博 士 ( 医 学 ) 沼 田 光 弘
学 位 論 文 題 名
可 移 植 性 ヒ ト 腫 瘍 お よ び VX − 7 ウ サギ 腫 瘍 に対 す る a − リ ノ レン 酸の抗腫 瘍効果
学位論文内容の要旨
I. 目 的
多 く の 疫 学 的 研 究 か ら 、 食 餌 性 脂 肪 酸 と く に ガ ー
3
系 脂 肪 酸 と種 々 の 腫瘍 の 発 生 率 と の 間 に は 密 接 な 関 係 が あ り 、 ヅ −3
系 脂 肪 酸 は 腫瘍 の 発 生に 抑 制 的に 働 く 事が 明 ら かに さ 、れ た 。 さら に 、り −3
系 脂 肪酸 を 添加 し た 飼料 で 飼 育され た ラ ッ ト で はDMBA
,NMU
や そ の 他 の 発 癌 物 質 に よ る 発 癌 が 顕著 に 抑 制さ れ る 事 も 確 か め ら れ て い る 。 と こ ろ が 、 非 経 口 的 に 、 す な わ ち 皮 下 投 与 や 動 注 に よ っ て ッ‑3
系 脂 肪 酸 の 抗 腫 瘍 効 果 を 調 べ た 研 究 は ご く 少 な く 、 特 に ヒ ト の 腫 瘍 に っ いて の 研 究は 皆 無で あ る 。本 研 究で は 、 甜―3
系 脂 肪酸 の ー つで あ る ばーリ ノ レ ン 酸 の 抗 腫 瘍 化 学 療 法 剤 と し て の 開 発 を 目 的 と し て 、 ヌ ― ド マ ウ ス に 移 植 し た 種 々 の ヒ ト 腫 瘍 に 対 す る 効 果 を 検 討 し た 。 さ ら に 転 移 抑 制 の 効 果 を 調 べ る た め に 、 ウ サ ギ のVX
−7
腫 瘍 細 胞 を 後 肢 下 腿 足 根 関 節 部 の 表 在 性 皮 膚 リ ン パ 管 よ り 移 植 し た 後 に 伏 一 リ ノ レ ン 酸 を 、 油 性 造 影 剤 で あ る り ピ オ ド ー ル を キ ャ リ ア と し て 同 リ ン パ 管 よ り 投 与 し て 肺 へ の 転 移 抑 制 の 効 果 を 検 討 し た 。II
.方 法1
. 実 験 動物ヌ ー ド マ ウ ス は 国 立 予 防 衛 生 研 究 所 獣 疫 部 ( 現 ・ 獣 医 科 学 部 ) お よ び 日 本 ク レア 株 式会社生 産の雌性
BA LB/C
(nu+/nu十)の8−10
週令のも のを用い た。ウ サ ギ は 株 式 会 社 船 橋 農 場 生 産 の 日 本 白 色 種 家 兎 (
3Kg
以 上 ) を 用 い た 。2.
腫瘍 細 胞 とそ の 移植以 下 の 可 移 植 性 ヒ ト 腫 瘍 の 分 与 を 受 け 実 験 に 使 用 し た 。 胃癌 ;
MKN
−1.MKN
−28
( 国 立 予 防 衛 生 研 究 所 奥 村 秀 夫 博 士 よ り ) 、Horiuchi
,ALL
( 東 京 大 学 医 科 学 研 究 所 須 藤 カ ツ 子 博 士 よ り ) 、 肺 癌 ;NOC
−S
( 奥 村博 士 よ り) 、Taneda
( 須 藤 博 士 よ り ) 、Lu
−65
( 国 立 ガ ン セ ン タ ー研 究 所 広橋 説 雄博 士 よ り ) 、Lx
ー1
( 癌 研 究 所 化 学 療 法 セ ン タ 一 稲 葉 実 博 士 よ り ) 、肝 癌 ;
Matsuda
( 須 籐 博 士 よ り ) 、Li‑7
( 広 橋 博 士 よ り ) 、 悪 性 黒 色 腫 ;PL
ー14
(− 49―
奥 村 博 士 よ り ) 、 SK−14( 国 立 が ん セ ン タ ー 研 究 所 小 出 勉 博 士 よ り ) 、 絨 毛 上 皮 癌 ;GCH−nu( 奥 村 博 士 よ り ) 、 子 宮 頚 癌 ;SKG−III(奥 村 博 士 よ り ) 、 膵 臓 癌 ;Kuronuma( 須 藤 博 士 よ ′ り ) 、 副 腎 癌 ;Sawayama( 須 藤 博 士 よ り ) 、 乳癌 ;Mx−1( 北里 研 究 所 病院 久 保 田哲 朗 博 士よ り ) 。
