博 士 ( 理 学 ) 糸 山 光 紀
学 位 論 文 題 名
Adsorption lVIechanism of Pr.otein to Functionalized Porous Chitosan Beads
( 高 機 能 化 キ ト サ ン 多 孔 性 ビ ー ズ へ の 蛋 白 質 の 吸 着 機 構 )
学位論文内容の要旨
キ ト サ ン は 天 然 に 広 く 存 在 す る キ チ ン を 脱 ア セ チ ル 化 す る 事 に よ っ て 生 成 さ れ る 、 塩 基 性 の ム コ 多 糖 で あ る 。 そ の 化 学 構 造 は セ ル ロ ー ス に 類 似 し て お り 、 グ ル コ サ ミ ン が ロ1―4結 合 で っ な が っ た 構 造 を 持 つ 。 キ チ ン や キ ト サ ン は 自 然 界 で セ ル ロ ー ス に 次 ぐ 生 産 量 を 示 す が 、 現 在 ま で ほ と ん ど 利 用 さ れ て い な い の が 現 状 で あ る 。 し か し な が ら 、 近 年 キ チ ン や キ ト サ ン に 種 窟 の 機 能 が 見 い だ さ れ 、 様 員 な 分 野 で の 応 用 が 進 め られ てい る。
こ の キ チ ン 及 び キ ト サ ン の 生 医 学分 野で の展 開を 考え る上 で、 キ トサ ンの 低毒 性、
生 体 親 和 性 、 親 水 性 、 脱 ア セ チ ル 化 度 を 調 節 す る こ と に よ る 生 体 内 消 化 性 等 の 利 点 が 考 え ら れ る 。 又 、 キ ト サ ン は 分 子 内 に 反 応 性 の 高 い ア ミ ノ 基 を 有 し て い る こ と か ら 、 化 学 修 飾 が 容 易 で あ り 、 様 々 な 高 機 能 化 の 可 能 性 が あ る 。 そ の う え 、 キ ト サ ン は 有 機 酸 の 希 薄 水 溶 液 に 容 易 に 溶 解 す る た め 、 再 生 が 容 易 で フ ィ ル ム 、 紙 、 繊 維 、 ビ ー ズ 等 に 成 形 す る こ と も 可 能 で あ り 、 広 範 な 分 野 で の 応 用 が 進 め ら れ て い る 。 本 研 究 で は 、 キ ト サ ン を 多 孔 質 のビ ーズ に成 形し 、様 走な 化学 修 飾を 施す こと によ っ て 、 高 機 能 化 を 試 み た 。 キ ト サ ン 成 型 物 の 中 で 、 多 孔 質 ビ ー ズ は そ の 巨 大 な 表 面 積 及 び ハ ン ド リ ン グ の 容 易 さ の 点 で 、 繊 維 等 に 比 較 し て 、 タ ン パ ク 質 の 吸 着 担 体 と し て 有 利 で あ る と 考 え ら れ る 。 そ こ で 、 こ の キ ト サ ン 多 孔 質 ピ ー ズ を 化 学 修 飾 に よ っ て 高 機 能 化 し 、 糖 鎖 を 認 識 す る タ ン パ ク 質 と の 相 互 作 用 を 検 討 し た 。 近 年 、 糖 鎖 の 生 体 内 で の 役 割 が 注 目 さ れ て き て お り 、 こ の 糖 鎖 と タ ン パ ク 質 の 認 識 が 、 生 体 内 で の 種 々 の 機 能 発 現 に 大 き く 影 響 す る こ と が 知 ら れ て き た 。 化 学 修 飾 キ ト サ ン を 糖 鎖 の ア ナ 口 グ と 考 え 、 糖 鎖 を 認 識 す る タ ン パ ク 質 と の 相 互 作 用 を 検 討 す る こ と は 、 糖 鎖 機 能 の 解 明 の た め に 、 非 常 に 有 効 な 手 段 で あ る と 考 え ら れ る 。 本 研 究 で は 、 糖 鎖 認 識 タ ン パ ク 質 とし て、 リ ゾチ ーム とラ クト フ ェリ ンを 選び 、 これ らの タン パク 質の糖鎖認識機構の
解明を目的とした。
キ トサン多 孔買ピー ズは、細 孔調節剤 の様な添加 物を添加することなく、低分子量 キ トサンを 酢酸水溶 液に溶解 し、この 溶液を塩基 性の凝固液に細いノズルを通して噴 靄 するとい う簡単な 方法で調 製する事 ができ、こ の際にキトサンの濃度、若しくは凝 固 液の濃度 を調節す ることに よって、 ビーズの嵩 密度が制御可能であった。この嵩密 度はビ.一ズの細孔径に大きく影響与え、嵩密度が大きくなると細孔径が滅少するが、
コントロールする事が可能であった。
キ トサン多 孔買ビ― ズの化学 修飾は反 応の際に有 機溶媒でピーズを平衡化した後に 試薬を加え、攪拌することで容易に行えた。
