博 士 ( 医 学 ) 森 本 純 子
学位論文題名
Osteopontin affects the persistence of fl‑glucan‑1nduCedhepatiCgranu10maformationand tiSSuelnJurythrought :WOdiStinCtmeChaniSmS
(オ ス テ オポ ン チン は ニ つの 異 なる 機序 によルグ‑glucan誘発性の 肝 肉 芽 腫 形 成 遷 延 化 お よ び 肝 障 害 増 悪 に 関 与 す る )
学位論文内容の要旨
肉芽腫形成は慢性炎症反応であり、貪食細胞などにより容易に異物が排除されない場合 におこる生体防御反応である。その原因は自己免疫疾患や細菌,寄生虫,ウイルス感染など 非常に様々である。肉芽腫形成は生体にとって防御反応である一方、正常組織の破壊を引 き起 こし てしまう 。近年の 研究により 肉芽腫を 構成する 細胞はマ ク口ファ ージやCD4T 細胞 のみ ならず、 抗原提示 能を有する 樹状細胞(DC)もその構 成細胞で あること が報告 されている。っまりこのことは肉芽腫形成が免疫反応の最終段階ではなく現在進行形の免 疫反応であることを示唆するものである。
Osteopontin (OPN)はfibronectinやvitronectinと同様に、その分子の中央にArg−Gly‑Asp (RGD)配 列を 有 する 細 胞 外マ 卜 リ ック ス 蛋白 で あ る。OPNはRGD配列 依存的にaVI33, aV(35,aV[31イ ンテ グ リン と ま たRGD配 列非 依 存 的にCD44と 結合 すること によりT細 胞,マク口ファージ,線維芽細胞,平滑筋細胞など様々な細胞の接着および遊走に関与してい る。さら にOPNはT細胞 活性化の 初期に産生されるサイトカインでもあることからearlyT lymphocyte activation gene―1(eta−1)とも呼ばれている。また近年OPNはThl typeの免疫反 応におけるkey moleculeであることも報告されている。重要なことは結核やサルコイドー シスとい った肉芽 腫性疾患 においてOPNの発現増加 が認めら れることである。しかしな がら 肉 芽 腫形 成 にお け るOPNの 役 割につ いての詳 細な研究 はなされ ていない 。そこで 13−glucan誘発性の肝肉芽腫形成モデルを用Vゝて肉芽腫形成におけるOPNの役割について 検討した。
3‑glucanは酵母菌体成分であり、静脈内投与により肝臓内に肉芽腫を形成することが知 られている。pーglucan誘発性の肝臓内肉芽腫形成の機序は、まずクッバ一細胞上のTollーIike receptor2が活性化 されるこ とで、CCL2/MCPー1などのケモカインを産生し、産生された これらケモカインが肝臓内への炎症性細胞の動員を促し、その結果肝臓内に肉芽腫が形成 される。肉芽腫形成においてケモカインは重要な役割を果たしていることが知られている。
事実、CCL2ノックアウ卜マウスではSh.istosoma ,nansom虫卵誘発性の肺肉芽腫形成が低 下す るこ とが報告 されてい る。またCCL2の レセプタ ーであるCCR2のノック アウトマ ウ スでは、l3―glucan投与により形成される肝肉芽腫の数が減少することも報告されている。
本研究で は、6−glucan誘 発性の肝肉芽腫形成においてOPNが肉芽腫形成の遷延化およ
び肝障害の増悪に関与していることを明らかにした。l3−glucan投与に伴い、肝臓内におい て 著 し いOPN mRNAお よ びOPN蛋 白 の 発 現 誘 導が 認 め られ た 。ま たOPNは肉 芽 腫内 に 強く発現していることが明らかとなった。続いてOPNノックアウト(OPN―/―)マウスに p‑glucanを投与したところ、投与後7日目ではWild type (WT)マウスおよびOPN―/‐マウス において 、同様に 肝臓内に 肉芽腫が形成された。しかしながらP‑glucan投与後14日目に なる とOPN‑/‑マウス でWTマウス と比べる と有意に 肉芽腫数 および肉芽 腫の大き さが減 少してレゝるのが認められた。