指 導 教 授 氏 名 指 導 役 割 印 研究の総括・総合的指導
印 印
学 位 論 文 要 旨
岡 山 大 学 大 学 院 医 歯 薬 学 総 合 研 究 科 専 攻 分 野 予 防 歯 科 学 身 分 大 学 院 生 氏 名 小 林 暉 政
論 文 題 目 Effects of coffee intake on oxidative stress during aging -related alterations in periodontal tissue
(加齢による歯周組織中の酸化ストレスに対するコーヒー摂取の効果の検討)
論 文 内 容 の 要 旨 (2000字 程 度)
【 目 的 】
加 齢 と と も に 細 胞 に お け る 活 性 酸 素 種(ROS)の 産 生 が 増 加 し 、酸 化 ス ト レ ス に よ っ て ミ ト コ ン ド リ ア のDNA損 傷 や ア ポ ト ー シ ス が 誘 導 さ れ る 。 し た が っ て 、 抗 酸 化 物 質 に よ りROSを 減 少 さ せ る こ と は 、 全 身 へ の 作 用 だ け で な く 局 所 に お い て も 加 齢 プ ロ セ ス の 抑 制 に 役 立 つ 可 能 性 が あ る 。 歯 槽 骨 吸 収 は 加 齢 と と も に 進 行 し 、ROSの 関 与 が 指 摘 さ れ て い る 。 ま た 、 抗 酸 化 物 質 は 歯 周 病 の 予 防 に 効 果 が あ る 。 一 方 、 コ ー ヒ ー は 多 く の 国 で 消 費 さ れ て い る 飲 料 で あ り 、 強 力 な 抗 酸 化 能 を も つ 。 過 去 の 疫 学 研 究 に お い て 、 コ ー ヒ ー の 摂 取 量 が 多 い 患 者 は 歯 周 病 の 重 症 度 が 低 い と 報 告 さ れ て い る 。 そ の 一 方 で 、 コ ー ヒ ー や 高 用 量 カ フ ェ イ ン の 摂 取 に よ り 歯 周 状 態 が 悪 化 す る と い う 報 告 も あ る 。 し か し 、 コ ー ヒ ー の 摂 取 が 加 齢 に 伴 う 歯 周 組 織 の 変 化 に ど の よ う な 影 響 を 及 ぼ す か に つ い て は 不 明 で あ る 。
以 上 の 背 景 か ら 、コ ー ヒ ー の 摂 取 が 全 身 の 抗 酸 化 能 を 高 め 、局 所 に お い て も 加 齢 に 伴 う 歯 周 組 織 中 の 酸 化 ス ト レ ス の 増 加 を 抑 制 し 、 歯 槽 骨 吸 収 を 抑 制 す る と い う 仮 説 を 設 定 し た 。 本 研 究 の 目 的 は 、 ラ ッ ト の 加 齢 に 伴 う 歯 周 組 織 中 の 酸 化 ス ト レ ス 産 生 お よ び 歯 槽 骨 吸 収 に 対 す る 、 コ ー ヒ ー 摂 取 に よ る 抑 制 効 果 に つ い て 検 討 す る こ と で あ る 。
【 方 法 】
8週 齢 のFischer344系 雄 性 ラ ッ ト を 、ベ ー ス ラ イ ン 群 、通 常 食 群 、コ ー ヒ ー 含 有 粉 末 食 群 (0.62%コ ー ヒ ー 群 と1.36%コ ー ヒ ー 群 ) の4群 に 分 け た ( 各 群8匹 ず つ 、 計32匹 ) 。 ベ ー ス ラ イ ン 群 は 直 ち に 屠 殺 し 、そ の 他 の 群 は12週 間 飼 育 後 に 屠 殺 し 、血 液 、下 顎 骨 、 そ し て 歯 周 軟 組 織 を 採 取 し た 。 血 清 中 の 酸 化 ス ト レ ス の 指 標 と し てROSに よ る 代 謝 産 物 の 一 つ で あ るreactive oxygen metabol ites(ROM) を 、 抗 酸 化 能 の 指 標 と し てOXY adsorbentを 測 定 し た 。 歯 槽 骨 吸 収 の 評 価 と し て 、 第 一 臼 歯 の セ メ ン ト - エ ナ メ ル 境 と 歯 槽 骨 頂 間 の 距 離 を 測 定 し た 。 歯 周 軟 組 織 中 の 酸 化 ス ト レ ス の 評 価 と し て 、 8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)の 免 疫 染 色 を 、抗 酸 化 能 の 評 価 と し て 、nuclear factor erythroid 2 -related factor 2(Nrf2)の 蛍 光 染 色 を 行 い 、8-OHdGの 陽 性 細 胞 率 お よ びNrf2 の 核 内 移 行 率 を 算 出 し た 。 さ ら に 、 採 取 し た 歯 周 軟 組 織 を 凍 結 破 砕 し た 後 、RNAを 抽 出 し 、 酸 化 ス ト レ ス お よ び 抗 酸 化 防 御 関 連 遺 伝 子 を 対 象 と し た 逆 転 写 定 量PCRア レ イ 解 析 を 行 い 、 歯 周 軟 組 織 中 の 酸 化 ・ 抗 酸 化 関 連 遺 伝 子 に つ い て 発 現 が 変 動 す る も の を 検 索 し た 。 多 群 間 の 比 較 に はTukey法 を 、2群 間 の 比 較 に はStudent t検 定 を 用 い た 。 有 意 水 準 は5%と し た 。
