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雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

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Academic year: 2021

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日産科学振興財団 環境・教育助成による多面体を 用いた小学校の算数理科教材の開発

著者 梶原 篤, 仲島 浩紀, 大西 郁子

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 17

ページ 269‑274

発行年 2008‑03‑31

その他のタイトル Development of Teaching Materials on Geometry

and Science using Polyhedron for Elementary

School Supported by NISSAN SCIENCE FOUNDATION

URL http://hdl.handle.net/10105/695

(2)

1.はじめに

 奈良教育大学ではフレンドシップ事業「夢化学21子 どもとともに学ぶ理科教室を開こう」(以下、「夢化学」

と略す。)」を学校教育教員養成課程の2回生を対象と した総合演習という授業で展開し単位化している。「夢 化学」は、夏休みに小中学生を対象とした理科実験教 室を受講生が企画立案から運営までのほぼすべてを行 うというものである。毎年の実施報告書には、数多く の受講生が教職への意識に目覚め、小中学生を相手に 理科の授業をもっとしてみたいという記述が見られる。

現に、「夢化学」を受講した学生の中には、大学や学 外の財団から援助を受けて自分達で企画したで理科実 験教室を開催する学生も現れている。そこには「夢化 学」の経験者が学年を超えて参画している。

 本報は、これら学生の自主的な教育実践のうち財団 法人日産科学振興財団の理科/環境教育助成を受けて 今年度の夏休みを利用して行われた算数理科教室の実 践活動や課題について検討したものである。

2.算数理科教室の目的

 現行の学習指導要領においては、これまで学習され てきた内容が多く削減された。その中でも算数・数学 で学習する図形の分野においてそれは顕著である。例 えば、小学校中学年で学習してきた立方体や直方体、

平行や垂直は高学年へ、小学校高学年で学習していた 角錐や円錐、柱体の展開図、点対称と線対称は中学校 に移行された。そして、中学1年生で学習していた立 体の切断と投影、図形の移動は削除されている。その 結果、現状の義務教育段階においては立体図形につい て学習する機会がなくなっている。しかしながら、身 の回りのほとんどものが立体であり、切断面をもって いたり切断できないものはイメージを活用して内部構 造や正面や横からの図を考えなければならないことが 多数存在する。そこで、小学生の段階においても多面 体(空間図形)の美しさやその不思議さについて学習 できるような算数理科教室を考案した。この教室では、

算数だけで学習するのではなく、理科の実験やフィー ルドワークをとり入れ身近な世界や自然に存在する多 面体について学習できるよう心掛けた。

日産科学振興財団 環境・教育助成による多面体を用いた

小学校の算数理科教材の開発

梶原篤、仲島浩紀、大西郁子

奈良教育大学理科教育講座、兵庫教育大学大学院学校教育研究科)

Development of Teaching Materials on Geometry and Science using Polyhedron for Elementary School  Supported by NISSAN SCIENCE FOUNDATION

Atsushi KAJIWARA, Hiroki NAKAJIMA, and Ikuko OHNISHI

(Nara University of Education and Hyogo University of Teacher Education)

要旨:フレンドシップ事業「夢化学」に学部2年次の段階で取り組んだ大学院生を中心に多面体をテーマにした小学

生対象の算数理科教室を行った。現行の学習指導要領においては図形について学習する機会が多いとはいえないが、

算数や理科の学習や日頃の生活においても多面体などの空間認識は非常に重要であると考える。算数として巨大な折 り紙や多面体の工作などを通じてオイラーの多面体定理の学習を実施した。理科として算数の授業内容を踏まえて

「自分達で作る多面体」としてミョウバンの結晶作りや身近な自然に存在する多面体を探すためのフィールドワーク を行った。本報では、当日の子ども達の様子や教室終了後に集めたアンケート結果をもとに本活動とその結果につい て報告するとともに、算数と理科を関連させた授業の内容とその可能性について検討した。

キーワード:教育実践活動、多面体、結晶、自然観察、算数理科教材、フレンドシップ事業、日産科学振興財団

(3)

3.実施概要

 実施日時:2007年8月27日、28日、30日       9:00〜16:00

 会  場:奈良教育大学 化学第1大実験室、   

  講義室

 対  象:小学4年生から6年生  参加者数:39名

 内  訳:4年生21名、5年4名、6年生8名       参観の保護者6名

4.巨大折り紙や工作による空間図形の美しさと    その性質を知る教材開発

 【8月27日】 参加者が小学3年生から小学6年生と いうこともあり、基本的な図形の性質から取り上げた。

これらの図形について、折り紙を切ってパズルを作る ことや、作ったパズルを組み合わせて異なる図形を作 るという操作を取り入れることで、図形を体で感じな がら学習した。さらに中学2年生で学習する「合同」

