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発達障害児における課題分析に基づく実態把握と支援の検討

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実態把握と支援の検討

村 岡 玲 子・霜 田 浩 信

Examination of Assessment and Support Using Task Analysis

for Children with Developmental Disabilities

Sachiko MURAOKA and Hironobu SHIMODA

群馬大学共同教育学部紀要 人文・社会科学編 第70巻 145―163頁 2021 別刷

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発達障害児における課題分析に基づく

実態把握と支援の検討

村 岡 玲 子1)・霜 田 浩 信2) 1)高崎市こども発達支援センター 2)群馬大学共同教育学部特別支援教育講座 (2020年9月30日受理)

Examination of Assessment and Support Using Task Analysis

for Children with Developmental Disabilities

Sachiko MURAOKA

1)

and Hironobu SHIMODA

2

1)Takasaki City Child Development Support Center

2)Department of Special Needs Education, Cooperative Faculty of Education, Gunma University

(Accepted on September 30th, 2020)

1 問題と目的

 発達障害がある子どもの一人ひとりに合わせた学 びを保障していくためには、子どもが抱える困難さ に対して、その背景にある要因を把握したうえで、 系統立てられた支援を行っていく必要性がある。  発達障害がある子どもの状態像を実態把握する方 法には、発達検査や知能検査、行動観察等を用いた 方法がある。発達検査や知能検査は、客観性やデー タの信頼性が高く、検査中の様子から子どもの現状 を読み解くこともできるという利点がある。しかし、 検査の実施や分析は、検査に関して一定の訓練を受 けた者でないと行うことが難しい。そのため、検査 実施者が限られ、実施から結果の報告までに時間を 要することがある。また検査実施者と実際に支援を 行う支援者が異なることもあり、検査結果を生かし た支援を行うためには、支援者もまた検査に関する 知識を持ち、検査結果と実際の学習場面でのつまず きを照らし合わせながら、検査結果を解釈し支援に 結び付けていく必要がある。つまり、発達検査や知 能検査を用いた実態把握方法には、十分な検査実施 者の確保と検査結果を支援に結び付けていく支援者 の力量があることが前提となる。  一方で、行動観察は、実際の子どもの様子を観察 しながら、その実態を把握する方法である。特定の 観察場面を設定しなくても、日常生活場面や学習場 面でも観察は可能であり、時間的にも方法的にも実 施しやすさがある。予め観察場面における活動内容 や学習課題に関連した観察項目を設定して、子ども の情報を得ることも可能である。そして、観察によっ て得られた子どもの情報に基づいて目標や支援方法 を設定することが可能となる。  このような行動観察に基づく目標や支援方法を設 定する方法の1つに応用行動分析学で用いる課題分 析がある。課題分析とは、遂行が求められる複雑な スキルを教授できるより小さな単位に分解し、課題 を効果的に完了させるために必要な行動順序を確定 する手法である(Cooper, J. O., Heron, T. E., & Heward,

W. L., 2013)。応用行動分析学の課題分析において 行動を小さな単位に分解する際には、目に見える単

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位によって分解する。この課題分析の方法に加えて、 その行動要素がどのような知識や技能から成り立っ ているのかを分析した上で、子どもがその活動や学 習課題のどの部分につまずいているのか細部で捉え た実態把握を行うことができれば、複雑に見えるス キルのどの遂行部分につまずきがあるのか、より細 かい要素で捉えることができ、その情報を基により よい支援に結びつけられると考える。  課題分析を用いた先行研究では、障害者の就労支 援(小川・佐々木,1996、中鹿・望月,2010)、特 別支援学校での作業学習(高知大学教育学部附属特 別支援学校,2014)、買い物スキル(渡部・山本・ 小林,1990)、携帯電話スキル(福永・大久保・井上, 2005)等において、課題分析を用いる有用性を検証 している。しかしながら、課題分析の有用性を検証 する研究の多くが、就労支援、作業学習や日常生活 支援の場面で行われており、学習支援において用い られている先行研究は殆ど見受けられない。日常生 活スキルにおける課題分析は、目に見える行動の要 素を一つひとつに分け、行動の流れや難易度に応じ て整理していくものであるのに対して、学習支援に おける課題分析は、行動のみでなく目に見えない認 知の偏り部分についても分析し捉えていく必要があ るという点において異なる。  熊谷(2015)は、算数障害は認知能力のアンバラ ンスさによって起こるとし、例えば、数詞を覚える には、聴覚認知能力や聴覚的短期記憶などが主に必 要であり、数字を覚えることができるようになるに は、視覚認知能力や視覚的短期記憶などが主に必要 であるとしている。このような研究により、学習の つまずきから、認知の特性に基づいた教育支援が導 きだされてきている。これらの研究を基にしながら、 一人ひとりの子どもの学習場面や学習課題における つまずきから認知特性を捉え、それぞれに合った学 習支援に結び付けていく必要がある。  柳澤・名越(2019)は、知的障害特別支援学校の 作業学習において課題分析を行った行動要素に対し て認知特性の把握も行ったうえで支援を検討してい る。課題分析による行動要素に対して認知特性の把 握を試みた点でこれまでにない実践研究である。  しかし、作業学習や日常生活スキルではなく子ど もの学習場面や学習課題におけるつまずきと認知特 性を捉え、一人ひとりに合わせた学習支援を試みて いくことが求められる。佐藤・霜田(2020)の実践 研究では、繰り上がりのある足し算に困難がある子 どもに対して、課題分析に基づいた実態把握を行い、 さらに課題分析に基づいた実態把握から必要な学習 課題を設定することによって学習支援の在り方を検 討している。この実践研究は、課題分析の手法を算 数の学習において用いた点、さらに課題分析によっ て明らかになったそれぞれの学習課題遂行単位には どのような認知の力が関係しているか分析した上で 学習支援を行った点で、これまでにない取り組みで あった。また、この実践研究における実態把握によ り、教える内容が具体的になり、子どもの実態に適 した具体的な目標をスモールステップとして設定す ることができようになり、教科学習を中心とした学 習課題においても課題分析に基づく実態把握と学習 支援することの有用性が確認された。  しかしながら、発達障害がある子どもの学習支援 にあたっては、佐藤・霜田(2020)が行ったような 学習課題に対して課題分析を行い、学習課題遂行単 位における必要な認知力を分析するだけではなく、 学習課題遂行の困難要因となる衝動性、注意の注ぎ 方、苦手な課題に対する感情のコントロール等の行 動特性についても実態把握をしたうえで学習支援を 進めていく必要性があると考えられる。  そこで、本研究では算数の学習につまずきを抱え る発達障害がある子どもを対象として、算数の学習 課題に対する課題分析に基づいた実態把握、課題分 析によって明らかになったそれぞれの学習課題遂行 単位における認知力の把握に加え、行動特性に関す る実態把握を行った上での学習支援が有効であるか を検討することを目的とする。

