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密教文化 Vol. 1961 No. 56 001大山 公淳「慈覚大師の密教 P1-14」

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(1)

こ の 文 は 約 束 の ま ま に 書 い た け れ ど 大 正 の 末 に 一 度 発 表 し た こ と が あ る 。 さ れ ど 既 に 年 久 し く 一 般 に 見 ら れ な い の で こ こ に 改 め て 取 り ま と め 参 考 に 資 す る こ と に し た 。 是 正 さ る る を 得 ば 幸 甚 で あ る 。 予 は 日 本 印 度 学 仏 教 学 会 報 ( 一 六 ・ 昭 和 三 五 年 一 月 ) に 伝 教 大 師 の 密 教 観 を あ ら わ し 、 次 い で 中 野 教 授 古 稀 記 念 論 文 集 と 本 誌 第 五 十 一 号 ( 昭 和 三 五・ 一 二 ) と に 比 叡 山 五 大 院 安 然 和 尚 の 略 伝 と そ の 密 教 観 と を 出 し た 。 そ の 両 者 の 思 想 を 結 び つ け る も の は 今 の 慈 覚 大 師 と 智 証 大 師 と で あ る 。 慈 覚 大 師 の 伝 に つ い て は ﹁ 慈 覚 大 師 伝 ﹂ 一 部 に ゆ ず る 。 そ の 書 は 寛 平 入 道 親 王 真 寂 ( 八 八 六-九 二 七 ) の 遺 志 を 受 け て 源 英 明 が 増 補 撰 述 し 小 野 道 風 に 書 せ し め て 比 叡 山 へ 送 つ た と 伝 え る 書 で 、 延 喜 十 六 年 ( 九 一 六 ) ま で の 記 事 を 出 し て い る 。 よ つ て 今 の 大 師 入 寂 後 五 十 二 年 に 完 成 し た の で 信 用 す る に 足 る と 考 え る 。 も つ と も 細 部 に い た つ て は 分 明 し て い な い 点 も あ る が 今 は そ れ が 目 的 で な い の で 略 す 。 一 大 乗 (1) 今 の 大 師 の 著 述 に 成 る 金 剛 頂 経 疏 巻 一 に 大 乗 と い う 語 の 意 義 を 考 察 す る に 際 し 理 趣 釈 ・ 善 戒 経 ・ 一 行 阿 闇 梨 な ど の 所 述 (2) を 引 証 し て い る 。 先 ず 理 趣 釈 に は 次 の 如 き 七 説 を 出 し て 大 乗 と い う 語 の 意 味 を 詮 明 し て あ る 。 一 法 大 。 二 心 大 ・ 三 勝 解 大 ・ 四 意 楽 大 ・ 五 資 糧 大 ・ 六 時 勝 大 ・ 七 究 寛 大 に て 諸 ボ サ ツ は (3) か か る 大 乗 を 受 け る の で 無 上 菩 提 を 証 得 す る と 説 き 、 善 戒 経 に は 大 乗 に 七 事 あ り と し て 一 に 法 大 ー ボ サ ツ の 法 蔵 は 十 二 部 経 中 最 大 最 上 で あ る 。 二 ・ 心 大 ー ア ノ ク タ ラ サ ン ミ ヤ ク サ ン ボ ダ イ 心 Anuttara-Samyak-sambodhi-citta 無 上 正 等 正 覚 慈 覚 大 師 の 密 教

(2)

密 教 文 化 心 ) を 発 す 。 三・ 解 大-ボ サ ツ 蔵 を 解 す る 。 四 ・ 浄 大-ボ サ ツ の 発 心 は そ の 心 清 浄 に し て よ く ア ノ ク タ ラ サ ン ミ ヤ ク サ ン ボ ダ イ を 得 、 五 ・ 荘 厳 大-功 徳 智 恵 の 荘 厳 を 満 足 す る 。 六 ・ 時 大 -三 阿 僧 祇 の 修 行 を 要 す る 。 七 ・ 具 足 大 ー ボ サ ッ 三 十 二 相 八 十 種 好 を 具 足 し て も つ て 自 ら を 荘 厳 し 無 上 正 等 覚 を 得 る 。 そ の 中 前 の 六 を 因 と し 第 七 を 果 と な す 。 次 に 一 行 阿 閣 梨 の 説 は 大 日 経 疏 巻 一 に あ り 一 に 法 大 -諸 仏 の 広 大 な 甚 深 秘 密 の 意 は ビ ル シ ヤ ナ と い う 遍 一 切 所 な る 大 人 の 乗 ず る と こ ろ な の で こ の 名 あ り 。 二 ・ 発 心 大-一 向 に 平 等 の 大 恵 を 志 求 し 更 に 無 尽 の 悲 願 を 発 し 普 く 法 界 の 生 類 に 仏 徳 を 与 え よ う と 誓 う 。 三 ・ 信 解 大 -初 め て 心 の 大 光 明 を 見 無 量 の 功 徳 を 具 足 し 諸 種 の 大 事 を も つ て 衆 生 の 欲 求 す る と こ ろ を 成 就 す る 。 四 ・ 性 大-自 性 清 浄 の 心 は 実 に 金 剛 宝 蔵 の 如 く 一 と し て 欠 減 す る も の な く し か も す べ で の 衆 生 に 共 通 し て 等 し く 存 在 す る 。 五 ・ 依 止 大 -甚 深 に し て 秘 密 な る 教 法 は 法 界 の 衆 生 の 等 し く 共 に 依 り 所 と す る も の で あ る 。 六 ・ 時 大-寿 量 長 遠 と 称 さ れ る 時 間 と 空 間 と を 超 越 し て 無 限 に 躍 動 す る 生 命 で あ る 。 七 ・ 智 大-諸 法 無 辺 際 に し て 虚 空 に 等 し く そ の 心 一 切 の 実 相 を 究 め つ く し て 余 す と こ ろ が な い 。 か く の 如 き 理 由 に よ つ て こ れ を 最 勝 の 大 乗 と い う と て 、 大 乗 の 語 に い ろ い ろ の 見 解 あ る を 明 (5) ら か に し 、 さ ら に こ の 大 乗 に 二 種 あ り 一 は 顕 示 大 乗 に し て 二 は 最 勝 金 剛 秘 密 乗 で あ る と し 、 こ こ に 弘 法 大 師 の 如 き 顕 密 二 教 判 を 設 け た の で あ る 。 け れ ど 弘 法 大 師 は 一 切 仏 教 を 顕 教 と し そ れ に 対 し 秘 密 仏 教 を 密 教 と し 真 言 宗 と さ れ た の で あ る が 、 今 は 一 つ の 大 乗 仏 教 に お い て 顕 示 と 秘 密 と の 二 を 分 つ た 。 こ の 点 は 伝 教 大 師 の 円 密 一 致 の 立 場 を 脱 し た も の で は な い 。 次 に そ の 二 教 判 を 見 る こ と に し た い 。 ︹ 註 ︺(1) 大 正 六 一 ・ 九 上 (2 ) 大 正 一 九 ・ 六 〇 九 中 (3 )菩 薩 善 戒 経 第 七 ・ 菩 薩 地 功 徳 品 第 二 〇 1 大 正 三 〇 。 九 九 九 下 (4 ) 大 正 三 九 ・ 五 九 一 下 (5 ) 同 六 一 ・ 九 中

(1 ) 前 述 の 如 く 慈 覚 大 師 は 一 で あ る 大 乗 教 に 顕 示 ・ 秘 密 の 二 教 を 分 け て 考 え た 。 そ の 大 師 の 釈 に よ れ ば 顕 教 と は 随 他 の 説 即 ち 他 の 欲 求 に 応 じ 理 解 せ し め る た め に 説 き 示 す 教 で あ り 、 密 教 は 大 日 尊 の 随 自 意 の 説 即 ち 自 受 法 楽 の た め に 心 内 に 欲 す る

(3)

