過去 20 年間、ベトナム経済は目覚しい発展を遂げてきた。市場経済に基づいた一連の改 革により、経済は持続的に回復し、生産と雇用は以前の状態に回復するまでに成長した。 経済成長に伴い、産業、企業の所有形態及び技術水準ごとの雇用構造は、以下のように変 化してきた。(1) 農林水産業に従事する者の比率が徐々に減少し、工業・建設及びサービ ス部門に従事する者の比率が徐々に増加 (2) 国営企業で働く者の比率が徐々に減少し、非 国営企業で働く者の比率が徐々に増加 (3) 近年、とりわけ技術労働者の比率が高まり、労 働者の質の向上に貢献。これらの点は、労働市場の発展、特に技術労働者への需要の増加 に現れてきている。しかし、経済成長、貧困削減、雇用創出が達成されたにもかかわらず、 ベトナム経済は発展や外国との統合の過程において多くの困難や制約に直面している。そ の一つは、労働供給と労働需要のミスマッチとして顕在化してきている労働市場の未成熟 さである。この報告ではベトナムの労働市場のこれらの特徴に焦点をあてる。
2.1 労働市場の状況
(1)ベトナムの労働市場の特徴 ベトナムの労働市場は近年形成され、市場経済化が進むなかで発達してきた。 他国の労働市場と比べて、ベトナムの労働市場は以下の特徴を持つ。 (a) 人口及び潜在的労働者が多い。 2006 年のベトナムの人口は 8,410 万人であり、東南アジアで第 2 位、世 界でも第13 位である。人口の年平均成長率は 1.3%である。農村部に居 住する人口は6,200 万人で人口全体の 73%を占め、都市部に居住する人 口は2,200 万人で人口全体の 27%を占める。 就労人口は人口全体の64%を占める。今後数年間、就労人口は人口増加 により増加する傾向にあるが、その後は減少に転じる見通しである。 (b) 労働者の質が高くなく、経済開発の需要を満たしていない。 2006 年、ベトナム全土で 15 歳以上の労働者が 4,438 万人いたが、その うち訓練を受けたことのある労働者は26.33%に過ぎなかった。 (c) 労働力の分布が均一ではない。 ベトナムの労働市場の特徴は、地域ごとと職種ごとの労働力の分布が均一 ではないことである。労働力の大部分は、南東部、紅河デルタなどの急速 に成長する地域に集中しており、2006 年には、この 2 つの地域に全国の 労働者の37.69%が集中した。他方、北西部、中部高原などの開発の遅れ ている地域の労働者は、全国の労働者の9%弱を占めるのみである。 他の地域の労働力と比べて、南東部において中等レベル以上の技術を持っ た労働者の比率は37.98%と全国で最高水準であり、紅河デルタでは 34.75%である。北西部では、13.84%を占めるのみである。特に、大卒 以上の労働者のほとんどが、ハノイ、ホーチミン市、ダナン、ハイフォン などの大都市に居住している。*出典:Statistical data of employment and unemployment in Vietnam from in 2006, MOLISA, Vietnam, 2007
2.1.1 過去 3 年間の労働力人口、就業者数、失業者数及び失業率 (1) 労働力人口、就業者数 ベトナムには労働力に関する4 つの指標があり、2006 年の数値は以下の とおりである。 ・15 歳以上の経済活動人口:4,557 万人 ・就労している15 歳以上の経済活動人口:4,454 万人 ・就労年齢にある経済活動人口:4,221 万人 ・就労している就労年齢に当たる経済活動人口:4,219 万人
*出典:Statistical data of employment and unemployment in Vietnam from in 2006, MOLISA, Vietnam, 2007 15 歳以上の経済活動人口は、1998 年には 3,800 万人であったが、2006 年 には4,454 万人へと年平均 1.8%で成長している。 ベトナムでの労働力とは、就労している者もしくは失業者である。この定 義によれば、2006 年にベトナムには 4,450 万人の労働者がおり、そのうち 男性が51%、女性が 49%を占める。2001 年から 2006 年までの労働力の 1 年あたりの平均成長率は2.6%である。 近年の人口増加により、ベトナムの労働力は急速に増加している。平均で 1 年間に 120 万人から 130 万人が労働市場に加わっている。 表2-1 のとおり、年齢階層ごとの労働力の分布では、総労働力のうち 15 歳から24 歳の階層の労働者が 21.15%を占め、15 歳から 29 歳の労働者が 32.68%を占める。ベトナムの労働者は青年層が多く、それがベトナムの労 働力の強みの一つとなっている。 表 2-1 年齢階層ごとの 15 歳以上の経済活動人口比率 (単位:%) 都市部 農村部 年齢階層 合計 女性 合計 女性 合計 女性 合計 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 15 – 19 8.04 7.93 3.44 3.24 9.57 9.44 20 – 24 13.11 12.65 11.64 12.01 13.60 12.86 25 – 29 11.53 11.30 13.23 13.44 10.97 10.61 30 – 34 12.76 13.20 13.43 13.77 12.53 13.02 35 – 39 13.64 13.84 14.35 14.70 13.40 13.57 40 – 44 13.52 13.59 14.84 14.81 13.08 13.20 45 – 49 11.65 12.05 13.91 14.01 10.9 11.42 50 – 54 7.57 7.69 8.34 8.10 7.31 7.55 55 – 59 4.41 4.13 4.12 3.42 4.51 4.36 60 + 3.78 3.61 2.69 2.49 4.14 3.97
Labour and Social Publishing House, 2006. 表 2-2 2004 年から 2006 年の雇用者数とその比率 年次 雇用者数 (100 万人) 労働者全体における 雇用比率(%) 2004 41.6 97.91 2005 42.5 97.97 2006 44.5 97.81
*出典:Statistical yearbook of Vietnam 2006, Statistical Publishing House, 2007.