MKN―1,MKN―28,NOC−S,PL−14,GCH−nu,SKG−IIIは 組織 培養系で 維持し 、実験 に あ た っ て はPBSで4x105cells/mlに 調 整 し て 、 そ のO.25mlを ヌ ー ド マ ウ ス の 腸 骨 陵 部 皮 下 に 移 植 し た 。 そ の 他 の 腫 瘍 株 は ヌ ー ド マ ウ ス で 継 代 維 持 し 実 験 に 際 し て は 、 腫 瘍 塊 を 氷 上 で 細 切 し て 粥 状 と し 、 そ のIml( 腫 瘍 塊 5−6mm角 分
) を ヌ ー ド マ ウ ス の 腸 骨 陵 部 皮 下 に ト ラ カ ー ル で 移 植 し た 。 株 式 会 社 船 橋 農 場 由 来 の ウ サ ギVx−7腫 瘍 を 前 記 の 家 兎 で 継 代 し た 。 実 験 に 際 し て は 、 腫 瘍 塊 を 氷 上 で 細 切 し 、 ス テ ン レ ス メ ッ シ ュ で 濾 過 後 ト リ パ ン プ ル ← で 生 細 胞 を 数 え 、PBSで 100 cells/mlに 調 整 し た 。 そ の 細 胞 懸 濁 液0.5mlを ッ ル ー ス 針 (NO.
6号 ) で 、 ウ サ ギ 後 肢 下 腿 足 根 関 節 付 近 の 表 在 性 皮 膚 リ ン パ 管 よ り 注 入 し だ 。 3. 駅一 リ ノ レン 酸 の 投 与
駅 一 リ ノ レ ン 酸 は シ グ マ 社 製 の 純 度 98Xの も の を 使 用 し た 。 乳 化 剤 と し て 使 用 し た 水 素 化 ヒ マ シ 油 エ チ レ ン オ キ サ イ ド 付 加 物 ( CHO− 60)は 日 光 ケ ミ カ ル 社 よ り 分 与 を 受 け た 。 リ ピ オ ド ー ル は ラ ボ ト ワ ー ル ・ ゲ ル ベ フ ラ ン ス 社 よ り 購 入 し た 。CHO―60を0.4:Cに 含 むPBSに 伏 一 リ ノ レ ン 酸 を20mg/mlと ナ ょ る よ う に 加 え 、 超 音 波 で 乳 化 し た 。 こ の 乳 化 物 ま た は PBSで 4倍 に 希 釈 し た 乳 化 物 を 、 移 植 腫 瘍 塊 の 周 辺 の 皮 下 にO. 25mlノ マ ウ ス ノ 日 で 投 与 し た 。 別 に 転 移 抑 制 実 験 と し て vx一 7を 移 植 し た 日 よ り 8日 目 に 、 腫 瘍 を 移 植 し た の と 同 じ 部 位 よ ル リ ピ オ ド ー ル : リ ノ レ ン 酸 =1:2混 液 を 0. 42mI/Kgで 投 与 し た 。 4. 評 価
MKN―1,MKN−28,NOC−S,PL−14,GCH−nu,SKG―IIIに っい ては腫瘍 移植後 マウス が 腫 瘍 死 す る ま で 飼 育 し 、 生 存 日 数 を 治 療 群 と 非 治 療 群 で 比 較 し た 。 そ の 他 の 腫 瘍 株 に っ い て は 、 腫 瘍 移 植 後31日 目 に 腫 瘍 塊 を 切 り 出 し 、 そ の 重 量 を 測 定 し て 両 群 で 比 較 し た 。 vxー7の 場 合 は 、 腫 瘍 移 植 後 25日 目 に 剖 検 し 、 膝 下 リ ン パ 節 の 重 量 を 測 定 す る と 共 に 肺 へ の 転 移 の 有 無 を 肉 眼 的 に 調 ベ 、 両 群 を 比較 し た 。
III. 結 果
1. ヌ ー ド マ ウ ス に 移 植 し た ヒ ト 腫 瘍 に 対 す る 伏 ― リ ノ レ ン 酸 の 効 果 腫 瘍 移 植 後3日 目 か ら1日1回 連 続 4日 間250mg/Kg/日 で 灰 一 リ ノ レ ン 酸 を 皮 下 投 与 し た 場 合 、MKN― 1で は100%の 個 体 で 腫 瘍 が 消 失 し た (200日 以 上 腫 瘍 の な い 状 態 で 生 存 ) 。 以 下 、MKN―28:57% ,NOC‐S:25%,PL―14:75% の 個 体 で腫 瘍 が 完 全 消 失 し た 。 GCH−nuとSKG−IIIは 全 く 反 応 し な か っ た 。 