松
本
市
議
会
社会インフラの長寿命化対策に関する
目
次
1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P1
2 調査研究の経過 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ P1
3 調査研究の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ P2
4 調査研究のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・ P8
5 提 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P10
< 資 料 >
資料① 決算カードによる投資的経費の推移・・・・・ P12
我が国の社会インフラは、高度経済成 長期に、社会的ニーズに応え る
ため次々に建設され、建設後40年から50年という長い年月が経過してい
るものが多数出てきています。そのた めに近年、経年劣化に伴う損傷事
例のニュースに度々接するようになりました。
加えて、社会インフラの整備及び維 持管理にかかる建設関連の経費は
年々減少の一途をたどっています。本 市においても例外ではありません。
そこで、建設委員会では、本年度の 調査研究テーマとして、経年劣化
の進む社会インフラをどのように維持 管理すべきか、又そのために必要
となる巨額な経費をどのように捻出し ていけばいいのかについて、調査
研究することとしました。
平成24年 6月 調査研究テーマの決定
7月 市 の 現 状 と 取 組 み に つ い て 担 当 課 か ら 説 明 を 受 け 研 究
8月 広島県江田島市、大阪府豊中市、静岡県を視察
9月 本市の財政推移について調査
10月 本市の橋梁長寿命化修繕計画対象橋梁の現地調査
12月 他市の事例について調査
なお、本市における社会インフラとは 、道路橋、上下水道施設、道路 、
河川、公園等の施設を指しています。 委員会では、道路橋を中心に、上
水道施設、下水道施設の状況について調査を行いました。
以下は、調査研究の結果判明した事柄です。
1
はじめに
⑴ アメリカと日本の現状
日本より も、3 0年先 立って 、社 会イン フラを大 量に 整備し てきた ア
メリカでは、 1980年代 には多くの 道路 ストックが高 齢化し、 1983年の
コネチカット 州、2000 年のミルウ ォー キー州、2005 年のペン シルベニ
ア州、2007 年のミ ネソタ 州と、次 々と 道路橋の 崩落事故 が続き 、多く
の人命が失われ、また、地域経済が大きなダメージを受けました。
そのよ うな状 況を 受け、 有識 者の間 で は、ア メリカ の後 追いを して
きた日本 でも 、この ような 事故が 近い うちに起 きる ように なるの では
ないかと 、心 配する 声が上 がるよ うに なってい まし たが、 残念な がら
その心配 が現実 のもの になっ てしま い ました。 昨年12 月、笹 子トン ネ
ルで、まさに「崩落事故」が発生してしまったのです。
この事 故によ り、 日本に おい ても社 会 インフ ラの老 朽化 が深刻 な問
題であることが改めてクローズアップされました。
⑵ 国土交通省の取り組み
2008年5 月、国 土交通 省が設 置した 「 道路橋の 予防保 全に向 けた有
識者会議 」から 、道路 橋の予 防保全 の 実現のた めの提 言がさ れまし た。
そこには 、「 我が国 の道路 橋保全 の実 態に目を 向け てみる と、点 検、
診断、補 修補 強の信 頼性が 十分に 確保 されてい ない こと、 高度な 専門
知識を必 要と する損 傷事例 に対応 する 体制(技 術拠 点や人 材)が 整備
されてい ない ことな ど、道 路橋を 、適 切に保全 する 観点か ら多く の課
題を抱え てい る実態 が浮か び上が った 。これら の課 題に的 確に対 応し
なければ 、道 路橋の 安全性 を確保 でき る期間が 短く なると ともに 、架
け替え等 に多 額の投 資を迫 られる こと となる。 また 、重大 な損傷 が生
じ、万が 一で も崩落 事故と なれば 、国 民の生命 ・財 産に危 険が及 び、
復旧にも 長期 間を要 するな どの社 会的 損失を生 じる ことに なる。 」と
指摘されています。
このま ま何も しな いでい れば 、劣化 が 原因の 重大事 故に つなが りか
ねません し、 いずれ 大規模 な補修 や更 新のため の巨 額の財 政負担 が発
生することが容易に予測されます。
この「 道路橋 の予 防保全 に向 けた有 識 者会議 」の提 言に あるよ うな
