人文論叢 (三重大学)第27号 2010
国有林野事業 の動 向 と地域特性 につ いて
‑ 1980年代以後 の 「縮小」段 階 にみ られ る特色 ‑
安 食 和 宏
要 旨 :本稿 では、我 が国の国有林野事業 の戦後 の推移 につ いて具体 的 に把握す るとともに、特 に1980年代以後の 「縮小」段階の国有林野事業 に見 られ る地域性 を明 らかにす ることを試 みた。
その結果、以下のような諸点が明 らかにな った。全国的な特徴 のみを挙 げると、 まず伐採事業 ・ 造林事業のいずれにおいて も、1980年頃よ り明確な減少傾向が継続 し、事業量 は大 き く減少 した。
ただ し、最近 (2002ない し2003年度以後) では、両者 とも増加傾 向に転 じている。 そ して、伐 採 においては間伐が主体 とな ってお り、造林では天然更新か ら人工更新への回帰がみ られ るな ど、
事業 の内容 に も変化が生 じている。 もっとも、 いずれの事業で も直傭部分 はほぼ消滅 してお り、
実際の作業を担 っているのは民間事業体 である。 次 に、職員数の変化 についてみ ると、定員内職 員 については1970年代後半 か ら、定員外職員 (その中心 とな る基幹作業職員) につ いては80年 代前半か ら、一貫 して減少が続 いてきた。 そ して、常勤の作業員 の過剰 な減少 の結果、現場作業 においては臨時労働力への依存 を強 めるとい う、数十年前 に回帰す るような現象が生 じている。
以上 のよ うに、 この20‑30年間に国有林野事業 に生 じた変化 はあま りに大 き く、 それはすでに、
「林業経営」 か ら実質 的に撤退 しているわけであ り、今や国有林野事業 の中心 は 「森林管理」 で あるとい う新 たな局面 に移行 している。
1. は じめに
国有林 は、我が国最大 の林野所有であ り、 それを所管す る林野庁 は、我が国最大 の林業事業 体である。「2005年農林業セ ンサス」 によると、全国の林野面積 (現況森林面積 +森林以外の 草生地 ・野草地) は計2,486万haであ り、全国土面積3,779万haの65.8%を 占めている。 こ の林野 は、所有形態か らみれば、国有林 (735万ha、林野全体 の29.5%)と民有林 (1,751万 ha、全体 の70.5%)1)に大 き く区分 され る。 本稿 で対象 とす るのは、林野庁所管 の国有林 であ り、総面積 は707万haに達す る2)。 全 国土面積 の約2割、林野面積 の約3割 を占め る国有林 の管理 ・経営を担 ってきた林野庁の役割は、木材の供給 において も、森林環境保全 において も、
さらに地元 山村経済への影響 という点で も、極めて大 きい (あるいは、大 きか った) といえる。
しか しなが ら、広 く知 られているように、かつて高度成長期 においては国有林 は大量 の木材 生産を続 けてきたが、低成長期以後の 「林業不況」時代 に入 ると、 その事業 は大 き く行 き詰 ま ることにな った。それは、国有林野事業がそ もそ も独立採算制度を基盤 としているものであ り、
赤字経営の慢性化、借入金の増大が大 きな問題 として生 じてきたか らである3) 。 そ して、 いわ ゆる 「合理化」政策の もとで、大幅な組織の縮小 と人員削減、事業量の縮小、そ して林業生産 ・ 経営か らの撤退 が進 め られて きた。野 中 (2006)、笠原 ほか (2008)な どは、 こうした会計制 度上の矛盾 と政府が とってきた政策 の両者が、国有林が本来果 たすべ き役割を奪 ってきた、歪 めてきた と指摘 している。 しか し現実 には、2006年5月、「行政改革推進法 (簡素で効率 的な
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政府 を実現す るための行政改革の推進 に関す る法律)」が成立 し、国有林野事業の解体 ・分割 ・ 独立行政法人化の方 向が決 め られ ることとな った (笠原 ほか,2008)。
このように、国有林野事業が、以前 に比べて大幅な縮小を強い られてきたのは事実であるが、
それで もなお、 日本林業全体 の中で国有林が 占める割合 は決 して小 さ くはない。例えば、林野 庁編 (2009)によると、全国の木材供給量 の約2割 は国有林が生産 している。 また国有林 は、