な性質についても触れ、平面図形に関する知識を拡大 することをも目的とした。また、折り紙でツルを折る という操作を取り入れ、このツルを折った折り紙から 合同な図形を見つけるという活動を取り入れることで、

「合同」という考え方がどのようなものであるのかを 知る。そして巨大な折り紙でツルを折ることで友人と の協同作業を取り入れ、1枚の平面図形を折ることで 1つの空間図形へ変化するとき平面上のある点は立体 のどこに位置づくかという見通しを立てて活動するこ とを目的とした。

 【8月28日】 27日行った平面図形を発展させ空間図 形について学習した。ここでは多面体を取り上げ、い くつかの面を組み合わせることで立体ができることを 体感する。また、正多面体では展開図を作り組み立て て立体にする活動を通して、展開図が数種類あること を学習した。そして、2007年はオイラー生誕300周年と いうことで、オイラーの多面体定理を用いる活動を取 り入れた。ダンボールで作っておいた一辺が50㎝の正 三角形を並べて、巨大な多面体の展開図を協同で組み 立て、作った正多面体から辺・点・面の数を求めるこ とでオイラーの多面体定理へつなげた。その際、負の 数の学習が必要とされる。そこで、中学1年生で学習 する負の数について数直線を用いて学習し、負の整数 の考え方を知ることを目的とした。両日の活動内容と 子ども達の活動の様子を表1に示す。

5.実験やフィールドワークをもとにした身近に    存在する空間図形を探る教材開発

 【8月30日】 これまでの算数の授業内容で学習した 多面体の性質を振り返りながら理科の実験やフィール ドワークで身近な世界や自然に存在する多面体につい て学習できるよう心掛けた。

「多面体を自ら作ろう!」と称してミョウバンと食塩 の結晶を実験により子ども達自身がつくり観察させた。

ミョウバンの結晶は正八面体で食塩の結晶は立方体で ある。身近に存在する結晶であっても算数で学習した 多面体の世界が広がっていることを結晶作りという実 験を通じて体感できるのではないかと考えたためであ る。次にこれまでは世界に実の多くの多面体や対称性 を持つ図形が存在している。子ども達がこれまでの学 習を踏まえて、日頃目にしている植物などを対称性の ある空間図形として捉え、その美しさと不思議さに気 づける視点の育成を心掛けたフィールドワークを行な い、その結果の発表会を行なうようにした。当日の活 動内容と子ども達の活動の様子を表2に示す。

6.参加者へのアンケート結果とその考察

 8月27日、28日の算数の授業終了後、広報と算数の 授業に関するアンケートを行った。回答者数は参加者 32名であった。また、30日の理科の授業終了後、理科 の授業に関するアンケートを行った。回答者数は参加 者30名であった。

広報と参加者の実態について 

 本活動の広報活動は、過去の夢化学21の参加者で現 在小学生である人、今年度夢化学21の参加者、その他 これまでの理科実験教室参加者で現在小学生である人 への手紙の送付、奈良教育大学ホームページへの掲載、

ならリビングホームページへの掲載によって広報活動 を行った。インターネットを通じて情報が公開されて いるが、送付した手紙をもとに企画を知った参加者が 半数以上いることがわかった。これは、リピーターで 多くいることを示しており一度のこのような教室に参 加した子ども達は継続的に参加していることが分かる。

算数の授業について

 学校の算数の授業の約90%が座ったままで行われて おりこのような算数の授業をあまり面白く感じていな い小学生は半数を超えていた。しかしながら、今回の 算数の授業においては90%以上が「面白かった・勉強 になった」と好意的に捉えている。もちろん、日常の 授業と異なった環境であり全般的に好意的な結果にな ると考えてもこの結果は巨大な折り紙や工作など全身 を使った活動を取り入れた結果であると考えられる。

(4)

現に「どのような算数の授業を受けたいですか。」と いう問いに対して多くの子ども達が、活動を多く取り 入れた授業を求めている。学習内容や授業時数に制限 があり、活動するための準備や授業中に活動を取り入 れることは容易ではないが、活動を少しでも多く取り 入れようとする教師の配慮も必要かと考えられる。体 を使って活動することは、子どもたちの興味や関心を 引き、印象深いものになる。また、「百聞は一見にし かず」という諺のように、黒板上で聞いて学習してい るよりも、活動を通して自分の目で確かめることの方 が強く印象に残るように思われる。

理科の授業について

 「理科は好きですか。」という問いに対して約95%が 好きと答えている。その理由の多くは、「実験が楽し いから。」と答えており、「物の不思議を知ることがで きるから。」という回答もあった。また、算数と同様 に理科においても実験や観察などの体験を多く取り入 れた授業を求めていることが分かった。以上のように 体験を多く取り入れた授業は子ども達の興味関心を引 き出すものであるがそこから知識の定着や自身で考え る力などを育成していくにはやはり単発ではなく継続 的な取り組みが必要である。

