茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)32号(1983)1−15 1
わが国における放送事業の地域性
原 田 榮*
(1982年9月30日受理)
The Regionality of the Broadcasting Industry in Japan.
Sakae HARADA
(Received September 30,1982)
1. は じ め に
放送事業は,新聞事業・出版事業とともに現代生活に不可欠な諸情報を提供・伝播し,社会の 成員に社会の進化と発展の方向を示唆することによって,重要な機能を果している。これらのマ
ス・コミニュケーションは,送り手としての事業体と,受け手としての視聴者や購読者が,空間的
距離をおいて分布して,提供と希求の関係にある点において,地理的・地域的事象である。つまり,マス・コミニュケーションは,地理的・地域的側面を有するという視点が必要であり,
本報告では,わが国における放送事業について,その地域性を究明しようとするものである。
わが国における放送事業は,ラジオ放送・テレビジョン放送を中核とした電波メディアとして,
マス・コミニュケーションの一翼をになっており,1981年7月31日現在」)で,
ラジオー公共放送804局 民間放送53社202局 計1,006局
テレビジョンー公共放送6,446局 民間放送95社4,800局 計11,246局
によって運用されている。
そして,わが国における放送事業は,昭和25年(1950)5月2日成立の法律第132号の放送 法および電波法(昭和25年法律第131号)による免許事業であることに特色があることはいうま でもないが,やはり,事業体・放送局所の分布の不均等性や運用の地域的差異があることは否定
し得ない。これらの不均等性や地域的差異の背後にある地域的性格を究明することは,地理学に
とって決して無意味なことではないと考えられる。
本報告では,放送事業の地理的・地域的側面を摘出して,その地域性を究明し,わが国におけ るマス・コミニュケーションの地理学的研究の一端にしようとするものである。
なお,本報告は,日本地理学会1978年度春季学術大会(於日本大学)2)および同学会1978年 度秋季学術大会(於新潟大学)3)において発表した内容を,資料を新たにし,加筆補正したもの
*茨城大学教育学部地理学研究室
■
ナ
2 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)32号(1983)
である。
2.放送事業体の都道府県別分布と民間放送の運用形態
電波メディアの特性の一つは,地形障害により到達に限界があることから,多くの出力局が必 要であり,多くの事業体が分布することである。とくに,わが国のように山地地形の広い国土に あっては,この傾向が著しい。また,放送事業は,全域をカバーすることを中心に運用されるこ
とも,多くの放送局や放送所を設置することに関係している。
この項では,放送事業体の都道府県別の分布状況と民間放送の運用形態について,その地域的 差異を明らかにすることにする。ここで,地域の単位を都道府県にしたのは,送り手としての放 送事業体の主要送信地域が都道府県を単位にしていることと,送信内容もまた都道府県単位によ
ることにもとずくものであるからである。
A.放送事業体の都道府県別分布
表1は,1981年7月31日現在の放送事業体の都道府県別分布を示したものである。ただし,
公共放送に関しては,その都道府県内で放送・放映している放送局を1事業体として計上した。
表1から,つぎのようなことが指摘できよう
① 中部以東の東北日本に事業体が多く,近畿以西の西南日本に少ない。
事業体総数405の中,中部地方以東の東北日本に215事業体が分布し53.1%となるのに対し,
近畿地方以西の西南日本には,190事業体で46.9%の分布を示している。
また,関東・中部・近畿の3地方の中央日本にはヱ48事業体(36.5%),北海道・東北・中国
・四国・九州の周辺日本に257事業体(63.5%)の分布をみせている。
これらを仔細にみると,広域な北海道での事業体,とくに公共放送が多いことにもとずくこと があげられることや,青森・宮城・山形・福島・東京・長野・静岡・愛知などの都県が東北日本 における多数事業体分布をもたらしていること,北海道・青森・宮城・山形・福島・鳥取・広島
・山口・福岡・長崎・沖縄などの道県が周辺日本の多数事業体分布に関することや,大都市圏周 辺の茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川,岐阜・三重,滋賀・京都・兵庫・奈良・和歌山な
どの諸県の少数事業体が中央日本にあることなどがあげられる。
② 大都市所在地に事業体が多く,周辺県に少ない。
北海道は別として,東京都の14事業体,愛知県の14,大阪府の13,広島県の14,福岡県の 17などのように,大都市をかかえる都府県には多くの事業体が設立されていることがわかる。
ところが,その周辺県では,東京都の周辺の茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川,愛知県 周辺の岐阜・三重,大阪周辺の滋賀・京都・兵庫・奈良・和歌山,福岡県の隣接佐賀などのよう
に,2〜5の事業体が多いのである。しかも,欠ける分野を有しているのである。
これは,大都市にある事業体の出力が大きく,周辺県をカバーするからであることはいうまで もないことで,電波運用の広域性という一面を示すものである。すなわち,地形の平坦性が,大 出力と広域運用を可能ならしめている例としてあげることができるという自然的条件と,人口集 積が大である社会的条件が,大都市ぺの事業体の集中と周辺地域での事業体の希薄という,いわ
原田:わが国における放送事業の地域性 3
表1 放送事業体の都道府県別分布一1981年一
別
ラ ジオ テ レビ別
ラ ジオ テ レビ餓鍋嵩織騒■ ● ● ● ● ● ● ● ●
ケ箋擁i馨警斉畳 許)
分
s 野
ケ府
一 :
公公民民i公公民民
、共共間間 ≡共共間間● ● ■ ■ ■ o ● ● ●
鞫謔e中短 i総教VU一二M波波 i合育HH 許)
県
F F F県 F i F F
M i M i
北海道 7 7 7 2 ● 7 7 2 2
41
滋 賀 1・1・・: 1・・14
青 森 3 3 1 1 ・ 1 1 1 1
12
京 都 1 ・11・・ 1・・15
岩 手
1111・ 1111 8 大 阪 1 1 1 3 1 i l 1 4 。 13
宮 城
1 1 1 1 ・ 1 1 2 2 10
兵 庫・・
P1・: 1… 14
秋 田山 形
1111・ 1111 8 奈 良 ・・
P・・: 1・・1 3
22 11・ 2211 12
和歌山。・ 11 ・・ 1 ・ ・1 4
福 島3311・ 11,11 12
鳥 取 22 11・: 112 ・10
茨 城 ・・1 1・ ・…
2
島 根111… 11・1 6
栃 木 ・ ・11 。 ・ …
2
岡 山1111・: 1111 8
群 馬
・・ P ・・ … 1 2
広 島 2 2 1 1 ● ・ 2 2 2 214
埼 玉・・
P・・ … 12
山 口 2 2 1 1 ● : 1 1 1 110
千 葉・・ P・ ・ … 1 2
徳 島1・11・: 111・ 6
東 京 1 1 1 3 2 1 1 5 ・
15
香 川 1 111 ・: 1 1 11 8神奈川 ・・11・ … 1
3
愛 媛1111・・ 1111 8
新潟 1 1 1 1 ● 1 1 1 2
9
高 知1111・: 1111 8
富 山
1111・ 1111 8 福 岡 2 2 2 2 1 i 2 2 3 1 17
石 川 1111・ 1111 8 佐 賀 1・1・・: 11・1 5
1・1・・: 11・1 5
福 井山 梨
1111・ 1111 8 長 崎 2211・・22 11 12 1111・ 1111
8 熊 本 ll11・: ll 11 8
長 野
22 11・ 1112 11
大 分1111・: 1111 8
岐 阜
・・
P1・ 1・・14
宮 崎1111・: 1111 8
静 岡 2 2 1 1 ● 2 2 1 3
14
鹿児島1111・・ 1111 8
愛 知
2 2 1 2 1 1 1 3 1 14
沖 縄 1113 ・: 112 ・10
三 重
・・
P・・ 1・・13 (計)
55 51 54 48 5 i 52 45 48 47 405注 1)rNHK年鑑1981年版」「日本放送年鑑1981年版」による.