その成立 の過程が関係 して、地域的に偏在 してお り、北海道 ・東北地方や、 中部 山岳地帯、 そ して南 四国 ・南九州 に集 中 して分布 している4) 。 細かい地域 スケールでみ ると、例 えば東北地 方の国有林が卓越す る山村 においては、稼業用の慣行特売や労働力の雇用な どを通 して、国有 林の存在が地元住民の生活 に大 きな影響 を与えてきた とい う事情がある (安食,1990,1992)。
こうした山村 の社会経済 とその変化 を理解す るためには、国有林野事業 それ 自体 の変化 を把握 す ることが不可欠である。
そ こで本稿 では、我が国の国有林野事業の戦後の推移 について、改めてデータを整理 して具 体 的に把握す るとともに、特 に1980年代 か ら現在 に至 る 「縮小」段階の国有林野事業 に見 ら れ る地域性 ・地域的差異 を明 らかにす ることを 目的 とす る。 分析 においては、特 に、伐採 ・造 林事業量、事業 の実施形態、組織、職員数、作業員の雇用形態な どの変化 に着 目す る。 ここで 用 いる資料 は、林野庁発行の各年次 『国有林野事業統計書』 と、各営林局 (現 ・森林管理局) が発行 してきた各年次 『事業統計書』が中心である5) 。
なお、国有林野事業 に関す るこれまでの研究をみると、主 に林業経済学の分野で、国有林経 営やその労働力編成 について、 または政策 との関わ りについて、多数の研究が蓄積 されてきた。
しか し、 そ こに見 られ る地域 ごとの違 いを主題 とした研究 はあま り多 くはない (例えば有永, 1988;地域農林業研究会編,1982な ど)。 そ して、最近 の国有林野事業の地域性 については、
山田 ・大塚 (2009)の分析がみ られ るのみである。 本稿では、 こうした地域間の差異、 あるい は地域分化 を捉え る視点を強調 して、 さらに分析 を深めたい と考え る。
2.全国的にみた国有林野事業の推移
(1)国有林経営 と関連政策の推移
現在の国有林 は、第二次大戦後の1947年、 それまでの農林省所管の 「内地国有林」、 内務省 所管 の 「北海道 国有林」、 そ して宮内省所管 の 「御料林」 の三者 が統一 されて (いわゆる 「林 政統一」)成立 した。 これによ り、 国土面積の約2割を有す る巨大 な林野所有が生 まれた こと になる。
この成立以後 の60年 間の国有林経営 の歩 みを、笠原 ほか (2008)は3つの時期 に区分 して 捉えている。 すなわち、第1期 (1957‑73年) は、「木材増産 ・拡大造林期」 と称 され、次 の 第2期 (1974‑97年) が、「木材減産 ・財政赤字累増 ・改善計画期」であ号 。 そ して、第3期 (1998‑2007年) が、 「抜本 的改革 ・生産事業撤退期」 と見 な され る。 このよ うに、 国有林野 事業の動 向は、 その当時の政策の方向性 とこ その背景 にある社会経済情勢 に強 く規定 されてき た ものであ り、 それ らの関連性 を的確 に捉え る必要がある。
そ こで、国有林経営 に係わる政策の内容 とその変遷 について、概要をまとめる (以下、笠原 ほか,2008;山田 ・大塚,2009よ り要約)。 まず、かつて高度成長期 においては、1957年策定 の 「国有林生産力増強計画」、61年策定の 「国有林木材増産計画」 な どに後押 しされ、 国有林
‑ 2‑
安食和宏 国有林野事業の動向 と地域特性 について ‑1980年代以後の 「縮小」段階にみ られ る特色 ‑
は大面積皆伐 と大量の木材生産 を続 けてきた。 当時は、 日本全体の経済成長の中で木材需要が 極 めて大 きか った時期であ り、国有林 においては、成長量 を超えるレベルでの伐採が続 け られ た。
その後、1973年の 「国有林野 における新たな森林施業」(林野庁長官通達)の制定 によって、
それまでの大面積皆伐が見直 され ることとな り、 また高度成長期か ら低成長期への移行 という 日本経済全体 の大 きな流れ もあ り、国有林 の伐採量 は大 き く減少す ることとな った。 これが、
木材増産 か ら木材減産への転換 に相 当す る。 さ らに、1970年代後半 か ら、 国有林野事業の会 計上 の問題、累積債務 の増大が大 き く注 目され ることとな り、1978年 の 「国有林野事業改善 特別措置法」 の公布以後、組織の縮小 と人員 削減を含んだいわゆる 「合理化」政策が強力 に、
急速 に進 め られることとなった。 この法律 は、1984年、87年、91年 と3度 にわた り改訂 され、