1996 年以降、ベトナムにおける雇用の成長は不安定である。1996 年から 2000 年までの期間、成長率は年平均 1.6%であったが、2001 年から 2002 年の期間では年平均4.0%に上昇し、2006 年には 2.8%となっている。2000 年から2006 年までの期間の雇用の平均成長率は 2.9%である。同じ期間、 工業と建設部門での雇用の成長率が最も高く年平均9.51%であり、サービ ス部門は3.78%、農業部門は 0.91%であった 表 2-3 地域、都市部と農村部の労働力の分布比率 (単位:%) 地域 合計 都市部 農村部 ベトナム全体 100.00 100.00 100.00 紅河デルタ 22.34 19.53 23.29 北東部 11.64 8.42 12.74 北西部 3.17 1.65 3.68 北部沿海部 12.11 6.24 14.11 南部沿海部 8.21 9.47 7.78 中部高原 5.58 5.99 5.44 南東部 15.39 32.04 9.73 メコンデルタ 21.56 16.67 23.22
*出典:Statistical data of employment and unemployment in Vietnam from in 2006, MOLISA, Vietnam, 2007
(2)失業率
ベトナムにおける失業者とは、労働を行うことができるが失業しており、 求職中の15 歳以上のものを指す。経済成長に伴い、ベトナムの失業率は、 過去5 年間低下してきた。都市部の労働年齢の労働力の失業率は 2000 年 に6.4%であったが、2005 年には 5.3%、2006 年には 4.8%に低下した。
失業率は地域によって異なる。都市部の失業率は継続的に低下しているが、 依然として高い水準にある。 表 3-4 失業率の推移 2004 年 2005 年 2006 年 ベトナム全土 2.1% 2.1% 2.1% 都市部 5.6% 5.3% 4.8% 農村部 1.1% 1.1% 1.1%
*出典:Statistical data of employment and unemployment in Viet Nam 1996-2006- Labour - Social Publishing House, 2006 and MOLISA 2007.
表 2-5 地域ごとの都市部の労働年齢の者の失業率 (単位:%) 2000 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 ベトナム全土 6.42 6.01 5.78 5.60 5.31 4.82 紅河デルタ 7.34 6.64 6.38 6.03 5.61 6.42 北東部 6.49 6.10 5.93 5.45 5.12 4.32 北西部 6.02 5.11 5.19 5.30 4.91 3.89 北部沿海部 6.87 5.82 5.45 5.35 4.98 5.50 南部沿海部 6.31 5.50 5.46 5.7 5.52 5.36 中部高原 5.16 4.90 4.39 4.53 4.23 2.38 南東部 6.16 6.30 6.08 5.92 5.62 5.47 メコン河デルタ 6.15 5.50 5.26 5.03 4.87 4.52
*出典:Statistical yearbook of Vietnam, the Statistical Publishing House, 2007. ベトナム労働力のその他の問題は不完全雇用であり、現在、ベトナム経済 において大きな問題となっている。労働力が効率的に使用されるなければ、 極めて重要な人的資本を失うことになるからである。調査結果によれば、 2006 年に不完全雇用にある者は 350 万人にのぼり、労働力の 8%を占める。 15 歳から 24 歳の世代の不完全雇用率は、28%と極めて高い。不完全失業 の総数のうち、技術を持たない者が88%を占める。 都市部は失業の問題を抱えるが、農村部では労働時間が問題である。農村 部での労働者の労働時間は徐々に増加しているけれども、労働時間自体は 多くない。
*出典:Statistical data of employment and unemployment in Vietnam from in 2006, MOLISA, Vietnam, 2007
2.1.2 業種別労働者数 ベトナムの労働者においては、雇用されている者が大部分を占めるが、その大部 分は、農業や農村部での自営や家族経営での雇用である。1999 年に、この種の 労働者は雇用されている者の80.95%を占めていたが、2005 年には 73.95%に減 少した。ベトナムにおける雇用された労働者のうち賃金労働者の比率は依然とし て低く、2005 年に全労働者の 25.65%を占めるのみである。そして民間部門の 賃金労働者が顕著に増加している。 表 2-6 雇用状況ごとの労働者数とその比率 2003 2004 2005 雇用状況 百万人 % 百万人 % 百万人 % 合計 41.2 100.00 42.3 100.00 43.4 100.00 国営部門被雇用者 4.1 10.06 4.3 10.26 4.4 10.17 民間部門被雇用者 4.9 11.81 6.5 15.31 6.7 15.48 雇用者 0.2 0.35 0.2 0.51 0.2 0.4 自営業者 16.9 41.12 17.4 41.21 17.8 40.96 家族労働者 14.8 35.87 13.8 32.71 14.3 32.99 その他(分類不能) 0.3 0.79 0.0 0.00 0.0 0.00 *出典:Statistical data of employment and unemployment in Viet Nam 1996-2005- Labor - Social
Publishing House, 2006. 賃金労働者は増加する傾向にあるが、賃金を受け取らない自営業者と家族労働者 は減少する傾向にある。国営部門で働く労働者の比率は、2004 年の 9.9%から 2006 年の 9.2%に低下しており、非国営部門で働く労働者の比率は 88.6%から 89.2%に増加している。
*出典:Statistical yearbook of Vietnam, the Statistical Publishing House, 2007 2006 年、紅河デルタでは、国営企業で働く労働者が全労働者の 10.75%を占め、 ベトナム全土で最も高い比率である。南東部では、外国投資部門で働く労働者が 全体の7.66%を占め、ベトナム全土で最も高い比率である。メコンデルタでは、 ほぼすべての労働者が非国営部門で働いており、その比率は93.04%である。 企業の所有形態と地域ごとの労働者の構造は表2-7 のとおり。 表 2-7 2006 年企業の所有形態と地域ごとの労働者の構造 (単位:%) 国営部門 非国営部門 外国投資部門 ベトナム全国 9.2 89.2 1.6 紅河デルタ 10.75 87.85 1.40
