o n e y
の場合のオプションについては本源的価値はゼロである。オプションの時間的価値は,オプション価格が本源的価値を超過する額であ
る 。
オプションの時間的価値と本源的価値とが分解して処理される場合,時間 的価値はオプションの行使期間にわたって償却され,オプションの満期日ま でに時間的価値はゼロとなる(1
6 )
この考え方は,時間的価値は満期日のオプシへッジ会計の論理とその意味 1 6 9
ョン価値の変動の期待値であり,満期日が近づくに従っで減少し満期日に はゼロとなる, とするのである。他方,本源的価値はオプション対象の価値 の変動を表わしているとするのである。
ところで,
AICPA
のオプション会計基準に関する『イッシュー・ペー パー』(ISS1mPaper86‑2Y)
は,この分解法に関して混成的立場をとる。す なわち,AICPA
の会計基準常務委員会( A c c o u n t i n gS t a n d a r d s E x e c u t i v e Committee
=AcSEC)
はFASB
のSFAS
第5 2
号で採用されたアプローチ を採用し,他の場合には,SFAS
第8 0
号のアプローチを採用している了)ヘ、ソ ジ会計要件を満たす買建オプションについて時間的価値は保険料に等しいと みて行使期間にわたって収益へ借記すべきであるとして分解法を勧めたので ある。すわなわち,AcSEC
は本源的価値の変動のみを繰延べることは,本 源的価値の変動とヘッジ対象の変動に基づいてその関連性を測定する点で一 貫性を有するとしたのである。結果として,時間的価値の会計処理は一般的 に先物契約に関するSFAS
第5 2
号に相応し,本源的価値については先物契 約に関する同第8 0
号に相応しているとする。一方,売建ヘッジ・オプションについては,
AcSEC
はそれがオプション 期間中には損益とはならないという理由をもって,分解法は認められないと する。分解法を排除することは第8 0
号の基準に合致しているとする。ただし,予約ヘッジの手段としてオプションが用いられる場合はヘッジ期間にわたっ た組織的償却か,ヘッジ対象の測定に含める方法を認めたのである了
以上のように,分解法を主張する見解は,時間的価値は最終的にはゼロま で減少する一方,本源的価値は増加ないし減少する,とみる。類似法でいえ ば,時間的価値は保険料に類似する。さらに,時間的価値と本源的価値は事 柄を明確なものとするのであって,分解法なしには,ヘッジ手段の市場価値 の変動を追跡しなければならないが,分解法を採用すれば,ヘッジ対象の市 場価値の変動のみを追跡すればよいことになる。要するに,分解法は市場価 値の変動の追跡を容易にするというのである。
(註)
( 1 )
ゴードンJ
.アレクサンダー/ウィリアムF.
シャープ著・日興リサーチセンター 訳『現代証券投資講座』日本経済新聞社刊,1 9 9
,16 6 8
頁参照。( 2 )
前掲書,6 6 9 ' " ' ‑ ' 6 7 0
頁。( 3 )
オプション取引会計基準研究委員会報告『オプション取引会計基準形成に向けての 調査研究』企業財務制度研究会,1 9 9 2 . 7 .
,3 2 5 ' " ' ‑ ' 3 2 6
頁。( 4 )
前掲書,3 3 0
頁。( 5 )
前掲書,3 3 1
頁。( 6 ) Hauworth
,W. P . I I
,a n d Moravy
,L . J .
,A c c o u n t i n g f o r Expanded Use o f O p t i o n T r a n s a c t i o n s
,CPA J o u r n a l
,May 1 9 8 7
,p . 6 0 .
( 7 ) B i e n n a n
,H . J r .
,J o h n s o n
,L . T . a n d P e t e r s o n
,D . S .
,O p . c i t .
,p . 8 .
(8)I b i d .
,p . 9 .
( 9 ) I b i d .
,p . 2 4 .
(1~ 昂id. ,
p . 2 5 . ( 1 1 )
昂i d .
,p . 2 7 .
(1~ 品id. ,
p . 3 0 . (
1
功I b i d .
,p . 2 2 . (
1
4)昂i d .
,p . 2 3 .
(1~ 昂id. ,
p . 2 4 .
(1~ 昂id. ,
p . 3 3 .
。
方
AICPA
,I s s u e s P a p e r 86‑2
,A c c o u n t i n g f o r O p t i o n s
,March 1 9 8 6 .
