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雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 自然科学篇

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中学生男子の最大酸素摂取量について II

著者 山本 章

雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 自然科学篇

巻 29

ページ 41‑48

発行年 1979‑03‑22

出版者 静岡大学教育学部

URL http://doi.org/10.14945/00008364

(2)

中学生男子の最大酸素摂取量についてII

Maximal Oxygen Intake of Junior High School Boys II

山 本 章

Akira YAMAMOTO

(昭和53年10月3日受理)

1.はじめに

 著者は前報(1977)17)で,形態的にも機能的にも著しい変化を示す中学生男子(12〜15才)を 対象に各年令における最大酸素摂取量(VO2 max)を測定して,年令によるVO2 maxの変 化,VO, maxと形態値並びに機能値との関係を調べた。その結果,年令が進むに従って,身 体資源(Physical resouces)としてのVO, maxは増加し, VO2 maxと形態値並びに機能値 との相関は次第に低くなる傾向にあった。しかし,形態値について全国平均値と比較したとこ ろ,12〜13才と14〜15才では有意差は認められなかったが,13〜14才では有意に上まわってお り,各年令層を代表する対象として,必ずしも十分ではなかった。そこで今回は対象をしぼり,

横断的にではなく縦断的に研究を進めてみた。即ち,12〜13才の男子について1年後に前回と 同じ測定を再度行い,VO、 maxの変化, VO2 maxと形態値並びに機能値との関係を調べるこ

とにより,この年令期における形態的並びに機能的特性を明らかにしようとした。その結果若 干の知見が得られたので報告する。

2.対象及び方法

 被検者は12〜13才と13〜14才の中学生男子,それぞれ18名で,両グループは縦断的に同じグルー プであった。また,いずれも循環器系の機能障害やその他の身体的障害,欠陥,疾病等がなく,

健康な者であった。

 測定期間は1976年と1977年の4〜5月にかけてであった。

 測定手順は前報(1977)17)と同じく,まず,尿pH,尿蛋白,血圧,腋窩温を検査測定し,正

常値から著しく外れていないことを確かめ,次に形態値として身長,胸囲,大腿囲,下腿最大

囲及び最小囲をマルチンの計測器,体重をNSスプリング式体重計,皮脂厚(上腕背部,肩甲

骨下角部,腸骨稜部,膀部)を栄研式皮脂厚計を用いて計測した。そして最後にモナーク社製

自転車エルゴメーターを用いて最大作業テストを行い,VO2maxを測定した。負荷は毎分50回

転でペダリングさせ,2分毎に150kpm/min加える漸増負荷とし,自転車エルゴメーター上

で5分間以上安静状態を保たせた後,450kpm/minで2分間warming−upを行い,2分間休

息し,450あるいは600kpm/minからExhaustionに至るまでメトロノームにあわせてペダリ

ングさせた。この間連続的に胸部誘導法により心電図を記録し,・R−R間隔から心拍数を管理

(3)

42 山  本 章

した。2年時(1977年)にはサーミスター法により呼吸相を記録し,呼吸数も管理した。呼気 ガスの採集はダグラスバッグ法によって1分間毎に行い,換気量をT−5型乾式テストメーターを 用いて測定し,最終の2つあるいは3つのサンプルを労研式大型呼気ガス分析装置並びにフク ダ医理化研究所製レスピライザーBM−10を用いて02とCO2に分析し,酸素摂取量を求め,そ          の中の最大値をVO2 maxとした。但し,採集時間が30秒未満のものは分析の対象から除外し た。機能値としては体力診断テストと運動能力テストを取り上げ,文部省のスポーツテストの 方法で測定した。

3.結

 1.最大酸素摂取量

       

 表1はVO2 max 1/min STPD, VO、 max ml/kg/min STPD,安静時心拍数,最高心拍 数,安静時最高・最低血圧,安静時呼吸数,最高呼吸数の成績を示したものである。12〜13才

  表1被鯖の轍素的作業能     の値と13〜14才?値を対のt検定

 Table l. Aerobic work capacities of subjectS(N=18)  で比較すると・VO2 max l/min Age(years) 12 − 13   13   14 t

    (£/min,STPD)1.932(0.397)2219(0.402)5.871叢東東 V°・m H蓋尼/k、/㎡,,STPD)45.29(、.83)、,.46(,.99)1.922