国有林野事業 の財政を健全化 させ る取 り組みが長期 にわた って行われてきた。
しか しなが ら、1990年代半 ばに至 って も、 こうした経営合理化策が功 を奏 さず、財政上 の 問題 は一向に解決 されなか った6)。 それを踏 まえて、1997年 に、林政審議会 は 「林政 の基本方 向 と国有林野事業の抜本的改革」 を答 申 し、98年 には、「国有林野事業改革 のための特別措置 法」 と 「国有林野事業の改革のための関係法律 の整備 に関す る法律」の2法案が成立 した。 そ の内容 は、木材生産重視か ら公益的機能重視への転換、現場作業の全面的な民間委託、要員規 模 の さらなる削減 と組織の統合再編、一般会計繰 り入れを前提 とした特別会計制度‑の移行等 を含 んでお り、多方面 にわた り大胆 な改革 をめざす ものである。 これが、通称 「抜本的改革」
と呼ばれ るものであ り、 その後の国有林野事業 はこの改革 に規定 されて今 日に至 っている。
(2)伐採事業の変化
以下、全 国的 にみた国有林野事業 の動 向につ いて、具体的な数値で検討す る。 まず、1950 年度 か ら2007年度 までの伐採量 (材積) の推移 を図1に示 した。 これで明 らかなように、戦 後 ・高度成長期初期 においては、国有林の伐採量 は著 しく増加 した。 それが ピークに達 したの
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図1 国有林 における伐採量の推移
『国有林野事業統計書』(各年版)より作成。
人文論叢 (三重大学)第27号 2010
は1964年度 であ り、 同年度 の伐採量 は2,309万m3を記録 した。 しか し、 その後 の生産量 は減 少 に転 じ、前述 の 「国有林野 における新 たな森林施業」 の制定 (1973年) によ って大面積皆 伐 が見直 され ることとな り、 また高度成長期 か ら低成長期への移行 とい う流 れの中で、国有林 の伐採量 は大 き く減少す ることとな った。 それは、1970年代末以降、一方的な減少傾 向を辿 っ てお り、2003年度 には最低 を記録 した (図1)。 同年度 の伐採量 は301万m3であ り、 ピーク時 の13%に過 ぎない。 ただ し、 その後、伐採量 は若干増加傾 向にあ り、2007年度では425万m3
とな っている。
また図1では、伐採量 を 「製品生産」分 と 「立木販売」分 に分 けて示 した7)。 前者 は、 いわ ゆる 「直営生産」事業であ り、直接雇用 の労働力 によ り製品 (素材、つ ま り丸太) を生産す る ことを指す (後述す る請負 も含んでいる)。 また後者 は、立木 のまま民間業者 に売却す ること を意味す る。 これ までの推移 をみ ると (図1)、 まず製 品生産量 は、1980年代前半 までは極端 な増減 はみ られず、 おおよそ700‑600万m3で推移 してきた。 これは国有林野事業 において直 接雇用 され る作業員が担 ってきた (請負の場合 い もある)生産であるか ら、 かつては年 々変動 が あま りみ られない、 ある程度 固定 した分量 であ った。 それが1980年代後半 か ら極端 な減少 傾 向に入 った ことは、後述す る作業員 の大幅縮小 に対応す る。一方、立木販売量 の変化 は、伐 採量全体 の動 向 とほぼ一致 し、1960年代半 ばに ピー クに達 した後、長期 的な減少傾 向が継続 している。 これは、時代 ごとの景気 の変化、 それによって左右 され る木材需要量 の変化 に合わ せて、調節 されて きた といえ る。
製 品生産 (いわゆる直営生産)事業 は、さ らに、伐採 ・搬 出作業 を直接雇用 の作業員 が担 う
「直営直傭」方式 と、作業 を民 間事業体 が請 け負 う 「直営請負」方式 に分 け られ る。 後者 の請 負方式 は、実 はかな り以前か らみ られ るものであ るが、 その推移 を表1にま とめて示 した8) 。
これ によると、1960年代 においてすで に、直営生産分 の2割 は民間事業体 が請 け負 っていた。
そ して、 その後、1980年代後半 か ら請負比率 が次第 に増加す ることとな り、つ いに2004年度 表1国有林野事業 にお ける直傭 ・請負の比率の推移
1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2007年度
