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カニ心臓神経節ニューロンのオシレーション

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カニ心臓神経節ニューロンのオシレーション

著者 田崎 健郎

雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

巻 31

号 2

ページ 47‑56

発行年 1982‑11‑25

その他のタイトル Oscillation in the Crab Cardiac Ganglion Neurons

URL http://hdl.handle.net/10105/2315

(2)

奈良教育大学紀要 第31巻 第2号(自然)昭和57年 Bull. Nara Univ. Educ, Vol. 31, No. 2 (Nat.), 1982

カニ心臓神経節ニューロンのオシレ‑ション

田  崎  健  郎 (奈良教育大学生物学教室)

(昭和57年4月30日受理)

Oscillation in the Crab Cardiac Ganglion Neurons

Kenro Tazaki

(Biological Laboratory, Nara University of Education) (Received April 30, 1982)

Summary

Ionic current components during TTX‑resistant driver potential (DP) oscillation were studied on voltage‑clamped neurons of the crab cardiac ganglion. A suprathreshold depolarizing clamp produced an initial inward current followed by a steady outward current. Both currents occurred almost concurrently on membrane depolarization. The peak amplitude of DP is determined by a steady state of membrane currents resulting from counteraction of inward and outward currents. The inward current was enhanced by

TEA, markedly reduced by Mn2十 and the outward current was blocked by TEA. The

former is carried by Ca2+, and the latter by K+. Inactivation process of the Ca2 current coincides well with a long refractoriness in DP repetition rate. DP is generated by a voltage‑dependent Ca2+ conductance increase leading to produce the inward Ca2 current of greater magnitude than the outward K+ current simultaneously produced by a voltage‑dependent K+ conductance increase. Relaxation oscillation of DP is an endogenous, self‑regenerative response of neuronal somata. Characteristics of the oscillation were discus‑

sed in relation to rhythmic burst pattern formation in the spontaneous ganglion neurons.

カニの心臓神経節は9個のニューロンで構成される最も単純な神経系であり,心臓に対する自 動中枢として働いている.神経節活動の歩調取り機構やニュ‑ロン間のシナプスを介した統合機 構は詳しく調べられてきた(Hagiwara, 1961 ;Hartline, 1979).心臓神経節の各ニューロンは 周期的バーストを放電する.ニューロンのバースト活動がその基になる膜電位の持続的脱分極に よって調節されていることは広く認められている(Moffett, 1977). Tazaki (1971)は,心臓神 経節ニューロンの持続時間の長い脱分極電位が軸索にインパルス列を発生させる起動電位の役割 をし,インパルスを阻止するテトロドトキシン(TTX)に対して抵抗性があることを示した.

Tazaki & Cooke (1979b,c)は, TTXによって分離される脱分極電位がニューロンに固有の 電位変化であり,バーストパターンを決定するのでこれをDriver Potential (DP)と名づけた.

彼等は, DPが全か無の法則に従う,時間・膜電位に依存した自己再生的電位であることを示 し,細胞体膜のCau と K十に対するコンダクタンスの増加により形成されることを示唆した.

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Benson (1980)は,自発的に発現するバーストリズムのリセット機構をDPのオシレーション によって説明し,これが弛緩型の特性を持つことを明らかにした.甲殻類の他の神経節ニューロ

ンでもバーストを形成する緩脱分極電位が兄い出されており, DP と良く似た性質が報告されて いる(Watanabe et al, 1967; Selverston, 1974; Russel & Hartline, 1978).本研究では,オシ レータ〜である心臓神経節ニュ‑ロン細胞体膜の特性を膜電位固定法を用いて調べた.バースト 形成ニューロンの膜電位国定による研究は主に軟体動物で行われており,数種類のイオン電流成 分が報告されている(Koester & Byrne, 1980).しかし,心臓神経節ニューロンと異なり,軟体 動物ニューロンでは歩調取り電位,バ‑スト形成電位及びインパルスを分離出来ないので,バー スト形成に寄与する膜電流成分だけを分析することが困難である.心臓神経節ニューロン細胞体 膜では, Na< 電流を阻止するTTXによってバースト形成電位であるDPを分離することがで

きる・ DPオシレーションを発生させ,任意の膜電位に固定して膜電流を測定し,薬理学的に2 種の電流成分を同定した.膜電位に依存して変化する内向きCau電流,外向きK+電流がどの

ようにDPオシレーションの発現に寄与しているかをバーストパターン形成と関達させて検討 した.