(1~
Biennan
,H. J r . and o t h e r s
,o p . c i t .
,p . 3 3 .
(19)~~ Ib
i d .
,p . 3 3 .
制 似 品i d .
,p p . 3 3 ‑ 3 4 .
ω
昂i d .
,p . 3 4 .
1 l I . AICPA
のヘッジ会計基準ここで,以上の論議の基礎資料のーっとなった『イッシュー・ペーパー』
の要点を整理しておこう。
AICPA
は1 9 8 6
年にオプション会計基準に関する タスク・フォースにより同書を表わしたが,その主要内容は,AcSEC
の勧ヘッジ会計の論理とその意味 1 7 1
告からなる。
さて,
FASB
のSFAS
第5 2
号および同第8 0
号において先物為替予約および 先物契約の方法について,ヘッジの場合と非ヘッジの場合とに異なる会計方 法の適用を提起した。AcSEC
およびタスク・フォースもオプション会計に ついて基本的にこれと同じ結論であるとした(1)まず,同書は非ヘ、ソジのオプ ションの計上額について市場価値による評価を勧告したのである:サなわち,AcSEC
およびタスク・フォースは,FASB
は損益をMTM
基準により認識 することをもって,先物契約について市場価値会計を勧告したのであるが,損益の日々の決済が行われないオプションについても市場価値会計を推した のである。
以下,
AcSEC
およびタスク・フォースのオプション会計についての勧告 の基本点を要約しよう。第一は,ヘッジと非ヘッジオプション会計の区分の如何の問題である。多 くの企業がヘッジ対象の価値の変動がヘッジ手段の価値の逆の変動によって 相殺されることを期待してオプション契約を結ぶ。このヘッジ取引の経済的 効果を反映させるには,オプションの損益がヘッジ対象の価格あるいは金利 の変動の損益が認識されるのと同じ期間に計上されるべきであるとするので ある。
つまり,多くの資産,負債ないしコミットメントに関する価格ないし金利 の変動の結果はその発生の時期ではなく,実現の時をもって認識される。こ の実現基準に従えば,それらの項目をヘッジするオプションに関する損益は その発生時ではなく実現の時をもって計上されるべきものとなる。このよう なことから,ヘッジ目的のオプションの会計処理は非ヘッジのオプションと 同じである必要はない。ヘッジ目的のオプション価値の変動はヘッジ対象の 価値変動が損益計上される同じ時期に繰延べて認識すべきであるとしたので ある。
これらの議論を踏え,
AcSEC
およびタスク・フォースはヘッジ要件を満すオプションの会計は非ヘヅジの会計と異った処理法が採用されるべきであ るとした。また,これと関連し,オプションに関するヘッジ会計はヘッジ対 象が原価法で評価される場合には適用してはならないとしたのである。
では,ヘッジと認められないオプションの測定方法はどうか。
AcSEC
お よびタスク・フォースは,この点,ヘッジと認められないオプションは時価 で評価すべきとしたのである。つぎに,ヘッジと非ヘッジを区分するヘッジ基準はし
1
かに規定されるであ ろうか。同書は,( 1 )
ヘヅジ手段とヘッジ対象の市場価値聞の高い関連性,( 2 )
ヘッジ手段とヘッジ対象の価格聞の経済的関係の存在をあげている。つぎの問題は,ヘッジ対象たる資産,負債あるいは確定コミットメントが,
市場価値ないしそれ以外で計上されている場合,ヘッジ目的の買建オプショ ンの会計において,時間的価値と本源的価値とに分解して処理されるべきか,
ということである。
これに対する結論的勧告はつぎのごとくである。すなわち,ヘッジ要件を 満たす買建オプションの会計においては,もし,ヘッジ会計が, (1)市場価値 以外(低価法)で評価されているか,
( 2 )
市場価値で評価され,かつ,オプシ ョンの本源的価値の変動が株主持分に含められる場合には,時間的価値と本 源的価値とは分解されるべきとした。この見解は時間的価値を保険料をみな しその原価はオプションの行使期間にわたって収益に借記されるべきとす る。時間的価値と本源的価値とに分解し,本源的価値の変動の認識のみを繰 延べることは本源的価値の変動とヘッジ手段の価格の変動の関係についての ヘッジの関連規準に基づいているという点で首尾一貫しているという。時間 的価値と本源的価値の分解はSFAS
第5 2
号や第8 0