Heart rate     rest 84.8(1L18) 76.6(10.33) 3.033※巌

(beats/min)

     exercise 1952(7.86) 19L6(24,63) 0.679 Blood pressure max.111.2(8.64)100、7(11.18)3.454 mx

(mmHg)

       min 54.2(6.52)47.1(9.73)2.807峯

ぽ蹴意㌻  1:ll[1:;

Means(s)xP〈0.05 xxP〈0.01※xxP〈0.001

はそれぞれ,1.932±0.3971,

2.219±O.4021でP〈0.001で明        らかに増加したが,VO2 max ml

/kg/minはそれぞれ,45.29±4.

83m 1,47.46±5.9gmlで増加の傾 向がみられたものの有意差は認め られなかった。また,安静時心拍 数は,それぞれ84.8±11.18beats

/min,76.6±10.33 beats/min でP〈0.01で明らかに減少したが

,最高心拍数は,それぞれ195.2±

7.86beats/min,191.6±24.63 beats/minで有意差は認められなかった。

 2.形態値

 表2は形態値を一括して示したものである。12〜13才と13〜14才の値を対のt検定で比較す ると,身長で約8cm,体重では約5kgの増加を示し,皮脂厚以外のすべての項目でP<O.OOI で有意差が認められ,著しい増加がみられた。皮脂厚ではすべての項目で増加の傾向がみられ たが,対のt検定の結果,有意差が認められた項目は肩甲骨下角部P<0.05,腸骨稜部P〈0.01,

膀部P<0.001であり,上腕背部と上腕背部+肩甲骨下角部では有意差が認められなかった。

 3.機能値(スポーツテスト)

 表3はスポーツテストの成績を一括して示したものである。12〜13才と13〜14才の値を比較

すると,体力診断テストでは反復横とび以外の項目でいずれも向上する傾向がみられたが,対

のt検定の結果,有意差が認められた項目は垂直とび,背筋力,握力P〈0.001,伏臥上体そら

しP〈0.01,踏み台昇降運動P<0.05であった。運動能力テストではいずれの項目とも向上す

る傾向がみられ,対のt検定の結果,有意差が認められた項目は50m走,走り幅とび,ハンド

ボール投げP〈0.001,懸垂腕屈伸P〈0.01であり,1500m走では有意差が認められなかった。

(4)

    表2 被検者の形態値

Table 2. Physique of subjects (N=18) 表3 被検者のスポーツテストの値

Table 3. Sports Testdata of subjects

Age(years)  12−13 13−14  t Age (years) 12−13  13 一 ユ4 t Body height(㎝)

Body Weight(kg)

Body surface area (㎡)

Chest girth(㎝)

Thigh girth (cm)

150.0  (7.89) 157.7  (7.47) 15.370驚叢東

42.9   (9.03) 47.9  (9.48) 7.646東崇※

1.309(0.1578)1.418(0.1515)10.991叢東※

73.1

44.3

Lower leg girth max.(㎝)32.O Lower leg girth min,(㎝)20.7 盲

百 皇 萎 芸 盲 語

Upper arm Scapula

Waist Umbilicus

9.0

8.5

(7.06) 75.4  (7.77) 4.155東驚※

(5.20) 46.3  (4.10) 4.272崇※※

(3.08) 33.0  (3.14) 4.578峯※東

(1,70) 21.3 (1.72) 4.041東東峯

(4.78)  9.2  (5.46) 0.233

(6.15)  9.4  (6.46) 2.222東

       10.0 ( 11.96) 13.9  (9.82) 3ユ64遣※

       8.6   (9.98) 11.4 (10.57) 4.149叢驚東 Upper arm十Scapula 17.3(10.78) 18.6(11.54) LO53

§

§ 昌

§

ξ 亘 呈 Pt

1る

§

Side step (points)

Vertical jump (㎝)

Back strength (kg)

Grip strength (kg)

Trunk extension(㎝)

Standing trunk flexion(㎝)

Modified H. S.T(points)

50mdash (sec.)

Running broad jump(㎝)

Hand ball throw(㎝)

Chinnimg(modified)(times)

Endurance running (sec.)