ま ま を 説 い て 他 の 理 解 の 如 何 を 顧 慮 し な い 教 で あ る 。 顕 教 は 機 根 ( 聞 く も の の 理 解 力 ) に 応 じ て 説 き あ ら わ し た 浅 略 の 説 で あ つ て 如 来 の 心 要 で あ る 三 密 や 如 来 の 内 証 世 界 で あ る 五 智 を あ ら わ さ な い 。 三 密 の 教 法 に 接 し な い か ら 歴 劫 修 行 と て 長 大 な 時 間 の 修 行 を な す も 容 易 に 仏 果 が 得 ら れ な い 。 内 証 自 覚 智 の 境 地 で な い の で 法 界 の 色 心 の 実 相 た る 法 身 の 実 際 を 知 ら な い 。 今 の 秘 密 教 は そ う で な い 。 わ ず か に 一 印 を 結 ぶ も 法 界 の 仏 を 供 養 す る こ と に な り 、 暫 ら く 真 言 を 念 諦 す る も す べ て の 衆 生 を 広 く 利 益 し 忽 ち に 月 輪 の 真 仏 を 見 、 金 剛 三 密 の 力 と 如 来 加 持 の 力 と 法 界 の 力 と に よ つ て 早 く 仏 位 に 登 る と 説 い て あ (2) る 。 ま た 今 の 大 師 は 金 剛 頂 経 と 題 す る 経 題 の 金 剛 頂 の 意 味 を 説 い て 、 こ れ は 諸 大 乗 教 中 の 金 剛 で あ り 最 勝 に し て こ れ 以 上 に 勝 れ た も の が な い の で 頂 と 名 づ け る 。 人 の 身 に お い て は 頭 頂 を 最 勝 と す る そ の 如 く こ の 教 は 一 切 大 乗 教 中 最 も 尊 勝 な の で 金 剛 頂 と 題 し 、 し か も そ の 金 剛 頂 は 喩 の 名 で は な く 、 一 切 衆 生 の 心 が 法 界 の 中 に 在 つ て 本 来 金 剛 の 如 く 堅 固 不 壊 で あ り 最 勝 最 尊 至 宝 の 意 味 を 有 す る 。 そ れ は 理 と し て 諸 法 と 共 に 当 然 在 る の で 法 華 経 方 便 品 に は 是 の 法 法 位 に 住 し 世 間 相 常 住 と い う 、 今 は 正 し く そ の 諸 法 の 法 位 に 住 し て い る 秘 密 の 理 法 を 顕 説 し て 金 剛 頂 と い う た 。 そ れ は 同 時 に 秘 密 教 を 意 味 す る 。 金 剛 頂 経 疏 巻 一 に 今 の 大 師 は こ の 二 教 教 判 を 出 す に つ い て 金 剛 般 若 ハ ラ ミ ツ 経 と 智 度 論 の 文 と を 引 証 し た 。 即 ち 羅 什 三 (3) 蔵 訳 金 剛 般 若 ハ ラ ミ ツ 経 に は ﹁ 如 来 は 大 乗 を 発 す も の の た め に 説 き 最 上 乗 を 発 す も の の た あ に 説 く ﹂ と あ り 、 智 度 論 に は 第 八 巻 に 仏 法 に 二 種 あ り 一 に 秘 密 二 に 顕 ( 或 い は 現 ) 示 と い い 、 同 第 六 十 五 巻 に は 諸 の 仏 事 に 二 種 あ り 一 に は 密 二 に は 現 と 出 し 、 同 第 百 巻 に は 般 若 波 羅 蜜 は 秘 密 の 法 に あ ら ず し か も 法 華 等 の 諸 経 に 阿 羅 漢 の 受 決 作 仏 を 説 き 大 ボ サ ツ は よ く そ れ を 受 持 し て 用 い る こ と 喩 え ば 大 薬 師 は よ く 毒 を も つ て 薬 と す る 如 き で あ る と 述 ぶ 。 今 の 大 師 は こ れ ら の 説 を 本 と し て 大 乗 に 顕 示 と 秘 密 の 二 教 あ る を 明 ら か に し 、 次 に ﹁ 此 の 経 は こ れ 最 勝 金 剛 秘 密 乗 で あ る ﹂ と 記 さ る 。 こ の 経 と は 金 剛 頂 経 で あ つ て 同 時 に 密 教 を 指 示 す る 。 勿 論 そ れ ら 金 剛 般 若 バ ラ 蜜 教 や 智 度 論 の 論 述 に は 後 代 に い う よ う な 教 判 的 な 意 図 は な か つ た け れ ど 、 そ の 文 意 に は 自 ら 釈 尊 一 代 の 仏 教 を も つ て 秘 密 と 顕 示 と の 二 つ に 分 つ 意 味 が 含 ま れ て い た こ と は 否 定 し 得 ら れ ぬ で あ ろ う 。 こ の 思 想 は や が て 天 台 の 化 儀 の 四 教 に 出 る 顕 露 ・ 秘 密 の 考 え 方 と 結 合 し て 今 の 大 師 の 教 判 的 な 見 方 に な つ た 。 慈 覚 大 師 の 密 教

(4)

密 教 文 化 (5) 天 台 大 師 の 教 判 に 五 時 八 教 あ り、 五 時 と は 仏 陀 釈 尊 一 代 の 説 法 に 華 厳 ・ 阿 含 ・ 方 等 ・般 若 ・ 法 華 浬 藥 の 五 時 が あ つ た と す る (6) 説 で、 八 教 と は 化 儀 の 四 教 と 化 法 の 四 教 と に つ い て 名 づ け る。 化 儀 と は 化 導 の 形 式 に 依 る も の で 頓 ・漸 ・ 秘 密 ・ 不 定 の 四 で あ つ て そ の 不 定 に 秘 密 不 定 と 顕 露 不 定 と あ る。 頓 教 と は 釈 尊 成 道 の 最 初 に 大 乗 頓 機 の た め に 説 く 教 で あ つ て 華 厳 を 意 味 し、 漸 教 は 漸 次 に 浅 よ り 深 へ 導 く 教 で あ つ て 二 乗 の た め の 教 法 で あ り 阿 含 ・ 方 等 ・ 般 若 の 三 時 教 に 相 当 す る。 顕 露 不 定 は 同 一 会 座 の 人 皆 共 に 相 互 に 相 知 つ て 理 解 を 得 る 立 場 に つ い て 顕 露 と 説 き、 し か も そ の 得 益 と 理 解 の 程 度 と は 各 々 の 人 に よ り て 異 な る の で 不 定 と い う。 秘 密 不 定 と は 同 一 会 座 に あ つ て 同 じ 仏 の 説 法 を 聞 く も 相 互 に 理 解 の 程 度 を 知 ら ず そ れ ぞ れ に 得 益 を 異 に す る に 名 づ け る。 そ れ は 各 々 の 人 の 根 性 が 異 な る に よ る。 し か も 仏 は そ れ ら の 人 に そ れ ぞ れ の 益 を 得 し め る。 こ の 顕 露 ・ 秘 密 の 二 不 定 は 五 時 の 中 前 四 時 に 限 り 法 華 浬 葉 に は 通 (7) じ な い。 次 に 化 法 と は 化 益 の 教 法 と い う こ と で こ れ に 別 円 の 四 教 が あ る。 三 蔵 教 と 通 教 と 別 教 と 円 教 と で あ つ て、 三 蔵 は 普 通 に い う 経 律 論 な れ ど 今 は 特 に 小 乗 教 に 名 づ け、 通 教 は 三 乗 通 じ て 化 益 に あ ず か る を 意 味 し 大 乗 初 門 と な す。 別 教 は 別 し て 大 乗 の 教 益 を 受 け る に 名 づ け そ れ は 蔵 教 や 通 教 と は 全 く 別 で あ り 次 の 円 教 で も な い と い う 意 味 を あ ら わ し、 円 教 は 円 融 自 在 な 完 全 融 和 の 法 門 な る を 示 す。 天 台 大 師 の 意 に よ れ ば (8) 仏 の 一 音 の 説 法 も 各 々 の 類 に 随 つ て そ の 真 意 を 得 る に 相 違 が で き る の で か よ う な 教 法 の 別 が 考 え ら れ る に い た つ た と い う。 今 の 大 師 は 上 述 の 如 く 金 剛 般 若 経 並 び に 智 度 論 の 文 意 を 天 台 大 師 の 秘 密 不 定 ・ 顕 露 不 定 の 教 学 に 併 わ せ て 新 に 顕 密 の 二 教 を 設 け ら れ た の で あ る。 し か も 蘇 悉 地 経 疏 巻 一 に 示 さ る る (9) 如 く ﹁ こ の 秘 密 の 法 は 諸 の 修 行 者 を し て 速 に 大 悉 地 を 得 し め る こ と 諸 の 顕 教 よ り 勝 れ て い る の で 勝 上 と い い、 仏 蓮 金 三 部 の 徳 を 速 に 成 弁 せ し め る の で 微 妙 と い う ﹂ と。 そ れ で は 何 を も つ て 顕 教 と 名 づ け る か と い う に 諸 の 三 乗 教 を 顕 教 と す る。 そ れ は 未 だ 理 事 倶 密 を 説 か な い か ら で あ る。 理 事 倶 密 と は 世 俗 と 勝 義 ・ 真 諦 と 俗 諦 と が 完 全 に 円 融 し て 不 二 な る 理 を あ ら わ す を 理 密 と し、 三 世 の 諸 仏 に お け る 身 語 意 の 作 用 が 甚 だ 深 甚 で あ る 理 を 説 い て 事 密 と す る。 そ れ は 三 密 と い う 事 作 法 が 深 密 で あ る を 意 味 す る。 華 厳 や 維 摩 ・ 般 若 ・ 法 華 な ど の 諸 大 乗 経 は と も に 密 教 で あ る け れ ど な お 如 来 秘 密 の 深 理 を 究 尽 せ