これらの結果よりOPNは肉芽腫形成自体に関与するので|ま なく、肉芽腫形成遷延化に関与することが示唆された。次に肉芽腫形成において重要な役 割を担っ ているケ モカイン(CCIA,CCL2,CCL5,CXCL9,CCL3)の発現についてmRNAレベ ルで検討したところ、p―glucan投与に伴ってWTマウス,OPN−/‐マウス両者において著し い発現誘導が認められた。しかしながらWTマウスおよびOPNー/−マウス問で差は認めら れなかっ た。この 結果よりOPN‑/‑マウスにおける肉芽腫形成遷延化の低下はケモカイン 発現能の低下に起因するものではないことが示唆された。また局所リンパ節である肝リン パ節細胞を用いてIL−2およびIFNーYの産生を検討したところ、両者に差は認められなかっ た。しかしながらp−glucan投与後7日目ですでに肝臓内のIL―12およびIFN−Yの産生量が OPN−/―マウスで有意に低下していた。さらにOPN‑/‑マウスにおける肝臓内の炎症性細胞 浸潤について検討してみたところ、p−glucan投与後14日目においてマク口ファージ,CD4T 細胞 ,DCの肝臓 内浸潤がWTマウスと 比べると 有意に低 下している ことが認 められた 。 また 肝 臓 内のTNF‑aの 産 生量 が 有意 に低下し 、この低 下は血中ALTお よびAST値の 低下 を伴っていた。
以上の結 果よりOPNは 肉芽腫形 成初期段 階におい ては肉芽 腫内におけるサイトカイン 産生を制御することにより、また肉芽腫形成後期段階においては炎症性細胞の肝臓内動員 およびTNF‑aの 産生を制 御するこ とで、肉 芽腫形成 の遷延化 および肝障害の増悪に関与 していることが示唆された。
学位論文審査の要旨 主査 教授 小野江和則 副査 教授 上出利光 副査 教授 小林邦彦
学位論文題名
Osteopontin affects the persistence of 汐 ‑glucan‑lnduCedhepatiCgranu10maformationand ● I
tiSSuelnJurythrough い形OdiStinCtmeChanlSnlS
(オステオポンチンはニつの異なる機序によルグ‑glucan 誘発性の
肝 肉 芽 腫 形 成 遷 延 化 お よ び 肝 障 害 増 悪 に 関 与 す る )
肉 芽 腫 形 成 は 慢 性 炎 症 反 応 で あ り 、 貪 食 細 胞 な ど に よ り 容 易 に 異 物 が 排 除 さ れ な い 場 合 に お こ る 生 体 防 御 反 応 で あ る 。 そ の 原 因 は 自 己 免 疫疾 患 や 細 菌 ,寄 生 虫 . ウ イル ス 感 染 な ど 多様 で あ る 。 肉 芽 腫 形 成 は 生 体 に と っ て 防 御 反 応 で あ る 一 方 、 正 常 組 織 の 破 壊 を 引 き 起 こ す 。osteopontmは そ の分 子 の 中 央 に ア ル ギ ニ ン ・ グ リ シ ン ・ ア ス パ ラ ギ ン 酸 (RGD) 配 列 を 有 す る 細 胞 外 マ ト リ ッ ク ス 蛋 白 で あ る 。 ま た 結 核 や サ ル コ イ ド ー シ ス と い っ た 肉 芽 腫 性 疾 患 に お い て 病 巣 局 所 でosteopontinの 発 現 増 加 が 認 め ら れ て お り 、 肉 芽 腫 形 成 に お い てoSteopontinが 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。 申 請 者 は 今 回 酵 母 菌 体 成 分 で あ るp曙Iuc孤 誘 発 性 の 肝 肉 芽 腫 形 成 モ デ ル を 用い て 肉 芽 腫 形 成 に お け る 岱teopontinの 役 割 に つ い て 検 討 し た 。pgIucan投 与 後 、 肝 臓 内 特 に肉 芽 腫 内 に お い て 著 し い0s奴 )pontin蛋 白 の 発 現 上 昇 を 認 め た 。 さ ら にoSteopontinノ ッ ク ア ウ 卜マ ウ ス で は コン ト ロ ー ル マ ウ ス と 比 べ る と 、p―gIucan投 与 後7日 目 で は 肉 芽 腫 数 に 差 は 認 め ら れ な いが 、 投 与 後14 日 目 に な る と 肉 芽 腫 数 お よ び 肉 芽 腫 の 大 き さ が 著 し く 減 少 す る こ と を 見 い 出 し た 。 