2 方法

 ⑴ 対象児  対象児(A児)は指導開始時小学校3年男子、B 市立C小学校の通常学級に在籍し、通級指導教室

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で月2回指導を受けていた。幼児期に注意欠如多動 症及び自閉スペクトラム症と診断されていた。日常 生活動作は、ほぼ自立していた。授業中は、着席は しているが、身体が常に動いて落ち着かない等が見 られた。算数の学習に対しては、苦手意識が強くテ ストの点も低かった。家庭では、気持ちがのらず算 数の宿題をすること自体が難しかった。母が手取り 足取り教えながら宿題を終わらせていて、母子共に 疲弊する状況があった。  ⑵ 指導場所・期間、指導者  A児の自宅リビングにおいて201X年4月∼201X 年11月の期間で課題分析に基づく実態把握のため の観察(ベースライン)を3回、対面式の個別学習 支援を17回(週1回50分)行った。学習の様子を ビデオ撮影し、学習活動のインターバル記録、問題 の正答率、学習の様子を記述式で記録した。指導者 は、D大学の大学院2年在籍中の第1筆者であった。  ⑶ 実態把握の方法とその結果 ①課題分析シートを用いた実態把握  A児の学校のテスト結果から情報収集し、A児が テストで解答困難を示しがちな繰り上がりのある二 桁+二桁のたし算の文章問題を研究対象課題として 設定した。課題分析シートは、A児が二桁+二桁の 繰り上がりのあるたし算を解答することを想定し、 一連の過程を大項目8項目に分け、「二桁+二桁の 繰り上がりのあるたし算の課題分析シート(大項 目)」:(表1)(以下、「課題分析シート(大項目)」 とする)とした。また、大項目のそれぞれを小項目 39項目に分け、「二桁+二桁の繰り上がりのあるた し算の課題分析シート(小項目)」:(表2-1∼2-6) (以下、「課題分析シート(小項目)」とする)を作 成した。表の各小項目(上段)の下には、その小項 目の実態を確認するための活動を記載した。「課題 分析シート(小項目)」に関わる認知項目に関しては、 小笠(2007)、中野(2015)、添島(2014,2016)ら の研究及び著書を参考にして設定した。「課題分析 シート(小項目)」(表2─1∼2─6)における「認知」 欄の番号は、①視覚認知、②聴覚認知、③指示理解、 ④言語理解、⑤理解・思考、⑥課題遂行力(プラン ニング)、⑦課題遂行力(ワーキングメモリ)、⑧数 概念、⑨数量概念・空間関係などの関係概念の理解、 ⑩長期記憶、⑪短期記憶、⑫運動機能・巧緻性を表 した。  「課題分析シート(大項目)」を基にA児の二桁 +二桁の繰り上がりのあるたし算の計算の様子を観 察し、「課題分析シート(小項目)」の小項目ごとに Y(通過)またはN(不通過)を記入した。A児が 課題の答えを導くまでの過程をベースラインとして 3回観察した。これを基に、二桁+二桁の繰り上が りのあるたし算におけるA児の実態を明らかにし た。  「課題分析シート(大項目)」(表1)、「課題分析 表1 二桁+二桁の繰り上がりのあるたし算の課題分析シート(大項目) 〈問題〉 めぐみさんは、折り紙を67枚持っています。97枚もらうと何枚になるでしょう。 大  項  目 1回目 2回目 3回目 1 文章問題を読んで「6797」を立式する。 Y Y Y 2 「6797」の筆算式を書く。 N N N 3 一の位の計算「7+7=14」をする。 N N N 4 一の位に「4」を記入し、一の位の繰り上がりの「1」を記入する。 N N N 5 十の位の計算「6915」をする。 N N N 6 「百の位に「15」に、一の位の繰り上がりの「1」を記入する。 1」を足し、十の位の数「6」を記入し、 N N N 7 「68+97=165」と式を完成する。 N N N 8 答えの欄に「165まい」と記入する。 N N N

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表2 二桁+二桁の繰り上がりのあるたし算の課題分析シート(小項目) 表2─1 文章問題を読んで「6797」を立式する(大項目1)に関する小項目 上段=小項目   下段=○確認するための活動 ア 文章問題から必要な情報を選択する。 認知 1回目 2回目 3回目 ○文章問題から立式に必要な数字や言葉に印をつける。 ①③④⑤ Y Y Y イ 必要な情報を基に文章問題で求められていることをイメージする。 認知 1回目 2回目 3回目 ○イメージ図を描き、図の中で答えとなる部分を示す。 ⑤ Y Y Y ウ 立式に必要な記号が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○「もらう(+)」「右辺と左辺の等号(=)」を記号化する。 ④⑤⑦⑩⑪ Y Y Y エ 立式に必要な情報に注意を向けながら、式を組み立てる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○数字・記号カードを使って、式を組み立てる。 ⑤⑥⑦ Y Y Y オ 立式を書く。 認知 1回目 2回目 3回目 ○カードを使って組み立てた式を書き写す。 ①⑥⑦⑫ Y Y Y 表2─2 「67+97」の筆算式を書く(大項目2)に関する小項目 上段=小項目   下段=○確認するための活動 ア 一の位、十の位が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○計算盤に位取りして数字カードを置く。 ①⑧⑨ Y Y Y イ 位を意識して、筆算式を組み立てる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○計算盤に数字・記号カードを置いて、筆算式をつくる。 ①⑥⑦⑨ N N N エ 桁を えて筆算式を書く。 認知 1回目 2回目 3回目 ○計算盤を見て筆算式を書く。 ①⑥⑦⑨⑫ N N N 表2─3 一の位の計算「7+7=14」をする(大項目3)に関する小項目 上段=小項目   下段=○確認するための活動 ア 数の基礎概念(集合をつくる)がある。 認知 1回目 2回目 3回目 ○具体物を用いて、仲間づくりをして集合をつくる。 ①④⑥⑦⑧ Y Y Y イ 数の基礎概念がある(同じ物・異なる物の分析・統合)がある 認知 1回目 2回目 3回目 ○具体物を用いて、同じ物をまとめ、異なるものを分ける。 ①④⑥⑦⑧ Y Y Y ウ 数の基礎概念(色・形・大小の理解)がある。 認知 1回目 2回目 3回目 ○具体物を用いて、色・形・大小の観点から分類する。 ①④⑥⑦⑧ Y Y Y エ 数の基礎概念(多い・少ない)が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○具体物を用いて、11対応し多い・少ないが分かる。 ①④⑥⑦⑧ Y Y Y オ 数の基礎概念(足りる・同じ・足りない)が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○具体物を用いて、11対応し足りる・同じ・足りないが分かる ①④⑥⑦⑧ Y Y Y カ 数の基礎概念(具体物を半具体物に置き換えできる)がある。 認知 1回目 2回目 3回目 ○具体物と半具体物を用いて、11対応して半抽象化する。 ①④⑥⑦⑧ Y Y Y キ 数の基礎概念(数えなくても概ね数の大小が分かる)がある 認知 1回目 2回目 3回目 ○2グループの半具体物を数えずにどちらが多いか分かる。 ①④⑥⑦⑧ Y Y Y ク 数の基礎概念(数の並びや順序が分かる)がある。 認知 1回目 2回目 3回目 ○順番に並べられた半具体物のうち、「○番目」が分かる。 ①④⑥⑦⑧ Y Y Y