状況への 対策 として は、ア セット マネ ジメント を導 入して 中長期 管理
計 画 を 策 定 し 、 こ れ ま で の 、 大 規 模 な 損 傷 が 起 こ っ て か ら 対 応 す る
「対症療 法的 管理」 でなく 、早期 に損 傷を発見 し、 事故や 大規模 な修
繕に 至る 前 に対 策を 行う 「 予防 保全 的 管 理」 へ転 換 する こと が必 要 です 。
国は、 この提 言を 受け、 重大 な損傷 に 至る前 に異常 を発 見し、 手当
すること によ って、 橋梁の 長寿命 化を 図る「橋 梁長 寿命化 修繕計 画」
を策定するよう、それぞれの橋梁管理者に求めています。
⑶ 松本市の現状
本市でも 他人 ごとで はなく 、昭和 30年 代までに 建設 された 古い道 路
橋は、橋 長5m 以上の 建設年 度がわ か っている 道路橋 で現在 約10% で
すが、今か ら20年後 の平成45 年には 、 建設後50年 を経過す る道路橋 が
占める割合は、60%を超えることになります。本市では平成20年度から、
橋長5m以上の道路橋501橋について調査をしてきましたが、その調査
に基づい て、平 成24年 度中に 「橋梁 長 寿命化修 繕計画 」を策 定する 予
定となっています。
本市に おいて 社会 インフ ラの 整備に 投 資され た経費 の推 移を示 す資
料はありませんので、類推するために2種類の資料を調査いたしました。 まず、決 算カ ードに よる投 資的経 費を 過去40 年余り にわた って調 査
し た 結 果 ( 資 料 ① ) 、 金 額 で は 平 成 9 年 度 の 3 2 2 億 円 ( H 2 2 年 度 1 0 0 億
おり、平 成22年 度決算 の投資 的経費 は 、最大で あった 平成9 年度の 3
分の1以下となっています。
投資的 経費に は社 会イン フラ 以外の 経 費も含 まれま すの で、次 に一
般会計に おける 土木費 決算額 の推移 を 過去40年 余りに わたっ て調査 し
た結果(資料 ②)、平 成4年度 の198 億円(H22年度 82億円) 、歳出総
額に占める土木 費の割合30.48% (H22 年度9.01%)が最大 となって お
り、平成2 2年度 の土木 費は最 大であ っ た平成4 年度の 2分の 1以下 と
なっています。
投資的 経費に も、 土木費 にも それぞ れ 時代的 な背景 や政 策要素 があ
りますが 、社 会イン フラの 整備や 維持 管理に投 入し た資金 が近年 著し
く減少している実態が明らかになりました。
⑷ 本市の橋梁長寿命化修繕計画
松本市が管理する道路橋の数は991橋ですが、今回市はそのうち橋長
5m以上の車が通行できる477橋について、「橋梁長寿命化修繕計画」
の対象としました。
市は各 道路橋 につ いて行 った 調査に 基 づいて 、次の よう な過程 で補
修計画を策定していくということです。
まず、調査結果のデータに基づいて、 各部材の健全度を算出します 。
これは 、例え ば、 鋼部材 の腐 食状況 に 例を取 ると、 次の ように 、健
全度をAからEまでの5ランクに分けます。
Aは錆なし
Bは局部的に表面のみ錆が生じている
Cは広範囲に表面のみ錆が生じている
Dは局部的に鋼材腐食が生じ、板厚の減少や表面の膨張が生じている
次に、部材ごとに健全度の劣化曲線を 設定し、劣化予測を立てます 。
これは 、既往 の研 究結果 によ り、標 準 的な劣 化曲線 を設 定し、 調査
結果を用いて、その曲線を補正して、健全度劣化曲線を設定します。
この健 全度劣 化曲 線によ り、 予防保 全 型で維 持管理 する 場合に は、
Bランク 又は Cラン クなど 軽微な 損傷 の時期に 対策 を実施 し、A ラン
クの状態 まで 回復さ せます 。これ に対 して、対 症療 法型で 維持管 理す
る場合に は、 Cラン ク又は Dラン クな ど重度な 損傷 で対策 を実施 し、
一気にAランクまで回復させるという維持管理をします。
次いで 、予防 保全 型と対 症療 法型の 2 つの管 理方法 を策 定し、 各シ
ナリオの ライ フサイ クルコ ストを 算出 します。 この 2つを 比較検 討し
て、維持管理方法を決定します。
具体的に 、新 庄橋、 野尻橋 及び上 橋に ついて、 上記 の方法 により 50
年間の対 症療 法型維 持管理 での費 用と 、予防保 全型 維持管 理での 費用
を試算した結果について説明を受けました。
算定例によると、3つの道路橋と も、予防保全型での維持費用の方
が安価であるという結果でありました。
⑸ 現地調査の結果
委員会はこの説明を聞いた後、新 庄橋、野尻橋及び上橋の現地調査
