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理科教育における観察の機能に関する
実験的研究(第二報)
一水素の実験における観察機能の分析一
自然科学教育研究室 高 野 恒 雄
§L 緒 言
§2・実験的調査の方法
(1)調査対象
(2)問 題 実 験
(3)操 点基準
§3・調査結果と考察
(1)得 点分 布
(2)各現象の観察率
(3)その他の結論
a)観察における転移について b) ヒソトの効果について 結 び
§L 緒 言
さきに第一報において,葦者はヨウ素の実験における観察機能の分析を行い,いくつか の結論と推定とを生んだ。本第二報はヨウ素の実験とは内容,操作共に性格の異なる別種 の問題実験を被検者にさせて,その観察記録を分析してみたものである。勿論この揚合も 問題実験の必要条件として予備知識の有無が観察結果になるべく関係しないようなもので あることが要求されるのであるが,この点と上記のヨウ素の実験とは性格の異なるもので あるという点及び第一報に記した諸条件等を考え合せて,後記のように問題実験として水 素の実験を選択した。そしてその分析結果を第一報の揚合と比較検討したわけである。
§2.実験的調査の方法
(1)調 査 対 象
茨城大学教育単部艶生約220名。第一報においては小,申,高校,大牽の児童,生徒,
学生について調査を行つたが,今回は第一報との比較を重視するため,その中心点をなす のが大学生の観察結果であることを考えて,被検者を大学生のみに絞つて調査した。
(2)問 題 実 験
調査開始前に,各被検者に容量20ccの試験管に0・1規定硫酸約10ccを入れたものと・
別に約1gの華状亜鉛を1個ずつ配布しておき,この調査の意義を簡単に説明してから,
次のような意味の指示を与える、
「試験管の中には希硫酸が入れてある。今この中に別に配布した亜鉛を入れると・水素 ガスが発生する。この揚合かなり多くの現象がみられるが,それらの現象をできるだけ詳 しく観察して記録して欲しい。時間は60分である。」
この揚合,純粋な亜鉛と希磁酸(何れも化学用一級)を用いて,且希硫酸の濃度をα1 規定という低濃度にしたのは,条件を統制するための外に,水素の発生が緩慢な状態の方
がいろいろ微妙な現象の観察に都合がよいからである。
(3)採 点 基準 第 1 表
上記の問題実験の観 一一幽一一 @ 一一一一 P− 一1} 一一一一一}一…一}『〒一『7− − P番号1 現 象 1 1
察を与えられた条件に 11ガスの発生叢は順次,綴迅齢び搬 」
おいてもし完全に行つ 2i気泡の上昇搬は小さい泡は小,大きい泡は大。 i 一
@ 一一一一一一一一一一一一一一四〒一一一
齧̀ 一一一一 }たなら,いかなる観察 」r R 気泡の上昇経路は小さい泡は直上,大きい泡はジグザグ。
一一一一
結果になるかを第一報 141気泡の.ヒ昇速度は初め小,次第・増加し一定となる。
に記したと同騨者一気ゆ上昇によ欄流搬 1
を中心に数名の者が回 6 1
@ { 小さい泡は対流,大きい泡は液面で潰失。 1
に 一一1−一
一一一… @ 一一一一一一一1
を重ねての観察を行い 7 気泡は発生から亜錯を離れるまでに時聞を要する。
次のように決定するこ 1 8 小さい泡は早く,大きい泡は遅く離れる。
とができた。まず「観 i9 気泡は集団的に線状上昇。
察し得る現象」の各々 線状上昇に聞撒的なまとまりがある。
の要点を表に示すと第 111 試験管を傾けると気泡が合体する。 一
1表のようになる。 長時間経つと亜錯の一部は黒化。
第1表に示した現象
1131−一一一.
