知恵おくれ障害児学級の教育内容づくり
著者 坂下 伸一
雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告
巻 14
ページ 35‑43
発行年 1991‑03‑15
その他のタイトル DEVELOPING THE QUALITY OF THE EDUCATION FOR RETARDED PUPILS
URL http://hdl.handle.net/10105/4518
坂 下 伸 一
(奈良教育大学教育学部附属小学校)
DEVELOPING THE QUALITY OF THE EDUCATION FOR RETARDED PUPILS
Abstract
Under the circumstances of Japanese education for handicapped children, their classes hold a very important position as the number of handicapped children learning at school has grown.
Such classes are also greatly expected efficient as a way to guarantee the right to receive ed‑
ucation to handicapped children. However, what to teach to those children has not yet been studied and practiced fully. Their education has been restricted to some extent by poor educa‑
tional conditions surrounding handicapped children classes.
The following study is on the educasion for the retarded School and is rounded off with the research in respect of "Lesson, Guidance, School events and Educational exchange', to assure handicapped children of highly‑developed education. It is easy for them on goodterms with non‑
handicapped ones because their classes are instituted in an ordinary school : these are the two points of the question. This report might point out how to develop thequality of education for handicapped children, about which there will be much argument.
Key word : Handicapped children classes in an ordinary school.
education for the retarded children classes.
quality of education for retarded.
I.研究目的
1990年度版文部省初等中等教育局特殊教育課発行の『特殊教育資料』によると、障害児学校の小・
中学部に通う児童・生徒は56,746人、小・中障害児学級に通う児童・生徒は81,053人であり、いわ ゆる障害児教育を受けている子どもは、義務教育段階で、 137,799人に達している。この資料の数 字からも明らかなように、今日の日本の障害児教育の中では、障害児学校以上に、普通学校内にあ る障害児学級の比重は大きいものだといえる。にもかかわらず、障害児学校の教育内容づくりに比 べ障害児学級の教育内容づくりは、必ずしも蓄積され、すすんできているとはいえない。
『奈良の障害児教育自書』 (奈良の障害児自書刊行委員会、 1989年)では、奈良県下の障害児学
級の問題点をいくつか指摘している。
・障害児学級在級児の障害の程度や発達段階の幅が大きく、しかも一学級の子どもの数が減少し、
豊かな教育活動をすすめようにも障害児学級としての集団が成立しない。
・障害児学級担任の経験年数2年未満が半数近くを占め、担任のいれかわりが非常に激しい。しか も専門の免許を取得している担任は20%前後と少ない。
などである。このような状況から、これまで障害児学級での実践と研究は、十分に蓄積されている とはいえず、きわめて個人的・断続的なものに終ってしまっている。