号で認められた分解法と 一貫性を有するとするのである。では,売建オプションに関するヘッジ会計の適用についてはどうか。プッ ト・オプションの買建が資産価値の減少をヘッジできることや,コール・オ プションが負債あるいは予定取引をヘッジできることは一般に認められてい
へッジ会計の論理とその意味
1 7 3
る。しかし,プットあるいはコール・オプションの売建がヘッジを構成する か否かはそれほど明確ではない。オプションの売建が保有資産ないし負債と 明確に結びつけられているとしても,オプションの売建によって受取ったオ プション料は,オプションの買建に比べてリスクに対して限界を有する。た とえば,資産についてのコール・オプションの売建によって受取ったオプシ ョン料は資産価値の減少に対する保証とみなすこともできる。しかしコー ル・オプションの売建人は受取オプション料を超える資産価値の減少に対す る保証はないが,プット・オプションの買建人はオプション行使価格を下回 る減少に対しても十分に保証されるケ)というのである。以上から,勧告の結 論は,売建オプションは受取ったオプション料の額を限度としてヘッジ会計 に適合するとした。また,売建オプションがヘッジ会計として適合するため には,買建オプションがヘッジ会計として適合すべき規準に合致すべきとし たので、ある。
それでは,売建オプションのヘッジ会計において,ヘッジ対象たる資産,
負債,あるいはコミットメントが市場価値,あるいは市場価値以外で計上さ れている場合,時間的価値と本源的価値とは分解されるべきか。
『イッシュー・ペーパー』は結論的勧告としていう。ヘッジ目的の売建オ プションの会計において,ヘッジ対象が市場価値あるいはそれ以外で評価さ れているかの如何にかかわらず,時間的価値と本源的価値とに分解すべきで ない。すなわち,売建オプションの目的がリスク・ヘッジであるとすれば,
オプション期間になんら損益を認識すべきでない。取引の目的は損失の回避 であって,利得の獲得ではない,というのである。
つぎに,もし,ヘッジ・オプションにおいて買建あるいは売建オプション を時間的価値と本源的価値とに分解する場合,時間的価値を組織的方法で償 却すべきか,あるいは時価で評価すべきか,ということである。
勧告はしづ。もし,ヘッジ対象が市場価値以外で評価されている場合,時 間的価値は組織的方法で償却すべきである。また,もし,ヘッジ対象が市場
価値で評価され,オプションの本源的価値の変動損益が認識されるとすれば,
時間的価値は市場価値にて評価すべきであるア)と。
また,もしヘッジ対象が市場価値で計上され,本源的価値の変動が株主持 分項目に含められるとすれば,時間的価値は組織的償却の方法と時価評価の 方法とに見解が分かれるという。
この問題と関連し,もし,
( 1 )
ヘッジ会計としての買建ないし売建オプショ ンが決済される場合,( 2 )
その時間的価値が組織的方法で償却されるとし,( 3 )
決済に関して受取られたか,支払われた時間的価値がその未償却残高と異な るとき,その差額は,当該オプションが決済される時の損益として認識する か,ヘッジ対象の簿価の修正として繰延べるべきか,ということである。これについて,
r
勧告」は結論的に,差額はオプションが決済される期間 の損益として認識されるべきであるとした。(註)
( 1 ) AICPA , I s s u e s P a p e r 8 6 ‑ 2 . p a r a . 1 3
1.( 2 ) I b i d . . p a r a . 1 3 2 .
( 3 )
昂i d . .p a r a . 1 3 2 . ( 4 ) I b i d . . p a r a . 1 4
1.( 5 )
昂i d . .p a r a . 1 4 3 . 1 4 8 . ( 6 )
昂i d . .p a r a . 1 6
1.( 7 ) I b i
d..p a r a . 1 8 0 .
(8)I b i d . . p a r a . 1 9 5 .
(9)(1~(1l)昂id..
p a r a . 2 1 8 . (
1
2)I b i d . . p a r a . 2 2 2 . ( 1 3 )
昂i d . .p a r a . 2 4 2 . (
1
4)昂i d . .p a r a . 2 6 7 .
(1
5 )
Ibi d . . p a r a . 2 7 8 .
。 。 昂 i d . .para.283. 前掲『オプション取引会計基準形成に向けての調査研究~ 4 2 5
頁。
へッジ会計の論理とその意味
1 7 5
N.