,
Q)公共放送は1出力局をもって1事業体とみなした.
3)民間・短波FMの東京の2のうち1は,短波である.他はFMである.
4)民間のラジオは民間のテレビと兼営であっても1事業体とみなした.
ば,電波メディアの大都市圏的状況をつくりあげているということもできよう。
③ 類型的には8事業体タイプが標準タイプといえる。
事業体数と分野との関係から,都道府県を類型化すると,ラジオの4波とテレビジョンの4波 の計8波による運用が標準タイプになるが,この類型に入るのは,岩手・秋田・富山・石川・福 井・山梨・岡山・香川・愛媛・高知・熊本・大分・宮崎・鹿児島の14県である。これら諸県にほ ぼ共通する地域的性格として,県都が県土のほぼ中心的位置にあること,県都に匹敵するような
4 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)32号(1983)
都市が少ないこと,地形的に電波障害が少ないこと,などがあげられ,電波が県土全域に及ぶ電
波メディアの有利性がある県であるといえる。
これに対し,2〜5の事業体を有するのは,公共のラジオ・テレビジョンと民間のテレビジョ ンの少ない類型として,東京大都市圏に関係する茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川,中京 大都市圏に関係する岐阜・三重,近畿大都市圏に関係する滋賀・京都・兵庫・奈良・和歌山,北 九州・福岡都市圏に隣接する佐賀の14府県がこれに入る。これらの県は,事業体が少なくとも大 都市所在の事業体のサービスエリヤとして受信可能な地域であること,県内主要地域が平坦地で 受信可能なこと,県内に民間のラジオかテレビジョンや公共のラジオFMの事業体を有してい
ることなどがこれらの府県に共通する地域的性格としてあげられる。
さらに,9〜17の事業体を有する道府県は17におよぶが,これは2グループに分けることがで きる。その1は,宮城・東京・愛知・大阪・広島・福岡の6都府県で,広域中心都市が所在する 都府県で,情報機能の集積が著しい地域ということができ,多くの電波メディアの発信地として 情報空間の中心地的性格を有する都府県である。その2は,北海道・青森・山形・福島・新潟・
長野・ … 長崎・沖縄の11道県で,これらの地域的性格として,県土の面積が広 大なことや狭長なこと,県都が偏在していること,県都以外に比較的規模の大きい都市が存在す ること,地形的障害があること,などがあげられるであろう。ただ,北海道の場合は,札幌市と
函館・帯広・旭川・釧路・室蘭・網走など地方中心都市との関係を考慮に入る必要がある。また,
鳥取県は,隣県島根県の6事業体と運用地域が共通である故,両県は標準タイプの中に入ること
になる。
以上の類型の地域的配列については,東京・名古屋・大阪の3大都市中心の圏構造的配列が特 色的である。すなわち,大都市への放送事業体の集中とその波及地域である周辺県での事業体の 少数性である。また,北海道・青森,宮城・山形・福島・新潟・長野・静岡,広島・山口・福岡
・長崎の3グループが回廊状に多数事業体地域を形成しており,大都市圏に隣接したり外縁にあ たったりしている。それに,岩手・秋田,富山・石川・福井,岡山・鳥取・島根,香川・愛媛・
高知,熊本・大分・宮崎・鹿児島がそれぞれグループ状で,大都市地域の電波圏の外郭地域を形
成しているこになる。
放送事業体の都道府県別分布を,以上のように捉えることができるが,発信地の都市規模とそ の位置,他都市との競合関係の有無,送信範囲の地形的障害の有無など送り手側の条件が大きく 事業体の数に関係してくることが考えられる。受信地域としての県土の広狭や形状などの地形的 条件の好悪,人口の集積度合,大都市からの位置と距離など受け手側の条件が,送り手側の条件
と重複しながら,それぞれの都道府県の事業体の存立に影響を与えているのである。
B.民間放送の運用形態
表2は,民間放送のラジオ・テレビジョンの運用形態を1981年7月31日現在で示したもの である。ラジオ単営17社(うち,FM 4社,短波1社),ラジオ・テレビ兼営36社(うちUHF 2社),テレビ単営59社(うち,VHF 14社)の計112社4)がわが国の民間放送の事業体であ り,ラジオが53波,テレビが95波ということになる。
この項では,これら民間放送の運用形態の地域的特色を述べることにする。
原田:わが国における放送事業の地域性 5
表2 民間放送の運用形態一1981年一
運 ラ テ ラテ
運、.} 堰@ テ ラテ 用 ジ レ ジレ 用 ジ レ ジレ
慧髭府 輩 革 蘭 琶営 営 営
都髭道 心府董 革 繋 琶営 営 営
県 (VHF)(UHF)(VHF)(UHF)
県
(VHF)(UHF)(VHF)(UHF)北海道 ・ ・ 2 2 ・ 4 滋 賀
・ ・ 1 ・ ・ 1
青 森 。 ・ 1 1 ・ 2 京 都・ … 1 1
岩 手 。 ・ 1 1 ・ 2 大 阪 2 2 ・ 2 ・ 6 宮 城 ・ 1 2 1 ・ 4 兵 庫1 ・・ 1 … 2
秋 田 ・ ・ 1 1 ・ 2 奈 良・ ・ 1 ・ ・ 1
山 形 ・ ・ 1 1 ・ 2 和歌山1 ・ 1 ・ ・ 2
福 島 1 1 1 ・ ・ 3 鳥 取・ 1 ・ 1 ・ 2
茨 城1 ・ … 1
島 根・ ・ 1 ・ 。 1
