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李 佩俐 学位論文審査要旨

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Academic year: 2021

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平成19年2月

李 佩俐 学位論文審査要旨

主 査 井 藤 久 雄 副主査 重 政 千 秋 同 久 留 一 郎

主論文

Remote reperfusion lung injury is associated with AMP deaminase 3 activation and attenuated by inosine monophosphate

(遠隔再潅流による肺の障害はAMPデアミネース3の活性化を伴い、イノシン一リン酸により改善 される)

(著者: 李佩俐、荻野和秀、星川淑子、森崎裕子、程継東、遠山桂子、森崎隆幸,橋本潔、二 宮治明、富倉―下山陽子、井川修、重政千秋、久留一郎)

平成19年3月 Circulation Journal 71巻 掲載予定

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学 位 論 文 要 旨

Remote reperfusion lung injury is associated with AMP deaminase 3 activation and attenuated by inosine monophosphate

(遠隔再潅流による肺の障害はAMPデアミネース3の活性化を伴い、

イノシン一リン酸により改善される)

遠隔再潅流による肺障害は血管障害や外科的操作により発症し、致死率が高い。しかし、肺 障害に対する有効な治療法は開発されていない。各種治療法の確立が急がれているが、AMP デ アミネース 3 (AMPD3)により産生されるイノシン一リン酸(Inosine monophosphate ;IMP) の遠隔再 潅流による肺障害に対する役割に関しては解明されていない。そこで、本研究ではマウス下肢虚 血-再潅流障害モデルにおける遠隔再潅流による肺障害に対する IMP 投与の効果について検討 した。

方 法

6〜8 週齢の雄 BALB/C マウスを 5 群に分類した。下肢虚血-再潅流モデルは麻酔下マウス の両側下肢を痔核結紮器で 3 時間結紮後に一定時間再灌流することで作製した。結紮前および 結紮後再灌流 0, 3, 6, 24 時間後に肺を切除した。肺における AMPD 活性, myeloperoxidase (MPO) 活性, IMP は HPLC 法で測定し, AMPD3 mRNA の発現は RT-PCR 法にて、 Tumor necrotizing factor –α (TNF-α)は ELISA 法で検出した。光学顕微鏡標本を作製し、肺の病理組 織学的変化を検討した。 また、皮下に移入した注入ポンプにより虚血操作 12 時間前から IMP (1.6mg/hour )を投与して、その効果を検討した。

結 果

肺における AMPD3 mRNA、AMPD 活性および IMP は再潅流後 3 時間で虚血前に比較して 有意に増加したが、 虚血前肺と虚血 3 時間非再潅流肺間に有意差はなかった。AMPD のサブ タイプである AMPD 2 mRNA のマウス肺における発現は虚血-再潅流操作の有無にかかわらず、

変化がなかった。遠隔虚血-再潅流における肺内の MPO 活性は再潅流後 3 時間において虚血 前に比較して明らかに亢進した。この時、TNF-α 値は増加し、ヘモグロビンの酸素飽和度は低 下した。 肺組織を OCT-compound に封入して、ヘマトキシリン-エオジン染色を行って検討した

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ところ、虚血-再潅流後 3 時間では鬱血、出血とともに肺胞壁に好中球が浸潤していた。他方、虚 血-非再潅流肺では MPO 活性は増加せず、多核白血球浸潤は認められなかった。IMP 投与によ り血清 IMP 濃度が有意に上昇した。IMP 投与は肺における MPO 活性を低下させ、 TNF-α の 減少、 好中球浸潤の低下さらにヘモグロビンの酸素飽和度の改善を示した。

考 察

骨格筋の虚血―再灌流は肺での有意な MPO 活性の上昇と好中球浸潤を特徴とする遠隔肺 障害を惹起した。この障害はまた TNF-α と AMPD3 の転写活性亢進ならびに AMPD 活性亢進と IMP の合成亢進を伴っていた。さらに IMP の腹腔内投与は虚血―再灌流による肺での炎症細胞 浸潤、ヘモグロビンの酸素分圧の低下、MPO 活性上昇と TNF-α の発現上昇を有意に抑制した。

これらの結果はプリン代謝と AMPD3 発現の亢進が遠隔再潅流による肺の障害に関わっている こと、さらには IMP が遠隔再潅流障害において抗炎症的な効果を発揮することを示した。

マウス肺は AMPD2 と 3 を発現しているが、骨格筋の虚血―再灌流は肺での AMPD2 の発現に は影響しなかった。さらに虚血―非再灌流では MPO 活性、組織学的所見、AMPD3 活性ならび に IMP 合成に影響しなかった。即ち、肺での AMPD3 の発現増加や好中球浸潤のトリガーは不明 であるが、AMPD3 が骨格筋の虚血―再灌流による遠隔肺障害の発生に重要な役割を演じること を示す。従来の in vitro の研究から IMP が好中球に作用してその遊走を阻害することが知られて おり、さらに IMP は肺での好中球の浸潤を促進することで肺障害に強く関与する TNF-α の産生 を抑制することも知られている。これらの報告と今回の結果を合わせて推論すると、骨格筋の虚血

―再灌流は TNF-α を産生し肺での炎症を惹起するが、IMP の投与はこれを抑制することにより 肺障害を減弱すると考えられる。

結 論

骨格筋の虚血―再灌流は遠隔肺障害に伴って AMPD3 の転写活性、酵素活性の増加による IMP 産生増加を引き起こす。IMP の投与が肺での炎症や TNF-α 産生の抑制とヘモグロビンの酸 素飽和度を改善したことから IMP 投与は遠隔再灌流肺障害に対しての新しい治療戦略となり得 る。

参照

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