ヘッジ会計処理以下,ヘッジ会計の具体例を,ヘッジ手段としての買建プット・オプショ ンを例にとろう(1)オプションは,低価法および時価法で計上されている資産 をヘッジするとし,繰延法および時価法によった場合をみる。
いま,ある実体が小麦資産についてプット・オプションでもってヘッジす るとし,小麦の取得およびプット・オプションに関する資料が次の如くであ っアことしよう。
小麦のブッシェル数
1 0 , 0 0 0
ドlレ ブッシェル当り時価2 . 4 5
ドlレ購入日
1
月1
日オプション料
1 , 6 5 0
ドル プットの行使価格2 . 4 5
ドル オプション購入日1
月1
日 オプション満期日9
月3 0
日オプションはその満期日まで保有されるとし,その時点で行使されるとす る。オプション期間中の小麦価格の変動およびオプション料の市場価格の変 動は次の如くである。
日 時
l
ブッシェル当り市場価格 総市場価格4
半期の総市場価格変動1
月1
日3
月3 1
日6
月3 0
日9
月3 0
日2 . 4 5
ドlレ2 . 4 1 2 . 4 3 2 . 3 9
2 4 , 5 0 0 ド
lレ2 4 , 1 0 0 2 4 , 3 0 0 2 3
,9 0 0
( 4 0 0 )
ドル2 0 0
( 4 0 0 )
オプション 本源的 時間的 プレミアムの 本源的価値の時間的価値の 日 時 プレミアム 価値本 価 値 4 半期変動 4 半期変動未償却残高 1 月l 日
,16 5 0 ド ル 0 ド ル
1.65 0 ド ル
,16 5 0 ド ル 3 月 3 1 日
,16 3 0 4 0 0
,12 3 0 ( 2 0 ) ド ル 4 0 0 ド ル
,11 0 0 6 月 3 0 日
,12 5 0 2 0 0 1 , 0 5 0 ( 3 8 0 ) ( 2 0 0 ) 5 5 0
9月 3 0 日 6 0 0 6 0 0 ( 6 5 0 ) 4 0 0
*
(行使価格一市場価格) x1 0 , 0 0 0
ブッシェル以上によって,繰延ヘッジ会計法と時価ヘッジ会計について分解法によっ た場合の会計処理を示そう。本設例においては,小麦資産(ヘッジ対象)の 測定基準は低価法が採用されている。したがって,時価法においては,それ は低価法から時価法へ転換されることになる。また,ここでは分解法が適用 され,オプションの本源的価値の変動は調整され,時間的価値は償却される。
繰延法 (仕訳)
1
月1
日:(小麦資産)
2 4
,5 0 0
( 現 金 )
2 4 , 5 0 0
(プツトオプション1
本 源 的 価 値j (プットオプション¥ ,,.,..
時 間 的 価 値
( 現 金 ) 1 ,
6 5 0 3
月3 1
日:(繰延小麦資産)
4 0
評 価 損. v
(小麦資産)
4 0 0
(プットオプションl …
本 源 的 価 値
J ~.vv
時価法 (仕訳)
1
月1
日:(小麦資産)
2 4 , 5 0 0
( 現 金 )
2 4
,5 0 0
(プットオプション l本 源 的 価 値l (プットオプション¥ ,,.戸
時 間 的 価 値
J ~, v v
( 現 金 ) 1 ,
6 5 0 3
月3 1
日:(小麦資産評価損)
4 0 0
(小麦資産)
4 0 0
(プツトオプション1 I 4 0 0
本 源 的 価 値j
ヘッジ会計の論理とその意味
(繰延オプション) I 4 0 0 評 価 益j
(ヘッジ費用)
5 5 0
6
月3 0
日:(プットオプション
l…
時 間 的 価 値
jυvv
(小麦資産) 2 0 0
(繰延小麦資産) 評 価 益 (繰延オプシヨン)
評 価 損
(プットオプション l …
本 源 的 価 値
j
山(ヘッジ費用)
5 5 0
9月
3 0
日:(プットオプション 1
I5 5 0
時 間 的 価 値l
(繰延小麦資産) 4 評 価 損
τ(小麦資産) 4 0 0 (プットオプション
l日本 源 的 価 値
J
. V(繰延オプシヨン) 評 価 益
(ヘッジ費用)
5 5 0
(プットオプション
l一時 間 的 価 値
J
V V9月
3 0日:(プットオプションの行使)
( 現 金 )2 4 , 5 0 0 (繰延オプシヨン)
評 価 益 6 0 0
1 7 7
(オプション評価益) 4 0 0
(ヘッジ費用)
4 2 0
(プットオプション
l…
時 間 的 価 値
J .