そ の 他 の 腫 瘍 に つ い て 、 腫 瘍 移 植 後 31日 目 の 腫 瘍 塊 の 平 均 重 量 を 、 そ れ ぞ れ の 非 治 療 群 と 比 較 す る と 、 高 投 与 量 に お け るT/C比 は 、Taneda:4,Lu→65:84,Lx−1:34,Matsu― da:82,Li−7:47,SK−14:31.Kuronuma:49.Sawayama:16.Mx−1:101で あ っ た o Taneda,Lx−1,SK−14,Sawayamaで 有 効 ( 十 ) 、Li‑7とKuronumaで は 平 均腫 瘍 重 量 が 有 意 に 減 少 し た 。 Lu− 65とMatsudaの 平 均 腫 瘍 重 量 の 減 少 は 有 意 で は な か っ た が 対 照 群 よ り 若 干 減 少 し た 。 Mx− 1は 全 く 反 応 し な っ か っ た 。 非 連 続 的 に 、 す な わ ち 腫 瘍 移 植 後3,13,17,24日 目 に 駅 一 リ ノ レ ン 酸 を 投
一 50 ‑
与 し た 場 合 、 高 投 与 量 に お け るT/CはHoriuchi:68, ALL:24, Taneda: 34, Lu―65:73. Lxー1:23, Li−7:50, SK−14:47, Kuronuma:53, Sawayama:65・ Mx−1:92で あ っ た 。 ALL,Taneda.Lx−1に 対 し て は 有 効 ( 十 ) 、Li−7,SK−14, Kuronumaに 対 し て は 有 意 な 腫 瘍 重 量 の 減 少 を 示 し た が 、 Horiuchi,Lu− 65, Sawayamaの 腫 瘍 重 量 の 減 少 は 有 意 で は な か っ た 。 Mxー1は ほ と ん ど 反 応 し な かっ た。
2.vx―7に 対す る臥 ―リ ノレ ン酸 の効 果
vX―7を 後 肢 下 腿 足 根 関 節 付 近 の り ン パ 管 よ り 移 植 し た 後25日 目 に 剖 検 す る と 、 非 治 療 群 及 び り ピ オ ド ー ル の み を 投 与 し た 群 で は10 0%の 個 体 で 肺 に 転 移 結 節 が 認 め ら れ た が 、8日 目 に 伏 ― リ ノ レ ン 酸 を 投 与 し た 群 で は25% の 個 体 に 小 さ な 転 移 結 節 が 認 め ら れ た に す ぎ な い 。 ま た 、 膝 下 リ ン パ 節 の 平 均 腫 瘍 重 量 は 非 治 療 群6. 16g. リ ピ オ ド ー ル の み 投 与 群3.82gで あ っ た が 灰 一 リ ノ レ ン 酸 投与 群で は0. 84gで、 明ら かに 有意 な現 象を 認め た。
IV. 考 察
新しい抗腫瘍化学療法剤の開発を目的として、¢―リ丿レン酸の非経口投 与 によるヒト腫瘍に対する増殖抑制効果を調べたところ、 17 種の腫瘍株の う ち4 株で腫瘍退縮、 5 株で T/C が 42 %以下、 3 株で T/C が 42X 以上ではあるが 対照群と比べて有意に腫瘍重量が減少した。呂u の2 株では有意ではなかった が腫瘍重量の減少が認められた。本実験で使用したヒト腫瘍一ヌードマウス の系は、化学療法剤の効果判定という点では最もよく臨床結果と一致すると 言われているので本実験の結果は、びーリノレン酸の臨床応用にとってきわめ て有意義な結果と考える。現在使用されている抗腫瘍化学療法剤には一般に 副作用の強いものが多いが、よ―リノレン酸は動物の細胞膜等の構成成分であ るため副作用が弱く本実験に使用した用法、用量( 250mg/Kg/ 日x4 )では全 く障害が認められなかった。従って、より多量に投与する事も可能と思われ る。また、今後既存の抗腫瘍化学療法剤と組み合わせたり、種々のDDS を考 慮 する事により 、より広範な腫 瘍に有効性を 発揮する事が 期待できる。
ぶ―リノレン酸の抗腫瘍活性の作用機序にっいては種々の機作が考えられ るが、これまでの実験から伏一リノレン酸が腫瘍細胞に特異的に取り込まれ 細胞膜の流動性を高める事が判明したので、それらの事により腫瘍細胞にド ラスチックな障害を与えるものと推察できる。
