平成24年度 修士課程 学位論文
高等学校における発達障害支援に関する教師効力感
一効力感尺度作成の試みと影響要因の探索的検証一
兵庫教育大学大学院 学校教育専攻科 人間発達教育専攻 臨床心理学コース MllO71G
吉田 博子
目次
問題と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 1 高等学校における発達障害支援について・・・・・・… ●●.σ1 発達障害支援と校内研修会について・・・・・… ●● ●● 3 自己効力感について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 3 教師効力感について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 4 発達障害支援と教師効力感について・・・・・・・・… ●● の6 研究1:発達障害支援教師効力感尺度の作成・・・・・・・・・・・… 9 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 9 方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 9 調査対象と時期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 9 質問紙の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 9 尺度の基準関連妥当性検証・・・・・・・・・・・・・・・… 10 「発達障害支援教師効力感に関する32項目」作成手続き・・… 11 分析結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 11 「発達障害支援教師効力感に関する32項目」分析結果・一■・・11 除外された項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 14 発達障害支援教師効力感尺度下位尺度間の相関・・・・・… 15 既存尺度との尺度間相関・・・・・・・・・・・・・・・… 15 既存尺度と発達障害支援教師効力感下位尺度間相関・・・… 16 項目分析(G−P分析)・・・・・・・・・・・・・・・・・… 16 男女差の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 17 男女別の相関・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 17 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 18 尺度構成について・・・・・・・・・・・・・・… ●● 18 内的整合性について・・・・・・・・・・・… ●● ●● 18 尺度の項目分析について・・・・・・・・・・・・・・・… 19 尺度の基準関連妥当性について・・・・・・・・・・・・… 19 性差について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 19
調査対象と時期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 21 質問紙の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 21 分析結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・… ●.・ 22 発達障害支援教師効力感尺度因子分析結果・・・・・・・… 22 除外された項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 23 発達障害支援教師効力感 下位尺度間の相関・・・・・・… 24 男女差の検討・・・・・・… ● ● ●●●● ●○ ●●24 男女別の相関・・・・・・・・・・・・… ●●●●● ●●25 教職経験年数別かっ性別と発達障害支援教師効力感・・・… 26 発達障害の特性に関する知識・理解量および発達障害を有する 生徒への対応理解量と発達障害支援教師効力感との関係・… 29 校内研修会の有無および発達障害を有する児童・生徒との
関わり経験の有無と発達障害支援教師効力感について・・… 30 高等学校おける発達障害支援に関する教師効力感への影響要因に ついて 重回帰分析の結果・・・・・・・・・・・・・・… 31 KJ法による自由記述の分析結果・・・・・・・・・・・… 34 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 37 性差の検討・・・・・・・・… ●● ●● . ● 037 教師経験年数別の検討・・・・・・・・・・・・・… ・・37 教職経験年数と性差の検討・・・・・・・・・・・・・・… 38 教職経験年数と発達障害児との関わり経験の有無との検討… 38 発達障害支援教師効力感と知識・理解量との関係・・・・… 38 校内研修会と発達障害児との関わり経験の有無との検討・… 39 高等学校における発達障害支援教師効力感への影響要因について39 KJ法による自由記述から明らかになったこと・・・・・… 40 総合考察および今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・… ●41 引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 44 資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 49 調査対象校データ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 49 予備調査協力依頼文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 52 予備調査質問紙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… (1 7)
本調査協力依頼文・・・・・・・・・・・・・・・・・… ●・ ●53 本調査質問紙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… (1 7)
調査協力校への資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 54 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 59
問題と目的
高等学校における発達障害支援について
平成19年4月に学校教育基本法の一部が改正され,「特別支援体制」が始ま った。その第81条で,高等学校においても義務教育諸学校と同様,知的な遅 れはないが学習上および生活上の困難を有する,いわゆる発達障害児の困難を 克服する教育を行うことが明記された。当初義務教育諸学校に比べ体制整備の 遅れを指摘された高等学校でも,近年では校内支援会議や特別支援コーディネ
・一一・E ^ーの任命が進められ,組織的および人的整備の進展が報告されるようにな
った。(文部科学省,2009a;2011,以下文科省)