国営部門 非国営部門 外国投資部門 北東部 9.94 89.63 0.43 北西部 7.19 92.72 0.09 北部沿海部 8.00 91.63 0.37 南部沿海部 10.60 88.32 1.08 中部高原 9.04 90.54 0.42 南東部 13.71 78.63 7.66 メコン河デルタ 5.96 93.04 1.01
*出典:Statistical data of employment and unemployment in Vietnam from in 2006, MOLISA, Vietnam, 2007 表 2-8 職種ごとの労働者比率 (単位:%) 職種 1999 年 2005 年 合計 100.00 100.00 1- マネージャー 0.47 0.70 2- 高度な専門技術を持つ労働者 2.34 3.79 3- 中等レベルの専門技術を持つ労働者 3.00 3.11 4- 専門職 0.94 0.98 5- 警備員・軍人 6.19 8.78 6- 農林業の技術者 4.65 5.20 7- 技術者 9.42 11.95 8- 機械オペレーター 2.86 3.83 9- 単純労働者 69.57 61.68 10-その他(分類不可能) 0.54 0.00
*出典:Statistical data of employment and unemployment in Viet Nam 1996-2005- Labor - Social Publishing House, 2006. 表 2-9 性別による労働者の比率 (単位:%) 職種 男性 女性 合計 100.00 100.00 1- マネージャー 0.47 0.70 2- 高度な専門技術を持つ労働者 2.34 3.79
職種 男性 女性 3- 中等レベルの専門技術を持つ労働者 3.00 3.11 4- 専門職 0.94 0.98 5- 警備員・軍人 6.19 8.78 6- 農林業の技術者 4.65 5.20 7- 技術者 9.42 11.95 8- 機械オペレーター 2.86 3.83 9- 単純労働者 69.57 61.68 10- その他(分類不可能) 0.54 0.00
*出典:Statistical data of employment and unemployment in Viet Nam 1996-2005- Labor - Social Publishing House, 2006. 表 2-10 部門ごとの労働者比率 (単位:%) 部門 2004 年 2005 年 2006 年 農林水産業 58.8 57.3 55.7 工業 17.3 18.2 18.9 サービス 23.9 24.5 25.4 合計 100.0 100.0 100.0 *出典:Statistical yearbook of Vietnam 2006, Statistical Publishing House , 2007.
ベトナムの就労構造は、農業部門での労働者が減少し、工業及びサービス部門の 労働者が増加する方向に変化している。ベトナム政府は、2010 年に、農業部門 が50%、工業部門が 24%、サービス部門が 26%とする就労構造を目標としてお り、この傾向は今後も続くものとみられる。 2.1.3 新規学卒者の就職状況 ベトナムの教育システムは以下のとおり。 (a) 幼稚園 小学校入学前の教育組織であり、3~6 歳までが入学することができ、小学 校入学の準備が行われる。 (b) 小学校 初等教育組織であり、第1~第 5 学年までの 5 学年からなる。 (c) 中学校及び高等学校 初等教育に続く中等レベルの教育組織であり、中等レベルの知識習得を目 的としている。中等レベルの学校は、(1) 第 6~第 9 学年までの中学校、 (2) 第10~第 12 学年までの高等学校からなる。
(d) 大学 上級レベルの教育組織であり、高等学校もしくは専門学校の卒業生を対象 として、専攻に応じて4~6 年間、同じ専攻の短期大学の卒業生には 1~2 年間の教育が行われる。 (e) 短期大学 大学レベルの教育・訓練組織である。高等学校もしくは専門学校の卒業生 に対して3 年間の教育・訓練が行われる。 (f) 専門学校 中等レベルの専門的な教育・訓練組織である。中学校の卒業生に対しては 3~4 年間、高等学校の卒業生に対しては 1~2 年間の教育が行われる。 ベトナムでは、2006~2007 年の学年において、1,620 万人が教育を受けて おり、そのうち、中学校が610 万人、高等学校が 310 万人である。学生全 体に占める女性の割合は48.51%である
*出典:Statistical yearbook of Vietnam, the Statistical Publishing House, 2007 ベトナムの教育はいくつかの問題を抱えている。ベトナムの山岳地帯や少数民族 が多く居住する地域での就学率は依然として低く、その要因は家庭の経済的問題 で、そのために就学を諦めなければならない。 一方、入学者に対する卒業生の割合は高く、高等学校で 90.53%(2004~2005 年)、93.70%(2005~2006 年)となっている。言い換えれば、100 人の高等学 校の学生中 7~10 人が高等学校プログラムを終了することができず退学してい ることになる。この比率は地域によって異なる、例えば、2005 年から 2006 年 の学期において、紅河デルタのこの比率は98.93%と高く、他方、中部高原では 88.87%、メコンデルタでは 85.60%となっている。 表 2-11 地域ごとの高等学校卒業率 (単位:%) 地域 2004~2005 年度 2005~2006 年度 全国 90.53 93.70 紅河デルタ 98.53 98.93 北東部 93.13 95.20 北西部 94.59 90.77 北部沿海部 96.35 96.40 南部沿海部 88.46 90.30 中部高原 84.80 88.87 南東部 82.79 93.09 メコンデルタ 74.32 85.60