(5)

ず 三 密 の 事 密 を 説 か な い 。 毘 盧 遮 那 や 金 剛 頂 な ど の 経 は 如 来 の 事 と 理 と の 密 を と も に 究 め つ く し て 説 く と て 顕 密 二 教 判 別 (10 ) の 真 意 を あ ら わ し た 。 要 す る に 今 の 大 師 の 説 く 顕 示 教 は 阿 含 ・ 深 密 な ど の 諸 三 乗 教 で あ つ て そ れ ら は 事 秘 密 理 秘 密 を 説 か な い 。 秘 密 教 と は 華 厳 。 維 摩 。 般 若 ・ 法 華 ・ 浬 繋 な ど の 諸 一 乗 経 で あ る が そ の 秘 密 に 二 種 あ り 。 一 に は 理 秘 密 教 で 彼 の 華 厳 な ど の 一 乗 経 は 唯 世 俗 と 勝 義 と 円 融 無 二 な る を 説 く も 三 密 の 事 相 を 説 か な い 。 二 に は 事 理 倶 密 の 教 で 大 日 ・ 金 剛 頂 ・ 蘇 悉 地 な ど の 経 は 世 俗 と 勝 義 と の 円 融 不 二 を 説 き 、 ま た 三 密 の 行 相 を 説 く と し た の で あ る 。 要 す る に 今 の 大 師 の 所 論 は 三 乗 教 に つ い て そ の 顕 示 教 な る を 出 し 、 次 に 真 諦 ( 勝 義 ) ・ 俗 諦 と い う 二 諦 円 融 に つ い て 理 密 の 旨 を 示 し 、 後 に 如 来 の 三 密 を 説 く か 否 か に よ り て 理 密 か 事 理 倶 密 か の 判 別 を さ れ た の で あ つ て 、 大 日 ・ 金 剛 頂 な ど の 経 に お い て の み 如 来 の 真 実 ・ 事 理 倶 密 の 旨 を 説 く こ と も 明 ら か に さ れ た 。 か く て 理 密 と 事 理 倶 密 と の 別 は あ れ ど 倶 に 密 教 と さ る 。 弘 法 大 師 は 十 住 心 説 を 出 し て 九 顕 一 密 の 理 を 明 ら か に し 、 九 顕 は 一 密 に よ つ て 絶 対 価 値 を 得 る 。 今 の 大 師 は 華 厳 ・ 維 摩 ・ 法 華 ・ 浬 藥 等 の 諸 大 乗 経 典 を 始 め か ら 秘 密 と 判 じ 、 大 日 金 剛 頂 と 同 価 値 に 扱 わ れ た こ と に 両 者 の 見 方 の 相 違 が あ り 注 意 し な く て は な ら ぬ 。 今 の 大 師 の 見 方 は 伝 教 大 師 の 法 華 唯 一 乗 主 義 の 軌 範 の 内 に あ る 。 上 来 の 論 述 を 天 台 大 師 化 法 の 四 教 に 併 せ て 図 示 す れ ば 次 の よ う に な る 。 化 法 四 教 蔵, 通 旺 男 円 小 乗 ・ 法 相 ・ 三 論 等-顕 示 教-三 乗 理 密-華 厳 ・ 維 摩・ 法 華 等 の 経 倶 密-大 日 ・ 金 剛 頂 等 の 経-金 剛 乗 秘 密 教-一 乗 即 ち 周 一 円 教 の 中 に 理 密 倶 密 の 別 を 見 た こ と は 特 に 注 意 す (11) べ き で 、 そ の 理 事 倶 密 な る ﹁ 金 剛 乗 ﹂ は 諸 経 に 説 か な い 三 密 の 結 要 で あ り 五 智 の 奥 源 で あ る 。 そ の 深 秘 の 教 法 は よ く 仏 の 真 意 を つ く し 法 身 の 説 法 を 説 き 即 身 に 成 仏 す べ き 理 を も 明 ら か に す る 。 以 上 の 如 き 事 理 倶 密 な る 金 剛 乗 の 教 学 と い う は 、 未 だ 何 人 も 説 き 及 ば な か つ た と こ ろ で あ つ て 今 の 大 師 に お い て 始 め て 示 さ れ た 。 誠 に 我 国 仏 教 教 学 史 上 特 記 さ る べ き 教 判 と し な け れ ば な ら な い 。 慈 覚 大 師 の 密 教

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密 教 文 化 ︹ 註 ︺(1) 大 正 六 一 ・ 九 中 (2 ) 〃 上 (3 ) 〃 中 ・ 金 剛 般 若 の 文 同 大 正 八 ・ 七 五 〇 下 、 次 の 智 度 論 の 文 大 正 二 五 ・ 八 四 下 、 同 五 一 七 上 、 同 七 五 四 中 (4 ) 〃 二 五 ・ 八 四 下 、 同 五 一 七 上 、 同 七 五 四 中 (5) 法 華 玄 義 一 下-大 正 三 三 ・ 六 八 八 下 巳 下 (6 ) 同 一 上 -同 六 八 三 下 (7) 同 一 下-同 六 八 八 中 已 下 (8 )同 一 上-同 六 八 三 中 (9 )大 正 六 一 ・ 三 九 三 中 (10) 義 釈 捜 決 抄 一 ノ 一 、 天 全 本 上 二 六 頁 上 参 照 (11 )大 正 六 一 ・ 七 下 取 意