ウサギを使った転移抑制実験では本実験が人間の身体で起きる転移をどの 程度まで真に反映しているかという問題はあるが、腫瘍細胞を注入したのと 同じりンパ管に伏一リノレン酸を投与した場合、肺での転移結節形成が有意 に抑制された。本実験では講→リノレン酸をりピオド―ルとの混合液として 投与したが、これはりピオドールと混合する事により、リピオドールの徐放 性を利用しようとしたためである。このような徐放性の獲得はば―リノレン 酸の有効性をいっそう高めるものと期待される。
V. 結 語
w−3高 度 不 飽 和 脂 肪 酸 で あ る 灰 ー リ ノ レ ン 酸 は ヒ ト 可 移 植 性 腫 瘍17株 の う
‑ 51−
ち12 株の増殖を顕著に抑制した。また経リンパ管的に移植したウサギvx ―7 腫 瘍の肺での転移結節形成を著しく抑制した。
― 52―
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
可 移 植 性 ヒ ト 腫 瘍 お よ び VX ― 7 ウ サ ギ 腫瘍 に 対 する a ―リ ノ レン酸 の抗腫 瘍効果
食 餌 性 脂 肪 酸 の な か で
D
―3
系 脂 肪 酸 が が ん の 発 生 に 抑 制 的 に 働 く こ と が 、 多 く の 疫 学 的 研 究 お よ び 動 物 を 用 い た 発 癌 予 防 実 験 の 成 績 と し て 報 告 さ れ て い る 。 ま た 、 申 請 者 ら はD
―3
系 脂 肪 酸 の 一 種 で あ るa
― リ 丿 レ ン 酸 (ALA
) が 数 系 の マ ウ ス の 実 験 癌 に 抗 腫 霧 効 果 を 示 す こ と を 観 察 し た 。 そ こ で 、ALA
が 新 し い 癌 化 学 療 法 剤 と し て 有 用 で あ る か 否 か を 検 索 す る た め に 、 ヒ ト の 株 化 癌 細 胞 の ヌ ― ド マ ウ ス に お け る 増 殖 に 対 す るALA
の 抑 制 効 果 と 、 あ わ せ て ウ サ ギVx
−7
腫 霧 の 肺 転 移 に 対 す るALA
の 抑 制 効 果 を 検 討 し た 。´
実験 では8−10週令 の雌 ヌー ドマ ウス(BALB/C nu.Inu.)に皮下移 植 し て 増 殖 さ せ た 胃 癌
4
株 、 肺 癌4
糅 、 肝 癌2
株 、 悪 性 黒 色 腫2
株 、 お よ び 絨 毛 上 皮 癌 、 子 宮 頚 癌 、 膵 臓 癌 、 副 腎 癌 、 乳 癌 各1
株 の さ ま ざ ま な 臓 器 由 来 の 、 異 な っ た 組 織 型 の17
株 の ヒ ト 癌 細 胞 を 対 錣 と し た 。ALA
は 水 素 化 ヒ マ シ 油 エ チ レ ン オ キ サ イ ド 付 加 物 (CHO
−60) を 乳 化 剤 と し て 腫 霧 局 所 に 投 与 し た 。 ま たVx
−7
の転 移モ デ ル で は ウ サ ギ 後 肢 の り ン パ 管 よ り 癌 細 胞 を 注 入 し 、ALA
を り ピ オ ト ー ル に 混 合 し て 同 一 リ ン パ 管 よ り 授 与 し た 。 ヒ ト 癌 ー ヌ ー ド マ ウ ス の 実 験 で はALA
の 投 与 方 法 、 判 定 方 法 を 換 え た4
法 を 試 み た 。 @ ヒ ト 癌 細 胞 移 植 後3
日 目 か ら1
′ 日1
回 連 続4
日 間ALA
を250mg
/kg
/ 日 で 治 療 す る と 、 胃 癌MKN
−1
で は100
% の マ ウ ス で‑ 53
―男
雄
康
澄
真
輝
富
川 橋
山
細 石
小
授 授
師
教 教
講
査 査
査
主 副
副
腫霧 が 消失 し た。 ま た、 胃 癌MKN ー28 、肺 癌 NOC − S 、 悪性黒 色腫 PL − 14 で はそ れ ぞ れ57 % 、 25 %、75 %の マウスで腫 霧が消失し 、 残り の マウ ス の平 均 生存期 間を非治療 群に比ベ有 意に延長し た。