2006 年に、中等専門学校には 46 万 8,800 人の学生がおり、そのうち、長期コ ースの学生は43 万 2,000 人である。また、2006 年の中等専門学校卒業生は 14 万9,300 人であった。2006 年には、大学及び短期大学に 166 万 6,200 人の学生 がおり、2005 年と比べて 1.17%増加した。2006 年のそれらの卒業生は 23 万人 であった。 表 2-12 中等専門学校、大学、短期大の学生数 (単位:千人) 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 中等専門学校 学生数 360.4 465.3 500.3 468.8 卒業生 115.8 138.8 157.4 149.3 大学及び短期大学 学生数 1131.0 1319.8 1387.1 1666.2 卒業生 165.7 195.6 210.9 230.0
*出典:Statistical Yearbook of Viet Nam 2006. Statistical Publishing House, Hanoi, 2007 毎年、中学校から40 万人及び高等学校から 30 万人が退学している。また、お よそ17 万人の高等学校の卒業生が、中等専門学校や大学、短期大学に入学でき ない。彼らは就職するか、もしくは失業者となっており、ベトナムの雇用におい て大きな問題となっている。 この問題を解決するために、ベトナム政府は、職業訓練学校や民間の学校で、よ り多くの学生がさまざまな形態の訓練を受けられる機会を拡大し、また、労働輸 出プログラムにより彼らに就労機会を与え、農村労働者や若者への雇用促進プロ グラムにより小規模ビジネスの機会を拡大している。 2.1.4 自発的離職者の現状 ベトナムにおける自発的離職者には、(1)15 歳以上の学生、(2)主婦、(3)退 職した者もしくは働くことができない年金生活者、(4)さまざまな理由により 自発的に退職した者、が含まれる。自発的離職者は、2003 年 1,640 万人、2004 年1,730 万人、2005 年 1,810 万人、2006 年 2,000 万人以上と増加傾向にあり、 うち女性はそれぞれ960 万人、1,020 万人、1,070 万人、1,120 万人である。就 学者は710 万人と 39.4%を占め、主婦が 240 万人で 13.3%、その他が 92 万 3,100 人で5.1%を占める。その他の自発的離職者のうち、女性は 49 万 2,200 人であ り、53.32%を占めている。
2.1.5 職種ごとの技術労働者数 ベトナムの労働者は、(1)訓練を受けていない労働者、(2)職業訓練学校、中 等専門学校、大学及び短期大学を卒業した訓練を受けた労働者に分けられる。訓 練を受けた労働者は2003 年の 20.99%から 2006 年に 31.55%へと増加している けれども、全体の労働者に占める割合は小さい。 表 2-13 訓練を受けていない労働者と訓練を受けた労働者 訓練を受けていない労働者 訓練を受けた労働者 年次 労働者総数 (千人) (千人) (%) (千人) (%) 2003 年 41,175.7 32,532.9 79.01 8,642.8 20.99 2004 年 42,315.6 32,764.9 77.43 9,550.7 22.57 2005 年 43,452.4 32,506.7 74.81 10,945.7 25.19 2006 年 44,548.9 30,493.7 68.45 14,055.2 31.55 *出典:Statistical Data of Employment and Unemployment in Viet Nam 1996-2005. Labour - Social Publishing House, 2006 and MOLISA 2007
2006 年に、訓練を受けていない労働者のうち女性が 52%を占め、女性の全労働 者のうち訓練を受けていない労働者が73.63%を占める。つまり、訓練を受けた 女性の労働者の比率は依然として極めて小さく、雇用されている女性の労働者の 26%に過ぎない。 都市部の訓練を受けた労働者は農村部よりも多い。2006 年に、都市部の労働者 のうち訓練を受けた労働者は57.85%であり、農村部では 22.91%であった。 表 2-14 2006 年 訓練を受けていない労働者と訓練を受けた労働者の割合 (単位:%) 訓練を受けていない 労働者 訓練を受けた 労働者 全体 68.45 31.55 女性 73.63 26.37 都市部 42.15 57.85 農村部 77.09 22.91
*出典:Statistical Data of Employment and Unemployment in VN in 2006, MOLISA 2007 地域ごとにみた場合、2006 年に、技術を持った労働者の割合は南東部が 49.98% と最大であり、次いで紅河デルタの33.59%であり、最も低いのは北西部で 11.64%である。これはベトナムの地域ごとの社会経済開発に差異があることを 示している。南東部と紅河デルタはベトナムで最も急速に発展している地域であ
るが、北西部や中部高原の発展は緩やかであり、それゆえ、これらの地域での技 術を持つ労働者の雇用も依然として限定的である。 表 2-15 2004 年~2006 年 地域ごとの技術労働者の割合 (単位:%) 2004 年 2005 年 2006 年 職業訓練 学校以上 専門学校 以上 職業訓練 学校以上 専門学校 以上 職業訓練 学校以上 専門学校 以上 ベトナム全土 22.5 11.0 25.19 10.01 31.55 10.29 紅河デルタ 31.9 15.1 34.75 19.64 33.59 13.83 北東部 18.0 11.3 19.76 15.59 20.61 10.41 北西部 11.3 8.5 13.84 9.54 11.64 7.27 北部沿海部 16.4 9.6 16.89 12.54 21.97 9.42 南部沿海部 25.4 10.7 28.30 14.01 33.31 11.13 中部高原 15.8 9.2 17.92 12.7 31.12 9.54 南東部 31.8 14.2 37.98 20.24 49.98 12.77 メコンデルタ 14.3 6.0 16.75 8.05 29.93 5.61 *出典:Statistical Data of Labor and Employment in Viet Nam 2004, 2005 and 2006, MOLISA 2007
