博 士 ( 医 学 ) 李 栗
学位論文題名
DRD2/DARPP ― 32 Expression Correlates with Lymph Node INtIetastasis and Tumor Progressionln Patients with Esophageal Squamous Cell Carcinoma
(食道扁平上皮癌症例におけるDRD2/DARPP ―32 遺伝子の発現は り ン パ 節 転 移 及 び 腫 瘍 の 進 行 度 と 相 関 す る )
学位論文内容の要旨
【緒言】
食道癌は、予後が極めて不良な疾患である。外科的技術と術中管理の進歩により、生存率が改善された ものの、全症例の 5 年生存率は、50% 未満にとどまっている。
近年、腫瘍細胞の遊走性はドーパミン、ノルエピネフリン等の神経伝達物質によって誘導されることが 報告された。神経伝達物質が直接遺伝子発現を制御し、遊走能を増大させることによって、腫瘍細胞の転 移能が誘導される。
ドーパミンは、消化器における主要な神経伝達物質である。ドーパミンレセプター(DR) を活性化させ ることによって 、遺伝子発現を制御している。DR には5 種類のサブタイプ(DRDl‑DRD5) があり、すべて のサブタイプは 七回膜貫通型タンパクであり、三量体GIP 結合タンパク質に属する。ドーパミンがDR を 介した、複数の 経路で DARPP‑32 のりン酸化を制御することが知られている。たとえば、DRD1 が活性化 されることによって、 cAMP 濃度が増大する。すると、プロテインキナーゼA (PKA )が活´陸化され、チ ロシン 34 がりン 酸化された DARPP132 がプロテインホスファターゼ 1 任 P ‐1 )を強く抑制する。DRD2 の 活性化は、二通りの機序でりン酸化されたD ´6 心P 一32 を減少させる:一っは、アデニリルシクラーゼを抑 制し、 cAMP 濃度 を減少させるところで、H 強 の漕陸を減少し、DARPP132 のりン酸化を減少させる;他 は、細胞内(ニa2 十を増加させて、カルシニュリンを活性化し、D 甜卿‐32 のチロシン34 を脱リン酸化させ る。
血Vitr0 における研究では、腫瘍細胞の増殖がドーパミンによって直接抑制されことが示された。近年、
血漿ドーパミン濃度が、健常のボランティアと比較して、肺恩陸腫瘍では有意に高値であることが判明さ れた。また、DR の発現は多くの他の悪´陸瞳瘍で、例えば胃癌、大腸癌、乳がん、悪性黒色腫や下垂体腫 瘍 など で見 られ てい る。 本研 究 では122 例の食 道扁平上皮癌( ESCC )に於けるDRD1 , DRD2 の発現と DARPP132 の発現の相関、また、これらと症例の予後および臨床病理学的因子との相関を、免疫組織化学 的手法を用いて検討した。
【対象と方法】
1989 年から 1999 年までに北海道大学病院第2 外科およぴその関連病院において外科的に切除された、遠 隔転陟のない、術前未治療の ESCC 症例122 例を対象とした。ホルマリン固定パラフイン包埋組織より4 ロ m 厚の薄切切片を 作製し、これ用いて免壊孫B 織染色を行った。
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薄 切切 片、 キシ レン を 用い て脱 パラ フイ ン 化し 、エ タノ ー ルを 段階希釈した溶液を通し て水和させた。
抗 原 賦活 のた め120℃ で12min処理 し、 内因 性 ′ル レオ キシ ダ ーゼ に対しては、0.3%過酸化 水素で30分間処 理 し た 。PBSで 希 釈 し たrabbit抗‑DRDl (1:500希 釈,Calbiocheq324390) と 抗‐ 班u)2(1:450希釈 , 曲emi∞nInternationdkIc.Temecula, (A,AB1558) ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 一 次 抗 体 と し て 用 い 、 4℃ に て 一 晩 反 応 さ せ た 。 洗 浄 後 、 二 次 抗 体 を 反 応 さ せ 、n狃 とDABH202を 用 い て 発 色 さ せ た。 核染 色 と し てへ マト キシ リン を 用い た。 同一 切片 に 存在 する 神経 節 細胞 を陽性対照とした。染色 強度の判定は、
陽性 対照を参考にして、陽は+ )と陰´f生(うに分類した 。症例は、DRD1とDRD2の発現 を基にして、以下の 4っの群に分類された:DRD1脚2(+ /十)、DRD1/DRD2(小)、DRD1/DRD2(・・/+)とDRD1ゆ耐)2(一/一)。
同様 に、他の群分けとして、DRD1凪ARPP‐32(+/+)、DRD1凪ARPPう2(小)、DRD1凪AR即一32(―/+)、
DRDl/DARPP−32(ナ)とDRD2/DARPP.32(十/十)、DRD2皿) ARPP.32(十/l)、DRD2皿) ARPPー32(‐/十)と DRD加)Am)P・32(./.)と 分類された。以上の分類に従って、臨床病理学的因子との相関を統計学的に解析 分 類 さ れ た 。 以 上 の 分 類 に 従 っ て 、 臨 床 病 理 学 的 因 子 と の 相 関 を 統 計 学 的 に 解 析 し た 。 統 計 用 ソ フ ト ウ エ アStatview5.0を 用 い 、DRの 発 現 と 組 織 病 理学 的因 子 との 相関 をぞ 検 定も しく は 聡herの直 接法 瑚 噺. した 累積 生 存率 は、Kapl孤.Meier法によ って求め、統計学的有意性はlog.rank法で 検 定 した 。単 変量 ・多 変 量あ 晰は (k比例 ハザ ード モ デル を用 いた 。P値がO●05未 満を 有 意差有りと定義 した。