をしましたが、いずれも、路面にひび 割れができていたり、雨水排 水
溝が泥やごみで埋まっていて、排水溝 の機能が失われた結果、雨水 が
床版や橋脚、橋台に達しており、遊離 石灰がつらら状に垂れ下がっ て
い た り 、 コ ン ク リ ー ト が ボ ロ ボ ロ に 欠 け 始 め て い る 実 態 を 確 認 し ま し た 。
このま ま何も しな いで放 って おけば 、 いずれ 大きな 損傷 に進ん でし
まい、大 規模 な修復 工事が 必要に なり 、多額の 費用 と長期 間にわ たる
通行規制が行われるようになることは明らかです。
ンクリー トを 補修し たり、 排水溝 を元 通りにす れば 、これ らの道 路橋
は蘇り、 長生き するに 違いな いと誰 も が思った 現地調 査であ りまし た。
⑹ 本市の上下水道長寿命化計画への取り組み
下水道 施設に つい ては、 ライ フサイ ク ルコス ト最小 化の 観点を 踏ま
え、計画 的な改 築更新 を推進 するた め に、平成2 0年4 月に下 水道施 設
の事故の 未然 防止及 びライ フサイ クル コストの 最小 化を図 るため 創設
された、 国の 長寿命 化支援 制度に 基づ いて長寿 命化 計画に 取り組 んで
いるとのことです。
宮渕浄化センターは、建設後37年が経過しており、平成13年度より、
「改築更新事業」によって改築が進め られていますが、国の長寿命 化
支援制度が創設されたのを受けて、平 成24年度から、「第1期長寿命
化計画」に移行して、引き続き工事が進められています。
今後、平 成28年 度には 、この 第1期 長 寿命化計 画が終 了する 予定で 、
平成27年度に長寿命化第2期計画の策定が予定されています。
両島浄化 セン ターに ついて は、平 成26 年度に長 寿命 化第1 期計画 の
策定が予定されています。
また、 管渠に つい ては、 現在 、蟻ヶ 崎 分区、 寿台分 区、 及び本 郷分
区におい て計画 が進め られて おり、 平 成25年度 に「芳 川第3 分区長 寿
命化計画」を策定するということであります。
今後、 事業費 の確 保に努 め、 予算の 平 準化を 図りな がら 新規計 画を
進めるとのことです。
次に上水 道施 設につ いてで すが、 本市 の上水道 の歴 史は、 大正12 年
の一部給 水開始 から90 年とい う長い 年 月を刻ん でいま す。そ のため 、
法定耐用 年数 を超え た老朽 施設も 多く 、計画的 に更 新及び 長寿命 化を
化は喫緊 の課 題とな ってい ます。 こう した状況 に鑑 み、施 設の耐 震化
と合わせ 、老 朽施設 の改良 を行う こと によって 、延 命化を 進めて いく
とのことです。
耐用年数4 0年以 上を経 過した 老朽配 水 管は、昭 和52年 度から 第1次
配水管改 良事 業に着 手し、 現在は 第7 次の改良 事業 を進め ていま す。
計画的に 漏水調 査や日 常のパ トロー ル を行い、 異常の 早期発 見に努 め、
管路網の 延命 化を図 ってい ます。 また 、取水・ 配水 施設の 中には 、法
定耐用年 数を 超えて いるも のがあ りま すが、適 切な 維持管 理・修 繕に
より延命化を図っています。
今後は、 平成2 3年度 に策定 した 「松本 市水道ビ ジョ ン」及 び現在 策
定中の「 松本 市水道 施設耐 震化計 画」 に基づく 管路 の耐震 化と合 わせ
て老朽配 水管 の改良 を行う ことに より 管路網の 延命 化を進 め、ま た、
取水・配 水施 設にお いても 、耐震 化計 画に基づ き、 重要な 施設か ら耐
震化を図るとともに長寿命化を進めていくということであります。
施 設 の 耐 震 化 ・ 長 寿 命 化 は 、 短 期 的 に は 「 上 下 水 道 局 中 期 財 政 計
画」、中 期的 には「 松本市 水道ビ ジョ ン」「松 本市 水道施 設耐震 化計
画」によ り進 め、長 期的な 長寿命 化に ついては 、ア セット マネジ メン
トによる維持補修計画の策定を検討していくとのことです。
以上の結果、本市の上下水道施設 については、早くから施設の経年
劣化を見据えた維持管理に努めてきた 経過が分かりました。また、 牛
伏寺断層による巨大地震が発生する確 率が高くなっていると言われ て
いる中で、施設の耐震化は本市にとっ て重要施策であります。その た
め、耐震化事業と合わせて長寿命化を 進めることについては合理性 が
ありますが、加えて、長期的な視点か らアセットマネジメントを導 入
し、施設の長寿命化を図り、ライフサ イクルコストの最小化に努め て
⑴ こ れ ま で の 大 規 模 な 損 傷 が 起 こ っ て か ら 対 応 す る 「 対 症 療 法 的 管