製 品 生 産 直傭比率 (%) 80 80 77 76 68 57 39 12
0
請負比率 (%) 20 20 23 24 32 43 61 88 100
新 植 植 付 直傭比率 (%) 52 41 41 35 44 39 38 24 1 請負比率 (%) 48 59 59 65 56 61 62 76 99
保育 (下刈 り) 直傭比率 (%) 49 41 38 31 35 34 27 13 1
荏) 「製 品生産」 については、伐採材積ではな く、素材 (丸太) として生産 された量 をベースに して 直傭 ・請負比率が計算 された。 ただ し、2000年度以後 は伐採面積をベースに している。
「新植植付」 と 「保育 (下刈 り)」につ いて は、実施面積 をベースに して直傭 ・請負比率 が計算 された。2000年度以後 の 「新植植付」 には、 もとの資料 で 「人工造林」 の実績 とされてい る数 値 を、類似 の もの と判断 して引用 した。
1995年度 まで の分 は、 林野庁監 修 (1999)所収 の資料 による。 2000年度以 後 は、 山田 ・大塚 (2009)所収の資料 による。
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安食和宏 国有林野事業 の動 向 と地域特性 について ‑1980年代以後の 「縮小」段階 にみ られ る特色 ‑
に直傭分 は完全 に消滅 した (山田 ・大塚,2009)。 この段階 に至 り、 国有林 の生産事業 か ら直 営直傭 は完全 に撤退 し、現在では直営請負 と立木販売分 を合わせて、全てが民間 に委託 されて いるわけである。
また、『国有林野事業統計書』 では、伐採方法別 の伐採量 データ も掲載 されている。 主伐 と 間伐 とに分 けてみた場合、かつては収穫 のほ とん どは主伐 によるものであ った9) 。 例 えば、戦 後収穫量 の ピー クを記録 した1964年 でみ ると、 間伐 による分 は115万m3であ り、全体 の5%
に過 ぎなか った。 しか し、1980年代後半 よ り、全伐採量 の減少傾 向の中で、 間伐 の分 が絶対 的 に増加 し、収穫量全体 に占め るシェア も次第 に大 き くな ってきた。1985年度 では、 間伐 によ る分 は144万m3(全体 の11.7%)であ ったが、95年度 には167万m3(全体 の26.8%)、 そ し て2005年度 では274万m3 (全体 の66.1%)と増加 している。 特 にここ数年間の増加 は顕著 で あ り、2007年度統計では337万m3と記録 されている。 これは全体の79.4%を占めているか ら、
今 では国有林 が生産す る木材 の主体 は間伐材 であ ると見なされ る。 これ も、国有林野事業の現 状 にみ られ る特徴 の一つである。 この最近数年間の間伐材急増 の背景 には、地球温暖化防止 に 貢献す るために、森林吸収源対策 を着実 に推進す るとい う目的で、間伐が (それによる森林整 備 が)積極的 に進 め られ るよ うにな った とい う政策 的な要因がある (林野庁編,2009)。
(3)造林事業 の変化
次 に、造林事業 の推移 につ いて検討す る。 1950年度以後 につ いて、特 に新植面積 と保育面 積 (下刈 り ・枝 うち ・つ る切 り ・除伐等 の合計値) の変化 をまとめて図2に示 した。新植面積 は、かつて高度成長期前期 にみ られた伐採量 (面積)増加 と対応 して、 同時期 には順調 に増加 した。 それが ピー クに達 したのは1966年度 (87,481haを記録) であ る。 その後 は、 伐採量 (面積) の減少 とともに減少傾 向 に転 じ、 (図2で は識別 が困難 だが)2002年度 に最低 とな っ た (1,308ha、 これは1966年時点 のわずか 1.5%に過 ぎない)。 そ して最 も新 しいデータでは、
新植面積 は再度増加 して4,513haである (2007年度)。
■ 保 育 面 積 口 新 植 面 積
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図2 国有林 における造林事業量の推移
『国有林野事業統計書』(各年版) よ り作成。
人文論叢 (三重大学)第27号 2010