一方、障害児学級は、障害児の教育権保障のひとつの形態として、次のような特徴をもっている といわれている。
第一に、障害児学級は地理的にみた時比較的自宅に近く、通学が容易である。
第二に、障害児学級は普通学級と同一の校内にある故に、健常児との様々なレベルでの交流の教 育にとりくみやすい。
第三に、障害児学級がその教育的成果をあげていくことにより、他の教職員、児童・生徒やその 父母、地域住民に障害児とその教育について理解を促進していくことができる。
障害児学級のこうした位置づけや役割、そして、障害児の教育権を保障するための重要な任務か らして、教育内容づくりをすすめることが何よりも必要となっている。障害児学級の担任が、障害 児の発達を保障する豊かな教育実践をつくりだし交流しあうことが求められているともいえる。
Ⅱ.研究方法
(1)文部省は、障害児学級の教育課程を編成する場合のよりどころは、原則的には、小学校及び中 学校の各学習指導要領であるとしている。しかし、学校教育法施行規則73条の18で「小学校又は中 学校における特殊学級に係わる教育課程については、特に必要がある場合」「特別の教育課程によ ることができる」とし、障害児学校の学習指導要領を十分に活用するようにとも述べている。障害 児学級の教育内容を考える時、障害児学校の学習指導要領を批判的に学ばなければならない理由も ここにある。すなわち戦後の学習指導要領の立場は、「教育全体を貫く能力主義政策のもと、障害 の種類、程度及び能力・特性等に即応し、弾力的に対応するとして、訪問教育を含む重度・重複障 害児教育の内容を宜しいまま放置するなど、結果的には、今日の能力主義教育を根底から支えるも のであり、十分に障害児の発達を保障する教育内容を示してこなかった。」だからこそ、それをの り越える教育内容をっくりだし、障害児学校学習指導要領を実践的に批判しなければならないと考 える。なお、障害児学級の教育については「特殊学級の教育の実際」(文部省昭和58年)「精神薄弱 特殊学級教育課程編成の手引」(文部省、昭59年)などの文部省の著作がある。
(2)研究目的の項でも述べたように、障害児学級の実践は個人的、断続的なものが多いが、すぐれ た実践もいくつか報告されたり、著書になったりしている。たとえば、民間教育団体である全国障 害者問題研究会の全国大会では、毎年障害児学級の実践が数多く報告されている。また、東京の江 口季好氏の一連の著作や大阪府下の障害児学級の実践をまとめた『障害児学級実践ノート』などが ある。これらには、子どもを主人公にしたすぐれた教育実践が記録されており、学ぶべきものが多
くあった。
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(3)上記の(1)、(2)をふまえ、30年近くを経た奈良教育大学附属小学校(次下「本校」と略す)障害 児学級の教育内容をまとめる。
本校障害児学級では、これまでにも本校主催の研究会や各種研究団体で実践を発表すると同時に、
次のような本校著作の中でも実践報告をしてきた。
『教科の本質に基づく授業の改善』(明治図書1966年)
『価値ある教材とその授業』(明治図書1969年)
『子どもが変える授業とその生活』(明治図書1971年)
『子どもが変わる授業 第1巻』(汐文社1976年)
『授業の創造』(民衆杜1979年)
『教科の本質と授業』(国土社1981年)
『教育の創造と追究Ⅳ』(国土社1988年)
Ⅲ.研究結果と議論
(1)本校障害児学級の概要
本校障害児学級の教育をまとめるにあたって、まず障害児学級の概要を示す。
本校に知恵おくれの「特殊学級」が設置されたのは1963年のことである。1960年代の政府・文部 省のすすめる「特殊教育振興政策」や教員養成大学・学部における「養護学校教員養成課程設置計 画」などを背景にして生まれたものである。
当初は1学級で開設されたが、年を追って増設され、1965年3学級、担当教師4名という体制に なり現在に至っている。(ただし、障害児学級の教育の充実させるために、講師を1名確保してい
る。)
通学している子どもたちは、知恵おくれという障害を主要にもち、発達段階としては、一次元可 逆操作期から三次元形成期にある。
表1 発達段階別人数(1990年度)
段 階
学 年
一 次 元 可 逆 二 次 元 形 成 二 次 元 可 逆 三 次 元 形 成
(2 才 頃 ) (3 才 頃 ) (4 才 頃 ) (5 ・6 才 頃 ) 計
1 、 2 年 0 3 1 0 4
3 、4 年 1 3 1 0 5
5 、 6 年 0 2 0 2 4
計 1 8 2 2 1 3
表2 子どもの障害の状況(1990年度)
項 目 人
数
ち の 他 あ (障 害 の種 類 ) え み
お せ 自 閉性 運動機能
学 年 く
れ
虫 も =2三五 に コIlコ 署 っ 障 害 障 害 障 害 1 、 2 年 4 2 2 1