これまで,高等学校における発達障害支援に関しては,国公立教育行政機関 および当研究員らによる高等学校の実態調査や,高校教員の発達障害特性・理 解や意識に関する調査(原・小方,2007;春日,2005;松本・渡辺・唐鎌,2011)
がなされてきた。先に佐藤・徳永(2003)が行った都道府県および政令指定都市 の教育委員会と教育センターへの調査では,公立・私立高校における軽度発達 障害を有する生徒の在籍状況はほとんど把握されておらず,また支援を行って いる機関が少ないことが明らかにされた。しかしその一方で,当該教育センタ ーにおける,軽度発達障害を有する生徒への指導下に対応した研修会や講演へ の高校教員の参加が比較的多いこと同時に,要望もあることが明らかにされた。
その後,内野・高橋(2005,2006b),内野・佐々木・高橋(2006a)が行った首都 圏の高校等における軽度発達障害を有する生徒の教育実態調査によると,現状 の高等学校の制度では軽度発達障害を有する生徒の受け入れば容易ではなく,
何よりも学校現場の軽度発達障害への理解・専門性が不足していることが明ら かにされた。また高校教員の気づきを利用した継続的な実態把握調査の有用性 について報告した宮前・半澤(2010)は,日頃から生徒に関わる教員の気づきを 拾い上げ,継続的な実態調査を行うことが,今後の高等学校における特別支援 教育体制の推進につながるとしている。
文科省は,義務教育諸学校および高等学校における「特別支援体制」の進展 のために,各学校と外部専門機関や発達や心理の専門家(例えば臨床心理士等)
特に高等学校において,その時点で必ずしも「発達障害」や「特別支援教育」
についての高い専門性を有しているわけではないことが明らかにされた。また このような現状で,特別支援コーディネーターや校内支援委員会が効果的に活 用されてはおらず,形骸化している可能性も示されている(藤井・細谷,2012)。
高等学校は,その多くが入試選抜,教科担任制,単位制など,義務教育諸学 校とは異なる制度を有している。また現場の教師は教科・科目の専門的知識や 指導力はあっても,日々の生徒指導や進学・就職支援対策に追われ,今もなお,
その多くが発達障害に関する専門的知識を持っていないのが現状である。先行 研究においても,高校教員の発達障害についての関心は高いものの(佐藤・徳永,
2003),発達障害の具体的知識や理解,生徒への指導方法に関する情報は非常 に少ないことが報告されている(宮前・半澤,2010)。また内野・高橋(2008)に よれば,高等学校での特別支援教育の進展や発達障害支援に関して,教育委員 会があげる困難に,高校教員の特別支援教育や発達障害支援への認識・共通理 解であるとの回答を得ている。そして今後高等学校における発達障害支援の進 展には,研修・理解啓発の地道な努力を通した意識改革がキーポイントである
としている。
これまで発達障害児への早期対応や療育の有効性は,先行研究において多く のことが報告されている。しかし現実には,その生育過程において適切な支援 を逸し,進級時に対人トラブルをはじめ様々な不適応を起こしてしまうケース,
あるいは,中学校または高等学校進学後に発達障害の二次障害から不登校やう つ病を発し,退学に至っていると考えられるケースも報告されている(橋本・是 永,2008;加茂・東:條,2009;宮川,2011;文科省,2003a, b;漆畑・加藤,
2003)。特に低い自尊感情や自己評価を持つ生徒が呈する学校不適応状態や非 行について,それが発達障害の二次障害のためか,それとも生徒指導の範疇な のか見極めが困難iである,という学校現場の声もある(赤嶺・緒方,2009)。高 等学校進学率が98%となった現在,高等学校ワーキンググループ報告(文科省,
2009b)では,高等学校進学者全体に対する発達障害等の困難のある生徒の割合 が2.2%を占め,これを基に佐藤(2010)は,高等学校1校に平均15人弱の発達 障害を有する生徒が在籍していると試算している。
このように,高等学校における発達障害支援は喫緊の課題である。それにも 関わらず,学校内の組織的人的整備は進んできたものの,教師らによる発達障 害を有する生徒への日々の具体的支援は,今もなお始まったばかりというのが
現状である。
発達障害支援と校内研修会について
このようなことから近年高等学校においても,臨床心理士や外部専門機関か ら講師を招き,発達障害理解や支援のための校内研修会や事例検討会が行われ るようになってきた。州都道府県教育委員会も,今まで研修会が少ないとされ てきた高等学校での,特別支援体制や発達障害支援進展のための校内研修会の 充実と教職員の積極的な受講を推進してきた。しかし,先に中堅教師の効力感 について研究した鈴木・松田(1998,1999)は,多忙化する現場にいる教員の自 己効力感の在り方を考慮に入れない研修は,いくら研修に参加しても教員自身 のため,児童・生徒のためになることはないだろうと指摘し,また坂井・免田・
久保・日上・園田(2006)は,学校現場で有効とされている行動論を中核とする 個別技法が,直接実行しやすく妥当性があるかは検証が不十分であり,現場の 実態を考慮した上で学校への適応を図っていくべきであると指摘している。新
屋(2011)は,教師アンケ・一一・一トの結果から,発達障害に関する校内研修会を実施 しても,研修で得た知識が日常の実践には結びついていないと推測し,職員朝 会時の短時間を利用して障害疑似体験することで,発達障害への理解を深める
ことができたと報告している。
自己効力感について
教師効力感について述べる前に,まず自己効力感の概念整理を行う。
Bandura(1977)の社会学習理論に基づく自己効力感の研究は,1970年代から,
多くの研究がなされてきた。特に医療・福祉・臨床・教育・産業社会分野等に おいて,個人の行動に影響を及ぼす変容可能な認知変数として,現在でも患者 への治療介入や生活改善の指標となっている。
この自己効力感は,「ある結果を生み出すために必要な行動を,自分はどの程 度行う事ができるかという個人の確信」(Bandura,1977)と定義され,ある行動
を起こす前に,個人が感じる「自己遂行可能感」を意味する(Bandura,1985)。
Bandura(1977)は,特に行動を起こす前にその行動の結果を予測することを「結
する効力感と,場面や事柄を特定せず,その個人が有している全般的な効力感 の二つの水準がある。前者は第1の水準で課題固有の効力感であり,後者は第 2の水準で一般的性格特性としての効力感である(Bandura,1977)。
坂野・東條(1986)はこの第2の水準に注目し,それまで臨床場面で扱われて きた自己効力感が,当面の目標行動遂行に対する認知された自己評価であった ことを指摘した。そして当面の行動選択ではなく,より長期的に個人の行動に 影響を及ぼす一般的な自己効力感の強さを測定する尺度作成を試みた。まず大 学生278名を対象に質問紙調査を実施し,3因子計16項目からなる尺度を作 成した(坂野・東條,1986)。その後一般成人276名を対象に,作成された尺度を 実施して標準データを収集しその信頼性を検証したところ,各被験者の検査・
再検査いずれにおいても高い一致率を得ている(坂野,1989)。