ベトナム統計総局(GSO)による職業分類ごとにみた場合、職業訓練資格を持 つ労働者及び技術労働者のうち、製造・加工分野が17.05%と最大であり、次い で工芸が15.93%、輸送が 10.4%、建設・建築が 9.13%、医療が 2.31%、ビジネ ス管理が1.87%、農林水産業が 1.55%であり、その他の職種は、ごくわずかな 比率である。 中等専門学校レベル以上を持つ労働者のうち、科学・教育及び訓練が28.28%と 最大であり、次いで、ビジネス管理が21.80%、医療が 12.33%、農林水産業が 5.16%、建設・建築が 3.69%、輸送が 2.65%、社会科学が 2.24%、その他が 1% 以下である。 短大レベルの知識を持つ労働者のうち、科学・教育及び訓練が73.94%と最大で あり、次いで、ビジネス管理が5.15%、工芸が 5.09%、人文科学が 3.05%、農 林水産業が0.69%、その他が 0.2%~2%である。 大卒以上の資格を持つ労働者のうち、ビジネス管理が27.20%と最大であり、次 いで、科学・教育及び訓練が14.71%、工芸が 9.21%、人文科学が 6.83%、医療 が6.34%、建設・建築が 6.1%、農林水産業が 4.8%、社会科学が 3.17%、自然 科学が3.02%である。 経済分野ごとの技術労働者の構造は以下のとおりである。
(1) 国営部門の労働者は減少する傾向にあるが、国営部門における技術労働者 の割合は依然として大きく、2003 年には 69.82%を占めている。民間企業 及び自営業の技術労働者は、ベトナム全土の全労働者の21.37%を占める に過ぎない。 (2) 2003 年に、農林水産業に従事する労働者はベトナム全土で 69%を占める。 しかし、農林水産業における技術労働者は技術労働者全体の12.19%であ り、農林水産業に従事する労働者の3%に過ぎない。ベトナム全土の技術 労働者のうち、17.85%が工業及び建設部門で働き、69.97%がサービス部 門で働いている。 表 2-16 企業形態と経済分野ごとの技術労働者の割合 (単位:%) 技術労働者 技術 労働者 職業訓練 学校 技術専門 学校 短期大学・ 大学 大学院 合計 I. 企業形態 国営 69.82 22.32 36.14 40.30 1.24 100.00 集団 5.83 44.27 43.91 11.65 0.17 100.00 民間 1.55 38.99 22.54 37.93 0.54 100.00 自営 19.82 52.85 33.08 14.00 0.07 100.00 混合 1.94 28.93 18.65 51.52 0.90 100.00 外国企業 1.04 24.60 15.20 57.92 2.28 100.00 合計 100.00 30.06 35.26 33.74 0.94 100.00 II. 経済分野 農業 12.19 43.59 43.97 12.38 0.06 100.00 工業 17.85 42.84 27.33 29.45 0.38 100.00 サービス 69.96 24.43 35.76 38.56 1.25 100.00 合計 100.00 30.06 35.26 33.74 0.94 100.00 出典:Statistical Data of Labor and Employment in Viet Nam 2004, 2005 and2006, MOLISA 2007
労働力における技術労働者の割合は徐々に増加しているが、その数は依然 として少ない。また、技術労働者の割合は地域によって大きく異なり、主 に都市部、工業団地、急速に成長を遂げている地域に集中している。
2.2 賃金
2.2.1 法定最低賃金の最近の動向 労働市場における給与と賃金は、給与と賃金に関する国家政策に基づき決定され、 とりわけ、最低賃金水準は制度化されている。ベトナムにおける最低賃金は、政 府によって規定される単純労働者に対して支払われる最低額の賃金とされてい る。最低賃金を基礎として、雇用契約に従い、職種や労働条件に基づいて、雇用 者は労働者に賃金を支払う。 ベトナムには一般の最低賃金のほかに企業の最低賃金があり、1992 年の外国投 資企業の最低賃金は、2 つの地域に区分して規定された。(ハノイとホーチミン 市が35USD/月、その他の省市が 30USD/月。)1996 年から 1999 年 9 月までの 間は、以下の4 段階に分けられた。 (1)ハノイとホーチミン市 :45USD/月 (2)その他の都市地域 :40 USD/月 (3)山岳地域及び遠隔地域 :30 USD/月 (4)その他の地域 :35 USD/月 その後、最低賃金はベトナムドン(VND)で設定されるようになり、1999 年 10 月から 2006 年 9 月までそれぞれ、(1) 626,000VND/月、(2) 556,000VND/月、 (3) 417,000VND/月及び (4) 487,000VND/月となった。(当時の為替レートは 1 ドル13,910VND である。) 2006 年 10 月以降は、最低賃金は 3 つの地域区分となり、それぞれ、1 月当たり 87 万 VND、79 万 VND 及び 71 万 VND となった。(当時の為替レートは 1 ド ル16,120VND である)。 国営企業の最低賃金は同じ3 つの地域区分ごとに、それぞれ一般の最低賃金の 1.1 倍、1.2 倍、1.3 倍となっている。2003 年以前は、一般の最低賃金は 1 月当 たり21 万 VND であり、2003 年から 2004 年が 29 万 VND、2004 年から 2006 年9 月が 35 万 VND、2006 年 10 月以降が 45 万 VND となっている。これらの 最低賃金を基礎として、企業は業績と生産効率に従い、労働者に対して賃金を支 払う。 2.2.2 賃金もしくは給与の実態調査結果 政策の改正と共に、労働者の給与と賃金は増加する傾向にある。1993 年から 1998 年の期間、賃金と給与の上昇率は平均で年率 9.4%であったが、同じ期間の 生産性を6.54%上回るものであった。国営企業では、給与と賃金の上昇率は年 率で9.99%であった。ベトナム統計総局の調査によれば、1997 年から 1998 年 の間の技術知識を持たない労働者の賃金は、1 時間当たり 2,600VND であり、 職業技術持つ労働者の賃金は1 時間当たり 2,920VND、大卒以上の知識を持つ 労働者の賃金は1 時間当たり 4,440VND と、技術を持たない労働者の 1.7 倍で あった。雇用者の賃金と給与は企業によって異なる。国営企業では、2003 年の平均月収 は137 万 5,000VND であり、1993 年と比べて 2.75 倍となり、2000 年と比べる と28.25%上昇している。2006 年には 182 万 9,900VND となり、年平均上昇率 は7.17%である。業績の良い企業の賃金や給与は 1993 年と比べて 4~5 倍とな った。2006 年の国営企業の労働者の月給は 2000 年と比べて 2.15 倍となった。 