3 、 4 年 5 1 4 3 0 1
5 、 6 年 4 1 3 2 1 0
計 1 3 4 9 6 1 2
障害児学級では、教育目標を次の6点においている。
①体や手足を力いっぱい動かし、運動量も多くして、身体機能を高める。
②物や外界に働きかけていく意欲と技術を育ていく。
③体全体を通して、自分の要求や意志表示ができることを大切にしながら、話す力、書く力を確か なものにしていく。
④美しいもの、ねうちあるものに感動できる力、それを表現していく力を育てていく。
⑤自立していくことの基礎として、基本的生活習慣を確立させていく。
⑥人との関わりを深め、集団生活のできる力、集団を高める力を育てていく。
障害児学級では、この6つの教育目標を達成させるための実践をすすめながら、本校全体が掲げ る、、めざすべき子ども像〝「すこやかなからだをもった子・たしかな知識をもった子・豊かな心を もった子・よく働く子・集団の中でみがきあって伸びる子」に迫ろうとしている。
教育内容としては、子どもにとって必要な複数の集団を保障しながら、①教科及び総合学習(授 業)②生活の指導③行事④交流・共同教育の四つに重点をおいている。
(2)授業づくり
障害児学級の教育のみならず、全ての学校教育で、第一にしなければならないことは、子どもに 基礎的な学力、学ぶ力を身につけさせるための授業をっくることである。障害児学級の少人数傾向 の現状の中で、同一課題で学習する集団ができないため、障害児学級の授業が成立しにくい状況が ある。それどごろか、子どもの課題を考慮せず、普通学級の授業に入れればよいという考え方まで ある。
本校障害児学級では、授業とは「人類および民族の文化遺産、その現代的到達の基本のものを、
選びに選んで系統的に教え学ばせる」時間だと考えている。だから、子どもひとりの授業であろう と基礎的な学力を保障する授業のあり方は変わるものではないし、変わってはならない。本校障害 児学級では、授業のための教材をつくるにあたって、次のようなことを大切にしている。
①「子どもにどんな力をっけるのか」という授業の本質に基づくこと。
たとえば、音楽の授業とは、「歌詞と旋律を通し子どもの心や体に直接ゆさぶりをかけ、音楽的 感性を育てていく」ものだと捉えている。この音楽の授業の本質に合致しているかどうかが、音楽 の教材をさがし、つくりだしていく最も基本的な視点となる。他の授業も同様である。
②子どもの認識や身体の発達に見合っていること。
子どもの認識や身体の発達には、節があり、質的転換期があると言われている。また、知恵おく れの子どもは、発達の全般的な遅れだけでなく発達領域によってずれが大きい。こういうことから、
発達段階や障害の状況によって教える内容にも違いが生じてくる。教材づくりにあたっては、子ど もの発達に即するということを十分考慮しなければならない。
③教師が情熱をかけて創造していくこと。
授業をおこなう教師自身が、今こそこの子どもに、こういう力をつけたいという 思い′′ をこめ て教材をっくっていく時、借り物ではない価値ある教材が創造されていく。
なお、障害児の場合、小学生という生活年齢であっても、発達年齢によって、授業名やその設定 期が変わってくる。本校障害児学級では図1のように考えている。
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図1子どもの発達と「教科及び総合学習」の設定期 脚 耕 鈴
及雌朗樗 1 .5歳 3 嵐 5 患 7 象 こ と . ば
か ず か か く え ほ ん お ん か く す こ う た い い く 鋸 ∬・ 損 び し ご と
表3 時間割表(1990年度)
. \ 月 火 水 木 金 土
8 :4 0
9 :2 0 9 :2 5
1 0 :0 5 10 :4 0
1 1 :4 0
13 :0 0 1 3 : 10 13 : 3 5
1 4 :1 5 14 :4 5
朗 仝 嘲 靭 鯛 馴 朝
の の の の の の
会 校 会 仝 会 会 会
ナこ こ ;え お た お
さ ん ば しヽ と ;は ん い ん
い が い が
く ば :ん く く く
中 休 み
か ;あ ず あ ず こ :え
.そ こ そ こ と !は
ず :び l l
う び う 可 ん
′
給 食
おわ りの 全 お わ りの 会
そ う じ し こ .え l ▼ ご と :は 阜 ば :ん お あ り の 会
そ う じ か :ぁ
:そ ず ;び おわりの会
(3)生活の指導
「日常の基本的生活習慣の確立もふくめ、人間としての交わりや自主的な集団活動を育てる営み」
が生活の指導である。そして「子どもの発達に即して、自治の基礎を教え、自立を励ましていく」
ものでもある。
このようなねらいのもとに、本校障害児学級では、次の3つのことにとりくんでいる。