方   法

ジャノメガザミ(Portunus sanguinolentus)の心臓神経節大細胞を用いた.神経節の形態及び 解剖方法は前論文に述べた(Tazaki & Cooke, 1979α).実験は室温(24‑26‑C)で行い,生理 的塩溶液(Cancer用Pantin液)は20‑Cで濯流した. DPオシレーションを発生させるために 細心器官抽出物(POX)を低濃度で用いた. POXは神経活動を促進する神経ホルモンを含んで

いることが知られている(Cooke, 1966).

3M KClを満たしたガラス微小電極(抵抗5Mi?以下),通常の膜電位固定回路(Tazaki &

Cooke, 1982)を用い,電流はヴァーチュアル・グラウンド(WPI,モデル180)により記録した.

他の実験操作の詳細は前論文で述べた(Tazaki & Cooke, 19796).

結   果

第1図に示したように,心臓神経節ニューロンはDP とこれに重なるインパルス列を発生し,

これを軸索に送り出す. TTXでインパルスを抑制した後,短い脱分極刺激を与えると DPが

発生する. POX下のニューロンは自発的DPを一定の周期で発現する.最大膜電位‑55mV

から徐々に脱分極し,閥電位 ‑45mVを越えると急速に脱分極し ‑20mVのピーク電位に達

し,その後再分極する.このようなDPの反復活動は,周期的バーストの基になる膜電位のオ

シレーションと見なすことができる. DP問の緩徐脱分極相(歩調取り電位)はオシレ‑ション

の周期を決定している.この期間,膜抵抗が最大膜電位で最小,閥電位近くで最大になる変化を

示す異常整流が起こる.オシレーションの特徴はDPが全か無の法則に従うこと,不応期のあ

ること,周期をリセットできること等であり,このニュ‑ロンが弛緩型オシレータ‑であること

を示している. DPは時間・膜電位に依存した電位変化であり,そのピ‑クでコンダクタンスが

著しく増大する(Tazaki & Cooke, 1979の.この事は,細胞内外で濃度勾配をもつあるイオン

に対して細胞体膜の透過性が上昇していることを意味している.イオン電流成分を明らかにする

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カニ心臓神経節ニューロンのオシレ‑ショソ

二 二享̲̲̲ 1 sec

第1図 上,細胞外軸索インパルスと細胞体膜電位の同時記録. DPに重なるインパルスバー スト(左)と脱分極刺激で誘発されるDP (右).下, POXにより自発するDPオ

シレーション.

一一‑■■

49

第2図 A,長い矩形波電流刺激に対する細胞体膜のDP応答. B,固定膜電位(上)と膜電 流変化(下).維持電位, ‑55mV.固定膜電位, ‑40, ‑35, ‑30mV.下向きのふ れは内向き電流,上向きのふれは外向き電流.

ために,膜電位を固定し膜電流を直接測定した.ニューロンの細胞体に電位固定法を通用し膜の 電圧・電流特性を知るためには,細胞体は等電位の状態(Space clamp)に保たれる必要があ る.第2図Aは心臓神経節ニュ‑ロンの細胞体に刺大した2本の微小電極から電位変化を同時に 記録したものである.長い矩形波電流でDPを発生させた時,細胞体内が等電位の状態にある

ことが判る.軸索の活動はTTXで抑制されており,樹状突起は細胞体に比べて非常に小さい

ので,これらの膜を通って流れる電流は可なり小さいものと思われる.第2図Bは,静止電位

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‑55mVから ‑40, ‑35, ‑30mVの電位にそれぞれ固定した時の膜電流の変化である.細胞 体膜の脱分極電位は一定であり,膜電流だけが時間と共に変化して現われる.過分極電位に対し てはオームの法則に従う小さい内向き電流のみが起こる. DP は活動電位に比べて非常に遅い時 間経過をたどるから,電位固定の最初の電流(膜容量を充電する電流)が流れる期間が長く(5 msec)ても十分に内向き電流を記録できる. 10mV以内の脱分極では小さい外向き電流だけが 現われ,膜の特別なイオンに対する透過性変化はみられないが, 15mV以上の脱分極を与える と複雑な電流変化が得られる.閥固定膜電位に対する膜電流は初期内向き電流とこれに続く外向 き電流から成り,細胞体膜のイオン透過性が活性化されたことを示している.この場合,イオン 透過性は電流・電圧特性から得られるイオンコンダクタンスとして表わされる.膜電位, ‑40,