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ケ 1∼10の数詞、音の系列が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○1∼10までの数詞を声に出して唱える。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y コ 1∼10の半具体物と数詞の対応が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○110までの半具体物の数を数詞で数える。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y サ 1∼10の数詞と数字の対応が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○1∼10までの数詞を聞いて、数字カードを選ぶ。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y シ 1∼10の半具体物と数詞と数字の3項関係が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○1∼10までの数字カードを見て「数詞」を答える、または半 具体物を える。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y ス 10までの数の操作(5と10のまとまり)ができる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○数字カードを組み合わせて、合計が5と10のまとまりをつくる。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y セ 10までの数の操作(10までの数を2種の数字で合成する)ができる 認知 1回目 2回目 3回目 ○数字カードを組み合わせて、10までの数をつくる。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y ソ 10までの数字を書く。 認知 1回目 2回目 3回目 ○10までの数字を書く。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y タ 足し算に関する操作(「合わせる」「加える」が分かる)ができる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○2つの受け皿に入れた半具体物と空の受け皿を使って「合わ せる」「加える」の操作ができる。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y チ 足し算の表記に用いる記号+(足す)、=(等しい、答えをつ なぐ)が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○「合わせて」「加えて」が+、「答え」「等しい」が=である と記号カードから選ぶことができる。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y ツ 一桁+一桁の足し算ができる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○和が5までの足し算(1+1、2+1、3+1、4+1、2+2、 2+3)ができる。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y ○足される数・足す数が4までで、繰り上がりのない足し算(3 +3、4+2、4+3、4+4)ができる。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y ○和が9までの足し算(6162637172、 8+1)ができる。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y ○和が10になる足し算(9182637364、 5+5)ができる。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ N Y Y テ 一桁+一桁の足し算(繰り上がりのある)ができる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○足される数が4までの繰り上がりのある足し算(7+4、8 +3、8+4、9+2、9+3)ができる。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ N N Y ○その他の繰り上がりのある足し算(6566757677858687889596、 9+79899)ができる。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ N N N ト 10の補数が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○数字カードを使って、10の補数をつくる。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y ナ 11∼20の数詞、音の系列が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○1120までの数詞を声に出して唱える。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y ニ 11∼20の半具体物と数詞の対応が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○11∼20までの半具体物の数を数詞で数える。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y

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シート(小項目)」(表2─1∼2─6)のY(通過)N(不 通過)の状況から、「文章問題を読んで立式する」「数 の基礎概念」「1∼20までの数の理解」「10までの数 の操作」については、本児が自力で学習遂行可能で あることが分かった。「一桁+一桁の足し算(繰り 上がりのある)の理解」「位を意識して筆算式を組 み立てる」「桁を えて筆算式を書く」「筆算式の手 順を組み立てる」「文章問題の解法の手順が分かる」 「文章問題で求められている内容を思い出す」「答え につける助数詞を文章問題から見つけ答えにつける」 項目については、十分な理解に結び付いていないこ とが分かった。これらの項目のうち、算数における 理解の基盤になる「一桁+一桁の足し算(繰り上が りのある)の理解」を本児の学習が必要な項目とし、 ヌ 11∼20の数詞と数字の対応が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○11∼20までの数詞を聞いて、数字カードを選ぶ。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y ネ 11∼20の半具体物と数詞と数字の3項関係が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○110までの数字カードを見て「数詞」を答える、または半 具体物を える。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y ノ 10の位の位取りが分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○数字盤、半具体物を用いて、10の位取りを操作する。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y ハ 二桁の数と位取りが分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○計算盤、数字カード、半具体物を用いて位取り操作する、ま たは位取りした数が読める。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ Y Y Y 表2─4 一の位に「4」を記入し、一の位の繰り上がり「1」を記入する(大項目4)に関する小項目 上段=小項目   下段=○確認するための活動 ア 三桁の数と位取りが分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○計算盤、数字カード、半具体物を用いて位取り操作をしたり、 位取りした数が読める。 ①④⑥⑦⑧⑨⑫ N N N イ 筆算式の計算の手順を組み立てる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○筆算式の解法の手順のカードを組み立てる。 ⑥⑦⑧⑨ N N N ※十の位の計算「6915」ができる(大項目5)に関する小項目は、表2 3一の位の計算「7714」をする(大 項目3)に関する小項目と同様※「15」に繰り上がり「1」を足し、十の位の数「6」を記入し、百の位に「1」を 記入する(大項目6)に関する小項目は、表2 4一の位に「4」を記入し、一の位の繰り上がり「1」を記入する(大 項目4)に関する小項目と同様 表2─5 「6897165」と式を完成する(大項目7)に関する小項目 上段=小項目   下段=○確認するための活動 ア 文章問題の解法の手順が分かる。 認知 1回目 2回目 3回目 ○文章問題の解法の手順カードを順番に並べる。 ⑤⑥⑦ N N N 表2─6 答えの欄に「165まい」と記入する(大項目8)に関する小項目 上段=小項目   下段=○確認するための活動 ア 文章問題で求められていた内容を思い出す。 認知 1回目 2回目 3回目 ○文章問題中の問われていた箇所を指すことができる。 ③④⑤⑦⑧⑨ N Y N イ 答えにつける助数詞を見つけ答えにつける。 認知 1回目 2回目 3回目 ○文章問題中で問われていた内容の助数詞を指すことができる。 ①④⑤⑧⑨ N Y N

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それ以外を環境の調整や課題の修正を行うことで理 解を補う項目にした。 ②行動観察記録による実態把握  A児が算数の文章問題(繰り上がりのある二桁+ 二桁の足し算)を解く過程を観察し、A児の課題へ の反応や反応場面について、記述式の記録を行った。 ③分析シートによる分析  「課題分析シート(小項目)」による実態把握から 得られた情報を「認知の分析シート」(表3)に整 理し、困難さのある認知力について分析した。「認 知の分析シート」(表3)は、「課題分析シート(小 項目)」で不通過だった項目に関係する認知力を① 表3 認知の分析シート 不通過だった項目 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ 位を意識して、筆算式を組み立てる。 桁を えて筆算式を書く。 一桁+一桁の足し算ができる。 一桁+一桁の足し算(繰り上がりのある)ができる。 三桁の数と位取りが分かる。 筆算式の計算方法の手順を組み立てる。 文章問題の解法の手順が分かる。 文章問題で求められていた内容を思い出す。 答えにつける助数詞を文章問題から見つけ、答えにつける。 【認知力】 ①視覚認知 ②聴覚認知 ③指示理解 ④言語理解 ⑤理解・思考 ⑥課題遂行力(プランニング)⑦課題遂行力 (ワーキングメモリ)⑧数概念 ⑨数量概念、空間関係などの関係概念の理解 ⑩長期記憶 ⑪短期記憶 ⑫運動 機能・巧緻性 表4 認知の特性 上段=項目に関係する認知力 下段=困難さの表れ方    支  援  方  法 ① 視覚認知 ○視覚情報(形・色・大小・位置など)を 分析・処理する力 ○環境(照明、まぶしさの調節、座席の配慮、机と椅子の高さの 調節)をする。 ○文字サイズ、フォント、白黒反転、コントラスト、色フィルター の使用等を調整する。 ○背景の単純化等、教材の情報量を調整する。 ○リーディングスリット、白黒反転定規、罫線の太いノート、行 間の広いノート、マーカーを使用する。 ・文字や図形の見取りにくさ、書きにくさ ・文字や数字、記号などの書き誤りや書き 落とし ② 聴覚認知 ○聴覚情報(音節や音の抑揚、強弱など) を分析・処理する力 ○環境(音を聴きとりやすい環境、座席への配慮)の調整をする。 ○聴覚情報の情報量、速さ、長さの調整をする。 ○聴覚情報を補う視覚情報を提示する。 ・言葉を聞き取り理解することの難しさ ・似た言葉の聞き間違い ③ 指示理解・状況認識 ○情報を正確にキャッチする力。言葉を聞 き取り理解する力 ○動機づけとなる課題・情報の提示と仕方を工夫する。 ○掲示物等の視覚刺激を減らす、静かな環境を用意するなど環境 を整える。 ○情報量の調整(課題の量、指示の量)を行う。 ○指示は一旦引き寄せてから、1指示1動作で行う。 ○興味関心の持てるメディア(文字・写真・絵、ワークシート、 実物)の使用をする。 ・指示を最後まで聞くことの難しさ ・指示の勘違い ・複数の条件を関連づけて考えることの難 しさ