【結果】
染 色 は 、 他 の 報 告 と 同 様 に 腫 瘍 細 胞の 細胞 膜 と細 胞質 に認 め られ た。122例の うち 、DRD1の陽 性症 例 は63例 ;DRD2の 陽 陸 例 は60例 で あ っ た 。DRD1の 発 現 と 分 化 度 と の 問 に 有 意 な 相 関 を 認 め た 。DRD2 の 発 現 と 病 理 病 期 、N因 子 と 間 に 有 意な 相関 を認 めた 。DRD1とDRD2と の発 現 に正 相関 が認 め られ たが 、 DRD1およぴDRD2の発現とn气心 P‐32との発現に|瓣目関が認めなかった。
DRD1ゆA触)P‐32の組合せで群分けした場合、(十′+)/(・/十)群と(小)/(壬)群では、p・N、pIT、およ び腫 瘍径に著しい差が見られた 。同様に、DIm1ゆRD2の組み 合わせで(十/十)/(・/十)群と(小)/(チ)
群では、p・N、p・T、病理病期と腫窃径に差が見られ也
同 様 にDRD飢 )ARPP‐32( 小 ) 群 は 病 理 病 期 、pN、pT、 腫 瘍 径 に 有 意 な 相 関 を 認 め た 。 同 様 に 、 DRD1圧)ARPP‐32(→./+)および(十/‐)群は病理病期、pT丶pN、腫瘍径に有意な相関を認めた。DRD1/DRD2
( り ) お よび は) 群 は病 理病 期、pNに有 意な 相関 を認 め た。DRD2ゆAm,P‐32(+/I)群 は他 の3つの 群 と 比 較し て、 有意 に予 後 不良 であ った 。多 変 量解 析で の検 討 では 、DRD加 )ARPP‐32は 独 立予後因子では なか った。DRD1ゆARPP‐32の( →・/+)と(小)グループ は他の2つのグループと比べ て、有意的に予後良 好であった。
【考 察】
神 経伝 達物 質が 接着 能 、遊 走能 、白 血球 の 帰巣 能を 制御 す ることが知られている。近年 では、神経伝達 物 質 はDR、p2‑adrenoceptors或いは ニューロキニン―1レセプタ ーの活J陸化を通して、腫瘍 細胞の遊走能を 増 大 さ せ る こ と が 報 告 さ れ た 。DARPP−32は 、ド ーパ ミ ン情 報伝 達に 関 する 重要 な役 割を 演 じて いる 。 DARPP‑32は 、DRの 活 | 陸 化 を 介 し て 、MAPKとCREBの り ン 酸 化 を 制 御 し て い る 。DARPP‑32ノ ッ ク ア ウ ト マ ウ ス に お い て は 、MAPKとCREBの り ン 酸 化 レ ベ ル が 亢 進 し て お り 、DRsを 介 し た 、MAPK、CREB リ ン 酸 化 が 誘 導 さ れ な い 。DRDVDRD2の 発 現 と 予 後 に は 相 関 が な か っ た こ と か ら 、ESCC患 者 に てDRD1 ま た はDRD2の 過 剰 発 現 の み で は 予 後 を 予 測 で き な い こ と が 示 唆 さ れ た 。DRD1、DRD2とDARPP‑32の 発 現 の 相 関 関 係 か ら 見 る と 、DRD1とDRD2の 発 現 機 序 が 類 似 し て い る 一 方 で 、DRとDARPP‑32の 発 現 機 序 は全 く異 なっ てい る と考 えら れる 。
神 経 系 で は 、DRD2/DARPP‑32/PP‑1経 路 に よ っ て 、DRD2が 活 性 化 さ れ た 場 合 、CREB発 現 が 低 下 し 、 増 殖 が低 下す る。 この こ とか ら、 当初 、DRD2/DARPP‑32(−/ +)群は予後不良であると仮 説を立てた。し か し 、 本 研 究 で は 逆 に 、DRD2/DARPP‑32(+ /. )群 が 他の 群と 比較 し て、 有意 に予 後不 良 であ った 。
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DRD2/DARPP‑32/PP‑1 経路がESCC では正常に機能していない可飽陸が示唆された。また、同じ病期にお ける症例間で全ての DRD2/DARPP‑32 組み合わせを比較検討したが、有意な差が認められたかった。全て DRDl/DARPP‑32 群の解 析から 、 ESCC におけ る予後 への影響 はDRD1 では なく、DARI )P‑32 に依存する ことが判明した。同様に、DRDl/DRD2 の組合せにおいても、DRD2 に依存して有意差が認められている。
DRDl/DARPP‑32 ま たは DRDl/DRD2 で は 、 DRD1 の 相 加 作用 は 認 めな か っ た 。 DRDl/DRD2 の 染 色が原 発部 分よりむ しろ浸 潤部分に 強かっ たことか ら DRDl/DRD2 が腫瘍の 浸潤に 相関する可能性がある。
DRD2/DARPP‑32 (ヰ) 群が他の群と比べて、病理病期、 pN に有意な相関を認めたことからESCC では、
DRD2¥/DARPP‑32 の 発 現 が り ン パ 節 転 移 と 腫 瘍 進 行 度 の 指 漂 に な る か も し れ な い 。 DRs の生物学的機能が癌において、未だ不明な点が多く、更なる研究が必要である。結論として、本研 究は、 DRD2/DARPP‑32 の発現がりンパ節輯陟と腫瘍進行度と関係しており、DRD2/DARPP‑32 発現がESCC 患者にて予後予測因子になる司 1 詣陸が示唆された。
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