亜錯の凹所が黒化,凸所は金属光沢。 1
はその要点のみを示し
液面に霧状飛沫が上る。 」
たものであるが,これ
ll5 中程度の大いさの飛沫は特別上昇。
らの現象を少しく詳し
1−i16
液面上部の壁面に水滴が散乱附蒼。
くのぺれば次のように 17 液面のすぐ上は曇り状,家に大粒,上部は中粒。
なる。尚その現象の考 18
一一
高 野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第二報) 101
えられる理由をものべるが,これは採点基準には含めないものである。
(現象1)亜鉛を入れるとまもなく水素が細かい泡となつて発生し始めるが,そのガス の発生は最初しばらくは緩慢であり,後次第に速やかになり,ある程度の時間(誘導期)
を経て発生速度はほぼ一定となる。これがガス発生の最盛期である。20〜30分後には再び 発生速度が減少していく。希研酸の濃度が相当に減少してしまうためである。60分間の観 察では最後までは観察できないが,遂には発生は止り亜鉛が残る。
(現象2)発生する水素ガスの泡の大いさはいろいろであるが,その大いさにより液内 の上昇速度が異る。大きい泡程速度が大である。その方が浮力が大なるためと解される。
(現象3)気泡の上昇経路が,小さい泡と大きい泡とで異り,小さい泡は真直ぐ上昇す るが,大きい泡は2〜3回ジグザグに曲折しながら上昇する。この理由は小さい泡は体積 の割に表面積が大きく,その表面張力によつて球形を保持し得るが,大きい泡は体積の割 には表面積が小さく,球形を保持することが難しく変容が行われるためと推定される。
(現象4)気泡が亜鉛を離れて液面に達するまでの時間は短いが,しかしよく観察する
一 ニ初めは割にゆつくりと,次第に速くなり,後一定となり液面に達することがわかる。こ れは雨粒の落下と類似の現象と考えられ,気泡に対する液の抵抗と浮力とが等しくなるま で上昇速度は増大し,後一定になると解してよいであろう。
(現象5)気泡が上昇すると,小気泡は液面の所で再び降下し対流的現象を呈する。こ れは小気泡は液面で仲々つぶれずにいるので,後から後から上昇してくる気泡によつて生 ずる液流に乗つて,上下の循環運動を行うものと解される。
(現象6)現象5に記したように,小気泡は対流的現象を行うが,大気泡は液面上に出 て消失する。この理由は現象3に記した球形の保持力の差によるものと考えられる。
(現象7)亜鉛の表面に発生した気泡はある程度時間をかけて次第に成長してから離れ て上昇する。
(現象8)現象7の揚合,かなり大きい気泡になるまで離れないものと,まだ小さい気 泡のうちに離れて上昇するものとがある。小さい気泡のうちに離れるものの方が発生して からの時間がかからず,従つて早く離れるといえる。これは亜鉛の表面状態と位置のいか んによるものとみられる。
(現象9)水素気泡の発生は亜鉛表面の各所で行われるが,上昇するときはまとまつた 集団的な流れを構成する。このことは特に小気泡についていえる。これは上昇力の強い気 泡を発生する所の流れの部分が圧力減ずるため,弛の部分の気泡も吸い寄せられると考え
られる。
(現象10) その集団的な流れはやや間激的にまとまりを示し,各々のまとまり毎に上昇
する。
(現象11)試験管を傾けると,気泡は上側の管壁に沿つて上昇する。その際上側の管壁 に達したとき数個の気泡が合体して一個の気泡となることが認められる。
(現象12)ある時間経つと亜鉛の一部は黒化する。
(現象13)亜鉛の黒化の状熊をよく観察すると,凹所は時間の経過と共に黒化してい き,凸所は変色しないで金属光沢を保持する。
(現象14)これまで記述してきた現象は皆液面下の現象であるが,液面上部を観察す ると,まず液面から霧状飛沫が上ることが認められる。これは気泡のつぶれるときに飛散 るものと解される。
(現象15)飛沫の大いさにより飛び上る程度が異なるが,中程度の大いさのものが特別 に高くまで上昇するのが認められる。これはごく小さい飛沫は霧状に飛散するのみであ
り,ごく大きい飛沫は重さのため余り上昇できないためと考えられる。
(現象16)飛沫は液面上方の管壁に,水滴として散乱して附着する。