①基本的生活習慣の確立
基本的生活習慣には、食事・衣服の着脱・排泄・清潔・整理などがある。こうしたことの技術や 技能をひとつひとつ着実に身につけさせることを軽視してはならない。しかし、基本的生活習慣を 碓立させるとは、技術や技能を身につけさせることだけにあるのではない。その指導は、何のため に、いつ、どのような所でするのかという認識と結びついた形ですすめるようにしている。障害児 が社会生活に参加し、その主体者として自己を形成していく営みとして基本的生活習慣を確立させ ていくのである。
②人と交わる力を育てる。
障害児も人との関わりの中で成長していくことは言うまでもない。だからこそ、障害児が白から 働きかけ、人との交わりを結ぶことのできる技術を身につけることが必要である。しかし、この場 合でも、ただ交わる技術を身につけさせればよいとせず、人と人との関係をどのような方法で変化・
発展させていくのかも課題としている。仲間意識に基づく人間的な関係をつくりだすための力を育 てたいと考えている。
③教師の手伝いや当番活動
障害児であっても、自治的な能力の基礎を育てるために、子どもの実態にあった形で、クラス運
営活動の一部を担当させたいと考えている。
教師の手伝いとして、連絡帳のカゴをもってきたり、給食の配膳をさせたりしている。
当番活動としては、日直の活動を交替でさせている。こうした活動も、仕事ができればよいとい うだけでなく、自分の役割に責任をもち、すすんでおこなう力を育てることが大切になる。
生活の指導は、主として教科外という領域でおこなっており、朝の会、給食、終わりの会といっ た一日の流れの中や、学級・学年行事などを組識する中でとりくんでいる。
(4)行 事
本校の障害児学級では、行事が年間の教育計画の節目となっており、父母との連携をっくってい く上でも不可欠の役割を果している。
行事のねらいとしては、①子どものもっている力を十分に発揮させるとともに、新しい力をもつ けていく。②仲間意識や集団を育てていく。③ゆたかな生活経験をさせる。などである。また、行 事を行うにあたっては、次のようなことに留意している。
①何のために行事をするかという目的をはっきりさせる。
②どの子も参加できる内容で、一人ひとりの子どもが十分力を発揮できるようにする。
③子どもどうしの関わりを大事にする。
④父母の協力や理解をうる。
⑤行事のあとの総括をきっちりとする。
行事には、学校・学年行事と障害児学級独自の行事(共同教育を含む)とがある。(表4)
障害児学級独自の行事としては、次のようなものがある。
・はじまりやおわりの区切りとしての行事………一年生をむかえる会、6年生とのおわかれ会など
・親子で楽しむ行事………親子宿泊のつどいなど
・自然や季節とのかかわりで、生活経験を豊かにする行事………プール開き、納会、ひなまつりな ど。
・みとおしをもってがんばる力をつける行事………全校集会での歌や劇の発表など
・本校の健常児や他校の障害児学級との交流のための行事………4年生各クラスとの交流会、奈良 市障害児学級交流会など
学校・学年行事の参加については、行事そのもののねらいと障害児学級の子どもの課題とをっき 合わせ、可能な限り参加させてきている。ただし、ねらいがあまりにも子どもの課題とかけはなれ ている場合は、障害児学級だけで行動したり、参加させないこともある。障害児学級の子どもがそ の行事の主人公として活動でき、力を発揮することができるということを重視している。
(5)交流・共同教育
普通学級と同一校にある障害児学級の有利な点として、健常児と様々なレベルで交流できるとい うことがある。本校でも、障害児学級の子どもと普通学級の子どもとが同じ学校に学ぶ仲間として、
共同の活動にとりくむ交流・共同教育を大切な教育内容のひとつとしてきた。ねらいは、①障害児 と健常児とがお互いに仲を深めあう。②健常児と普通児がそれぞれ経験を拡げ、もてる力を発揮す る。(診健常児に障害者問題を正しく理解させるための糸口とする。の3つである。
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表4 年間の行事(1990年度)
\ 学 校 行 事 学 年 行 事 障 害 児 学 級 行 事 共 同 教 育
4 月 入 学 式 ・一 年 生 を 迎 え 新 入 生 をむ か え る会
る会 ( 親 子 で )
5 月 遠 足 奈 良 市 ブ ロ ック障 害 児学
級 交 流 会 6 月 修 学 旅 行 (6 年 ) 教 生 先 生 を むか え る全
教 生 先 生 を送 る会
7 月 臨 海 学 舎 (6 年 ) プ ー ル び らき
8 月 親 子 宿 泊 の つ ど い
9 月 プ ー ル納 会
教 生 先 生 を むか え る全 4 年 3 組 との 交 流 会
10月 体 育 大 会 教 生 先 生 を送 る会 奈 良 市 ブ ロ ック障 害 児学
