周期入力をもっ微分方程式の初期値の一決定法
長 中 + 彦
尾 道
A Method t o D e t e r m i n e t h e l n i t i a l V a l u e o f Eq u a t i o n by t h e M o d e l o f t h e S a m p l e
田a n d ‑ H o l dD e v i c e
by
M i c h i h i k o NAGAO
( E l e c t r i c a l Engineering)
A numerical s o l u t i o n o f a 1 i near d i f f e r e n t i a l equation with ~ a p e r i o d i c input i s obtain@d by computing over the s e r i e s o f c y c l e s .
When the inputs o f the equations a r e piecewise constant , another method i s proposed t o obt‑
ain the numerical s o l u t i o n o f the equations i n t h i s paper. We consider the piecewise constant input as the output o f the sample‑and‑zero‑order‑hold d e v i c e . This method g i v e s f i r s t the i n i ‑ t i a l value exactly and simply. Then we obtain the s o l u t i o n by
、computation on the i n t e r v a l o f only one cy c 1 e .
1 . ま え が き
シリコン制御整流素子の開発により,交流電動機の 駆動用電源として,インパータが広く用いられるよう になった.乙れと並行して,インバータで駆動される 電動機,即ち,入力波形が PWM 波形(区分的に連続 な波形)で駆動される電動機の各特性も解析されてき た.この解析の基礎は,電動機の電圧・電流の関係で あり,この関係は d‑q 変換法により定係数線形微分 方程式で表わされる.乙の方程式の定常状態での解を 求めるために,一般に行われている方法は,最初,初 期値を零とし,収束するまで繰返し行うか,実測によ りだいたいの初期値を知って繰返し計算によるか,あ るいはアナグロ計算機と並用する方法等である.
本論文では,区分的に連続な入力を,連続な入力 をサンプリングし,零次ホーノレド回路を通過した出力 と見なして,連続系を離散値系に変換する.そして初 期値が半周期の値と符号が逆で,絶対値が等しいとい う条件を用いて, PWM波形のように,区分的に連続 な入力の初期値を一意的に求める方法を示す.
*電気工学教室
最初に,連続系を離散値系 l 乙変換し,初期値が一意 に定まるための必要十分条件を示す.この方法で,与 微分方程式の初期値を求め,この初期条件のもとでこ の方程式を解き半周期後の解と
e比較する.
2 . 定係数線形連続系より定係数線形離散値系への 変換
く 2 .1> 定係数鯨形連続系 T: 時間集合;
U:入力集合 =Rm=m 次元実数ベクト J レ空間;
X: 状態集合 =Rπ=n 次元実数ベクトノレ空間,
A : X → X , B:U → X は線形作用素とする.
乙の時,定係数線形連続系は
x ( t )=Ax ( t ) 十 Bu(t) ・ ‑ ・ ・ ・ ・ ・ ( 1 ) (x ( t )=dx/dt , tET , XEX , UE U)
で表わされ,初期値 7 : E T , x( け を も っ ( 1 ) 式の解は次 のようになる.
x ( 日 ( 日 x 伸 s : c t ( 刊 Bu 似
周期入力をもつ微分方程式の初期値の一定法 45
ただし,
φω三醐一E+ サ(≠1化(鱒位行列)(・)
<2.2> 定素数線形連続系より定係数線形離散値 系への変換 %∈…σを周期なでサンプリングし,零次 ホールド回路にくわえ,その出力を吻∈σとする.
この時,②式は次のように変換され,定係数線形連続 系より定係数線形離散値系が得られる(3)・.
κ(z〔:(ん十1) s〕=φα8)κd(ん s)十〇(≠8)z6〔エ(ん≠s) ・・…・(4}
(ん=0,1,2,__;κ面∈X,渉8∈τ)
ただし,
・㈲一 轤P8φ〔(ん+1)む一・〕B4・…………1・)
そして(4)式の解は,初期値ん=0,勘(0)とすると 宛(κ 8)=φκα8)κd(0)
ん一1
乃一∫.1
( 8)θ( 5)z5ご (ガ≠s)・・・… 。・・・・・・・・… 。・・(6)
+Σφ 2=0
となる(3).
(4)式より
宛〔(ん+1)≠8コーκd(砥)
=〔φαs)一Eコ鞄(砥)+o(♂・)殉(ん 8)
四丁(ん十1)磐(㈲識〔鯉一馬㈲
+σ警)嚥)〕
・(の渦φ(贈・(の+磨。0警)・(の…(7)
となる.また
鳥φ(響一鞭+澄,聖1⇒一一
謬召騨㍉囎÷∫1㌔(≠s−s)β4・
一為÷〔朋一置1誰(餐〒s)竺〕r
=B
・。・・・・・・・・・・…@。・・。・。・。… 。・。・。・… 。・・… 。・・。・u。・・… (9)
であるから,な→0のとき勉=κとなる.
以上のことにより,連続系を離散値系で近以できる.
