尿路カテーテルを長期に用いれば細菌尿になる
原則
1. 長期の使用をなるべく避ける
2. 抜去できる症例は抜去する
抜去できない
カテーテルを交換する
閉塞しそうな場合
持続的灌流式膀胱洗浄
(閉鎖回路: トリプルルーメン)
7-10日で50%, 30日で100% が細菌尿になる 6. 同一の薬剤を不必要に長期間使用しない。 ・多くの場合は14日以内!! ! 7日以内で充分な場合もある.! 「成人市中肺炎診療の基本的 考え方」(日本呼吸器病学会編) ① 解熱(目安として37℃以下) ② 末梢白血球数の正常化 ③ CRPの値が最高値の30%以下 ④ 胸部X線写真の明かな改善 成人市中肺炎の治療終了時期 ・免疫能正常者:3項目以上満たした日 ・免疫能低下者:3項目以上満たした日 +4日 ・全てのデータが正常化するまで 治療を継続する必要はない.7. 副作用の出現に注意する。
但し, 抗菌薬療法が本当に有効かつ必要な場合,
多少の副作用は目をつぶる時もある
.!
抗菌薬の副作用は
,
アナフィラキシーショック
!
や薬疹だけではない
.!
腎機能障害
肝機能障害
CD関連性腸炎 (偽膜性腸炎)!
薬剤熱
骨髄抑制 (好中球減少, 血小板減少)!
治療開始3-5日
で! 必ず副作用の有無! をチェックする 8.抗菌薬の使用制限は抗菌薬療法の適正化に有効である。(1) 抗MRSA薬 (グリコペプチド
薬,
アルベカシン
)!
(2) カルバペネム薬
,
第
4
世代セフェム薬
, TAZ/PIPC!
・許可制度
・届出制度
面倒くさいので, 薬剤の適用が!
本当に必要な時に限定される
抗菌薬の適正使用
・薬剤耐性菌の減少?!
・医療費の削減
・行政指導や機能評価でも推奨 されている. ・これらの制度を採用する病院が 増えている. ・実際の有効性は評価が難しい.術後感染症の予防と治療
まず第一歩は
,
予防的抗菌薬投与と術後
!
感染症の治療を分けて考えること!!
!
・原則的に予防的抗菌薬投与は,
手術後
1-2
日まで
.
!
・それ以上に必要な場合は,
術後感染症
として治療する.!
(
予防薬でカバーできなかった
微生物が標的).!
・
術後感染症
の治療は
長期化
し易いので注意する.!
・
術後感染症
(SSI)
サーベイランス
を通じて, 確実に診断する.!
1 C E ZPIPC ABPC SBT ABPC
3 0 1 1 1 2 CEZ CMZ CTM FMOX 2 CMZ CTM FMOX 3 3 2 CMZ CTM FMOX 3 4 CAZ SBT CPZ CFPM CZOP 3 / 3 4 CAZ SBT CPZ CFPM CZOP IMP CS MEPM 3
予防的抗菌薬投与
・手術対象臓器に関わりが深い細菌に感受性 を示す抗菌薬を選ぶ (CEZが推奨される). ・手術前 30-60分に初回の投与を行う.! ・術後 2-3時間は有効な血中濃度が得られる! ように術中に追加投与を行う.! ・ CEZなど第1, 2世代のセフェム薬やペニシリン薬で あれば, 手術中の3-4時間毎に追加投与.!術後感染症の治療
MRSA MRSA MRSA MRSA MRSA ・基本は, 原因菌の薬剤感受性結果に基づい て治療抗菌薬を選択することである.! ・バンコマイシンなどの抗MRSA薬の適応は, MRSA感 染症である根拠がある場合のみである.! ・抗MRSA薬には原則的に予防的な適応はない. ・10-14日使って明確な効果が認められない 場合は, 抗菌薬を変更するか投与自体を中 止するべきである.! グラム陰性桿菌:カルバペネム薬, 3・4世代セフェム薬� MRSA:バンコマイシン, テイコプラニン, アルベカシン ・手術後 3-4日の時点で感染症が疑わしい場 合に術後感染症の治療を開始する.!抗菌薬の使用が長期化しないように注意!!
