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Academic year: 2021

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(1)

要 旨 ER 受診より緊急入院となり,数日後にニューモシスチス 肺炎(以後 PCP)と判明した 2 症例を経験した. 症例 1 は 50 歳代,HTLV-1 抗体陽性の女性.発熱,呼吸 苦で ER 受診され,抗生剤,ステロイドパルス投与をされた が改善を認めなかった.入院 3 日目でβ -D-glucan 138 で あり,PCP が強く疑われた.他院血液内科転院後に気管支 鏡にて PCP と診断された.

ER 受診より緊急入院となったニューモシスチス肺炎を来した 2 症例

呼吸器内科

松 本 錦之介  館   哲 郎  光 井 雄 一  白 井 雄 也

柴 原 理 志(現 免疫リウマチ科)  安 部 祐 子  小 川 晃 一(現 淀川キリスト教病院)

赤 澤 結 貴(現 独立行政法人国立病院機構 刀根山病院)  上 野 清 伸  谷 尾 吉 郎

Two cases of Pneumocystis pneumonia which made an emergency hospital admission through

the ER visit.

Kinnosuke Matsumoto, Tetsurou Tachi, Yuuichi Mitsui, Yuuya Shirai, Tadashi Shibahara, Yuuko Abe,

Kouichi Ogawa, Yuki Akazawa, Kiyonobu Ueno, Yoshirou Tanio

Abstract

We experienced two cases of Pneumocystis pneumonia (PCP) which made an emergency hospital admission through the ER visit, finding these PCP after few days.

Case 1:50s, woman of HTLV-1 antibody-positive. She had a fever, respiratory discomfort, so she visited ER and was given antibiotics, steroid pulse. But these showed no improvement. 3 days after admission , β -D-glucan found 138 , PCP has been strongly suspected. Patient was transferred to another hospital blood internal medicine , diagnosed as PCP through the bronchoscopy.

Case 2: 30s, man. He was aware of respiratory discomfort, admitted to another hospital. Hypersensitivity pneumonitis was suspected ,so medical treatment was started at PSL 30mg. But, he didn’t improved , visiting our hospital ER. 4 days after admission , β -D-glucan found 287, 6 days he was diagnosed as PCP through sputum cytology.

In recent years, as HIV patient / immunosuppressive agent user is increasing , in the respiratory tract infections clinics , We should make diagnosis and treatment early, putting the PCP in our mind.

Key words:Pneumocystis pneumonia (PCP), β -D-glucan

(2)

症例 2 は 30 歳代,男性.呼吸苦を自覚し,他院を受診した. 過敏性肺臓炎疑いで PSL30mg にて加療開始したが改善を認 めなかったため当センター ER 受診された.入院 4 日目にβ -D-glucan 287,6 日目に喀痰細胞診から PCP と診断した. HIV 患者 / 免疫抑制剤使用者は近年増加傾向にあり,呼 吸器感染症診療において,PCP を念頭においた早期診断お よび治療が重要となる. 緒 言 PCP は 20 世紀半ばに発見され,以後白血病や HIV 患者 に合併する疾患として恐れられてきた.幸いにもサルファ剤 が有効であり,臨床上の重要度は山を越したように思われた. しかし,前世紀の終わり頃から,血液疾患,悪性腫瘍,移 植後,膠原病などの新規薬剤が続々と導入され,それらに よる合併症としての PCP が新たに問題となってきた.これ ら non-HIV 感染者(以下 non-PCP)は従来の HIV-PCP とは異なった病態を示し,理論的進歩にも関わらず, 臨床上の困難さは未解決な部分が多い.今回,我々は当初他 疾患が疑われたが,結果的に PCP と判明した 2 症例を経験 したため報告する. 症 例 症例1:50歳代 女性 主 訴:発熱,呼吸苦 現病歴:呼吸苦を自覚し,A病院を受診した.喘息の既往が あり,喘息発作に対する治療をされていたが改善しなかっ た.2ヶ月後,発熱も出現し当センターERを受診された が,全身状態良好であったため帰宅の方針となった.5日 後にB病院受診され,肺炎疑いに対してステロイドパル ス,抗生剤が投与されていたが,呼吸状態が悪化したため 当センターERへ救急搬送となった. 既往歴:高血圧,喘息,HTLV-1陽性 現症:血圧97/63mmHg,脈拍96bpm,酸素飽和度95%(酸 素必要量5L/分),体温38.2℃,両側上~下肺野で吸気終末 にfi ne cracklesを聴取 血液ガス所見:pH 7.451,PaCO2 40.0mmHg,PaO2 79.7mmHg,SBE 3.6,Lac 1.9mmol/L