‑35mVに対して現われる内向き電流と外向き電流は,膜電位が制御されていない場合,前者 は膜を更に脱分極させ,後者は再分極させる作用がある.膜電位‑30mVでは初期内向き電流 は見かけ上消失しているが,正味の初期電流が零になる膜電位はDPのピーク電位(‑32mV) とほぼ等しい.この膜電位値(‑30mV前後)を平衡電位にとるような電気化学的挙動を示す イオン種は,この実験条件では存在しない.第2図の結果は,内向き電流と外向き電流は脱分極 電位に対しほとんど同時に起こり,両者は相互に打ち消し合っていることを示している・膜を脱 分極した時,内向き電流が約20msecでピークに達し,徐々に不活性化され(この過程で速い成 分と遅い成分がみられるが,その理由は判らない),約200msecで消失する一過性の電流変化で あるのに反し,外向き電流は脱分極の問持続する定常電流である(第3図). 20mVの脱分極電 位では内向き電流が外向き電流に打ち勝って現われるが, 55mVの脱分極電位では後者が圧倒 的に大きくなり,前者は消失しているように見える.第3図Aのように,膜電位固定下の心臓神 経節ニューロンでも膜電流は初期電流と定常電流から成っているが,両者は同時に起こり,相互 に打ち消し合うので,活動電位を発生する軸索(この膜では両者の時間的分離がよい)で行われ たような定量的解析(Hodgkin, 1964)は非常に困難である.

種々の興奮性膜においてTTXは内向きNa+電流,テトラエチルアンモニウムイオン(TEA) は外向きK+電流, Mn2十 は内向きCa2 電流の阻止剤であることが知られている(Narahashi, 1974).心臓神経節ニューロンの膜電流成分をこのような薬理学的方法により分離することを試 みた. DPはTEA (50mM)によってその振幅と持続時間を増し Mn2+ (4111M)によって抑 制される(Tazaki & Cooke, 1979c).静止電位‑60mVから20mV脱分極した時起こる膜電 流に対するTEA, Mn2+ の効果を第4図に示してある. TEAにより初期内向き電流は増大し,

」書;

20 msec

第3図 膜電流の時間経過. A,内向き電流.維持電位, ‑55mV.固定膜電位, ‑35mV.

B,外向き電流.維持電位, ‑55mV.固定膜電位, OmV.

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カニ心臓神経節ニューロンのオシレーション

こ一二=二二

第4図 膜電流に対するTEA, Mn2+の影響.

維持電位, ‑60mV.固定膜電位,

‑40mV. A, TTX. B, TTX・TEA.

C, TTX・TEA・Mn2十.

ニー・」       /

l

第5図 内向き電流と固定膜電位との関係.

内向き電流はTEAで増加させた.

維持電位, ‑55mV.左の数字は 固定膜電位の値を示す.

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外向き電流は減少する.内向き電流の増加は外向き電流の減少の結果起こるのであり,後者によ って打ち消されていた成分が現われたものである. TEAで顧著になった内向き電流はMn24 に よって完全に消失するまでに至っていないが,著しく減少する・この結果は,内向き電流が細胞 外から細胞内‑のCa2 の移動によって起こり,外向き電流が細胞内から細胞外へのK+の移動 によって起こるものであることを示している.したがって,両イオンに対する膜の透過性はそれ ぞれCa2+ コンダクタンス, K+ コンダクタンスで表わされる.

TEA存在下で原著になる内向き電流と固定膜電位との関係を第5図に示した.内向き電流は

静止電位から脱分極の小さい範凶では膜電位の上昇と共に増加するが,更に脱分極が進むと外向

き電流(TEA はこれを完全に抑制していない)も増加するので,これにより打ち消され見かけ

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l

̲‥J

I r

第6図 内向き電流の不活性化過程. 2つの固定膜電位パルスを間隔を変えて与えた.

第2パルスに対応する電流に示した数字はパルス間隔.維持電位, ‑55mV.

固定膜電位, ‑37mV.

上減少する.この場合も,正味の初期膜電流が零になる膜電位はDPのピーク電位(‑5mV) とほとんど一致し, DPの振幅が両電流の均衡によって決められていることが判る・第5図で内 向き電流の不活性化は固定膜電位の上昇と共に長くなる傾向がみられ,この過程が膜電位に依存

して変化し得ることを示唆している.

膜電流成分は,内向きCa2+電流と外向きK+電流が膜電位に依存して変化することは, DP が細胞体膜の自己再生的応答であることを良く表わしている・第5図で膜電位が固定されていな い場合, 10mVの脱分極で起こる内向き電流は膜を更に脱分極し,この増加した脱分極電位は Ca2< コンダクタンスを上昇させ,同時にK+ コンダクタンスをも上昇させることになる.した がって,膜の脱分極作用はCa2 コンダクタンスとK+コンダクタンスの比で決まる定常状態ま で続き,膜の再分極は上昇したK+ コンダクタンスによって形成される.