理」から、早期に損傷を発見し、事故や大規模な修繕に至る前に対策
を行う「予防保全的管理」へ転換しなければならないことは、もはや
論をまちません。「予防保全的管理」というのは、言いかえれば「点
検⇒健全度評価⇒劣化予測⇒補修」というマネジメントサイクルを実
施することに他なりません。その際、重要なのは、点検及び診断の信
頼性確保ですが、そのためには、今後急速に進展していく先端技術を
習得していかなければなりませんし、基礎データを蓄積し、データベ
ースを構築して、松本市版のマネジメントサイクルを確立していくこ
とが必要です。
これらのことは、当然、国、県との連携、また支援を受ける中で実
施していくことですが、市としてもそうした専門知識・技術を有する
人材の育成が急務であると考えます。
⑵ 一 方 、 本 市 が 管 理 す る 舗 装 済み 道路 の 延 長 は 2 , 14 0 k m 、 道 路 橋 の
数 は 9 9 1 橋 で あ り 、 膨 大 な 量 に 達 し て い ま す 。 ま た 、 市 町 村 合 併 に よ
り、広範囲に及んでいます。これらの 維持管理を行政だけで行うに は
限界があります。住民との協働が必要になると考えます。
本市で は、今 まで も、地 域住 民の皆 さ んが自 発的に 道路 の清掃 等を
実施して きて います が、そ れは行 政が 加わった 組織 的、制 度的な もの
ではあり ませ ん。そ こで、 委員会 は他 市の状況 につ いて、 調査を しま
した。
調査の中で、岐阜県の事例は、大変参考になりました。
岐阜県 では、 県及 び市町 村の 技術者 と 、地域 の担い 手で ある地 元の
建設業者 が協 働して 、効率 的な道 路維 持管理等 を実 施する ため、 発注
者・受注 者の 双方に 高度な 技術力 を有 する人材 「社 会基盤 メンテ ナン
スエキス パー ト(М E)」 を岐阜 大学 ・産業界 ・岐 阜県が 連携し て養
成しています。
また、 МEに 合わ せ、道 路施 設の状 況 をいち 早く把 握し 、破損 する
前に適切 な修 繕が実 施でき るよう に、 ボランテ ィア 活動と して道 路施
設の点検 を行 い、道 路管理 者に情 報提 供する一 般の 方を「 社会基 盤メ
ンテナンスサポーター(МS)」として委嘱しています。
更に、 地域住 民・ 団体や 企業 の皆さ ん の自発 的なボ ラン ティア 活動
により、 道路 の一定 区間を 定期的 に清 掃・除草 や除 雪など の道路 の維
持管理を 行っ ていた だく「 ぎふ・ ロー ド・プレ ーヤ ー」を 設置し て活
動してい ます 。そし て、県 や市町 村は 、このボ ラン ティア 活動に 対し
て、表示 板の 設置、 ボラン ティア 傷害 保険の加 入、 必要な 消耗品 等の
支援やごみ処理等のサポートを行っています。
以上が 岐阜県 の事 例です が、 本市で も このよ うな地 元の 事業者 や地
域住民との協働をシステム化することが必要ではないかと考えます
⑶ 本市の土木予算は年々減少してい ますが、今までに造ってきた社会
インフラのメンテナンスのために、計 画的に財源を割き長寿命化を 図
ることが、結果として市の行政コスト を低減させると共に平準化さ せ
て、安定的な市の財政運営にとってプ ラスになるのではないでしょ う
か。また、市が管理する身近な社会イ ンフラの維持補修の事業であ れ
ば、防災機能の向上に役立つばかりで なく、結果として地元の中小 企
業の受注増と雇用増にも結びつき、地元経済の活性化にもなります。
今年の 冬、大 雪の 除雪に 手間 取った の も、地 域の中 小土 木事業 者の
衰退化が一つの原因になってはいないだろうかと考えられます。
これら のこと を総 合的に 考慮 します と 、社会 インフ ラの 長寿命 化の
ための予 算を 計画的 に増額 するこ とは 、当面の 財政 負担は 増加し たと
しても、トータルでは市勢の向上につながると考えます。
社会インフラの維持管理を、従来の大 規模な損傷が起こってから対 応
する「対症療法的管理」から、早期に 損傷を発見し事故や大規模な修繕
に至る前に対策を行う「予防保全的管 理」へ転換し、その長寿命化を図
ることは、次世代へ負の遺産を残さな いために、私たちが万難を排して
もやらなければならない事であると考えます。
これを推進するために、以下の3点に ついて、中長期的な計画のも と
に実施されるよう提言します。
⑴ 「予防保全的管理」の実施に当た り、専門的知識・技術を有する人
材の育成を行うこと。
⑵ 長寿命化のための予算を計画的に、かつ十分に手当すること。
⑶ 社会インフラの維持管理のために 、地元事業者や地域住民との協働
のシステムを構築すること。
以上提言いたします。