血液学的所見:WBC 10300 /mm3,Hb 10.8 g/dl, Plts 46.1 ×104 /mm,CRP 15.1 mg/dl,D-Dimer 1.4 mg/ml 画像所見:胸部CTにおいて両側肺野全体に地図状のすりガ ラス影を認める.また,胸膜直下は一部spareされてい る.嚢胞形成は認めない.(図1) 入院後経過:第1病日,喀痰培養,抗酸菌培養など採取した 上で細菌性肺炎を考慮し,抗生剤アンピシリン・スルバク タム,ジスロマックを投与開始とした.呼吸状態としては 来院時SpO2 98%(必要酸素量5L)程度であり,ステロイ ドパルス投与は見送った.第3病日にHTLV -1抗体陽性, β-D-glucan 136 pg/mlと判明し,呼吸状態も悪化してき たため,呼吸器内科と血液内科が併科している施設での加 療が望ましいと判断した.第4病日,他施設に転院となっ た.その後,他院で挿管管理となりBALが施行され,細 胞診の結果からPCPと診断された. 症例2:30歳代 男性 主訴:発熱,呼吸苦 現病歴:呼吸苦を自覚し,A病院を受診した.喘息の既往が あり,喘息発作が疑われ加療されていたが改善認めず, 4日後にCTを施行されたところ,両肺野にびまん性のす りガラス影を指摘されたため,過敏性肺臓炎の疑いにて PSL30mgで加療開始された.しかし,4日後に呼吸苦増 悪,発熱が出現したため,当センターERを受診され,呼 吸状態悪化のため緊急入院となった. 既往歴:喘息(最終発作は小学生時) 図 1 入院時胸部CT(症例1)

(3)

現 症:血圧93/70 mmHg,脈拍125bpm,酸素飽和度95% (酸素必要量3L/分),体温38.4℃,両側上~下肺野で吸気 終末にfi ne cracklesを聴取

血液ガス所見:pH 7.508,PaCO2 26.3mmHg,PaO2 103mmHg,SBE -2.0,Lac 2.3mmol/L

血液学的所見:WBC 8400 /mm3,Hb 12.2 g/dl, Plts 50.2 ×104 /mm,CRP 8.82 mg/dl,D-Dimer 0.9 mg/ml 画像所見:胸部CTにおいて両側肺野全体に地図状のすりガ ラス影を認める.また,胸膜直下は一部spareされてい る.(図2) 入院後経過:第1病日,喀痰培養,抗酸菌培養など採取した 上で細菌性肺炎を考慮し,抗生剤アンピシリン・スルバク タム,ジスロマックを投与開始とした.第2病日には同性 愛者であることが判明し,HIV抗体が陽性となったことも あり,画像と併せてPCPを強く疑ったため,ST合剤を開 始した.呼吸状態としては入院時SpO2 98%(必要酸素量 9L)程度であり,翌日以降も改善を認めなかったため, 第2病日に挿管管理となった.第3病日に結核PCR-LAMP 陰性を確認し,補助的ステロイド投与を行った.同日,β -D-glucan 287 pg/mlと判明し,臨床的にPCPと診断し, 抗生剤投与は終了した.第5病日,抗酸菌3連痰結果は陰性 であった.呼吸状態もP/F 300以上にまで改善していたた め,抜管を行った.その後,喀痰病理細胞診からPCPの菌 体が検出された. 考 察 現在,PCP は大別すると HIV-PCP と non-HIV-PCP に 分類され,経過から診断まで異なる点が多いと報告されてい る.以下にそれぞれの特徴を文献的考察を踏まえて報告する. まず,HIV-PCP であるが,HIV の我が国での新規患者 数は 2016 年 8 月時点においても年間 1000 件以上(API-Network 調べ)存在し,新規 AIDS 患者も緩徐に増加して いる.ST 合剤の予防投与などにより,発症率は低下してい るが,HIV 感染が判明する前に PCP を発症するいわゆる「い きなりエイズ」が後をたたず,日本国内だけでも年間 300 例 程度報告されている. 臨床像として,症状は発熱・乾性咳嗽・呼吸困難が 3 主徴 であり,喀痰は稀な症状となる1).胸部聴診は正常なことが 多いが,吸気時にラ音を聴取することもある.重要な身体 所見の一つに表在性カンジダ症の合併による口腔内白苔付 着があり,その他,脂漏性湿疹や毛嚢炎などがある.経過は non-HIV-PCP に比較して緩徐であり,亜急性の経過を辿 る.Kovacs らによると,症状出現から PCP の診断までに要 した期間は HIV-PCP の中央値 28 日間に対し,non-HIV-PCP で 5 日間であった2).これに関しては宿主の免疫応答の 違いが関与していると推察されている. 血液・微生物学的検査に関しては,補助診断法としてβ -D-glucan が有用である報告が相次ぎ,2012 年の Onishi ら の,2013 年の Karageorgopoulos らの 2 つのメタアナリシス により補助診断としての有用性が確立された3)4).Held らの 検討ではカットオフ値 85 とした場合の感度は 98%,特異度 は 94% であり,Desmet らの報告ではカットオフ値 100 とし た場合の感度は 100%,特異度は 96% とされている5)6).一 方,確定診断のためには直接菌体を検出する必要があり, HIV-PCP での診断感度は誘発喀痰では 77%,BALF では 86%~97% と報告されている7) 最後に画像に関して,胸部レントゲンでは両側びまん性 にすりガラス影が分布することが多いが,異常を指摘でき ない症例も 10% 程度存在するため,HRCT を撮像すること が推奨される8).特異的な所見として ”perihilar distribution with peripheral sparing(末梢肺野がスペアされた所見)” が認知されているが,Tasaka,Hujita らの報告によると感 度は 41~59% とそれほど高くない.その他,地図状やモザイ ク状といわれる肺小葉単位での分布が特徴的である.すりガ ラス影に合併した浸潤影も 40% 程度に来すとされているが, non-HIV-PCP と比較するとその割合は低い.これは進行 とともにすりガラス影濃度が上昇して陰影が均一化するとい う機序で説明される9)10) 今回経験した症例では発症 5 日目で当センターに救急搬送 図 2 入院時胸部CT (症例2)