三好(2003)は,坂野・東條(1986)の尺度が,自己効力感が高くまたは低く認 知された場合の行動特徴をもとにMMPIおよびY−G性格検査の項目から作成
されていることを指摘し,外的な実際の行動ではなく,「きっとできるだろうと いう本人の確信の強さ(本人の主観的な感覚)=人格特性的自己効力感」そのも のを測定する尺度の作成を試みた。まず大学生224名を対象とした質問紙調査 を実施した結果,1因子6項目からなる尺度が作成された。その後尺度得点の 高中低の3群がら無作為に選出した合計12名への面接を行い,尺度得点と実 際の全般的感覚としての個々人の一般的自己効力感との一致を検証して,併存 的妥当性を確認している。
教師効力感について
Bandura(1977)の自己効力感理論をもとに,教師効力感についての研究も 1980年代から盛んになった。小学校教師への面接調査から30項目の教師効力 感尺度を作成したGibson&Dembo(1984)は,208名の小学校教師への質問紙 調査を実施し,Bandura(1977)が指摘した自己効力感の二つの水準を見出した。
第一の水準は学校現場における学習指導などへの教師としての個人的力量を問
う項目が中心であり,「個人的教授効力感(personal teaching efficacy)」と名付
けられた。第二の水準は児童・生徒の成績や生活態度に関する家庭の影響と教
師の指導限界に関する質問が中心であり,「一般的教師効力感(teaching
efficacy)」と名付けられた。その後教師効力感の高い教師4・名と低い教師4名 の授業風景を実際に観察したところ,効力感の高い教師は効力感の低い教師よりも,授業中に小集団やゲームに費やす時間が少なく,また失敗した生徒への
批判が少ないことを指摘している。
Ashton(1985)は,教師効力感を「教育場面における子どもの学習や発達に,
望ましい変化をもたらす教育的行為をとるこどができるという教師の信念」と
定義し,教師による実際の教育的行為を規定すると考えた。また
Bandura(1977)が,自己の行動の遂行性に関する「結果予期」と「効力予期」
を区別していることから,Ashton(1985)も,教師効力感の二つの水準も同様に 区別することを主張した。そして一般的教師効力感がこの「結果予期」に相当
し,個人的教授効力感が「効力予期」に相当すると考え,教師効力感はこれら の二因子で測定可能であることを示した。
しかしWoolfolk&Hoy(1990a)は,これに異論を唱えた。 Woolfolk&
Hoy(1990b)によると,Banduraとの意見交換で,どちらの効力感も「効力予 期」である事を確認している。つまりBanduraは,「結果予期」はある行動が もたらす結果への期待であるが,効力予期は個人がその行動を行いうるとする 期待であるとし,第二の水準が扱う「生徒の家庭環境を越える教師の影響力」
が,教師個人ではなく一般的な教師の信念を扱っているため,「結果予期」では なく 「効力予期」としたのである。そしてWoolfolk&Hoy(1990a)において,
Gibson&Dembo(1984)の教師効力感尺度を20項目に修正して教育学部生182 名を対象に質問紙調査を実施し,生徒指導に関する教師の信念(児童管理,内発 的動機づけ,官僚主義的指導)と教師効力感との関係を検証したところ,児童管 理イデオロギーと官僚的権威主義が,個人的教授効力感ではなく,一般的教師 効力感と高い負の相関を示す事を見出した。また即効力感得点を高低群にわけ 個人差を検討した結果,一般的教師効力感が低いのにも関わらず個人的教授効 力感を高く認知する場合は,厳しい管理主義や官僚志向が見られるのに対し,
一般的教師効力感や個人的教授効力感が共に高い場合には,そのような特徴が 見られなかったとしている。
これらの先行研究をもとに,我が国においても教師効力感についての研究が なされてきた。桜井(1992)がGibson&Dembo(1984)の尺度を邦訳して教育学 部生144名に実施し,前原・赤嶺・瀬名波・新田・松下・大嶺・金城(1991)が Woolfolk&Hoy(1990)の尺度を邦訳して小中高校教師合計277名へ実施した
ところ,先行研究と同じく「個人的教授効力感(personal teaching efficacy)」
多くても効力感は高まらないことを示唆した。また自己効力感の高さは,個々 の授業の組み立てよりも児童・生徒や学校組織・教師集団との関わり,研修会 参加を通して得ていることも指摘している。また松尾・清水(2007)は,小学校 教師367名の有効回答から小学校教師効力感尺度を作成し,性差と教職経験年 数との関連を検証した。その結果3因子12項目が抽出され,ここでも性差は 見出されず,下位尺度の「生徒指導」において,教職経験年数のベテラン・中 堅教師が若手教師よりも有意に高く,「生徒理解」に関しては教職経験年数に有 意な差が示されなかったとしている。
しかしこれまでの教師効力感尺度は,学習指導領域や学校における教育活動 全般に関する事柄がほとんどであった。丹藤(2005)や春原(2008)が指摘するよ
うに,教科領域で指導力の高い教師が,学級経営や児童・生徒理解分野でも同 じように高い効力感を発揮するとは限らない。教育現場の課題は多様である。
教師は日々の教科・科目の学習指導のみならず,進路指導,部活動指導,生活 指導(例:不登校や問題行動),また保護者対応などの様々な課題に直面してい
るのである。
学校における課題固有の教師効力感を測る尺度は,岩永・吉川(2000)が小学 校教師に限定して「教師の不登校対応自己効力感尺度」の作成を試みた。その 結果,不登校児担任経験のない教師に比べ,自らの担任時に児童が不登校にな
った経験を持つ教師の効力感が高い傾向が見られたこと,その他の要因に関し ては有意差が見られず,成功体験によっても教師の効力感は高められていなか ったことを見出した。また性差の検討では,男性教師よりも女性教師の効力感 が高かったと報告している。その後山本(2009)は,同じく 「不登校対応教師効 力感尺度」作成を通し,教師経験年数ではなく,不登校児にどれだけ関わって
きたかという「教師経験量」の問題を指摘している。また小学校教師を対象と した「子どもの問題行動対応への効力感」尺度を作成した三本・金山(2010)は,
因子分析の結果「外在化問題」と「内在化問題」の2因子を抽出し,子どもの
「外在化問題への対応」と「内在化問題への対応」のいずれに関しても性別に よる有意差は見られなかったこと,しかし小学校教師は子どもの「外在化問題」
への効力感を低く見積もることを指摘している。
発達障害支援と教師効力感について
「特別支援教育」や「発達障害支援」に関して山崎・岩瀧・荻原・三浦・横川
(2006)は,小学校教師への調査から,軽度発達障害児の担任経験有無の比較を
通して,経験者の不安が有意に高いことを明らかにした。また,軽度発達障害 児との関わりにおいては教師の知識量と不安の関係を指摘し,当該児童への対 応について「効果的」または「自信がある」という項目と知識量が大きく関係 していることを指摘している。また同じく小学校教師への調査から高田(2009)