38.5( 5.17)  30.8( 3、16)−0.601

40.0( 7.08)  52、3(11.89)  6,626康東東

67.8(16.99)  96.2(25.46)  8,318峯峯峯

26.2( 5.95) 32.2(7.49) 4.868東叢真

49.6( 6.42)  52.7( 5.58)  2.997東頁

8、6( 3.35)  10.2( 5.42)  1.509

60.7( 7.80) 69.1(15.48)  2.347嵐

8.6( 0.76)   7.9( 0.69) _13.624※※M

343.3(47.78) 377.9( 58,11) 5.530㎜瀕

19.8( 3.37)  22,7( 5.36)  3.987嵐※箪

4. 1( 3.80)  7.4(5.89) 3.364叢肇

384.4(48.30) 375.9(87.96) _U.565

Means (s)*P〈O.05*xP〈0.01 x x x P〈0.001 Means(s)楽P〈0.05 xxp〈0.01 xxxp〈0.001

 4.最大酸素摂取量と形態値

      

 表4はVO, maxと形態値との関係を 括して示したものである。12〜13才についてみると,

VO, max l/minは皮脂厚以外のすべての項目との間にP<0.01で有意な相関がみとめられた     が,VO2 max ml/kg/minは逆に皮脂厚との間にしか,上腕背部,腸骨稜部,1濟部,上腕背 部+肩甲骨下角部P<0.01,肩甲骨下角部P〈0.05で,有意な相関は認められなかった。 方,

       

13〜14才についてみると,VO、 max 1/minは12〜13才と同様,皮脂厚以外のすべての項目と         の間にP〈0.01で有意な相関が認められたが,VO、 max ml/kg/minはいずれの項目とも有

   表4 ▽02 maxと形態との相関 Table 4. Correlation coefficients between     VO2max and Physique

 表5 VO2maxとスポーツテストとの相関 Table 5. Correlation coefficients between     VO2maxand Sports Test

Age(years) 12−13 13−14 Age (years) 12−13 13−14

VO2max £/㎜    md/kg/min   尼/血n  m£/kg/面n VO2max 2/㎜ ㎡/kg/㎡n f/min 皿£/kg/㎜

Body heigkt Bodyweight Body surface area Chest girth Thigh girth Lower leg girth max.

Lower leg girth min.

Z    Upper arm ri…     Scapula

毛  Waist 呈 U。bili・u、

ヌ UpPer arm十Scapula

0.847東叢  0.059 0.843東嶽 一〇.289 0.889※東 一〇.191 0.682驚東 一〇.370 0.708叢東 一〇.234 0.772峯※ −0.252 0,738叢※ −0.236

−0,072 0.086    −0.588※

0,030    −0.637※叢 0.019   −0.684※東 0.017    −0.604東※

一〇.606東1 −O.221 0.742※叢 一〇.220 0.751巌業 一〇.405 0.799峯峯 一〇,366 0.676東東 一〇.414 0.683叢東 一〇.381 0.749東峯 一〇.275 0.743※東 一〇.253

   −0.175

0.097    −0.332 0.008  −0.313 0.033   −0.407 0.050    −0.269

.雪

ξ ξ

ξ 三 遥

Side step         O.515東  0.322 Vertical jump      O.676xs O.123 Back strength      O.813※峯 0,200 Grip strength      O.800崇驚 0.071 Trunk extension    O.345  0.479 Standing trunk flexion  O.402  −0.130 Modified H. S.T.   −0.211  0.391 50m dash       −0.630東東 0.533東 Running broad jurnp   O.461   0.453 Hand ball throw     O.745※驚 0.568東 Chinning(modified)  0.525叢  0.256 Endurance running    −0.172   −0.758東叢 一〇.046

0.336    0.567驚 0.695東東  0.167 0.774叢M −0.164 0.871x東  0.024 0.452   0.133 0.431    0.142

−0.017    0.218

−0.644東東 一〇.174 0.622崇貰  0.165 0.786叢東  0,120 0.679東東  0.328

   −0.581東

xP〈0.05  xxP〈0.01 xP〈0.05  xxP〈0.01

(5)