企業法に基づき操業する企業の1 月当たりの平均賃金は 95 万 VND であり、1993 年と比べて3 倍、2000 年と比べて 30%、年平均では 7.23%上昇している。高い 技術を持った技術者の所得は平均所得の5~6 倍となっている。2004 年の平均 賃金は101 万 9,000 ドンであり、7.23%上昇した。 外国投資企業の1 月当たりの平均賃金は、195 万ドンであり、1993 年と比べて 3 倍となり、2000 年と比べると 10.36%上昇し、年平均では 2.6%上昇している。 良い業績を残したマネージャーの所得は平均所得の50~70 倍になっている。 2004 年の平均月収は 200 万 700VND であり、2.6%上昇した。 日雇い労働者などの賃金は、地域、都市と農村、デルタ地域、山岳地域などで大 きく異なる。2003 年の調査結果によれば、賃金は 1 日当たり 15,000VND~ 45,000VND と開きがあり、農村部の賃金は都市部より 15~20%低く、山岳地 域ではさらに低い。 2004 年のベトナム統計総局の家計調査の結果によれば、ベトナムの現在価格で の1 人当たりの平均月収は、48.4 万 VND であり、都市部では 81.54VND と農 村部の2.15 倍になっている。 8 つの地域のうち、最高の平均月収は南東部の 83 万 3,000VND であり、次いで、 紅河デルタの48 万 8,200VND、北東部の 37 万 9,900VND の順であり、最低は 北西部の26 万 5,700VND である。最高の平均月収と最低の平均月収では、3.1 倍の格差がある。
*出典: Statistical Yearbook of Viet Nam 2006. Statistical Publishing House, Hanoi, 2007 表 2-17 現在価格による国営部門での経済活動ごとの 1 人当たり平均月収 (単位:1,000VND) 2004 年 2005 年 2006 年 全体 1421.4 1639.5 1829.9 農林業 1250.4 1126.2 1232.8 漁業 929.1 1142.0 1205.8 採鉱・採石 3108.7 3504.0 3569.0 製造 1544.7 1739.3 1973.1 建設 1361.4 1566.9 1760.1 金融 2790.6 3352.9 3894.3 小売 1467.9 1811.4 1917.0 ホテル・レストラン 1518.1 1852.5 2009.7
*出典:Statistical Yearbook of Viet Nam 2006. Statistical Publishing House, Hanoi, 2007. 都市と農村、男女、地域ごと、経済部門及び職種によって賃金労働者の平均月収 に格差はあるが、その差は決して大きいとはいえない。賃金労働者の所得は依然 として平等主義の特徴を持ち、労働市場の供給と需要を決定する役割を果たして いない。 賃金労働者の所得は徐々に上昇しているが、技術を持たない労働者の平均月収は 依然として低い水準にあり、技術労働者の平均月収よりも低い。2006 年の労働 疾病兵社会問題省労働社会問題研究所による調査によれば、技術を持たない労働 者の賃金も1998 年の 49 万 3,000VND から 2004 年には 64 万 3,000VND と 1.3 倍になった。 2004 年の技術を持たない常勤雇用者の平均月収は 72 万 VND と 1998 年と比べ て1.46 倍となり、日雇い労働者などの技術を持たない労働者の平均月収は 62 万3,000VND であった。技術を持たない常勤雇用者の平均月収は、日雇い労働 者などの技術を持たない労働者の平均月収の1.15 倍となっている。 技術を持たない労働者の平均月収が最も高いのは国営部門であり、2004 年の 77 万2,000VND となった。民間部門の平均月収は 70 万 1,000VND となった。最 低は自営部門で62 万 3,000VND となった。2004 年の所有形態ごとの技術を持 たない労働者の平均月収の最高と最低の格差は1.23 倍であった(表 2-18 参照)。 表 2-18 経済部門と所有形態ごとの技術を持たない労働者の平均月収 (単位:1,000VND/人/月) 1998 年 2002 年 2004 年 経済部門 全体 493 521 643 フォーマル部門 492 647 720 インフォーマル部門 494 502 623 所有形態 国営 517 699 772 集団 398 705 647 民間 494 640 701 自営 494 502 623 外国企業 409 681 717
出所:“Level and Trend of minimum wage in Vietnam” by ILSA of MOLISA, August 2006 技術を持たない労働者の平均月収が最も高い地域はホーチミン市を除く南東部 であり、2004 年には 71 万 3,000VND であった。次いで、ハノイを除く紅河デ
ルタで60 万 7,000VND、最低は北西部の 57 万 5,000VND である。技術を持た ない労働者の平均月収の最高と最低の格差は1.24 倍である。ハノイの技術を持 たない労働者の平均月収は、1998 年の 52 万 2,000VND から 2004 年には 69 万 VND と 1.27 倍になった。ホーチミン市の技術を持たない労働者の平均月収は、 1998 年の 63 万 3,000VND から 2004 年に 83 万 VND と 1.31 倍になり、ハノイ の1.2 倍である。男性の技術を持たない労働者の平均月収は 69 万 5,000VND と 女性の技術を持たない労働者の1.26 倍である。(表 2-19 参照) 表 2-19 地域別・性別の技術を持たない労働者の平均月収 (単位:1000VND/人/月) 1998 年 2002 年 2004 年 地域別 全体 493 521 643 紅河デルタ(ハノイを除く) 410 506 607 北東部 427 390 581 北西部 327 226 575 北部沿海部 385 479 590 南部沿海部 469 532 640 中部高原 600 301 620 南東部(ホーチミン市を除く) 488 611 713 メコンデルタ 515 538 645 ハノイ 542 627 690 ホーチミン市 633 763 830 性別 男性 536 567 695 女性 430 449 551
