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学位論文題名A molecular phylogenetic study of the heterotrophicdinoflagellate genus Protoperidiniu7n (Dinophyceae)

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 山 口 愛 果

     学位論文題名

A molecular phylogenetic study of the heterotrophic dinoflagellate genus Protoperidiniu7n (Dinophyceae)

(従属栄養性渦鞭毛藻プロトベリデイニウム属(渦鞭毛藻綱)の      分子系統学的研究)

学位 論文内容の要旨

  Protoper idinium属は260種以 上が知ら れる渦 鞭毛藻最大の属である。本属は細胞 全体を覆 うセルロ ース質 の鎧板の 枚数に 基づぃて 亜属に 、さらに 、特定の 鎧板や細 胞全体の 形をどの 複数の 形質の組 み合わ せによっ て飾に 細分され ている。 しかし、

形態が非 常に多様 である ことから 、実際 はどの形 質が系 統を反映 している のか判定 が難しい 。また、 ー部の 種は生活 環中に シスト( 休眠胞 子)期を もっが、 遊泳細胞 とは形態 が大きく 異なる ことから 両者の 対応関係 は明ら かでない 場合が多 い。さら に、シス トに見ら れる形 態変異が 種内変 異か、あ るいは 種の違い を反映し ているの かについ ても十分 な知見 がない。 このよ うな問題 の解決 には分子 系統学的 方法が有 効である が、本属 に関し てはその ような 研究がほ とんど なされて いなかっ た。この ような背景から本研究は、1)分子系統学的手法を用いて、本属の進化過程を推定し、

属内の種 間の系統 関係を 明らかに して現 在提唱さ れてい る分類体 系を再検 討する、

2)発 芽実験、 形態観 察と分子 系統解 析を組み 合わせることによルシストと遊泳細胞 の対応関係を解明することを目的とした。

  第1章 で は 、 単 細 胞PCR法 を 用 い て 、 小 サ ブ ユ ニ ッ ト ・ リ ボソ ー ムRNA遺 伝子 (SSU rDNA)と 大 サ ブ ュ ニ ッ ト ・ リ ボ ソ ー ムRNA遺 伝 子(LSUrDNA) (Dl‑D6領 域)の配 列を本属26種ずっ について決定し、最近公表された本属12種の配列を加え、

合計 で4亜属10飾に 属 する 種につ いて系統 解析をお こなっ た。また 、同じ く戚近公 表された 本属に近 縁と考 えられて いる海 産有殻従 属栄養 性種のグ ループ( まとめて ディプロ プサリス 類と呼 ぶ)7種の配 列もデー タセットに含めた。系統樹は最大節約 法、近隣 結合法、 最尤法 を用いて 構築し た。SSU rDNAデ ータセッ トによ る解析結果 では、Oceanica節がディ プロプサ リス類 とクレー ドを形 成するた め、本 属の単系統 性は 示 さ れな か っ た。 一 方 、LSU rDNAデ ー タ セ ットに よる解析 では本 属は単系 統 とな っ た 。こ のSSUとLSU rDNA解 析結 果 の 違 いは 、 各 デー タ セ ット に 含 まれ るデ イプロプ サリス類 の穏が 異なるためと考えられ、「ディプロプサリス類クレード」、

「Oceanica節(Tester ia亜属を含む)クレード」、「その他のProtoper idiniumクレード」

の系統関係については結諭が出なかった。

    しかしながら、全ての解析において、本属は「Oceanica節/Tester ia亜属クレード」

と「その 他の種の クレー ド」に分かれることが示された。「その他の種のクレード」

内では、 前挿間板 が1枚少ない ことか らArchaeper idinium亜属に分類される2つの節 (AvellanaとExcentr ica節) がConica節の メンバ ーからそ れぞれ 独立して 派生する

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ことが示唆された 。さらに、Avellana節、Excentr ica節とは別にDivergentia節/鬥『 mfZ血 節/P′D卿e′fd珈fHm節/り′めrmぬ節/Aガ門甜JcHfHm亜属のクレード(Meta/paraクレード)