栃 木1 ・ … 1
岡 山・ ・ 1 1 ・ 2
群 馬・ ・ 1 ・ ・ 1
広 島 ・ 1 2 1 ・ 4 埼 玉・ 。 1 ・ ・ 1
山 口 。 ・ l l ・ 2 千 葉・ ・ 1 ・ 。 1
徳 島。 ・ ・ 1 ・ 1
東 京 4 4 ・ 1 ・ 9 香 川・ ・ 1 1 。 2
神奈川 1 ・ 1 。 ・ 2 愛 媛・ ・ 1 1 ・ 2
新 潟 。 ・ 2 1 ・ 3 高 知・ ・ l l ・ 2
富 山 ・ ・ 1 1 ・ 2 福 岡 1 1 1 2 ・ 5 石 田 ・ ・ 1 1 ・ 2 佐 賀・ ・ 1 ・ ・ 1
福 井 ・ ・ 1 1 。 2 長 崎・ ・ 1 1 ・ 2
山 梨 ・ ・ 1 1 ・ 2 熊 本・ ・ 1 1 ・ 2
長 野 ・ ・ 2 1 ・ 3 大 分・ ・ 1 1 ・ 2
岐 阜・ … 1 1
宮 崎・ ・ 1 1 ・ 2
静 岡 ・ ・ 3 1 ・ 4 鹿児島・ ・ 1 1 ・ 2
愛 知 2 2 1 1 ・ 6 沖 縄 2 1 ・ 1 ・ 4 三 重・ ・ 1 ・ ・ 1 (計) 17 14 45 34 2 112
注 1)「NHK年鑑1981年版」 「日本放送年鑑1981年版」による.
2)ラジオ単営の中には,FM放送を含む.
① ラジオ・テレビ(VHF)単営は,大都市地域に多い。
ラジオ単営社17社のうち,東京に4社,神奈川に1社,大阪に2社,兵庫に1社,福岡に1社 と11社が,大都市地域を運用の中心地に据えているし,テレビ単営のVHFもまた,14社屯東 京に4社,愛知に2社,大阪に2社と8社が大都市地域に立地しているなど大都市地域を立地基 盤としていることがわかる。さらに,テレビ単営社(VHF)には,宮城・広島・福岡などの広域 中心都市を包含した運用がみられることも,前記の大都市地域指向と同様である。
これは,いずれも,人口集中と機能集積の大きい大都市地域や広域中心都市が,商業放送とし ての民間放送にとって恰好な地域であることにもとずくものと考えられる。すなわち,1つは情 報を希求する人口が集中していて受け手としての聴取者・視聴者が多数居住している地域的性格
6 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)32号(1983)
を有すること。2つは,商業放送の広告主・番組提供者としての企業が多く存在する機能集積の 地域的性格を有すること。3つは,企画・制作・演出・出演など放送・放映内容に関係し得る多 くの人材とその背景をなす社会・経済・文化・技術など各分野が集積しているという地域的性格 を有すること。4つには,他のメディアが発達し集中していることによって相乗効果のあがると いう地域的性格を有すること。5つには,分化することによって単営のメリットを有する地域で
あることなどがそれである。
② ラジオ・テレビ兼営は,周辺日本に多い。
ラジオ・テレビの兼営は,36社であるが,北海道・東北・中国・四国・九州などの,いわば周 辺日本に63.9%に相当する23社が分布し,関東・中部・近畿などの中央日本の13社よりも多い。
しかも,その36社中2社を除いた34社がVHF局であるのである。放送事業の免許が昭和27
〜28年(1952〜53年)にラジオ放送に与えられ,そのラジオ社が昭和32〜34年(1957〜
59年)にテレビ放送の免許を合せて得たことによるものである。
これらラジオ・テレビ兼営社は,北海道・大阪・福岡を除いた都府県では原則的に1都府県1 社となり,法的適用を受けているのが現状である。とはいえ,周辺日本に多い事実がでてくる。
これは,電波メディアの特性である出力とサービスエリアとの関係による送受信地域の限界が 前提をなすもので,新聞の配布地域同様に都道府県が一応単位地域をなしているからである。そ の場合,当該県の人口の集中程度,機能の集積度合,産業経済の発達の程度などによって,ラジ
オ・テレビ放送の存在価値や存在意義に地域的差異が生じ,会社設立に時間的差異があるからで
ある。すなわち,東北(青森・岩手・秋田・山形)・中国(岡山)・四国(香川・愛媛・高知)
・九州(長崎・熊本・大分・鹿児島)では,ラジオが昭和28年(1953年)に開局し,昭和34年 または35年にテレビがラジオ局を母体に開局しており,資本の蓄積や広告主の稀少などが中央日 本のラジオの昭和27年,テレビの昭和33年開局に遅れをとったとみられるのである。
「 こうした開局の時間的ズレは,上記の地域的性格の相違だけでなく,電波(周波)・割当と設立認
可という行政的背景が存在するにしても,やはりその前提に地域的事情と地域的性格があることは,次項の考察に関係して首肯されるであろう。
③ 運用形態は,大都市型と地方型に大別できる。
民間放送の運用形態の地域的展開を類型化すると,大都市型と地方型に大別できる。
大都市型は,ラジオ単営・テレビ単営・ラジオテレビ兼営と運用形態が多種にわたること,そ の出力が比較的高いこと,送信範囲が広いことなどに特色がみられる類型である。この大都市型 に属するのは,東京・名古屋・大阪に本拠をおく事業体で,それぞれ9社,6社,6社である。