DPオシレ‑ションが弛緩型に属することは前に述べたが, DPの振幅と持続時間はその発生 する頻度によって変化する(Tazaki & Cooke, 1979b).膜電位固定下のニューロンで得られる 2つのイオン電流成分の特性と弛緩型オシレーションにみられる不応期との関係を調べた. 2つ の固定膜電位パルスを時間間隔を変えて与え,第1パルスと第2パルスで起こる膜電流を得た.

その結果を第6図に示す.パルス間隔1秒では第2パルスで起こる内向き電流は著しく減少する

のに反し,外向き電流はほとんど変化しない.パルス間隔3秒で内向き電流は可なり回復し, 5

秒で元の状態にもどる.この結果から, DPの不応期が内向きCa2 電流の不活性化過程による

ものであり,この過程は膜電位国定後も数秒間漸次減少しつつ持続していることが明らかになっ

た.

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カニ心臓神経節ニューロンのオシレーション 53

第1図に示したDPオシレーションの時間経過の速い脱分極・再分極相はCa2+ とK+に対 するコンダクタンスの上昇による正味の膜電流で形成されるが,周期を決定する緩脱分極相では 膜コンダクタンスが漸次減少している・このようなコンダクタンス変化がどのイオン電流成分に よるかを知るには,最大膜電位‑55mVから閥電位‑45mVの狭い範囲で膜電位固定をしな ければならない・本実験ではDPイオン機構の解析を目的としたので,そのような実験は行わ なかった・歩調取り電位については考察で述べる.

考   察

Tazaki & Cooke (1979b,c)は, DPが時間・膜電位に依存するCa2* とK+のコンダクタ ンス上昇の結果起こる両イオンの移動によって形成される自己再生的電位であることを示した.

この結論は種々の間接的証拠から得られたものであり,虐接膜電流を測定して得られたものでは ない・木実験ではDP発生時の膜電流が初期内向き電流と定常外向き電流の2成分から成り, 前者はCa2+,後者はK+によって運ばれることを示した. DP ピークの膜電位はNernstの式 にしたがって細胞外Ca2十の濃度, 〔Ca〕O の対数に比例する. Nernstの式では10×〔Ca〕。の 変化に対して膜電位変化は29mVになるが,実測値では12mV Lか得られない. DPの振幅 がCa2+の平衡電位で決まるのではなく,外向きK+電流によって制限されていることが予想さ れる・第2図に示したように正味の初期電流が零になる膜電位はDPのピーク電位と一致する.

これは内向き Ca2十 電流と外向き K+ 電流の問に時間的分離がないために起こるのであり,こ のような膜電流時間経過からCa2 とK+に対するコンダクタンス変化を直接求めることはでき ない・定常状態式(Junge, 1976)を用いてDP ピーク膜電位(‑30mV)の時の両コンダクタ ンスの比を求めると,その債は0.4 (Ca24 とK+の平衡電位はそれぞれ 十120mV,一90mVと する)になる・この値は静止電位(‑55mV)時に得られる値の約2倍である. DP発生時のコ ンダクタンス上昇は約10倍であるので(Tazaki & Cooke, 1979b),この解析結果はCa2+ とK+

のコンダクタンスがDPの上昇相で増加していることを指示している.外向きK+電流の阻止 剤であるTEAの膜電流に対する効果はこの結果と一致し, DP ピークの膜電位がK+コンダク タンス上昇により限定されていることが判る. K+コンダクタンスの上昇はDPの下降相を調節

しているが,膜電位固定の実験で明らかになったCa2+電流の不活性化過程もこの相に寄与して いる.第5図はこの過程が膜電位依存性であることを示唆しており,これがDP発生の頻度と 振幅・持続時間の関係を決める要因と考えられる・正常なバースト活動をする神経節ではその頻 度が高いとき振幅・持続時間は小さく,頻度が低いとき両者は大きくなる(Benson, 1980).こ の関係は,第6図に示したように,不活性化過程からの回復の程度によって説明される.

