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学位論文題名PTHrP promotes malignancy of human oral cancer cell downstream of the EGFR signaling

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 山 田 珠 希

     学位論文題名

PTHrP promotes malignancy of human oral cancer     cell downstream of the EGFR signaling

(EGFR シグナル伝達経路の下流で産生された PTHrP は      ヒ ト 口 腔 癌 細 胞 の 悪 性 化 に 関 与 す る )

学位論文内容の要旨

  扁平上皮癌は口腔領域の悪性腫瘍の 中で最も頻度が高く、著明な局所浸潤能を示すこと が少くない。口腔扁平上皮癌が近接す る顎骨に広範囲に浸潤した際には外科的骨離断術を 施行せねばならないことが多く、術後の患者のguality童life (QOL)に多大なる影響を及ぼ す。こうした患者のQOLの保持・向上のためには、骨離断術に代わ る低侵襲性の保存的治 療法の確立が急務である。

  Parathyroid hormone‑related protein (PTHrP)は破骨細胞性骨吸収を誘導する因子とし て同定され、近年、悪性腫瘍存在下に おける高カルシウム血症の誘導因子であることが明 らかとなっている。また、PTHrPは乳癌・大腸癌・前立腺癌などにおいて、癌細胞の増殖・

生存・接着・移動・浸潤等の悪性形質発現に関与していることが報告されている。しかし、

口腔癌においては、PTHrPの発現の有無について報告したものはほ とんどなく、悪性形質 との関連性についても不明な点が多い 。そこで本研究では、口腔扁平上皮癌の悪性形質発 現とPTHrPとの 関わ りつ いて 検索 し、 さら にPTHrPの 発現 ヌカ ニズ ムを解明することを 目的として実験を行なった。

  実験には、5種類のヒト口腔扁平上皮癌細胞株(SAS,Ca9‑22,HSC‑2,HSC‑3,HSC‑4)を用 い、ヒト正常歯肉線維芽細胞(HGF)をコント口ールとして使用した。これらの細胞株におけ るPTHrPのmRNA及 び タ ン パ ク の 発 現 を解 析し たと ころ 、SASを除 く全 ての 癌細 胞株 で PTHrPのmRNAと タ ン パ ク の 発 現 が 認 め ら れ た 。 と く に 、HSC‑2お よ びHSC‑4細 胞 で はPTHrPの 発現 が著 しく 亢進 して いた 。PTHrPの 発現 は、 骨転 移や 骨浸潤を高頻度に引 き起こす前立腺癌や骨肉腫等で亢進し ていることが報告されているが、口腔癌細胞株での PTHrPの 発 現 量 は そ れ ら の 細 胞 株 よ り も 著 し く 高 い こ と が 明 ら か と な っ た 。   次に、PTHrPの発現制御ヌカニズムについて検討した。口腔内環 境には上皮細胞増殖因 子epidermal growth factor (EGF)が 豊富 に存 在 し、 また 口腔 癌細胞は通常EGF受容体 (EGFR)を 高発 現し て いる こと から 、EGF‑EGFRシ グナ ル伝 達経 路が 口腔癌の悪性形質に 何ら かの 影響 を及ばしている可能性が示唆されている。そ こで、EGF‑EGFRシグナル伝達 経路の下流でPTHrPの発現が制御されているのではないかと推察し 、その可能性を検証し     ―563―