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④ 言語理解 ○文章の解読ができる言語理解力、問題に ある一つひとつの文字、記号、用語の意 味の理解力 ○聞かれていること(赤色)、分かっている数値(青色)に印を つけ、文章問題の情報を整理する。 ○整理した情報から、関係性を把握するためのキーワードを抜き 出す。 ○問題を図式化する。対象となる量を線分の長さで表す。 ○言語と一緒に具体物の操作をする。数式を言語化しながら見直 す。 ・文章問題の読解の困難さ ・文章問題中の文字、記号、用語の理解の 難しさ ⑤ 理解・思考 ○正しく課題の内容を理解する力、柔軟に 条件を考える力 ○課題内容を構造化(課題の内容を整理し体系化し、全体の見通 しを持てるように視覚化・工夫)する。 ○課題を構成している要素を分析し、小さく段階を設けながら課 題全体をクリアできるようにする(スモールステップ) ○課題の中での必要な情報を確認できる物を用意する。 ・複数の条件を捉え、総合的に理解するこ との難しさ ・1つの条件(刺激)に捉われる ⑥ 課題遂行力(プランニング) ○手順に沿って課題を整理する力、課題を 進めていく方法を順序だてて計画する力、 優先順位を考えながら手順を考える力、 課題の進み具合を振り返って確認する力、 必要に応じて新しい方略を生み出す力 ○予定、流れ、手順、約束など活動の見通しをクリアにしておく。 ○ゴール(活動の終わり)を明確にしておく。 ○本人も理解に応じた手順表を提示する。 ○活動をパターン化して見通しを持ちやすく、自動的にできるよ うにする。 ○プランや方略を使うことを教える。方略を用いることの効果を 考える。プランや方略を用いることによって、自分の力で課題 を達成できた成功体験を積む。 ○考えたプランや方略にネーミングし、プランや方略を記憶から 引き出しやすくする。 ○シミュレーションを行い、活動を予め確認しておく。 ・手順や方法を見いだせずになかなか取り 組めない ・やりたい気持ちがあるがうまく出来ず苛 立つ ・課題を手当たり次第に解く ・誤ったやり方をした時に修正することが 難しい ・算数関する方略、文章問題に対する方略 など、必要に応じて切り替えることが難 しい ⑦ 課題遂行力(ワーキングメモリー) ○課題に必要な情報の記憶を保つ力、情報 の保持機能と処理機能の両方機能、情報 を入り一時的に保持し、その保持した情 報を長期記憶との関連から処理して(長 期記憶の情報を参照する)認知活動の遂 行を支える力 ○課題中の要素(手順等)を視覚化しておき、ワーキングメモリー にかかる負担を軽くする。 ○課題を解く過程の手掛かりを残しておく(見えるようにしてお く)。 ○マスキング(課題処理に必要ない部分を隠しておく、課題処理 に必要な部分だけを見えるようにする)する。 ・課題の条件を保持しながら処理すること の難しさ ・複数の条件がある場合、条件が抜ける ⑧ 数概念 ○数量を頭の中でイメージして概念化する 力、数量の理解 ○具体物や半具体物を用いて、数のイメージを形成する。 ⑨ 数量概念、空間関係などの関係概念理解 ○数量や空間などの関係概念の理解力、事 物と事物の関係の概括的な意味を抽象化 して捉える力 ○具体物や半具体物を用いて、数量や空間などの関係概念、事物 と事物の関係の意味を捉えられるようにする。

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視覚認知、②聴覚認知、③指示理解、④言語理解、 ⑤理解・思考、⑥課題遂行力(プランニング)、⑦ 課題遂行力(ワーキングメモリ)、⑧数概念、⑨数 量概念・空間関係などの関係概念の理解、⑩長期記 憶、⑪短期記憶、⑫運動機能・巧緻性に分類し、一 目で捉えられるように表したものである。  記入手順としては、「課題分析シート(小項目)」 で3回の観察中1回以上不通過だった項目を「認知 の分析シート」(表3)の左欄の上段から順に記入 した。次に、不通過だった項目に関係する認知力に ついて、「課題分析シート(小項目)」の「認知」に 関する欄と照らし合わせながら「認知の分析シー ト」(表3)の右欄の該当する認知力の番号欄を黒 塗りに塗りつぶした。次に「認知の分析シート」(表 3)の黒塗りが多かった認知力について、「認知の特 性」(表4)を参照し分析を行った。「認知の特性」 (表4)には、①∼⑫の認知力に関して、左欄に認 知力の項目の困難さの表れ方、右欄に各々の認知力 に関する支援方法を一覧にしてまとめた。  分析に際しては、黒の塗りつぶしが多かった認知 力については困難さがあるものと解釈し、困難さが ある認知力に関してどのような支援方法が有効を導 き出した。A児は、手順の内容の理解と一つ一つ手 順を組み立てていく課題遂行力(プランニング)の 困難さ、文章問題の手順(全体の手順)を頭に置き ながら、一つ一つ内容の手順を行っていく課題遂行 力(ワーキングメモリ)の困難さ、一桁+一桁の足 し算(足される数が6以上で足す数が5以上)の数 や計算の理解に曖昧さがあることが分かり、手順の 内容を明確にすること、活動の終わり(ゴール)を 明確にしつつも1つ1つの手順についてもしっかり と行っていくことができるように手がかりを示すこ と、一桁+一桁の足し算の不明確な部分を確実な理 解にすることが支援方法として有効であると分析し た。  次に行動観察記録による実態把握から得られた情 報を「行動の分析シート」(表5)に整理し、課題 遂行中に見られた行動について分析した。「行動の 分析シート」(表5)は、課題遂行中に見られた行 動を衝動性、注意、感情の項目に分類し、一目で捉 えられるように表したものであった。  記入手順としては、課題遂行中に見られた行動を 「行動の分析シート」(表5)の左欄の上段から順に 記入した。  次に、課題遂行中に見られた行動を「行動の特性」 (表6)の衝動性、注意、感情の項目に該当するか 照らし合わせ、該当する場合は「行動の分析シート」 (表5)の右欄の衝動性、注意、感情の欄を黒塗り に塗りつぶした。次に「行動の分析シート」(表5) において、衝動性、注意、感情のうち黒塗りが多かっ ⑩ 長期記憶 ○数分から数年あるいは一生に渡って保持 される記憶力 ○得意な記憶方略(視覚的な記憶、聴覚的な記憶、手順的な記憶、 エピソード記憶、意味・文脈、キーワード)を用いて、不得意 な記憶を補助する。 ○記憶を呼び起こすことの出来る手掛かりを用意する。 ・関係する知識の不足より、理解が難しい ・語彙の不足により思考に結び付かない ⑪ 短期記憶 ○秒単位(15秒から30秒)の時間保持さ れる記憶力 ○課題を解く過程の手掛かりを残しておく(見えるようにしてお く)。 ・複数の条件を保持することの難しさ ・長期記憶へ転換の難しさ ⑫ 運動機能、巧緻性 ○身体の協応や巧緻性などの運動課題や作 業を伴う学習に取り組む力 ○身体の協応、不器用さ、巧緻性などに対する支援をする。・身 体の協応、不器用さ、巧緻性などに対する支援 ○課題の量、姿勢の保持など環境的な配慮をする。 ・体幹のコントロール。姿勢の保持の難し さ ・鉛筆の持ち方、用具の使い方の不器用さ