は,発達障害児担任経験の有無よりも,職場へのネガティブな認知が特別支援 教育への教師の不安に影響していることを示唆し,職場環境ストレッサーの「孤 立性」において障害児有群が無群よりも低かったことから,障害児担任教師は 障害児を担任しない教師も含め,同僚からのサポートを得られるよう協働体制 をとり,障害児を支援している可能性を示唆した。宮本・別府(2003)は,中学 校における軽度発達障害児と教師効力感に関する研究で,生徒の「対人関係の 障害」(項目数9)と教師効力感との有意差を報告している。また宮前・半澤(2011)
は,公立2校の高等学校への調査から,高校における特別支援教育に対する教 師の関心に性差が見られ,女性教師の平均得点が有意に高かったこと,また特 別支援教育に関する研修会参加経験の有無と性別との関係では,女性教師では 研修会参加経験の有無に有意差はみられないが,男性教師は研修会参加経験あ
りの平均得点が有意に高かったと報告している。
上記のように,発達障害支援に関する教師についての研究は,義務教育諸学 校の報告がほとんどである。佐藤・徳永(2007)による障害に関する教育心理学 的研究動向概観でも,高等学校における発達障害を有する生徒の在籍状況,支 援体制に関する実態調査,あるいは特色ある高等学校の取組みの報告はあって も,高等学校教師による発達障害支援に関する自己効力感についての知見はま だ見られない。先に述べたとおり,高等学校における発達障害支援はまだ始ま ったばかりである。高等学校での発達障害支援に関する研修会を依頼される外 部講師は,高校教師らの発達障害支援への効力感を高める情報を提供していく 必要がある。そして高校教師の実態や学校の現状を把握するためのツールによ って,障害特性やそれらへの対応法を効果的伝えることができると考えられる。
そこで本研究では,まず研究1として,高等学校における発達障害支援に関 する教師の自己効力感を測る尺度の作成を目的とする。発達障害を有する生徒 やその保護者を支援する教師効力感を,「発達障害を有する児童・生徒およびそ
の保護者に対し,望ましい対応や支援を実行することができるという個人の信
ではなく,あくまでも発達障害を有する生徒およびその保護者に対する支援効 力感とする。
次に研究llとして,研究1で作成した発達障害支援教師効力感尺度を用い,
高等学校における教師の発達障害支援に関する教師効力感について,属性,教 職経験年数,赴任経験校種,校内研修会の有無,発達障害を有する児童・生徒
との関わり経験の有無,発達障害支援に関する相談相手,発達障害特性や二次 障害対応に関する知識・理解量および職場の同僚性との関連から,発達障害支 援教師効力感に及ぼす影響要因を探索的に検証する。
付加説明として,特別支援体制導入初期では「軽度発達障害」と使用されて いたが,平成16年発布の「発達障害支援法」に基づき,文部科学省も「軽度 発達障害」の表記をその意味する範囲が必ずしも明確ではないとして,「発達障 害」へと用語の統一を図った(文科省,2007a)。本研究においても,先行研究概 観では研究者の報告通りに「軽度発達障害」と表記するが,それ以外では文部 科学省の表記に従い,「発達障害」と表記する。
研究1
目的
質問紙調査により発達障害支援教師効力感尺度を作成する。
方法
調査対象と時期
調査対象 尺度作成のための予備調査を依頼した高等学校は,2県24校であ り,そのうち協力許可の応答を得た高等学校は合計22校であった。調査対象 校選定の基準は,公立普通高等学校普通科または専門学を有する高校とし,調 査協力を得た学校は普通高校15校,専門科(商業・工業・農業,夜間・定時制
含む)高校7校であった。予備調査対象校24校のうちA県13校へは,筆者が
事前に学校訪問を行って学校管理者に調査の趣旨を伝え,同時に作成中の発達 障害支援教師効力感尺度の試案を持参して,質問項目の内容についての簡単な説明や質疑応答を行った。また直接訪問できなかったF県9校およびA県1
校へは,学校管理者に質問紙調査協力依頼公文発送前後に電話をいれ,または当該学校内担当者に対してもメールで質問紙の主旨や協力依頼を行った。その 後質問紙の内容について,協力依頼校から指摘された事や質問を参考にして,
質問項目の見直しや加筆修正も行った。
予備調査の対象者は,養護教諭を含む教職員とした。質問紙発送数および対
象教職員数は2県合計1176名であり返信数は543名で,欠損値を有するデー
タを省いた485名を有効回答とした。内訳は男性310名,女性174名,不明1 名であった。ただし性別不明1名のデータは,性別を必要としない分析におい て使用し,それ以外では欠損値として分析には用いなかった。年齢構成は20代82名,30代158名,40代140名,50代98名,60代7名であった。
実施時期 2012年6月下旬〜8月上旬までの3週間目安の留め置き法にした。
調査依頼および回収の方法 調査は,確実な調査協力可能の返答を得た学校 へ質問紙を郵送し,実施された。回収は,調査者による直接回収が13校,郵 送返信は9校であった。また質問紙の表紙には,研究の目的,研究協力者への 倫理的配慮,任意調査であることを明記した。
方法に関する相談相手(複数回答可),H.人格特性的自己効力感尺度(SMSGSE)
(三好,2003),皿.教師効力感尺度(TSES)20項目(前原ら,1991), IV.成人キャ リア成熟尺度(ACMS)(坂柳,1999), V,今回作成した「発達障害支援教師効力 感に関する32項目」,自由記述
尺度の基準関連妥当性検証 尺度の信頼性と妥当性を測るために,以下Hか らIVの3尺度を使用した。
ll.人格特性的自己効力感尺度(SMSGSE)(三好,2003)
三好(2003)の作成したこの尺度は,主観的な感覚としての自己効力感を測る ものである。三好は「日常生活において全般的に自己効力感が高く,あるいは 低く認知する傾向という人格的特性」として,人格特性的自己効力感とした。
本研究においても,外に現れる行動特性ではなく,個人の全般的な感覚として の自己効力感を測定するためにこの尺度を使用した。個人の人格特性的自己効 力感が高い者は,高等学校において始まったばかりである発達障害支援に関し ても効力感を高く持つことが予測されるので,高い正の相関が予測される。
皿.教師効力感尺度(TSES)20項目(前原ら,1991)
前原ら(1991)が邦訳したこの尺度は,「一般的教師効力感」と「個人的教授効 力感」の2因子から構成されている。先行研究では,不登校対応自己効力感尺 度(岩永・吉川,2000)や,子どもの問題行動への対応に関する自己効力感尺度(三 本・金山,2010)など課題固有の効力感尺度が開発されており,教師としての 個人が直面する特定課題への「個人的効力感」を問うている。本研究でも発達 障害支援を課題固有の「個人的効力感」として作成するので,特にTSESの下 位尺度「個人的教授効力感」との間には正の相関が予測される。また貝川・鈴 木(2006)が,前原ら(1991)の邦訳した尺度の一部を改変したのにならい,「自分 は」を「教師は」に,また文末の一部を「〜である」から「〜であると思う」
に修正して使用した。
IV.成人キャリア成熟尺度(ACMS)(坂柳,1999)
坂柳(1999)が作成したこの尺度は「キャリア関心性」,「キャリア自律性」,「キ