(現象17)その附着の状態は液面のすぐ上は曇り状,次に大粒が附着し,上方管壁には 中粒が附着する。この状態は現象15と符合する。
(現象18)試験管を振つたり,叩いたりすると,その衝撃により一度に多量の気泡がド ツと上昇する。これは衝撃により亜鉛表面に附着している気泡が,本来ならばまだ離れる 1
條冾ノ達していないものまで一緒に離れてしまうからと解せられる。
以上の18の現象の外に,次の二つの現象が見出されるがこれらは除外した。一つは希硫 酸の中に亜鉛を入れたとき,華状亜鉛であるから当然亜鉛と共に空気が入りこむのである が・これが泡となつてゴボヅと一回発生することである。他の一つは水素の気泡が発生す るとき豆をいるような音が連続的にすることであり,聴覚によつてとらえられる現象であ る。両者は何れも被検者により,はつきり認めていながら記録しない者があり得る現象な ので除外したのである。
又現象7及び8,現象」9及び10,現象12及び13,現象14及び15,現象16及び17等は各々 一つの現象を二つに分析して記述したものである。これは例えば現象12を観察していて
も,現象13は観察していないというような被検者がかなり多いのであるが,これをまとめ て一つの現象として採点すると,完全な観察者と不完全な観察者との区別がつかなくなる ためである。
このような事情により結局は上記の18の現象になるわけであるが,第一報におけると同
様18の現象の内一つの現象を見出し記録できた揚合これを1点の得点とすると,各被検者
のこの観察において見出すことができた現象の数を点数にて表すことができる。この外,
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第一報の採点基準にのぺたことはこの揚合にもあてはまるわけである。
§3.調査結果と考察
(1)得 点 分 布
まず得点数と人数(%)との関係を第1図に示す。
第 1 図 得点は最高10点,最低2点,平均5.O点
20 である。これをヨウ素の実験の揚合(第一
報,第1図)に比較するとカーブの山に広 人!5
がりがある。即ちヨウ素の揚合より平均点
数奮1°)
附近に人数が集中1する度合が少い。それか
辜?E素の観察より平均点は1点高い。
5 5.0点と4.0点の差1点は決して少いとはい
o ρ!2346陶 7891ρ〃 察より得点しやすい,換言すればやさしい
裏教 といえるわけである。この理由として考え
られるものは,第一に実験内容と日常生活上の経験との関係が水素の方が深いということ である。例えば日常,湯をわかすときみられる泡等も関連現象である。第二に観察時にお いて条件の統制の仕方が水素の方が単純ですむということである。ヨウ素の観察は多角的 に,動的に操作をしないと見出せない現象が多いが,これに比べて水素の観察は,試験管 の中をジッとみていて観察し得る現象がかなりあるのである。従つて現象を発見し得る確 率がある程度大きいといえるわけである。
得点の男、女の別による差の有無については,今回は被検者が大学生のみであるが,同 条件における学生でみると男子学生5.6点,女子学生5.4点となる。この差0.2点は有意 の差とは認め難い。ヨウ素の観察の揚合は女子学生の方がα1点高かつたのであり,両者 を綜合的に考えて大学生においては観察得点における男,女間の有意の差はないと思われ
る。
水素の発生についての学習経験の有無と得点の関係については,第一報と同様有意の差 は認められず,従つてこの水素の観察においても,問題実験内容である水素の発生に関す る学習経験の有無に関係せずに,機能的な観察力を示す得点であることが理解されるので
ある。
視力と得点の閲係も第一報と同様ほとんど関係が存在しないのである。ただし極端に視
力の劣る者についてはやや観察に不利といえる。
、 i2)各現象の観察率
観察し得る18の各現象について,その現象を観察し得た被検者は全体の被検者の何%に 当るか(第一報同様これを観察率と称する)を示したのが第2図である。
第 2 図
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