44 山  本 章

意な相関は認められなかった。次に,VO2 max 1/minと体重との関係をより詳細にするため,

VO、 max 1/minをY,体重をXとして回帰直線を求めてみると,12〜13才ではY=0.037X+

        0.341±0.200,13〜14才ではY=0.032X+0.693±0.265となり,体重当たりのVO、max l/

minの増加量は12〜13才の方が13〜14才よりも大きく,推定値の標準誤差は逆に小さかった。

また,解はX=66.3kgであり, Y=2.8021/minであった。

 5.最大酸素摂取量と機能値(スポーツテスト)

     

 表5はVO2 maxとスポーツテストの値との関係を示したものである。12〜13才についてみ

     ると,VO、 max 1/minとの間に有意な相関が認められた項目は,体力診断テストの垂直とび,

背筋力,握力P<0.01,反復横とびP<O.05と運動能力テストの50m走,ハンドボール投げP<

0.01,懸垂腕屈伸P〈0.05であった。VO, max ml/kg/minとの間に有意な相関が認められ た項目は,体力診断テストにはなく,運動能力テストの50m走,ハンドボール投げP〈0.05,

        1500m走P<0.01であった。一方,13〜14才についてみると, VO、 max l/minとの間に有 意な相関が認められた項目は,体力診断テストの垂直とび,背筋力,握力P〈0.01と運動能力        テストの50m走,走り幅とび,ハンドボール投げ,懸垂腕屈伸P〈0.01であった。VO, max ml/

kg/minとの間に有意な相関が認められた項目は,体力診断テストの反復横とびP〈0.05と運 動能力テストの1500m走P〈0.05であった。

       4.考    察

 スポーツ選手を対象としてVO2 maxを調べた報告は,黒田ら(1969)8),加賀谷ら(1970)3),

三浦ら(1972)1°),宮下ら(1972) 1),村瀬ら(1973)12)を初めとして数多くあり,その身体的特性

についてもかなり明らかにされ,持久的スポーツ種目の選手ではVO2 max ml/kg/minが 高値を示すことが知られている。しかし,形態的にも機能的にも著しい発育発達を示す青少年           について縦断的にVO2 maxを調べた研究は小川ら(1969) 4),長沢ら(1969)13}, K. Kobayashi ら(1978)7)により報告されているものの比較的少なく,その身体的特性についても不明な点が 少なくない。そこで,本研究は発育期の男子の身体的特性を知る上で,基礎的資料のひとっに なろう。

    .       

 まず,VO2 maxについてみると, VO、 max l/minは12〜13才より13〜14才の方が有意に 高値を示したが,VO, max ml/kg/minでは有意差が認められなかった。吉沢(1971) 9)は

       

9〜18才の男子365名のVO、 maxをグラウンド・ランニング法で測定したところ, VO2 max        1/minは15才まで増加して横這い状態になり, VO、 max ml/kg/minは15才でピークを示

したと報告し,朝比奈ら(1972)1)は9〜22才の男子175名のVO, maxをグラウンド・ランニ ング法で測定したところ,VO2 max l/minは12〜16才でスパートをおこし,20才でピークに 達した後,プラトーないし減少傾向を示し,VO, max m1/kg/minは16才でピークに達した 後,年令と共にプラトーから漸減したと要約し,亀井ら(1972)4)は12〜18才の男子266名をトレッ

ドミル・スピード漸増負荷法でVO2 maxを測定したところ, VO2 max 1/minは12才を最小 に年令と共に漸次増加し,13才から16才にいたる発育期での増加が顕著であり,VO, max ml/

kg/minは13才を最小に18才までの範囲で年令の増加と共に漸次増加したと述べ,北川と猪飼

(1972)6)は8〜31才の男女225名についてVO, maxを自転車エルゴメーター法で測定したと ころ,男子のVO、 max l/minの最大年間増加年令は13才で,18才になると増加が停止し,

VO2 max m1/kg/minは8〜17才頃まで大差なく,それ以降減少する傾向にあったと述べ,

(6)

12〜13才の男子14名と13〜14才の男子21名のVO、 max l/minとVO2 max ml/kg/minは それぞれ,1.90±0.331と44.9±4.7m1,2.13±0.291と47.5±7.2mlであったと報告している。

北川と猪飼(1972)6)の報告以外は本研究とVO2 maxの測定法が異なるので直接値を比較する ことはできないが,年令による変化をみると本研究結果も以上の報告とほぼ一致していたと考 えられる。なお,北川と猪飼(1972)6)の結果と本研究結果との間に差は認められなかった。

