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指定管理者が導入された複合公立図書館における空間相互のつながりと利用行動の展開 [ PDF

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33-1        

指定管理者制度が導入された複合公立図書館における

空間相互のつながりと利用行動の展開

中野 雄貴 1. 研究の背景と目的  公立図書館を取り巻く環境は大きく変化している。 高度経済成長期以降の数的および規模の拡大期を経て 始まった複合図書館の増加と、行政・構造改革の推進、 生涯学習体系への移行による運営形態の変化は、ます ます顕著になっている1)2) 。特に、2003 年の地方自治 法改正に伴う指定管理者制度の創設は民間企業への公 共施設の管理委託を可能としたものの、依然多くの課 題を抱えていると言え、日本図書館協会は図書館の設 置目的達成のためには設置者による直接管理・運営が 望ましいことを表明している3) 。  一方で、指定管理者を導入する公立図書館は増え続 けており、517 館(全体の約 15%)で導入されている4)。 さらに、従来の管理運営業務にとどまらず、指定管理 者が施設の計画段階から積極的に関与する事例も見ら れるようになった5) 。こうした動向は、施設の利用促 進や施設内における利用行動の広がりが図れる一方で、 管理区分の明確化や運営上の調整が課題となる複合図 書館における影響が大きいと考えられるが、既往研究 では指定管理者の運営上の問題に対する指摘や複合図 書館における利用実態の分析にとどまり、指定管理者 を含む施設の運営体制とそれに伴う施設計画、利用者 の行動との関係について言及した研究は見られない。  本研究では、指定管理者が導入された複合公立図書 館を対象に、空間相互のつながりと利用行動の展開を 分析することで、指定管理者の導入が施設計画と利用 者の行動に与える影響について明らかにし、今後の図 書館建築の計画に資する知見を得ることを目的とする。 2. 研究の方法 2-1. 調査対象  本研究では、2015 年以降新築もしくは改修された 全国の公立図書館 42 館のうち、開館当初より指定管 理者を導入した複合図書館 7 館を対象とする。調査対 象の選定には図書館関連の雑誌等を用い、該当する図 書館の図面情報は建築関連の雑誌等から収集した。 2-2. 調査方法  本研究ではまず、収集した各種図面や自治体 HP 等 による資料調査から調査対象館の施設整備プロセスを 把握した。このうち指定管理者による設計業務への積 極的な関与が見られ、特徴的な計画が行われた 2 館に ついては、自治体担当者・図書館代表者へのヒアリン グ調査を通して、施設の運営体制とそれに伴う施設計 画への影響を把握し、設置された家具の配置や種類、 書架分類と階構成の関係についての分析を通して、運 営に基づく空間的特徴を把握した。また、来館者に対 するアンケート調査、施設利用者を対象とした巡回観 察調査を通してその利用実態を明らかにした ( 表 1)。 表1.調査概要 図1.調査対象館の概要 調査 資料調査 2016.04-09 2016.10-11 2016.10-11 2016.10-11 2016.10-11 ヒアリング調査② ヒアリング調査① アンケート調査 巡回観察調査 時期 ( 年 . 月 ) 概要 対象館の技術提案書や施設台帳、実施図面を収集 し、整備プロセスと平面計画の特徴を把握する。 行政の担当者に対象館の指定管理者導入の経緯と 施設整備の流れについて当時の状況を伺う。 予め計画したルートを 30 分間隔で巡回し、各エ リアでの座席利用の分布と行動を記録する。 指定管理者の代表者に対象館の施設整備の流れに ついて当時の状況を伺う。 来館者に施設の利用状況についてアンケートを行 い、その特徴を把握する。 