(1 ) 金 剛 頂 経 疏 巻 一 に よ れ ば 諸 経 論 中 二 蔵 ・三 蔵 な ど 各 種 の 蔵 を 説 く 。 先 ず 喩 伽 の 説 に よ れ ば 菩 薩 蔵 と 声 聞 蔵 と あ り 、 こ の 場 合 縁 覚 は 声 聞 蔵 へ 入 れ て 考 え る 。 或 い は 毘 那 耶 ・ 素 恒 擁 ・ 阿 毘 達 麿 の 三 蔵 を 説 く 。 こ れ は 戒 定 恵 と 律 経 論 の 三 つ で あ る 。 ま た 声 聞 ・ 菩 薩 ・ 雑 ・ 仏 の 四 蔵 説 、 六 波 羅 蜜 経 の 如 き は 毘 那 耶 等 の 三 の 外 に 般 若 波 羅 蜜 多 ・ 陀 羅 尼 の 二 を 加 え て 五 蔵 説 を 出 し 、 菩 薩 と 声 聞 に 各 毘 那 耶 等 の 三 蔵 を 説 い て 六 蔵 と し 、 処 胎 経 の 如 き は 八 蔵 を 説 く 。 謂 く 胎 化 蔵 ・ 中 陰 蔵 ・ 摩 詞 術 方 等 蔵 。 戒 律 蔵 ・ 十 住 蔵 ・ 雑 蔵 ・ 金 剛 蔵 ・ 仏 蔵 で あ る 。 こ れ ら の 中 今 の 金 岡 頂 経 ( 広 く は 密 教 の 経 ) は 二 ・ 六 蔵 の 中 に は 菩 薩 蔵 、 三 蔵 の 中 に は 素 恒 携 、 四 ・ 八 蔵 の 中 に は 仏 蔵 に 摂 し 五 蔵 の 中 に は 陀 羅 尼 蔵 に 属 す る 。 浬 葉 経 に は 半 教 満 教 の 二 を 説 く そ の 中 今 の 教 は 満 教 に し て 智 度 論 に い う 顕 示 ・ 秘 密 二 教 の 中 で ば 秘 密 教 な る こ と 前 述 の 如 く 、 頓 漸 二 教 を 分 つ と き 今 (2 ) の 経 は 頓 教 と し な け れ ば な ら な い 。 法 華 に は ﹁ 十 方 仏 土 中 唯 有 一 乗 法 ﹂ と 説 き 、 摂 大 乗 論 に は 大 乗 小 乗 と い う 二 乗 、 諸 経 に は 声 聞 ・ 縁 覚 。 菩 薩 の 三 乗 、 十 地 経 第 七 に は 声 聞 ・ 独 覚 ・ 菩 薩 。 如 来 地 と い う 四 乗 行 法 、 ま た 三 乗 に 人 天 乗 を 加 え て 五 乗 を 出 す 。 こ れ ら の 中 今 の 経 は 一 乗 で あ り 大 乗 で あ り 仏 乗 に 摂 し な け れ ば な ら な い 。 (3 ) ま た 諸 経 論 に 十 二 分 教 あ り 、 第 一 は 契 経 に し て 理 に 契 い 機 根 に 契 う の 意 に て こ れ に 通 と 別 の 意 あ り 、 通 じ て は 十 二 分 経 皆 契 経 と 名 づ け る も 別 と し て は 長 行 の 部 分 に 名 づ け る 。 第 二 重 頒 ・ 長 行 の 説 で 十 分 理 解 さ れ ず も し は そ の 重 要 な 説 を 重 ね て 頒 を も つ て 説 く 。 第 三 は 授 記 と い い こ れ に 三 つ の 意 あ り 、 菩 薩 が 当 来 に 成 仏 す べ き を 予 言 し て 記 す と 弟 子 の 死 生 の 因 果

(7)

を 記 ず と 諸 法 甚 深 の 義 を 記 す と の 意 で あ つ て 本 経 は そ の 第 三 の 意 を も つ て 見 る 。 第 四 は 頒 に し て 調 頒 の 意 で あ る 。 そ れ は 美 妙 の 言 詞 を も つ て 未 だ 説 か な い と こ ろ を 調 論 す る 。 第 五 は 自 説 と て 請 い 求 め ら れ な く と も 機 根 を 見 て 説 き 問 を 待 た な い で 自 証 を 顕 説 す る 。 第 六 は 縁 起 に て 因 縁 に 応 じ て 説 を な す 。 こ れ に 三 つ の 場 合 が あ る 。 一 は 罪 過 を 犯 す に よ つ て 制 戒 し 、 二 は 事 作 法 に よ つ て 説 法 し 、 三 は 請 に よ つ て 説 法 す る 。 本 経 中 に は 共 に こ れ ら の 場 合 あ る を 見 る 。 第 七 は 讐 喩 に て 喩 を 挙 げ て 法 を 述 べ る の で あ る 。 第 八 は 本 事 と い い 諸 弟 子 の 本 生 を 談 ず 。 第 九 は 本 生 に て 自 ら 仏 ボ サ ツ の 本 生 法 を 説 く そ れ は 本 種 子 の 義 で あ る 。 十 は 方 広 と い い 理 の 正 し き を 方 と し 包 含 の 大 を 広 と す る 。 こ れ に 二 あ り 一 は ボ サ ッ の 道 を 修 行 す る を 説 き 二 は 教 法 が 広 大 に ま た 極 高 大 な る を 示 す 、 本 経 に は そ の 二 意 と も に あ り と す る 。 第 十 一 は 希 法 に て 未 曽 有 と い う 。 独 自 の 法 と 最 勝 に し て 殊 特 な る 教 法 を 説 く 、 第 十 二 は 論 議 で あ つ て 問 答 を 往 復 し て 真 理 を あ ら わ す 。 こ れ に 二 あ り 仏 の 説 と 弟 子 の 説 と で あ る 。 こ れ ら 十 二 分 教 は 顕 密 の 諸 経 に 通 じ て 見 ら れ る け れ ど 、 顕 教 に 出 す と こ ろ は 機 根 に 応 じ て 出 す 随 他 の 説 で あ り 密 教 に 弁 ず る と こ ろ は 大 日 尊 独 自 の 随 自 意 の 説 で あ る 。 機 根 に 随 順 し て 説 く と こ ろ は 浅 略 の 教 で あ つ て 如 来 の 真 実 な る 結 要 三 密 の 内 証 五 智 の 奥 源 を あ ら わ さ な い 。 故 に 随 他 と い う 。 三 密 を 知 ら な い の で 劫 を 経 て 永 く 修 行 す る も 真 実 の 仏 果 は 得 難 く 、 内 証 智 の 境 地 を 説 く の で な い か ら 法 界 の 色 ( 物 質 ) 心 に 周 遍 す る 身 を 見 な い 。 し か る に 今 の 経 は わ ず か に 一 印 を 結 び て 法 界 の 仏 を 供 養 し し ば ら く 真 言 を 念 じ て 一 切 衆 生 を 利 し 忽 爾 に 月 輪 中 の 真 仏 を 見 、 金 剛 三 密 の 力 と 如 来 加 持 の 力 と 法 界 力 と に よ つ て 速 か に 仏 位 に い た る 旨 を 説 く 。 か く て 諸 経 論 中 密 教 経 典 の 内 容 が 勝 れ 、 そ の 地 位 の 高 き も の あ る を あ ら わ し た の で あ る 。 ま た 今 の 大 師 は 諸 の 顕 教 は 声 や 名 字 を も つ て 経 体 と し も し は 唯 心 や 真 如 の 理 を も つ て 経 体 と す る の で 、 心 と 境 と 融 会 せ ず 迷 界 が 成 立 し 易 く な る け れ ど 今 の 秘 教 は 諸 法 の 本 不 生 を 説 き 法 然 の 道 理 を も つ て 経 体 と す る 。 そ れ は 色 ( 物 質 ) の 全 体 が 即 ち 心 で あ り 心 の 全 体 が 即 ち 色 な の で 、 声 字 や 名 句 な ど の す べ て が 法 身 の 法 然 の す が た と し て 存 在 し て い る と 説 く 。 完 全 な 迷 悟 一 致 論 は こ の 理 論 を も つ て 成 立 す る 。 顕 教 は 因 果 を 宗 旨 と し 因 と 果 と の 別 異 を 設 け な く て は な ら ぬ が 、 今 の 教 に は そ の 必 要 が な く 因 即 是 果 と な 慈 覚 大 師 の 密 教