キトサンのアミノ基への化学修飾では、アセチル化はエタノール中無水酢酸で反応を 行 い、加え る無水酢 酸の量を 変えるこ とでキトサ ンのアミノ基のアセチル化度をコン ト ロールす る事がで きた。ま た、アミ ノ基を利用 した化学修飾としてはこの他にエタ ノ―ル中、無水コハク酸によるスクシニル化、及びジメチルホルムアミド中、 ヘキサ ノチレンジイソシアネートによる架橋も容易であった。
キトサン水酸基の化学俸飾はキトサンのアミ丿基のアセチル化、及び架橋を行った 後 に 可 能 であ っ た。 ピ ー ズをNaOHで マ― セ ル 化後 に 、イ ソ プ ロピ ル アル コ ー ル中 で モノクロ ル酢酸を 反応させ ることで 、水酸基の カルボキシメチル化が可能であり、
ジメチルホルムアミド中、 ジメチルホルムアミド―三酸化イオウ複合体を反応させる こ と で ス ルホ ン 化を 行 っ た。 カ ルポ キ シ メチ ル 化度 は マ ーセ ル 化 の際 のNaOHの濃 度 で、スル ホン化で はジメチ ルホルム アミド一三 酸化イオウ複合体の量でそれぞれ置 換度の制御が可能であった。
カ ル ポ キ シ ル 基 を 導 入 し た キ ホ ン 化 キ ト サ ン ピ ー ズ ヘ の 牛 ラ
トサンピーズヘの卵白リゾチームの吸着挙動及びスル クトフェリンの吸着挙動を調ぺ、糖鎖認識の知見を得 ると共に 、両担体 のそれぞ れのタンバ ク質のア フアニティークロマトグラフィ一用担 体としての可能性の検討を行った。
カルポキシル基を導入したピーズではカルポキシル基の導入量が増加するにっれて、
リゾチー ムの吸着 量は増加 したが、そ の導入位 置がアミノ基か水酸基かで異なるりゾ チーム吸着挙動を見せた。また、 リゾチームとビーズとの吸着は、塩濃度にはほとん ど影響を 受けず、pH変化に影 響を受け、 カルポキ シメチル化セルロースとは異なる
性質を示した。このカルボキシル化されたキトサンビ―ズヘのりゾチームの吸着は、
尿素、しょ糖、N 一アセチルグルコサミンによって阻害されることから、この吸着に
は水素結合の関与が示唆された。この担体を用いて、卵白からのルゾチームのアフィ
ニティーク口マ卜グラフィによる精製が可能であった。
ー方スルホン化キトサンピーズヘのラクトフェリンの吸着は0 ―スルホンの場合、
その導入 畳が増加す るにっれて 吸着量が増 加したが、 約
100皿
eq/ml程度で最
大となり、それ以上導入量が増加すると逆に吸着量は減少した。また、この吸着はビ
―ズの物理的性状によっても影響を受け、見掛け密度が大きくなるにっれてその吸着 量は減少した。スルホン基の導入位置にっいてはO ―スルホンのみよりも、N . O ー
スルホンが共存する方が吸着畳は増大した。ヘパリン認識タンバクであるラクトフェ
リンはやはり、N ー、及びO ースルホンの両者を認識していることが示唆された。 こ の担体を 用いての脱 脂乳からの ラクトフェ リンの精製 は、溶出に
1M―
NaClを用 いることで可能であった事から、 うクトフェリンのスルホン化ピーズヘの吸着はイオ ン的相互作用が主であることが考えられた。
この様に化学修飾によって機能化されたキトサンピ―ズの応用として、カルポキシ ル基を有するキトサンビーズのカルポキシル基を活性エステル化することによって、
タンパク買の固定化担体としての応用を試みた。このカルポキシル基を利用してジア ミンージカルポン酸の段階的反応でスペーサー長の異なる担体を調製し、それぞれに りガンド及び酵素を固定化し、アフィニティークロマトグラフィー及び酵素固定化用 の担体としての性質を検討した。
スペーサー長によってりガンド及び酵素の発現率が上昇したが、耐熱性、及び
pH変化に対する耐性は減少する傾向を示した。また、 アフィニティーク口マトグラフィ ーを行った燭合の非特異的相互作用も、スペ―サ―長が長くなるにつれて増加する傾 向が見られた。
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学位論文審査の要旨 主査′教授 戸倉清一 副,査 教授 西 則雄 副査 助教授 吉田 孝
副査 助教授 林 寿郎(京都大学)
学 位 論 文 題 名
Adsorption h/Iechanism of Protein to Functionalized Porous Chitosan Beads
(高機能化キトサン多孔性ビーズへの蛋白質の吸着機構)