ャリア計画性」の3つの下位尺度合計27項目からなり,それぞれその態度特 性を測るものである。坂柳によって内的整合性が確認され,また基準関連妥当 性としてキャリア成熟度と回答者の自己評価による満足度について,すべて有 意な正の相関が確認されている。平成17年から高等学校でも義務付けられた 発達障害を有する生徒への支援についても,教師というキャリアの中での新た
な領域として関心を持ち,下位尺度の「キャリア関心性」とは正の相関が予測
される。
「発達障害支援教師効力感に関する32項目」作成手続き 次に,発達障害支 援教師効力感尺度作成のための質問項目は,以下の尺度および発達障害支援関 係書物を参考に作成した。まず発達障害を有する生徒を「支援する」という観 点から,長谷川・福井(2008)の子育て支援尺度の児童・生徒および保護者支援
に関する12項目,また坂井ら(2006)から外部機関や他学校との連携に関する3 項目,発達障害支援関係の一般書から6項目,金岡(2011)の育児効力感尺度か ら他者への援助希求に関する2項目と支援する自己のイメージを問う1項目,
Bandura(1977)のセルフ・エフィカシー修正のための情報源を元に作成した5 項目,F県臨床心理士による校内研修会資料を参考に,特に保護者支援に関す
る文面から作成した3項目,計32項目となった。また質問文は三好(2003)の 尺度を参考に,高等学校における発達障害を有する生徒支援に関して,今現在 の自分の行動ではなく,自分がどの程度できると思うか,という個人の主観を たずねるようにした。教示文は「以下の項目について,今のあなた自身にどれ くらいにあてはまりますか」という文章を用い,回答形式は「5:あてはまる」
〜「1:あてはまらない」の五件法にした。
「発達障害支援教師効力感に関する32項目」分析結果
因子分析結果 はじめに,発達障害教師効力感に関する32項目について得 点分布を確認した。本質問紙は5件法なので,平均値+標準偏差>5を天井効果,
平均値・標準偏差く1をフロアー効果として項目分析を行った。その結果,質問 項目での得点分布の偏りは見られなかったので,全ての質問項目で分析を行う
ことにした。
次に32項目に対して主因子法による因子分析を行った。固有値の変化は
で11.027,2.666,1.565,1.382,1.103…であり,3因子構造が妥当であると考 えられた。そこで再度3因子を仮定して主因子法・Promax回転による因子分 析を行った。その結果.40を基準として十分な因子負荷量を示さなかったll項 目を分析から除外し,再度,主因子法・Promax回転による因子分析を行った。
達障害を有する生徒の保護者や,その生徒の持つ個別または特定の課題に関す る内容の項目が高い負荷量を示していた。そこで「個別(特定)課題支援効力感」
と命名した。
第ll因子は6項目で構成されており,「発達障害を有する生徒に対して,わ かりやすい指導や援助ができると思う」,「発達障害を有する生徒の親に対して,
適切な援助ができると思う」など,発達障害を有する生徒や保護者に対する全 般的な内容の項目高い負荷量を示していたので,「一般的支援効力感」と名付け
た。
第皿因子は8項目から構成されており,「発達障害を有する生徒と関わる時 に,自分に対して専門家からのアドバイスがあれば,適切な援助ができると思
う」,「発達障害を有する生徒への支援は,学級担任だけでなく学年団との連携 で行うものだと思う」など,発達障害に関する知識や情報および連携を求める 項目が高い負荷量を示していた。そこで「情報連携希求効力感」と命名した。
違
Table 1−1
因子 主 子◎ ・プロマックスロ 閥=485
質問項目 1 ﹇ 皿 共通性
1.個別(特定)課題支擾効力感(7項目 α=.87)
26子育てに自信をなくしている発達障害を有する生徒の親に対して、適切な援助ができると思う 22子育ての大変さについて、配偶者から理解が得られないと感じている発達障害を有する生徒の親に対 して、適切な援助ができると思う
18家庭内がうまくいっていないと感じている、発達障害を有する生徒の親に対して、適切な援助ができる と思う
17人前でうまく話せない発達障害を有する生徒に対して、適切な援助ができると思う 21引っ込み思案な発達障害を有する生徒に対して、適切な援助ができると思う
14発達障害を有する生徒支援の場において、保護者に対し過不足なく相談に乗ることができると思う 13友人関係に困難を抱えている発達障害を有する生徒に対して、適切な援助ができると思う
. 83
.81
.76
. 60
.55
,52
. 45
一. 04 一. 02 .633 一. 05 一. 05 .562
一.02 一.02 .533
.17 一.05 .498
.22 .02 .529
.15 .06 .440
.20 .12 .457 皿,一般的支擾効力感(6項目 α呂.88)
1発達障害を有する生徒に対して.わかりやすい指導や援助ができると思う 3発達障害者支援の知識を、実践に結びつけることができると思う
2発達障害を有する生徒の親に対して、適切な援助ができると思う
6保護者の状況を確認し、発達障害を有する生徒の学校生活におけるニーズを把握することができると 思う
5発達障害を有する生徒に対して、その生徒の能力に応じた課題を出すことができると思う
4発達障害を有する生徒の問題について、保護者に対し適切な医療機関や相談機関を勧めることがで きると思う
皿.情報連携語求効力感(8項目 a=.82)
12発達障害を有する生徒と関わる時に、自分に対して専門家からのアドバイスがあれば、適切な援助が できると思う
29発達障害者支援に関する校内研修会があれば、自分も適切な援助ができると思う 23発達障害を有する生徒への支援は、学級担任だけでなく学年団との連携で行うものだと思う 7自分自身に発達障害に関する知識や理解があれば、その生徒に対してさらに支援ができると思う
28発達障害を有する生徒への支援に関して、困ったことがあれば専門職に頼ることができると思う 24自分自身に発達障害を有する生徒と関わる機会がもっとあれば、その生徒に対して適切な援助ができ ると思う
27発達障害を有する生徒に対して、他者が適切な援助をしている場面を見ることができれば、自分も同じ ように援助することができると思う
20発達障害を有する生徒への支援に関して、周囲の人に助言を求めることができると思う
一. 02
一. 14
.11
.07
.16
.23
.84
.84
.78
.62
.61
.53
一. 04 .654
.09 .628 一.12 .656
.13 .537 一.Ol .522 一. 09 .450
一. 08
.12 一.10
= 25
.04
.19
.23
.Ol
.10
一. 08
.14
.18
.oo
一. 10
一. 02
.04
.68
.65
.63
.60
.59
.55
.55
.52
.483
.459
.307
.341
.371
.384
.464
.303
因子間相関I I 皿 皿
ll 皿 .68 .45 一 .40
除外された項目 因子分析の結果,除外された項目をTable 1・2に示す。
Tablel−2 除外された項目
番号 質問項目
発達障害を有する生徒への支援は、特別支援コーディネーターが中心となって行うものだと8 思う
9 発達障害を有する生徒の発する、わずかなサインを読み取ることができると思う
発達障害を有する生徒の問題行動の有無に関わらず、その生徒の親と信頼関係を築くことが
10 できると思う