さ ら に 過 去 の 報告で 肉芽腫 形成 に重要 である とされ てい る種々 のケモカインにCL4,CCL2,(ニCL5,CXCL9,(ニくニL3)の 肝 臓 内 発 現 は 、p‐glucan投 与 後 著 し い 増 加 を 認 め た が 、oSteopontmノ ック ア ウ 卜 マ ウス と コ ン ト 口 ー ル マ ウ ス 間 で 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 し か し な が ら 免 疫 染 色 の 結 果 よ り 、p―glucan投 与 後14日 目 の 肝 臓 内 に 浸 潤 す る マ ク ロ フ ァ ー ジ ,CD4T細 胞 , 樹 状 細 胞 の 数 はoSteopontmノ ッ ク ア ウ ト マ ウ ス で 有 意 に 減 少 し て い る こ と を 見 い 出 し た 。 続 い て 肝 臓 内 に お け る サ イ ト カ イ ン の 発 現 動 態 に つ い て 検 討 し た と こ ろ、p−gIuc孤 投 与 後7日 目 で す でにoSt・e0眇ltinノ ッ ク アウ ト マ ウ ス で はIFN‐Yお よ びIし12の 産 生 量 の 低 下 を 認 め 、 投 与 後14日 目 で はTNF亀 の 低 下 お よ び 肝 細 胞 の 破 壊 を 示 すML AST値 の 低 下 を 認 め た 。 ま たoSt・eopontmが り ン パ 球 細 胞 で 過 剰 発 現 す るoSteopontinト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス を 用 い て 同 様 の 実 験 を 行 っ た と こ ろ 、p−glucan投 与 後7日 目 で は 肉 芽 腫数 は コ ン ト ロ ー ル マ ウ ス と 比 べ 差 は 認 め ら れ な か っ た が 、 投 与 後14,21日 目 で はmteopontmト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス で そ の 数 は 有 意 に 増 加 し 、AL1|AST値 は コ ン ト ロ ー ル マ ウ ス と 比 べ 高 値 を 示 し て い た 。
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これらの結果より、申請者は酵母菌体成分であるp−glucan誘発性の肝肉芽腫形成モデルを用いて、
osteopontmが肉芽腫形成初期段階においては肉芽腫内におけるIL―12,IFN‐Y産生を制御することに より、また肉芽腫形成後期段階においては炎症性細胞の肝臓内動員およびTNF,Qの産生を制御す ることで、肉芽腫形成の遷延化および肝障害の増悪に関与していることを明らかにした。公開発 表に際し、副査の小林,上出両教授および主査の小野江教授より1)肉芽腫消失の機序2)肉芽腫内 におけるosteopontinと炎症性細胞の接着について3)IFNヤおよびTNF亀産生減少の機序について 4)TNF哦の作用時期について5)FgrおよびHck活性化の検討について6)マク口ファージとクッバ 一細 胞の区別 について7) 肝リンパ 節の役 割について8)炎症性細胞の局所への動員における oSteopontmの役割についてなどの質問があった。これらの質問に対して申請者は、今回の論文のデ ータおよび過去に報告された論文を引用し、的確に解答した。
この論文は、肉芽腫形成におけるoSt・eopontin作用機序の分子メカニズムについて明らかにした 点で高く評価され、今後の肉芽腫性疾患治療への応用が期待される。
審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併せ申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。
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