!
抗真菌薬
●ポリエン系:エルゴステロールへの結合�→�細胞膜破壊! ��アンホテリシンB (AMPH-B)! ��アンホテリシンB脂質製剤 (L-AMB) :リポ化AMPH-B! ! ●アゾール系:エルゴステロール合成阻害�→�細胞膜破壊! ��フルコナゾール (FLCZ)、イトラコナゾール (ITCZ) 、! ��ボリコナゾール (VRCZ)、ミコナゾール! ! ●キャンディン系:1,3-β-D-グルカン合成阻害�→�細胞壁合成阻害! ��ミカファンギン (MCFG)、カスポファンギン (CPFG)! ! ●その他:! ��フルシトシン(5-FC):真菌細胞内で5-FUへ変化�→�DNA合成阻害�深在性真菌症の検査と治療
・抗真菌薬には初期投与量と維持量が異なるものがあるので注意 (AMPHは少量から開始,FFLCZは初日は維持量の倍量使う).! ・抗真菌薬は併用禁忌が多い (例: ① FLCZ,ITCZとトリアゾラム ② ITCZ とシンバスタチン ③ H2遮断薬,PPI,RFPとの併用でITCZ吸収↓).! ・原因真菌によって適応薬が違う (例: アルビカンス以外のCandidaや ! Aspergillus属にFLCZ,FFLCZは無効).! ・本当に真菌症であるか? が問題.! ・Candida属は口腔内, 腸内の常在菌.! ・多くの真菌は環境中に常在.! ・β-Dグルカンは偽陽性が多い (陰性の 場合はほぼ真菌症を否定して可).! ・β-Dグルカンはあくまで補助的検査で, 総合的な診断が必要である.!抗真菌薬の主な副作用
●
アンホテリシンB:
悪寒、戦慄、発熱、低K血症、
腎障害
!
�����
→
副作用軽減のためアンホテリシンB脂質製剤開発!
!
●
アゾール系:
重篤な副作用なし、薬剤相互作用!
!
●
キャンディン系:
重篤な副作用なし!
!
●
フルシトシン(5-FC):
造血障害�
抗真菌薬の抗菌スペクトラム
AMPH-B! 5-FC! FLCZ! ITCZ! VRCZ! MCFG! カンジダ� アスペルギルス� クリプトコッカス� トリコスポロン� ムーコル� 有効� やや有効� 無効� AMPH-B:アンホテリシンB�� ��5-FC:フルシトシン�����FLCZ:フルコナゾール ! ITCZ:イトラコナゾール �� �VRCZ:ボリコナゾール �����MCFG:ミカファンギン�Pneumocystis jiroveci による. AIDS患者, 抗TNFα療法, ステロイド療法�
ニューモシスチス肺炎
BAL液Grocott染色 (×400)!
抗ニューモシスチシス薬:
ST合剤(内服, 注射)
真菌症のガイドライン
専門医師以外を対象! に比較的平易に記載! されている!!� 米国感染症学会の! ガイドラインの解説! 書として有用!
薬剤耐性菌感染症の現状
① 抗菌薬の不活化� ② 作用点の変異� ④ 作用点の保護� ③ 抗菌薬の膜通過性低下! or 排出 (efflux機構)! 細胞内 MRSA! PRSP! ESBLs, MBLsなどの! βラクタマーゼ産生菌� キノロン耐性� 緑膿菌 (MDRP)! βラクタム薬耐性�
細菌の主な薬剤耐性機序
テトラサイクリン耐性� 菌 種 主要感染部位 抗菌薬耐性 米国での推奨薬 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌! MRSA! 皮膚・軟部組織、! 肺、血流、創部 βラクタム、フルオロキ ノロン、マクロライド シナシッド、バンコマイシン、! ダプトマイシン、リネゾリド、! チゲサイクリン* 多剤耐性緑膿菌! MDRP! 肺、血流、尿路 βラクタム、フルオロキ ノロン、アミノ配糖体 コリスチン* 多剤耐性アシネトバクター属! MDRA! 肺、血流、創部、 骨髄 βラクタム、フルオロキ ノロン、アミノ配糖体 コリスチン *、チゲサイクリン* ESBL産生菌! ESBLs! 尿路、胆道、消 化管、肺、血流 βラクタム、フルオロキ ノロン、アミノ配糖体 カルバペネム、コリスチン*、 チゲサイクリン* バンコマイシン耐性腸球菌! VRE! 血流、尿路、心 臓、腹腔内 グリコペプチド シナシッド、リネゾリド、! ダプトマイシン ペニシリン耐性肺炎球菌! PRSP! 肺、血流、髄液、 中耳、副鼻腔 βラクタム、マクロライ ド、テトラサイクリン、 ST合剤 フルオロキノロン、! チゲサイクリン*臨床上問題になる主な多剤耐性菌
*日本での未承認薬多くの薬剤を分解するβラクタマーゼ
①
ESBLs (基質拡張型βラクタマーゼ) : Class A!