*出典: “Level and Trend of minimum wage in Vietnam” by ILSA of MOLISA, August 2006 労働者の賃金と所得は過去数年間上昇してきたが、賃金水準は以下の理由により 依然として低い。 (1) 労働者の質と生産性が十分に高くないこと。 (2) 労働供給が需要を上回っていること。 (3) 企業の大部分が質の低い製品を生産していること。 (4) 技術が低く、多くの単純労働者もしくは低い水準の技術を持つ労働者を必 要としていること。
賃金水準は地域や業種によって異なる。雇用者と労働者が同じ職種において賃金 に関して合意に達する共通の労働市場は、ベトナム全土だけでなく各地域におい てもまだみられない。賃金と給与に関して規定するマクロ政策の役割は依然とし て限定的であり、労働市場における賃金と給与を形成する好ましい条件と環境を 作り出しているとはいえない。
2.3 労働時間の現状
ベトナム労働法の規定によれば、1 日あたりの労働時間は 8 時間であり、1 週間の 労働日数は6 日である。1997 年から、法律で規定された 1 週間あたりの労働日数 は企業により5~6 日とへと減少している。国家が管理する組織の労働日数は 1 週 あたり5 日となっている。このように、1 週間あたりの労働時間は 40 時間から 48 時間である。(実際の労働時間は1996 年の 52 時間から 2005 年には 43 時間に減少 している)。2006 年に、都市部の労働者の労働時間は 1 週当たり 46 時間であり、 農村部では42 時間であった。 表 2-20 性別及び都市・農村ごとの 1 週間あたりの平均労働時間 1996 年 2004 年 2005 年 2006 年 全体 52 43 43 43 男性 52 44 43 43 女性 52 43 42 43 都市部 52 46 46 46 農村部 52 42 42 42*出典:Statistical Data of Employment and Unemployment in Viet Nam 1996-2005. Labour Social Publishing House, Hanoi 2006 and MOLISA 2007. 表 2-21 経済部門ごとの労働者の平均労働日数 (単位:日) 全体 都市部 農村部 所有形態 1. 国営 262 262 256 2. 集団 259 267 253 3. 民間 272 274 267 4. 自営 259 270 250 5. 外国企業 283 284 281 合計 261 269 252 経済部門
全体 都市部 農村部
1. 農業 245 244 246
2. 工業 268 269 266
3. サービス 275 276 271
全体 261 269 252
*出典:Statistical Data of Employment and Unemployment in Viet Nam 1996-2005. Labour Social Publishing House, Hanoi 2006 and MOLISA 2007.
2.4 労使関係の現状
2.4.1 労働組合の現状 (1) 労働者を代表する組織:「ベトナム総労働者連盟」(VGCL) 2003 年末現在、ベトナム総労働者連盟には 430 万人が加入しており、そ のうち約100 万人が非国営部門の企業に属している。2006 年 7 月には、 連盟者数は630 万人となり、1 年間で約 100 万人増加していることになる。 ベトナム総労働者連盟にはベトナムの全労働者の10%強が加入している。 ベトナム総労働者連盟によれば、加入率は部門ごとに異なっており、公的 部門では95%の加入率であり、国営部門では 90%、外国企業では 50%、 国内の民間部門では30%となっている。企業レベルの組合は 61,500 あり、 そのうち10,500 が非国営部門である。企業レベルの組織は、623 の県レベ ルの組織もしくは436 の地域の部門ごとの労働組合に属しており、それら はベトナム総労働者連盟を構成する64 の省市レベルの連盟もしくは 20 の 中央レベルの部門ごとの労働組合に属している。(大企業の労働組合の中に は直接省市レベルの連盟もしくは中央レベルの部門ごとの労働組合に属し ている組合もある。)部門ごとの労働組合で最大のものは工業労働者国家組 合であり、約50 万人が加盟している。 (2) 企業の団体合意 ベトナムでは団体合意に関して報告するシステムはなく、それゆえ、実際 の団体合意に関して把握はなされていない。2003 年の国際労働組織(ILO) へのベトナム総労働連盟の報告では、国営企業の56%、外国投資企業の 36%、民間企業の 20%で団体合意がなされていた。企業において団体合意 がなされない要因には、(1)労働組合組織の脆弱さ、(2)雇用者が義務を 果たしたがらないこと及び最低限の法律基準以上の規則を含まない団体合 意の調印が無意味であると考えていることなどがあげられる。 2007 年 7 月の労働疾病兵社会問題省のストライキに関する調査によれば、 作成された団体合意のうち90%以上が単なる労働法の複製に過ぎなかっ た。しかし、なかには冠婚葬祭にかかわる追加的な規定を含む団体合意な どや、食事手当や通勤手当、社員旅行、休暇時の賞与を含むものもある。団体合意には、労働者の競争を促すことや、素行の悪い労働者に注意また は懲戒するといった労働組合との合意を含めることもできる。団体合意は 賃金や賞与の規模を含まなければならないが、これらは雇用者が社会保障 費や契約解除手当てなどの支払を最小とするように最小水準に設定しなけ ればならない。賃金に関する異なる合意がある場合、企業はより高い賃金 を支払わなければならない。
2.5 募集、採用、雇用、解雇の現状