Eb 館 Tg 館 建設年月 2015.10 2926 ㎡ 1230 ㎡ 3642 ㎡ 2555 ㎡ 地上4階 地下1階 RC 造 C 社 T 社 JV 商業 330000 冊 230000 冊 公募 改修 敷地面積 建築面積 延床面積 図書館面積 階数 構造 指定管理者 複合用途 蔵書冊数 開架冊数 募集形式 新築 or 改修 神奈川 所在地 2016.3 4052 ㎡ 2659 ㎡ 7013 ㎡ 3342 ㎡ 地上3階 S 造 C 社 商業 245000 冊 220000 冊 非公募 宮城 建設年月 敷地面積 建築面積 延床面積 図書館面積 階数 構造 指定管理者 複合用途 蔵書冊数 開架冊数 募集形式 所在地 新築 新築 or 改修 0 BDS 5 10 20 40 m 1F 書店 書店 多目的 多目的 児童書 児童書 カフェ カフェ 閲覧 閲覧 閲覧閲覧 吹抜 吹抜 吹抜 吹抜 閲覧 閲覧 閲覧 閲覧 学習室 1 学習室 1 学習室 2 学習室 2 2F 3F 4F BF 各エリア テラス 1F 2F 3F 0 5 10 20 40 m 書店 書店 レストラン レストラン 閲覧・学習エリア 閲覧・学習エリア ギャラリーギャラリー レンタル レンタル 吹抜吹抜 吹抜 吹抜 共用部 共用部 閲覧 閲覧 閲覧閲覧 新聞新聞 カフェ カフェ コンビニ コンビニ 児童書 児童書 BDS 各エリア テラス

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33-2  Eb 館 Tg 館 図書館 Eb 市 C 社 T 社 JV 図書館 カフェ 書店 カフェ 書店 レストラン コンビニ Tg 市 再開発会社 C 社 C 社 BDS 管理委託 管理委託 出資 出資 管理委託 管理委託 運営 運営 別会社 別会社 別会社別会社 賃貸 賃貸 子会社 子会社 賃貸 賃貸 運営 運営 ライセンス契約 ライセンス契約 ライセンス契約ライセンス契約 子会社 子会社 目的外使用 目的外使用 図3.館内の家具の組合せと座席数 3. 施設整備プロセスの特徴  指定管理者制度導入以降、図書館整備事業には大き く 3 つの事業形態が見られる5) 。特に、C 社の図書館 事業への参入から、指定管理者が行政と協働して構想 を行い、設計者を選定する形態が見られるようになっ た。これは C 社が空間計画から運営までを手掛けるこ とができる企画会社としての側面を持つためである。 Eb 館では、既存図書館の改修にあたり設計段階から 事業者の持つノウハウやアイデアを取り入れ、より円 滑な管理運営につなげるため、設計業務と施設機能に 関する提案が指定管理者に対し要求された。公募の結 果、空間計画のできる C 社、既存図書館で業務委託を 請け負ていた T 社、設計会社が共同事業体を組み、指 定管理者に選定されている。Tg 館では、旧図書館の 移転新築が決まる以前に、C 社の運営する書店の出店 が決まったことを受け、周辺地区再開発事業のアドバ イザーとして C 社と Tg 市が官民連携協定を結んでいた。 その後、市民の声により図書館の移転新築が決まる中 で、複合施設としてより合理的な管理運営が可能にな るという観点から C 社が指定管理者に選定されている。 4. 運営体制と施設計画の特徴 4-1. 運営体制の特徴  調査対象 2 館の運営体制の概要を図 2 に示す。Eb 館 では目的外使用のもと C 社とライセンス契約を結ぶカ フェや子会社の運営する書店を複合しているため、職 員は全て C 社の職員であり、指定管理者を中心に一体 的な運営体制が構築されている。一方、Tg 館は図書 館を含む周辺地区再開発事業の施主である再開発会社 と Tg 市が共同で建物を所有しており、そこから商業 区画の管理者として C 社が商業区画全体を借り、さら に各店舗がテナント契約を結ぶ形で運営している。そ のため、指定管理者としての業務と商業区画の管理者 としての業務は一体化できず、それぞれの施設機能が 並列的な運営体制となっている。これは、商業区画と して計画された面積が大きく、カフェや書店を目的外 使用として設置できなかったためでもある。以上の運 営体制に基づき、Eb 館では各エリアがブックディテ クションシステム(以下、BDS)内で連続した計画となっ ており、Tg 館では C 社以外の民間企業が運営するコン ビニ・レストランとの間に設けられた BDS や共用部に よって緩やかに分節された計画となっている。