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た項目について、「行動の特性」(表6)を参照し分析 を行った。「行動の特性」(表6)には、衝動性、注意、 感情に関して左欄に各項目の困難さの表れ方、右欄 に各項目に関する支援方法を一覧にしてまとめた。  分析に際しては、衝動性、注意、感情のうち黒の 塗りつぶしが多かった項目については困難さがある ものと解釈し、困難さがある項目に関してどのよう な支援方法が有効を導き出した。A児は、瞬時に見 た視覚情報を基に(衝動的に視覚情報で)自分で問 題が解けそうか判断し、できそうにないと判断する と強く拒否する、手順が煩雑であることが分かると 拒否が強く、手順を組み立てるのは「面倒くさい」 と判断しがちになる、一度間違えると感情が大きく 乱れ、修正するには時間が掛かるということが分か り、A児が間違いなく答えを出せるように、瞬時に 見た視覚情報で手順を理解し自分にも解けそうだと いう問題構成にすることが支援方法として有効であ ると分析した。  ⑷ A 児の算数の文章問題における課題分析に基 づく実態について  一連の課題分析に基づく実態把握から、A児は一 桁+一桁の足し算(繰り上がりのある)の数概念の 要素や筆算式や文章問題の解法の手順を組み立てる 課題遂行力でつまずいていることが分かり、視覚情 報を見て瞬時に自分に問題が解けるかどうかの判断 を行いできそうにないと強い拒否する、手順が煩雑 な時や間違えた時の感情調整が難しいという行動の 特性が明らかになった。  ⑸ A 児の学習支援の目標及び内容について  課題分析に基づく実態把握を踏まえて「視覚情報 を取り入れた筆算式で、一桁+一桁の足し算(繰り 上がりのある)の理解が確実になる」「明確でシン プルな視覚情報で手順を示す、思考する部分の絞り こみ、問題量の調節などの学習環境の調整により、 学習に取り組む姿勢ができる」ことを目標に設定した。 表5 行動の分析シート 行     動 衝動性 注意 感情 ベースライン 1回目 文章問題の筆算式を書かずに計算する(答え不正解) 筆算式の計算の時によく分からないとイライラする。 文章問題の答えを記入する前に、気持ちが限界になり「終わり」と言う。 出来なくなる(79)と問題をくしゃくしゃに丸め捨てる。 助数詞の問題は一目見て「面倒だからやりたくない」と言う。 一目見て自分で出来そうか判断する。 一度つまずくとマイナス感情が一気に吹き上がる。 手順を組み立てる課題は面倒くさがる。 ベースライン 2回目 問題を見て量(一桁+一桁)が多いと感じると、やる気が減少する。 分からなくなる(9+7)とイラっとする。 分からない問題(7+9)が出ると「もう嫌だ」という表情 筆算式の組み立ての操作は見本を示すが、見ずに嫌と言う。 筆算式の計算手順の組み立ては見るなり「嫌」と言って拒否する。 パッと見た時に頭に浮かんだ方略でやろうとする。 感情が乱れた後になだめても、落ち着くのが難しい。 ベースライン 3回目 筆算式の計算ができないと問題用紙に線を引く、端をちぎる。 位取りした筆算式の組み立ての課題を出すなり「やりたくない」と言う。 筆算式の計算手順の問題は「面倒くさそう」とやる気が見られない。 前の課題と同じカードを使っての問題だと「終わり」と拒否する。