ll発達障害を有する生徒と関わる他校の教員と、連携を図ることができると思う
15発達障害の専門医や医療機関・大学などの専門機関に相談し、連携を図ることができると思
つ
16発達障害を有する生徒への支援は,特別支援学校が中心となって行うものだと思う
19周過障害を有する生徒への支援に関して、漠然としているが自分なりの支援イメージがある 発達障害を有する生徒支援の場において、生徒にとって安心・安全な環境を整備することが 25 できると思う
30発達障害を有する生徒への支援は,小中学校でなされるものであると思う 31発達障害の有無に関わらず、どの生徒へも適切な援助ができると思う
同僚から、発達障害を有する生徒の指導に関して相談を受けた時に、何らかのアドバイスを 32 することができると思う
上記の結果から,項目16「発達障害を有する生徒への支援は,特別支援学校 が中心となって行うものだと思う」(初期値.323)と項目30「発達障害を有する 生徒への支援は,小中学校でなされるものであると思う」(初期値.192)が除外
されていることから,高校教師は,高等学校における発達障害を有する生徒へ の支援に関して,小中学校および特別支援学校のみならず,高等学校でもなさ れるものであるという意識を持っている事が考えられた。また項目8「発達障 害を有する生徒への支援は,特別支援コーディネ…一・一降口が中心となって行うも のだ」の初期値が.224であったことからも,学校内の特定の役割の者だけが担
う事であるとは考えられていないことも示唆された。しかし一方で,項目15
「発達障害の専門医や医療機関・大学などの専門機関に相談し,連携を図るこ とができると思う」の初期値が.494であったが,その後の因子分析で十分な負 荷量を示さなかったことから,発達障害を有する生徒への具体的な支援のため に外部専門機関と連携することについて,大半の高校教師は,自分自身が十分 に役割を果たすことはできないと考えている事も推察された。
発達障害支援教師効力感尺度下位尺度間の相関 発達障害支援教師効力感尺 度の3つの下位尺度に相当する項目の平均値を算出し,「一般的支援効力感」(M
=2.38, SD=O.47),「個別(特定)課題効力感」(M ;2.91, SP=0.65),「情報連 携希求効力感」(M=3.63,SD=O.51)とした。内的整合性を検討するために各下 位尺度のアルファ係数を算出したところ,「一般的支援効力感」でα=.87,「個 別(特定)課題効力感」でα=.88,「情報連携希求効力感」でα=.82と充分な値 が得られた。発達障害支援教師効力感の下位尺度問相関をTable 1・3に示す。3 つの下位尺度はそれぞれ,第1因子と第ll因子■・ニ.68(P<.01),第1因子と第 皿因子rニ.40(P<.Ol),第H因子と晶晶因子r=.45(P<.01)で,互いに有意な正 の相関を示した。
丁able 1−3
発達 支 教師効力感 の下位 度間相 (N=485)
1 2 3 M SD
.68 *1個別(特定)課題支援効力感 2一般的支援効力感
3情報連携希求効力感
.40 ** 2. 91 O. 65
.45 ** 2. 38 O. 47 3. 63 O. 51
**p〈. Ol
既存尺度との尺度間相関 基準関連妥当性検証のため使用した既存尺度と,
発達障害支援教師効力感尺度との尺度問相関をTable 1・4に示す。今回作成し た発達障害教師効力感尺度とSMSGSEとはr=.25(、ρ<.Ol), TSESとはrニ.29
(p<.01),ACMSとはr=.28(p<.01)と,弱い正の相関を示した。
Table 1−4
、よと 閥=485
発達障害支援教師効ヵ感 SMSGSE
1 2
証3 S
T A ㎝4 S
1発達障害支援教師効力感尺度 2人格特性的自己効力惑尺度 3教師効力感尺度
4職業キャリア成熟尺度
.25 ** .29 **
一 .23 **
SD
.28 *, 66.1 9. 69
.27 *. 18,1 2. 46
.21 *. 60.9 5. 71
一 90.3 6. 53
**p〈.O1
既存尺度と発達障害支援教師効力感下位尺度間相関 基準関連妥当性検証の ために使用した3っの既存尺度と,発達障害支援教師効力感尺度の下位尺度間 の相関をTable 1・5に示す。本尺度と3っの基準となる尺度は弱〜中程度の正 の相関を示した。
Table 1−5
下 N=485 発達障害支援教師効力感
1 2 3
SMSGSE TSES
4 5
ACMS
6 1個別(特定)課題支援効力感
2一般的支援効力感 3情報連携希求効力感 4人格特性的自己効力感尺度 5個人的教授効力感 6職業キャリア関心性尺度
.68 tt .40費貞
.45★費
.19★禽
.28☆實
.13曹会
.38曹★
.41軸
.34蝕
.36轍
.12勲
一20 t.
.35禽★
.20費貢
.25軸
*ρ〈.05, **ρく.Ol
項目分析 発達障害支援教師効力感尺度および各下位尺度得点の平均点の高 低によって2群に分割し,G−P分析を行った。 t検定の結果,すべての項目に おいて平均点高群〉平均点低群(p<.001)で有意差が見られた。その結果をTable 1−6に示す。
Table 1−6 遣 力 G−P
_____直壁_________」壁._____
M N SD M N SD 確 げ
発達障害支援教師効力感 3.54 個別(特定)課題支援効力感 3.23 一般的支援効力感 3.39 情報連携希求効力感 3,82
139 O. 31 169 O, 36 156 O, 45 242 O, 39
2. 67 2, 19
2,12 2. 66
139 O.37 112 O, 38 125 O. 44 39 O. 44
21.03 ***
23. 06 ***
23. 90 ***
17. 05 ***
276 279 279 279
#*oく:001
男女差の検討 男女差の検討を行うために,発達障害支援教師効力感の各下 位尺度得点についてt検定を行った。その結果をTable 1・7に示す。「個別(特 定)課題支援効力感」(t=1.53,df≡482, n.s.)および「一般的支援効力感」(t=1.23,
df=482, n.s.)で男女差は見られなかったが,「情報連携希求効力感」では,男 性よりも女性の方が有意に高い得点を示した(t=4.05,ゴ声378,、ρ<.01)。
Table 1−7
男女別発達障害支援教師効力感得点の平均値とSDおよびt検定の結果
女性(Nニ174) 男性(N=309)
個別(特定)課題支援効力感 一般的支援効力感
情報連携希求効力感
2. 97
2. 42
3. 75
SD
O. 66
0. 47
0. 48
2. 87
2. 36
3. 56
sp
O. 65
0. 47
0. 51
f値
1. 53
1. 24
4.05 *林
***p〈.OOI (N=484)
男女別の相関 男女別の発達障害教師効力感尺度下位尺度間の相関係数を Table 1・8に示す。男女とも,各下位尺度間において有意な中程度の正の相関 を示した。「一般的支援効力感」と「個別(特定)課題支援効力感」では,男性が 女性より僅かに高い相関を示しているが(r=.69,p<.01),女性は「個別(特定)
課題支援効力感」と「情報連携希求効力感」で,男性よりも高い相関を示した
(r=.42, p〈.Ol).