ただ し、 この新植 とい う方式、すなわち人工的に苗木 を植え付 けるとい う作業 は、森林更新 の一つの方法 であ り (い わゆ る人工更新)、 もう一つの天然更新 も併せて捉 え る必要がある。
天然更新 は、大 き くみて、 自然の力 を活用 しつつ も森林 に積極的に人手 を加えて天然更新 を図 る 「育成天然林施業」(天然下種第Ⅰ類) と、人手 を加えず 自然力 に成長 をゆだね る 「天然生 林施業」(天然下種第Ⅱ類) に分 け られ る (笠原編,1996)。1970年代後半以後、前述 の 「国 有林野 における新 たな森林施業」 の制定等 によ り、国有林経営の改善 の一環 として進 め られて きた、人工林施業か ら天然林施業へ の転換 とい う大 きな流れの中で、統計上、天然更新面積 は 森林更新面積全体 の中で大 きな割合 を占め るよ うにな った10) 。 例 えば、1990年度で は、新植 面積9,691haに対 して、天然下種Ⅰ類 は17,623ha、天然下種Ⅱ類 は70,110haに達 した。 そ の後、2000年度では、 同 じ順 に並べ ると2,933ha、7,774ha、20,897haとな り、2007年度 で は、4,513ha、2,412ha、6,591haと、 人工更新 の シェアが再 び大 き くな って きた。 山田 ・大 塚 (2009)は、最近 の新植増加の要因は、更新がよ り確実 に実施 され る方 向性が採 られている か らではない か と推測 している。
次 に、第2図よ り、保育面積の変化 を検討す る。 高度成長期前期 の伐採面積の拡大 と並行 し て、保育面積 も増加 を続 けた。 それが ピー クに達 したのは1969年度 であ り、 同年度 の保育面 積 は714,201haであ った。 そ して、1980年代以後 は減少 が続 き、上記 の新植面積 と同様 に、
2002年度 に最低 とな った (68,245ha、1969年度数値 の9.6%)。2007年度 では、 やや持 ち直 し て、161,595haを記録 している。 新植面積 は1年 ごとの実績値であるが、保育面積 は、数年間 続 け られ る下刈 りやつ る切 り、枝 うち作業等 の合計値であるか ら、前者 の著 しい縮小 に比べ る
と、 その減少 の程度 は小 さか った といえ る。
これ ら国有林 の造林事業 の担 い手 につ いてみ ると (表1)、すでに1965年度時点で、新植作 業 も下刈 り作業 も、 その約半分 は請負 によ り民間業者が担 っていた。造林事業 では、生産事業 よ りも請 け負わせ化 は古 くか ら進んでいた といえ る。 その後 は、直傭 ・請負の比率 にあま り大 きな変化 はみ られなか ったが、1990年代後期 よ り、次第 に請負比率が高 まることとな り、2007 年度 で は、両者 とも請負率 は99%とな って い る。 よ って、 国有林 の現場 でな され る作業 は、
生産事業 において も、造林事業 において も、 いずれ もほぼ完全 に民間の事業体 が担 っていると い うのか、国有林野事業 の現状である。
(4)職員規模 と雇用形態の変化
もう一点、 国有林野事業 を支 えてきた労働力 につ いて、特 に直傭 の部分 につ いて検討す る。
図3は、定員 内職員数 と定員外職員 (作業員)数 の推移 をまとめた ものである。 前者 は、庁舎 等 に勤務す る管理職 ・事務職等 を指 し、後者 は現場 での作業 に従事す る作業員 である。
まず、定員 内職員 につ いてみると、1950年代末 か ら60年代初 めにか けては、職員数 の増加 が見 られた (1962年度 で約4万人)。 この時代 はまだ、 国有林野事業 の拡大期 で虜 り、 その後 しば ら く、職員数 に大 きな増減 はな く推移 した。 しか し、1970年代後半 か ら国有林野事業 の 会計上 の問題 が議論 され ることとな り、前述 の 「国有林野事業改善特別措置法」 の公布 (1978 年)以後、組織 の縮小 と人員削減が強力 ・急速 に進 め られ ることとな った。 その結果、定員 内 職員 につ いて も、早期退職 の奨励、林野庁 か ら他省庁への配置換 えの推進、新規採用 の抑制が 進 め られ (笠原編,1996)、1970年代後半か ら、職員数 は一方的 に減少 して今 日に至 っている (図3)。最近数年間の減少率が鈍 っているのは、人員削減が限界 に達 した、事業遂行のために