】U6
月3 0
日:(小麦資産) 2 0 0
(小麦資産評価益) 2 0 0
(オプション評価損) 2 0 0
(プットオプション
l…
本 源 的 価 値J
~VV
(ヘッジ費用)
1 8 0
9
月3 0
日:(プットオプション 1 I 1 8 0
時 間 的 価 値j
(小麦資産評価損) 4 0 0
(小麦資産) 4 0 0 (プットオプション
l…
本 源 的 価 値j τ V V
(オプション評価益) 4 0 0
(ヘッジ費用) 1 ,
0 5 0
(プットオプション¥
1…
時 間 的 価 値 9月
3 0
日:( 現 金 )
2 4 , 5 0 0
( 小 麦 資 産 )
2 3 , 9 0 0
(プソトオプション l…
本 源 的 価 値 (繰延小麦資産)
評 価 損j
( 小 麦 資 産 )
2 3 , 9 0 0
(プットオプション l…
本 源 的 価 値
(勘定記録)
小麦資産 小麦資産
χ 2 4 , 5 0 0
え;4 0 0 X 2 4 , 5 0 0
お4 0 0
広2 0 0 x 4 0 0
勾2 0 0 % 4 0 0
お
2 3 , 9 0 0 % 2 3 , 9 0 0
プット・オプション・本源的価値 プット・オプション・本源的価値
り ぺ
V/ 1η
川/
ャ
] ν
んJ
n u n u n U
つνν /
ノ
ー ν λ
川
0 1 勾
4 0 0 1 %
2 0 0 6 0 0
プ、ソト・オプション・時間的価値 プット・オプション・時間的価値
r ω│之 5 5 0 χ 1
,6 5 0 ~ 4 2 0
お
5 5 0 之 ; 1 8 0
x 5 5 0
お ,10 5 0
繰延小麦資産評価損益 小麦資産評価損益
り/
叶わ
ノー
ν λ
川ν
人 川
νノ
ー
η /
川
わ ノー
2 0 0
ヘッジ会計の論理とその意味
1 7 9
繰延オプション評価損益 オプション評価損益わ / 川 り / 切
ν 1 1
ヶ ー 4 0 0 I %
4 0 0
り ノ 叫 わ / 句
4 0 0 4 0 0
ヘッジ費用 ヘッジ費用
お
5 5 0
お4 2 0
お5 5 0 % 1 8 0
お
5 5 0
お ,10 5 0
オプション会計の一般的基礎は時価法である。この基準はオプション取引 が非ヘッジであるか,ヘッジ会計規準を満さなし、かぎり適用されるが, しか しヘッジ会計においては,基本的にヘッジ損益は繰延べられ,ヘッジ対象と 対称的に認識されることになる。本例の場合,繰延法において,ヘッジ対象 の変動損益は資産また負債として繰延べられ,売却時に実現するのに対応し,
ヘッジ手段の損益もまた負債また資産として繰延べられ,行使時に実現し,
ちょうど対称的損益として相殺されるという,ヘッジ会計効果を表現してい る。
ところで,オプション料は先物契約等と異なって,オプション契約につい て受授された総額であり,オプション価格は本源的価値と時間的価値とに分 解され,処理される。買建オプションにあっては,損益は,オプションの行 使日に最終的に確定する。買建オプションは,通常は行使期日まで保有され るものと考えられ,時間的価値はオプション期間中にわたり,時の経過とと もに償却される。もちろん,オプション料は買建時に,全額費用計上する方 法も一つの考え方であるが,本例のごとく,当初オプション料は資産に計上
され,時間的価値はオプション期間を通じて,直線法によってか(繰延法),
オプションの市場価値の変動に比例して(時価法)償却され,配分される。
他方,本源的価値はヘッジ対象の価値の変動を表わすことになる (8 )時価法に おいて,本源的価値はヘッジ対象の評価基準に従って時価が適用され,オプ ションに関する損益はその発生時において対称的に相殺されている。
(註)