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た 。 上 述 の 細 胞 をEGFで 刺 激 し 、PTHrP mRNAの 発 現 誘 導 を り ア ル タ イムRT‑PCR法 に て解 析し たと ころ 、EGF刺激 後、 時間 依存 的な発現誘導が認 められた。この発現誘導は EGFRの 阻 害 薬AG1478処 理 に よ っ て 抑 制 さ れ た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、PTHrPの 発現 は EGFRシグ ナル 伝達 経 路の 下流 で制 御さ れて いる こと が明 らか とな った 。EGFRの下流に はERKl/2、p38 MAPK、SAPKIJNK等 のMAPKシ グ ナ ル 伝 達 経 路 の 存 在 が 知 ら れ て い る た め 、 次 にMAPKの ど の 経 路 がPTHrPの 発 現 に 関 与 し て い る か に つ いて 検討 した 。 ERKl/2阻 害 薬U0126、p38 MAPK阻 害 薬SB203580、SAPK/JNK阻 害 薬SP600125で 前 処 理 し た 口 腔 癌 細 胞 株 のEGF刺 激 時 のPTHrPの 発現 量を 検 討し たと ころ 、ERKl/2と p38 MAPKを 阻 害 し た 場 合 に の みPTHrPの 発現 が抑 制さ れた 。以 上の 結果 より 、PTHrP の 発 現 は 、EGFRシ グ ナ ル 伝 達 経 路 の 下 流でERKl/2、p38 MAPKを 介し て制 御さ れて い ることが明らかとなった。

  次 に、EGFRシグ ナ ル依 存的 に産 生さ れたPTHrPが口腔癌細 胞の悪性形質発現に影響を 及ぼしているかについて検討した。RNA干渉法を用しゝてPTHrPの発現を抑制したところ、

がん細胞の悪性形質の指標である細胞 増殖能・運動能・浸潤能の全てにおいてその抑制効 果が 認め られ た。 ま た、AG1478処 理に よるPTHrPの発現抑制 によっても同様の効果が認 めら れた 。こ れら の 結果 から 、EGFRの 下流 で発現したPTHrPは口腔癌細胞株の悪性形質 の発現を亢進していることが明らかと なった。

  最 後に 、PTHrPに よる 悪性 形質 の誘 導メ カニ ズ ムを 解析 した 。PTHrPはその受容体で あるPTHIRに作用し、シグナル伝達経路を制御することが報告され ている。そこで、口腔 癌細胞株におけるPTHIRの発現をウエスタンブロッテイング法で検 索したところ、全ての 細胞 株に おい てPTHIRの発現が認 められた。さらに、口腔癌細胞をPTHrPで刺激すると、

ERKl/2お よびAktの りン 酸化 が亢 進さ れる こと が 明ら かと なっ た。 一方、PTHrPノック ダウン口腔癌細胞においては、これらの1」ン酸化が抑制され、細胞増殖、細胞運動および 細胞浸潤活性が低下した。

  以 上 の 結 果 か ら 、 口 腔 癌 細 胞 に お い てEGFRシ グナ ル伝 達 経路 の下 流で 産生 され た PTHrPは 、 自 身 のPTHIRに 自 己 分 泌 的 に 作 用 し てERKl/2及 びAKT経 路 を 活 性 化 し 、 細胞の増殖能・運動能・浸潤能を亢進 させることにより、癌細胞の悪性化に関与すること が推察された。

  現 在、 乳癌 等に お いて は中 和抗 体やRNA干渉 を 利用 したPTHrPを ター ゲットとする治 療(分子標的治療)が試みられており 、癌細胞の増殖抑制やアポトーシスの誘導、さらに 生 命 予 後 の 延長 など が報 告さ れ てい る。 本研 究に おい て、RNA干 渉法 やAG1478によ る PTHrPの発 現抑 制に より 口腔 癌細 胞の 悪性 形質 の 発現 を抑 制で きた ことから、PTHrPお よびEGFRシグ ナル 伝達経路は口腔癌治療においても有効な分 子標的となり得る可能性が 示唆された。

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学 位論文審 査の要旨

主査   教授   戸塚靖則 副査   教授   進藤正信 副査   教授   網塚憲生

副査   准教授   大場雄介(医学研究科)

     学位論文題名

PTHrP promotes malignancy of human oral cancer     cell downstream of the EGFR signaling     (EGFR シグナル伝達経路の下流で産生されたPTHrP は      ヒ ト 口 腔 癌 細 胞 の 悪 性 化 に 関 与 す る )

   審査は,審査員全員出席の下に,申請者に対して提出論文とそれに関連した学科目につ い て 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た . 審 査 論 文 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る .