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安食和宏 国有林野事業 の動 向 と地域特性 につ いて ‑1980年代以後の 「縮小」段階 にみ られ る特色 ‑
12
10 8 ∫ 6 i
4 ;
日加 伽 n
ぜ ♂ # ぜ ♂♂ ぜ 〆 ず 〆 ず ぜ ぜ ♂♂ ♂ぜ♂ ♂ ♂
図3 定員内職員数と定員外職員数の推移
『国有林野事業統計書』(各年版)より作成。
■ 定員外職員 (作業員)
□ 定員内職員
年 度
これ以上減 らす ことはで きない状況 だ と捉 え るべ きで あろ う。 2007年度 の定員 内職員 は4,903 名 で あ り、 これ は1960年代 と比べ ると8分 の1程度 に過 ぎない。
次 に、定員外職員 に注 目す る。 公式統計 で定員外職員 (作業員)数 が把握 で き る1970年度 以後 につ いてみ ると (図3)、 まず1970年度 では約9万人 と記録 されて いた。 そ してその後 は、
減少 が継続す ることとな り、2007年度 では、 わずか1,636名 にまで減少 して い る。
ところで、定員外職員 は、 かつて 「常用」「定期」「臨時」 の3つ に区分 されていた。 それが、
1978年 の 「基幹作業職員」 制度 (常勤制度) 発足 に伴 い、 それを加 えて4つ に区分 され る こ ととな った。 こう した雇用形態 の違 いに も注 目す る必要 があ るだろ う。 そ こで、 それ らの内訳 とその推移 を表2にま とめた。 まず、1970年代 か ら80年代前半 にか けて、作業員数 が大 き く 減少 したの は、 当時大 きな シ ェアを 占めて いた臨時作業員 (短期 的臨時雇用) と定期作業員 (専業 的季節雇用) の減少 によ る ものであ る ことが理解 で きる。 その一方 で、常用作業員 (過 年 雇用) は まだ減少傾 向 にはな く、1978年以後 は雇用条件 が よ り改善 され た基幹作業職員 と い う雇用形態 に代 わ り、非通年雇用 の労働者 を取 り込 みつつ、増加 を示 して いた。基幹作業職 員数 が ピー クに達す るのは、1983年度 であ る (19,812名)。 こう して、 国有林 の労働力雇用 に み られ る専業化 が顕著 に進 んだわ けであ り、以後 は、他 の常用 ・定期 ・臨時作業員数 の規模 が 急速 に縮小 す ることとな った (表2、 ただ し臨時分 は1993年度以後 は不 明)。
ただ し、前述 の定員 内職員 と同様 に、基幹作業職員 に対 して も、 当然 なが ら人員 削減 の政策 が強 く作用す ることとな り、新規採用 が認 め られない中で、職員規模 は大 き く縮小 して きた。
2007年 度 の基幹 作業職員数 は1,547名 にまで減 ってお り、 これ は1983年 度 数値 の13分 の1 で あ る。 これで は、 国有林 の現場 で これ までな されて きた直傭 の作業 が維持 で きないの は、 む
しろ当然 であ る。 前述 したよ うな民 間部 門‑ の作業 の完全委託 とい う事態 は、 この作業員規模 の大 幅縮小 と表裏一体 の もの と して捉 えねばな らない。
また、 『国有林野事業統 計書』 で は、 作業員 の雇用 区分別延人員 とい う数値 も掲載 されて い る。 1993年度 か ら臨時作業員数 (実数) は計上 されな くな ったが、 「延人員」 でみ る と、実 は
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表2雇用区分別作業員 (定員外職員)数の推移
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2007年度
基 幹 作 業 職 員 19,520 17,037 12,290 7,148 3,677 1,547 (50.6) (72.5) (78.5) (89.1) (91.3) (94.6)
常 用 作 業 員 16,080 17,759 774 362 199 89 36 87 (17.8) (28.8) (2.0) (1.5) (1.3) ( 1.1) (0.9) (5.3)
定 期 作 業 員 21,140 14,581 6,940 3,018 1,585 782 315 2 (23.4) (23.6) (18.0) (12.8) (10.1) (9.8) (7.8) (0.1)