東京の場合は,東京・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川の1都6県の広域を送信地域と している。名古屋では,愛知・岐阜・三重の3県。大阪の場合は,大阪・京都・滋賀・兵庫・奈 良・和歌山の2府4県を送信地域としており,3大都市圏に関係する運用をしており,電波行政 では基幹的地域・広域運営と呼ばれるものである。これは,前述のように,大都市の人口規模
・機能集積・文化の発達・産業経済活動の活発さなどの社会的条件,発信地の位置・平坦地が比 較的広いことの自然条件が運用に好条件をもたらしているからなのである。
この大都市型に関連の深い運用形態に,広域中心都市型と広域圏県域型がある。前者の広域中 心都市型の特色は,テレビ単営・ラジオテレビ兼営の運用形態が基本であること,出力がやや大
原田:わが国における放送事業の地域性 7
きいこと,県域を原則として送信範囲にしていることである。これには4〜5社の事業体を有す る札幌・仙台・広島・福岡が相当し,いわば広域中心都市に本拠をおく事業体の運用である。こ れらの運用は.準基幹的地域で,前の大都市型に準ずる社会的・自然的条件がかかわるのである。
広域圏県域型は,ラジオ単営・テレビ単営・ラジオテレビ兼営と大都市型と同じであるが1〜2と 事業体が少ないこと,出力が比較的小さいこと,大都市の広域圏の中で県域を送信範囲とするこ と,設立が比較的新しいことなどを特色としている。これに入るのは,東京広域圏の茨城・栃木
・群馬・埼玉・千葉の各1事業体と神奈川の2事業体,名古屋広域圏の岐阜・三重の各1事業体,大 阪広域圏の滋賀・京都・奈良の各1事業体と兵庫・和歌山の2事業体などであり,いわば広域圏県 域型ともいうべき類型である。これは,大都市の勢力圏内における運用形態を示すもので,県域 の独自性を示すものでもある。すなわち,基幹的地域における大都市地域の地域的性格の拡散地 域であり,大都市地域との連動上の運用であり,補完関係にあり,地域情報の提供に中心をおい
た放送内容を送信する性格を特色としているのである。
ついで,大都市型に対する地方型の運用形態についてみると,テレビ単営とラジオテレビ兼営 の2事業体であること,1〜5KWの出力を有すること,送信範囲を原則として県域にしている
ことなどを特色としており,18県がこの類型に入り都道府県の38.3%に相当する。この分布は,
前の大都市型の周辺にあり,東北の青森・岩手・秋田・山形の4県,中部の富山・石川・福井・
山梨の4県,中国の岡山・山口の2県,四国の香川・愛媛・高知の3県,九州の長崎・熊本・大 分・宮崎・鹿児島の5県の計18県が,それぞれグループ状での配置をみせている。これらの地方 型は,前述のAの③で述べたように標準タイプの事業体のある県にみられるもので,県都の位置
・地形障害の少なさなどの自然条件と,人口の拡散的分布・産業経済の県土における分散などの 社会的条件が電波メディアの最低運用をもたらしていると考えられる。
また,地方型と大都市型の中間型ないしは移行型とみなせる型が存在する。それは,事業体数 が地方型よりも多く,送信範囲が県域を越えない運用をなすものである。例えば,福島県の3事 業体,新潟県の3事業体,長野県の3事業体などがそれであり,静岡県・沖縄県の各4事業体が 含まれる。これらのうち沖縄県を除いた4県は,県土の広大性ないしは狭長性,県都以外の同格 ないし枢要都市の存在などの特性を有する地域である。このうち,福島はラジオ単営が1,テレ ビ単営が2であるが,新潟・長野両県はテレビ単営2とラジオ・テレビ兼営が1となっていて,
静岡のラジオ・テレビ兼営1とテレビ単営3や,沖縄県のラジオ単営2とテレビ単営1とラジオ
・テレビ兼営1などと,事業体の運用形態に椙異がみられるのである。そこに,その県の資本蓄 積・企業欲など事業の主体的条件や県土の面積・形状や都市の規模・分布などの客体的条件が,
事業体の免許と相侯っているのである5)。送信範囲が県域を越える例としては,テレビジョンで は,鳥取・島根両県があげられる。両県にはテレビ単営社が各1社存在して,それぞれ両県を送 信範囲としており,ラジオ・テレビ兼営社は鳥取県にあって島根県をも送信範囲としているので ある。これは,両県の人口教が少なく民放事業の経営基盤の脆弱さからくる免許事業の性格を示 すもので,徳島県のラジオ・テレビ兼営1社の場合にもいい得ることであろう。ラジオ放送では,
京都府の事業体が滋賀県を,長崎県にある事業体が佐賀県をテレビ兼営社でありながら送信範囲
としているのが特徴的である。
以上みてきた民間放送の運用形態は,大きくいえば大都市を中心とした隣接地域を含んだ大地
8 茨城大学教育学部紀要(入文・社会科学,芸術)32号(1983)
域と,県域を単位とした小地域がその運用地域としてあげられる。この場合,基本的には,事業 体所在地の都市的性格,つまり人口規模と機能集積度によって事業体の分野・放送の出力・送信 範囲が決定しているということができ,放送事業がきわめて都市的要素の濃いものであることに なる。このことは,県域単位でみても,福島県の郡山市,長野県の松本市,鳥取県の米子市,山 口県の徳山市のように,県都以外の都市に事業体が存在することによっても,都市的要素の放送
事業における重要性が理解されよう。
3.放送局所の都道府県別分布と1局所あたりサービスエリヤ
2に述べた事業体は,運用地域に親局・放送局・中継局・放送所などの放送施設をおいて,送 信して放送・放映内容を受信者に提供している。このような放送局所の分布は,その出力と相侯