(4)

され,診断までに 10 日程度しかかからなかったことは典型 例とは異なっている.しかし,β -D-glucan は高値を認め ており,喀痰からは菌体の検出はなく,BAL から確定診断 に至っている.画像上も胸膜直下はスペアされており,地図 状のスリガラス影を認めていた.以上が HIV-PCP の典型 像である.続いて non-HIV-PCP の背景を簡潔に描述する. non-HIV-PCP といっても基礎疾患は膠原病,血液・悪 性腫瘍,移植後など多岐に渡り,それぞれで多少臨床所見が 異なっている.それぞれの観点において臨床像,血液・微生 物学的検査,画像診断などの特徴を報告する. 膠原病における PCP の発症頻度に関して,それぞれ RA 0.1%,SLE 0.8%,PM/DM 2%,PN 1.6%,GPA 12% となっ ている11).GPA が発症しやすいのはその生命予後が不良で あるため,他の膠原病疾患の加療より免疫抑制が強くなった 結果と考えられている.血液・悪性腫瘍において十分な戦略 的データはない.しかし,やはり PCP 発症の程度は癌種と 治療内容に依存していることは確かである. 臨床像としては高齢者に多く,症状としては発熱・倦怠感・ 乾性咳嗽などが出現する.経過は上述の通り,数日単位で進 行することが多く,これは non-HIV-PCP の発生機序が宿 主の免疫・炎症反応によることの裏付けとなる.

β -D-glucan の位置づけであるが,Tasaka らや Onishi らの検討によれば,前述の感度・特異度は HIV 感染の有無 に関与しないと報告されており,特に菌体の証明が容易でな い non-HIV 感染者で有用だと考えられる3).RA では菌量 の少なさからβ -D-glucan 値が HIV-PCP の 1/10 程度と の報告がある9) 画像の観点からは,まず膠原病(特に RA)では小葉ごと に濃淡が異なる汎小葉性のすりガラス影(mosaic pattern) を呈することが多いが,一方で血液・悪性腫瘍ではすりガ ラス影に加えて,約半数の例で consolidation がみられる12) その多くは気管支血管束に沿って分布しているため,今後診 断の有力な手がかりとなる可能性がある.固形臓器移植後の PCP の画像診断については,いまだ検討が行われていない. 症 例 1 は β - D - glucan こ そ 高 値 を 示 し た た め,PCP を疑うことが出来たが,画像上は cosolidation を認めず, 経過も比較的緩徐な進行を示した非典型的なパターンで あ る. こ の よ う な 場 合 に お い て, 当 然 HAB (HTLV-1 associated bronchopneumonopathy) も鑑別の一つに挙がり, β -D-glucan がより重要となる可能性がある. 結 語 以上より,HIV-PCP と non-HIV-PCP の臨床像,検査 所見および画像所見とその臨床的な応用について検討した が,non-HIV-PCP では未だにデータが不十分な部分も多 い.しかし,この中でも,β -D-glucan は HIV 感染の有 無を問わず PCP の診断に非常に有用なツールである.今回, ER より緊急入院した PCP の 2 症例を経験したが,臨床経 過は非典型的なものであった.しかし,今後,エビデンスの ある補助診断としてのβ -D-glucan を迅速に測定すること により,PCP を早期に疑い,他疾患と鑑別し治療に移るこ とで non-HIV-PCP の死亡率を下げることができると考え られる. 本論文の要旨は第 86 回日本呼吸器学会近畿地方会(2015 年 12 月 19 日メルパルク京都)において発表した. 文 献

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(5)

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参照

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