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3 学習支援と結果

 「視覚情報を取り入れた筆算式で、一桁+一桁の 足し算(繰り上がりのある)の理解が確実になる」 「明確でシンプルな視覚情報で手順を示す、思考す る部分の絞りこみ、問題量の調節などの学習環境の 調整により、学習に取り組む姿勢ができる」ことを 目標に、対面式の個別学習支援を17回(週1回50 分)行った。目標にスモールステップを設定し、ス モールステップの目標達成(成功率80%の3回維 持)により、次の学習支援期へのステップアップを 行った。1回の学習支援毎に学習支援記録を記入し、 学習支援方法の変更が必要であれば見直しを行った。 学習支援期はⅠ∼Ⅴとなり、学習支援期毎の目標、 手立て(サポート)、使用した教材及びA児の姿の 変容、Aの姿に対する考察と支援方法の検討は以下 の通りであった。  ⑴ 学習支援期Ⅰ(学習支援1~3回目) ①学習支援期Ⅰの目標  視覚情報(答えの視覚情報のイメージ有)を取り 入れた計算式で、一桁+一桁の足し算(繰り上がり のありを含む)ができる(図1)。 ②手だて(サポート)  分からない時の手がかりとする、答えを導き出せ ないことによる感情の乱れを防止する、本児の注意 を向けやすくする等の配慮として、計算欄の答え欄 の隣に、本児の好きなキャラクター(絵)で数のイ 表6 行動の特性 上段=行動の特性 下段=困難さの表れ方 支 援 方 法 衝動性 ○必要のない反応(感情、発言、行動)を抑え、 課題に最後まで集中できる力 ○予定、流れ、手順、約束などを予め確認しておく ○内面の言葉となるような耳元のささやき声で、課題の手順や思 考のつなぎを外言する。 ○自分の行動について立ち止まって考える間、暗示を提示する、 振り返って考える方法を教える。 ○途中でそれまでの確認をする、リフレッシュタイムを設ける。 ・質問が終わらないうちに答える ・一番や早さにこだわる ・順番を待つことが難しい ・思考せずに思いつきで判断し、ミスが多く学 習内容が定着しにくい。 ・周りの刺激に反応してしまい集中できない 注意 ○様々な刺激のある環境でも、刺激にとらわれ ずに行動できる力 ○不要な掲示物等の視覚刺激を減らす、静かな環境を用意するな ど環境を整える。 ○必要なポイント、大事なポイントを伝える時は、注意を引き付 けてから伝えるようにする。 ○注目するポイントに注意が向けられるよう教材に視覚的な手が かりを取り入れる。 ○重要な部分や指示は、黒板に書く。聞き取らなければならない ことが空欄になっているプリントを用意する。 ○課題に含まれる情報量を調整する(短く、簡潔に)。 ○計画的に休憩をとるなどして、注意の持続時間が長すぎないよ うにする。 ○集中していないことに自ら気づけるように、支援者との間で使 う指示や合図を決めておく。 ・必要なことに注意を速やかに向けられない ・必要に応じて、注意を適度に切り替えられな い ・一度に必要量の注意を向けられない ・注目し注意を持続し続けられない ・複数の事柄に同時に注意を向けられない 感情 ○感情や意欲を調整して取り組む力 ○怒りそうになった時の「心のブレーキ」のかけ方(アンガーマ ネージメント)を知る。 ○トラブルと出会った時、上手に対処し、結果を良い方向に切り 替えていく方法(サクセススイッチ)を学ぶ。 ○成功体験へのイメージを持ち、意欲の形成をする。意欲を引き 出すようにする。 ○見守りや見通しを持たせながら、集中・持続を形成していく。 ○本人の考えを尊重した上で、別のやり方を柔らかく提案する。 ○間違えないための手立てとして、ヒントや準備しておき確認す るきっかけをつくる。 ・不安が強く自分の行動を否定されることに過 敏に反応する ・間違いを指摘されると学習意欲が減退する ・自分の思い通りにならないと感情的になり、 学習に取り組めない

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メージを示した。 ③教材 ④ A 児の姿  学習支援1回目では、好きなキャラクターの視覚 的情報に目を向け関心を示した。1∼3回目とも、 計算については、視覚情報を頼りに答えを導き出し た。 ⑤ A 児の姿に対する考察と支援の方法の検討  学習支援1∼3回目ともに、答えを導く際にはキャ ラクターの視覚情報を頼りにしたが、算数の問題に 対して集中し前向きに取り組み姿勢が見られた。正 答率も維持(90%以上)したので一桁+一桁の足し 算において、答えの視覚情報なしの段階にステップ アップ可能と判断した。集中して取り組む様子が見 られたので、問題の種類を増やし様子を見ることに した。  ⑵ 学習支援期Ⅱ(学習支援4~6回目) ①学習支援期Ⅱの目標  (ア)視覚情報(答えの視覚情報のイメージなし) を取り入れた計算式で、一桁+一桁の足し算 (繰り上がりのありを含む)ができる(図2─ 1)。  (イ)一の位から十の位への繰り上がりのイメー ジ確認の問題ができる(図2─2)。  (ウ)視覚情報(答えの視覚情報のイメージ有) を取り入れた筆算式で、二桁+二桁の足し算 (繰り上がりなし)ができる(図2─3)。 ②手だて(サポート)  一の位から十の位への繰り上がりのイメージ確認 の問題において、A児が好きなキャラクター(絵) 10個を赤線で囲みまとまりを作ることにより、繰 り上がりのイメージ(10の塊)をイメージしやす いようにする、キャラクターの大きさ変化させ、繰 り上がりのイメージ(一の位から十の位への移行) をイメージしやすいようにする、位毎に背面の色分 けをして、位どりを意識しやすいようにする(図2 ─2)等のサポートを行った。  また、二桁+二桁の筆算式において、視覚情報(数 の分のキャラクター)を筆算式上に記しておき、数 のイメージを持ちやすいようにする、視覚情報(答 え分のキャラクター)を示しておき、分からない時 の手がかりや思考する手助けになるようにする、筆 算の手順を分かりやすくするために、筆算式上に矢 印と番号で手順を示す等の配慮を行った(図2─3)。 ③教材 図1 一桁+一桁の足し算(繰り上がりのある)教材 図2─1 一桁+一桁の足し算(繰り上がりのありを 含む)教材

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④ A 児の姿  学習支援4∼6回目ともに、一桁+一桁の足し算 において、答えの視覚情報がなくともスムーズに答 え正答率(80%以上)を維持した。学習支援5∼6 回においては、答えが誤った場合は、間違ったこと を指摘せずに支援者がカードをめくる手を止め、A 児が考える間を作ると自ら答えを正しく修正する姿 が見られた。  二桁+二桁の足し算の問題において、学習支援4 回目では手順が分からないと暫く泣き真似をしたが、 矢印と番号で手順を確認すると気持ちを立て直し取 り組んだ。 ⑤ A 児の姿に対する考察と支援の方法の検討  学習支援4∼6回目において、いずれの問題にお いても成功率(80%)を維持できた。学習支援期Ⅲ からは一桁+一桁の足し算の問題及び繰り上がりの イメージの問題については、理解定着のため学習支 援4∼6回目の段階の問題に据え置き、二桁+二桁 の足し算(繰り上がりなし)においては、ステップ アップを行い答えに関する視覚情報を減らしていく ことができるようにした。  ⑶ 学習支援期Ⅲ(学習支援7~9回目) ①学習支援期Ⅲの目標  (ア)視覚情報(答えの視覚情報のイメージなし) を取り入れた一桁+一桁の足し算(繰り上が りのありを含む)ができる。  (イ)一の位から十の位への繰り上がりのイメー ジ確認の問題ができる。  (ウ)視覚情報(答えの視覚情報のイメージなし) を取り入れた筆算式で、二桁+二桁の足し算 (繰り上がりなし)ができる(図3)。   ②手だて(サポート)  二桁+二桁の筆算(繰り上がりなし)において、 答えに関する視覚情報はなくし、足される数と足す 数の視覚的手がかり(キャラクター)は考える際の 手がかりとして残した(図3)。 図2─2 一の位から十の位への繰り上がりのイメー ジ確認の教材 図2─3 二桁+二桁の足し算(繰り上がりなし)教 材