丁able 1−8
1 閥=484
1 2 3
1個別(特定)課題支援効力感
2一般的支援効力感
3情報連携希求効力感
.69 **
.67 **
.39 **
.42 **
.49 **
.50 **
**ρぐ01
上;男性(N=309), 下:女性(N=174)
考察
高等学校における発達障害支援教師効力感尺度作成のための予備調査の結果,
以下の事が明らかにされた。
尺度構成について 尺度作成時は,①生徒支援②保護者支援③情報希求④連 携希求の4因子構造を考えて質問項目の作成および選定を行ったが,因子分析 の結果,因子負荷量の高い順に「個別(特定)課題支援効力感」,「一般的支援効 力感」,「情報連携希求効力感」の3因子構造になった。
第1因子の「個別(特定)課題支援効力感」は,主に生徒の内在的問題やその 子育てに悩む保護者を支援する質問項目である。それらは発達障害の有無に関 わらず普段対応している生徒や保護者にも共通する事が考えられ,発達障害を 有する生徒やその保護者と関わっていなくても,回答者が容易に日常的支援場 面を想定して回答しやすかったのではないかと推察された。ただし第1因子で は,学校現場で問題とされる生徒の「パニック行動」や「粗暴・干害・自傷行 為」,または「場にそぐわない大声」など,社会生活や集団活動に支障をきたす いわゆる「外在的問題」や,学習障害への支援法あるいは発達障害の二次障害
とされる不登校やうつ病への対応に関する具体的項目はない。高校現場の発達 障害支援教師効力感のより詳細な情報を得るためには,今後は加筆修正したも のが必要となるだろう。第H因子の「一般的支援効力感」は,学校生活全体で の生徒への支援場面が想定され,いわゆる発達障害の具体的かつ障害別特性へ の支援項目ではないことからも,比較的回答しやすかったのではないかと推察
された。
第m因子の「情報連携希求効力感」は,高等学校での発達障害支援に関して
「〜があれば,自分もできると思う」という項目である。特に項目12「発達障 害を有する生徒と関わる時に,自分に対して専門家からのアドバイスがあれば,
適切な援助ができると思う」,項目29「発達障害者支援に関する校内研修会が あれば,自分も適切な援助ができると思う」の因子負荷量がそれぞれ.68と.65 を示した。「(発達障害支援に関して)知識と理解が不足している」(佐藤・徳永,
2003;松本ら,2011)と指摘されている高校教師にとって,今なお発達や心理 の専門家からのアドバイスと情報を必要としていることが示された。
内的整合性について 発達障害支援教師効力感尺度の各下位尺度のクロンバ ックのα係数は,第1因子「個別(特定)課題支援効力感」がα=・.87,第ll因子
「一般的支援効力感」がα=.88,第皿因子「情報連携希求効力感」がα=.82 といずれも十分な値が得られ,発達障害支援教師効力感尺度の内的整合性が確 認された。また3つの下位尺度がそれぞれ正の相関を示したことから,それぞ
れの効力感に働きかける介入によって,発達障害支援教師効力感が高まること が考えられた。例えば学校で生徒のあらわす生活上や学習上の困難な課題を校 内研修子等で取り上げ,かつそれらに対する環境調整も含めた一般的対処と個 別(特定)的対処の実例を挙げることで,高校教師も支援イメージを持ちやすく なると考えられた。
尺度の項目分析について 発達障害支援教師効力感尺度および3つの下位 尺度得点の平均値以上を高群,平均値未満を低吟としてG−P分析を行った。そ の結果全ての尺度において有意差があり,信頼性の一部が確認された。
尺度の基準関連妥当性について 既存の3尺度と研究1で作成した発達障害 支援教師効力感尺度とは,当初の予測通り正の相関を示した。ただし,全体的 に弱い相関であった。前原ら(1991)の教師効力感尺度(TSES)の下位尺度「個人 的教授効力感」と発達障害支援教師効力感尺度の3つの下位尺度は,それぞれ 有意な正の相関を示し,当初の予測どおりであった。高等学校における発達障 害支援に関して,教師としての個人的力量と発達障害支援効力感との関連が明
らかにされた。成人キャリア成熟尺度(ACMS)の下位尺度である「キャリア関 心性尺度」と発達障害支援教師効力感尺度の第3因子「情報連携希求効力感」
とも正の相関があり,効力感の高い教師は,高等学校における発達障害支援に ついても,これからのキャリア生活の一部として関心を持ち,生徒を支援する ための具体的な情報やアドバイスを求めていることが明らかになった。三好
(2003)の人格特性的自己効力感尺度(SMSGSE)とは,発達障害支援教師効力感 尺度第ll因子「一般的支援効力感」において,弱い正の相関が確認された。
性差について 性差については,特に「発達障害支援教師効力感尺度」の第 皿因子「情報連携希求効力感」で,女性教師は男性教師よりも有意に高い得点 を示した。一般的に小中学校と比べ高等学校は男性教師数が多いとされており,
今回の調査でも有効回答数485町中男性は309名,女性175名,無記名1人で
あった。前原(1994)は,高等学校における女性教師は,男性教師と比して効力 感が低く,かつ効力感の低い女性教師ほど生徒指導問題で悩んでいると指摘し たが,今回の予備調査では,女性教師が男性教師よりも発達障害支援に関する 具体的な情報や連携を求め,それによって生徒や保護者の示す個別の課題への 適切な支援ができると考えていることが明らかになった。いずれに関しても,性差による有意な差は示されていなかった。山本(2010a,b)
は,不登校児童生徒支援教師効力感に関して性差と被援助性を検討し,被援助 源と被援助感における性差を指摘した。その中で女性は「情緒的援助」を求め,
被援助源要因も「管理職」ではなく「家族」「同僚」が有意に高いことを示した。
また「実質的援助」では性差が見られなかったとしている。
上記のように,教師効力感の性差について一致した見解はみられない。関わ る児童・生徒の課題や発達段階,または学校種別にその効力感が検討され,教 師の効力感を上げる介入方法も,今後性別ごとに検討される必要があるだろう。
研究皿
高等学校における発達障害支援教師効力感に関する探索的検証
目的