7.保護者へのアンケート結果からの考察

 保護者へもアンケートを依頼し、14名の保護者から 回答を得た。表3にアンケート内容とその結果(抜粋)

を示す。

内容の難易度について

 今回の教室ではオイラーの法則や原子・分子といっ たミクロな世界の概念など小学生の内容よりも踏みこ んが内容の授業を行った。これに対して多くの保護者 から、理解できるような内容であれば、小学生といえ ど上位レベルの内容を取り入れてほしいという意見が 多く見られた。これは、主催する学生にとっては単に 教科書の内容を教えるのだけでなく、幅広い知識をも とに一歩進んだ内容まで踏み込んで教えてほしいとい う保護者のニーズが垣間見られる。

教室の継続性について

 子ども達からのアンケート結果でもそうだったよう に保護者も子ども達が興味関心を持って本教室に参加 していたという記述が多く見られた。また、「このよ うな教室をさらに継続的に行い活動を通じて子ども達 自らが考え創意工夫をして答えを導き出すそんな過程 を楽しみながら学習できる機会を提供してほしい。」 という記述などより継続的にこのような教室を開催し てほしいという声も多くあった。教室を主催する側に

とってもただ面白いだけの科学教室で終わるのではな く、興味や関心を持続させ、伸ばしていく継続的な試 みの必要性を感じている。しかし、現実的には様々な 問題により数日間の教室を開催するにとどまっている。

ただ、このような地域のニーズがあることを踏まえる と学生と大学が協力して可能な限り実施していくべき であると考える。学生は、教員としての資質を高める 教育実践の場として大学は地域貢献の場として多くの 学習の機会を地域に提供することが求められていると 考える。

算数と理科を関連させた授業展開について

 今回の取り組みは、算数・数学と理科を1つのテー マからアプローチすることによって関連させて行った。

学校では算数・数学は算数・数学として、理科は理科 として、他教科を意識することなく進められている。し かし、今日子どもたちに求められることは、物事に対 して応用できる力を持っていることや多面的に見る力 を持っていることである。このような現状を踏まえる と、算数数学が理科を進める手段としてだけではなく、

本活動では多面体という1つのテーマを算数数学的な 視点と理科的な視点から捉えたという点で本活動は一 定の役割を果たしたのではないかと考えられる。また、

算数・数学と理科を関連させたことに対する保護者の 方の意見には、教科の枠に捉われることなく、学習し たことに対して複数の賛成の意見が見られる。さらに、

多面的に考えることや応用させて考えることができる ようになってほしいという願いもこめられていた。本 来、身の回りに存在する自然科学の中には数学として 捉えられる部分と理科として捉えられる部分が含まれ ている。その中でもこの数学と理科は非常に深い関連 がある。学校で学習する算数数学がより抽象化され、

理科は生活からかけ離れてしまっている部分がある。し かし、将来を担う子どもたちだからこそ、さまざまな ことを多面的に捉え、応用力を備えた思考が出来るよ うに、学校で学習する内容からも多面的に、応用して 考えることが必要ではないかと考える。その中でも隣 接教科である算数数学と理科を関連させるということ は、求められる思考を育てる方法の1つであると考え られる。

8.まとめ

 本報では、多面体をキーワードにした算数理科教室 の活動内容とアンケート結果の考察について述べた。

このような活動が課題なしに良いものであるとは言え ないが主催する学生にとっては実に多くのことを学べ る機会であることには違いない。地域のニーズにある ようにこれからも継続的な活動をできるだけ多くの学 生が行なっていくことを切に願う。

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表1 算数の時間における子ども達の学習活動の内容

表2 理科の時間における子ども達の学習活動の内容

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表3 参加者の保護者へのアンケート内容とその結果(抜粋)

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謝辞 三上周治教諭(奈良教育大学附属小学校)には、

全般的にご助言いただきました。米沢剛至教諭(仁川 学院高等学校)にはミョウバンの結晶づくりついてご 助言いただきました。この研究は、平成18年度財団法 人日産科学振興財団の理科/環境教育助成を受けて実 施しました。ここに記して感謝致します。

参考文献

1.梶原、中尾、佐貫、宮田「フレンドシップ事業

『夢化学』をもとにした中学校における理科教育

実践活動」奈良教育大学教育実践総合センター研 究紀要 No.14 pp.127-132 (2004)

2.梶原、中尾、鈴木「フレンドシップ事業『夢化学』

をもとにした中学校でのスクールサポート活動の 成果と課題」奈良教育大学教育実践総合センター 研究紀要 No.15 pp.161-166 (2005)

3.安部 すごいぞ折り紙 折り紙の発想で幾何を楽 しむ 日本評論社 (2005)

4.米沢「七色のミョウバン結晶をつくる」化学と教 育 Vol.45 No.1 p53 (1997)

参照

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