しかし、 コンビニやレストランはその性質上 BDS で区切られて いることの影響が少ないことから、利用者にとっては 両館ともに館内を自由に動き回ることのできる計画と なっていると言える。 4-2. 調査対象館の空間的特徴  まず、2 館に置かれた椅子と机の種類とその組合せ の内訳を図 3 に示す。Eb 館では各階を通じて椅子席が 多く、ソファ席はあまり見られない。Tg 館では下階 ほどソファ席の割合が高く、上階ほど椅子席の割合が 増加する。これは Tg 館が「家」のような図書館を運営 のコンセプトに、各階でリビング、書斎、勉強部屋の ような空間が目指されているためである。また、両館 のカフェ席はカフェ購入者が優先的に座れるように なっており、学習室を除く館内のカウンター席は電源 が設置され、利用者は自由に使えるようになっている。  次に、両館における書架分類と階構成の関係を図 4 に示す。C 社が指定管理者となっている図書館では一 般的に採用される日本十進分類法ではなく、独自の分 類法が採用されており、調査対象 2 館でも独自に 29 種 類の分類が行われている。特に、グループⅠ・Ⅱは館 内の中心的な位置に配架される。 椅子 スツール 1人掛ソファ 2人以上掛の ソファ 壁面ソファ Eb 館 閲覧BF 書店 カフェ1F多目的新聞 閲覧2F 閲覧学習室 1 学習室 23F 児童書4F Tg 館 閲覧 1Fカフェ 閲覧 2F 3F 凡例 座席数 机の種類 2人掛テーブル 2人掛以上のテーブル 5 席 20 席 40 席 カウンター サイドテーブル ローテーブル 無し 共用部 書店 児童書 新聞 閲覧・学習 ギャラリー 1人掛ソファ スツール 椅子 2人以上掛の ソファ 壁面ソファ 30 30 20 20 16 16 18 18 3232 3030 1919 1818 5050 14 14 24 24 8 8 36 36 16 16 88 66 10 10 88 88 66 88 88 25 25 10 10 44 44 44 88 12 12 1212 10 10 88 22 44 11 19 19 30 30 18 18 2323 2424 2525 4444 99 11 77 66 44 77 99 55 13 13 66 66 66 44 14 14 図4.書架分類と階構成の関係 Eb 館 Tg 館 料理 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑰ ⑱ ⑲ ⑳ ㉑ ㉒ ㉓ ㉔ ㉕ ㉖ ㉗ ㉘ ㉙ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ 旅行 住まいと暮らし 美容・健康 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ その他 スポーツ・アウトドア 趣味実用 自然科学 建築 人文 文芸・文学書 ファッション アート 社会 産業 語学・参考書 法律 技術 教育 医療・看護福祉 歴史・郷土 IT ビジネス 政治国際 経済 児童書 コミック 洋書 雑誌 AV 資料 BF 1F 2F 3F 4F 1F 2F 3F ㉖ ⑩ Ⅴ ㉘ Ⅰ Ⅱ ㉗ ㉙ Ⅲ Ⅳ ㉕ Ⅰ ㉕ ㉙ Ⅱ ㉖ ㉗ ㉘ Ⅲ Ⅳ Ⅴ 図2.運営体制の概要

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33-3  5. 利用実態の分析 5-1. 複合利用の状況と利用空間のつながり  まず、アンケート回答者全体の複合利用の割合を見 てみると、Eb 館では複合利用が約 4 割であり、Tg 館で は約 6 割である ( 図 6)。さらに、利用空間のつながり を見ると、両館ともに 20 人以上の複合利用が見られ るのは 1 〜 2 階の近接する空間における利用であるこ とから、低層部では近接した空間相互での複合利用が 起こりやすいため、階構成の異なる両館で、その割合 に差が生じたと考えられる。特に、Tg 館では、閲覧 室や書店、レンタルの複合利用が多く見られる。