って,原則的に全地域をカバーするように配置されるのが建前であるが,現実には必ずしもそう なっておらず分布に偏りがみられる。本項ではこの地域的差異に着目して論及することにする。
A.放送局所の都道府県別分布
表3は,昭和56年7月31日現在の放送局所をあげたものである。ラジオは4波,テレビは2
波に限ったが,大略の分布傾向はとらえることができる。
① テレビの放送局所が多く,公共のFMがこれについでいる。
最も局所数の多いのは公共放送の総合テレビであり3,220におよび,民間放送のテレビの1,906
をはるかに凌いでいる。これは前者が公共放送の性格から多局化により送信範囲の充填を目指し ているからである。とともに,テレビの音声と映像送信の特質上,送信範囲が他の電波に比して 狭くならざるを得ないことも多局化を促しているといえるのである。民間放送のテレビジョンが 他の分野に比して多いのも,テレビ放送の特質にもとずくものであると考えられる。また,公共 のFM放送の多局化も著しく,公共放送の第1および第2放送や民間放送の中波に比し2.7〜3.4 倍の局所数を有していることになる。これも,FM電波の特性によるものである。さて,これらの局所の分布を大きく,中部地方以東の東北日本と近畿地方以西の西南日本に分 けてみると,公共放送の第1・第2や民間放送のラジオではさしたる差異はみられないが,公共 放送のFMラジオと公共・民間のテレビジョンの放送局所数では,西南日本に多くなっている。
すなわち,FMラジオでは482局所中256(53.1%),公共テレビ3,220局所中1,802(56.0%),
民間テレビ1,906局所中1,093(57。3%)におよんでいる。これは,公共FMの10局所以上の 県が13(東北日本7県),公共テレビの50局以上の県が17(東北日本11県),民間テレビの50 局以上の県が9(東北日本4県)もあって,総じて西南日本が多く,人口の拡散的分布と都市の 分散的分布などの社会的条件と,中国山地の準平原状地形,四国・九州山地の隔絶性,近畿地方 の断層盆地の存在などの自然的条件が,電波運用において多局化をもたらしたものといえる。
② 局所は,平地部に少なく山間部に多い傾向がみられる。
47都道府県における放送局所の分布および数は,一律ではなく類型的に把握することは容易で ないが,大雑把にいえば,平地部に少なく山間部に多いという指摘はできるであろう。いま,数
例をあげてみることにする。
原田:わが国における放送事業の地域性 g
表3 放送局所の都道府県別分布一1981年一
別
ラ ジ オ テ レ ビ別
ラ ジ オ テ レ ビ分 分
公 公 公 民 公 民 公 公 公 民 公 民
都 野共 共 共 間 共. ● ・ o ■
都 野
共 共 共 間 共● ■ ● ● o道府県 第 第 F 中 総 間一 二 M 波 合
@ 1)i 2)
道府県 第 第 F 中 総 間一 二 M 波 合
@ 1)i 2)
北海道
21 18 54 9 205 122
滋 賀 1 ・ 3 1 32 22青 森 4 3 6 4 55 39 京 都 4 2 6 3 57 30
岩 手 7 6 20 5 111 66 大 阪
1 1 2 1 12 8
宮 城
3 2 5 3 51 39
兵 庫3 2 24 1 191 88
秋 田
6 4 11 4 64 38
奈 良 . . 11 ・ 47 43山 形
5 4 8 4 45 28
和歌山 4 3 9 4 82 34福 島 7 6 15 5 91 65 鳥 取
4 3 6 3 39 31
茨 城 ・ ● 4 2 31 14 島 根
7 6 13 2 67 43
栃 木 ・ ● 5 3 35 15 岡 山
3 3 17 6 109 82
群 馬 . ・ 6 ・ 35 32 広 島
8 7 23 6 143 81
埼 玉 ● . 2 ● 13 15 山 口
3 3 13 4 87 43
千 葉 ● ● 5 ・ 12 24 徳 島 3 1 13 3 73 50
東 京 1 1 3 1 12 11 香 川 2 1 1 3 52 14
神奈川 ● ● 2 2 32 14 愛 媛
8 7 15 7 112 59
新潟
3 3 14 4 72 44
高 知5 4 19 2 85 70
富 山 l l 2 1 8 16 福 岡 2 2 9 4 78 37
石 川
4 3 8 3 64 45
佐 賀2 ・ 2 3 39 25
福 井 4 4 7 2 50 30 長 崎
3 2 11 6 91 82
山 梨
2 1 3 2 40 16
熊 本 2 2 11 5 70 76長 野
9 9 18 8 123 48
大 分 3 2 15 3 76 45岐 阜
5 4 8 6 119 25
宮 崎 7 7 6 7 42 44静 岡
4 2 15 7 114 56
鹿児島4 4 12 4 123 69
愛 知
3 3 5 9 26 14
沖 縄 3 3 6 2 19 10三 重
3 2 9 。 76 17 (計)
174 141 482 164 i 3,220 1,906注 1)その都道府県の最大数をとり,事業体による差は除去した.
2)1)に同じ.
3)rNHK年鑑1981年版」「日本放送年鑑1981年版」による.
4)計は代表社の局所をあげたので,統計上の計とはならない.