キトサンは天然に広く豊富に存在するキチンを脱アセチル化することによって生成される、塩基 性のムコ多糖である。その化学構造はセルロースに類似しており 、グルコサミンがplー4結合で っながった構造を持つ。キトサンは低毒性、生体親和性、親水性、脱アセチjレ化度を調節すること による体内消化性等の利点が報告され、生医学分野での活用が考えられている。キトサンは分子内 に反応生の高いアミノ基を有していることから、化学修飾が容易であり、様々な高機能化の可能性 がある。そのうえ、キトサンは有機酸の希薄溶液に容易に溶解するため、再生が容易でフイルム、
紙、 繊維 、ビ ーズ 等 に成 形す るこ とも 可能 であ り、 広範 な分 野で の研 究が 進 めら れている 申請者は、キトサン多孔質ビーズが繊維等に比較してその巨大な表面積のため、タンパク質の吸 着担体として有利であると考えた。さらに、このキトサン多孔質ピーズを化学修飾によって高機能 化し、糖鎖を認識するタンバク質との相互作用を検討している。これは近年糖鎖の生体内での役割 が注目されてきており、この糖鎖とタンバク質との認識が、生体内での種々の機能発現に大きく影 響することが知られてきた。化学修飾キトサンを糖鎖構造の類似物と考え、糖鎖を認識するタンバ ク質との相互作用を検討することは、糖鎖機能の解明のために、非常に有効な手段であると考えた ためである。本研究では、糖鎖認識タンバク質として、リゾチームと牛ラクトフウリン(LF)を選び、
こ れ ら の 蛋 白 質 の 糖 鎖 認 識 機 構 の 解 明 を 目 的 と し て 研 究 を 行 な っ て い る まず、細孔調製剤のような添加物を使用することなく、低分子量キトサンを酢酸水溶液に溶解し、
この溶液を塩基性の凝固液に細いノズルを通して噴霧するとぃう簡単な調製方法を見い出した。こ の際にキトサンの濃度、もしくは凝固液の濃度を調節することによって、ビーズの嵩密度が制御可 能なことを見いだし、様々な表面積をもったキトサンビーズの調製を行なった。さらに有機溶媒で
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キトサン多孔質ビーズを平衡化した後に試薬を加え、攪拌することで容易に化学修飾できることを 見いだしている。
キトサンのアミノ基への化学修飾は、エタノール中無水酢酸によるアセチル化、エタノール中、
無水コハク酸によるスクシニル化、お ̄よびジメチルホルムアミド(DMF)中、ヘキサメチレンジイソ シアネートによる 架橋法が有効であることを見い出した。ピーズをNaOHでマーセル化後にイソプ ロピルアルコール中でモ丿クロル酢酸を反応させることで水酸基のカ´レボキシメチル(CM)化、およ びDMF中DMF‑三酸化イオウ複合体を反応させる ことでスルホン化されることを見いだした。CM化 度はマーセル化の 際のNaOHの濃度で、スルホン化ではDMF,三酸化イオウ複合体の量でそれぞれ置 換度の制御が可能であることを示している。
CM基を導入したキトサンピーズへの卵白リゾチームの吸着挙動及びスルホン化キトサンビーズヘ のLFの吸着挙動を調ペ、糖鎖認識の知見を得ると共に、両担体のそれぞれのタンバク質のアフイニ テイークロマトグラフイー用担体としての可,能性の検討を行なっている。CM基を導入したビーズで はCM基の導入量が増加するにつれて、リゾチームの吸着量は増加したが、その導入位置がアミノ基 か水酸基かで異なる1Jゾチーム吸着挙動のあることを見いだしている。CM化されたキトサンビーズ ヘのりゾチームの吸着は、尿素、しょ糖、N・アセチルグルコサミンによって阻害され、この吸着に は水素結合の関与が示唆された。この担体を用いて、卵白から直接リゾチームをアフイニテイーク ロマトグラフイーで精製できることを見いだした。
ス少ホン化キトサンピーズヘのLFの吸着は、O‑スルホンの場合、その導入量が増加するにっれて 吸着量が増化した が、約100yeq/ml程度で最大となり、それ以上導入量が増加すると逆に吸着量は 減少した。また、この吸着は、ピーズの物理的形状によっても影響を受け、見かけ密度が大きくな るにっれてその吸着量は減少した。スルホン基の導入位置についてはO‑スルホンのみよりも、N.O スルホンの共存するほうが吸着量は増大した。ヘバリン認識タンバクであるLFでも、N‑,及びO・ス ルホンの両者を認識していることが示唆された。この担体を用いての脱脂乳からのLFの精製は、溶 出にlM‑ NaClを用いることで可能であったことから、LFのスルホン化ビーズヘの吸着はイオン的相 互作用が主であることを示唆した。
また化学修飾によって機能化されたキトサンピーズも、CM基を活性エステル化することによって、
タンバク質の固定化担体としての応用を試もみている。
このように化学修飾により全く新しい機能性を引き出せることを示した本研究は高く評価される。
参考論文はぃずれも本論文と関連性があり、審査員一同は申請者が博士(理学)の学位を得る充 分な資格があると認めた。