また、 Eb 館では BF・1F・2F 閲覧で複合利用が多く見られる。 これは BF 閲覧と 2F 閲覧では、配架してある書架分類 が同じであり、BF 閲覧と 1F 閲覧には、閲覧専用席が 設けてあるためと考えられる。  次に、書店に着目すると、両館とも隣接した空間と の複合利用が多く見られ、Tg 館では 2F・3F 閲覧など 離れた空間との複合利用も多く見られる。両館では、 書店の面積に大きな差があり、商品数の差異の影響が 考えられるが、利用行動が広がりやすい空間として書 店が複合利用されていることが考えられる。  両館の学習エリアに着目すると、半数近くが単独利 用であるが、複合利用の多い空間は、Eb 館ではカフェ、 Tg 館ではカフェやコンビニとなっており、学習など 図書館の環境を目的とする利用者が飲み物等の購入や、 休憩する場合に利用していることが考えられる。  さらに、Tg 館にのみ設置されているコンビニとレ ストランに着目すると、その大半が複合利用であり、 BDS 等で区切られていることの影響は見られない。特 に、コンビニでは各階閲覧室や書店、レンタルとの利 用が多く、カフェとの複合利用が少ないことから利用 者により使い分けがされていると考えられる。また、 レストランはレンタルとの複合利用が多いことから、 休日の時間を過ごす利用者が多いことが考えられる。 5-2. 利用者の来館目的  次に、アンケート回答者の利用した施設と座席の関 係に着目すると、両館ともに図書館の利用者は約 7 割 程だが、そのうち座席を利用していないという回答が 約 5 〜 6 割を占めており、回答者全体でも約 5 割を占 めている ( 図 7)。こうした立ち寄り型の利用者の利用 目的を把握するため、アンケートの回答をもとに、来 館目的を解決・閲覧・環境・休息・限定・その他の 6 項目に分類し、回答者全体の来館目的とその割合を比 較した ( 図 8)。本の返却等の限定目的の利用者につい て見ると、ほとんどが座席を利用していないことが分 図5.複合利用の状況と利用空間のつながり かるものの、他の項目については同様の傾向を示して おり、座席占有率によらず利用者の半数程度は座席を 利用せず施設を利用していることが考えられる。 5-3. 主要空間別に見た来館者の行動  続いて、館内巡回調査をもとに、利用者の座席にお ける行動を読書・勉強・作業・休息・不在・読み聞か せの 6 項目に分類し、その割合の変化を示す ( 図 9)。  Eb 館では休日・平日ともに勉強を行う利用者が館 表2.実態調査概要 BF 1F 2F 3F 4F BF 1F 2F 3F 4F 33 66 28 28 21 21 15 15 1212 33 33 33 17 17 77 22 12 12 11 11 33 77 55 33 33 66 33 11 55 33 33 22 22 44 11 26 26 10 10 77 44 10 10 58 62 54 37 23 10 15 12 26 12 13 22 19 2 18 32 15 12 BF 閲覧 書店 カフェ 1F 閲覧 2F 閲覧 3F 閲覧 学習室 1 学習室 2 児童書 1F 1F 2F2F 3F3F 30 30 20 20 11 33 11 21 21 22 11 17 17 11 11 22 33 30 30 88 22 12 12 11 55 44 77 17 17 33 12 12 22 1414 22 12 12 77 44 11 44 33 66 11 11 66 11 22 11 16 16 11 15 15 66 18 18 23 23 17 17 1616 41 41 443939 44 202044 88 33 55 33 11 11 11 34 42 89 29 79 39 10 47 30 13 4 12 3 7 12 6 15 18 10 8 1 4 コンビニ カフェ 書店 児童書 1F 閲覧 2F閲覧・新聞 共用部 レンタル 3F 閲覧 学習 ギャラリー レストラン 複合利用:39.9% 複合利用:39.9% 複合利用:64.2% 複合利用:64.2% 単独利用:51.3% 単独利用:51.3% 8.7% 8.7% 