平地部の例としては,東京都と大阪府があげられる。東京都の場合は,ラジオでは公共・民間 の中波がそれぞれ1局,FMが3局 (うち,新島・八丈に各1局であるので実質的には1局 とみなせる。)と極めて少ない。その出力は,公共第1が100KW,同第2が300 KW,同FM が10KW,民間が100 KWと高出力の局で,ほぼ関東の1都6県を送信範囲にしており,表3に みられるように関東地方には東京以外に公共放送の第1および第2は置局していないのであり,
民間放送も県域局のある茨城・栃木・神奈川への送信可能の100KW局が東京都にあることに なる。テレビも,公共総合が12局所をおいているがそのうち7局所は島娯部にあり,残りの4局
10 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)32号(1983)
所は関東山地にかかわる奥多摩・青梅・八王子などにあり,親局東京の50KWが中心となって いるのである。民間のテレビも公共のテレビと同工異曲の局所配置をみせ,親局50KWが関東 地方1都6県の71の局所を通じて送信しているのである。この71局も,埼玉・千葉県などでは 公共・広域圏県域局同様に平地部におかれることは少なく,山間部に多くおかれているである。
大阪府の場合も,東京都と全く同じことがいえ,ラジオ・テレビともに局所数が少なくなって いる。ただ,親局大阪の送信範囲内に公共のラジオ中波は奈良県を除いた滋賀・京都・兵庫・和 歌山にそれぞれ放送局所をおいているし,テレビもまた,151の局所をおいているのは,大阪の 送信範囲が複雑な平地と山地の交錯する地域であり,受信状態の適確さが要求されているからで ある。なお,大阪の親局の出力は,ラジオが50〜300KW,テレビが50 KWである。
このように,平地部にあっては,出力の大きい局が広範囲に送信しており,親局所在地の都市 的性格(人口規模・機能集積・交通集散・経済文化活動)を反映させて,都市圏と同じような電
波圏が大きく構成されているとみることができるのである。
山間地に放送局所が多い典型的な例として,長野県をとりあげて考察することにする。同県は 総面積から森林・原野・湖沼の面積を除いた可耕地面積,いわば居住可能地域は全県土の2L3%
であり,換言すれば山間部の広い県であるので,例としてとりあげた。同県におけるラジオの局 所数は,公共第1および第2がそれぞれ9局所,同FMが18局所,そして民放が9局所と北海 道を除いた都府県中,岩手・福島・島根・広島・愛媛・宮崎などの山間部の広い県とならんで,
放送局所の多い県である。公共9局所のうち,長野・松本・飯田の局は各1KWの出力をもって 北信・中信・南信地区を送信範囲として,これを補完する小諸・上田・岡谷諏訪・駒ケ根・木曽 福島・伊那に100Wの出力を有する局所が分巾する。民間のラジオも,長野(5KW)・松本(1 KW)・飯田(1KW)を基幹に据え,岡谷諏訪・上田・伊那・佐久・軽井沢に100 Wの局所を 配置するなど,公共・民間とも分散する都市・平地にもとつく局所の配置をみせている。FM放 送は,多くの局所をおくのが通例であるが,長野県にあっても前記の長野・松本・飯田・岡谷諏 訪・木曽福島の他に,善光寺・飯山・戸倉上山田・信州新町・小海・牟礼・辰野・高遠・木曽阿 南・倉本・木曽楢川・南木曽・天竜平岡など主として山間部におかれて,狭い送信範囲を保持し
ているのである。
テレビの放送局所は,公共が123の多数にのぼり,長野の1KW,飯田の250 W,松本,伊那の 100Wの映像出力を中心に,平地部にはやや出力の大きな局所が少なめに,山間部にはやや出力 の小さな局所が多めにおかれている。このことは,民間のテレビにもいえることで,長野(1KW)
を核に飯田(250W),松本・伊那(ともに100 W)を配し,合計48局所が県内に分散配置さ れ,そのパターンは公共のテレビと同じものである。山間地域では分断された居住地域への送信 の必要から多くの局所が配置されるのであるが,さらに,都市の分散分布が著しいことも局所数 を多くしているのである。このような傾向は,とくにテレビの放送局所の配置に多くみられ,山
地の広い道府県での多局化をもたらしているのである。
このように,都道府県別にみた放送局所の分布は,平地部の大都市周辺には出力の大きい局が 少数分布し,山間部の分断された都市と居住地に出力のやや小さい局所が多数分布しているのが 実状である。電波行政の均等性の建前が,地形の状態・都市の分布・居住地域の広狭とその分布 などにより,ある地域には多くの局所が,ある地域には少ない局所が分布しながら,電波運用を
原田:わが国における放送事業の地域性 11
しているということができよう。
B.1局所あたりのサービスエリヤ
多数の放送局所が,送信によって情報を提供・伝播しているのであるが,1局所あたりのサー ビスエリヤの地域的差異について考察するために作製したのが表4である。これは,分野別に総 面積から森林・原野・湖沼を除いた面積(可耕地面積)を,局所数で除したものである。この場 合,可耕地面積はほぼ居住地・活動地面積としてもよく,無居住地域への送信は無意味なのでこ のサービスエリヤとは居住地・活動地として考えることにした。
① テレビの方がラジオよりもサービスエリヤは狭く,公共の方が民間より狭い傾向がみられる。
公共のテレビは,千葉県の284,5km2を最大に和歌山県の13.3 km2の最小とレンジは271.2
km 2であるが,民間のテレビのサービスエリヤは茨城県の268.6 km2の最大と奈良県の18。7km2
表4 1局所あたりサービスエリアー1981年一
別 ラ ジ オ iテ レ ビ :
別 ラ ジ オ テ レ ビ ,
分
公 公 公 民 ゜公 民分 公 公 公 民 ゜公 民
都 野共 共 共 間 1共 野
共 共 共 間 共道
● o o ・ ・ 9道 ● ■ ● ■ ° ●
府 第 第 F 中 総 間 府
第 第 F 中 .総 間県 一 二 M 波 合 ● 県
一 二 M 波 合北海道 1メ)0891 1,176.2 392.1 2β523 i 103.3 173.5
滋賀 1,265.0 . 421.7 1,265.O i 39.5 57.5青 森 5743 765.7 382.8 5743 i 41.8 58.9 京 都 284,5 569.0 189.7 379.3 i 20.0 37.9
岩 手 478.4 558.2 167.5 669B i 30.2 50.7 大 阪
1,28玉.0 1,281.0 640.5 1,281.O i 106.8 160.1宮 城 1,009.0 1,513.5 605.4 1,0090 i 59.4 77.6 兵 庫 870.3 1,035.5 108.8 2,611.O i l3.7 29.7
秋 田 470.8・ 706.3 256B 706.3 i 44.1 74.3 奈 良 . 72.9 ● 17.1 18.7
山 形 568.4 710.5 355.3 710.5 i 63.2 101.5 .