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密 教 文 化 (4 ) る 。 即 ち 金 剛 頂 五 秘 密 経 に は ﹁ 現 生 に 初 地 を 証 得 し 漸 次 に 昇 (5 ) 進 し て 十 地 を も 満 足 す ﹂ と 出 し 、 大 日 経 第 二 に は ﹁ 初 発 心 よ り 乃 至 十 地 に い た る ま で 次 第 に 現 生 に そ の 徳 を 満 足 す ﹂ と 説 く は こ れ で あ る 。 ︹ 註 ︺(1) 大 正 六 一 ・ 二 ニ ト (2 ) 同 八 ・ 九 上 (3 )同 六 一 ・ 一 三 中 已 下 取 意-本 誌 五 一 号 小 論 二 の 下 参 昭 大 正 六 一 ・ 一 一 下 已 下 (4 )同 二 〇 ・ 五 三 五 下 (5 )同 一 八 ・ 一 中 四 円 密 一 致 観 (1 ) 伝 教 大 師 の 法 華 秀 句 上 本 や 守 護 国 界 章 中 之 上 ・ 同 下 之 上 に (2 ) は 十 方 仏 土 中 唯 有 一 乗 法 無 二 亦 無 三 と あ り 、 ま た 一 乗 の 外 に (3 ) 別 に 二 乗 な く 終 に 必 ず 一 大 浬 葉 を 得 と い い 、 諸 仏 方 便 力 の 故 に 一 仏 乗 に お い て 分 別 し て 三 を 説 く と い う 如 く 、 伝 教 大 師 の (4 ) 教 学 は 法 華 経 を 中 心 と し た 純 一 乗 主 義 で あ つ た 。 そ れ は 法 華 経 第 -一 方 便 品 に よ る も の で あ つ て 一 切 の 教 法 は 結 局 円 の 一 乗 に 帰 一 し 何 も の も 円 の 一 乗 に よ つ て 救 わ れ な い も の は な い と す る に あ る 。 乗 と は 乗 り も の を 意 味 し 一 乗 は 一 仏 乗 で あ り 、 三 乗 五 乗 に 対 す る 語 で あ つ て そ の 一 仏 乗 は 天 台 大 師 の い う 円 教 に よ る 唯 一 仏 乗 で あ る 。 今 の 大 師 の 根 本 思 想 は か よ う な 伝 統 に よ る 円 教 一 乗 主 義 を 受 け 、 し か も 伝 教 大 師 の 真 言 止 観 そ の 旨 一 で あ る と い う 意 趣 を 継 承 し て そ の 内 容 を 一 層 明 確 に さ れ た 。 鷹 山 寺 第 六 世 実 導 上 人 仁 空 は 義 釈 捜 決 抄 巻 一 之 一 に (6) ﹁ 慈 覚 大 師 御 奏 状 の 言 に 先 師 禅 念 の 暇 に 経 教 を 披 覧 し て 遂 に 天 台 の 止 観 と 真 言 と 義 理 冥 符 す る を 知 る ﹂ と あ る 。 先 師 と は 伝 教 大 師 で あ つ て そ の 主 旨 は 今 の 大 師 に も そ の ま ま 依 用 さ れ る と こ ろ と な つ た 。 そ れ は 今 の 大 師 の 作 と し て 伝 え ら れ て い (6 ) る 諸 位 灌 頂 秘 密 目 録 の 終 り に ﹁ 真 言 と 止 観 と そ の 義 理 冥 符 す る を 知 る ﹂ と い う 言 を 記 し て あ る に よ つ て も 知 ら れ よ う 。 真 言 と 止 観 と 一 致 で あ る と い う 思 想 は 大 日 経 義 釈 温 古 の 序 (7) に ﹁ こ の ビ ル シ ヤ ナ 経 は す な わ ち 秘 蔵 の 円 宗 で あ つ て 深 く 実 相 に 入 り 衆 教 の 源 と な る ﹂ と 述 べ て い る 。 そ の 義 釈 は 大 日 経 を 法 華 の 立 場 で 解 釈 し た 書 で あ る の で 法 華 と 大 日 と そ の 趣 旨 が 一 致 す る は 当 然 な の で 、 伝 教 ・ 慈 覚 両 大 師 の 密 教 に 対 す る 立 脚 点 と そ め 思 想 の 由 来 す る 深 く 遠 き を 知 る 。 上 述 の 如 く 今 の 大 師 の 教 判 は 止 観 と 真 言 ・ 換 言 す れ ば 円 と 密 と そ の 主 旨 は 一 致 す る も 一 は 理 密 を 説 い て 事 密 を 説 か ず 他 は 両 を 併 せ て 説

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く の 相 違 が あ る 。 そ れ で は 両 者 は い か に 一 致 す る か 。 金 剛 頂 経 疏 巻 三 に 経 文 の ﹁ 毘 盧 遮 那 如 来 久 し か ら ず 現 に 等 覚 一 切 如 来 の 普 賢 心 を 証 す ﹂ と い う ﹁ 不 久 現 証 し の 文 に つ い て 、 (8 ) 大 興 善 寺 元 政 阿 閣 梨 い う ﹁ 彼 の 法 華 に 久 遠 成 仏 と い う は こ の 経 の ビ ル シ ヤ ナ 仏 に し て 彼 此 相 違 の 解 釈 を し て は な ら ぬ 。 彼 の 経 は 三 乗 の 近 情 を 破 す る た め に 偏 え に 久 遠 の こ と を 説 く も 、 こ の 経 は 顕 教 の 如 き 歴 劫 成 仏 の 情 執 を 破 す る た め に 不 久 現 証 と 示 さ れ た ﹂ と い い そ の 旨 趣 を も つ て 本 文 を 釈 し た 。 ま (9 ) た 上 記 の 如 く 法 華 経 方 便 品 に は ﹁ 是 の 法 法 位 に 住 す ﹂ と あ る そ の 法 位 に 住 す る 秘 密 の 理 を 説 く の が 密 教 で あ る と も 述 べ た ・ ま た 欝 響 決 に は 肇 経 一 部 八 巻 二 + 八 品 の 中 、 上 + 四 品 は 迩 門 の 唯 識 の 理 即 ち 恵 覚 胎 蔵 界 の 身 土 不 二 の 理 を 出 し 、 下 十 四 品 は 唯 心 の 理 即 ち 定 覚 金 剛 界 の 身 土 不 二 の 理 を 説 く と 口 伝 し て い る 。 こ こ で は 法 華 経 二 十 八 品 は そ の ま ま 胎 蔵 金 剛 の 理 を 現 わ し て い る と さ る 。 但 注 意 す べ き は 胎 蔵 を 恵 と し 金 剛 を 定 と し た こ れ は 東 密 一 般 の 説 と 趣 き を 異 に し て い る 。 何 れ に せ よ 今 の 大 師 の 円 密 一 致 思 想 の 一 端 は こ れ ら に よ つ て そ の 内 容 の 一 分 を 知 り 得 ら れ よ う 。 円 密 と い う そ の 二 教 は 共 に 一 切 衆 生 を し て 自 心 の 実 相 を 知 見 せ し め る も の に て 、 唯 衆 生 の 機 根 千 差 万 別 な る に よ つ て 、 或 い は 無 相 円 教 の 理 観 を 説 き 或 い は 有 相 三 密 の 事 業 を 説 く 。 さ れ ば 深 く 事 理 の 本 質 は 不 二 で あ る と す る 円 教 の 真 意 に 達 せ (11 ) ば 二 教 を 区 別 し そ の 浅 深 を 測 定 す べ き 何 も の も な い 。 維 摩 経 は 維 摩 居 士 の 宗 教 体 験 に お け る 不 思 議 の 世 界 を 説 き 、 法 華 は 一 乗 を 宗 と し 榜 伽 経 は 如 来 蔵 を 宗 と し 浬 繋 経 は 仏 性 を 宗 と す る 。 か か る 宗 意 を 判 断 す る は 説 く と こ ろ の 言 語 を 借 り て 未 だ そ の 本 味 を 解 し な い に よ る 。 し か し そ れ は 理 密 の 立 場 か ら 見 た 説 で あ つ て こ れ ら の 経 は 上 に も 述 べ た よ う に 未 だ 三 密 の 事 相 を 説 か ず 、 理 と し て は 円 密 一 致 な る も 事 と し て は 一 致 と い う を 得 な い 。 こ の 点 は 円 密 一 致 を 称 す る 中 で 理 同 事 別 の 説 と し な く て は な ら な い 。 ︹ 註 ︺(1) 伝 教 全 集 薪 三 ・ 三 三 、 同 二 . 三 七 六 、 同 五 一 四 頁 (2 )守 護 国 界 章 上 之 下 同 二 ・ 二 九 七 頁 (3 )同 中 之 中 同 四 二 四 頁 (4 )大 正 九 ・ 八 上 (5 )天 全 本 一 ・ 二 七 上 、 康 暦 元 年 (一三 七 九 ) 六 月 よ り 永 徳 元 年 (一三 八 一 ) 五 月 に 及 ぶ 間 大 日 経 住 心 品 義 釈 第 一 . 二 を 講 じ た 記 で あ る (6 )旧 本 大 蔵 天 密 章 疏 一 ・ 三 一 六 下(7 )義 釈 一 ノ 一 右 慈 覚 大 師 の 密 教