臨 時 作 業 員 53,003 29,410 ll,306 3,097 1,575 不明 不明 不明 (58.7) (47.6) (29.3) (13.2) (10.1)
計 90,223 61,750 38,540 23,514 15,649 8,019 4,028 1,636
注) ( ) は構成比 (%) を表す。1993年度か ら臨時作業員数 は計上 されていない。
『国有林野事業統計書』 (各年版) よ り作成。
1990年代後半か ら、臨時作業員 の延人員数 はほぼ一貫 して増加 を続 けてい るので ある。 1995 年度では、作業員延人員総数 は約160万7千人で、臨時の延人員が46,585人 (全体 の2.9%) であ ったが、2000年度では、総数が94万1千人 に減少 した中、臨時分 は139,156人 (全体の 14.8%)に増加 した。 そ して2007年度では、総数が53万9千人で、 その中の臨時が208,352 人 (全体 の38.6%)であ る。 これは、基幹作業職員が過剰 なまで に減少 した結果、実行が困 難 とな った (それで も必要な)作業 については、臨時の労働力 に依存せ ざるをえな くな った状 況 と考え られ る。 常勤の作業員を削減 して、臨時作業員への依存を強めるとい う方式 は、経営
「合理化」路線 に沿 うものではあろうが、 これでは、 いわば数十年前 にさかのぼ るような動 き が進行 しているともいえる。
3.旧 ・営林局別にみた国有林野事業の変化 と地域性
(1)営林局 ・営林署組織の変化
戟後 の林政統一 と新 たな国有林野事業 の開始 (1947年) に伴 い、 この事業 を担 う本部 とな る旧 ・山林局 は林野局 と改称 され、農林省の外局 とな った11) 。 そ して、全国の国有林を分割管 理 し各地域 ごとに事業 を進 めるための組織 として、 同年 に計14の営林局 による管理経営体制 が作 られた (図4、表3を参照)。 そ して、営林局 の下で、現場 の事業 を担 う組織 と して位置 づけ られ るのが営林署であ り、 その下 に位置す る出先機関が担当区事務所である12)。
この14営林局体制 は約30年 にわた って継続 されてきたが、前述 の 「国有林野事業改善特別 措置法」 の制定 (1978年) と、 いわゆる 「合理化」計画の推進 によ り、1979年 に、北海道 内 の5営林局 は、1営林局 (かつての札幌営林局を北海道営林局 と改称) と4支局 (他 の4営林 局を支局化) として再編 された。 その後、1985年 に、名古屋営林局 は長野営林局 内の支局 に 変わ った。こうして再編 されて形成 されたのが、9営林局・5支局体制である。 その一覧を表3 に示 した。
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安食和宏 国有林野事業 の動 向 と地域特性 につ いて ‑1980年代以後 の 「縮小」段 階 にみ られ る特色 ‑
図4 国有林の分布 と旧 ・営林局の管轄区域 図中の数字 は表3‑表7に対応す る。
林野庁監修 (1999)所収 の図を基 に して作成。
営林局 (支局)単位 にみた基本的 な特色 として、 まず、 それぞれが管 理す る国有林野面積 をみ ると (表3 中の数値 は、 「抜本 的改革」 直前 の 1998年4月 の数値 である)、前橋、
青森営林局、 また旭川支局な どは、
広大な森林 を管理 してきた ことが読 み取れる。 逆 に、東京、高知営林局、
名古屋支局な どは、 そ もそ も管理す る面積が小 さい。 また、天然林面積 と人工林面積を比べ、人工林率 (両 者の合計面積 に対す る人工林面積の 比率) を計算す ると、全国平均では 33.4%であるが、高知、東京、熊本、
大阪営林局でその数値が高 い。すな わち西 日本の国有林では人工林化が 他地域 よ りも早 く進 め られてきた と いう地域性が明確 に読 み取れ る。 一 方で、奥地 山岳地域 を含む北海道 ・ 東北、 そ して中部地方 では、天然林 の比率が高い。
また、表3には、各営林局の下 に 位置す る営林署 の数 も示 した。全国 の営林署数 は、1960‑70年代 を通 して、 ほ とん ど変 わ らなか った。