DPのような遅い脱分極電位がバースト形成にあずかることは甲殻類の他の神経節ニューロン でも兄い出されているが(Watanabe et al., 1967; Selverston, 1974; Russel & Hartline, 1978), 膜電位固定による解析は行われていない.軟体動物腹足類の神経節には規則正しいバーストを形 成するニューロンがあるので,多くの研究者がその機構の分析を行っている(Koester & Byrne, 1980). Thompson & Smith (1976)はスパイク電位に続く脱分極電位(DAP)がバースト形成

に寄与していること, DAPが脱分極刺激で発現し, TTX抵抗性であることを明らかにした.

Bulloch & Willows (1981)は軟体動物のDAPが甲殻類のDPと多くの共通点を持つことを示

し,このような膜に固有の電気的活動がfollower とみなされてきた運動ニューロンにも広く存

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在することを指摘している.

膜電位固定実験によると,カタツムリ(Helix)のバースト形成ニュ‑ロンでは,これを形成 しないニューロンよりも大きい内向きCa2 電流が起こる(Heyer &Lux,1976).アメフラシ (Aplysia)ではTTX抵抗性のゆっくりとしたオシレーションが起こり(Mathieu & Roberge, 1971),この脱分極相はCa24の流入によることが直接測定されている(Thomas & Gorman, 1977).しかし,内向き電流はNa十によって運ばれるという報告もあり(Smith gJα7., 1975), 現在一致した結論を得るに至っていない.外向き電流については,本研究で観察されたものと

同じK+の定常電流の他に,膜電位固定の初期に一過性の電流が起こることが発見されている (Connor & Stevens, 1971; Neher, 1971).この電流は維持電位を静止電位より過分極側に移動 したとき活性化され,脱分極により速やかに不活性化される。本実験では維持電位を静止電位に 一致させたので,このような一時的外向き電流は観察されなかった.エビ(Homarus)の心臓神 経節単一ニューロンでは過分極維持電位からの脱分極に伴い速い経過の外向きK+電流が記録さ

れ,異常整流が認められる(Tazaki & Cooke,未発表).一過性の外向きK+電流は膜の脱分極 を抑えるので,歩調取り電位の脱分極速度を小さくし, DP発生の頻度を調節すると考えられる・

この電流の活性化・不活性化の時間経過は,第1図で述べたDPオシレーションの歩調取り電 位相のコンダクタンス変化と非常によく一致する. DPの過分極後電位で最大になるK+コンダ クタンスのゆっくりとした下降は外向きK+電流を減少させ,その結果膜の緩い脱分極を引き起 こすことになる.

DPの振幅,持続時間,間隔はCa2 とK+のコンダクタンス変化の均衡によって決定される・

このイオン機構は正常に機能する心臓神経節ニューロンの周期的バーストパターン変化をよく説 明することができる. Benson (1980)は電流刺激で発生するバーストの位相・応答曲線を解析 し,心臓神経節ニューロンが弛緩型オシレーターであることを示した.オシレ‑クーは脱分極・

過分極刺激に対しその周期をリセットするが,刺激を与える位相によって変化する応答の大き さ・持続時間により位相転換が決まる.このような現象は,ニューロンに固有の自己再生的応答 を発現する性質に基づいて起こるのであり,ニューロンのネットワ‑クだけによるのではない.

同様なオシレータ‑ニュ‑ロンは,アメフラシ(Aplysia)の内臓神経節(Pinsker, 1977)やエ ビ(Panulirus)の口胃神経系(Ayers&Selverston, 1979)でも発見されており,オシレ‑タ‑

理論による神経系の周期的活動の解析が試みられている(Pavlidis & Pinsker, 1976).

要   約

カニの心臓神経節ニューロンがTTX存在下で発生する DPオシレーションのイオン電流成 分を膜電位固定法を用いて調べた.膜電位に依存して変化する膜電流は初期内向き電流と定常外 向き電流の2成分から成り,腰脱分極に燈し両電流の間に時間的遅れは認められなかった. DP の振幅はあるイオンの平衡電位で決まるのではなく,両電流の打ち消し合いによる定常状態で決 まる.内向き電流はTEAにより増加し, Mn2<によって抑制され,外向き電流はTEAによっ て抑制される.内向きCa2十電流の不活性化過程からの回復は数秒間ゆっくりと進み,この期問 はDPの不応期と一致した. DPは膜電位依存性Ca2 コンダクタンスとK+コンダクタンスの 増加の割合で決まる内向き電流と外向き電流の総和によって形成される. DP の弛緩型オシレー

ションは両コンダクタンスの増減により引き起こされる,ニューロン細胞体膜に固有の自己再生

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カニ心臓神経節ニューロソのオシレーション 55

的応答である.オシレ‑ションのイオン機構と神経節の周期的バーストパターンとの関係を検討 した.

参 考 文 献

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