しか し 、絨 毛 上皮 癌 GCH ― nu 、子宮頚癌 SKG −11 に対 しては治療 効 果 が 顔 か っ た 。 @ 上 記 以 外の 株 につ い ては 移 植後 31 日目 の 腫霧 重 量 を 非 治 療 群 と 治 療 群 で 比 較 す る T/C で 判 定 し た 結 果 、 肺癌 Taneda 、 Lx ― 1 、 Li ― 7 、悪性黒色 腫 Sk − 14 、副腎 癌 Sawayama では T/C が そ れ ぞ れ 4 、 34 、 47 、31 、 16 と 明ら か を効 果 を示 し 、肺 癌 Lu ‐ 65 、肝癌 Hatsuda 、膵臓癌Kuronuma でも それぞれ84 、82 、49 と 抑 制 傾 向 を 示 し た 。 し か し乳 癌 Mx ー 1 で は 101 と 全く 効 果を 示 さ 段か っ た。 ◎ 1 回 の 投量 を 62 . 5mg/kg と 減 量し て も同 様の抑 制効 果 が 観 察 さ れ た が 、 250mg/kg に 比ぺ る とそ の 程度 は 弱か っ た 。
@ 投 与 方 法 を 1 週 1 回 4 回と 間 歇的 に した 場 合 にも 2 50mg/kg 投 与 では そ れぞ れ のT/C が 胃癌 Ho riuchi :68 、ALL:24 、肺 癌Taneda : 34 、Lu ‐65:73 、 Lx ―1 :23 、肝癌Li −7:50 、悪性黒色腫Sk −14:47 、膵 臓癌 Kuronuma:53 、 副腎癌 Sawayama : 65 、乳癌 Mx − 1 : 92 であり 、 連続 4 日間 投 与に 比 べる と 程度 は 弱く な っ たが 、 ほぼ 同様の 抗腫 霧効果が観察された。
また、ウサ ギ腫霧 Vx − 7 の肺転移 への効果は 、肺転移陽性例が、
リ ビ オ ト ー ル 単 独 群 、 対 照 群 で は と も に 100 % で あ っ た の に対 し、 リ ビオ ド ール 混 合ALA 授与 群 では 25 % に 減少 し 明ら か詮抑制 効果が観察 された。ま たVx ー7 注 入領域リン パ節への転 移程度を示 す膝 窩 リン パ 節の 重 量も 非 治療 群 では 6.16g であ っ たの に対し、
リ ビ ド ー ル 混 合 ALA 投 与 群 で は 0.84g と 右 意 に 抑 制 さ れ た 。 以 上の 実 験成 績 は、 ALA の 抗 腫霧 効 果が 多 種類 の ヒト 癌細胞株 およ び ウサ ギ のVx ‐ 7 腫 霧 に対 し ても 発 揮さ れ るこ と を示してい る。このこ とは、のー 3 脂肪酸 の一種a −リノレ ン酸(ALA )は、既 存の 癌 化学 療 法剤 に くらべ 宿主生体へ の障害性が 弱く、宿主 介在 性の 効 果を 発 揮し や すいと いう申請者 らの以前の 実験成績を 考え あわ せ ると 、 新し い 癌化学 療法剤とし て有望であ ることを示 唆し てい る 。太 研 究に は 、ALA の抗 腫 霧効 果 の作 用 機作 や 至適授与経 路抜 ど 解明 し なけ れ ば按ら ない問題点 が残ってい るが、多く のヒ
― 54 ‑
卜癌細胞株を標的として、ヌードマウスを用いて生体内での抗腫 霧効果を示していることは今後の癌治療薬剤の開発に多くの示唆 を与えるものである。
口答発表にあたって、石橋教授より、多くの脂肪酸のなかか ら、とくにD ―3 脂肪酸を選択した理由、生体内に常在する脂肪 酸が抗腫霧効果を発揮する理由など、小山富康教授からはALA に よって、細胞膜の流動性が上昇する理由、癌細胞が破壊される様 式顔どの質問があったが、申請者は適切な応答をなし得た。
石橋教授、小山教授には個別に審査を受け、申請者の当該分野 に関する巾広い知識を含めた関連事項にっいての質疑応答によ り、合格と判定された。
以上、太研究は、既存の癌化学療法剤とは異なった作用機作の 癌治療薬の開発にとって示唆に富む研究成果を含むものと評価で きる。よって、博士(医学)の学位に栢当すると判定した。
− ・55ー