また,サンプリング周;期 、を短くすることにより,
離散値系による連続系の近以度は増加する.
最初から入力が区分的に連続な場合は,連続な入力 が既に,サンプラー二次ホールド回路を通過したとみ なせば,(6)式により真の解が得られる.
3.定係数線形離散値系の周期解
インバータをサンプラー零次ホールド系とみなすと,
一・ ハに,サンプリング周期七sが,インバータの発振 周波数の一周期内で異なっている.このために,各サ ンプリング区間ごとに解を求めて,初期値が一意に定 まるための必要十分条件を求ある.
リンプリング周期七,のとりかたは,4の具体例で 述べる.
<3。1> サンプリング周期の異なる時の離散値系 連続入力κ( )を考え,区間〔0,Ts/2〕∈Tをn区立
に分ける.各区間において時間七、パi−0,1,………,n)
でサンプリングし,零次ホールド回路の出力π副を 得る
この時,各区間〔t ,t ・1〕,出力短乞,サンプリ ング周期七・乞それに各境界条件等の関係は次のように
なる.
0≦=≠〈≠1;・πσ=碗0, 8=≠30,必(0)=陶0(0)
、《!ぐ2;殉_嫡,渉、_云、、,
エ(0)=ζτ♂i(0)=絢0( 1)
疏一1≦ ≦疏;吻=π♂π一1, 8= 8π一1,諾(0)=
陶π一2(砺一1)κ(0)………・・…・…
〔9)
これより,各区間でのx醗は(61式より次のようにな る。 『
。、。(ん。 80)一φ㌦。(。)+乃野1φん・一Lゴ・。。碗。
o ガ。=o o
礁砺)一φ悩(・)+緋h−1一編
・伽一、(んη_1〜5sη_1)一φ砺一・κ伽.、(o)
η_1
+触「1φ二一i−1一宛.・翫.i 血一i π_1
z箆_」=
ただし,
(1①
島は0≦;島≦;( 乞+1一 乞)/ 8乞(」=0,1,……η一1),な る自然数.
φ1Lφ緬),・F∫『乞φ( 8乞 s)Bゴ・∴・……一・仙
(9),(10)式よりκ画一1(柘一1∫・π一1)は次のようになる.
一幅の一φ禁11・φ禦12……φ11φ10
κ⑳(0)
、。一、 肋一2』』、2、i左・一㌔6一、.、。
塊・●転2…φ2●φ・、為φ・
σo碗。十・…・・
襯肋一,砺一3『1、。.3.、.漉 +φ・一・φ・㌔2i一。艦一・ o・一・
×Z4σπ一3
襯砺一2−1醜一2一⊥一・
π一2σπ一2%伽_2 +φ
Σ φη一2 π順1ゴπ一2−o
+鴛∴φ駕煽隔一………・(1鋤
<3.2> 交番周期
解定義(4}式の解κα(秘)が,一つの数τ・が存在し て
宛(初s一トτ8)=宛(砥)(んf8,τ8ε7一)・・…………・…(13 を満足する時,宛(ん 8)は周期:τ、をもつ系(4)の周期 解という.さらに
κ、(ん 、+:τ,/2)一一宛(麓、)・………・…………・……⑬ を満足する時,κ(㍑8)は交番周期解:τsをもつ剰4)の 交番周期解という.
いま,各不連続点疏をとると
ん0 80=彦1,ん1∫ε0= 2一 1,……・んη一1∫sπ一1=碗一玩一1 =τ8/2一碗一1
なる関係がある.これより
φ禦11……φ10一φ(砺.1ψ、π.1+・・…・+んof)
=φ(τ8/2)
φ禁11……φん㌔一φ(ん・一・ら・一・+…・∴+噛)
=φ( π一」1)
φ浩1φ鰐一φ(楠一・)
んれ ユ
φ =φ(砺一碗一1)
π一1
を得,壁式は㈲式より次のようになる.
κ伽一1(砺一1∫8π一1)二φ(τ8/2)宛0(0)十φ(碗一∫1)
㌻1φ・・一・一・・0。吻。
ゴ=o o
+φ(玩一∫2) ラ塵G・陶・+一・∵
+φ(一 スφ鮮鞠一
砺一1−1 + Σ 疹=0 π一1
〜
/ユ5)
)
φんπ4−1一ゴ・一10。一1臨一1………α③
定義により短(ん 5)が交番周期解をもつためには,
τ,をκd(馬ジの周期とすると, ゐ=0のとき,宛.
(τs/2)一一κd(0)である.これは, 〔o,τε〕を任意 の区間に分けた時でも成り立つから,q⑤式より次の結 果が得られる.