単独利用:34.9% 単独利用:34.9% 0.8% 0.8% 利用した 空間の数 利用した 空間の数 Eb 館 Tg 館 回答者数 平日 :123 人 休日 :142 人 回答者数 平日 :103 人 休日 :135 人 凡例 複合利用の人数 単独利用の人数 隣接複合利用非隣接複合利用 20 人 5 人 1 人 入口 2 2 3 45 0 1 3 4 5 6 1 7 0 6 実態調査 調査日程 472(133) 席 362(28) 席 17 回 5281 人 3252 人 来館者 100 万人 突破セレモニー 隣接する施設で イベントの開催 17 回 3280 人 1861 人 142 人 123 人 135 人 103 人 09:30-20:00 (09:00-21:00) (09:00-21:30)09:30-20:00 436(10) 席 調査時間 ( 開館時間 ) 座席数 ( テラス席 ) プロットした人数 アンケート回答者数 備考 巡回回数 Eb 館 Tg 館 2016.10.16.( 日 ) 曇 2016.10.17.( 月 ) 雨 2016.10.30.( 日 ) 晴 2016.10.31.( 月 ) 晴

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33-4  図8.来館者の利用座席と座席における行動 閲覧 62 書店12 カフェ80 児童書32 閲覧80 新聞23共用部22 閲覧・学習エリア109 ギャラリーテラス1610 書店 Eb 館 Tg 館 平日 09:30 10:30 10:00 11:00 13:00 11:30 13:30 14:30 14:00 15:00 16:00 15:30 16:30 18:30 18:00 19:00 19:30 休日 平日 休日 09:30 10:30 10:00 11:00 13:00 11:30 13:30 14:30 14:00 15:00 16:00 15:30 16:30 18:30 18:00 19:00 19:30 09:30 10:30 10:00 11:00 13:00 11:30 13:30 14:30 14:00 15:00 16:00 15:30 16:30 18:30 18:00 19:00 19:30 09:30 10:30 10:00 11:00 13:00 11:30 13:30 14:30 14:00 15:00 16:00 15:30 16:30 18:30 18:00 19:00 19:30 凡例 BF 1F 2F 3F 4F 1F 3F 4F 閲覧 カフェ 多目的閲覧 閲覧 閲覧 学習室1 学習室2 児童書 テラス テラス テラス 座席数 N=472 座席数 N=436 21 9 65 26 14 38 6 47 69 39 62 38 38 1F 2F 3F 1F 閲覧 62 書店12 カフェ80 児童書32 閲覧80 新聞23共用部22 閲覧・学習エリア109 ギャラリーテラス1610 雨天につき利用不可 28 28 書店 読書 勉強 作業 休息 不在 読み聞かせ 内全体に広がっている。これは学習室に座れない利用 者が他の空間を利用しているためであるが、調査時、 周辺の学校が定期テスト期間中であったことが大きく 影響している。Tg 館では勉強を行う利用者は学習エ リアと共用部に集中しているが、学習エリアが満席に 近い状態でも他エリアで勉強を行う利用者が見られな い。これは、椅子席の多くある空間が利用されている ことから、配置される家具の種類の影響によるものと 考えられる。また、両館ともにカフェ・物販エリア上 部の吹抜けに面したカウンター席の利用において、平 日は作業と学習が、休日は学習が多く見られる。これ は電源が設置された座席の占有率の影響によるものと 考えられ、無料で電源が利用できる座席に座れない場 合にカフェの商品を購入する必要のあるカフェ席を利 用し、電源が必要な作業等を行っていると考えられる。 6. まとめ  以上より、本研究では以下のことを明らかにした。  