・本来ペニシリン系を分解する酵素の基質特異性が拡張し, 第3, 4世代を! �含むセファロスポリン薬も分解するようになった.! ・カルバペネム薬は感性. セファマイシン薬, オキサセフェム薬も感性のことが多い.! ・大腸菌, 肺炎桿菌, プロテウス属�②
MBLs (メタロβラクタマーゼ) : Class B!
・アズトレオナム以外のβラクタム薬はすべて分解する.! a) IMP型, VIM型:緑膿菌 (MDRP)�b) NDM-1型:大腸菌, 肺炎桿菌�③
その他のカルバペネマーゼ
a) KPC型 (ClassA):肺炎桿菌��!b) Oxa型 (ClassD):アシネトバクター・バウマニ (MDRA)!
Lancet Infect Dis,10(9), 597 - 602, 2010, 電子版 2010. 8.11!
国際チームが, インド, パキスタン, 英国における多剤耐性腸内
細菌における
NDM-1産生菌
の拡がりを調査した.
118例のNDM-1産生菌が検出され, 多くは大腸菌 (36例)!
と肺炎桿菌 (111例) であったが, これらの菌は
チゲサイクリン
!
とコリスチン以外のほとんどの抗菌薬に耐性
を示した。
チェンナイ (南インド) で44,ハリヤーナー (北インド)で26,
英国で37
,
その他のインド/ パキスタンで73例からNDM-1産生菌を検出.!
CMAJ: OCTOBER 19, 2010, 182(15)!
NDM-1
産生菌�
・インド, パキスタンで患者! が急増 (ニューデリー・メタロ! βラクタマーゼの略)! →環境中に拡散!!! ・殆どすべての抗菌薬! に耐性を示す.! ・大腸菌や肺炎桿菌な! どのグラム陰性桿菌� ・スウェーデン, 英国, 米国, ! カナダ・ ・ ・ 国際的伝播� ・日本でも3例検出.! (2例は渡航歴なし)!Lancet Infect Dis,11(5), 355 - 362, 2011!
2011年4月!
インドの上下水道の調査報告
Lancet Infect Dis,11(5), 355 - 362, 2011!
水道水からはNDM-1陽性の多剤耐性緑膿菌も検出されている!!!
ヨーロッパ諸国を中心に次々と分離の報告が上がっている
. !
※ 2011年 5-7月!
腸管出血性大腸菌!
欧州13カ国で発生
・ベロ毒素産生大腸菌 ・HUS発生率高い (20%)! 非HUS: 3128人 (17人死亡)! HUS: 782人 (29人死亡)! ・原因食材: スプラウト?! =もやし, かいわれ大根この大腸菌も多剤
耐性菌:ESBLs�
であった
! !
�
多くの薬剤を分解するβラクタマーゼ
①
ESBLs (基質拡張型βラクタマーゼ) : Class A!
・本来ペニシリン系を分解する酵素の基質特異性が拡張し, 第3, 4世代を! �含むセファロスポリン薬も分解するようになった.! ・カルバペネム薬は感性. セファマイシン薬, オキサセフェム薬も感性のことが多い.! ・大腸菌, 肺炎桿菌, プロテウス属�②
MBLs (メタロβラクタマーゼ) : Class B!