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③教材 ④ A 児の姿  学習支援9回目では、一桁+一桁の足し算におい て、スラスラと解答していきたいという気持ちが見 られるようになった。解答につまずく時があるが、 諦めず頑張ってやろうとする姿が見られた。二桁+ 二桁の足し算の問題において、学習支援7回目では、 課題を提示すると一瞬怯みそうになるが、取り組む ことができた。学習支援8、9回目ではミスもなく 落ち着いて解答し、全問正解し、支援9回目では、 間違なくできると嬉しそうにした。 ⑤ A 児の姿に対する考察と支援の方法の検討  学習支援7∼9回目において、いずれの問題にお いても成功率(80%)を維持できた。スラスラと答 えて上手にやりたいという気持ちが行動として見え るようになり、つまずいても諦めずにやろうとする 行動が見られるようになった。「できない」と思っ て拒んだ問題でも、やってみたらできたという経験 をすると次回からは拒まず集中して取り組む様子も 見られ、できると嬉しそうにする様子も見られた。 学習支援期Ⅳからは、二桁+二桁の足し算において、 繰り上がりのある問題にステップアップすることと した。  ⑷ 学習支援期Ⅳ(学習支援10~13回目)   ①学習支援期Ⅳの目標  (ア)視覚情報(答えの視覚情報のイメージなし) を取り入れた一桁+一桁の足し算(繰り上が り有り含む)ができる。  (イ)一の位から十の位への繰り上がりのイメー ジ確認の問題ができる。  (ウ)視覚情報(答えの視覚情報のイメージなし) を取り入れた筆算式で、二桁+二桁の足し算 (繰り上がりのある)ができる(図4─1、2)。   ②手だて(サポート)  二桁+二桁の足し算(繰り上がりのある)におい て、視覚情報(数の分のキャラクター)を筆算式上 に記しておき、数のイメージを持ちやすいようにす る、計算の手順を分かりやすくするために、筆算式 上に矢印と番号で手順を示す、繰り上がりをA児 が好きなゲームの題材(絵:トンネル)やキャラク ターの大きさが変化することで視覚的に確認し、繰 り上がり(1の位から10の位への移行)をイメー ジしやすいようにする(図4─1)等のサポートを 行った。また、視覚情報を含んだ問題で答えを導き 出した後に、視覚情報(数のキャラクター)を除い た問題に切り替える(図4─2)等の配慮を行った。 ③教材 図3 二桁+二桁の足し算(繰り上がりなし)教材 図4─1 二桁+二桁の足し算(繰り上がりのある) 視覚情報ありの教材

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④ A 児の姿  学習支援12回目では、分からない時に「分から ない」と支援者に言葉で伝えることがあった(以前 は分からない問題に出くわすと瞬時に感情的になり 課題に戻れなかった)。学習支援13回目では、一の 位と十の位の数を逆に答えることがあるが、感情的 になることなく自分で考えて直そうとする様子が見 られた。 ⑤ A 児の姿に対する考察と支援の方法の検討  学習支援10回目において、二桁+二桁(繰り上 がりのある)の問題で正答率60%だった以外は、 学習支援において、いずれも80%以上の正答率で あった。正答率を維持し、問題に対して前向きに取 り組むことができているため、二桁+二桁の筆算に ついて、二桁+二桁の足し算(一の位、十の位共に 繰り上がりのある)にステップアップした。  ⑸ 学習支援期Ⅴ(学習支援14~17回目) ①学習支援期Ⅴの目標  (ア)視覚情報(答えの視覚情報のイメージなし) を取り入れた一桁+一桁の足し算(繰り上が りのありを含む)ができる。  (イ)一の位から十の位への繰り上がりのイメー ジ確認の問題ができる。  (ウ)視覚情報(答えの視覚情報のイメージなし) を取り入れた筆算式で、二桁+二桁の足し算 (一の位、十の位共に繰り上がりのある)がで きる。 ②手だて(サポート)  二桁+二桁の筆算(一の位、十の位共に繰り上が りのある)において、学習支援期Ⅳの手立て同様に 行った。(図5─1、2) ③教材 ④ A 児の姿  二桁+二桁の足し算(一の位、十の位共に繰り上 がりのある)の問題において、学習支援14、17回 目では感情を乱さず取り組み、間違えた所も落ちつ いて支援者と振り返り正しい答えを導けた。学習支 援15回目でも間違えた箇所を支援者が示唆すると、 自分でやり直し正しく答えることができた。支援 図4─2 二桁+二桁の足し算(繰り上がりのある) における「繰り上がり」の視覚情報有の教 材 図5─1 二桁+二桁の足し算(繰り上がりのある) 視覚情報有の教材 図5─2 二桁+二桁の足し算(繰り上がりのある) における「繰り上がり」の視覚情報有の教 材

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16回目では、やり方が分からなくなった時にも、 支援者と一緒に確認できた。 ⑤ A 児の姿に対する考察と支援の方法の検討  算数の学習に対して拒否的な行動がなくなり、間 違えた時にも感情的にならずに視覚的な手がかりを 見ながら、支援者と振り返えることにより、正しい 答えを自分で導き出させるようになった。できない と感じた時に瞬時に感情で反応し行動で発信をして いた悪循環から、もしかしたらできるかもしれない という見通しや上手にやりたいという気持ちを持ち、 実際にやってみたらできたという好循環が築き始め られた。  ⑹ 結果  目標の達成(成功率80%の3回維持)により、 次の指導期へのステップアップを行った結果、研究 期間では支援期Ⅰ∼Ⅴまで学習支援が実施できた。 いずれの問題も概ね80%以上の正答率を維持し、 明確でシンプルな視覚情報で手順を示す、思考する 部分の絞り込み、問題量の調節等の配慮があれば、 一桁+一桁の足し算、繰り上がりの問題、二桁+二 桁の足し算の問題に落ち着いて取り組むことができ るようになった。学習の従事時間(図6)については、 支援期Ⅱに問題の種類が1種類から3種類に増えた ことにより従事時間が増えた。支援期が進むにつれ て問題の難易度があがったが、支援期前半より支援 期後半の方が短くなり、学習従事時間は3分∼4分 に安定した。安定した要因としては、学習以外に費 やす時間(学習からの逃避行動、気持ちの切り替え 等)がなくなったことにより従事時間が短くなり安 定したこと、繰り返しの学習により理解が定着しよ り早く解けるようになったことが考えられた。

4 考察

 本研究では、課題分析に基づく実態把握を通して、 対象児が課題のどこにつまずくのかを細部で捉え、 そのつまずきにはどのような認知力が関わっている かを分析し、さらにどのようにつまずくのか行動の 特性を明らかにした。これらの実態把握を基に、目 図6 学習従事時間の推移

学習支援(回)