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密 教 文 化 (8 )金 剛 頂 経 疏 三 、 大 正 六 一 ・ 三 九 中 (9 )同 疏 一 ・ 同 六 一 ・ 九 上 、 大 正 九 ・ 八 上 (10 )日 本 大 蔵 天 密 章 疏 一 ・ 三 三 〇 上 (11 )已 下 金 剛 頂 経 疏 一 、 大 正 六 一 ・一 下 取 意 五 一 大 円 教 論 前 節 の 如 き 円 密 一 致 の 思 想 は 彼 の 天 台 大 師 の 化 法 の 四 教 に お け る 円 教 思 想 を 拡 大 し た も の で 本 来 の 円 教 で は な い 。 こ れ に よ つ て 今 の 理 密 ・ 事 理 倶 密 の 両 思 想 を 併 せ た 円 教 を 一 大 円 教 と 称 す る 。 こ の 一 大 円 教 思 想 が 大 唐 の 大 興 善 寺 元 政 阿 闇 梨 に 発 す る こ と は 今 の 大 師 の 自 記 す る と こ ろ に よ つ て 明 ら か で (1 ) あ る 。 即 ち 金 剛 頂 経 疏 一 末 に ﹁ 大 毘 盧 遮 那 経 第 一 に 云 ﹂ と し て ﹁ 毘 盧 遮 那 の 一 切 身 業 ・ 一 切 語 業 ・ 一 切 意 業 ・ 一 切 処 ・ 一 切 時 に 有 情 界 に お い て 真 言 道 句 の 法 を 宣 説 す ﹂ と い う 。 こ の 文 に よ れ ば 大 日 如 来 は 一 切 の 時 と 処 に お い て 常 恒 に 不 断 に 真 言 道 を 説 法 さ れ て い る と い わ ね ば な ら ぬ 。 そ の 真 言 に つ い て 教 を 立 て れ ば そ れ は 普 通 に い う 円 教 で は な く 正 し く 一 大 円 教 と し て 見 な け れ ば な ら ぬ 。 即 ち ﹁ 大 興 善 寺 阿 闇 梨 云 も し 真 言 に つ い て 教 を 立 つ れ ば 応 に 一 大 円 教 と い う べ く 如 来 の 演 説 す る と こ ろ 真 言 秘 密 の 道 に 非 る な き 故 ﹂ と 。 こ の 大 興 善 寺 は 今 の 大 師 入 唐 当 時 の 師 元 政 ア ジ ヤ リ で あ る こ と は 遮 那 業 相 承 血 脈 な ど の 記 事 に よ つ て 知 ら れ る 。 慈 覚 大 師 の 一 大 円 教 と い う 判 釈 は こ こ に 由 来 す る 。 今 の 大 師 の 一 大 円 教 の 思 想 は 顕 密 二 教 判 に 見 る 如 き 相 待 門 的 の 教 判 で は な く 、 す べ て を 一 大 円 の 一 乗 に 帰 一 し た 絶 対 門 の 判 釈 で あ る 。 慈 覚 大 師 は 金 剛 頂 経 の (2 ) 経 題 に あ る 二 切 如 来 L の 言 を 釈 し て ﹁ 一 切 如 来 と い う は 毘 盧 遮 那 如 来 の 八 曼 茶 羅 三 十 七 尊 及 び 八 十 一 尊 聖 者 を は じ め 十 方 三 世 に わ た り 尽 虚 空 遍 法 界 に お け る 微 塵 刹 海 の 一 切 身 を も つ て そ の 体 と な し 、 ま た よ く 甚 深 秘 密 百 千 万 億 修 多 羅 蔵 を 出 生 す 。 皆 こ れ 毘 盧 遮 那 如 来 の 心 性 海 に お け る 功 徳 で あ つ て ま た よ く 華 蔵 荘 厳 世 界 有 情 世 間 及 び 器 世 間 を 出 生 す ﹂ と 述 ぶ 。 即 ち ビ ル シ ヤ ナ 如 来 は 唄 切 の 如 来 を 出 生 す る 本 体 で あ り ま た 一 切 の 教 法 一 切 の 世 界 を 出 生 す る 根 源 で あ つ て 、 そ れ は そ の (3 ) ま ま 一 大 円 教 の 内 容 を 關 明 し て い る 。 ま た 金 剛 頂 経 の ﹁ 如 是 我 聞 一 時 ﹂ の 一 時 を 釈 し て ﹁ 不 思 議 の 三 際 無 始 無 終 の 一 時 で あ る 。 こ れ は 一 時 一 刹 那 の 中 に 無 量 劫 を 具 し 無 量 劫 た だ こ れ 刹 那 な る を 名 づ け て 一 時 と な す ﹂ と い い ﹁ 如 来 の 三 密 は 是 の 如 き 時 に お い て 機 感 す る こ れ を 真 の 明 道 と 説 く 。 一 切 処 一 切 時 に 機 根 あ れ ば 必 ず 応 ず 。 真 の 月 影 諸 水 に 影 現 ず る 如 き こ れ

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を 一 時 と い う 。 斯 の 如 き は 如 来 の 性 海 不 思 議 の 時 に し て 世 間 の 妄 執 に よ る 日 時 で は な い ﹂ と て 一 切 時 と す る を 明 ら か に し た 。 (4 ) 次 に 金 剛 頂 経 に 説 く ﹁ 阿 迦 尼 唾 天 ﹂ を 釈 し て こ の 天 は ﹁ 色 究 寛 天 に し て 大 自 在 天 で あ る つ こ の 宗 に 明 か す 義 は 自 在 加 持 の 神 心 を 宅 す る と こ ろ そ こ を 自 在 天 宮 と な す 。 如 来 有 応 の と こ ろ 此 の 宮 に 非 る な く 独 り 三 界 の 表 に 在 る に あ ら ず ﹂ と 。 即 ち 阿 迦 尼 咤 天 と い う も そ れ は 天 に 一 定 の 場 所 が あ つ て の こ と で な く 、 法 界 を 宮 殿 と し 如 来 の 意 楽 に 応 じ て 随 時 随 所 に 説 法 さ る る 場 所 そ れ を 阿 迦 尼 呪 天 と い う 。 要 す る に 大 日 経 と 金 剛 頂 経 と と と も 絶 対 な 一 大 円 教 の 立 場 で 説 か れ た も の で あ り 、 同 時 に 密 教 を も つ て 一 大 円 教 と し な け れ ば な ら な い 。 こ の 考 え 方 は 我 国 天 台 密 教 史 上 に 新 し い 立 脚 点 を 築 い た 重 要 な 教 相 で あ る 。 以 上 説 く と こ ろ を 総 合 す る に 今 の 大 師 の 所 論 は (5 ) 一 絶 待 観-一 大 円 教 二 相 待 観 -顕 教 -真 俗 不 融 説-三 乗 教 -密 教-真 俗 ( 円 融 ) 不 二 説 -唯 理 秘 密 教 -不 具 足 三 密 説 -法 華 経 等--事 理 倶 密 教 -具 足 三 密 説 -大 日 金 剛 頂 等 -一 乗 教 と し な く て は な ら ぬ 。 そ の 絶 対 観 と 相 対 観 は 次 の 智 証 大 師 (6 ) を 経 て 五 大 院 安 然 和 尚 に 及 び 彼 の 教 時 問 答 に 見 る 如 き 一 仏 ・ 一 時 ・ 一 所 ・ 一 教 と い う 雄 大 な 構 想 の 表 現 に な つ た 。 ︹ 註 ︺ (1 )大 正 一 八 ・ 一 上 終 已 下 、 同 六 一 ・ 一 五 下 (2) 同 ・ 二 〇 七 上 、 同 六 一 ・ 九 上 (3 ) 同 二 一 〇 七 上 、 同 六 一 ・ 二 三 上 (4 )同 。 二 〇 七 上 、 同 六 一 。 二 七 上 (5 )島 地 大 等 師 の 天 台 教 学 史 に よ る (6 )本 誌 五 十 一 号 今 筆 者 の 小 論 参 照