・、(τ,/2)一・伽一、(ん。一・∫、。一・)一一・・(0)一一・・・(0)
ん。−1
〔φ(τ、/2)+E〕勘・(・)一{φ( ・蘭)浬。
なむ ユ ゼ
φ ・ 00陶0÷…………
0 砺一1−1
ん箆_ゴ1一乞
+ Σ φ
0π一1%伽一1 2=0 η『1
一_
麻モ(,凶)んブ芽1φん・一・一・一・。、.、吻一、...qの
ゴ=1 ゴ=0 ゴー1
これよりんdO(0)が一意に定まるための必要十分条件は
4θ 〔φ(τ8/2)十E〕 ≒0 ・・・・・… 。・・。・・・・・・・・・・・・・・… 。… (18>
である.
⑳式より,48必≒0であれば
σ・一 轤ネ乞φ( s乞 5)B炉φ( ・の∫空φ(一・)ゐB 一φ(・・の∫18乞{E一孟・+(斜……+(一・)・(留π
十…}43・B
(オリ2 一φω〔一{一」 ・汁2!一……+(一1)・+1
辞影+…}左・〕・B
=一φ( の{φ(一 8の一E}』一1B= {φ( sの一E}
×浸一1・B
一オ1{φ(f、の一E}・B(φα)とオ4は交換可能)119 が得られ,(17)式は〔19式より
η んブーエー1 {φ(τs/2)+E}梅0(0)=一Σφ(三一のΣ ブ=1 ゼ=0
φ鶉一ユー乞
・〔ノ1−1 {φ(∫8乞)一E}B〕%・ブー・
一一 噬モ(励)劉φ㌍1一1一ぎ
〔φ(ご・ゴー・)一E〕B塀・…・…………・…・……⑳
となる.(18)式と4θ昭≒0が成り立てば,初期値κ¢o(0)
ぽ次のよう表わされる.
れ
勘・(0)一一 kオ{φ(τ1/2)+E}〕一エゴ≡1φ(励)
箋1牽r1一ゴ{φω一E}…………・…・伽
計算機によれば,φ(のや逆行列〔浸{φ(τ,/2)+E}〕}1 は簡単に求めることが出来るので初朝値κ⑳(0)も簡単 に求まる.次に,ある二相サーボモータに,TRC電 圧波形(波形の面積が常に一定な波形)がくわわった 時の初期値κdO(0)を求める.
4.具 体例
初期値κα・(0)は,第七有効i数字を四拾五入して6
桁で求める.この求め方は,(3)式の項数kを順
周期入力をもつ微分方程式の初期値の一定法 45 次ふやしていき、あるkの時のκd。(0)が(k」1)の
時の勘。(0)と,有効数字七桁で等しくなった時に計 算を打切り,この時のκ伽(0)を初期値とする.一方 φ(七)の各要素は,有効数字七けた以上で第(k−1)項 までのφ(七)と等しくなければならない.
そして,この初期値κ伽(0)を用いて,(1)式の
=7−3/2における解κ(τs/2)を求め,一κdo(0)=
κ(τs/2)の関係をみる.
計算機の使用にあたって,初期値堀。(0)を求める ための全ての計算は倍精度で行った.そのうち逆行列 はSweep Ou七法を用いた.そして微分方程式の解法 は単精度Runge Ku七七a Gi11法を用いた.
〈4.1>例題1 Fig・1(a)のような入力がくわ わった時の初期値を求める.
図において鴫,娼の両入力を同時に,o,七1,t2,t8,
t4………へと順次サンフ。リングしていくと考える.す ると,半周期 0,Ts/2のみを考え,次の関係が成
り立つ.
.0≦二渉≦=渉1=τ5/4;zごd=z440= 〔z61(オ。,一z♂2σ000〕,,
s二 So=τs/4
1≦; 〈!2=コ「3/2;z4(1=π(オ1= 〔π1(オ。 z42(zoO O〕!,
s=渉s1=τ3/4
ただしノ記号は転置を表わす.このとき,(21)式にお けるπ,kr1はη一2,kFk1二1であるから初期値
κ面(0)は
κ面(0)=一〔{オφ(τs/2)十E}〕一1〔φ(τ∫/4)
{φ(τs/4)} 一E} 石}z∫40 十 { φ (τs/3)
一E} 1}こノ141 〕 。・・・・・・・・・… 。。・。・・・… 。(22)
となる.ここで,各数値を次のように与える.
τ8=20.0×10−3,z4140=zご240=zご1411=z6241=
100.0
温=
.B=
一161.542 555.874 534.791 683.327
−555.874 −161。542 −683.227 534.791 131.581 −683.327 −656.555 −838.474 683.327 131.581 838.474 −656.555
4.405 0.0
−3.588 0.0
0.0 4.405 0.0
−3.588
」3.588 0.0 4.405 0.0
0.0
−3.588 0.0 4.405
〈4.2>例題2 Fig・1(b)の入力がくわわっ時の 三期値κd。(0)を求める.
ここでも前と同様に,o,七1,七2,…,t8………へと順
u 岨
(a) (b) u
@ u∫
U t5 h 極 ・t O
@ uぎ
t1 松 t
t3、