・アズトレオナム以外のβラクタム薬はすべて分解する.! a) IMP型, VIM型:緑膿菌 (MDRP)�b) NDM-1型:大腸菌, 肺炎桿菌�③
その他のカルバペネマーゼ
a) KPC型 (ClassA):肺炎桿菌��!症例 : 49歳, 男性! 国籍 : 日本(日本在住)! 主訴:発熱, 意識障害! 現病歴:平成22年11月初旬, 中国出張中に左被殻出血を発症. 上海市内の病院で開頭血腫除去・外減圧術を受けた. 発症4 週間後に帰国し,外減圧を施行した状態で聖マリアンナ医大 東横病院へ転院. 転院時の意識状態はGCS10 (E4, V1, M5),寝 たきりの状態で意志の疎通はとれず,合目的動作も見られな い状態であった. 上海では術後感染症のため皮下洗滌などが 行われ,VCM,SBT/CPZが投与されていたらしいが詳細は不明.! 既往歴:! ・11月13日 左被殻出血(上海で開頭血腫除去手術)! ・術後感染症 (?)!
海外での手術後に発症した
多剤耐性アシネトバクター菌
(MDRA)
脳膿瘍の一例
韓国:50%
(1997年から増加)�
上海:13
.
5%�
北京:32% �がMDRA�
11月13日 左被殻出血発症. 上海で開頭血腫除去術施行入院後経過
・入院時のMRIで, ①脳室内への炎症の波 及, ②皮下から左頭頂葉に掛けて連続し た感染巣を指摘 ・入院当初, 皮下, 硬膜下洗浄するも髄液 細胞数増加. 髄液, 硬膜外液などから細 菌は検出されず. ・12月28日の脳室穿刺液からグラム陰性桿 菌 (MDRA) が検出された.Oxa型βラクタマーゼ遺伝子PCR! Oxa型βラクタマーゼイムノクロマト法 Oxa-23型! (陽性)! Oxa-40型! (陰性 PC+)! ・メタロβラクタマーゼ陰性 ・OXA-23型βラクタマーゼ陽性! アジア (中国, 韓国, 台湾など)に多い ・MLST解析:ST92! 広く世界中で流行している. ! 日本での分離は少ない!! *東邦大学微生物・感染症学 石井良和先生 が開発したキットの提供を受けた Oxa-51型! (陰性 PC+)! Oxa-58型! (陰性 )!
検出された
MDRA
の
βラクタマーゼ型
PIPC >64 R MEPM >8 R CAZ >16 R GM >8 R CFPM >16 R AMK >32 R CZOP >16 R TOB >8 R CFS >16 R MINO 8 I PIPC/TAZ >64 R LVFX >4 R CPZ/SBT >32/16 R CPFX >2 R AZT >16 R S/T >2/38 R IPM >8 R FOM >18 R検出された
MDRA
の薬剤感受性
MDRA
に対する
BC
プレート法による併用効果判定
CL 2!
CL 1!
RFP 4! RFP 2! MEPM ! 8 4! CAZ ! 16 8! AZT ! 16 8! CPFX ! 2 1! RFP ! 4 2! CL ! 2 1! → CL単独では1µg/mLで僅かに発育ありMIC:2と判定. 併用効果は??FIC : fractional inhibitory concentration index! MIC: minimum inhibitory concentration!
Checker-board
法による各薬剤の
FIC
と
!
sub-MIC
濃度のコリスチン添加時の
MIC
!
MIC CL 1 mg/LMIC CL 0.5 mg/LMIC CL 0.25 mg/LMIC CL 0.125 mg/LMIC FIC
MINO 16 <0.06 0.25 0.5 2 0.155 RFP 8 <0.016 <0.016 <0.016 0.25 0.094 CAZ 256 0.5 1 4 16 0.125 IPM 128 0.5 1 2 4 0.094 CTX >256 1 4 32 256 CTRX >256 1 4 16 256 CL 2 MEPMで薬疹があったので IPMは使いたくない!! CPFXは注射薬は無い病院
H22. 12. 28!
H23. 1. 7!
コリスチン開始2日目