研究1において作成した発達障害支援教師効力感尺度を用いて,属性,教職 経験年数,現任校讐および課程,赴任経験校種,校内研修会の有無,発達障害
を有する児童・生徒との関わり経験の有無,相談相手,発達障害支援に関する 情報源,発達障害特性や二次障害対応に関する知識・理解量および職場の同僚 性との関連を探索的に検証する。
方法
調査対象と時期
調査対象 対象校は,A県高等学校で筆者が調査協力を依頼した4校から協 力可能の返答を得た3校,F県高等学校で筆者が調査協力を依頼した7校から 協力可能の返答を得た4校の,計7校であった。管理職を除く一般教師473名 を調査対象とした。質問紙返却数は295名,回収率は62.36%であった。欠損 値を含むデータを除く有効回答281名を分析対象とした。対象者内訳は男性
154名,女性127名であり,20代39名,30代69名,40代104名,50代60
名,60代9名であった。フェイスシートの質問項目での無回答は,分析に影響がない場合にのみ使用した。本調査対象校種は,全日制普通学科3校,総合学 科1校,専門学科2校,夜間・通信制・単位制1校であった。
実施時期 2012年8月下旬〜9,月中旬 3週間の留め置き法とした。
質問紙の構成 1.フェイスシート14項目(①性別②年齢③教師経験年数
④現任校課程⑤現任校学科⑥現在の校務分掌⑦所有免許⑧赴任経験校種⑨短大 または大学時の障害児教育全般受講経験の有無⑩特別支援コーディネーター研 修経験の有無⑪特別支援教育・発達障害ついての情報源⑫特別支援教育・発達 障害児支援についての校内研修会の有無⑬発達障害を有する生徒との関わり経 験の有無⑭特別支援教育・発達障害支援の対象となる児童・生徒への対応方法 についての相談相手,H.同僚性尺度13項目(小牧・田中,1993),皿.発達障害
床心理士や外部機関)に期待する事(求めること)を,ご自由に記述して下さい。)
分析結果 まず発達障害支援教師効力感尺度の項目分析を行った。記述統計 量から,項目12が平均値+標準偏差>5の値を示したので除外して,因子分析
を行った。さらに二重負荷のかかった項目6および項目20を除外し再度因子 分析を行ったところ,因子は予備調査時と同じく3因子に分かれた。因子負荷 量の高い項目から第1因子「個別(特定)課題支援効力感」(α=.90,6項目),第 ll因子「情報連携希求効力感」(α=.85,8項目),第皿因子「一般的支援効力感」
(α=.88,3項目)と命名した。それぞれの因子構成内容および因子間相関をTable 2−1に示す。
予備調査での因子分析の結果同様,第1因子は「個別(特定)課題支援効力感」
であり,項目数は7項目から6項目へ減少した。一方,予備調査での第H因子
「一般的支援効力感」は,本調査では第皿因子になり,また項目数も6項目か ら3項目に減少した。予備調査で第皿因子であった「情報連携希求効力感」は 今回は第H因子になり,項目23が十分な因子負荷量を示なかったので除外さ れた。一方予備調査では第ll因子「一般的支援効力感」に属していた項目3が 第H因子に追加され,項目総数に増減はなかった。本調査の因子分析で除外さ れた項目をTable 2・2に示す。
発達障害支援教師効力感尺度
Table 2−1
因子分析結果 (主因子法・プロマックス回転) (N=281)
質問項目 1
11
皿 共 性 1個別(特定)課題支援効力感(6項目 α=.90)
14子育ての大変さについて、配偶者から理解が得られないと感じている発達障害を有する生 徒の親に対して、適切な援助ができると思う
18子育てに自信をなくしている発達障害を有する生徒の親に対して、適切な援助ができると思 う
13人前でうまく話せない発達障害を有する生徒に対して、適切な援助ができると思う 17引っ込み思案な発達障害を有する生徒に対して、適切な援助ができると思う
10家庭内がうまくいっていないと感じている、発達障害を有する生徒の親に対して、適切な援 助ができると思う
9友人関係に困難を抱えている発達障害を有する生徒に対して、適切な援助ができると思う
.90
.78
.77
.73
.72
.55
一.06 一.12 ,632 一.07 ,09 .653
.OO 一. Ol .570
.11 一.02 .589 一.06 .12 .602
.15 .16 ,572
11情N連携希求効力感(8項目 α=,85)
7発達障害を有する生徒と関わる時に、自分に対して専門家からのアドバイスがあれば、適切 な援助ができると思う
19発達障害者支援に関する校内研修会があれば、自分も適切な援助ができると思う 3自分自身に発達障害に関する知識や理解があれば、その生徒に対してさらに支援ができる と思う
15発達障害を有する生徒に対して、他者が適切な援助をしている場面を見ることができれば、
自分も同じように援助することができると思う
8発達障害者支援の知識を、実践に結びつけることができると思う
11回分自身に発達障害を有する生徒と関わる機会がもっとあれば、その生徒に対して適切な 援助ができると思う
21発達障害を有する生徒への支援に関して、困ったことがあれば専門職に頼ることができると 思う
16発達障害を有する生徒への支援に関して、周囲の人に助言を求めることができると思う
皿一般的支援効力感(3項目 α=.88)
1発達障害を有する生徒に対して、わかりやすい指導や援助ができると思う 2発達障害を有する生徒の親に対して、適切な援助ができると思う
5発達障害を有する生徒に対して、その生徒の能力に応じた課題を出すことができると思う
一.17
.07
一. 32
.12
.15
.12
.12
.18
5395265587666544
,OO .612一.08 .533
,14 .412 一.13 .431
.06 .555
, 04 . 431
一.03 .256 一,02 .298
一. Ol 一, 02
. 07 一. 04
.28 .08
.93
.84
,51
.839
.749
.592
Table 2−2 除外された項目
因子間相関 I I ll 皿
皿 皿
.51 .67 一 .48
番号
質 問 項 目
6 発達障害を有する生徒支援の場において、保護者に対し過不足なく相談に乗ることができる と思う