慈 覚 大 師 の 教 主 観 を 見 る に 最 も 重 要 な 文 献 は 真 言 所 立 三 身 (1 ) 問 答 と 金 剛 頂 経 疏 と の 二 本 で あ る 。 そ の 中 真 言 所 立 三 身 問 答 は そ の 名 の 示 す 如 く 真 言 宗 に 説 く 三 身 に つ い て 問 答 し 決 択 し た の で あ つ て 、 三 身 と は 金 光 明 ・ 分 別 聖 位 ・ 榜 伽 等 の 諸 経 ・ 十 地 経 論 ・ 金 剛 般 若 波 羅 蜜 経 論 ・ 摂 大 乗 ・ 大 乗 義 章 等 の 諸 論 書 に 出 さ れ て い る 法 ・ 報 ・ 応 も し は 法 ・ 報 ・ 化 の 三 身 説 を い (2 ) う 。 そ れ に つ い て 弘 法 大 師 は 弁 顕 密 二 教 論 巻 下 に ﹁ 釈 迦 の 三 身 大 日 の 三 身 各 々 不 同 な り ﹂ と 説 い て 顕 密 二 教 の 教 主 を 別 に す る 基 本 を 明 確 に さ れ た 。 し か も 弘 法 大 師 の こ の 著 述 は 当 時 慈 覚 大 師 の 密 教

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密 教 文 化 の 教 学 界 に と つ て は 重 大 な 問 題 と さ れ る 所 で あ つ た 。 そ れ に 対 し 台 密 の 学 徒 は 如 何 な る 態 度 を 執 る か 。 今 の 大 師 の 書 は か よ う な 時 代 の 要 求 を 背 景 に し て 著 述 さ れ た の で あ り 、 本 問 題 に 対 す る 比 叡 山 学 徒 の 後 代 へ の 指 南 書 と さ れ な け れ ば な ら な い も の で あ る 。 三 身 問 答 に は 最 初 に 大 日 経 教 主 は 三 身 の 中 何 の 仏 と な す べ き か を 問 答 し て ﹁ 問 仏 に 三 身 あ り 今 こ の 経 は 何 身 の 説 か 、 答 毘 盧 遮 那 法 身 の 説 で あ る ﹂ と 決 定 し 、 更 に そ の 法 身 は 理 智 の 中 に は 何 の 身 か 、 答 ﹁ 理 智 不 二 な る 智 法 身 の 如 来 で あ る ﹂ 。 し か ら ば 問 う そ の 理 智 不 二 の 法 身 は 理 と 智 と 冥 合 し 恒 然 常 住 な 体 で あ つ つ て 説 法 す べ き 理 由 が な い 。 何 故 説 法 す と い う か 。 答 ﹁ 理 体 恒 然 に し て 説 法 せ ず と は 浅 略 の 機 根 の た め に 説 く 顕 教 に い う と こ ろ で あ つ て 、 深 秘 な 機 根 の た め に 説 く 秘 密 教 の 意 は 理 智 不 二 な る 法 身 が よ く 衆 生 の た あ に 法 を 説 く ﹂ と て 理 智 不 二 な る 智 法 身 の 説 法 を 主 張 す る の で あ る 。 そ の 論 拠 に 大 日 (3 ) 経 第 一 に 見 る ビ ル シ ヤ ナ の 一 切 身 業 。 一 切 語 業 。 一 切 意 業 ・ 一 切 処 ・ 一 切 時 に 有 情 界 に お い て 真 言 道 句 の 法 を 宣 説 す と い う の 文 を 出 し て い る 。 さ ら に 今 の 書 に は ﹁ 問 法 身 が 説 法 す と は 理 体 正 し く よ く 説 法 す と い う か 又 は 理 法 身 が 智 の た め に 説 法 す る か 、 答 二 意 と も に あ り 何 と な れ ば 理 体 は 常 恒 に 照 ら す そ の 照 を 智 と な す 故 に ﹂ と て 寂 照 は 常 に 不 二 で あ つ て 説 法 す る 。 例 す れ ば 黄 金 と そ の 光 沢 と は 不 二 に し て よ く 照 ら し 輝 や く 如 き で あ る 。 照 は 智 の 作 用 な れ ど そ の 智 は 寂 な る 理 体 と 不 二 に し て 存 し 両 者 を 分 つ こ と は 出 来 な い 。 そ れ で は 問 う ﹁ 言 う と こ ろ の 理 体 常 照 な る を 名 づ け て 法 身 の 説 法 と す る な ら ば 自 受 用 身 他 受 用 身 は 何 れ の 法 身 か 、 答 二 身 共 に 法 身 と い う 。 問 も し そ の 自 他 受 用 と も に 法 身 と い う な ら ば 第 三 の 応 化 も ま た 法 身 と す る か 、 答 法 身 と す る に 大 な る 失 は な い で あ ろ う 。 何 と な れ ば 化 身 も ま た 理 内 常 照 の 作 用 で あ る か ら し と 説 く 。 こ れ に よ つ て 三 身 共 に 法 身 で あ る と い う 説 が 分 明 す る 。 更 に 今 の 書 に は 問 答 を 繰 り 返 え し て ﹁ 問 も し そ の 説 の 如 く な ら ば 仏 は 但 法 身 の み と な る 。 何 故 諸 経 論 に 三 身 あ り と 説 く か 、 答 三 身 を 分 別 す る は こ れ 機 根 の 見 方 の 相 違 に 依 る の で 仏 自 体 に 差 別 が あ る の で は な い ﹂ 即 ち 絶 対 門 円 教 一 乗 の 立 場 か ら 見 れ ば 三 身 は 皆 周 遍 法 界 の 法 身 な れ ど 、 機 根 の 相 違 し た 衆 生 の 立 場 か ら 考 え れ ば 自 然 に そ の 別 が 見 ら れ 法 身 は 法 界 に 周 遍 し た も の で あ り 、 報 身 に は 遍 と 不 遍 の 両 面 あ り 、 応 化 身 は 但 一 の 世 界 に 現 ず る 不 遍 の 身 の み と い う こ と に な る 。 か く て