(1) 募集、採用、雇用 労働法典によれば、労働者は、希望、能力及び技術に基づき、雇用者により、 直接もしくは雇用事務所を通じて採用される。(労働法典第16 条)また、雇 用者は労働者の知識と技術を向上させる義務を有し、企業内の他の部署へ配置 換えを行う際には再教育を行う義務を有する。(同第23 条)企業で働くため の訓練を受ける前に、労働者は企業で働く条件に関して合意しなければならな い。そして、職業訓練の後、雇用契約に署名しなければならない。労働者が職 業訓練の後、企業で働くことを望まない場合、労働者は訓練費用を補償しなけ ればならない。(同第24 条) ベトナムでは若年層が多い人口構造のため、毎年、130 万人から 150 万人が 労働人口に加わっており、毎年、約160 万の新たな雇用が生み出されている。 (失業者や前年に就業することができなかった者も含む。)しかし、雇用関係 を結び就労する労働者は、労働者全体の28%に過ぎない 加えて、ベトナムの企業の大部分は中小企業であり、それらの企業による雇用 は依然限定的である。2006 年に行われた 815 の大企業での調査によれば、平 均で100 人以上を新たに雇用していることが分かったが、中小企業により新 たに雇用されている労働者数は極めて少ない。新たに雇用される労働者のうち、 技術を持つ労働者は31%に過ぎない。 規定によれば、雇用者は技術を向上させるため技術を持たない労働者の訓練を 行う義務を有する。しかし、企業内における訓練は、生産の圧力もあり依然と して限定的である。 職業センター、地方の労働当局を通じた雇用、企業による直接の雇用、マスメ ディアを通じた紹介による雇用などの方法があるが、企業による直接の雇用が 現在ベトナムでは主要な方法となっている。その理由は、雇用事務所の活動が 依然として限定的であることがあげられる。 労働法によれば、雇用者は、労働、技術、能力、生産性の真の価値に見合った 賃金の支払を労働者に行わなければならない。少なくとも、賃金の支払は企業 の最低賃金を上回らなければならない。しかし、実際、多くの企業において労 働者への支払は最低賃金水準にあり、労働争議やストライキの原因の一つとな っている。実際の労働者への支払いは、労働者の資格や技術に基づいて企業に より規定されている。法律によれば、企業との3 カ月以上の雇用契約に署名した後、労働者は社会 保障に加入しなければならない。(第141 条)雇用者は、企業賃金基金の 15% に相当する額を社会保障として納付しなければならず、労働者は賃金の5%に 相当する額を社会保障として納付しなければならない。(第149 条)毎月、雇 用者は、社会保障事務所へ雇用者と労働者からの社会保障を納付する義務を有 する。しかし、実際には、企業はこれらの規定を真摯に実行しておらず、労働 者数の虚偽申告や社会保障の滞納、労働者からの社会保障費の着服などが散見 され、これらも労働争議やストライキの原因の一つとなっている。 (2) 解雇 労働法第85 条によれば、解雇は以下の場合合法的に行うことができる。(a) 労働者が窃盗、横領、技術及び企業秘密の漏洩、企業の資産や利益を著しく損 なわせる行為を行った場合、(b)労働者の昇給の時期を合法的に先送りし、 合法的に職場替えを行ったにもかかわらず、労働者が労働規則の違反を再度行 った場合。(c)1 月当たり 5 日、1 年当たり 20 日以上無断欠席した場合。 労働者を解雇した後、雇用者は省市の労働当局へ通知しなければならない。合 法的な解雇の手順を進めるなかで、雇用者は労働者による違反を証明しなけれ ばならない。 しかし、実際には、解雇は必ずしも法律に従っておらず、正しい手順で行われ ていないことが多い。労働者の解雇を望む場合、雇用者は労働者解雇が合法的 である旨主張することが多く、これもストライキの理由の一つとなっている。
2.6 転職の現状
ベトナムの法律によれば、労働者は転職の自由を有する。現在のベトナムにおける 転職の傾向は以下のとおりである。 (1) 農林水産部門から工業及びサービス部門への転職の傾向が徐々に進んでいる が、今後、その傾向は高まると見られている。農村部から都市部や工業団地へ の転職の傾向は、ベトナムの工業化と都市化の過程において必然である。 (2) 国営部門から民間部門や外国企業への転職の傾向は、ベトナムが国際経済に参 入するなかでより鮮明になりつつある。 (3) 自営から企業における賃金労働者への転職の傾向が進んでいる。 (4) 雇用契約を結んだ上での雇用は、安定した雇用環境であり、転職率は雇用契約 を結んでいない場合と比べて低い。(それぞれの転職率は25%と 36%)。 (5) 短大卒以上の労働者の転職率が 41%と最も高く、技術労働者の資格を持つ労 働者の転職率が35%と最も低い。 (6) 転職の理由はさまざまであり、技術労働者の主な転職の理由は給与である。 (51%~58%) (7) 高等専門学校や短大以上の学歴を持つ労働者の主な転職の理由は、より資格に 見合った就職である。(35~38%)【参考文献】
1. Dr. Mac Van Tien, 2007, “Report of skilled worker in Vietnam”, GDVT, Ha Noi, 2007.
2. Dr. Mac Van Tien, 2004, “Development of skilled worker in Vietnam- Theory and Practice”. Labour - Social Publishing House, Ha Noi, 2004.
3. Dr. Nguyen Huu Dzung, 2004, “Labour Market and vµ Vocational Guide Line for Youth Worker” Labour - Social Publishing House, Ha Noi, 2005.
4. Hop, Thach Bich, 2004, “Report on Labour Dispute and Strike in Dong Nai, Binh Duong and Ho Chi Minh City”, Hanoi, May 5, 2004.
5. Socialist Republic of Vietnam (2006) “Labour Code of Socialist Republic of Vietnam”
6. Ministry of Labour, Invalids and Social Affairs, 2006, “Statistical Data of Employment and Unemployment in Vietnam 1996-2005”. Labour - Social Publishing House, Ha Noi, 2006.
7. Ministry of Labour, Invalids and Social Affairs, 2006, “Statistical Data of Employment and Unemployment in Vietnam in 2006”, Ha noi, 2007 8. General Statistical Office, “Statistical Data of Labour and Employment in
Vietnam 2001, 2004, 2005 and 2006”. Statistical Publishing House, Hanoi, 2007.
9. “Report of Level and Trend of minimum wage in Vietnam” by ILSA of MOLISA, August 2006