  Parathyroid hormone‑related protein (PTFhP 冫は,乳癌や大腸癌,前立腺癌などにおい て,癌細胞の増殖・生存・接着・移動・浸潤等の悪陸形質発現に関与していることが知ら れ てい るが ,口 腔癌 では PTHrP に着 目し た研 究は ほと んど 行わ れて いな い.本研究は,

口 腔 扁 平 上 皮 癌 の 悪 性 形 質 発 現 と PTHrP と の 関 係 , な ら ぴ に PTHrP の 発 現 メ カ ニズ ム の解明を目的に行われた,

   実験には5 種類のヒト口腔扁平上皮癌細胞株(馳掘,Ca9‑22 ,HSC‑2 ,HSC‑3 ,HSC‑4) を用 い ,ヒ ト正 常歯 肉線維芽細胞(HGF) をコントロールとして使用した,まず,これらの細胞 株 に お け る PTHrP mRNA と そ の タ ン パ ク の 発 現 につ いて 検討 し,SAS を 除く 全て の癌 細 胞 株 に 茄 い て 発 現 が認 めら れ, とくに HSC‑2 と HSC‑4 細胞 で発 現が 著し く亢 進し てい る こ と, また 口腔 癌細 胞株 にお ける PTHrP の発 現量 は前 立腺 癌や 骨肉 腫の 細胞株よりも著 しく高いことを明らかにした.

   次 に P ′ rHrP の 発 現 制 御メ カ ニ ズ ム に つ い て 検討 した .口 腔癌 の悪 性形 質の 発現 に EGF‑EGFR シ グ ナ ル 伝達 経路 が何 らかの 影響 を及 ばし てい る可 能性 が示 唆さ れて いる こ と か ら , EGF‑EGFR シ グ ナ ル 伝 達 経 路 の 下 流 で PTHrP の発 現が 制御 され てい るの では な い か と 推 察 し , そ の可 能性 を検 証した .上 述の 細胞 をEGF で 刺激後 ,real‑time RTPCR 法 に よ り 解 析 し , PTHrPmRNA の 発 現 は 時 間 依 存 的に 認め られ るこ と, また この 発現 誘 導 は EGFR 阻 害 薬 の AG1478 処 理 に よ っ て 抑 制 さ れ る こ と を 示 し , PT 王 丑 P の 発 現 は EGFR シ グナ ル伝 達経 路の 下流 で制 御さ れて いる ことを 明ら かに した .さ らにPTI 玉rP の

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発 現 は ,EGFRの 下 流 に 存 在 す るMAPKシ グ ナ ル 伝達 経 路の う ち ,い ず れ の経 路 に関 与 し て い る か を 明 ら か に す る た め ,ERKl/2阻 害 薬U0126,p38 MAPK阻 害 薬SB203580, SAPK/JNK阻 害 薬SP600125で 前 処 理 し た 口 腔 癌 細 胞 株 をEGF刺 激 し ,PTJ:lrPの 発 現 量を 検 討 した . そ の結 果 ,ERKl/2とp38 MAPKを 阻 害 した 場 合 にの み発現が 抑制され る こ と を 示 し ,PTHrPの 発 現 はEGFRシ グ ナ ル 伝 達 経 路 の 下 流 でERKl/2,p38 MAPKを 介して制 御される ことを明 らかにし た.