1964年度か ら72年度 までは計350であ り、73年度か ら78年度 までが計351である。 しか し その後、1970年代末か らは、「合理化」路線の もとで、営林署の統廃合が進め られることとなっ た。1979年度か ら81年度の時点で342を数 えた営林署数 は、以後、段階的に減少 し、98年度 には229とな った。表3によると、 もともと多 くの営林署 を有 していたのは、青森、熊本、秋 田、前橋 な どの営林局であるが、1980‑90年代の組織縮小政策 によ り、 いずれの営林局で も、
営林署数 はおよそ3分 の2にまで減少 した。
さらに、 こうした管理組織 に大幅な再編 を もた らしたのか、1998年 のいわゆ る 「抜本 的改 革」 である (2章 を参照)。 これ によ り、 それまでの営林局 ・支局 は、「森林管理局」「分局」
と改称 され、7森林管理局・7分局体制 とな った (表3)。 そ して、森林管理局分局 は、5年間 のみ継続す る暫定組織 とされたため、2004年度以降 は7森林管理局体制 とな り、現在 に至 っ ている。 かつて営林局 (または支局) が設置 されていた青森 ・東京 ・名古屋 な どには、「事務 所」 は残 っているが、非常 に大 きな組織再編がなされたといえる。
同時 に再編 されたのが営林署 であ り、 これは、1999年 に 「森林管理署」 または 「支署」 と 改め られた。統廃合 は一気 に進み、229あった営林署 は112の森林管理署 (内訳 は、98森林管 理署 と14の森林管理署支署) にまで半減 された。 この再編 を地域的にみ ると、 旧 ・営林局単
表3 旧 ・営林局の一覧 と組織の変遷
It0‑
No 営林局名 営林局 .支局 国有林野 人工林面積 天妖林面積 人工林 営林署数 大 盤 . 森林管理署 森林管理局名 (1947‑ 名 (1979‑ 面積(ha) (ha) 一ヽヽヽ(ha) 率 (%) (1980 (1998 分局名 ・支署数 (2004年度〜) 1978年度) 1998年度) (1998年) (1998年) (1998年) (1998年) 年 度 ) 年 度 ) (1999‑2003年度) (1999年度〜)
1 2 3
45 札幌営林局旭川営林局北見営林局帯広営林局函館営林局 北海道営林局旭川営林支局北見営林支局帯広営林支局函 館営林支局 675,872,432,705,388,((l(((8322210522815518.5.9.5.l.9)5)3)7)1) 111190,47,329,85,4,388353215103994 485,61272,502,275,0,971379293335610 2123.32.22.23..72777 2511118673 111182602 北海道森林管理 局北海道森林管理 局旭川分局北海道森林管理 局北見分局北海道森林管理 局帯広分局北海道森林管理局函館分局 66453 北海道森林管理局
6
7 青森営林局秋 田営林局 青森営林局秋 田営林局 917410,(1,(611719.2.8)0)0 336,210,610635 484,511,997010 30.39.63 4734 3122 東北森林管理局青森分局東北森林管理局 1140 東北森林管理局
8
9 前橋営林局東京営林局 前橋営林 局東京営林 局 1,011175,(1,(010523.2.43)3) 265,93,339131 6166,0,656889 30.58.32 3217 2212 関東森林管理局東京分局関東森林管理局 155 関東森林管理 局
1ll0 長野営林局名古屋営林局 長野営林局名古屋営林支局* 37283,4,((59414.3.569)7) 104,72,265897 21143,8,033091 32.33.47 2013 194 名古屋分局中部森林管理 局中部森林管理局 46 中部森林管理局 12 大 阪営林局 大 阪営林局 311,(6314.1) 139,327 150,714 48.0 26 19 近畿中国森林管理局 ll 近畿 中国森林管理局 13 高知営林局 高知営林局 182,(6932.4) 118,967 54,905 68.4 19 13 四国森林管理局 6 四国森林管理局 14 熊本営林局 熊本営林局 534,(5307.0) 283,888 221,699 56.2 45 29 九州森林管理局 17 九州森林管理局
荏)*:名古屋営林局 が名古屋営林支局 に変 わ ったの は 1985年8月 で あ る。 国有林野面積 の ( ) は対全 国 シェア (%) を表す。
『国有林野事 業統計書』(各年版) よ り作成。
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