も 派 生 す る こ と か ら 、 「 そ の 他 の 穏 の ク レ ー ド 」 内 で はCDnぬ 節 が 原 始 的 な 種 の 集 ま りで あ るこ とが 示唆された。 また、前挿間板が2枚少ない 乃sセrぬ亜属の種は〇cピロ 門fcロ 節 に 含 ま れ 、 前 帯 板 の 枚 数 が1枚 少 な いAガ れHざcMZHm亜 属 の 種 はMetソparaク レ ー ド 内 に 位 置 し 、 さ ら にPrD卿 ガ 泌mfHm節 と 近 縁 で あ る こ と が 支 持 さ れ た 。CD門f閲 節 、

〇c印nf齟 飾 、Pm比p釘 迦 門fHm節 を 除 く 各 節 の 単 系 統 性 は 強 く 支 持 さ れ た 。 以 上 の こ と か ら 、 伝 統 的 な 分 類 体 系 が 節 レ ベ ル で ほ ぼ 妥 当 で あ る 一 方 、 本 属 内 の 複 数 の 系 統 で 鎧 板 枚 数 の 減 少 が 散 在 的 に 起 こ っ た こ と が 示 唆 さ れ た た め 、 鎧 板 枚 数 の 違 い に よ って分類される亜 属は系統を反映しないことが 明らかになった。

  SSUとLSUrDNAそ れ ぞ れ に お い て 、 配 列 の 種 内 変 異 が い く っ か の 種 で 見 っ か っ た 。 特 にP.cD fc mで は 大き な 割合 で塩 基置 換が あ り、 隠蔽 種の 存 在が 示唆 され た。

ま た 、 渦 鞭 毛 藻 綱 全 体 に お け る 本 属 の 系 統 的 位 置 に つ い て は 、 用 い た 遺 伝 子 の 解 像 度が系統樹の深い 位置で低く、明確な結論は得 られなかった。

  第2章 で は 、 本 研 究 で 用 い た 本 属 合 計27種 の 形 態 的 特 徴 を 記 載 し た 。 単 細 胞PCR 法 で は そ の 性 質 上 、 証 拠 標 本 を 残 す こ と が 不 可 能 で あ る た め 、 実 際 にPCRに 用 い た 細 胞 そ れ ぞ れ に つ い て 高 品 質 の 光 学 ま た は 螢 光 顕 微 鏡 写 真 を 記 録 と し て 残 す こ と が 重 要 で あ る 。 本 章 に 掲 載 し た 写 真 は 分 子 デ ー タ の 種 名 確 認 の た め の 証 拠 写 真 と し て も機能する。

  第3章 で は 、P.Dみ めngMmの も の と 同 定 さ れ て き た シ ス ト の 発 芽 実 験 を お こ な い 、 発 芽 遊 泳 細 胞 の 形 態 観 察 と 分 子 系 統 解 析 に よ っ て シ ス ト ― 遊 泳 細 胞 の 対 応 関 係 を 調 べ た 。 そ の 結 果 、 シ ス ト に は2つ の 形 態 タ イ プ が 見 ら れ 、 そ れ ぞ れ の シ ス ト か ら は 遺 伝 的 に 異 な る 遊 泳 細 胞 が 発 芽 し 、 そ の 遊 泳 細 胞 同 士 も 観 察 し に く い 部 位 の 鎧 板 の 形が 明 確に 異な るこ とが 明 らか にな った 。 従っ て、P.Dみめ 門g甜所 の シス 卜に 見ら れる 形 態 変 異 は 種 内 変 異 で は な く 、 種 の 違 い を 反 映 し て い る こ と が 判 明 し た 。 こ れ ら2 種 の 遊 泳 細 胞 の 形 態 は い ず れ もP.D6め 門gMmの 原 記 載 と は 異 な っ て い た 。 こ れら はそ れ ぞ れ 種 と し て 認 識 さ れ る べ き で あ り 、1種 は 過 去 に 記 載 さ れ て い た 変 種 を 種 に 格 上げし、新組み合 わせPm閉P釘織凡fHmfれロピgHロセcomb.etstat.nov.とすることを提案し た。 も う一 種はPPr泌加fHmDみめ 咒 ぎHmvar・づmけ地frをMmDangeardに類似しており 、この 変 種 を も と に 種 に 格 上 げ す る こ と を 検 討 し た が 、 本 変 種 に 類 似 し た 形 態 を 持 ち な が ら 遺 伝 的 に 異 な る 種 が 海 外 か ら 報 告 さ れ て お り 、 ど ち ら がP.D6め 惱nmvar. ザれmぞ ケfc mに近 いの か 判断 でき ず、 分 類学 的措 置に つい て は保留とした。本研 究は、