和歌山
273.5 364.7 121.6 273.5 i l3.3 32.2福 島
578.7 675.2 270.1 810.2 i 44.5 62.3鳥 取 221.3 295.0 147.5 295.〇 三 22,7 28.6 茨 城
ネ 木 Q 馬 驕@玉
・ , 940.3 1,880.5 i l21,3 268。6 …. ・ 565.4 9423 ・ 80.8 188.5
D .37α7.i6a5鴎3・ ・1鰯5・i193316τ5
島 根 ェ 山 L 島
R 口188.3 219.7 101.4 219。7 i 19.7 30.7 V14。{〕 714.0 164B 357.O i l9.7 26.1
Q73.9 312.6 95.1 364.7 i 15.3 27.0 …572.7 572.7 132.1 429.9 : 19.8 40.0
千 葉
・ . 487.7 。 284.5 142.3徳 島 340,0 1,020.0 78.5 340.O i 14.0 20.4
東京
̲奈川
1,355.{〕 1,355.0 451.7 L355.O i 112.9 123.2
D . 72457245i45310a5
香 川 、 媛
490.5 981.0 98LO 327.O i 19.9 70.1 Q08.5 238.3 111.2 238.2 i l4.9 28.3
新 潟
●P,365.3 1,3653 292.6 1,024つ i 56.9 93.1高 知 243.2 304.0 64.0 608.O i 14.3 23.8
富 山 1,838.0 1β38.0 919.0 1,838.O i 102ユ 114,9 福 岡 1,364.0 1,364X) 303.1 682.O i 35.0 73.7 石 川
337.8 450.3 168.9 450.3 i 21ユ 30.0佐 賀 689.0 ・ 689.0 459.3 i 35.3 55.1 0
福 井
267.0 267.O l52.6 534『O i 21.4 35.6長 崎 565.0 847.O l54.1 282.2 i 18.6 20.7 山 梨 361.0 723.0 24LO 361.5 i 18.1 45.2 熊 本 1,288.5 1,288.5 234.3 515.4 : 36.8 33.9 :
長 野 3112 311.2 155.6 350.1 i 22.8 58、4 大 分
593.0 889.5 118.6 593.O i 23.4 39.5岐 阜 405.6 505.8 252.9 337.2 i 17.0 81.0 宮 崎 190.1 190.1 221.8 190.l i 31.7 39.2 静 岡 ,
T59.0 1,118.O l49.1 319.4 i 19.6 39.9鹿児島
81a38133271・181a3i 2a547・1愛 知 O 重
948.3 948.3 569.0 316」 i 109.4 203.2 U50.7 976.0 216.9 ● ・ 25.7 114.8
沖 縄
i平均)334733471673 502つi5281004
V09.1 875.1 437.5 752.4 : 38.3 64,7 0
注 1)可住地面積÷局所数をもって,サービスエリアとした.
2)可住地面積は,1980年における総面積から森林・原野・湖沼を除いた面積である.
3)公共放送の教育は除いた.
4)単位は,km2.
12 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)32号(1983)
の最小とのレンジは249.9km2となる。しかし,同一県内では公共の方が民間よりもサービスエ リヤが狭いのが一般的であるが,ほとんど差がないのは,東京・富山・奈良・長崎・熊本など少 数にすぎない。また広域圏内県域局を有する千葉県では,民間の方が公共の2分の1のサービス
エリヤとなり,特異な存在となっている。
ラジオ放送では,公共のFMのサービスエリヤがもっとも狭いが,テレビのエリヤよりは広く
なり,最大は埼玉県の1,256.5km2最小は高知県の64.O km2でレンジ1,192.5km2となっている。
公共の第1放送は,富山県の1,838.Okm2が最大で,島根県が最小で188.3km2でそのレンジは,
1β497km2,同第2放送は最大が第1と同じく富山県の1,838.Okm2,最小が宮崎県の190.1k㎡
で,そのレンジは1,647.9km2となっている。これに対して民間では,北海道の2,352.3 km2を
最高とし,最小は宮崎県の190.1km2で,そのレンジは2,162,2 km2と,公共放送に比しレンジは大きくなっている。
これらのサービスエリヤの都道府県による差異は,すでに考察してきた事業体の分布・運用形 態・放送局所数とも関連することはいうまでもないが,地域社会の反映とみなせなくもない。す なわち,送り手としての事業体の送信体制・局所位置の選定と出力・割当周波などの主体的条件 と,受け手としての地形の形状・都市の規模と機能とその分布・経済文化の状態など地域の保有 ずる客体的条件の上に自らサービスエリヤが画定されていると考えることができる。
② 西南日本・地方に狭く,東北日本・大都市に広いサービスエリヤ
表4にかかげた6分野の平均的なサービスエリヤ以上の県数を,中部以東の東北日本と近畿以 西の西南日本に分けてあげると,6分野とも平均的なサービスエリヤよりも狭い県は,西南日本 の方に多く分布している。24府県中,公共第1が16,公共第2が13,公共FMが21,民間が
18県と西南日本でのラジオのサービスエリヤは狭くなっているのである。試みに,東北日本を みると,東北日本で平均的サービスエリヤ以上の県の延べ数は61に達し,西南日本の29の2倍 になることからしても,東北日本に広く西南日本に広いサービスエリヤであることがわかる。
さらに,大都市地域の大出力局の送信範囲,つまり電波大都市圏内では,前記のように放送局所
が少なく,サービスエリヤが広くならざるを得ないのであり,これが,東北日本に広いサービス エリヤを出させているのである。これに比し,西南日本では,明確な電波大都市圏が形成されて おらず,地形的障害・都市の分散分布・居住地の拡散分布などが東北日本に比して大きく,それ による放送局所の多数化がサービスエリヤを狭くしているのである。とくに,公共テレビのサー ビスエリヤが20km 2以下の県が12県と半数近くになっていることは,この間の事情を端的に示すものといえよう。