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今 の 大 師 は 本 書 に お い て 理 内 の 三 身 ・ 随 機 の 三 身 と い う 説 を 出 し 、 弘 法 大 師 の 釈 迦 の 三 身 。 大 日 の 三 身 説 に 対 比 さ れ た 。 理 内 と は 絶 対 円 教 一 乗 の 立 場 に 立 つ た 三 身 説 で あ つ て 、 随 機 の 三 身 は 相 違 し た 機 根 の 立 場 か ら 見 た 三 身 説 で あ る 。 出 す と こ ろ の 理 体 常 照 と か 寂 照 不 二 と か 理 内 ・ 随 機 の 三 身 説 の 如 き は 全 く 天 台 教 学 を 前 提 と し 、 伝 教 大 師 の 顕 密 一 致 思 想 を 継 承 し て 現 わ れ た 必 然 の 論 理 で あ る 。 こ の こ と は 金 剛 頂 経 疏 の 上 に も 見 ら れ る 。 即 ち 金 剛 頂 経 疏 第 一 の 本 に ビ ル シ ヤ ナ 如 来 と い う 法 身 仏 の (4 ) 内 証 を 説 い て ﹁ 問 如 来 の 心 内 は 寂 静 無 言 で あ つ て 心 思 を 遙 か に 超 絶 し た も の で あ る 。 何 故 今 そ の 心 内 の 境 地 に お い て こ の 経 を 説 く か 、 答 汝 が 説 く と こ ろ の 心 内 の 境 地 は 言 語 を 亡 じ 心 慮 を 超 絶 し て い て 凡 夫 人 の 見 る と こ ろ で な い 。 ま た 如 来 の か よ う な 内 証 の 境 地 は た だ 寂 静 無 言 で あ る と は 顕 教 に 説 く と こ ろ で あ つ て 顕 教 は 未 だ そ の 甚 深 な る 理 を 知 ら な い 、 今 の 秘 密 教 は そ う で な く 寂 と い い 照 と い う も そ れ は 倶 ( 同 ) 時 に 在 る の で 、 寂 と い え ば 法 界 と も に 寂 ・ 照 と い え ば 法 界 が 同 時 に 散 の す が た に 在 る を 見 る 。 散 は 寂 を 妨 げ ず 寂 は 散 を 妨 げ な い 。 如 来 の 心 内 は 実 に こ れ で あ る ﹂ と て 寂 は そ の ま ま に 照 ・ 照 は そ の ま ま に 寂 の 境 界 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 す べ て 諸 仏 の 説 法 は 必 ず 他 者 を 利 益 す る が た め に な さ れ る 。 然 る に 今 は 如 来 の 心 内 に 在 る 春 属 の た め に 自 受 法 楽 ( 自 ら 説 い て 法 味 の 楽 を 受 け る ) に 法 を 説 く 。 か よ う な 境 界 は 前 項 に 述 べ た 大 日 尊 随 自 意 め 説 法 で あ つ て 一 般 浅 劣 者 の う か が い 知 る を 得 な い 所 で あ り 唯 深 智 な る 秘 密 の 機 根 者 の み あ つ て よ く こ れ を 覚 知 す る 。 (5) 同 じ 疏 の 第 二 巻 に 金 剛 頂 経 の 文 ﹁ 時 薄 伽 梵 大 毘 盧 遮 那 如 来 は 常 に 一 切 虚 空 に お け る 一 切 如 来 の 身 口 意 金 剛 に 住 し た ま い 一 切 如 来 互 相 渉 入 す ﹂ と い う を 釈 し て 、 初 め に ビ ル シ ヤ ナ 如 来 は 常 に 法 界 体 性 に 住 し 四 智 互 に 融 入 す る を 釈 し 、 次 に 心 内 の 実 体 よ り 法 界 の 作 用 を 発 起 す る を 明 か す 。 常 に 住 す る と は 如 来 の 永 恒 な 内 証 心 智 は 法 界 を 体 性 と し た 無 差 別 智 で あ つ て 、 一 切 虚 空 界 一 切 如 来 の 身 等 の 三 密 が 常 恒 に 不 変 に 一 味 平 等 な る を 表 わ し 、 互 相 渉 入 は 如 来 の 心 内 に お い て 四 智 が 渉 入 せ る を い う 。 前 の 一 切 如 来 は 三 密 の 平 等 を 表 わ し 後 の 一 切 如 来 は 四 智 を 表 わ し て 、 共 に 法 界 体 性 の 虚 空 に 住 し 常 恒 不 変 に 平 等 に 互 相 渉 入 す る 。 換 言 す れ ば 法 界 体 性 に お い て 恒 に 四 智 の 用 あ り一一 の 智 に 各 々 法 界 性 あ り て 隔 別 し な い 。 か く て 理 慈 覚 大 師 の 密 教

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密 教 文 化 智 は 不 二 で あ り 心 内 の 法 界 体 よ り 四 弘 の 作 用 を 発 起 す る 。 前 の 三 身 問 答 で は 理 内 の 三 身 を 説 い た が 今 は 体 用 互 相 渉 入 説 を 出 し た 。 寂 照 倶 時 の 論 と 共 に 天 台 教 学 よ り 出 ず る 立 論 で あ る 。 (6 ) 同 じ 書 に は 大 日 世 尊 は こ れ 一 切 諸 法 の 根 太 礼 位 で あ り 一 切 世 間 の 依 止 す る 場 で あ つ て 、 常 恒 に 説 法 し 常 恒 に 寂 然 と し た 存 在 で あ る 。 そ れ は す べ て 法 爾 自 然 の 理 と し て あ る の で 世 情 の 推 度 や 凡 慮 の 思 索 の 結 果 作 り 出 し た も の で は な い と い い 、 ま た 本 初 の 道 理 は 寂 照 倶 時 に て 何 も の か が あ つ て こ れ を 造 作 し た と い う も の で は な い 。 し た が つ て 仏 も こ れ を 作 意 し て 増 大 す る を 得 ず 天 魔 外 道 も こ れ を 減 滅 す る を 得 な い 。 ま た ビ ル (7 ) シ ヤ ナ 経 に は 仏 の た め に は 仏 身 を 現 じ 声 聞 の た め に は 声 聞 身 を 現 じ 縁 覚 の た め に は 縁 覚 身 を 現 じ 、 或 い は 菩 薩 身 。 梵 天 身 各 々 の 境 遇 と 機 類 と に 応 じ て 自 在 に 種 々 の 身 を 実 現 す る 、 け れ ど そ れ ら 種 々 の 道 は 本 来 一 味 で あ る と 説 く 。 金 剛 頂 経 に は 大 日 の 一 身 よ り 三 十 七 尊 を 示 現 し 、 大 日 経 に は 大 日 の 一 身 よ り 種 々 不 思 議 の 神 変 を 現 ず る を 説 く 。 そ れ ら は 皆 絶 対 円 教 一 乗 の 立 場 か ら 考 え れ ば 平 等 一 味 と い う の 外 な い 。 婆 す る に 理 智 不 二 な る 法 身 に 説 法 あ り と す る が 慈 覚 大 師 の 意 で あ つ て 、 そ の 法 身 に 理 内 無 相 の 寂 体 と 有 相 の 三 密 四 智 と あ り 、 無 相 の 辺 は 寂 に し て 説 法 無 し と い う も 有 相 の 辺 は 照 に し て 智 の 説 法 あ り と す る の で あ る 。 ︹ 註 ︺ (1 )大 正 七 五 ・ 五 三 に あ り (2 )弘 法 大 師 全 集 和 三 。 八 七 (3 )大 正 一 八 ・ 一 上 (4 )同 六 一 ・ 一 五 上 (5 )大 正 六 一 ・ 二 九 下 、 同 一 八 ・ 二 〇 七 上 (6 )同 三 一 上 (7 )同 三 三 中 大 山 教 授 新 著 密 教 史 概 説 と 教 理 ( 目 次 ) 前 篇 密 教 史 概 説 序 説 第 一 章 印 度 の 密 教 一 、 密 教 の 母 胎 二 、 釈 尊 よ り 竜 猛 へ 三 、 竜 猛 ア ジ ヤ リ 以 後 第 二 章 中 国 の 密 教 一 、 伝 訳 時 代 二 、 大 成 時 代 三 、 密 教 の 伝 承 四 、 恵 果 和 尚 と そ れ 以 後 五 、 宋 朝 の 密 教 附 朝 鮮 六 、 付 法 相 承 論 第 三 章 日 本 の 密 教 一 、 密 教 の 伝 来 二 、 弘 法 大 師 三 、 入 唐 八 家 四 、 平 安 時 代 五 、 鎌 倉 代 時 六 、 室 町 時 代 七 、 徳 川 時 代 八 、 明 治 時 代 ( 七 九 頁 に 続 く )

参照

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