遊 泳 細 胞 で は 形 態 的 差 異 を 認 識 し に く い 種 同 士 で も 、 シ ス ト 形 態 が 種 の 違 い を よ り 明確に反映するこ とを本属において初めて分子 レベルで実証した。

  第4章 で は 、 本 属 の 種 の 摂 餌 実 験 を お こ な っ た 。 本 属 は 「pmliumfeeding」 と 呼 ば れ る 特 殊 な 細 胞 外 消 化 機 構 を 持 つ こ と で 知 ら れ る 。 今 ま で の 本 属 の 種 の 培 養 は 、 珪 藻 や 光 合 成 性 渦 鞭 毛 藻 な ど の 生 物 餌 料 を 与 え る こ と で 確 立 さ れ て き た 。 し か し 、 こ の よ う な 混 合 培 養 で は 、 餌 生 物 か ら のDNAや 有 機 化 合 物 の 混 入 が 避 け ら れ ず 、 本 属 の 種 の 分 子 生 物 学 的 な 研 究 や 生 化 学 的 研 究 に は 不 適 当 で あ る 。 こ の 点 を 克 服 す る た め に 本 研 究 で は 非 細 胞 性 餌 料 を 用 い た 培 養 を 試 み た 。 様 カ な 種 と 様 々 な 餌 の 組 み 合 わ せ に よ る 培 養 実 験 の 結 果 、Pc朋Jざ ル ピJに 白 玉 餅 粉 を 与 え て 増 殖 さ せ 、 培 養株 を確 立 す る こ と に 成 功 し た 。 興 味 深 い こ と に こ の 組 み 合 わ せ で は 再 現 性 が あ っ た が 、 そ れ以外の種の培養 は全く成功しなかった。

  以 上 、 本 研 究 は 現 行 の 属 内 分 類 体 系 で 提 唱 さ れ る 全 て の 亜 属 と ほ ば 全 て の 節 に 属 す る 種 を 網 羅 し た 系 統 解 析 を お こ な い 、 本 属 の 進 化 過 程 、 形 態 進 化 の 理 解 に 貢 献 し た 。 そ の 結 果 は 大 規 模 な 分 類 学 的 改 変 の 必 要 性 を 示 唆 す る も の で あ り 、 よ り 自 然 な

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分類系を構築するための基礎を提供した。また、本属の種の分類におけるシスト形 態 の 重 要 性 を 初 め て 分 子 レ ベ ル で 明 ら か に す る こ と が で き た 。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

主 査   助 教 授   堀 口 健 雄 副 査   教 授   増 田 道 夫

副査   教授   本村泰三(北方生物圏フイールド      科学センター)

副 査   助 教 授   小 亀 一 弘

     学位論文題名

A molecular phylogenetic study of the heterotrophic dinoflagellate genus Protoper 泌励Z 銘0 髭(DinophyCeae )

(従属栄養性渦鞭毛藻プロトペリデイニウム属(渦鞭毛藻綱)の      分子系統学的研究)

  Protoperidinium属 は260種以上が 知られ る渦鞭毛 藻最大の 属であ る。本属 は細胞 全体を覆 うセ ルロース 質の鎧 板の枚数 に基づ ぃて亜属 に、さらに、特定の鎧板や細胞全体の形などの複数の形質 の組み合 わせに よって節 に細分 されてい る。しかし形態が非常に多様であることから、実際はどの 形質が系 統を反 映してい るのか 判定が難 しい。また、一部の種は生活環中にシスト(休眠胞子)期 をもっが 、遊泳 細胞とは 形態が 大きく異 なることから両者の対応関係は明らかでない場合が多い。

さらに、 シスト に見られ る形態 変異が種 内変異か、あるいは種の違いを反映しているのかについて も十分な 知見が ない。こ のよう な問題の 解決には分子系統学的方法が有効であるが,本属に関して は先行研 究がほ とんどな かった 。以上の 背景から 本研究 は、1)分子 系統学的手法を用いて、本属 の進化過 程を推 定し、属 内の種 問の系統 関係を明らかにして現在提唱されている分類体系を再検討 する、2)発 芽実験、 形態観察 と分子 系統解析 を組み 合わせる ことに よルシストと遊泳細胞の対応 関係を解明することを目的としたものである。