放送局所の分布と1放送局所あたりサービスエリヤは,東北日本と西南日本,大都市地域と地 方地域平地部と山間部とにおいて地域的差異があることが明らかとなった。つまり,放送局所 の多少,サービスエリヤの広狭が,その県の有する地域的性格を反映しているということができ るわけで,放送事業の存在契機そのものが送り手と受け手との空間的分布であり,運用もまた発
信地と受信地の地域性に根ざしているのである。
原田:わが国における放送事業の地域性 13
4.出力別放送局の分布
前項までは,主として放送局所・放送事業体などの分布を中心とする量的考察を続けてきたが 本項では放送事業の中心的活動をなす放送局の出力から質的考察をすることにする。先に若干ふ れたように,分野により放送出力には差があるが,標準とみなせる公共の第1ラジオと総合テレ
ビを代表例としてとりあげることにした。出力1KW以上の放送局をラジオとテレビについて示 したのが表5Aおよび表5Bである。
A.出力別ラジオ放送局の分布
① 100KWを頂点とする階層的分布がみられ,20 KW以上の出力局は,札幌・東京・大阪など の大都市と仙台・広島・福岡などの広域中心都市にあり,都市の階層性と同様に電波情報圏の中
心地をなしていることがわかる。
② 東京・大阪の大出力局のサービスエリヤ(電波情報圏)内の関東・近畿両地方には所在局が 少なく,大都市圏における電波情報圏の実態をみることができる。
③ 中部・中国・四国・九州などの地方は,電波障害をなす山間部が広いことや中小都市が分数 分布していることなどで,放送局が多く小出力局の1KWが多い特色がみられる。
④ 県庁所在地や支庁所在地が放送局の所在地となっていることが多く,その中心性を反映させ 1 ていることも,放送事業の地域性の重要な事実である。
⑤ 八戸・鶴岡・郡山・上越・松本・飯田・七尾・米子・延岡などは,同一県内にあっても,県 庁所在地から遠距離にあるので,県庁所在地の局と補完的立場をとりながら,電波情報空間の小
中心地的機能を果している。
⑥ 出力別放送局の所在地は,全国的にも都道府県的にも階層状になっていることが明らかとな
った。
B.出力別テレビ放送局の分布
① ラジオ局に比べると小出力になり,それだけに1KW以上の局数が少なくなっている。
② 配置の特色はラジオの場合と殆んど同じであるといえる。
③ 地方別にみるとラジオ局よりテレビ局が多くなっているのは,近畿地方で4局増えて7局と なっている。これは,広域圏内県域局のあることと関係が深く,京都・神戸・大津・奈良・津・
和歌山にテレビ局がおかれていることによるもので,東京中心の広域な電波情報圏とは異なる近
畿地方の電波情報圏のあり方を示すものである。
④ 関東・東北両地方は,ラジオ・テレビともに1KW以上の局数は同一であるが,所在地に変 動があり,ラジオとテレビの電波特性の差異があらわれている。
出力別放送局の分布は,所在地の都市規模や中心地性などの社会条件,サービスエリヤの地形 的条件や他局との距離などの自然条件と関与しながら,全国的にも県単位でも階層構成的に分布 して,それぞれの電波情報圏を構成しているということができる。とともに,政策的・技術的要
件が上記の自然・社会条件と密接に関係しているのである。
14 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)32号(1983)
表5A 出力別放送局所在地(公共ラジオ第1)−1981一
出
n 力
100KWi20KWi 10KW 5KW 3KW i IKW
方
北海道
札幌……釧路 北見…函鞘喋嵩i名寄 遠別 稚内
東 北 i仙台i秋田・盛岡i青森・山形i i八戸・鯛・郡山
関 東
東京i
中 部
i瀦:縫麟甲府…講顯:舗゜松本
近 畿
大阪i i京都・彦根
中 国
i広 島i松 江 岡 山・山 口i i鳥取・米子・福山・萩
四 国…高松 i蕪・松山……宇和島・中村
九 州
翻…i蕪 麟長崎 i丈善矯弩営雛岡
i名瀬・石垣
表5B 出力別放送局所在地(公共総合テレビ)−1981一
地 力
@方
50KWi10KW i 5KW 3KW IKW
北海道
札幌… 纏鮒帯広゜釧1路
東 北
仙台…秋田 青森i罷福島蜘会津若松
関 東 東京i
中 部
名古屋…繍岐阜罰鱗購岡゜浜松
近畿
奈野 …和歌山 奈蹴津
神戸i
中 国
臨 i阜衡 松江 脚
四 国
高 松i松 山 i徳島・高知
九 州 福岡
刀f頒…大分 …砦轟柴崎・佐世保
注 1)A・Bともに1KW以上の局をとりあげた.
原田:わが国における放送事業の地域性 15
5.む す び
わが国における放送事業の地域性に関しては,つぎのようなことがいえる。
① 送り手である事業体と受け手である聴取者・視聴者とが空間的距離おいて存在することによ って,電波情報空間ないしは電波情報圏が形成され,地理学の研究対象たり得る。
② 電波情報圏は,放送事業体・放送局(発信機能を有する)の所在地を中心に空間的に構成さ
れているのである。
③ 東京・名古屋・大阪を中心とする電波情報圏が,大都市圏と重層的に形成され,その中に府
県単位の小電波情報圏が存在している。
④ 電波情報圏のうち,ラジオ放送圏は広いがテレビ放送圏は狭く,公共放送は民間放送よりも 情報圏が狭いことが,サービスエリヤの広狭から指摘できる。
⑤ 局所数・出力・サービスエリヤなどの面で,東北日本と西南日本,大都市地域と地方地域,
平地部と山間部とでは,相違がみられ,放送事業を地域事象としてとらえることができる。
⑥ 放送事業の背景には,行政・技術面での制約を有しながらも,地域の政治・経済・社会・文 化のトータルシステムとして運用されているのではなかろうか。
注
1)日本放送協会『NHK年鑑』1981年版(日本放送協会,1981)日本民間放送連盟『日本放送年鑑』1981 年版(日本民間放送連盟,1981).
2)原田 榮 放送事業の地域性一放送局所の分布一,『日本地理学会予稿集』14,1978,PP.24−25.
3)原田 榮 放送事業の地域性一新聞事業との結合を中心に一,『日本地理学会予稿集』15,1978,PP.
134−135.
4)1982年10月には,FM放送の愛媛・長崎・札幌,テレビの福島・名古屋・大阪・鹿児島がそれぞれ 開局している。
5)例えば福島の民放テレビは,昭和38年と第1次のテレビ開局ではもっとも遅かったが,,出資者の調整 が遅れたのが原因とされている。