様 式 甲 - 3
【 結 果 】
血 清 中 のROMは 、 ベ ー ス ラ イ ン 群 で い ず れ の 群 よ り も 有 意 に 低 く (p = 0.023) 、 コ ー ヒ ー 摂 取 の2群 で は 通 常 食 群 よ り も 低 い 傾 向 に あ っ た が 、 有 意 な 差 は な か っ た 。 一 方 、 血 清 中 のOXY adsorbentは 、1.36% コ ー ヒ ー 群 で い ず れ の 群 よ り も 有 意 に 高 か っ た 。 歯 周 軟 組 織 中 の8-OHdG陽 性 細 胞 率 は 、通 常 食 群 で ベ ー ス ラ イ ン 群 よ り も 有 意 に 高 く(p <
0.001) 、1.36% コ ー ヒ ー 群 で は 通 常 食 群 お よ び0.62% コ ー ヒ ー 群 よ り も 有 意 に 低 か っ た (p = 0.001お よ びp = 0.018) 。 歯 槽 骨 吸 収 量 は 、 通 常 食 群 で ベ ー ス ラ イ ン 群 よ り も 有 意 に 大 き く (p < 0.001) 、1.36% コ ー ヒ ー 群 で は 通 常 食 群 よ り も 有 意 に 低 か っ た 。 Nrf2核 内 移 行 率 は 、1.36% コ ー ヒ ー 群 で 通 常 食 群 よ り も 有 意 に 高 か っ た (p = 0.008) 。 ま た 、1.36%コ ー ヒ ー 群 の 歯 周 軟 組 織 中 で 通 常 食 群 よ り も 発 現 量 が2倍 以 上 で あ っ た 酸 化 ・ 抗 酸 化 関 連 遺 伝 子 と し て 、 抗 酸 化 関 連 遺 伝 子 で あ るGlutamate cysteine ligase、 Ferritin、 そ し てHypoxanthine phosphoribosyl transferase 1を 検 出 し た 。
【 考 察 】
血 清 中 のOXY adsorbentが1.36%コ ー ヒ ー 群 で 通 常 食 群 よ り も 有 意 に 増 加 し た こ と か ら 、 コ ー ヒ ー 摂 取 に よ っ て 全 身 血 清 中 の 抗 酸 化 能 が 亢 進 し た と 考 え ら れ る 。
歯 周 組 織 に お け る8-OHdG陽 性 細 胞 率 が 、通 常 食 群 で ベ ー ス ラ イ ン 群 よ り も 有 意 に 高 い 一 方 、1.36%コ ー ヒ ー 群 で は 通 常 食 餌 群 よ り も 有 意 に 低 か っ た 。さ ら に 、Nrf2核 内 移 行 率 が1.36%コ ー ヒ ー 群 で 通 常 食 群 よ り も 有 意 に 高 か っ た こ と と 、1.36%コ ー ヒ ー 群 の 歯 周 軟 組 織 中 で 通 常 食 群 よ り も 発 現 量 が2倍 以 上 で あ っ た 抗 酸 化 関 連 遺 伝 子 が 検 出 さ れ た こ と か ら 、加 齢 に よ っ て 歯 周 組 織 で 産 生 さ れ た8-OHdGがNrf2を 介 し た 抗 酸 化 反 応 に よ っ て 減 少 し た と 考 え ら れ る 。
歯 槽 骨 吸 収 量 が 、通 常 食 群 で 有 意 に 大 き く 、1.36%コ ー ヒ ー 群 で 有 意 に 小 さ か っ た と い う 最 終 的 効 果 を 現 し た 。 こ の 効 果 に 至 る ま で は 、 コ ー ヒ ー を 継 続 的 に 摂 取 す る と , コ ー ヒ ー 中 の ポ リ フ ェ ノ ー ル ( ク ロ ロ ゲ ン 酸 類 な ど ) が 血 中 へ 移 行 す る こ と で 、 全 身 の 血 液 中 の 抗 酸 化 能 が 高 ま る 。 全 身 循 環 か ら 歯 周 組 織 へ 至 る と 、 歯 周 軟 組 織 の 細 胞 に 存 在 す るNrf2の 核 内 へ の 移 行 を 促 す 。 核 内 へ 移 行 し たNrf2はAntioxidant responsive element(ARE) に 作 用 し 、 抗 酸 化 物 質 を 放 出 し 、 酸 化 ス ト レ ス と そ れ に 伴 う 骨 芽 細 胞 の 機 能 低 下 お よ び 破 骨 細 胞 の 活 性 化 を 抑 制 す る こ と で 歯 槽 骨 吸 収 の 進 行 を 抑 制 す る こ と が わ か っ て お り 、 本 実 験 に お い て も 加 齢 に 伴 う 歯 周 組 織 中 の 酸 化 ス ト レ ス 産 生 と 歯 槽 骨 吸 収 の 進 行 を 抑 制 し た 可 能 性 が 考 え ら れ る 。
【 結 論 】
1.36%コ ー ヒ ー 含 有 飼 料 を 摂 取 し た ラ ッ ト で は 、全 身 血 清 中 の 抗 酸 化 能 が 上 昇 し 、局 所 の 歯 周 軟 組 織 の 細 胞 に お い て もNrf2核 内 移 行 が 増 加 す る こ と で 加 齢 に 伴 う 歯 周 組 織 中 の 酸 化 ス ト レ ス 産 生 と 歯 槽 骨 吸 収 が 抑 制 さ れ る こ と が 示 唆 さ れ た 。
様 式 甲 - 3