級 交 流 会
11月 附 小 まつ り 学 級 遠 足 (み かん 狩 り) 奈 良 市 障 害 児 学 級 交 流会 附 小 まつ りで の発 表 4 年 1 組 との 交 流 会 12月 P T A 研 究 会
全 校 遠 足
1 月 耐寒か け足 ・マ ラソ ン大会 全校美術展
2 月 劇 の発 表 4 年 2 組 との 交 流 会
3 月 卒 業 式 ・卒 業 生 を送 る 6 年 生 と の お わか れ 会 奈 良 市 ブ ロ ック障 害 児学
ノゝ ヱミ ( 親 子 で) 級 交 流 会
そうじゃ登下校の中で自然な形でのふれ合い、交流をする以外に、学校教育としての共同教育の とりくみには主に次のようなものがある。
(か行事をとおしての交流
学校・学年行事は、障害児が参加する場合、すべて広い意味で交流の場となる。ひとっひとつの 行事には、それぞれのねらいが設けられている。普通学級でも障害児学級でも、行事に参加したり、
作りだしたりする時、その行事のねらいを達成させるために子どもを活動させていく。それに加え て、内容によっては、障害児と健常児とが仲を深めあうとい交流のねらいを行事の中に位置づける
ことができる場合がある。本校では、学年遠足、附小まつり、宿泊の集いなどがそれにあたる。
②19クラス委員との交流
本校では、19クラス委員(各学級を1年1組から通し番号で呼んでいる。普通学級が18あり、そ の次の学級として障害児学級を19クラスと呼ぶ)という特別な委員を普通学級の子どもから選出し ている。委員は、、5、6年生の各学級から2名ずつで、12名である。19クラス委員は、給食時や中 休みに19クラスに来て、障害児と交流したり、誕生会や遊ぶ会などの交流会を作りだしたりしてい
る。
③4年生との交流会
本校では、4年生の3学級と障害児学級とが、年に一度必ず交流会をもっことにしている。4年
生という学年と交流会をもつことにした理由は次のようなことである。
・4年生の子どもたちには、行事を計画したり、やりとげていく力がつきはじめている。
・同じ学校に学ぶ仲間として、障害児学級の子どもを見ることができはじめている。
すなわち4年生という学年の発達的特徴から考えたわけである。4年生との交流会のねらいは、相 互に知りあい、仲よくなっていくことにある。その上で、障害児学級側のねらいは、4年生の友だ ちといっしょに遊んだり、話しあったりできるようになるということであり、普通学級側のねらい は、障害児への正しい理解を育てていくとともに、実行委員を中心にみんなで行事をつくる力を高 めていくことにある。
これらのとりくみの中から、本校では、交流・共同教育をすすめるにあたって次のようなことを 大切にしなければならないと考えてきた。
・子どもたちの要求を基礎にすすめる。子どもたちの要求を無視した形では、障害児と健常児との 正しい関係は育てられない。
・障害児と健常児とが対等・平等の立場でありたい。障害児が健常児の中に埋没してしまったり、
従属的関係になることをさける。
・ねらいを明確にしておく。障害児学級と普通学級双方の共通のねらいとそれぞれ独自のねらいを 設定する。
・教師間の意志統⊥をはかる。計画的、系統的にすすめるためには、障害児学級と普通学級の教師 が十分に話しあっておくことが必要となる。
・事前、事後のとりくみをきめ細かくする。
特に、子どもの様子を記録したり、作文を残したりし、次へ生かしていく。
(6)多様な集団の保障
これまでも述べてきたように、障害をもつ子どもも、集団の中でこそ育ち、人間としての発達が 保障される。ひとりの子どもに質の異なる複数の集団を保障することの大切さが障害児教育の実践・
研究の中で確かめられてきている。障害児学級が少人数化し、子どもに集団を保障することが難し くなりつつあるからこそ、一層、このことを大切にしたい。また、集団の保障という名目で、普通 学級の中に障害児を入れさえすればよいという安易な考え方もさけたい。子どもの発達を保障する
ための必要な集団を編成したい。
本校障害児学級では、次のような集団を教育内容とかかわらせながら編成してきている。
・生活集団(基礎となる集団)………一日の生活、六年間の小学校生活をすごす最も基礎となる集 団。本校では、障害児学級全員の集団がこれにあたる。この集団の中で子どもは、友だちや教師 と関係をもちながら、人格的な発達をとげていく。また、この集団を基礎としながら、学年別集 団、全校集団へと参加していく。
・学習集団………教科や総合学習で、学習課題に即して編成する集団。したがって年度によって集 団編成の仕方も変わるが、「音楽」「体育」などは障害児学級合同集団、「かず」「ことば」「図工」
などは、課題別集団を編成している。
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