まず、調査対象 2 館では、1) より円滑に、かつ合理 的な管理運営業務を図るため指定管理者の設計業務へ の関与が行われたこと、さらに 2)一つの事業者を中 心に一体的な運営体制とすることで、BDS 内で連続し た計画が行いやすくなること、しかし、複合する施設 機能の性質によっては並列的な運営体制でもその影響 は少なくできること。次に、アンケート調査から、3) 低層部では近接した空間相互での複合利用が起こりや すいこと、特に、図書館・書店・レンタルショップな どを近接させることで、複合利用が多く見られること、 また、書店は隣接した空間との複合利用が多いこと、4) 図書館の環境を目的とする利用者はカフェやコンビニ の複合利用は見られるものの、他の空間の利用が少な いこと、5) カフェとコンビニが複合化されている場 合には利用者による使い分けが見られること、続いて、 館内巡回調査から、6)設置される家具の種類が座席占 有率が高い場合における館内の利用行動の広がりに影 響を与えること、特に椅子席は学習のために利用され やすく、電源が設置された席では、作業や学習のため に利用されやすいこと。今後、利用者の半数程度占め ていると考えられる立ち寄り型の利用行動についてさ らに詳細に捉える必要がある。 図6.来館者の利用した施設と座席の関係 図7.座席を利用していない来館者の来館目的 Eb 館 N=265 人 ■全体 ■席利用無し 解決 解決 閲覧 閲覧 環境 環境 休息 休息 限定 限定 その他 その他 解決 解決 閲覧 閲覧 環境 環境 休息 休息 限定 限定 その他 その他 N=238 人 ■全体 ■席利用無し Tg 館 23.0% 23.0% 18.9% 18.9% 22.3% 22.3% 4.6% 4.6% 10.5% 10.5% 22.7% 22.7% 10.1% 10.1% 18.9% 18.9% 15.8% 15.8% 11.7% 11.7% 1.4% 1.4% 16.6% 16.6% 40 40 3030 2020 4040 3030 2020 謝辞 調査にあたり、各自治体の関係者の方々、ならびに各図書館の方々には多大なるご協力をいただきまし た。ここに記して深謝いたします。 参考文献 1)西川馨:『図書館建築発展史-戦後のめざましい発展をもたらしたものは何か-』.丸善プラネット .2010 2) 田村俊作・小川俊彦:『公共図書館の論点整理』. 勁草書房 .2008 3) 文部化科学省生涯学習政策局社会教育課:「図書館の設置及び運営上の望ましい基準 ( 平成 24 年文部 科学省告示第 172 号 ) について」2012 4) 文部科学省「社会教育調査」 5) 指定管理者制度導入以降の公共図書館の整備状況と利用実態 2015 年 中村勇翔 Eb 館 席利用なし 2 31 5 70 16 126(46%) 90(33%) 18(7%) 22(8%) 18(7%) 7(3%) 41(15%) 16(6%) 125(46%) 37(14%) 48(18%) 274 1 6 4 8 1 1 10 1 31 1 3 47 37 130(54%) 69(29%) 4(2%) 23(9%) 0 15(6%) 0 241 4(2%) 1(0%) 12(5%) 15(6%) 2(1%) 2(1%) 2(1%) 41(17%) 12(5%) 8(3%) 3(1%) 77(32%) 1(0%) 61(25%) 5 1 8 10 28 1 1 1 6 5 1 2 2 4 1 1 5 3 1 1 1 2 4 7 16 5 2 2 7 3 44 30 3 1 4 3 3 3 4 7 2 LBC LBCS LBSR LBC LBS LBR LCS LCR LB LC LS LR L 席のみ その他 L…図書館 B…書店 C…カフェ S…コンビニ R…レストラン LB LC L 席のみ その他 小計 小計 図書館 席利用あり 席利用あり 利用されている座席数 ( 席 ) 利用されている座席数 ( 席 ) 利 用 し た 施 設 利 用 し た 施 設 カフェ テラス 書店 席利用なし 図書館 書店 カフェ コンビニレストラン テラス Tg 館 小計 小計

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