  次 に ,RNA干 渉 法 を 用 い てPTHrPの 発 現 を 抑 制 し ,PTHrPの 悪 性 形 質 発 現へ の 影響 を検討し た.その 結果,が ん細胞の 悪陸形質の指標である細胞増殖能・運動能・浸潤能が 全 て 抑 制 さ れ, ま たAG1478処 理に よ るPTHrPの発 現 抑 制に よ って も 同 様の 効 果が 認 め ら れ る こ と を明 ら かに し ,EGFRの下 流 で発 現 し たPTHrPが 口 腔 癌細 胞 株 の悪 性 形質 の 発現を亢 進してい ることを 示した・

  最 後 に,PTHrPに よ る悪 性 形 質の 誘 導メカニ ズムにっい て解析し た.口腔 癌細胞株 に お け るPTHIRの 発 現を ウ エ スタ ン ブロ ッ テ ィン グ 法 で検 索 し, 全 て の細 胞 株に お い て PTHIRが 発 現 し て い る こ と を 明 ら か に し た . さら に 口腔 癌 細 胞をPTHrPで 刺 激す る と ERKl/2お よ びAktの り ン酸 化 が亢 進 さ れる こ と, 一 方PT ffiPノ ック ダウン口 腔癌細胞 に韜いて はこれらのりン酸化が抑制され,細胞増殖,細胞運動およぴ細胞浸潤活rltが低下 する こ とを明 らかにし た.これ らの結果 から,口腔 癌細胞に 茄いて,EGFRシグナル 伝達 経 路 の 下 流 で 産 生 さ れ たPTFIrPは 自 身 のPTHIRに 自 己 分 泌 的 に 作 用 し てERKl/2及 び AKT経路を活 性化し, 細胞の増 殖能や運 動能,浸 潤能を亢 進させることにより,癌細胞の 悪性化に 関与する と考察し た,

  論 文の審査 にあたっ て,論文 申請者による研究の要旨の説明後,本研究ならびに関連す る 研究にっ いて質問 が行われ た.

主 な質問事 項は、以 下の通り である,

1.prITh,Pの 螢光 免 疫染 色 の 結果 か らみ て ,PTHrPの 細胞 内 局在 は ど こと 考 える か ? 2.EGFR阻 害 剤AG1478に よ りPTHrPの 発 現 レ ベ ル は 減 少 し て い る が , そ の レ ベ ル は     basal  levelよ りも減少 している のか?

3.EGFRの 下 流で 産 生さ れ るPTIirPの プロ モ ー ター 解 析は 行 な った か ? もし 行 燈っ て     い る と し た ら , 正 常 の 細 胞 と 癌 細 胞 の 問 で 相 違 は あ っ た か ? 4.PTHrPの 発 現 か が ん の 悪 性 化 に 関 与 す る と い う こ と は 普 遍 的 な こ と か ? 5.PTHrPがが ん の 悪性 化 に関 与 す る際 ,iIlvivoで は , 癌細 胞 が産生す るPTHrPが癌細     胞 自 身 に作 用 する こ と と, 周 囲 環境 に 作用 す る こと の いず れが重 要と考え るか?

6.EGFR阻 害 剤AG1478の使 用 に より 十 分に 癌 細 胞自 身 の恩 陸 化 を抑 制 で きる の に, 今     回 の 研 究 でEGFRの 下 流 で 産 生 さ れ るPTIヨ[rPをタ ー ゲッ ト と した の は何 故 か ?

  いず れの質問 について も,論文 申請者か ら明快な回答が得られ,また将来の研究の方向 性 に っい て も具体 的に示さ れた.本研 究は,口 腔癌細胞 において ,EGFRシグナ ル伝達経 路 の 下 流 で 産 生 さ れ たPTHrPは 自 身 のPTHIRにautocrine的 に 作 用 し てERKl/2及 ぴ AKrI ̄経路を活´陸化し,細胞の増殖能や運動能,浸潤能を亢進させることにより,癌細胞の

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悪 性 化に 関 与 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。 ま た , PTHrP お よび EGFR シグ ナル 伝達 経 路は口腔癌治療において有効な分子標的となり得る可能性を示したことが高く評価された・

本研究の業績は,口腔外科の分野はもとより,関連領域にも寄与するところ大であり,博 士(歯学)の学位授与に値するものと認められた.

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参照

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図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実