 次に,VO, max 1/minと形態値との関係についてみると,12〜13才,13〜14才共に皮脂厚 以外の項目と有意な相関が認められた。朝比奈ら(1972)1)は10〜13才の男子のVO、 max 1/min と体重との間に有意な相関が認められたと述べ,この年令期における身体構成はfat−freeの状 態に接近しているものと考えられると要約し,亀井ら(1972)4)は12〜18才の男子のVO2 max l/minと体重との間にも有意な相関が認められたと述べ,回帰直線を求め,年令の増加ととも に回帰係数が大きくなったことから,この傾向は明らかにactive tissueの増大によるものであ ろうと指摘している。また,吉沢(1972)2°)は12〜15才の男子のVO2 max 1/minと体格との間 に高い相関がみられたと述べ,体格などのstatic dimensionとVO2 maxというfunctional dimensionの調和的発達を示すということができると報告しており,北川と猪飼(1972)6)は8

〜31才の男女のVO、 max l/min,身長,体重の最大増加年令及び増加停止年令を検討し,男         子ではLBM(Lean body mass)と密接な関係にあるVO2 maxと形態とはその最大発育期が一

致しており,13才ごろであるので,VO2 maxの増加停止年令(19.5才)後の体重の増加は不 活性組織である脂肪の増加であろうと考察している。以上の報告から,本研究結果をみると,

static dimensionとfunctional dimensionの発育発達が著しいために体重以外の形態値との間 にも高い相関が認められたのであろうと推察される。

 次に,VO2 max ml/kg/minと形態値との関係についてみると,12〜13才で皮脂厚との間 に有意な負の相関が認められたが,それ以外の項目との間には有意な相関は認められなかった。吉沢

(1972)2°)は12〜15才の農村男子のVO2 max ml/kg/minと皮脂厚との間には有意な相関が 認められず,VO2 max 1/minと皮脂厚との間には上腕背部以外の項目と有意な相関が認めら

れたと述べ,この年令期においてはある程度の皮下脂肪が蓄積しうるような栄養条件が VO2 max 1/minの発達のためには必要であり, Excess fatに達する以前のEssence fatの範囲に あるのだろうと報告している。本研究結果は吉沢(1972)2°)の報告と必ずしも一致しなかったが,

VO, max l/minが上腕背部以外の項目と正, VO, max ml/kg/minはいずれの項目とも負 の相関傾向を示したことを考えると,皮脂厚はVO、 max m1/kg/minの制限因子になって いるものの,この年令期ではある程度の皮下脂肪が蓄積しうるような栄養条件がVO2 max 1/

minの発達には必要なのであろう。

 ここで,12〜13才と13〜14才のVO2 maxと形態値との関係を比較してみると,VO2 max l/

minと皮脂厚との相関にはほとんど差がみられなかったが, VO2 max ml/kg/minと皮脂 厚との相関は12〜13才の方が13〜14才よりも高い傾向にあったことと,VO2 max l/minと体重

との回帰係数は12〜13才の方が13〜14才より高い傾向にあったが,VO, max ml/kg/minは 13〜14才の方が12〜13才より高い傾向にあったことが注目される。即ち,VO2 maxと形態値 との関係は12〜13才の方が13〜14才より密接であったが,同じ体重の者では13〜14才の方 が12〜13才よりも高いVO, max 1/minを示したことになり,機能面における質的発達がある のかもしれない。

 最後に,VO, maxとスポーツテストの値との関係についてみると, VO2 max 1/minは

(7)

46 山  本 章

12〜]3才,13〜14才で,いずれも有酸素的作業能の指標とは考えられない項目との間にも有意な 相関が認められたが,一方,踏み台昇降運動や1500m走との間には有意な相関は認められな かった。また,VO2 max ml/kg/minは12〜13才,13〜14才で,いずれも1500m走との間

に有意な相関が認められた。松井ら(1973)9),猪飼ら(1973)2),吉田と石河(1977) 8)らは10〜11

才ではVO2 maxと踏み台昇降運動との間には有意な相関が認められず,この年令での踏み台 昇降運動は有酸素的作業能の評価テストとして妥当性が低いのではないかと報告しているが,