第1章 で は 、 単 細 胞PCR法 を 用 い て 、 小 サ ブ ュ ニ ッ ト・ リ ボ ソ ームRNA遺 伝 子(SSU rDNA)と 大 サブ ユ ニ ット ・ リ ポソ ー ムRNA遺 伝 子(LSU rDNA)(Dl−D6領 域)の 配列を本 属26種ず っについ て 決定し系 統解析 をおこなった。全ての解析において、本属は「Oceanica節/Testeria亜属クレード」

と「その 他の種 のクレー ド」に 分かれる ことが示された。「その他の種のクレード」内では、前挿 間板 が1枚少 な い こと か らArchaeperidinium亜属 に分類さ れる2つの節 (イvellanaとExcentrica 節)がConica節のメン バーか らそれぞ れ独立し て派生 すること が示唆 された。 さらに 、Avellana 節、Excentrjca節と は 別 に めレe増entja節 価 加jJja節/陽 〇 亡0pぱfめnj伽 節/ 竹リjf0抽ja節 /鮒nuscu|伽亜属のクレード(Meta/paraクレード)も派生することから、「その他の種のクレード」

内で は のnjca節が 原 始 的な 種 の 集 まり で あ るこ と が 示唆 さ れ た。 ま た 、前 挿 問 板が2枚少な い 殆sと 釘ja亜属 の種は〇cea口jca節に 含まれ、 前帯板 の枚数が1枚 少ない鮒n sc |伽亜属の種は Meta/paraクレード内に位置し、さらにル〇t〇perjめnj珊節と近縁であることが支持された。のnjca 節、〇cea冂jca節、尸rotoperjめnj伽節を除く各節の単系統性は強く支持された。以上のことから、

伝統的な 分類体 系が節レ ベルで ほぼ妥当 である一方、複数の系統で鎧板枚数の減少が独立的に起こ っ た め 鎧 板 枚 数 の 違い に よ って 分 類 され る 亜 属は 系 統 を反 映 し な いこ と が 明ら か に なっ た 。   第2章で は 、 本研 究 で 用い た 本 属 合計27種の 形 態 的特徴 を記載 した。単 細胞PCR法では その性 質上、証 拠標本 を残すこ とが不 可能であ るため、 実際にPCRに用 いた細胞それぞれについて高品質 の光学ま たは螢 光頭微鏡 写真を 記録とし て残すことが重要である。本章に掲載した写真は分子デー タの種名確認のための証拠写真としても機能するものである。

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章では、P oblongum のものと同定されてきたシス卜の発芽実験をおこない、発芽遊泳細胞 の形態観察と分子系統解析によってシスト―遊泳細胞の対応関係を調べた。その結果、シストには

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つの形態タイプが見られ、それぞれのシストからは遺伝的に異なる遊泳細胞が発芽し、その遊泳 細胞同士も観察しにくい部位の鎧板の形が異なることが明らかになった。従ってシストに見られる 形態変異は種内変異ではなく、種の違いを反映していることが判明した。本研究は、遊泳細胞では 形態的差異を認識しにくい種同士でも、シスト形態が種の違いをより明確に反映することを本属に おいて初めて分子レベルで実証したものである。

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章では、本属の種の摂餌実験をおこなった。今までの本属の種の培養は、珪藻などの生物餌 料を与えることで確立されてきた。しかし、このような混合培養では、餌生物からの

DNA

や有機化 合物の混入が避けられず、本属の種の分子生物学的な研究や生化学的研究には不適当である。この 点を克服するために本研究では非細胞性餌料を用いた培養を試み白玉餅粉を与えることによりP

crassi pes

の培養株を確立することに成功した。

これを要するに,著者は,渦鞭毛藻Protoperidin ゴum 属において現行の属内分類体系で提唱され る全ての亜属とほぼ全ての節に属する種を網羅した系統解析をおこない、本属の進化過程、形態進 化の理解に貢献し、さらに本属の種の分類におけるシスト形態の重要性を初めて分子レベルで明ら かにするなど、渦鞭毛藻類最大属の多様性に関して多くの新知見を得たもので,生物学に貢献する ところ大なるものがある。

  

よっ て 著者 は , 北海 道 大学 博士( 理学)の 学位を授 与される 資格あるも のと認め る。

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