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標の設定、対象児にとって有効な手立てを検討し支 援を行う有効性について、⑴課題分析に基づく実態 把握の有効性、⑵課題分析に基づく実態把握による 算数の学習支援の有効性について以下に考察する。  ⑴ 課題分析に基づく実態把握の有効性  実態把握で明らかになった情報を基に、数概念の 不確かさについては、不確かな部分を視覚情報で確 認できるように「視覚情報を取り入れた筆算式で、 一桁+一桁の足し算(繰り上がりのある)の理解が 確実になる」という目標を設定し、課題遂行力を補 う手立てや感情の乱れの防止するために「明確でシ ンプルな視覚情報で手順を示す、思考する部分の絞 りこみ、問題量の調節などの学習環境の調整により、 学習に取り組む姿勢ができる」という目標を設定し 支援を行った。算数の課題分析に基づく実態把握の 有効性として以下の3点が考えられた。  ①「課題分析シート」は、課題の解法の行程を細 かな項目に分解し一覧表にまとめたものであるが、 「課題分析シート」に課題の通過・不通過状況を記 入することで「どこで」つまずいているのか細かい 視点で明確に掴むことができることが分かった。ま た「課題分析シート」を作成することにより、1つ の課題が多くの要素から成り立っていることが分か り、子どもの理解の視点から課題のもつ難しさにつ いて考えることができた。  ②つまずきに関係する認知力を分析するために 「認知の分析シート」を用いたことにより、つまず きやすい認知力の傾向を一目で捉えることができた。 また、つまずきやすい項目を表にすることによって、 つまずきやすい項目の傾向も掴むことができた。  ③「どのように」つまずくのかの分析するために、 課題を行う中で見られた行動を「行動の分析シート」 に記入し分析を行った。行動特性を分析する際には、 対象児の学習を阻む行動を否定的に捉えるのではな く、対象児がやり易い方法を示唆する多くの情報を 含むものとして捉えることにより、対象児にとって 有効な手立てを考え出す手がかりにすることができ ることが分かった。  ⑵ 課題分析に基づく実態把握による算数の学習 支援の有効性  本研究の算数の学習支援においては、対象児はい ずれの問題においても80%以上の正答率を維持し ながら、支援期Ⅰ∼Ⅴまで学習することできた。正 答率80%を維持しながらの学習を進められたこに より、対象児は算数の学習に対する学習意欲を維持 しながら取り組むことができた。課題分析に基づく 実態把握による算数の学習支援の有効性としては以 下の3点が考えられた。  ①どこでつまずいたかが分かると、学習開始時の 内容を対象児の現状にあった学習内容に設定でき、 常に学習内容の段階を明確にすることができること が分かった。また、課題に含まれる小さな単位を常 に意識しながら学習内容の設定を行うことにより、 対象児の実態に合わせて学習の難易度をあげること ができることが分かった。  ②どうしてつまずいたかが分かると、つまずかな いようにするために予め対象児の認知力に合わせた サポートを支援に盛り込むことができることが分 かった。サポートが行きすぎると子ども達は自分で できたという実感を持ちにくく、逆にサポートが不 十分であるとできないことの苛立ちから感情の問題 が表出しやすくなるので、認知力に合ったサポート は一人一人の実態にあったサポートになると考え た。  ③どのようにつまずいたかには、対象児の実態を 理解するのに多くの情報が含まれていることが分 かった。つまずき方からは、対象児の情報処理の特 徴や問題解決の特徴が分かり、対象児がやり易い手 立てを考えることに役立てることができることが分 かった。  本研究の算数の学習における課題分析に基づく実 態把握及び支援の実践を通して、課題のつまずき部 分を小さな単位で把握すること、つまずき部分にど んな認知力が絡んでいるか認知の特性を分析するこ との有用性が確認され、行動観察により行動特性を 掴み分析することが発達障害がある子どもの算数の 学習における実態把握を行う際に、非常に重要な視 点になることが分かった。熊谷(2015)が指摘する

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ように、認知能力のアンバランスさを捉えるだけで なく、つまずきの背景にある認知力を分析し捉える ことで、有効な支援を導き出すことができたと考え る。さらに実践を行うことにより「どこに」つまず いたかが分かると、学習支援する内容が明確になる こと、「どうして」つまずいたかが分かると、認知 力を補うまたは引き出すサポートに繋げることがで きること、「どのように」つまずいたからが分かると、 対象児がやり易い方法や有効な手立てを考えること ができることが分かった。  ⑶ 本研究における課題  本研究の課題分析に基づく実態把握の改良点を述 べるならば、煩雑な手順の在り方の見直しが必要で あると考える。多忙な現場では予め課題分析シート を作成する時間の捻出が難しいことが考えられるた め、実用的にするためには、手順の在り方の改良が 必要であると考える。本研究では、課題の一連の流 れに含まれる一つ一つ小さな要素を一覧表にし、さ らに一つ一つの項目に関係する認知力に関しても一 覧表に盛り込み課題分析シートを作成している。現 場で用いることのできる実用的な形を目指すならば、 課題分析シートの作成段階を重要な視点を抑えなが らも簡略化させる必要がある。そのためには、事前 に課題分析シートを作成するのではなく、どのよう な課題も細かな要素に分けられるという視点をもっ て、子どもの課題を解く過程を観察し、つまずき部 分を細部で捉え記述するという方式(課題或いは活 動のうち、どの過程でつまずくか可能な限り細かな 単位で捉える)に変える方法が有効ではないかと考 える。記述式に変えることによって、子どもが予め 予測しなかった方法で解法した際にも対応すること が可能である。これらの方法によって、現場で用い ることのできる実用的な形になると考える。但し、 記述式を用いる際には、どんな課題も細部に分け捉 えるという視点をもって、細部で捉える力を熟練さ せていく必要がある。また、記述式でつまずきを記 入していくにあたって、つまずきに関係する認知力 の分析方法にも改良が必要であると考える。つまず きに関係する認知力を分析しやすいように、発達障 害がある子どものつまずきが見られやすい認知力に ついて整理し一覧表にしておくと分かりやすいと考 える。そのためには、再度、先行文献、書籍をあた り本研究における不十分な点を補い、認知力につい て一覧表にまとめ直す必要がある。行動の特性の分 析については、本研究で用いた課題の遂行を阻む行 動(衝動性・注意・感情)を記述するとともに、そ の原因を含め分析していくことが必要であり、現段 階では簡略化すること難しいと考える。つまり「課 題のどこにつまずいたか・どのようにつまずいたか」 の2点に着目してまずは観察して記述を行い、課題 のどこにつまずいたかの情報から認知力についての 分析を行い、どのようにつまずいたかの情報から行 動の特性の分析をして有効な手立てを見出していく ことができるのではないかと考える。現場で実用方 法については、今後検証を行いながらより実用的な 方法に改良していくことが必要であると考える。 文献 小川 浩・佐々木和義(1996)「重度の高次脳機能障害をも つ脳外傷者への作業指導─課題分析を用いた事例─」『職 業リハビリテーション』第9 巻,15─21.

Cooper, J. O., Heron, T. E., & Heward, W. L. (2007). Applied behavior analysis (2nd ed.). Upper Saddle River, NJ: Pearson Education.(クーパー,J. O.,ヘロン,T. E., &ヒューワー ド,W. L. 中野良顯(訳)(2013).応用行動分析学.明石 書店.725─731. 高知大学教育学部附属特別支援学校(2014)作業学習に重点 を置いた職業教育の展開.研究紀要,22,83─120. 佐藤啓子・霜田浩信(2020)計算に困難を抱える児童への課 題分析を用いた指導方法の検討.群馬大学教育実践研究, 37,205─216. 中野尚彦(2015)算数について考える.日本障害児教育実践 学会誌,17,4─35. 小笠 毅(2007)授業を楽たのしく支援する 教えてみよう 算数.日本評論社. 添島康夫(2014)発達障害のある子の「育ちの力」を引き出 す150 のサポート術.明治図書. 添島康夫(2016)発達障害のある子が育つ 150 の学習課題& 学び術.明治図書.

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参照

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