本研究においても同様のことが考えられる。しかし,VO2 max 1/minと有意な相関が認めら れた項目も有酸素的作業能の証価テストとして妥当とは考えられず,いずれの項目も VO2 max l/minと同様増加が著しく,分散が大きかったために相関が認められたのではないかと 推察される。VO2 max ml/kg/minと持久走力との関係については,三浦ら(1972)1°),村 瀬ら(1973)13)が陸上中長距離選手について調べており,中長距離選手ではVO2 max m1/kg/

minが運動成果を決定する有力な指標であると報告しており,山岡ら(1975) 6)は中高年者,北 川ら(1977)5}は青年でも,VO2 max ml/kg/minと持久走との間には有意な相関が認められ たと報告している。本研究の結果から,12〜13才,13〜14才の男子においても,VO2max m1/

kg/minはVO2max l/minより有酸素的作業能の指標として妥当であろうと考えられる。

なお,縦断的研究で,S. Sprynarovaら(1974)15)は11〜18才の男子35名を日常的トレーニン グ群,非日常的トレーニング群,非トレーニング群に分け,追跡研究し,思春期に高い有酸素的作 業能をえるためのトレーニング程度は15才以降にそれを維持するためのトレーニング強度より 少なくてすむと報告しており,K. Kobayashiら(1978)7)は50名の小中高校生を追求研究し,身 長が伸びるピークより以前にトレーニングしたものよりもピーク前後(13〜17才)にトレーニ ングしたものの方が有酸素的パワーの増加ののびが大きかったと報告している。今後さらにト レーニングや運動量との関係についても検討を加えたい。

5.要

 本研究は静岡市内の中学生男子18名について,12〜13才時と13〜14才時にVO2 maxを測定 し,VO2 maxの変化, VO2 maxと形態値並びに機能値との関係について調べ,検討を加えた ものである。

 測定期間は1976年と1977年の4〜5月にかけてであった。

 VO2 maxはモナーク社製自転車エルゴメーターを用いた漸増負荷法で最大作業テストを行 い,呼気ガスを1分間毎にダグラスバッグ法で採集してT−5型乾式テストメーターで換気量を測 定し,労型式大型呼気ガス分析装置並びにフクダ医理化研究所製レスピライザーBM−10を用 いて分析して求めた。形態値はマルチンの計測器,NSスプリング式体重計,栄研式皮脂厚計 を用いて計測した。機能値は文部省のスポーツテストを実施して求めた。

 測定結果は以下の通りである。

 1.VO2 max l/min, VO2 max ml/kg/minは12〜13才,13〜14才で,それぞれ1.932±

0.3971と45.29±4.83ml,2.219±0.4021と47.46±5.99mlであり, VO2 max l/minでは有 意差が認められたが,VO2 max m1/kg/minでは有意差は認められなかった。

 2.形態値は12〜13才より13〜14才の方が皮脂厚の上腕背部,上腕背部+肩甲骨下角部を除 き,いずれの項目でも有意に増加した。

 3.機能値は12〜13才より13〜14才の方が反復横とび,立位体前屈,1500m走以外の項目で,

(8)

いずれも有意に増加した。

 4.VO2 max 1/minは皮脂厚以外の形態値と12〜13才,13〜14才のいずれでも有意な相関 が認められたが,VO2 max ml/kg/minは12〜13才の皮脂厚との間にしか有意な相関は認め

られなかった。

 5.VO2 max 1/minは12〜13才では反復横とび,垂直とび,背筋力,握力,50m走,ハン ドボール投げ,懸垂腕屈伸との間に,13〜14才では垂直とび,背筋力,握力,50m走,走り幅 とび,ハンドボール投げ,懸垂腕屈伸との間に有意な相関が認められた。また,VO2 max ml/

kg/minは12〜13才では50m走,ハンドボール投げ,1500m走との間に,13〜14才では反復横 とび,1500m走との間に有意な相関が認められた。

 以上の結果から,この年令期には形態的にも機能的にも著しい発育発達があることにより,

VO2 max l/minは形態値や機能値との相関が高いこと, VO2 max ml/kg/minは1500m 走との相関が高く,この年令期においても有酸素的作業能の指標として妥当なことが明らかと

なった。

6.謝

 稿を終わるに当たり,本研究に多大な便宜を賜りました豊田中学校関係者一同と,集計その 他に多大なご尽力をいただいた静岡大学教育学部伊藤宏講師と宮崎隆広氏,それに終始ご懇切 な助言と校閲を賜りました伊藤二郎教授並びに渡辺功教授に深謝の意を表します。

引 用 文 献

1)朝比奈一男,浅野勝己,草野勝彦,中川功哉,道明博,砂本秀義(1972)都市青少年の有酸素的  作業能力に関する研究.体育学研究 16(4),197〜213.

2)猪飼道夫,福永哲夫,山本高司,手塚政孝,北川薫(1973)脈拍反応及び最大酸素摂取量からみ  たステップテストの検討.体育科学 1,204〜208.

3)加賀谷煕彦,黒田善雄,塚越克己,雨宮輝也,太田裕造,成沢三雄(1970)日本人競技選手の最  大酸素摂取量(第2報).体力科学 19(4),155〜156.

4)亀井貞次,松井秀治,宮下充正,水谷四郎,星川保,豊島進太郎(1972)青少年にみられる最大  酸素摂取量と体重との関係.体力科学 21(3),136〜142.

5)北川薫,宮下充正,山本恵三(1977)青年男女の身体組成,最大酸素摂取量および2400m走.

 体育学研究 21(6),335〜340.

6)北川薫,猪飼道夫(1972)青少年期に於る最大酸素摂取量と形態との関連性.体育学研究 17(3),

 156〜166.

7)K.Kobayashi, K.Kitamura, M.Miura, H.Sodeyama, Y.Murase, M.Miyashita, and H.Matsui  (1978)Aerobic power as related to body growth and training in Japanese boys:along−

 itudinal study. J.ApPl. Physiol・:Respirat. Environ. Exercise Physiol.44(5),666〜672.

8)黒田善雄,加賀谷熈彦,塚越克己,雨宮輝也,太田裕造,酒井惇子(1969)日本人一流競技選手  の最大酸素摂取量第1報.日本体育協会スポーツ科学研究所報告書 1〜8.

9)松井秀治,宮下充正,三浦望慶,小林寛道,天野義裕,米田吉孝,豊島進太郎,後藤サヨ子(1973)

 小学生のステップテストに関する研究 第1報 作業強度からみた小学生のステップテスト.体

 育科学 1,168〜173.

(9)

48 山  本 章

10)三浦望慶,松井秀治,宮下充正,小林寛道,菊地美智男,袖山紘(1972)鍛練者にみられる最大   酸素摂取量と体重との関係.体力科学 21(3),143〜148.

11)宮下充正,袖山紘(1972)日本人水泳選手の最大酸素摂取量.体育学研究 16(5),253〜257.

12)村瀬豊,小林寛道,宮下充正(1973)発育期にある陸上競技中・長距離優秀選手の有酸素的作業   能および長距離走行中の酸素摂取水準.体育学研究 17(5),269〜275.

13)長沢弘(1969)中学高校生の最大作業力について 第2報 最大酸素摂取量および最大酸素負債   量測定時の心肺機能の変化と生活様式との関係.体育学研究 13(3),195〜204.

14)小川新吉,伊藤朗,中嶋英昭,山本恵三(1969)発育期における持久性トレーニングが呼吸循環   器系機能に及ぼす影響(第2報).東京教育大学スポーツ研究所報 7,1〜9.

15)S.Sprynarova(1974)Longitudinal study of the influence of different physical activity   programs of functional capacity of the boys from llto 18 years. Acta Paed. Bel.28suppl.204   〜213.

16)山岡誠一,辻田純三,平川和文(1975)中高年者に対する持久性のトレーニング効果ならびに持   久能評価尺度相互間の関係.体育科学3,22〜30.

17)山本章(1977)中学生男子の最大酸素摂取量について 静岡大学教育学部研究報告(自然科学篇)

  289 41〜49.

18)吉田敬義,石河利寛(1977)少年の運動に対する循環反応の特徴と持久性評価に関する生理学的   研究.体育学研究 21(5),255〜263.

19)吉沢茂弘(1971)農村青少年の作業能に関する研究(1).体育学研究 15(3),21〜32.

20)吉沢茂弘(1972)農村青少年の作業能に関する研究(IID(相関と因子分析).体育学研究 17(3),

  129〜141

参照

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